航空法規全61問中 8問を掲載
問1航空機の耐空証明の有効期間として、航空法上の原則的な定めはどれか。
- ✔1年
- 26か月
- 33か月
- 4有効期間の定めはない
- 52年
解説:【正解】1「1年」
【結論】航空法第14条により、耐空証明の有効期間は原則1年である。
【例外を必ずセットで】国土交通大臣が定める整備規程を有する使用者(本邦航空運送事業者等)の航空機については、その整備規程に定めるところにより1年を超える期間を指定できる。大手航空会社の機体が1年ごとに検査で止まらないのはこの規定による。試験では「原則1年」だけでなく、この例外の存在まで問われることがある。
【混同しやすい点】耐空証明は「個々の航空機」に対する証明(第10条)であり、型式証明は「その型式の設計」に対する証明(第12条)である。両者は別の制度で、型式証明があっても個々の機体には耐空証明が必要となる。
【実務との結びつき】有効期間内であっても耐空性を維持する義務は継続する。点検の周期内実施、TCDの実施、不具合の是正、記録の作成を怠れば、期間内でも基準に適合しない状態となり得る。失効した機体は航空の用に供せず、飛行させるには特別な飛行の許可(第11条ただし書き)が必要となる。
【根拠・出典】航空法第14条
問2航空法上、航空機の使用者が備え付けなければならない航空日誌の組み合わせとして正しいものはどれか。
- 1地上備付け用航空日誌のみ
- ✔搭載用航空日誌および地上備付け用発動機航空日誌・プロペラ航空日誌
- 3搭載用航空日誌のみ
- 4運航規程および整備規程
- 5搭載用航空日誌および整備規程
解説:【正解】2「搭載用航空日誌および地上備付け用発動機航空日誌・プロペラ航空日誌」
【結論】航空日誌は「搭載用」と「地上備付け用(発動機航空日誌・プロペラ航空日誌)」の2系統である(航空法第58条、施行規則第137条)。
【なぜ2系統に分けるのか】搭載用は機体に搭載し、その航空機の飛行の記録、整備・改造の内容と確認を残す。一方、発動機やプロペラは機体から取り外して他機に付け替えられるため、機体の日誌に混ぜてしまうと個々の使用時間やオーバーホール歴を追えなくなる。そこで発動機ごと、プロペラごとに独立した日誌を地上に備え付けて履歴を管理する。この考え方は、後に学ぶ「モジュールごとの使用時間管理」や「寿命管理部品のトレーサビリティ」と同じ発想である。
【記載内容の切り分け】搭載用には航空機の識別、耐空証明に関する事項、飛行の記録、整備・改造の内容と確認、TCDの実施状況を記載する。発動機の総使用時間の累計やオーバーホール歴は地上備付け用に記載する。
【例外】滑空機など一部の航空機については、備付けの一部に例外規定がある。
【根拠・出典】航空法第58条、施行規則第137条
問3耐空類別が「飛行機 普通 N」の航空機に適用される制限運動荷重倍数(正の値)として正しいものはどれか。
- 1+4.4
- 2+2.5
- ✔+3.8
- 4+6.0
- 5+9.0
解説:【正解】3「+3.8」
【結論】耐空類別ごとの正の制限運動荷重倍数は、普通N=+3.8、実用U=+4.4、曲技A=+6.0である。
【数値の意味】制限荷重倍数とは、その機体が運航中に受けることを想定した最大の荷重を重力の何倍として設計したかを示す値である。+3.8Gなら、機体重量の3.8倍の荷重を受けても有害な永久変形を生じないことが要求される。これに安全率1.5を乗じた終極荷重(この場合5.7G)に規定時間耐えて破壊しないことも要求される。
【負の値】負の制限荷重倍数は、普通Nで−1.52(正の値の0.4倍)と定められている。人間が背面方向のGに弱いことに加え、翼構造も上向き荷重を前提に設計されるため、負側は小さく設定される。
【輸送T類との対比】旅客機が属する輸送T類はむしろ+2.5〜+3.8と小さい。これは運動性能より、システムの冗長性、フェイルセーフ設計、エンジン不作動時の性能といった信頼性を重視する設計思想の違いによる。曲技飛行が許されるのは曲技Aのみである点も押さえておく。
【根拠・出典】耐空性審査要領 第III部
問4修理改造検査を受けなければならないのは次のどの場合か。
- 1耐空証明を受けようとする場合
- 2発動機の潤滑油を交換した場合
- 3航空機を輸入した場合
- ✔国土交通省令で定める範囲の修理または改造をした場合
- 5すべての定期整備を行った場合
解説:【正解】4「国土交通省令で定める範囲の修理または改造をした場合」
【結論】航空法第16条により、国土交通省令で定める範囲の修理・改造(いわゆる大修理・大改造)を行った場合に修理改造検査を受ける必要がある。
【区分の基準】軽微な保守/通常の整備/大修理・大改造の区分は、作業時間や費用ではなく、その作業が機体の構造強度、機能、性能、飛行特性に及ぼす影響の程度によって定められている。潤滑油の交換や消耗品の取替えは対象外だが、主要構造部材の交換や設計変更を伴う改造は対象となる。
【認定事業場によるみなし規定】第20条により、認定事業場において確認主任者の確認を受けた場合は、修理改造検査を受けたものとみなされる。実務上、多くの大修理・大改造はこのルートで処理される。ただし認定された業務の範囲内でなければならない。
【関連して押さえる】設計変更を伴う改造では、追加型式設計承認(STC等)といった設計側の承認が別途必要となる場合がある。作業の実施と、その設計の承認は別の話である点を区別しておくこと。
【根拠・出典】航空法第16条、第20条
問5予備品証明制度に関する記述として誤っているものはどれか。
- 1予備品証明を受けた装備品には表示が付される
- 2認定事業場の確認を受けた装備品は予備品証明を受けたものとみなされる
- 3対象となる装備品は国土交通省令で定められている
- 4予備品証明は装備品が技術上の基準に適合することを証明する制度である
- ✔予備品証明を受けていない装備品はいかなる場合も航空機に使用できない
解説:【正解】5「予備品証明を受けていない装備品はいかなる場合も航空機に使用できない」
【結論】選択肢4の「予備品証明を受けていない装備品はいかなる場合も使用できない」が誤り。みなし規定が存在するためである。
【予備品証明とは】航空法第17条に基づき、装備品が技術上の基準に適合することを証明する制度である。対象となる装備品は省令で定められ、証明を受けたものには表示が付される。
【なぜ「いかなる場合も」が誤りか】第20条により、認定事業場において確認を受けた装備品は予備品証明を受けたものとみなされる。また相互承認の対象として、外国の政府等が発行した証明のあるものも使用できる。実際、大量の装備品を扱う航空運送事業では、個々に予備品証明を取得するのではなく、この認定事業場ルートで流通するのが通常である。
【制度の全体像】耐空証明(個々の航空機)、型式証明(型式の設計)、予備品証明(装備品)という3つの証明制度と、それらの一部を代替する認定事業場制度(第20条)の関係を一体で理解すると混乱しない。
【根拠・出典】航空法第17条、第20条
問6一等航空整備士の技能証明に付される「限定」に関する記述として正しいものはどれか。
- ✔航空機の種類および型式が限定される
- 2使用できる工具が限定される
- 3勤務できる事業場が限定される
- 4限定は付されない
- 5整備できる作業の種類が限定される
解説:【正解】1「航空機の種類および型式が限定される」
【結論】航空整備士の技能証明には、航空機の「種類」および「型式」の限定が付される(航空法第25条、施行規則第53条)。
【最も間違えやすい点】操縦士の技能証明には「等級」(陸上単発・陸上多発・水上単発・水上多発)の限定が付されるが、整備士には等級の限定はない。整備士は種類(飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船)と型式による限定である。この違いは頻出であるため確実に区別すること。
【限定がなぜ必要か】航空機は型式ごとにシステム構成、整備手順、限界値が大きく異なる。ある型式で確実に確認できる能力が、別の型式でも通用する保証はない。したがって確認という法的行為を行える範囲を、実際に習熟した型式に限定している。
【範囲外を扱う場合】限定範囲外の航空機について作業に従事すること自体は可能だが、確認は限定を有する者または認定事業場の確認主任者が行わなければならない。限定を追加するには、所定の経験を満たしたうえで限定変更の申請と試験(審査)が必要となる(施行規則第57条)。
【根拠・出典】航空法第25条、施行規則第53条
問7本邦航空運送事業者の整備規程に定めなければならない事項として、適切でないものはどれか。
- 1整備の実施基準および方法
- ✔旅客に提供する機内食の仕様
- 3確認主任者の職務および資格要件
- 4整備に従事する者の教育訓練に関する事項
- 5整備の記録の作成および保管に関する事項
解説:【正解】2「旅客に提供する機内食の仕様」
【結論】機内食の仕様は整備規程の記載事項ではない。整備規程は「整備の適切な実施を確保するための事項」を定めるものである。
【整備規程に定める主な事項】航空法第104条・施行規則第214条により、整備の実施基準および方法、整備の記録の作成と保管、確認主任者の職務と資格要件、整備に従事する者の教育訓練、整備施設・器材、整備の管理体制、信頼性管理といった事項を定める。
【運航規程との対比】運航規程は乗務員の職務、運航管理、緊急措置等を定めるもので、対象が異なる。ただし両者とも国土交通大臣の認可を要し、変更にも認可が必要である点、そして事業者およびその従業者に遵守義務がある点は共通である。届出のみで足りるものではないことに注意。
【実務上の意味】整備規程は「自社はこの方法で耐空性を維持します」と当局に約束した文書である。したがって現場の判断で周期を延ばしたり手順を変えたりすることはできず、変更には所定の手続を要する。現場と規程に乖離が生じた場合は、報告して規程の見直しか実態の是正かを組織として判断する必要がある。
【根拠・出典】航空法第104条、施行規則第214条
問8本邦航空運送事業者が定める運航規程と整備規程の関係について、正しい記述はどれか。
- ✔運航規程は運航の方法等を、整備規程は整備の実施方法等を定めるもので、いずれも国土交通大臣の認可を要する
- 2整備規程のみ認可が必要である
- 3いずれも届出のみでよい
- 4両者は同一の規程である
- 5運航規程のみ認可が必要である
解説:【正解】1「運航規程は運航の方法等を、整備規程は整備の実施方法等を定めるもので、いずれも国土交通大臣の認可を要する」
【結論】運航規程と整備規程は対象の異なる別個の規程だが、いずれも国土交通大臣の認可を要する(航空法第104条)。
【それぞれの内容】
・運航規程…乗務員の職務と編成、運航管理の体制、飛行の実施方法、緊急時の措置、航空機の運用限界、乗務時間の制限など「飛ばす側」の事項。
・整備規程…整備の実施基準と方法、点検の種類と周期、確認主任者の職務と資格要件、整備の記録、教育訓練、整備施設と器材、信頼性管理など「維持する側」の事項。
【認可制であることの意味】届出であれば事業者が一方的に決められるが、認可制とは「当局の審査を経て承認される」ということである。つまり整備規程は「自社はこの方法で耐空性を維持します」と当局に約束した文書であり、その内容には法的な拘束力が生じる。変更する場合も同様に認可が必要で、現場や管理者の判断で周期を延ばしたり手順を省略したりすることはできない。
【遵守義務の範囲】事業者だけでなく、その従業者にも遵守義務がある。したがって整備士個人にとっても、整備規程は「守るべき社内ルール」ではなく「法令上の義務」である。
【実務での応用】規程と現場の実態に乖離が生じた場合、現場のやり方を続けることも、個人の判断で規程を変えることもできない。乖離の事実を報告し、規程の見直しか実態の是正かを組織として決定する必要がある。この乖離を放置すると「逸脱の常態化(ノーム)」となり、重大事故の温床となる。
【根拠・出典】航空法第104条
機体・システム全67問中 8問を掲載
問9与圧構造の胴体に用いられるフェイルセーフ設計のうち、「亀裂の進展を特定の範囲で停止させる」ことを主眼とした考え方はどれか。
- 1セーフライフ構造
- 2バックアップ構造
- ✔クラックストッパ構造
- 4ロードパス構造
- 5リダンダント構造
解説:【正解】3「クラックストッパ構造」
【結論】クラックストッパ構造は、発生した亀裂の進展を一定範囲で停止させ、残存強度を確保する考え方である。
【具体的な姿】胴体外板では、円周方向にティアストラップ(テア・ストラップ)を配置し、縦方向にはストリンガを配置する。亀裂が進展してこれらに到達すると、荷重の流れが分散されて亀裂先端の応力拡大係数が下がり、進展が停止または大幅に減速する。これにより、亀裂が長大化して爆発的な破壊(フラッピング)に至る前に、点検で発見できる状態にとどめられる。
【他の設計思想との区別】
・セーフライフ=所定の寿命内は破壊しないと解析・試験で保証する設計。亀裂の発生自体を許容しない。
・リダンダント/ロードパス=荷重経路を多重化し、一部が破断しても残りで荷重を負担する設計。
・損傷許容(ダメージトレランス)=亀裂の存在を前提とし、検出可能な寸法から臨界寸法に達するまでの期間に基づいて点検間隔を設定する設計。
【整備との結びつき】これらの設計は「点検で発見できること」を前提としている。つまり構造点検を規定どおり実施して初めて設計上の安全が成立する。点検の周期や範囲を勝手に変えられない理由がここにある。
【根拠・出典】耐空性審査要領(疲労・損傷許容設計)
問10りん酸エステル系作動油(いわゆるスカイドロール系)の特性として誤っているものはどれか。
- 1多くの塗料やある種のゴム、樹脂を侵す
- 2耐火性に優れる
- 3吸湿性があり水分管理が必要である
- ✔鉱油系作動油と自由に混用できる
- 5皮膚や眼に対して刺激性がある
解説:【正解】4「鉱油系作動油と自由に混用できる」
【結論】りん酸エステル系作動油(スカイドロール系)と鉱油系作動油(MIL-H-5606等)は混用厳禁である。
【なぜ混用できないか】両者は化学的性質が根本的に異なり、適合するシール材も異なる。りん酸エステル系にはブチルゴムやEPDM系、鉱油系にはニトリルゴム系のシールが用いられる。混入すると系統内のシールが膨潤または収縮して漏れを生じ、復旧には系統全体の洗浄とシール類の総交換という大がかりな作業が必要となる。
【りん酸エステル系の特性】
・耐火性に優れる…これが採用の最大の理由。旅客機の高圧油圧系統で漏れが発火することを防ぐ。
・塗料、一部の樹脂・ゴム、電線被覆を侵す…こぼれた場合は速やかに規定の方法で除去する。
・皮膚や眼に刺激性がある…保護具の着用が必要。
・吸湿性がある…水分は酸性度の上昇と部品の腐食を招くため、水分管理と定期的な油の性状分析が行われる。
【実務上の着眼点】作動油の変色や酸性度の上昇は、系統内の異常な発熱や汚染を示唆する。単なる補充で済ませず、性状の変化を傾向として捉えることが重要である。
【根拠・出典】航空機システム(油圧系統)
問11前脚に発生するシミー(shimmy)現象の説明として最も適切なものはどれか。
- 1ブレーキが断続的に効く現象
- 2脚が引き込み位置で固着する現象
- 3着陸時にタイヤがロックする現象
- 4離陸滑走中に主脚が上下に振動する現象
- ✔地上滑走中に前脚が左右に自励振動する現象
解説:【正解】5「地上滑走中に前脚が左右に自励振動する現象」
【結論】シミーは、地上滑走中に前脚(またはテールホイール)が左右方向に激しく自励振動する現象である。
【発生のしくみ】タイヤの接地面には、進行方向からのずれを戻そうとする復元力と、その応答の遅れが存在する。この遅れが支持系のガタや剛性不足と組み合わさると、振動が減衰せずむしろ増幅される自励振動となる。一度発生すると短時間で振幅が増大し、前脚構造の損傷に至ることもある。
【主な誘因】
・トルクリンク(トルク・アーム)のピンやブッシュの摩耗によるガタ
・タイヤの空気圧不足、偏摩耗、アンバランス
・シミーダンパの作動油量不足や内部の劣化
・支持部ベアリングの摩耗
【対策としてのシミーダンパ】シミーダンパは、前脚の左右方向の動きに対して油の流動抵抗による減衰を与え、振動の増幅を抑える装置である。したがってシミー発生時の点検は、まずシミーダンパの作動油量と作動状態、次にトルクリンクのガタ、タイヤの状態という順で確認するのが定石である。
【混同注意】着陸時のタイヤのロックはアンチスキッドの領域、脚の引込位置での固着はロック機構の問題であり、いずれもシミーとは別現象である。
【根拠・出典】航空機システム(降着装置)
問12アルミニウム合金2024-T3と7075-T6に関する記述として正しいものはどれか。
- ✔7075はAl-Zn-Mg系で、2024より高い引張強さを持つ
- 2いずれも熱処理では強度が変化しない
- 3アルクラッドは強度を高めるための表面処理である
- 42024の方が7075より引張強さが高い
- 52024はAl-Zn系、7075はAl-Cu系である
解説:【正解】1「7075はAl-Zn-Mg系で、2024より高い引張強さを持つ」
【結論】2024はAl-Cu系(ジュラルミン系)、7075はAl-Zn-Mg系(超々ジュラルミン系)で、引張強さは7075-T6の方が高い。
【使い分けの実際】
・2024-T3…引張強さは7075より劣るが、疲労特性と靭性に優れる。繰返し荷重を受ける胴体外板や下面のように、疲労が支配的な部位に用いられる。
・7075-T6…最高水準の引張強さを持つが、疲労亀裂の進展が速く、応力腐食割れの感受性も高い。主翼上面のように圧縮荷重が支配的で高い強度が求められる部位に用いられる。
【熱処理との関係】いずれも析出硬化(時効硬化)型合金であり、溶体化処理と時効処理により強度が決まる。質別記号のT3は「溶体化処理後に冷間加工し自然時効」、T6は「溶体化処理後に人工時効」を意味する。したがって熱を加える作業(溶接、火災、不適切な塗装乾燥)は強度を大きく損なう可能性がある。
【アルクラッドの誤解】アルクラッドは表面に純アルミの薄層を圧着した「耐食」目的の被覆であり、強度を高めるものではない。むしろ純アルミ層の分だけ強度はわずかに低下する。研磨やサンディングでこの層を削り取ると耐食性が失われる点にも注意する。
【根拠・出典】航空機材料
問13渦流探傷検査(ECT)の適用に関する記述として最も適切なものはどれか。
- 1厚い鋼材の内部欠陥検出に最も適する
- ✔導電性材料の表面および表面直下の欠陥検出に適する
- 3検査面に現像剤を塗布する必要がある
- 4放射線源を用いるため被ばく管理が必要である
- 5非導電性材料の内部欠陥検出に適する
解説:【正解】2「導電性材料の表面および表面直下の欠陥検出に適する」
【結論】渦流探傷(ECT)は、導電性材料の表面および表面直下のきずの検出に適する。
【原理】試験コイルに交流を流して被検体に渦電流を誘起し、きずがあると渦電流の流れが乱れてコイルのインピーダンスが変化する。この変化を検出することできずの有無と大きさを推定する。
【なぜ深部が苦手か】交流電流は周波数が高いほど表面に集中する(表皮効果)。渦電流も同様に表面付近に集中するため、深い位置のきずは検出が難しい。周波数を下げれば浸透深さは増すが分解能は落ちる、というトレードオフがある。ファスナ孔周辺の亀裂検出など、航空機構造では極めて有用な手法である。
【他の非破壊検査との使い分け】
・浸透探傷(PT)…毛細管現象を利用。表面に開口したきずのみ。多孔質材には適用不可。現像剤を用いる。
・磁粉探傷(MT)…強磁性材料の表面および表面近傍。磁粉を用いる。
・超音波探傷(UT)…内部欠陥、厚さ測定。
・放射線透過(RT)…内部欠陥、溶接部。被ばく管理が必要。
・タップテスト…複合材・ハニカムの剥離。簡便だが深部は不可。
材料の導電性・磁性、きずの位置(表面か内部か)、必要な精度から手法を選ぶ、という考え方で整理すると覚えやすい。
【根拠・出典】非破壊検査(NDI)
問14有効長300mmのトルクレンチに、長さ100mmのエクステンションを直線状に取り付けて、ボルトに600N・mを与えたい。トルクレンチの読み(設定値)として正しいものはどれか。
- 1500N・m
- 2600N・m
- ✔450N・m
- 4800N・m
- 5480N・m
解説:【正解】3「450N・m」
【結論】T = Td × L ÷(L + A)= 600 × 300 ÷ 400 = 450N・m である。
【式の意味を理解する】ボルトに加わるトルクは「レンチの支点(ボルト中心)から力点までの距離」に比例する。エクステンションを直線状に付けると、力点までの距離がL+Aに伸びるため、レンチ目盛が示す値(有効長Lを前提に較正されている)より実際のトルクは大きくなる。したがって指示値を下げる方向に補正する必要がある。
【符号の方向を間違えないコツ】「延長すればテコが長くなる=小さい力で大きなトルクが出る=レンチの読みは小さくてよい」と物理的に考えれば、450<600という方向が自然に導ける。式を暗記するより、この関係で確かめる癖をつけると計算ミスを防げる。
【注意すべき条件】この式が成り立つのはエクステンションをレンチと直線状(同一直線上)に取り付けた場合である。90度など角度をつけて取り付けた場合は、モーメントアームが変わるため補正の考え方が異なり、直角の場合は補正不要となる。
【実務上の留意】トルクレンチは定期校正が必要であり、規定トルクは潤滑の有無(ドライ/ルブリケーテッド)でも異なる。また規定を超える締付けはボルトを降伏させ、締結の信頼性をむしろ低下させる。
【根拠・出典】整備一般(工具・締結)
問15与圧された航空機の客室高度と機外気圧の関係について、正しい記述はどれか。
- 1客室圧力は空調空気の流入量のみで決まる
- ✔アウトフロー・バルブの開度により客室圧力を制御し、最大差圧を超えないよう管理される
- 3客室高度は常に機外高度と等しい
- 4最大差圧の制限はない
- 5客室高度は常に海面高度に保たれる
解説:【正解】2「アウトフロー・バルブの開度により客室圧力を制御し、最大差圧を超えないよう管理される」
【結論】与圧は、ブリードエア等で客室に空気を送り込みつつ、アウトフロー・バルブの開度で排出量を制御して客室圧力を保つ。機体構造の許容から最大差圧が定められている。
【制御の考え方】客室圧力は「入る量」と「出る量」のバランスで決まる。入る量(パックからの供給)はほぼ一定に保たれ、出る量をアウトフロー・バルブの開度で細かく制御することで、客室高度とその変化率(レート)を管理する。急激な圧力変化は乗員乗客の耳に不快感や障害を与えるため、変化率の制御も重要な要素である。
【最大差圧という制約】胴体は与圧により内側から膨らむ力を受ける。この差圧に耐えられる上限が構造設計で決まっており、これを超えないよう正圧リリーフ弁が設けられている。逆に急降下時などに外気圧が客室圧を上回る事態に備えて負圧リリーフ弁もある。これらはアウトフロー・バルブとは独立して機能する最後の防護である。
【客室高度8000ftの意味】巡航高度35,000ftでも客室高度が約8,000ftに保たれるのは、最大差圧の制約の中でこれが乗客の生理的な許容範囲だからである。近年の複合材機では構造の余裕により客室高度を6,000ft程度まで下げ、快適性を高めた例もある。
【疲労との関係】与圧サイクルは胴体構造に繰返し荷重を与えるため、離着陸回数(飛行サイクル)が構造寿命の管理単位となる。短距離路線の機体で飛行時間の割にサイクル数が多くなる理由もここにある。
【根拠・出典】航空機システム(与圧・空調)
問16油圧系統のアキュムレータの機能として、最も適切なものはどれか。
- 1作動油の粘度を調整する
- 2空気を混入させる
- ✔圧力変動(サージ)を吸収し、非常時には蓄圧した圧力を供給する
- 4作動油を冷却する
- 5作動油を濾過する
解説:【正解】3「圧力変動(サージ)を吸収し、非常時には蓄圧した圧力を供給する」
【結論】アキュムレータは、圧力変動(サージ)の吸収と、非常時の蓄圧された圧力源という2つの機能を持つ。
【構造と原理】容器の内部をダイヤフラム、ブラダ、またはピストンで仕切り、一方に窒素ガス、他方に作動油を封入する。系統圧力が上がると油が押し込まれてガスが圧縮され、エネルギーが蓄えられる。圧力が下がるとガスが膨張して油を押し出す。ガスの圧縮性を利用した「油圧のばね」と理解するとよい。
【2つの機能を具体的に】
・サージの吸収…ポンプの脈動や、アクチュエータが急停止したときに生じる圧力の急上昇(ウォータハンマ)を吸収し、配管や部品の損傷を防ぐ。またポンプの起動頻度を減らして寿命を延ばす。
・非常用の圧力源…系統の圧力源が失われても、蓄えた圧力でブレーキを数回作動させたり、脚を降ろしたりできる。ブレーキ・アキュムレータはこの目的で独立して設けられることが多い。
【整備の要点はプリチャージ圧】ガス側のプリチャージ圧が規定値より低いと蓄えられるエネルギーが不足し、高すぎると油が十分に入らず容量を活かせない。プリチャージ圧の点検は系統圧力を抜いた状態で行い、規定の窒素で調整する。空気ではなく窒素を用いるのは、酸素による油の酸化と発火の危険を避けるためである。
【混同注意】濾過はフィルタ、貯蔵はリザーバ、冷却は熱交換器の役割であり、アキュムレータとは機能が異なる。
【根拠・出典】航空機システム(油圧)
発動機全61問中 8問を掲載
問17ターボファン・エンジンのバイパス比の定義として正しいものはどれか。
- 1推力と燃料流量の比
- 2タービン入口温度と外気温度の比
- 3コア空気流量と全空気流量の比
- ✔バイパス空気流量とコア(一次)空気流量の比
- 5ファン出口全圧と入口全圧の比
解説:【正解】4「バイパス空気流量とコア(一次)空気流量の比」
【結論】バイパス比=バイパス(二次)空気流量 ÷ コア(一次)空気流量である。
【高バイパス比化がもたらすもの】
・推進効率の向上…推進効率は概ね ηp = 2 ÷(1+Ve/V0)で表され、排気速度Veが飛行速度V0に近いほど高い。大量の空気を小さな速度差で加速する高バイパス比エンジンは、この点で有利である。
・燃料消費率の改善…上記の結果として、同じ推力をより少ない燃料で得られる。
・騒音の低減…ジェット騒音は排気速度の高い乗数に比例するため、排気速度の低下が大幅な騒音低減につながる。
【トレードオフ】ファン直径が大きくなるため、ナセルの抗力と重量が増加し、地上高の確保(脚の長さ)も課題となる。無限に大きくすればよいわけではなく、機体全体での最適点が存在する。またギヤードターボファンは、ファンと低圧タービンの最適回転数の違いを減速機で解消し、さらなる高バイパス比化を可能にした構成である。
【関連指標】バイパス比と混同しやすいのが「圧力比(オーバーオール・プレッシャ・レシオ)」で、こちらは熱効率に関わる指標である。推進効率=バイパス比、熱効率=圧力比とタービン入口温度、と対応づけて整理するとよい。
【根拠・出典】航空発動機(ガスタービン)
問18EPR(エンジン圧力比)を推力設定の指標とする方式において、EPRは一般に何と何の比で示されるか。
- 1燃焼室圧力/大気圧
- 2排気ガス温度/外気温度
- 3圧縮機出口全圧/タービン出口全圧
- 4ファン出口静圧/大気静圧
- ✔タービン出口全圧/圧縮機入口全圧
解説:【正解】5「タービン出口全圧/圧縮機入口全圧」
【結論】EPRは一般に「タービン出口(排気)全圧 ÷ 圧縮機(エンジン)入口全圧」で表される。
【なぜ推力の指標になるか】推力は排気の運動量変化から生じ、その排気速度は排気の圧力比に強く依存する。したがってエンジンの入口と出口の全圧の比は、そのエンジンが空気にどれだけのエネルギーを与えたかを反映し、推力とほぼ比例的に対応する。
【整備上の最重要ポイント】EPRは入口プローブと出口プローブの2点の圧力測定に依存する。入口プローブに氷が付着したり、プローブや配管に損傷・詰まりがあると、実際より低い(あるいは高い)EPRを指示する。これにより操縦士が推力を過大または過小に設定してしまい、離陸性能に直結する。過去に入口プローブの閉塞が重大事故につながった事例があり、プローブの清浄と防氷系統の作動確認は極めて重要である。
【N1方式との違い】メーカによっては、ファン回転数N1を推力設定パラメータとする方式を採る。N1方式は圧力プローブに依存しないため閉塞の影響を受けにくいという利点があるが、いずれの方式でもセンサの健全性が推力設定の前提となる点は変わらない。
【根拠・出典】航空発動機(エンジン計器)
問19軸流圧縮機のストール/サージを防止するために設けられる装置として、適切でないものはどれか。
- ✔逆推力装置(スラストリバーサ)
- 2抽気弁(ブリードバルブ)
- 3可変インレットガイドベーン
- 4可変静翼(VSV)
- 5多軸(スプール)構成
解説:【正解】1「逆推力装置(スラストリバーサ)」
【結論】逆推力装置は着陸滑走距離を短縮するための装置であり、圧縮機ストール/サージの防止装置ではない。
【圧縮機ストールはなぜ起きるか】圧縮機の各段の翼は、設計された回転数と流量の組合せで最適な迎え角となるよう設計されている。低回転域では前段が押し込む空気量に対して後段が「詰まり」、前段の翼の迎え角が過大となって流れが剥離する。逆に高回転域では後段の迎え角が過大になる。つまり設計点から外れた運転が本質的な原因である。
【防止装置とその働き】
・可変静翼(VSV)/可変インレットガイドベーン…静翼の角度を回転数に応じて変え、動翼への流入角を最適に保つ。
・抽気弁(ブリードバルブ)…低回転域で中間段から空気を抜き、前段の詰まりを解消する。
・多軸(スプール)構成…低圧系と高圧系を機械的に分離し、それぞれが自然に適正な回転数で運転されるようにする。
【サージ・マージンという概念】圧縮機マップ上の運転線(ワーキング・ライン)とサージ・ラインの距離がサージ・マージンである。翼の汚れ、シールの劣化、翼の損傷、インレットの流れの歪みはこのマージンを削るため、水洗や損傷の管理がサージ防止に直結する。
【根拠・出典】航空発動機(圧縮機)
問20ガスタービン・エンジンの理論サイクル(ブレイトンサイクル)の行程の組み合わせとして正しいものはどれか。
- 1等温圧縮 → 定圧加熱 → 等温膨張 → 定積放熱
- ✔断熱圧縮 → 定圧加熱 → 断熱膨張 → 定圧放熱
- 3定圧圧縮 → 断熱加熱 → 定圧膨張 → 断熱放熱
- 4断熱圧縮 → 定積加熱 → 断熱膨張 → 定積放熱
- 5断熱圧縮 → 等温加熱 → 断熱膨張 → 等温放熱
解説:【正解】2「断熱圧縮 → 定圧加熱 → 断熱膨張 → 定圧放熱」
【結論】ブレイトンサイクル(定圧サイクル)は、断熱圧縮 → 定圧加熱 → 断熱膨張 → 定圧放熱の4行程からなる。
【実機の各部との対応】
・断熱圧縮=圧縮機。外部と熱をやり取りせず圧縮するため、温度が上昇する。
・定圧加熱=燃焼室。圧力をほぼ一定に保ったまま燃料を燃焼させて温度を上げる。
・断熱膨張=タービンおよび排気ノズル。膨張により温度と圧力が下がり、その分のエネルギーが軸出力と排気速度になる。
・定圧放熱=大気への排出。
【オットーサイクルとの本質的な違い】レシプロエンジンのオットーサイクルは定積加熱・定積放熱を伴う。これは燃焼が密閉されたシリンダ内で瞬間的に起こるためである。一方ガスタービンでは燃焼が開放された流路の中で連続的に起こるため、圧力がほぼ一定に保たれる。「密閉して一気に燃やす(定積)」か「流しながら連続的に燃やす(定圧)」かの違いと理解すると、両者を取り違えない。
【熱効率を決めるもの】ブレイトンサイクルの理論熱効率は圧力比の関数として増加し、また単位空気量あたりの出力はタービン入口温度の上昇により増加する。エンジン開発が高圧力比化と高温化を追求してきた理由がここにある。
【根拠・出典】航空発動機(熱力学)
問21逆推力装置(スラストリバーサ)に関する記述として誤っているものはどれか。
- 1高バイパス比エンジンではファン気流のみを反転させる方式が多い
- 2飛行中の不用意な作動を防ぐインタロックが設けられている
- ✔主たる目的は離陸滑走距離の短縮である
- 4一定の対地速度以下では逆流ガスの再吸入に注意が必要である
- 5カスケード式とターゲット(クラムシェル)式がある
解説:【正解】3「主たる目的は離陸滑走距離の短縮である」
【結論】逆推力装置の目的は着陸後(および中断離陸時)の減速であり、離陸滑走距離の短縮ではない。
【方式の違い】
・カスケード式…バイパス流をブロッカ・ドアで塞ぎ、カスケード(格子状の翼列)で前方斜めへ偏向する。高バイパス比エンジンでは推力の大部分をファン気流が占めるため、ファン気流のみを反転させれば十分な逆推力が得られる。現在の主流。
・ターゲット(クラムシェル)式…排気全体を2枚の椀状の板で受け止めて反転させる。低バイパス比エンジンで用いられる。
【低速域で戻す理由】対地速度が下がると、逆推力で前方に吹き出した排気ガスと舞い上げた異物を、自らのエンジンが再び吸い込む(リインジェスチョン)おそれがある。高温ガスの吸入は推力の変動やサージを招き、異物の吸入はFODとなる。このため規定速度以下でアイドル・リバースへ戻す運用が定められている。
【安全機構】飛行中の不用意な作動は機体の制御喪失に直結するため、WOW(対地・空中判定)信号やスロットル位置と連動した多重のインタロックが設けられている。整備作業で展開状態にする際は、規定のロックアウト装置を装着し操縦室に警告タグを掲示する。
【根拠・出典】航空発動機(逆推力装置)
問22ガスタービン・エンジンの潤滑油系統において、スカベンジ・ポンプの容量がプレッシャ・ポンプより大きく設計されている主な理由はどれか。
- 1オイルタンクを小型化するため
- 2フィルタの目詰まりを防ぐため
- 3油圧を高めるため
- ✔回収油が空気を含み体積が増大するため
- 5油温を下げるため
解説:【正解】4「回収油が空気を含み体積が増大するため」
【結論】スカベンジ・ポンプの総容量がプレッシャ・ポンプより大きい(一般に2〜3倍程度)のは、回収される油が多量の空気を含んで見かけの体積が増大するためである。
【なぜ空気が混ざるのか】ベアリング・サンプは、圧縮機からのシール・エアが常にサンプ内へ向かって流入する構成になっている。これは潤滑油が外部(エンジンの主流路)へ漏れ出すことを防ぐための積極的な設計である。その代償として、サンプ内では油と空気が激しく攪拌されて泡状となり、体積が大きく膨らむ。
【回収不良が招くもの】スカベンジ能力が不足すると、サンプ内に油が滞留し、軸受の攪拌損失による温度上昇、油消費量の増加、シールからの外部漏れ(排気の白煙、ドレンからの滴下増加)を招く。
【系統の全体像として理解する】
・プレッシャ・ポンプ…タンクから各軸受へ油を供給。
・スカベンジ・ポンプ…各サンプから油を回収。容量は大。
・デアレータ…回収油から空気を遠心分離し、油をタンクへ戻す。
・セントリフュージャル・ブリーザ…機外へ排出する空気から油分を遠心分離して回収し、空気のみを排出。ここが詰まるとサンプ内圧が上がり油漏れの原因となる。
この一連の流れを押さえておくと、油消費増加や白煙といった症状から原因部位を推定できるようになる。
【根拠・出典】航空発動機(潤滑系統)
問23FADEC(Full Authority Digital Engine Control)の特徴として、適切でないものはどれか。
- 1エンジンの運転限界超過を自動的に防止する
- 2燃料流量、可変静翼、抽気弁等を統合制御する
- 3二重系(デュアル・チャネル)構成が一般的である
- ✔パイロットが機械的リンクで直接燃料流量を制御する
- 5自己診断(BITE)機能を持つ
解説:【正解】4「パイロットが機械的リンクで直接燃料流量を制御する」
【結論】FADECは全権限の電子制御であり、パイロットが機械的リンクで直接燃料流量を制御することはない。
【「全権限(Full Authority)」の意味】スロットル・レバー角は「推力の要求」を示す電気信号としてFADECに入力され、FADECが自ら判断して燃料流量、可変静翼の角度、抽気弁の開閉、始動シーケンスを統合的に制御する。人が直接燃料を増減させる経路は存在しない。この点が、機械式ガバナに電子制御を付加した旧来のスーパーバイザリ方式との決定的な違いである。
【FADECがもたらす利点】
・限界超過の自動防止…操縦士がスロットルを最大まで進めても、EGT、回転数、圧力の限界を超えないよう燃料流量が制限される。運転限界の管理が人からシステムへ移った。
・最適制御…外気条件と飛行フェーズに応じて燃費と排出を最適化する。フラット定格やデレーテッド離陸の実現も容易になる。
・整備性…故障コードと発生時の運転パラメータ(スナップショット)を記録するため、故障探究の起点となる。
【信頼性の確保】電子制御が失われればエンジンが制御不能となるため、二重チャネル構成(一方が故障しても他方が引き継ぐ)と自己診断(BITE)が標準である。電源も専用の永久磁石発電機から供給され、機体電源に依存しない。
【整備上の注意】故障コードはセンサや配線の異常を機器故障として示すことがある。コードだけで部品を交換せず、整備マニュアルのフォルト・アイソレーション手順に従って配線・コネクタを含めて切り分けることが、NFF(異常なし返却)を減らす鍵となる。
【根拠・出典】航空発動機(制御装置)
問24二軸ターボファン・エンジンにおけるN1およびN2の意味として正しいものはどれか。
- 1いずれも同一軸の回転数
- 2N1が排気温度、N2が圧力比
- 3N1が高圧系、N2が低圧系の回転数
- 4N1が燃料流量、N2が空気流量
- ✔N1が低圧系(ファン・低圧圧縮機・低圧タービン)、N2が高圧系の回転数
解説:【正解】5「N1が低圧系(ファン・低圧圧縮機・低圧タービン)、N2が高圧系の回転数」
【結論】N1は低圧系(ファン、低圧圧縮機、低圧タービン)、N2は高圧系(高圧圧縮機、高圧タービン)の回転数である。
【なぜ2軸に分けるのか】単一軸では、低回転域で前段の翼の迎え角が過大になりストールを起こしやすい。低圧系と高圧系を機械的に分離すると、それぞれが自然に適正な回転数で運転されるため、広い作動範囲でサージ・マージンを確保できる。3軸構成(中圧系を加える)を採るメーカもある。
【推力設定との関係】高バイパス比エンジンでは推力の大部分をファンが生むため、N1が推力設定の指標として用いられることが多い。EPR方式に比べ圧力プローブの閉塞の影響を受けにくいという利点がある。一方N2は、始動シーケンスの管理(規定N2に達してから燃料を投入する)やアクセサリ・ギヤボックスの駆動の基準となる。
【始動時に監視するもの】始動ではN2の立ち上がりを見ながら、規定回転数で燃料を投入し、着火後のEGTの上昇率と最高値を監視する。N2が上がらないままEGTだけ上昇すればハング・スタート、EGTが限界に迫ればホット・スタートであり、いずれも直ちに燃料を遮断する。
【整備上の着眼点】N1のみが上昇する(N2が追随しない)といった異常な組合せは、軸の損傷やセンサの不具合を示唆する。またコースト・ダウン時間が規定より短い場合は、ベアリングの損傷や内部の接触(ラビング)が疑われる。
【根拠・出典】航空発動機(ガスタービン)
電子装備品・電気計器全61問中 8問を掲載
問25大型機の主電源に用いられるIDG(Integrated Drive Generator)に関する記述として正しいものはどれか。
- 1直流28Vを直接発生する
- 2周波数はエンジン回転数に比例して変化する
- 3発電機と蓄電池が一体化された装置である
- 4整流器と変圧器が一体化された装置である
- ✔エンジン回転数の変動にかかわらず定周波(400Hz)の交流を発生する
解説:【正解】5「エンジン回転数の変動にかかわらず定周波(400Hz)の交流を発生する」
【結論】IDGは定速駆動装置(CSD)と交流発電機を一体化したもので、エンジン回転数が変動しても115V/400Hzの定周波三相交流を供給する。
【なぜ定周波が必要だったか】かつては変圧器、交流モータ、各種機器が特定の周波数を前提に設計されていたため、周波数の変動は機器の性能低下や誤動作を招いた。そこでエンジンのアクセサリ・ギヤボックスの回転が変動しても、CSD(油圧式の無段変速機構)により発電機の入力軸を一定回転に保つ方式が採られた。
【なぜ400Hzなのか】周波数が高いほど変圧器の鉄心断面積や電動機のサイズを小さくできるため、機器を大幅に軽量化できる。一方で高周波は線路のインダクタンスによる電圧降下が大きくなるため長距離配電に不向きだが、航空機のような短距離配電では問題にならない。
【VF方式への流れ】近年はCSDを廃し、発電機を直結して周波数の変動を許容する可変周波数(VF)方式が採用されている。CSDの複雑さ・重量・保守負担がなくなり信頼性が向上する一方、周波数に敏感な負荷には電子制御やインバータで対応する。「定周波を機械で作る」から「変動を電子で吸収する」への転換と捉えると理解しやすい。
【三相の電圧表記】相電圧115Vに対し線間電圧は115×√3≒200Vとなるため「115V/200V・400Hz三相」と表記される。
【根拠・出典】航空機電気装備
問26ジャイロの二大特性のうち、外力を加えた方向から回転方向へ90度ずれた位置に運動が現れる性質を何というか。
- ✔歳差(Precession)
- 2慣性(Inertia)
- 3偏位(Drift)
- 4章動(Nutation)
- 5剛性(Rigidity)
解説:【正解】1「歳差(Precession)」
【結論】歳差(プリセッション)は、回転するジャイロにトルクを加えたとき、その作用点から回転方向に90度進んだ位置に運動が現れる性質である。
【もう一つの特性・剛性】剛性(リジディティ)は、外力が働かない限りローターの回転軸が慣性空間に対して一定の方向を保つ性質である。この性質があるからこそ、姿勢指示器や定針儀は機体が動いても一定の基準を保持できる。
【二つの特性の使い分け】
・剛性を利用する計器…姿勢指示器(垂直ジャイロ)、定針儀(方位ジャイロ)。空間に固定された基準として使う。
・歳差を利用する計器…旋回計(レート・ジャイロ)。旋回による角速度をトルクとして受け、歳差により生じた傾きの大きさから角速度を読み取る。
【ドリフト(偏位)の理解】ジャイロの指示のずれには2種類ある。ベアリングの摩擦やガタ、ローターの不釣合いによる機械的な「リアル・ドリフト」と、地球の自転および機体の地表面上の移動により局所水平・局所子午線が変化することによる「アパレント・ドリフト」である。後者は計器の故障ではなく原理的なもので、定期的な修正(定針儀のコンパスへの合わせ込み)が必要となる。
【現代の技術】機械式ジャイロは可動部を持つため寿命と立ち上がり時間に制約がある。これを解決したのがリング・レーザ・ジャイロ(サニャック効果を利用)で、可動部がなく即時に使用できる。
【根拠・出典】航空計器
問27静圧孔が完全に閉塞した状態で航空機が上昇した場合、各計器の指示に関する記述として正しいものはどれか。
- 1昇降計は上昇を正しく指示する
- ✔高度計は閉塞時の高度を保持し、対気速度計は実際より高く指示する
- 3高度計は実際より高く指示する
- 4高度計は閉塞時の高度を保持し、対気速度計は実際より低く指示する
- 5すべての計器が正常に指示する
解説:【正解】2「高度計は閉塞時の高度を保持し、対気速度計は実際より高く指示する」
【結論】静圧孔が閉塞すると静圧は閉塞時の値に固定される。上昇時、高度計は閉塞時の高度のまま変化せず、対気速度計は実際より高く指示する。
【なぜそうなるかを式で理解する】対気速度計は「全圧 − 静圧」の差圧で作動する。上昇すれば実際の静圧は下がるが、静圧系統が閉塞していれば計器に導かれる静圧は地上付近の高い値のまま固定される。一方ピトー管からの全圧は正常に伝わる。結果として差圧が実際より大きくなり、速度が過大に指示される。降下時はこの逆で、実際より低く指示される。
【各計器の挙動をまとめる】静圧孔閉塞時
・高度計…閉塞時の高度を指示したまま変化しない。
・対気速度計…上昇で過大指示、降下で過小指示。
・昇降計…静圧変化がないため零を指示する。
【ピトー管閉塞との対比(重要)】ピトー管が閉塞した場合は挙動が異なる。全圧が固定されるため、上昇すると静圧の低下により差圧が拡大し、対気速度計は上昇に伴って増加を指示する(高度計に似た挙動を示す)。高度計と昇降計は静圧が正常なため正しく作動する。
【対処】小型機では代替静圧源への切替えが用意されているが、機内静圧は外部静圧と異なるため飛行規程に定める補正が必要となる。整備側では、ピトー・静圧系統のリークチェックと、静圧孔周辺の平滑性の確保が重要である。
【根拠・出典】航空計器(ピトー静圧系統)
問28ILSのローカライザおよびグライドスロープに使用される周波数帯の組み合わせとして正しいものはどれか。
- 1ローカライザ 118〜137MHz/グライドスロープ 329〜335MHz
- 2ローカライザ 75MHz/グライドスロープ 108〜112MHz
- ✔ローカライザ 108〜112MHz/グライドスロープ 329〜335MHz
- 4ローカライザ 329〜335MHz/グライドスロープ 108〜112MHz
- 5ローカライザ 962〜1213MHz/グライドスロープ 108〜112MHz
解説:【正解】3「ローカライザ 108〜112MHz/グライドスロープ 329〜335MHz」
【結論】ローカライザはVHF帯の108.10〜111.95MHz、グライドスロープはUHF帯の328.6〜335.4MHzを使用する。
【ペアリングの仕組み】両者は周波数がペアで対応づけられているため、操縦室でローカライザ周波数を設定すれば、グライドスロープ周波数は自動的に選択される。ローカライザは108.10〜111.95MHzのうち、小数点第1位が奇数のチャネル(108.10、108.15、108.30…)が割り当てられ、偶数側はVOR用である。この使い分けは覚えておくとよい。
【マーカビーコンとの区別】75MHzはマーカビーコン(アウター/ミドル/インナー)の周波数で、進入経路上の特定地点の通過を知らせるものである。ILSの周波数と混同しやすいので注意する。
【ILSが提供する情報】
・ローカライザ…滑走路中心線に対する左右のずれ(水平方向の誘導)。
・グライドスロープ…規定の進入角(通常約3度)に対する上下のずれ(垂直方向の誘導)。
・マーカビーコンまたはDME…滑走路末端までの距離情報。
【整備上の着眼点】アンテナの取付けとシール、同軸ケーブルとコネクタの状態、規定を超える塗装の重ね塗りの有無が受信性能に影響する。またILSは進入という最も重要な局面で使用されるため、機上装置の点検と精度確認は厳格に行われる。
【根拠・出典】航法無線装置
問29TCAS II の RA(Resolution Advisory)に関する記述として正しいものはどれか。
- 1地上管制官が発出する指示である
- 2水平方向および垂直方向の回避指示を与える
- 3水平方向の回避指示のみを与える
- ✔垂直方向の回避指示のみを与える
- 5自動操縦により自動的に回避操作を行う
解説:【正解】4「垂直方向の回避指示のみを与える」
【結論】TCAS IIのRA(Resolution Advisory)は垂直方向の回避指示のみを与える。水平方向の指示能力は持たない。
【なぜ垂直のみか】航空機は上昇・降下の応答が比較的速く、また相互の調整が単純であるためである。両機がTCAS IIを装備している場合、トランスポンダを介して相互に通信し、一方が上昇なら他方は降下、という相反しない指示が自動的に生成される(コーディネーション)。水平方向の回避を加えると調整が複雑になり、かえって危険を生じる。
【TCAS IとIIの違い】
・TCAS I…接近する機の存在を知らせるTA(Traffic Advisory)のみ。回避指示は出さない。
・TCAS II…TAに加えてRAを発出する。旅客機に義務づけられる。
【運用上の重要事項】RAが発出された場合、管制指示よりRAに従うことが原則とされている。これは過去に、管制指示とRAが矛盾し、一方の機が管制に従い他方がRAに従った結果、空中衝突に至った事故の教訓による。
【整備上の着眼点】TCASは方向性アンテナの複数素子の位相差から相手機の方位を算定する。したがって取付けの向きと、各素子へのケーブルの長さ・位相整合が正しいことが不可欠で、ケーブルを規定外のものに交換すると方位表示が誤る。またトランスポンダ(特にモードS)との連携が前提であるため、両者を一体のシステムとして扱う。
【根拠・出典】衝突防止装置
問30ニッケル・カドミウム蓄電池のサーマル・ランナウェイに関する記述として誤っているものはどれか。
- 1定電圧充電方式で発生しやすい
- 2電解液の噴出や電池の破損に至るおそれがある
- 3温度上昇に伴い内部抵抗が低下し、充電電流がさらに増加することで進行する
- 4セル間の絶縁不良やセパレータの劣化が誘因となる
- ✔電池温度が低いほど発生しやすい
解説:【正解】5「電池温度が低いほど発生しやすい」
【結論】サーマル・ランナウェイは高温状態ほど発生しやすい。「温度が低いほど発生しやすい」は誤りである。
【暴走のメカニズム(正帰還)】温度上昇 → 内部抵抗の低下 → 充電電流の増加 → さらなる発熱 → さらなる温度上昇、という正のフィードバックにより暴走的に進行する。いったん始まると自力では止まらず、電解液の噴出、セルの破損、火災に至るおそれがある。
【定電圧充電で起きやすい理由】定電圧充電では、内部抵抗が下がった分だけ電流が青天井に増えてしまう。定電流充電であれば電流が制限されるためこの暴走は起きにくい。ニッケル・カドミウム電池が定電圧充電で運用される機体では、この危険が構造的に存在する。
【誘因】セル間の絶縁不良、セパレータの劣化、セル間の容量のばらつき、周囲温度の高さ、充電回路の異常。
【防止策】電池温度の監視回路と過熱警報、温度上昇時の充電遮断、規定周期での容量点検とセルの均等化(ディープ・サイクル)、セル間の絶縁と清浄の維持。
【鉛蓄電池との比較】鉛蓄電池は電解液が硫酸で比重により充電状態を判定できるのに対し、ニッケル・カドミウム電池はアルカリ性の電解液で比重が充電状態を示さない。また両者の電解液は相互に有害なため、保管場所と器具を分離する必要がある。この違いも整備上の基本知識である。
【根拠・出典】航空機電気装備(蓄電池)
問31交流発電機を並列運転する際に必要な条件として、適切でないものはどれか。
- 1電圧が等しいこと
- 2位相が一致していること
- 3周波数が等しいこと
- 4相回転が一致していること
- ✔出力電流が等しいこと
解説:【正解】5「出力電流が等しいこと」
【結論】交流発電機の並列運転(同期)に必要なのは、電圧・周波数・位相・相回転の一致である。出力電流の一致は条件ではない。
【なぜこの4つなのか】
・電圧が異なると、電位差により無効電力の循環電流が流れ、発電機が過熱する。
・周波数が異なると、位相が刻々とずれ続けるため安定した並列運転ができない。
・位相がずれた状態で接続すると、瞬間的に極めて大きな電流が流れ、発電機と駆動系に機械的な衝撃を与えて損傷する。
・相回転(A-B-Cの順序)が逆だと、三相モータが逆転するなど系統全体に深刻な影響が出る。
【出力電流はなぜ条件でないか】出力電流は、同期した後に負荷がどう分担されるかの結果として決まる量である。並列運転の「前提条件」ではなく「結果」であるため、同期の条件には含まれない。ただし同期後は、実負荷分担(Real Load Sharing)と無効負荷分担(Reactive Load Sharing)の回路により、各発電機の負担が均等化されるよう制御される。
【航空機での実際】多くの旅客機では発電機を並列運転せず、各発電機がそれぞれのバスを受け持つ「スプリット・バス」方式を採る。これは、一つの発電機の異常が系統全体に波及することを防ぐためである。バス・タイのロジックは、同期していない電源が同一バスに同時接続されないよう厳格に構成されており、切替時には一瞬の無電圧(ブレーク)を許容する設計が一般的である。
【根拠・出典】航空機電気装備(交流電源)
問32TR(Transformer Rectifier Unit)の機能として正しいものはどれか。
- ✔交流を変圧・整流して直流を供給する
- 2電力を蓄える
- 3交流の周波数を変換する
- 4直流を交流に変換する
- 5直流電圧を昇圧する
解説:【正解】1「交流を変圧・整流して直流を供給する」
【結論】TR(変圧整流器)は、交流を変圧器で降圧し、整流器で直流に変換して直流バスへ供給する装置である。
【方向を間違えないために】
・TR…交流 → 直流。Transformer(変圧器)+Rectifier(整流器)という名称そのものが機能を表している。
・インバータ…直流 → 交流。主電源喪失時に、バッテリーからの直流で交流を必要とする重要機器に給電する。
名称と方向をセットで覚えると混同しない。
【航空機の電源系統の全体像】
エンジン駆動の発電機(IDG等)→ 115V/400Hz交流 → 交流バス
交流バス → TR → 28V直流 → 直流バス
直流バス ⇄ バッテリー(充放電)
バッテリー → スタティック・インバータ → 非常用交流
という流れで、交流と直流が相互に変換されながら各負荷に供給される。
【冗長性】TRは通常複数装備され、単一のTRが故障しても他のTRやバッテリーがその直流バスをカバーする。エッセンシャル・バスには、飛行の安全に不可欠な負荷が接続され、電源喪失時にも優先的に給電が維持されるよう電源切替が構成される。優先度の低い負荷はロード・シェディングにより切り離される。
【整備上の着眼点】TRは発熱するため冷却が必要である。冷却ファンの作動、通気経路の閉塞、フィルタの目詰まりは温度上昇と寿命低下を招く。断続的な不具合として現れることもあるため、冷却系統の点検は見落とせない。
【根拠・出典】航空機電気装備