分野別問題(解説つき)

組織行動学|分野別 問題インデックス

最終更新:2026年9月3日

組織行動学は個人・集団・組織システムの3レベル・27分野から出題されます。分野別に代表問題を掲載しています。全800問をまとめて解くならトレーナーへ進んでください。

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基礎・研究法全12問中 4問を掲載

問1
組織行動学(Organizational Behavior)が扱う3つの分析レベルの組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
  • A産業レベル・企業レベル・国家レベル
  • B経営者レベル・管理者レベル・従業員レベル
  • C戦略レベル・戦術レベル・作業レベル
  • ✔個人レベル・集団レベル・組織システムレベル
  • E短期レベル・中期レベル・長期レベル
解説:【正解】D「個人レベル・集団レベル・組織システムレベル」 正解はD。組織行動学は「個人(individual)」「集団(group)」「組織システム(organizational system)」という3層のレベルで人間行動を分析する学問であり、この3層構造はロビンスのテキストをはじめ標準的な体系として広く共有されている。個人レベルではパーソナリティ、知覚、モチベーション、態度などを、集団レベルではチーム、リーダーシップ、コンフリクト、コミュニケーションなどを、組織システムレベルでは組織構造、組織文化、人的資源施策、組織変革などを扱う。この3層は独立ではなく積み上げ式(インプットが上位レベルへ影響する)に理解される点が重要である。 誤答の理由:Aは産業組織論やマクロ経済学の分析単位であり、人間行動そのものを扱うOBの枠組みではない。Cは戦略論・オペレーション管理の階層区分であって、行動の分析レベルではない。Bは組織内の役職階層の区分にすぎず、たとえば「集団」という単位が抜け落ちるためOBの分析枠組みとしては不完全である。Eは時間軸の区分であり、分析レベルの概念とは異なる。 補足:OBは心理学(個人)、社会心理学・社会学(集団・組織)、人類学(文化)、政治学(パワー)などを統合した学際的な応用科学であり、この学際性が3層構造に対応している。
問2
1920年代から1930年代にホーソン工場で行われた一連の研究(ホーソン研究)から導かれた最も重要な示唆はどれか。
  • A照明などの物理的作業条件こそが生産性を決定する唯一の要因である
  • B作業の標準化と時間研究によって最適な作業方法を科学的に決定できる
  • ✔従業員の生産性は社会的要因や、観察されているという意識、集団規範に強く影響される
  • D賃金の金額を高めればモチベーションは比例して無限に高まる
  • E経営者は従業員の感情を考慮せず合理的な命令系統のみを設計すべきである
解説:【正解】C「従業員の生産性は社会的要因や、観察されているという意識、集団規範に強く影響される」 正解はC。ホーソン研究(ウェスタン・エレクトリック社ホーソン工場、メイヨーらが関与)は当初、照明の明るさと生産性の関係を検証する物理的条件の実験として始まったが、照明を明るくしても暗くしても生産性が上がるという予想外の結果が得られた。そこから、注目され観察されているという意識(いわゆるホーソン効果)や、監督者との人間関係、非公式集団が共有する生産量の規範などの社会的・心理的要因が生産性を左右するという結論が導かれた。バンク配線室観察では、働きすぎる者も怠ける者も仲間から制裁を受け、集団規範が個人の産出量を統制していることが観察された。この研究は人間関係論(Human Relations Movement)の起点となり、OBという学問領域が独立していく契機となった。 誤答の理由:Aは実験当初の仮説であり、まさにその仮説が否定されたのが本研究の意義である。Bはテイラーの科学的管理法の主張であり、ホーソン研究はむしろその機械的人間観の限界を示した。Dはハーズバーグ以降の研究でも支持されない単純な仮定であり、ホーソン研究の含意でもない。Eは古典的管理論(ファヨールら)の発想であり、ホーソン研究の結論と正反対である。 補足:近年はホーソン研究の実験デザインの厳密性やデータ解釈に批判もあるが、「人は社会的存在である」という視点をマネジメントに導入した歴史的意義は依然として大きい。
問3
エビデンスに基づく経営(Evidence-Based Management:EBM)の考え方として、最も適切な説明はどれか。
  • A経営者の長年の直観と経験のみを判断根拠とすること
  • ✔最良の入手可能な科学的知見を、実務判断や組織内データと統合して意思決定すること
  • C流行している経営手法をいち早く導入し他社に先行すること
  • Dすべての意思決定を統計的有意性のみに基づいて自動的に決定すること
  • E従業員アンケートの結果に必ず従って方針を決定すること
解説:【正解】B「最良の入手可能な科学的知見を、実務判断や組織内データと統合して意思決定すること」 正解はB。EBMは医療分野のEBM(evidence-based medicine)を経営に応用した考え方で、(1)最良の入手可能な科学的エビデンス、(2)組織内部のデータや事実、(3)実務家の専門的判断、(4)ステークホルダーの価値や関心、という複数の情報源を批判的に吟味し統合して意思決定することを指す。単に研究論文に従うのではなく、直観や慣行を批判的に検証し、根拠の質を評価する態度が核心である。 誤答の理由:Aは直観経営そのものであり、EBMが克服しようとする対象である。直観は完全に否定されるわけではないが、単独の根拠とすることはEBMの立場ではない。Cはいわゆるマネジメント・ファッションへの追随であり、エビデンスの吟味を欠くためEBMと相反する。Dは統計的有意性を過信する誤りで、実務的重要性(効果量)や文脈適合性を無視している点で不適切である。Eは組織内データの一つの源に過ぎず、他のエビデンスとの統合を欠くため単独では根拠として不十分である。 補足:EBMの実務的な障壁として、経営者が自組織を特殊とみなす傾向、研究知見へのアクセスの困難、短期的成果への圧力などが指摘されている。
問4
ある研究で「職務満足が高い部署ほど離職率が低い」という相関が観察された。この結果の解釈として最も適切なものはどれか。
  • A職務満足が離職を減らすという因果関係が証明された
  • B離職率の低さが職務満足を高めるという因果関係が証明された
  • ✔相関関係は観察されたが、因果の方向や第三変数の影響は排除できない
  • D相関係数が有意であれば必ず因果関係が存在する
  • E相関が観察された以上、実験研究は不要である
解説:【正解】C「相関関係は観察されたが、因果の方向や第三変数の影響は排除できない」 正解はC。相関は2変数が共変することを示すにすぎず、因果関係の3条件(共変関係、時間的先行、他の説明要因の排除)のうち共変関係しか満たしていない。したがって、職務満足が離職を減らす可能性、離職率の低い安定した職場が満足を高める可能性(逆因果)、さらに「有能な上司の存在」「労働市場の逼迫」「良好な報酬水準」といった第三変数が両者を同時に規定している可能性(擬似相関)のいずれも残る。 誤答の理由:AとBはいずれも横断的な相関データから因果を断定しており、時間的先行と交絡要因の排除という条件を欠く。Dは統計的有意性の意味を誤解しており、有意性は「偶然では説明しにくい」ことを示すにすぎず、因果を保証しない。Eは逆で、因果推論のためにこそ実験や縦断研究、準実験デザインが必要となる。 補足:因果に接近する方法としては、無作為割り当てを伴う実験(内的妥当性が高い)、時間差をおいて測定する縦断研究、操作変数法や差の差分析などの計量的手法がある。ただし実験は現場の現実性(外的妥当性)が下がりやすいというトレードオフがある。

パーソナリティ全20問中 4問を掲載

問5
ビッグファイブ(Big Five)モデルの5因子に含まれないものはどれか。
  • A外向性(Extraversion)
  • B協調性(Agreeableness)
  • C誠実性(Conscientiousness)
  • ✔知能(General Mental Ability)
  • E経験への開放性(Openness to Experience)
解説:【正解】D「知能(General Mental Ability)」 正解はD。ビッグファイブは外向性、協調性、誠実性、情緒安定性(またはその逆極である神経症傾向)、経験への開放性の5因子から構成される。知能(一般知的能力、GMA)は認知能力の指標であり、パーソナリティ特性ではなく能力の次元に属するため、ビッグファイブには含まれない。 誤答の理由:A・B・C・Eはいずれもビッグファイブの正規の因子である。なお選択肢に「情緒安定性」が含まれていないことに気づけば、消去法でも解答は可能だが、Dが能力概念であることを見抜くのが本質的な判断である。 補足:知能とパーソナリティはいずれも職務業績を予測するが、独立した予測力を持つ。採用選抜研究では、一般知的能力が最も強力な単独予測因子であり、誠実性が最も強力なパーソナリティ予測因子とされ、両者の組み合わせが高い予測妥当性を示すことが知られている。
問6
ビッグファイブのうち、職種を問わず職務業績との関連が最も一貫して高いとされる因子はどれか。
  • A外向性
  • B協調性
  • ✔誠実性
  • D経験への開放性
  • E情緒安定性
解説:【正解】C「誠実性」 正解はC。誠実性(conscientiousness)は、勤勉さ、計画性、責任感、達成志向、粘り強さを含む特性であり、職種や産業を越えて職務業績と最も一貫した正の関連を示すことがメタ分析で繰り返し確認されている。誠実性の高い人物は知識獲得への努力を惜しまず、目標設定と自己統制に優れ、逸脱行動が少ないため、幅広い職務で有効に機能する。 誤答の理由:Aの外向性は営業職や管理職など対人接触の多い職務で有効だが、研究職や単独作業では予測力が下がり、職種依存性が高い。Bの協調性はチームワークや顧客対応、組織市民行動と関連するが、交渉場面では過度の譲歩につながるなど職務業績全般への予測力は誠実性ほど強くない。Dの開放性は訓練成果や創造性、変化適応と関連するが、定型業務の業績との関連は限定的である。Eの情緒安定性はストレス耐性や職務満足と関連し、業績とも正の関連を持つが、その効果量は一般に誠実性より小さい。 補足:誠実性は極端に高い場合、完璧主義や柔軟性の欠如、変化への抵抗につながる可能性も指摘されており、非線形な関係の存在を示唆する研究もある。
問7
MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)が人材選抜の道具として推奨されない主な理由として、最も適切なものはどれか。
  • A実施に長時間を要し費用が高いため
  • B日本語版が存在しないため
  • ✔再検査信頼性が低く、二分法的な類型化に無理があり、職務業績の予測妥当性が乏しいため
  • D性格特性を測定していないため
  • E回答者が結果を理解できないため
解説:【正解】C「再検査信頼性が低く、二分法的な類型化に無理があり、職務業績の予測妥当性が乏しいため」 正解はC。MBTIはユングの類型論に基づき、外向/内向、感覚/直観、思考/感情、判断/知覚の4指標で16タイプに分類する。しかし、(1)同一人物が数週間後の再検査で別タイプに分類される割合が高く再検査信頼性に問題がある、(2)実際の得点分布は二峰性ではなく連続的であるにもかかわらず中央で二分するため、境界付近の微差が別タイプを生む、(3)職務業績との予測妥当性を支持する証拠が乏しい、という理由から、選抜や配置の意思決定への利用は研究者から一貫して否定されている。 誤答の理由:Aは実務上の論点であって理論的な妥当性の問題ではない。Bは事実に反し、日本語版は広く流通している。Dは誤りで、MBTIは性格傾向を測定しようとしてはいる(ただし測定の質に問題がある)。Eも誤りで、むしろ結果が分かりやすく肯定的に記述されるため受け入れられやすく、これがバーナム効果的な人気の一因とも指摘されている。 補足:MBTIは自己理解の促進や対話のきっかけとしての研修用途では一定の価値が認められることもあるが、採用・昇進の判断根拠にしてはならない。選抜にはビッグファイブに基づく尺度や構造化面接、ワークサンプルの方が妥当性が高い。
問8
コア自己評価(Core Self-Evaluation:CSE)を構成する4つの要素の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
  • ✔自尊心・一般的自己効力感・統制の所在・情緒安定性
  • B外向性・協調性・誠実性・開放性
  • C達成欲求・権力欲求・親和欲求・回避欲求
  • D自律性・有能感・関係性・目的意識
  • E認知・感情・行動・意図
解説:【正解】A「自尊心・一般的自己効力感・統制の所在・情緒安定性」 正解はA。コア自己評価はジャッジらが提唱した上位概念で、自尊心(self-esteem)、一般的自己効力感(generalized self-efficacy)、統制の所在(locus of control:内的統制傾向)、情緒安定性(神経症傾向の低さ)という4つの下位特性が共通因子を持つという知見に基づく。CSEが高い人は自分を有能で価値があり、環境を統制できると評価しており、職務満足、職務業績、目標追求の持続性、キャリア成功と正の関連を示す。 誤答の理由:Bはビッグファイブそのものであり、CSEとは概念的に重なるが同一ではない(CSEには情緒安定性のみが含まれる)。Cはマクレランドの欲求理論の要素である。Dはデシとライアンの自己決定理論の基本的心理欲求(自律性・有能感・関係性)に無関係な要素を加えたものである。Eは態度の3成分モデルに1つ加えた誤りの並びである。 補足:CSEが極端に高い場合はナルシシズムや過信につながり、フィードバックの受容を妨げる可能性も指摘されている。CSEは職務満足への影響が、職務内容そのものの認知を肯定的にゆがめる経路と、実際により良い職務を選択・獲得する経路の両方で説明される。

価値観・態度全21問中 4問を掲載

問9
ロキーチ(Rokeach)の価値観調査における「終極価値」と「道具価値」の説明として最も適切なものはどれか。
  • ✔終極価値は達成したい望ましい最終状態、道具価値はそれを達成するための望ましい行動様式である
  • B終極価値は行動様式、道具価値は最終状態である
  • C終極価値は組織の価値観、道具価値は個人の価値観である
  • D終極価値は短期的目標、道具価値は長期的目標である
  • E終極価値は経済的価値、道具価値は精神的価値である
解説:【正解】A「終極価値は達成したい望ましい最終状態、道具価値はそれを達成するための望ましい行動様式である」 正解はA。ロキーチ価値観調査(RVS)は18項目ずつの2組から成る。終極価値(terminal values)は「快適な生活」「家族の安全」「自由」「自己尊重」など、生涯を通じて達成したい望ましい最終状態を指す。道具価値(instrumental values)は「誠実」「責任感」「野心的」「有能」など、終極価値を達成するために望ましいとされる行動様式や手段を指す。 誤答の理由:Bは両者の定義が逆である。Cは分析レベルの混同で、RVSはいずれも個人の価値観を測る。Dは時間軸の話であって定義ではない。Eは価値の内容分類であり、RVSの区分ではない。 補足:価値観は行動の背後にある「べき」の判断を含み、比較的安定していて態度よりも根本的であるとされる。組織と個人の価値観の一致(person-organization fit)は、職務満足、組織コミットメント、定着率を高めることが多くの研究で示されている。
問10
ホフステードの文化次元における「権力格差(power distance)」が大きい社会の特徴として最も適切なものはどれか。
  • ✔組織内の権力の不平等な分配を、社会の成員が受容し当然視する
  • B意思決定が徹底して分権的に行われ、部下が上司に自由に異論を述べる
  • C性別役割分担が存在せず、成果より生活の質が重視される
  • D不確実な状況を歓迎し、規則を最小限にとどめる
  • E個人の目標が集団の目標に常に優先される
解説:【正解】A「組織内の権力の不平等な分配を、社会の成員が受容し当然視する」 正解はA。権力格差とは、その社会の成員が権力の不平等な分配をどの程度受容しているかを示す次元である。権力格差が大きい社会では、階層が正当なものとして受け入れられ、上司と部下の心理的距離が大きく、集権的意思決定や指示的リーダーシップが機能しやすい。 誤答の理由:Bは権力格差が小さい社会の特徴である。Cは女性性(feminity)が高い社会の特徴であり、男性性/女性性の次元に属する。Dは不確実性回避が弱い社会の特徴である。Eは個人主義が強い社会の特徴である。 補足:ホフステードの6次元は権力格差、個人主義/集団主義、男性性/女性性、不確実性回避、長期志向/短期志向、放縦/抑制である。この枠組みは影響力が大きい一方で、国を分析単位とすること、一企業(IBM)のデータに基づくこと、文化の内部多様性を無視することなどの批判がある。個人レベルの分析にそのまま適用する誤り(生態学的誤謬)に注意が必要である。
問11
GLOBE研究がホフステードの枠組みと比較して持つ特徴として、最も適切なものはどれか。
  • A単一企業の従業員データのみを用いた点
  • Bリーダーシップを分析対象から除外した点
  • C文化次元を2つに集約した点
  • ✔文化の「実践(現状)」と「価値(あるべき姿)」を区別して測定した点
  • E時系列データを用いず横断的分析を放棄した点
解説:【正解】D「文化の「実践(現状)」と「価値(あるべき姿)」を区別して測定した点」 正解はD。GLOBE(Global Leadership and Organizational Behavior Effectiveness)研究は62の社会・約1万7千人の管理者を対象とした大規模国際比較研究であり、9つの文化次元それぞれについて「実際にそうである(As Is:実践)」と「そうあるべきだ(Should Be:価値)」を分けて測定した点が方法論上の大きな特徴である。この区別により、たとえば権力格差が現状は大きいが、あるべき姿としてはより小さくあってほしいと望まれている、といったギャップの把握が可能になった。 誤答の理由:Aはホフステードの初期研究(IBM社データ)に当てはまる特徴であり、GLOBEは多数の産業・組織を対象としている。Cは誤りで、GLOBEは権力格差、不確実性回避、人道志向、集団主義I・II、自己主張性、ジェンダー平等主義、将来志向、業績志向の9次元を提示した。Bは正反対で、GLOBEの中心的関心はまさに文化とリーダーシップの関係にあり、「暗黙のリーダーシップ理論」に基づく文化横断的なリーダー像(カリスマ的/価値基盤型リーダーシップは多くの文化で望ましいとされるなど)を明らかにした。Eは研究デザインの記述として誤りである。 補足:GLOBEとホフステードは次元名が似ていても操作的定義が異なるため、両者の数値を単純に比較することはできない点に注意が必要である。
問12
態度(attitude)を構成する3つの成分として最も適切な組み合わせはどれか。
  • ✔認知的成分・感情的成分・行動的成分
  • B動機的成分・知覚的成分・記憶的成分
  • C内発的成分・外発的成分・中立的成分
  • D個人的成分・集団的成分・組織的成分
  • E生理的成分・心理的成分・社会的成分
解説:【正解】A「認知的成分・感情的成分・行動的成分」 正解はA。態度の3成分モデルでは、認知的成分(信念・評価:「上司は不当な昇進判断をした」)、感情的成分(好悪の感情:「私は上司が嫌いだ」)、行動的成分(行動意図:「転職活動をしよう」)の3つが区別される。認知が感情を導き、感情が行動意図を生むという流れで説明されることが多い。 誤答の理由:B・C・D・Eはいずれも態度研究の標準的な3成分ではなく、他の概念や分析レベルを混ぜた誤りである。特にCの内発/外発は動機づけの区分であり、態度の構造とは別である。 補足:3成分のうち感情的成分が態度の中核であり行動を最も強く規定するという知見や、態度と行動の一致は、態度の重要性・具体性・接近可能性、社会的圧力の有無、直接経験の有無などの調整要因に左右されるという知見が重要である。

知覚・意思決定全30問中 4問を掲載

問13
「人は自分の興味、経験、態度に基づいて対象を選択的に取り込む」という知覚の歪みを何と呼ぶか。
  • Aハロー効果
  • B投影
  • C対比効果
  • ✔選択的知覚
  • Eステレオタイプ
解説:【正解】D「選択的知覚」 正解はD。選択的知覚(selective perception)とは、あらゆる刺激を処理できないために、観察者の興味、背景、経験、態度に基づいて特定の情報だけを選び取って解釈する傾向である。営業出身の管理者が問題を営業の問題として捉え、経理出身者が同じ問題を財務の問題として捉えるといった現象がその例である。 誤答の理由:Aのハロー効果は、単一の特性(外見、学歴など)から全体的な印象を形成する歪みである。Cの対比効果は、直前に接した他者との比較で評価がゆがむ現象である。Bの投影は、自分自身の特性を他者に帰属させる傾向である。Eのステレオタイプは、所属集団への一般化された判断に基づいて個人を評価する歪みである。 補足:選択的知覚は情報処理を効率化する適応的機能を持つ一方、結論の飛躍を招く。集団の多様性やクロスファンクショナルな議論は、この歪みを相互補完的に是正する手段となる。
問14
ケリーの帰属理論において、ある従業員の行動を内的要因(本人の性質)に帰属しやすいのはどのような場合か。
  • A合意性が高く、弁別性が高く、一貫性が低い場合
  • ✔合意性が低く、弁別性が低く、一貫性が高い場合
  • C合意性が高く、弁別性が低く、一貫性が低い場合
  • D合意性が低く、弁別性が高く、一貫性が高い場合
  • E合意性・弁別性・一貫性のすべてが高い場合
解説:【正解】B「合意性が低く、弁別性が低く、一貫性が高い場合」 正解はB。ケリーの共変モデルでは、3つの情報に基づいて内的帰属か外的帰属かが決まる。(1)合意性(consensus):同じ状況で他の人も同じ行動をとるか。他の人はそうしない(低い)なら本人固有の要因が疑われる。(2)弁別性(distinctiveness):他の状況では違う行動をとるか。どの状況でも同じ(低い)なら本人の性質が疑われる。(3)一貫性(consistency):時間を通じて同じ行動が繰り返されるか。いつも同じ(高い)なら本人の性質が疑われる。したがって、合意性が低く、弁別性が低く、一貫性が高いときに内的帰属がなされやすい。 誤答の理由:Aは合意性が高く弁別性が高く一貫性が低いという、典型的な外的帰属のパターンである(他の人も同じで、その場面だけで、たまたま起きた)。C・D・Eはいずれも3条件の組み合わせが内的帰属の条件を満たしていない。特にDは一貫性は高いが弁別性が高いため、状況特有の要因が示唆される。 補足:たとえば遅刻の場合、「他の社員は遅刻していない(合意性低)」「その社員はあらゆる約束に遅れる(弁別性低)」「毎回遅刻している(一貫性高)」なら本人の性質に帰属される。逆に全員が遅刻し、今日だけで、普段は時間通りなら、交通障害という外的要因に帰属される。
問15
他者の行動を説明する際に、状況要因を過小評価し、内的・個人的要因を過大評価する傾向を何と呼ぶか。
  • A自己奉仕バイアス
  • ✔基本的帰属錯誤
  • C後知恵バイアス
  • D確証バイアス
  • E利用可能性ヒューリスティック
解説:【正解】B「基本的帰属錯誤」 正解はB。基本的帰属錯誤(fundamental attribution error)は、他者の行動を観察する際に、状況的制約(過重な業務量、不十分な資源、システムの不備)を軽視し、その人の能力や性格に原因を求めすぎる傾向を指す。組織では、業績不振の原因を担当者の努力不足に帰属し、プロセスや資源配分の問題を見逃すという形で現れる。 誤答の理由:Aの自己奉仕バイアスは、自分の成功は内的要因に、失敗は外的要因に帰属する傾向であり、対象が自分自身である点が異なる。Cの後知恵バイアスは、結果を知った後で「最初から予想できた」と考える傾向。Dの確証バイアスは、自分の信念を支持する情報を選択的に収集・解釈する傾向。Eの利用可能性ヒューリスティックは、思い出しやすい情報に基づいて確率を判断する傾向である。 補足:この錯誤は行為者-観察者非対称性としても現れ、自分の行動は状況で説明し、他者の行動は性格で説明する。文化差も報告されており、集団主義文化では相対的に状況要因への帰属が強いとされる。
問16
人事評価において、評価者が「面接直前に非常に優秀な候補者に会ったため、次の平均的な候補者を実際より低く評価してしまう」現象を何と呼ぶか。
  • Aハロー効果
  • B寛大化傾向
  • ✔対比効果
  • D中心化傾向
  • E近接誤差
解説:【正解】C「対比効果」 正解はC。対比効果(contrast effect)とは、ある対象の評価が、直前に評価した他の対象との比較によって歪められる現象である。絶対的な基準ではなく直近の比較対象が参照点となるため、優秀な候補者の直後は評価が厳しくなり、劣った候補者の直後は評価が甘くなる。 誤答の理由:Aのハロー効果は単一の目立つ特性から全体印象を推論する歪みである。Bの寛大化傾向は全員を一律に高く評価する傾向、Dの中心化傾向は全員を中央付近に評価する傾向で、いずれも評価分布の偏りの問題であり比較対象による歪みではない。Eの近接誤差は、評価期間の直近の出来事に評価が引きずられる(直近効果)ことを指し、時間的な近さの問題である。 補足:対比効果への対処として、評価前に明確な行動基準(BARS:行動基準評価尺度)を設定すること、候補者ごとに独立して基準に照らして採点すること、複数評価者による評価と評価者訓練などが有効とされる。

モチベーション全68問中 4問を掲載

問17
マズローの欲求段階説において、下位から上位への順序として正しいものはどれか。
  • ✔生理的欲求 → 安全欲求 → 社会的欲求 → 承認欲求 → 自己実現欲求
  • B安全欲求 → 生理的欲求 → 承認欲求 → 社会的欲求 → 自己実現欲求
  • C社会的欲求 → 生理的欲求 → 安全欲求 → 自己実現欲求 → 承認欲求
  • D生理的欲求 → 社会的欲求 → 安全欲求 → 自己実現欲求 → 承認欲求
  • E承認欲求 → 自己実現欲求 → 社会的欲求 → 安全欲求 → 生理的欲求
解説:【正解】A「生理的欲求 → 安全欲求 → 社会的欲求 → 承認欲求 → 自己実現欲求」 正解はA。マズローは欲求を、生理的欲求(食物、水、睡眠)、安全欲求(身体的・経済的安全、雇用の安定)、社会的欲求(所属、愛情、友情)、承認欲求(自尊心、地位、他者からの尊敬)、自己実現欲求(自己の潜在能力の実現、成長)の5段階に階層化し、下位欲求が実質的に充足されると次の段階が優勢な動機となると主張した。下位4つを欠乏欲求、最上位を成長欲求と区別する。 誤答の理由:B・C・D・Eはいずれも順序が入れ替わっている。特にDのように社会的欲求と安全欲求を逆にする誤りが多いので注意が必要である。 補足:直観的な魅力ゆえに実務で広く普及したが、厳密な段階的移行や5階層の存在を支持する実証的証拠は乏しく、研究上の支持は限定的である。この批判に応えて欲求を3つに整理し、階層の逆行(フラストレーション-退行)を認めたのがアルダファのERG理論である。
問18
アルダファのERG理論がマズローの理論と異なる主要な点として、最も適切なものはどれか。
  • A欲求を7段階に細分化した点
  • B生理的欲求を最上位に置いた点
  • C欲求の概念を完全に否定した点
  • ✔複数の欲求が同時に活性化しうること、および上位欲求の挫折が下位欲求への退行を生むことを認めた点
  • E欲求ではなく強化に着目した点
解説:【正解】D「複数の欲求が同時に活性化しうること、および上位欲求の挫折が下位欲求への退行を生むことを認めた点」 正解はD。ERG理論は欲求を存在(Existence:生理的・安全欲求に相当)、関係(Relatedness:社会的欲求と承認欲求の対人的側面)、成長(Growth:承認欲求の内的側面と自己実現)の3つに整理した。マズローとの主要な相違は、(1)複数の欲求が同時に動機として作用しうる、(2)厳格な階層的順序を前提としない、(3)上位欲求の充足が阻害されると下位欲求への欲求が強まる(フラストレーション-退行仮説)、という点である。 誤答の理由:Aは細分化ではなく統合(5→3)であり誤り。Cは誤りで、ERGはあくまで欲求理論の一つである。Bは階層の記述として誤り。Eは強化理論(スキナー)の説明であり、内容理論であるERGとは異なる。 補足:フラストレーション-退行仮説は実務的示唆に富む。たとえば成長機会が閉ざされた職場では、従業員が給与や福利厚生(存在欲求)や人間関係(関係欲求)への要求を強める形で不満が表出しうる、という説明ができる。
問19
ハーズバーグの二要因理論において「衛生要因(hygiene factors)」に分類されるものとして、最も適切な組み合わせはどれか。
  • A達成・承認・仕事そのもの
  • B責任・昇進・成長
  • ✔会社の方針と管理・監督・給与・作業条件・対人関係
  • D自己実現・創造性・挑戦
  • E目標設定・フィードバック・自己効力感
解説:【正解】C「会社の方針と管理・監督・給与・作業条件・対人関係」 正解はC。ハーズバーグは、職務満足をもたらす要因(動機づけ要因)と、職務不満足をもたらす要因(衛生要因)は別々の連続体上にあると主張した。衛生要因は職務の文脈(外的環境)に関わるもので、会社の方針と管理、監督のあり方、給与、作業条件、対人関係、職務保障などが該当する。これらが不十分だと不満が生じるが、十分に整備しても「不満がない」状態になるだけで、積極的な満足やモチベーションは生じないとされる。 誤答の理由:A・B・Dはいずれも職務内容そのものに関わる動機づけ要因(達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進、成長)であり、衛生要因ではない。Eは目標設定理論や社会的認知理論の概念であり、二要因理論の枠組みではない。 補足:この理論は、批判的事象法(critical incident technique)という調査方法に依存しており、成功は自分の手柄、失敗は環境のせいとする自己奉仕バイアスが結果を生んだ可能性が指摘されている。とはいえ、職務充実(job enrichment)という職務設計の実務を生み出した点で影響は大きい。「給与は衛生要因である」という主張も、報酬が承認の象徴として機能する場合には動機づけ要因たりうるとして議論が続いている。
問20
マクレランドの欲求理論において、高い達成欲求(nAch)を持つ人物の特徴として最も適切なものはどれか。
  • A極めて容易な課題を好み、確実な成功を求める
  • B極めて困難で成功確率が非常に低い課題を好む
  • ✔中程度の困難さ(成功確率50%程度)の課題を好み、迅速なフィードバックを求める
  • D他者に影響力を及ぼすことを何より重視する
  • E良好な人間関係の維持を最優先する
解説:【正解】C「中程度の困難さ(成功確率50%程度)の課題を好み、迅速なフィードバックを求める」 正解はC。高達成欲求者は、個人的な責任、迅速で明確な業績フィードバック、中程度のリスクを備えた状況で最も強く動機づけられる。容易すぎる課題では達成感が得られず、困難すぎる課題では成果が運に左右され自らの能力の証明にならないため、成功確率が5割程度の課題を好むとされる。 誤答の理由:AとBはいずれも達成欲求の中核である「自らの努力によって成果を出せる」感覚を得にくいため、高達成欲求者の選好とは合致しない。Dは権力欲求(nPow)の特徴である。Eは親和欲求(nAff)の特徴である。 補足:重要な知見として、高達成欲求は必ずしも優れた管理者を意味しない。高達成欲求者は自ら成果を出すことに関心が向くため、他者を通じて成果を出す管理職には適さない場合がある。研究では、優れた管理者は他者への影響力を組織目的のために用いる「社会的権力欲求」が高く、親和欲求が相対的に低い傾向が示されている。マクレランドは主題統覚検査(TAT)という投影法で測定したため、測定の実用性に課題があるとされる。

集団力学全38問中 4問を掲載

問21
組織における「公式集団(formal group)」と「非公式集団(informal group)」の説明として最も適切なものはどれか。
  • A公式集団は3名以上、非公式集団は2名以下と定義される
  • B公式集団は自然発生的であり、非公式集団は組織図に明記される
  • ✔公式集団は組織構造によって規定された職務上の集団であり、非公式集団は社会的な接触から自然発生する集団である
  • D公式集団は業績に影響するが、非公式集団は業績にまったく影響しない
  • E公式集団は経営者のみで構成され、非公式集団は一般従業員のみで構成される
解説:【正解】C「公式集団は組織構造によって規定された職務上の集団であり、非公式集団は社会的な接触から自然発生する集団である」 正解はC。公式集団は組織構造によって規定され、割り当てられた職務と目標を持つ集団である(部門、プロジェクトチーム、委員会など)。非公式集団は組織的に定められたものではなく、社会的接触の必要から自然発生的に形成される集団である(同期の集まり、昼食を共にするグループなど)。 誤答の理由:Bは公式・非公式の定義が完全に逆である。Aは人数による定義であり誤り。集団は「相互作用し、相互依存し、特定の目標を達成するために集まった2人以上」と定義されるのが一般的で、公式性とは無関係である。Dは誤りで、ホーソン研究のバンク配線室観察が示したように、非公式集団の規範は生産量を強力に統制しうる。Eは階層と集団種別を混同している。 補足:非公式集団は情報伝達(グレープバイン)、社会的欲求の充足、規範の形成・維持といった機能を果たし、組織変革への抵抗の源にも推進力にもなる。マネジメント上は、非公式集団を排除するのではなく、その規範を組織目標と整合させる働きかけが有効とされる。
問22
タックマンの集団発達段階モデルにおける5段階の順序として正しいものはどれか。
  • A統一期 → 形成期 → 混乱期 → 散会期 → 機能期
  • B混乱期 → 形成期 → 機能期 → 統一期 → 散会期
  • ✔形成期 → 混乱期 → 統一期 → 機能期 → 散会期
  • D形成期 → 統一期 → 混乱期 → 散会期 → 機能期
  • E機能期 → 混乱期 → 形成期 → 統一期 → 散会期
解説:【正解】C「形成期 → 混乱期 → 統一期 → 機能期 → 散会期」 正解はC。タックマンのモデルは、形成期(forming:目的・構造・リーダーシップが不確かで、メンバーが様子を探る段階)、混乱期(storming:集団内の統制をめぐる対立が生じる段階)、統一期(norming:親密な関係と結束が形成され規範が確立する段階)、機能期(performing:構造が受容され課題遂行にエネルギーが向かう段階)、散会期(adjourning:期限のある集団が活動を終えて解散する段階)の5段階から成る。 誤答の理由:A・B・D・Eはいずれも順序が入れ替わっている。特に「混乱期」と「統一期」を逆にする誤りが頻出するので注意が必要である。 補足:このモデルは直観的に理解しやすいが、批判もある。すべての集団が順序どおりに進むとは限らず、段階を飛ばしたり同時に複数段階が進行したりする。また混乱期にある集団のほうが高い成果を出す場合もある。期限のある課題集団については、ゲルシックの「断続平衡モデル」が有力で、活動の中間点(全期間のちょうど半分の時点)で大きな方向転換が起きるという知見が示されている。
問23
ゲルシックの「断続平衡モデル(punctuated equilibrium model)」の説明として最も適切なものはどれか。
  • A集団は常に一定のペースで漸進的に進歩する
  • B集団の発達は外部環境の変化にのみ規定される
  • C集団は混乱期を経験せずに機能期へ移行する
  • ✔期限のある集団は初期の慣性期を経て、全期間の中間点前後で大きな方向転換が生じ、その後新たな枠組みで活動が加速する
  • E集団は解散直前まで一切の変化を経験しない
解説:【正解】D「期限のある集団は初期の慣性期を経て、全期間の中間点前後で大きな方向転換が生じ、その後新たな枠組みで活動が加速する」 正解はD。ゲルシックは期限のある課題集団を観察し、(1)第1回会合で集団の方向性と行動枠組みが定まる、(2)その後は慣性が働き大きな進展のない停滞期が続く、(3)与えられた期間のほぼ中間点で「時間がない」という自覚から危機感が生まれ、旧来の枠組みを捨てる大きな転換が起こる、(4)転換後の後半期に新しい方向で活動が加速する、(5)最終局面で活動が集中する、という断続的なパターンを見出した。 誤答の理由:Aは漸進主義的な見方であり、断続平衡の核心である「中間点での急激な転換」を捉えていない。Cはタックマン・モデルの段階を否定する記述であって、断続平衡モデルの主張ではない。Bは外部環境決定論であり、このモデルは時間の意識という内的要因を重視する。Eは事実に反し、モデルは中間点での明確な変化を主張する。 補足:実務的示唆として、(1)第1回会合での方向づけが極めて重要である、(2)中間点でのレビュー会議を意図的に設定すると転換が促進される、(3)期限の設定そのものが集団のリズムを規定する、といった点が挙げられる。
問24
社会的アイデンティティ理論(social identity theory)の説明として最も適切なものはどれか。
  • A人は自らの能力を客観的な基準のみで評価する
  • B人は常に外集団を内集団より高く評価する
  • C人は集団に所属すると個人としての判断力が完全に失われる
  • ✔人は所属集団を通じて自己を定義し、その集団の成功や失敗を自分自身のものとして経験する
  • E集団への所属は自尊心とは無関係である
解説:【正解】D「人は所属集団を通じて自己を定義し、その集団の成功や失敗を自分自身のものとして経験する」 正解はD。社会的アイデンティティ理論(タジフェルとターナー)によれば、人は所属する集団(社会的カテゴリー)を通じて自己概念の一部を形成する。そのため、所属集団が成功すれば誇りを感じ、失敗すれば防衛的に反応する。自尊心の維持・高揚の動機がこの過程を駆動している。 誤答の理由:Aは社会的比較や集団的自己の役割を無視しており、理論の趣旨と異なる。Cは没個性化(deindividuation)の極端な記述であり、社会的アイデンティティ理論は判断力の喪失ではなく自己定義のレベルの移行(個人的自己から社会的自己へ)を説明する。Bは逆で、この理論の中核的予測は内集団びいき(in-group favoritism)である。Eは誤りで、集団所属は自尊心と密接に結びつく。 補足:社会的アイデンティティが強く活性化する条件として、独自性(他集団と区別される特徴)、地位(高地位集団ほど同一化が強い)、不確実性の低減、共通の敵の存在などが挙げられる。組織では、部門アイデンティティが強すぎると部門間対立(サイロ化)を招くため、上位の共通アイデンティティ(全社目標)を重ねる介入が有効とされる。

チーム全30問中 4問を掲載

問25
「集団(group)」と「チーム(team)」の区別として最も適切なものはどれか。
  • Aチームは情報共有が主目的であり、集団は成果の創出が主目的である
  • Bチームでは成果責任が個人単位のみであり、集団では相互責任が生じる
  • ✔チームは調整された努力によって個々の投入の総和を超える相乗効果を生み、共同の成果責任を負う
  • Dチームは常に集団より人数が多い
  • Eチームと集団は完全に同義である
解説:【正解】C「チームは調整された努力によって個々の投入の総和を超える相乗効果を生み、共同の成果責任を負う」 正解はC。ワークグループは主として情報を共有し、各自の職務領域内で成果を出すことを助け合う集まりであり、成果責任は個人単位で、相乗効果は中立ないし限定的である。一方ワークチームは、調整された努力を通じて正の相乗効果(シナジー)を生み、個人と相互(共同)の両方の成果責任を負い、補完的なスキルの組み合わせを持つ。 誤答の理由:Aは集団とチームの説明が逆である。Bも逆で、相互責任はチームの特徴である。Dは誤りで、むしろ効果的なチームは比較的小規模(一般に9名以下)であることが多い。Eは誤りで、両者は明確に区別される概念である。 補足:重要な実務的含意として、「チーム」という名称を与えるだけではチームにならない。相互依存的な課題、共同の目標、共同の成果責任、補完的スキルが伴わない場合、チーム化はかえって調整コストと社会的手抜きを増やす。課題がチームワークを本当に必要とするかを見極めることが第一歩である。
問26
「自己管理型チーム(self-managed work team)」の説明として最も適切なものはどれか。
  • A経営者が日常業務を細かく指示するチーム
  • B地理的に分散し電子的手段でのみ協働するチーム
  • C複数部門の代表が情報交換のみを行う会議体
  • ✔作業の計画・遂行・評価・人員配置などの管理的責任を、チーム自身が引き受けるチーム
  • E品質改善案を提案するが実行権限を持たないチーム
解説:【正解】D「作業の計画・遂行・評価・人員配置などの管理的責任を、チーム自身が引き受けるチーム」 正解はD。自己管理型チームは通常10〜15名程度で構成され、相互に関連する職務を担い、従来は監督者が担っていた責任(作業計画の立案、作業割当、休憩の管理、品質のチェック、場合によっては人員の選抜や相互評価)の多くを自ら引き受ける。 誤答の理由:Aは伝統的な指示命令型の作業集団である。Cはクロスファンクショナル・チームというより単なる連絡会議に近く、自己管理の要素を欠く。Bはバーチャルチームの説明である。Eは問題解決型チーム(品質管理サークルなど)の説明で、通常は提案にとどまり実行権限を持たない点が自己管理型と異なる。 補足:自己管理型チームの効果は一貫しておらず、職務満足を高める一方で欠勤率や離職率が上がる場合があるとの報告もある。効果を左右する条件として、文化との適合(権力格差が大きい文化では機能しにくい)、報酬制度との整合、監督者の役割転換(指示者からコーチ・ファシリテーターへ)、チームへの十分な情報・権限・訓練の提供が挙げられる。
問27
バーチャルチーム(virtual team)に特有の課題として、最も適切なものはどれか。
  • ✔対面より非言語的手がかりが乏しく、社会的な文脈情報が減るため信頼形成と誤解の回避が難しい
  • B物理的に近接しているため私語が多くなる
  • Cタイムゾーンが常に統一されている
  • Dメンバーの専門性が均質になりやすい
  • E文書記録が残らないため説明責任が果たせない
解説:【正解】A「対面より非言語的手がかりが乏しく、社会的な文脈情報が減るため信頼形成と誤解の回避が難しい」 正解はA。バーチャルチームは電子的手段で結ばれた分散チームであり、(1)表情・声の調子・身振りなどの非言語的手がかりが乏しい、(2)雑談や偶発的な接触が減り社会的文脈の共有が難しい、(3)信頼(特に初期の対人的信頼)の形成に時間がかかる、という課題を持つ。 誤答の理由:Bは対面チームの状況であり、バーチャルチームの説明として成立しない。Cは逆で、タイムゾーンの相違による同期的協働の困難がむしろ課題である。Dは誤りで、地理的制約が外れるため専門性は多様になりやすい。Eも逆で、電子的なやりとりはむしろ記録が残りやすい。 補足:バーチャルチームを機能させる条件として、(1)成員間の信頼を確立する(初期の対面機会、迅速な応答による「スウィフト・トラスト」の形成)、(2)進捗を密に監視し可視化する、(3)チームの努力と成果を組織全体に周知する、という3点が指摘されている。また、同期(会議)と非同期(文書・チャット)のコミュニケーション手段を課題の曖昧性に応じて使い分けることが重要である。
問28
エドモンドソンが提唱した「心理的安全性(psychological safety)」の定義として最も適切なものはどれか。
  • Aチームの目標が容易に達成できるという期待
  • B業務上の身体的危険が存在しない状態
  • Cメンバー同士が常に意見を一致させる状態
  • ✔対人関係のリスクを取っても罰せられたり恥をかかされたりしないという、チームで共有された信念
  • E上司が部下を一切評価しない状態
解説:【正解】D「対人関係のリスクを取っても罰せられたり恥をかかされたりしないという、チームで共有された信念」 正解はD。心理的安全性とは、質問する、間違いを認める、懸念を表明する、新しいアイデアを出すといった対人関係上のリスクを伴う行動をとっても、非難されたり拒絶されたりしないとチームメンバーが共有して信じている状態を指す。エドモンドソンの病院での研究では、心理的安全性の高いチームほど「報告されるエラー」が多く、それはエラーが多いのではなく報告と学習が起きている証拠だと解釈された。 誤答の理由:Aは目標の容易さであり、心理的安全性は高い基準と両立する(むしろ両立して初めて学習ゾーンとなる)。Cは誤りで、心理的安全性は意見の一致ではなく、異論を安全に述べられる状態である。むしろ「感じの良さ」や「居心地の良さ」と混同してはならない。Bは物理的安全(safety)であって別概念である。Eは誤りで、評価がないことではなく、率直さが罰せられないことが要件である。 補足:エドモンドソンは、心理的安全性(低〜高)と業績基準・説明責任(低〜高)の2軸で4象限を示し、両者が共に高い「学習ゾーン」で高業績が実現するとした。心理的安全性のみが高く基準が低い状態は「快適ゾーン」にとどまる。リーダーの実践としては、自らの誤りを認める(可謬性の表明)、仕事を学習課題として枠づける、質問を投げかけて発言を引き出す、悪い知らせをもたらした者に感謝する、といった行動が有効とされる。

コミュニケーション全35問中 4問を掲載

問29
コミュニケーション・プロセスモデルの構成要素として、最も適切でないものはどれか。
  • A送り手による符号化(エンコーディング)
  • Bメッセージとチャネル
  • C受け手による解読(デコーディング)
  • Dフィードバック
  • ✔送り手の学歴
解説:【正解】E「送り手の学歴」 正解はE。標準的なコミュニケーション・プロセスモデルは、送り手→符号化→メッセージ→チャネル→解読→受け手→フィードバックという流れで構成され、全過程にノイズ(雑音)が影響する。送り手の学歴は個人属性であって、プロセスモデルの構成要素ではない。 誤答の理由:A・B・C・Dはいずれもモデルの正規の構成要素である。 補足:ノイズには、物理的雑音、知覚上の問題(選択的知覚)、情報過多、意味の相違(同じ語に異なる意味を与える)、感情状態などが含まれる。実務上、フィードバック(受け手の理解の確認)を組み込むことが誤解の低減に最も効果的であり、一方向の通知に頼らず、要約の復唱や質問の機会を設けることが推奨される。
問30
組織における「上方向コミュニケーション(upward communication)」の例として最も適切なものはどれか。
  • A経営方針を全社員に周知する社内報
  • ✔部下から上司への業務進捗報告や改善提案
  • C同一階層の部門間での日程調整
  • D上司から部下への業務指示
  • E社外顧客への広報発表
解説:【正解】B「部下から上司への業務進捗報告や改善提案」 正解はB。上方向コミュニケーションは、組織階層の下位から上位へ向かう流れであり、進捗報告、問題の提起、改善提案、意見具申などが含まれる。上位者に現場の状況をフィードバックし、部下の態度を把握する機能を持つ。 誤答の理由:AとDは下方向コミュニケーション(目標の伝達、指示、方針の周知、フィードバックの提供)である。Cは水平(横方向)コミュニケーションで、同一階層内の調整・協力を担う。Eは外部への対外的コミュニケーションである。 補足:上方向コミュニケーションの最大の課題は、悪い情報が上がりにくいことである。中間層が情報を都合よく加工するフィルタリング、上司の反応への恐れ、心理的安全性の欠如が原因となる。対策として、階層を飛ばした対話の機会、匿名の意見収集、悪い知らせをもたらした者を罰しない規範の明示、要点を先に述べる簡潔な報告様式の導入などが有効とされる。
問31
小集団のコミュニケーション・ネットワークのうち、「全チャネル型(all-channel)」の特徴として最も適切なものはどれか。
  • Aリーダーの出現が最も明確で、伝達の正確性が高い
  • ✔全員が相互に自由に伝達でき、成員満足度が高く、速度も速いが、明確なリーダーは出現しにくい
  • C厳格な指揮命令系統に沿って垂直に伝達される
  • D中心人物を経由してのみ情報が流れる
  • E伝達速度が最も遅く、満足度も最も低い
解説:【正解】B「全員が相互に自由に伝達でき、成員満足度が高く、速度も速いが、明確なリーダーは出現しにくい」 正解はB。小集団ネットワークの古典的類型では、チェーン型(公式の指揮命令系統に沿う垂直的伝達)、ホイール型(中心のリーダーを介して情報が流れる)、全チャネル型(全員が自由に相互伝達する)が比較される。全チャネル型は速度が速く、成員の満足度が高い一方、明確なリーダーが出現しにくい。 誤答の理由:Aはホイール型の特徴で、リーダーの出現が明確であり、単純な課題では正確性・速度が高い。Cはチェーン型の特徴で、正確性が高い反面、速度と満足度は中程度である。Dもホイール型の説明である。Eは全チャネル型の特徴と逆である。 補足:どの型が優れているかは基準による。速度と満足度では全チャネル型、リーダーの出現ではホイール型、正確性ではチェーン型とホイール型が優れるとされる。したがって、単一の最適解はなく、目的(迅速な合意形成か、正確な指示伝達か)に応じた設計が求められる。
問32
組織における「グレープバイン(grapevine:非公式伝達網)」に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • A経営者が完全に統制でき、必要に応じて停止できる
  • B公式伝達より遅く、内容の正確性はきわめて低い
  • ✔従業員の関心が高く曖昧性の高い状況で活性化し、伝達速度が速く、一定の正確性も持つ
  • D組織にとって常に有害であり、根絶すべきである
  • E公式の情報が十分に提供されているときほど活発になる
解説:【正解】C「従業員の関心が高く曖昧性の高い状況で活性化し、伝達速度が速く、一定の正確性も持つ」 正解はC。グレープバインは非公式のコミュニケーション・ネットワークであり、経営の統制外にあり、伝達が速く、従業員にとって重要と認識される事柄について活性化する。研究では、伝えられる内容の相当部分が結果として正確であったとの報告もある。 誤答の理由:Aは誤りで、経営者が統制できない点がグレープバインの定義的特徴である。Bは誤りで、速度は公式伝達より速いのが通例である。Dは一面的で、グレープバインは従業員の不安を表現し、集団の関心事を経営に知らせるという機能的側面も持つ。Eは逆で、公式情報が不足し不確実性が高いときほど噂は活発化する。 補足:噂の発生条件は、古典的にrumor = importance × ambiguity(重要性×曖昧性)として定式化されてきた。したがって噂を抑える最善策は、重要事項について公式かつ迅速に、決まっていないことは「決まっていない」と含めて説明することである。組織再編や人員削減の局面では特に、沈黙が最も噂を増幅させる。

リーダーシップ全42問中 4問を掲載

問33
リーダーシップの特性論(trait theory)に関する現在の理解として、最も適切なものはどれか。
  • A特性はリーダーの出現や有効性とまったく関連しない
  • B身長と体重がリーダーシップの最も強力な予測因子である
  • ✔外向性、誠実性、開放性などの特性はリーダーの出現・有効性と一定の関連を示すが、特性だけで有効性を説明することはできない
  • D特性論はリーダーの行動を説明対象としている
  • E特性は後天的に一切変化しないことが確立している
解説:【正解】C「外向性、誠実性、開放性などの特性はリーダーの出現・有効性と一定の関連を示すが、特性だけで有効性を説明することはできない」 正解はC。初期の特性論は「偉人論」的で決定的な特性の同定に失敗したが、ビッグファイブの枠組みが整理されたことで再評価が進んだ。メタ分析では、外向性がリーダーの出現(誰がリーダーとみなされるか)と最も強く関連し、誠実性と開放性も有効性と関連することが示されている。ただし特性は状況要因や行動の媒介を通じて効果を及ぼすため、特性のみで有効性を説明することはできない。 誤答の理由:Aは古い否定的結論であり、現在のメタ分析の知見と整合しない。Bは初期研究で検討されたが予測力は乏しく、現在支持されていない。Dは行動論(オハイオ研究など)の説明対象であり、特性論は個人の資質を対象とする。Eは誤りで、特性は比較的安定だが変化しないわけではなく、また関連する行動は学習可能である。 補足:情動知能(EQ)とリーダーシップの関連については議論がある。共感や自己統制の重要性は直観的に説得力がある一方、測定の妥当性が低く、認知能力や既存の性格特性を超える追加的な予測力(増分妥当性)が乏しいという批判が根強い。
問34
オハイオ州立大学の研究が抽出したリーダー行動の2次元として、最も適切な組み合わせはどれか。
  • Aタスク志向と権威主義
  • B変革型と交流型
  • ✔構造づくり(initiating structure)と配慮(consideration)
  • D指示型と参加型
  • E分配的公正と手続き的公正
解説:【正解】C「構造づくり(initiating structure)と配慮(consideration)」 正解はC。オハイオ研究は、リーダー行動を「構造づくり」(役割の定義、課題の割当、目標の設定、期限の明示など目標達成に向けた構造化)と「配慮」(信頼と相互尊重に基づく関係、部下の感情への配慮)の2つの独立次元に集約した。両次元は独立であるため、両方が高いリーダーもいれば、片方のみが高いリーダーもいる。 誤答の理由:Bはバーンズとバスによる後年の類型であり、行動2次元論ではない。Aは志向性と統治様式を混在させた不正確な組み合わせである。Dはパス・ゴール理論などで用いられるリーダーシップ・スタイルの類型であり、オハイオ研究の次元名ではない。Eは組織的公正の次元である。 補足:ミシガン大学の研究もほぼ同時期に「従業員志向」と「生産志向」という類似の2次元を見出した。両研究の知見はマネジリアル・グリッド(人への関心×業績への関心の9×9格子)に発展し、両者が高い「9・9型(チーム型)」が理想とされた。ただし、どの組み合わせが有効かは状況に依存するという批判が後の状況適合理論を生んだ。
問35
フィードラーのコンティンジェンシー・モデルにおける「LPC尺度」の説明として、最も適切なものはどれか。
  • A部下の成熟度を測定する尺度である
  • Bリーダーの知能水準を測定する尺度である
  • ✔最も一緒に仕事をしにくかった同僚をどう評価するかによって、リーダーの基本的志向を関係志向か課題志向かに分類する尺度である
  • D組織の集権度を測定する尺度である
  • E部下の職務満足を測定する尺度である
解説:【正解】C「最も一緒に仕事をしにくかった同僚をどう評価するかによって、リーダーの基本的志向を関係志向か課題志向かに分類する尺度である」 正解はC。LPC(Least Preferred Coworker)尺度は、これまで最も一緒に働きにくかった同僚を一連の形容詞対で評価させるものである。その人物を比較的好意的に評価する(高LPC)リーダーは関係志向、否定的に評価する(低LPC)リーダーは課題志向と分類される。フィードラーはこの志向を固定的なものとみなし、リーダーを変えるか状況を変えるべきだと主張した。 誤答の理由:Aはハーシーとブランチャードの状況対応型リーダーシップ理論(SL理論)における部下のレディネスの説明である。Bは認知資源理論が扱う変数だが、LPC尺度そのものではない。Dは組織構造の変数である。Eは態度の測定であり無関係である。 補足:フィードラーは状況の好意性を、(1)リーダーとメンバーの関係、(2)課題の構造化の程度、(3)リーダーの地位勢力、の3要素で判定した。結論として、状況が非常に好意的な場合と非常に非好意的な場合には課題志向のリーダーが、中程度に好意的な場合には関係志向のリーダーが有効とされた。LPC尺度の意味づけと再検査信頼性には批判があるが、リーダーシップに状況適合の視点を導入した功績は大きい。
問36
フィードラーのモデルにおける「状況の好意性」を規定する3要素の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
  • A部下の能力・部下の意欲・部下の経験
  • B集権度・公式化・複雑性
  • C報酬制度・組織文化・外部環境
  • ✔リーダーとメンバーの関係・課題の構造・リーダーの地位勢力
  • E信頼・尊敬・忠誠
解説:【正解】D「リーダーとメンバーの関係・課題の構造・リーダーの地位勢力」 正解はD。フィードラーは、(1)リーダーとメンバーの関係(部下がリーダーに抱く信頼と敬意の程度)、(2)課題の構造(職務手続きが明確に構造化されているか)、(3)地位勢力(採用、解雇、昇進、昇給などに対するリーダーの公式的影響力)という3要素の組み合わせで、状況がリーダーにとってどれだけ統制しやすいかを判定した。 誤答の理由:AはSL理論のレディネス概念に近い。Cは組織レベルの文脈変数であり、モデルの構成要素ではない。Bは組織構造の3次元である。Eは信頼の構成要素に近いが、状況好意性の要素ではない。 補足:3要素の組み合わせにより状況は8つのカテゴリーに分類される。実務的示唆として、フィードラーは「リーダーの志向は変わりにくい」という前提から、リーダーを状況に合わせて配置転換するか、課題の構造や地位勢力を調整して状況をリーダーに合わせるという処方を導いた。この点は、リーダーが柔軟にスタイルを変えられるとするSL理論やパス・ゴール理論と対照的である。

パワーと政治全32問中 4問を掲載

問37
フレンチとレイブンによる権力の5つの基盤に含まれないものはどれか。
  • A強制的権力
  • B報酬的権力
  • C正当的権力
  • D専門的権力
  • ✔構造的権力
解説:【正解】E「構造的権力」 正解はE。フレンチとレイブンの5つの権力基盤は、強制的権力(罰や否定的結果への恐れに基づく)、報酬的権力(望ましい報酬の配分能力に基づく)、正当的権力(組織階層上の地位に伴う公式権限に基づく)、専門的権力(専門知識や技能に基づく)、準拠的権力(望ましい資源や人格的特性への同一化・魅力に基づく)である。「構造的権力」は5基盤の名称ではない。 誤答の理由:A・B・C・Dはいずれも正規の権力基盤である。設問で問われていない準拠的権力が5つ目である点も併せて押さえておきたい。 補足:5基盤は、公式権力(強制・報酬・正当)と個人的権力(専門・準拠)の2群に整理される。研究では、個人的権力のほうが部下の満足、コミットメント、業績と正の関連を持ちやすく、強制的権力は逆効果になりやすいことが示されている。管理職が公式権限のみに依存する状態は、権威が形式化し実質的影響力を失う危険を伴う。
問38
ある技術者が、その専門知識ゆえに社内で大きな影響力を持っている。この影響力の基盤として最も適切なものはどれか。
  • A正当的権力
  • B報酬的権力
  • ✔専門的権力
  • D強制的権力
  • E準拠的権力
解説:【正解】C「専門的権力」 正解はC。専門的権力は、他者が必要とする専門知識、技能、情報を保有することから生じる影響力である。組織が技術的に複雑化するほど、公式の階層とは独立にこの種の権力が重みを増す。 誤答の理由:Aの正当的権力は組織構造上の地位に由来し、専門知識とは独立である。Bの報酬的権力は報酬配分の統制力に由来する。Dの強制的権力は罰の行使能力に由来する。Eの準拠的権力は、他者がその人物に魅力を感じ同一化することから生じる影響力であり、専門性そのものとは区別される(ただし両者はしばしば併存する)。 補足:専門的権力は、当該知識が組織にとって重要で(重要性)、代替が困難で(代替不可能性)、希少である(希少性)ほど強まる。逆に、知識が文書化・標準化され誰でも扱えるようになると権力は減衰する。専門職が自らの知識を過度に秘匿する行動は、この力学から説明できる。
問39
「依存関係が権力を生む」という命題において、依存を強める3つの条件として最も適切な組み合わせはどれか。
  • ✔重要性・希少性・代替不可能性
  • B公式性・集権性・複雑性
  • C速度・正確性・効率
  • D信頼・尊敬・忠誠
  • E能力・意欲・経験
解説:【正解】A「重要性・希少性・代替不可能性」 正解はA。権力は依存の裏返しであり、BがAに依存するほどAはBに対して権力を持つ。依存を強める条件は、(1)重要性:その資源がBにとって重要であること、(2)希少性:その資源が容易には手に入らないこと、(3)代替不可能性:他の資源で置き換えられないこと、の3つである。 誤答の理由:Bは組織構造の次元である。Cは業務遂行の指標である。Dは信頼の要素に近い語の並びである。EはSL理論のレディネス概念に近い。 補足:この視点は、なぜ組織内で特定の部門(法務、情報システム、資金調達など)が状況によって強い影響力を持つのかを説明する。ヒックソンらの戦略的コンティンジェンシー理論は、組織にとって重大な不確実性に対処でき、他部門に代替されず、業務フロー上の中心性が高い部門ほど組織内権力が強くなると論じた。この考え方は資源依存理論とも整合する。
問40
組織における影響戦術のうち、「合理的説得(rational persuasion)」の説明として最も適切なものはどれか。
  • ✔論理的な議論と事実に基づく証拠を用いて、要請の妥当性を示す
  • B相手の感情や価値観に訴えて熱意を喚起する
  • C要請の前に好意的な雰囲気をつくり相手の機嫌をとる
  • D他者の支持を集めて要請を後押しする
  • E上位の権限を持ち出して要請に従わせる
解説:【正解】A「論理的な議論と事実に基づく証拠を用いて、要請の妥当性を示す」 正解はA。合理的説得は、論理と客観的証拠によって要請が合理的であり目標達成に資することを示す戦術である。研究では、上位者・同僚・部下のいずれに対しても比較的有効性が高く、最も汎用的な戦術の一つとされる。 誤答の理由:Bは鼓舞的訴え(inspirational appeal)である。Cは取り入り(ingratiation)である。Dは連合戦術(coalition)である。Eは正当性戦術ないし上位権限への訴えである。 補足:影響戦術の有効性には方向性がある。上位者に対しては合理的説得が最も有効とされ、部下に対しては合理的説得に加えて鼓舞的訴えや相談(consultation)が有効、同僚に対しては合理的説得、相談、取り入りが用いられやすい。一方、圧力(pressure)は最も有効性が低く、反発や関係悪化を招きやすい。複数の戦術を組み合わせるほうが単独より有効という知見もある。

コンフリクト・交渉全34問中 4問を掲載

問41
コンフリクトに関する「相互作用主義的見方(interactionist view)」の説明として最も適切なものはどれか。
  • Aコンフリクトはすべて有害であり回避すべきである
  • Bコンフリクトは自然に発生するものであり、受け入れるほかない
  • ✔一定水準のコンフリクトは集団の活力と自己批判能力を維持するために必要であり、機能的なコンフリクトはむしろ促されるべきである
  • Dコンフリクトは組織構造の欠陥のみに起因する
  • Eコンフリクトは業績と無関係である
解説:【正解】C「一定水準のコンフリクトは集団の活力と自己批判能力を維持するために必要であり、機能的なコンフリクトはむしろ促されるべきである」 正解はC。コンフリクト観は歴史的に、伝統的見方(すべてのコンフリクトは有害であり回避すべき)、人間関係論的見方(コンフリクトは自然発生的で不可避であり受容すべき)、相互作用主義的見方(一定水準のコンフリクトは必要であり、機能的なものは積極的に維持・促進すべき)と展開してきた。相互作用主義は、コンフリクトが皆無の集団は静的で変化に鈍感になると論じる。 誤答の理由:Aは伝統的見方である。Bは人間関係論的見方である。Dは原因を構造に限定する誤りで、コンフリクトはコミュニケーション、構造、個人的要因のいずれからも生じる。Eは誤りである。 補足:現在は、コンフリクトの種類による区別(タスク/関係/プロセス)を重視する「解決志向の見方」が主流である。すなわち「コンフリクトを増やすべきか」ではなく「どの種類のコンフリクトを、どのように扱うか」が問われる。関係コンフリクトはほぼ一貫して有害であり、タスク・コンフリクトのみが条件付きで有益である。
問42
コンフリクト・プロセスの5段階として、最も適切な順序はどれか。
  • ✔潜在的対立 → 認知と個人化 → 意図 → 行動 → 結果
  • B行動 → 意図 → 認知 → 潜在的対立 → 結果
  • C認知 → 潜在的対立 → 結果 → 行動 → 意図
  • D意図 → 行動 → 潜在的対立 → 認知 → 結果
  • E結果 → 行動 → 意図 → 認知 → 潜在的対立
解説:【正解】A「潜在的対立 → 認知と個人化 → 意図 → 行動 → 結果」 正解はA。コンフリクト・プロセスは、(1)潜在的対立の段階(コミュニケーション、構造、個人的変数といった先行条件の存在)、(2)認知と個人化の段階(当事者が対立を認知し、感情を伴って個人的に受け止める)、(3)意図の段階(対処の方針が形成される)、(4)行動の段階(実際の言動、および相手の反応)、(5)結果の段階(機能的または逆機能的な帰結)という順序で展開する。 誤答の理由:B・C・D・Eはいずれも順序が入れ替わっている。特に「認知」と「個人化」を区別する点が重要で、対立を認知しただけでは感情的関与は生じず、個人化されて初めて不安や敵意が伴う。 補足:この枠組みの実務的価値は、介入点が複数あることを示す点にある。先行条件の段階では役割の明確化や資源配分の透明化が、認知の段階では事実の共有と誤解の解消が、意図の段階では対処スタイルの選択が、行動の段階では第三者介入が、それぞれ有効な介入となりうる。
問43
トーマスのコンフリクト対処スタイルにおいて、「自己主張性が高く協調性も高い」象限に位置するスタイルはどれか。
  • A競争(competing)
  • ✔協働(collaborating)
  • C妥協(compromising)
  • D回避(avoiding)
  • E順応(accommodating)
解説:【正解】B「協働(collaborating)」 正解はB。トーマスの二次元モデルは、自己の関心を満たそうとする程度(自己主張性)と相手の関心を満たそうとする程度(協調性)の2軸で5つのスタイルを配置する。協働は両者がともに高い象限に位置し、双方の関心を満たす統合的な解を探る対処であり、win-winの結果を目指す。 誤答の理由:Aの競争は自己主張性が高く協調性が低い(win-lose)。Cの妥協は両者が中程度で、双方が一部を譲る。Dの回避は両者が低く、問題から身を引く。Eの順応は自己主張性が低く協調性が高く、相手の関心を自らより優先する。 補足:どのスタイルが最適かは状況による。緊急時や不人気だが必要な措置には競争が、些細な問題や冷却期間が必要なときには回避が、相手が明らかに正しいときや関係維持が重要なときには順応が、時間制約下で対等な力を持つ当事者間では妥協が、複雑で双方の関心が重要かつ関係が継続する場合には協働が適する。実務上の問題は、多くの人が状況に関わらず特定のスタイルに固着することである。
問44
分配的交渉(distributive bargaining)と統合的交渉(integrative bargaining)の違いとして、最も適切なものはどれか。
  • ✔分配的交渉は固定されたパイの配分を争うゼロサム的交渉であり、統合的交渉は双方の利益を拡大する解を探る交渉である
  • B分配的交渉は長期的関係を前提とし、統合的交渉は一回限りの取引を前提とする
  • C分配的交渉では情報を積極的に共有し、統合的交渉では情報を秘匿する
  • D統合的交渉は常に妥協を意味する
  • E両者に本質的な違いはない
解説:【正解】A「分配的交渉は固定されたパイの配分を争うゼロサム的交渉であり、統合的交渉は双方の利益を拡大する解を探る交渉である」 正解はA。分配的交渉は、分けるべき資源の総量が固定されているという前提のもと、一方の取り分が増えれば他方が減るゼロサム的な状況で行われる。統合的交渉は、当事者の関心(interests)の相違を利用して価値を創造し、双方の満足を高める解を探る。 誤答の理由:Bは逆で、分配的交渉は短期・一回限りの取引に、統合的交渉は長期的関係の維持に適合する。Cも逆で、統合的交渉では関心や優先順位に関する情報共有が価値創造の前提となり、分配的交渉では情報の非対称性が有利に働く。Dは誤りで、統合的交渉は妥協(互いに譲る)ではなく、優先順位の違いを利用した交換によって双方の利得を高めることを目指す。Eは誤りである。 補足:統合的交渉を可能にする条件として、(1)相互に開かれた情報共有、(2)相手の関心への感受性、(3)信頼、(4)柔軟性、が挙げられる。実務上の鍵は「立場(position)」ではなく「関心(interest)」に焦点を当てること、複数の争点を同時に扱って優先順位の差から交換を生み出すことである。

組織構造全38問中 4問を掲載

問45
組織構造を設計する際に検討すべき基本要素として、一般に挙げられないものはどれか。
  • A職務専門化
  • B部門化
  • C指揮命令系統
  • D統制の範囲
  • ✔創業者の出身地
解説:【正解】E「創業者の出身地」 正解はE。組織構造の設計要素は一般に、職務専門化(作業をどこまで細分化するか)、部門化(職務をどう束ねるか)、指揮命令系統(誰が誰に報告するか)、統制の範囲(一人の管理者が何人を直接管理するか)、集権化と分権化(意思決定権をどこに置くか)、公式化(職務がどこまで規則で標準化されるか)の6つに整理される。創業者の出身地は構造設計の要素ではない。 誤答の理由:A・B・C・Dはいずれも正規の設計要素である。なお、6つ目の要素は集権化・分権化と公式化である点も併せて押さえたい。 補足:近年はこの6要素に加えて「境界の広がり(boundary spanning)」、すなわち組織内外の異なる単位と関係を結び情報をやりとりする役割の設計も重要な論点とされる。境界連結活動が活発な組織は、環境変化への感度と学習能力が高いことが報告されている。
問46
職務専門化(work specialization)の効果に関する説明として、最も適切なものはどれか。
  • A専門化を進めるほど生産性は無限に高まり続ける
  • ✔一定水準までは効率を高めるが、過度に進めると単調感、疲労、ストレス、欠勤、離職を招き、不経済が生じる
  • C専門化は訓練コストを増大させる
  • D専門化と職務満足の関係は常に正である
  • E専門化は組織規模とは無関係に望ましい
解説:【正解】B「一定水準までは効率を高めるが、過度に進めると単調感、疲労、ストレス、欠勤、離職を招き、不経済が生じる」 正解はB。職務専門化は、繰り返しによる習熟、訓練の容易さ、段取り替えの削減によって効率を高める。しかし、20世紀半ばには専門化による人的不経済(退屈、疲労、ストレス、品質低下、欠勤、離職の増加)が効率の利得を上回る水準に達する場合があることが明らかになった。 誤答の理由:Aは無限の逓増を仮定しており誤りである。Cは逆で、職務が細分化されるほど習得すべき範囲が狭まり訓練コストは下がる。Dは誤りで、過度の専門化は満足を下げる。Eは誤りで、大量生産のような文脈では有効性が高い一方、多品種少量や非定型業務では不適合となる。 補足:この認識が、職務拡大(水平的に業務範囲を広げる)、職務充実(垂直的に計画・統制の権限を与える)、職務ローテーションといった職務再設計の実務を生んだ。ハックマンとオルダムの職務特性モデルは、この流れを理論的に体系化したものである。
問47
部門化(departmentalization)の基準として、一般に挙げられないものはどれか。
  • A機能別(職能別)
  • B製品別
  • C地域別
  • D顧客別
  • ✔勤続年数別
解説:【正解】E「勤続年数別」 正解はE。部門化の代表的な基準は、機能別(製造、経理、人事など職能に基づく)、製品別(製品ライン単位)、地域別(地理的区分)、工程別(作業の流れの段階)、顧客別(顧客区分ごと)である。勤続年数別の部門化は一般的な基準として挙げられない。 誤答の理由:A・B・C・Dはいずれも正規の部門化基準である。 補足:機能別部門化は専門性の深化と規模の経済に優れる一方、部門間調整が難しく全社最適の視点が育ちにくい。製品別・顧客別は成果責任が明確で市場対応が速い一方、機能の重複によるコスト増を伴う。多くの大企業は複数の基準を階層的に組み合わせ、さらに部門横断チームによって調整を補っている。
問48
「命令の一元性(unity of command)」の原則の説明として最も適切なものはどれか。
  • Aすべての意思決定は最上位者が行うべきであるという原則
  • ✔各人は一人の上司にのみ直接報告すべきであるという原則
  • C組織のすべての規則は文書化されるべきであるという原則
  • D一人の管理者は多数の部下を管理すべきであるという原則
  • E部門は機能別に編成されるべきであるという原則
解説:【正解】B「各人は一人の上司にのみ直接報告すべきであるという原則」 正解はB。命令の一元性は、各成員が直接責任を負う上司を一人に限定することで、指示の矛盾や責任の曖昧化を避ける古典的原則である。これは指揮命令系統(chain of command)の概念を構成する要素の一つで、他に権限(authority)の概念が含まれる。 誤答の理由:Aは集権化の説明である。Cは公式化の説明である。Dは統制の範囲に関する記述であり、原則の内容とも異なる。Eは部門化の基準である。 補足:現代の組織では、この原則は絶対ではなくなっている。マトリクス構造は職能上の上司とプロジェクト上の上司の二重報告を意図的に採用し、命令の一元性を放棄する。情報技術の発達により、階層を経由しない情報アクセスと横断的な協働が容易になったことも、原則の相対化を後押ししている。ただし二重報告は役割葛藤とストレスを生みやすく、調整の設計が不可欠である。

組織文化全35問中 4問を掲載

問49
組織文化(organizational culture)の定義として最も適切なものはどれか。
  • A組織が保有する物的資産の総体
  • B組織の公式な規則と職務記述書の総体
  • ✔組織成員が共有する意味のシステムであり、その組織を他と区別する特徴の集合
  • D経営者個人の価値観そのもの
  • E従業員の平均的な性格特性
解説:【正解】C「組織成員が共有する意味のシステムであり、その組織を他と区別する特徴の集合」 正解はC。組織文化とは、成員が共有する意味のシステムであり、その組織を他の組織から区別する特徴の集合である。一般に、革新性とリスク志向、細部への注意、成果志向、人間重視、チーム重視、積極性、安定性といった特性の程度によって記述される。 誤答の理由:Bは公式化された構造の側面であり、文化は明文化されない前提や価値観を含む点で区別される。Aは物的資源であり文化ではない。Dは誤りで、創業者の価値観は文化の源泉となりうるが、文化は成員に共有された知覚として存在する。Eは個人特性の集計であり、共有された意味のシステムとは異なる。 補足:シャインは文化を3層で捉えた。目に見える人工物(オフィス、服装、儀礼)、標榜された価値観(経営理念、行動指針)、そして最も深層にある暗黙の基本的前提である。標榜された価値観と実際の前提が乖離している状態は、従業員のシニシズムを生む主要な原因となる。
問50
組織文化が果たす機能として、最も適切でないものはどれか。
  • A組織の境界を定め、他組織との区別を生み出す
  • B成員にアイデンティティの感覚をもたらす
  • C個人の利益を超えたコミットメントの形成を促す
  • D行動の指針となり、社会システムとしての安定性を高める
  • ✔環境変化に対する迅速な戦略転換を常に促進する
解説:【正解】E「環境変化に対する迅速な戦略転換を常に促進する」 正解はE。文化は、境界の設定、アイデンティティの付与、個人を超えたコミットメントの形成、社会システムの安定化、行動の指針としての意味づけといった機能を持つ。一方で、確立した文化は変革の障壁として作用しやすく、迅速な戦略転換を「常に促進する」という記述は適切でない。 誤答の理由:A・B・C・Dはいずれも文化の正規の機能である。 補足:文化の逆機能として一般に挙げられるのは、(1)変革への障壁(環境が変化しても共有された前提が慣性として働く)、(2)多様性への障壁(同化圧力が異質な視点を排除する)、(3)企業統合への障壁(合併・買収において文化の不整合が統合を失敗させる主要因となる)である。強い文化ほどこれらの逆機能も強く現れる点が重要である。
問51
「支配的文化(dominant culture)」と「サブカルチャー(subculture)」の関係として、最も適切な説明はどれか。
  • Aサブカルチャーは常に支配的文化と敵対する
  • Bサブカルチャーが存在する組織には文化が存在しない
  • ✔支配的文化は組織の大多数が共有する中核的価値観であり、サブカルチャーは部門や地域固有の状況を反映して形成される下位文化である
  • D支配的文化は経営者一人の価値観を指す
  • E両者は同義である
解説:【正解】C「支配的文化は組織の大多数が共有する中核的価値観であり、サブカルチャーは部門や地域固有の状況を反映して形成される下位文化である」 正解はC。支配的文化は組織の大多数が共有する中核的価値観であり、組織固有の人格を形づくる。サブカルチャーは、部門、地域、職種などの単位で形成され、中核的価値観に加えてその単位固有の価値観を含む。 誤答の理由:Bは誤りで、両者は共存する。Aは誤りで、サブカルチャーは通常、中核的価値観を共有したうえで固有の要素を加えるものであり、対抗文化(counterculture)は例外的な形態である。Dは誤りで、支配的文化は共有された知覚であって個人の価値観ではない。Eは誤りである。 補足:サブカルチャーは必ずしも有害ではない。異なる業務要件に適応した多様性の源泉となり、環境変化への対応力を高める場合もある。ただし、部門間の相互理解を妨げ、全社的な協働を阻害する場合には対処が必要となる。共通の上位目標と部門横断的な人事異動が、その調整手段として用いられる。
問52
「強い文化(strong culture)」の特徴と帰結に関する説明として、最も適切なものはどれか。
  • A強い文化は必ず高い業績をもたらす
  • B強い文化は公式の規則を増加させる
  • ✔中核的価値観が強く共有され、従業員の行動に強い影響を与えるため、離職率が低くなりやすい一方、変革の障壁ともなりうる
  • D強い文化は多様性を促進する
  • E強い文化では従業員の行動の一貫性が失われる
解説:【正解】C「中核的価値観が強く共有され、従業員の行動に強い影響を与えるため、離職率が低くなりやすい一方、変革の障壁ともなりうる」 正解はC。強い文化とは、中核的価値観が強く保持され広く共有されている状態を指す。行動の一貫性が高まり、成員の結束と組織へのコミットメントが強まるため離職率が低下する。同時に、共有された前提が強固であるほど、環境変化に応じた前提の見直しが困難になり、変革の障壁となりうる。 誤答の理由:Bは逆で、強い文化は公式化の代替として機能し、規則の必要性をむしろ減じる。Aは誤りで、業績との関係は文化の内容と環境適合に依存する。方向性の誤った強い文化はかえって有害である。Dは誤りで、強い文化は同化圧力を通じて多様性を抑制しやすい。Eは誤りで、一貫性はむしろ高まる。 補足:文化と長期業績の関係については、「強さ」より「適応性」が重要だという議論が有力である。すなわち、顧客・株主・従業員という主要な利害関係者を重視し、変化を主導する行動を評価する文化が長期的な業績と結びつくとされる。

人的資源管理全17問中 4問を掲載

問53
従業員選抜における各手法の予測妥当性に関する知見として、最も適切なものはどれか。
  • A参考照会(リファレンス)は単独で最も妥当性が高い
  • B非構造化面接が最も高い予測妥当性を持つ
  • C筆跡診断は職務業績の有力な予測因子である
  • ✔構造化面接、ワークサンプル、一般知的能力検査は比較的高い予測妥当性を示し、非構造化面接や筆跡診断は低い
  • E予測妥当性は手法によって変わらない
解説:【正解】D「構造化面接、ワークサンプル、一般知的能力検査は比較的高い予測妥当性を示し、非構造化面接や筆跡診断は低い」 正解はD。人事選抜研究の蓄積によれば、一般知的能力検査、ワークサンプル(実際の職務に近い課題の遂行)、構造化面接、誠実性を測る性格検査などが比較的高い予測妥当性を示す。これに対し、非構造化面接、勤続年数、学歴、筆跡診断などは妥当性が低いか、ほとんど予測力を持たない。 誤答の理由:Bは誤りで、非構造化面接は面接官の主観と初頭効果に左右され、構造化面接に劣る。Cは誤りで、筆跡診断の妥当性は繰り返し否定されている。Aは誤りで、参考照会は情報が偏りやすく単独の妥当性は限定的である。Eは誤りで、手法間の差は実務上きわめて重要である。 補足:近年、予測妥当性の推定値そのものを見直す研究(範囲制限や測定誤差の補正方法に関する再検討)が発表されており、絶対値は下方修正される傾向にある。ただし、手法間の相対的な順位、とりわけ構造化が妥当性を高めるという知見は頑健である。実務的には、複数手法の組み合わせと、職務分析に基づく評価基準の事前設定が鍵となる。
問54
構造化面接が非構造化面接より優れているとされる理由として、最も適切なものはどれか。
  • A面接官の主観的な印象をより重視できるため
  • B面接時間を短縮できるため
  • C候補者の緊張を和らげるため
  • ✔全候補者に同じ質問を同じ順序で行い、事前に定めた基準で採点するため、評価の一貫性と比較可能性が高まる
  • E応募者数を増やせるため
解説:【正解】D「全候補者に同じ質問を同じ順序で行い、事前に定めた基準で採点するため、評価の一貫性と比較可能性が高まる」 正解はD。構造化面接は、職務分析に基づく質問(過去の行動を問う行動面接や、仮想場面への対応を問う状況面接)を全候補者に同一の形で実施し、あらかじめ定義された行動基準に照らして採点する。これにより評価者間の一貫性と候補者間の比較可能性が高まり、予測妥当性と法的な防御可能性も向上する。 誤答の理由:Bは副次的な効果にすぎず、むしろ準備には手間がかかる。Cは面接の運用の問題であり本質的理由ではない。Aは逆で、主観的印象の影響を抑えることが目的である。Eは母集団形成の話であり無関係である。 補足:非構造化面接の主な問題は、面接官が最初の数分で形成した印象を裏づける情報を探す確証バイアス、類似性バイアス(自分と似た候補者を高く評価する)、対比効果、そして質問内容が候補者ごとに異なるための比較不能性である。複数面接官による独立採点と事後の照合も、精度を高める手段として有効である。
問55
現実的職務プレビュー(RJP:Realistic Job Preview)の効果として、最も適切なものはどれか。
  • A入社後の訓練を不要にする
  • B職務の魅力のみを強調して応募者数を最大化する
  • C採用コストを常に削減する
  • ✔職務の望ましい面と困難な面の両方を事前に伝えることで、期待を適正化し、入社後の幻滅と早期離職を減らす
  • E応募者の能力を測定する
解説:【正解】D「職務の望ましい面と困難な面の両方を事前に伝えることで、期待を適正化し、入社後の幻滅と早期離職を減らす」 正解はD。現実的職務プレビューは、職務の肯定的側面だけでなく、否定的な側面(不規則な勤務、対人的な負荷、単調な作業など)も率直に事前提示する手法である。過大な期待を抑えることで、入社後の現実の衝撃を緩和し、早期離職を減らす効果があるとされる。 誤答の理由:Bは正反対の方針で、短期的には応募者を増やすが、入社後の幻滅と早期離職を招く。Cは誤りで、応募者数が減ることで一時的に採用コストが増える場合もある(ただし離職コストの削減により総コストは下がりうる)。Aは誤りで、訓練は別途必要である。Eは選抜手法の機能であり、現実的職務プレビューは情報提供の手法である。 補足:効果の機序は、期待の適正化に加えて、応募者自身が適合を判断して自己選択的に辞退できること、そして率直な情報提供が組織への信頼を高めることにあると説明されている。社会化の3段階でいえば、事前段階への介入に位置づけられる。
問56
訓練転移(transfer of training)を高める条件として、最も適切でないものはどれか。
  • A訓練内容が実際の職務課題と類似している
  • B訓練後に実践する機会が職場で用意されている
  • C上司が新しい行動の実践を支援し、フィードバックを与える
  • D訓練で学んだ原理の適用範囲が理解されている
  • ✔訓練を一度限りの単発イベントとして実施し、事後の関与を行わない
解説:【正解】E「訓練を一度限りの単発イベントとして実施し、事後の関与を行わない」 正解はE。訓練転移とは、研修で学んだ知識・技能・態度が実際の職務行動に適用され維持されることを指す。単発で実施し事後の関与を行わない設計は、実践機会の確保、フィードバック、上司の支援といった転移の主要な促進要因をすべて欠くため、最も適切でない。 誤答の理由:A・B・C・Dはいずれも転移を促進する条件である。Aは同一要素説に基づく近転移の条件、Dは原理の一般化による遠転移の条件に対応する。 補足:転移を左右する要因は、訓練設計、学習者特性(学習動機、自己効力感、キャリア関与)、職場環境(実践機会、支援的風土、上司と同僚の支援)の3群に整理される。実務では、研修効果が上がらない原因を研修内容に求めがちだが、実際には職場環境の要因が決定的な場合が多い。研修前の上司との目標合意と、研修後のフォローアップが有効な介入となる。

組織変革全18問中 4問を掲載

問57
レヴィンの3段階変革モデルの順序として正しいものはどれか。
  • A変革 → 解凍 → 再凍結
  • ✔解凍 → 変革 → 再凍結
  • C再凍結 → 変革 → 解凍
  • D解凍 → 再凍結 → 変革
  • E変革 → 再凍結 → 解凍
解説:【正解】B「解凍 → 変革 → 再凍結」 正解はB。レヴィンのモデルでは、まず現状維持を打破する解凍(unfreezing)、次に望ましい状態へ移行する変革(movement)、最後に新しい状態を定着させる再凍結(refreezing)という3段階を踏む。解凍を欠いた変革は抵抗に遭い、再凍結を欠いた変革は元の状態へ回帰する。 誤答の理由:A・C・D・Eはいずれも順序が入れ替わっている。特に「再凍結」を軽視して変革だけで完了と考える実務上の誤りに対応するのがEやDのような選択肢である。 補足:解凍は、推進力を強める、抑制力を弱める、あるいは両方を組み合わせることで達成される。実務上は、抑制力(不安、既得権、慣性)の低減のほうが、推進力の追加(号令やインセンティブ)より抵抗が少なく効果的とされる。なお、変化が常態化した環境では「再凍結」という発想自体が不適切だという批判があり、継続的変化を前提とするモデルも提唱されている。
問58
レヴィンの力の場分析(force field analysis)に基づく変革の進め方として、最も効果的とされるものはどれか。
  • A推進力のみを一方的に強化する
  • ✔抑制力(変革を妨げる力)を特定して低減することを重視する
  • C推進力と抑制力の双方を同時に弱める
  • D力の均衡を無視して指示のみを行う
  • E抑制力を強化して現状を固定する
解説:【正解】B「抑制力(変革を妨げる力)を特定して低減することを重視する」 正解はB。力の場分析では、現状は推進力と抑制力が均衡した状態として捉えられる。推進力のみを強化すると、抑制力も反発的に高まり、緊張が増して抵抗が強くなる。抑制力(不安、スキル不足、既得権の喪失懸念、資源の制約)を特定して取り除くほうが、より少ない摩擦で均衡を移動させられるとされる。 誤答の理由:Aは緊張を高める方法であり、短期的には動くが反発を招きやすい。Cは双方を弱めても均衡点は移動しない。Dは分析を放棄した記述である。Eは変革ではなく現状維持の強化である。 補足:実務では、抑制力の特定に現場の声を聴く過程が不可欠である。抵抗の背後には、しばしば正当な懸念(現場の実情に合わない、必要な資源がない、以前の変革が失敗した)が含まれており、それを情報として扱うことが変革の質そのものを高める。
問59
コッターの変革の8段階モデルの第1段階として、最も適切なものはどれか。
  • A変革のビジョンを策定する
  • ✔危機感(切迫感)を醸成する
  • C短期的な成果を生み出す
  • D変革を組織文化に定着させる
  • E強力な連合体を形成する
解説:【正解】B「危機感(切迫感)を醸成する」 正解はB。コッターの8段階は、(1)危機感の醸成、(2)強力な変革推進連合の形成、(3)ビジョンと戦略の策定、(4)ビジョンの徹底的な伝達、(5)従業員のエンパワーメント(障害の除去)、(6)短期的成果の実現、(7)成果の定着とさらなる変革の推進、(8)新しい方法を組織文化に定着させる、という順で進む。 誤答の理由:Aは第3段階、Cは第6段階、Dは第8段階、Eは第2段階である。順序を問う設問では、危機感の醸成が起点である点が要となる。 補足:コッターは変革失敗の最大の原因として、危機感の醸成を省略して直ちに施策の実行に移ることを挙げている。危機感が共有されないまま進む変革は、表面的な追従と現場での形骸化を招く。また第6段階の短期的成果は、変革の正当性を可視化し、懐疑派を減らし、推進者の消耗を防ぐ役割を持つ。レヴィンの3段階に対応させると、第1〜4段階が解凍、第5〜7段階が変革、第8段階が再凍結に相当する。
問60
変革に対する抵抗の「個人レベルの源泉」として、最も適切でないものはどれか。
  • A習慣(慣れ親しんだ行動様式への依存)
  • B安全欲求(雇用や地位の喪失への不安)
  • C経済的要因(収入減少への懸念)
  • D未知への恐れ
  • ✔組織の構造的慣性
解説:【正解】E「組織の構造的慣性」 正解はE。構造的慣性は組織レベルの抵抗の源泉である。組織には安定を生み出す仕組み(選抜、訓練、社会化、公式化された手続き)が組み込まれており、それらが変化を打ち消す方向に作用する。 誤答の理由:A・B・C・Dはいずれも個人レベルの源泉である。ほかに「選択的な情報処理(自分の見方を支持する情報だけを取り込む)」も個人レベルの源泉として挙げられる。 補足:組織レベルの源泉としては、構造的慣性のほか、限定的な変革の焦点(部分だけを変えても他の下位システムが元に戻す)、集団の慣性(集団規範が個人の変化を抑える)、専門性への脅威、既存の権力関係への脅威、確立された資源配分への脅威が挙げられる。とりわけ権力と資源配分への脅威は、表向きは技術的な反対論として現れることが多く、診断を誤らせやすい。

ストレス全16問中 4問を掲載

問61
職務ストレスにおける「チャレンジ・ストレッサー」と「ヒンドランス・ストレッサー」の区別として、最も適切なものはどれか。
  • Aチャレンジ・ストレッサーは短期的、ヒンドランス・ストレッサーは長期的な負荷を指す
  • Bチャレンジ・ストレッサーは身体的負荷、ヒンドランス・ストレッサーは心理的負荷を指す
  • ✔チャレンジ・ストレッサーは達成や成長に結びつく要求であり、ヒンドランス・ストレッサーは目標達成を妨げる障害的な要求である
  • D両者は同義である
  • Eチャレンジ・ストレッサーは常に有害である
解説:【正解】C「チャレンジ・ストレッサーは達成や成長に結びつく要求であり、ヒンドランス・ストレッサーは目標達成を妨げる障害的な要求である」 正解はC。チャレンジ・ストレッサーは、業務量の多さ、期限の切迫、高い責任など、達成と成長に結びつく可能性のある要求であり、動機づけや業績と正の関連を示すことがある。ヒンドランス・ストレッサーは、組織内政治、役割の曖昧さ、煩雑な官僚的手続き、キャリアの停滞など、目標達成を妨げる要求であり、一貫して業績、満足、定着に負の影響を与える。 誤答の理由:Bは負荷の種類による区別であり定義と異なる。Aは時間軸の区別であり定義と異なる。Dは誤りで、両者は帰結が明確に異なる。Eは誤りで、チャレンジ・ストレッサーは条件次第で正の効果を持つ。 補足:実務的示唆は明確で、「ストレスを一律に減らす」のではなく、ヒンドランス・ストレッサー(無駄な手続き、役割の曖昧さ、政治的な駆け引き)を優先的に除去し、チャレンジ・ストレッサーには十分な資源と裁量を伴わせるべきだということである。
問62
カラセックの要求-統制モデル(demand-control model)に基づく最もストレスの高い職務の類型はどれか。
  • A高要求かつ高統制の職務
  • B低要求かつ高統制の職務
  • ✔高要求かつ低統制の職務
  • D低要求かつ低統制の職務
  • E要求と統制がともに中程度の職務
解説:【正解】C「高要求かつ低統制の職務」 正解はC。要求-統制モデルでは、職務要求(作業負荷、時間的圧力)と職務統制(裁量権、技能活用の自由度)の組み合わせで職務が4類型に分けられる。高要求かつ低統制の「高ストレイン職務」が最も健康リスクが高く、心血管疾患や抑うつとの関連が報告されている。 誤答の理由:Aは「能動的職務」で、要求は高いが裁量があるため学習と成長が促され、ストレインは相対的に低い。Bは「低ストレイン職務」である。Dは「受動的職務」で、健康リスクは中程度だが技能の低下や動機づけの喪失が問題となる。Eは類型として定義されていない。 補足:後にソーシャルサポートを加えた要求-統制-支援モデルが提唱され、高要求・低統制・低支援の「アイソストレイン」状態が最も有害とされた。実務的含意は、業務量そのものを減らせない場合でも、進め方の裁量、優先順位の決定権、支援体制を高めることでストレインを緩和しうるという点にある。
問63
職務要求-資源モデル(JD-Rモデル)の説明として、最も適切なものはどれか。
  • A職務資源は業績とは無関係である
  • B職務要求のみがすべての帰結を決定する
  • ✔職務要求が健康障害プロセスを通じてバーンアウトを、職務資源が動機づけプロセスを通じてエンゲージメントを導き、資源は要求の負の影響を緩衝しうる
  • D職務要求と職務資源は同一の概念である
  • Eこのモデルは特定の職種にのみ適用される
解説:【正解】C「職務要求が健康障害プロセスを通じてバーンアウトを、職務資源が動機づけプロセスを通じてエンゲージメントを導き、資源は要求の負の影響を緩衝しうる」 正解はC。JD-Rモデルは、あらゆる職務の特性を「要求」と「資源」の2つに大別する。要求(過重負荷、時間的圧力、感情的負荷)は消耗を通じて健康障害プロセスを駆動しバーンアウトに至る。資源(自律性、フィードバック、上司や同僚の支援、成長機会)は動機づけプロセスを駆動しワーク・エンゲージメントを高める。加えて、資源は要求が消耗に及ぼす影響を緩衝する調整効果を持つ。 誤答の理由:Bは二重プロセスという中心的主張を欠く。Aは誤りで、資源はエンゲージメントを介して業績と関連する。Dは誤りで、両者は区別される。Eは誤りで、汎用性の高さがこのモデルの利点である。 補足:個人資源(自己効力感、楽観性、レジリエンス)も組み込まれ、資源が資源を呼ぶ好循環(ゲイン・スパイラル)と、消耗が資源を失わせる悪循環(ロス・スパイラル)が想定される。実務では、要求の削減が難しい場合に資源を増やす介入(裁量の拡大、支援体制、成長機会)が有効な選択肢となる。
問64
セリエの一般適応症候群(GAS)の3段階として、最も適切な順序はどれか。
  • A疲憊期 → 抵抗期 → 警告反応期
  • B抵抗期 → 警告反応期 → 疲憊期
  • ✔警告反応期 → 抵抗期 → 疲憊期
  • D警告反応期 → 疲憊期 → 抵抗期
  • E抵抗期 → 疲憊期 → 警告反応期
解説:【正解】C「警告反応期 → 抵抗期 → 疲憊期」 正解はC。セリエの一般適応症候群は、(1)警告反応期(ストレッサーに直面し、一時的に抵抗力が低下した後、生理的な動員が起こる)、(2)抵抗期(適応が働き、抵抗力が高い水準で維持される)、(3)疲憊期(適応資源が枯渇し、抵抗力が低下して健康障害が生じる)という3段階で進む。 誤答の理由:A・B・D・Eはいずれも順序が入れ替わっている。 補足:このモデルは、ストレスが一時的には適応的でありながら、慢性化すると資源の枯渇を通じて健康を損なうことを示す点で重要である。組織的含意として、繁忙期の後に十分な回復期間を設けることの意義、慢性的な高負荷が短期的には維持されているように見えても持続不能であることの理解が挙げられる。

感情と気分全16問中 4問を掲載

問65
「感情(emotion)」と「気分(mood)」の区別として、最も適切なものはどれか。
  • A両者は同義である
  • B感情は持続的で、気分は瞬間的である
  • C感情は無意識であり、気分は意識的である
  • ✔感情は特定の対象に向けられ強く短時間で、気分は対象が不明確で強度が低く持続時間が長い
  • E感情は集団に生じ、気分は個人に生じる
解説:【正解】D「感情は特定の対象に向けられ強く短時間で、気分は対象が不明確で強度が低く持続時間が長い」 正解はD。感情は、特定の原因や対象に対する強い反応であり、表情などに現れやすく、持続時間は短い。気分は、明確な対象を欠き、強度は相対的に低いが、より長く持続する感情状態である。感情は気分に転化することがあり、気分は感情の生起しやすさを左右する。 誤答の理由:Bは両者の説明が逆である。Cは意識水準による区別であり定義と異なる。Aは誤りで、両者は区別される。Eは分析単位の混同である。 補足:気分は一般に、ポジティブ感情とネガティブ感情という2つの独立した次元で捉えられる。両者は単一の連続体の両端ではなく、独立に高低しうる点が重要である。したがって「ポジティブ感情が低い」ことは「ネガティブ感情が高い」ことを意味しない(前者は無感動、後者は苦痛に対応する)。
問66
職場における気分の変動に影響する要因として、研究で報告されているものとして最も適切なものはどれか。
  • A運動は気分を悪化させる
  • B気分は外的要因の影響を一切受けない
  • C曜日や時間帯は気分と無関係である
  • D睡眠不足は気分に影響しない
  • ✔1日の時間帯、睡眠の量と質、運動、社会的交流などが気分に影響する
解説:【正解】E「1日の時間帯、睡眠の量と質、運動、社会的交流などが気分に影響する」 正解はE。研究では、気分に影響する要因として、1日の時間帯(起床後しばらくして高まり、日中に安定し、夕刻以降に低下する一般的な傾向)、曜日、睡眠の量と質、運動、社会的交流、年齢、文化的規範などが報告されている。 誤答の理由:B・C・Dはいずれも実証と反する。特に睡眠不足は、ネガティブ感情の増大、感情調整能力の低下、倫理的判断の劣化と関連することが示されている。Aは誤りで、運動はポジティブ感情を高める効果が確認されている。 補足:実務的含意として、認知資源と感情調整を要する重要な判断(採用面接、業績評価、交渉、懲戒判断)を、疲労や睡眠不足の状態、あるいは長時間の連続処理の後に行うことは、判断の質を損なう危険がある。日程設計そのものが意思決定の質に関わるという視点が有用である。
問67
情動事象理論(Affective Events Theory)の説明として最も適切なものはどれか。
  • A感情は測定不能であるとする立場
  • B感情は職務態度に影響しないとする理論
  • C感情は個人特性のみによって決まるとする理論
  • D感情は組織構造によって完全に規定されるとする理論
  • ✔職場で生じる出来事が従業員の感情反応を引き起こし、それが職務満足や業績、行動に影響するという枠組み
解説:【正解】E「職場で生じる出来事が従業員の感情反応を引き起こし、それが職務満足や業績、行動に影響するという枠組み」 正解はE。情動事象理論は、職場環境(職務要求、自律性、情動労働の要求など)が日々の出来事(上司からの叱責、同僚の援助、目標の達成、対人的な軋轢)を生み、それが感情反応を引き起こし、その反応が職務満足や業績、組織市民行動、逸脱行動に影響するという過程を描く。 誤答の理由:Bは理論の趣旨と正反対である。Cは個人特性のみへの還元で、出来事の役割を無視している。Dは構造決定論であり誤りである。Aは誤りで、日誌法や経験サンプリング法により測定されている。 補足:この理論の重要な貢献は、態度(職務満足)を安定した評価としてのみ捉える見方に対し、日々の感情の揺らぎという時間的な変動を導入した点にある。また、感情に直接駆動される行動(感情駆動行動)と、態度を経由する行動(判断駆動行動)を区別する点も特徴である。実務的には、日常の小さな出来事の積み重ねが態度を形づくるという視点が、管理職の日々の振る舞いの重要性を示唆する。
問68
感情労働(emotional labor)における「表層演技」と「深層演技」の区別として、最も適切なものはどれか。
  • A深層演技は顧客に見破られやすい
  • B表層演技は内面の調整、深層演技は表情の調整である
  • C表層演技は深層演技より一貫して消耗が少ない
  • D両者は同義である
  • ✔表層演技は感じていない感情を表出だけ装うこと、深層演技は求められる感情を実際に感じようと内面を調整することである
解説:【正解】E「表層演技は感じていない感情を表出だけ装うこと、深層演技は求められる感情を実際に感じようと内面を調整することである」 正解はE。表層演技(surface acting)は、実際には感じていない感情を、表情や声によって表出だけ装う調整である。深層演技(deep acting)は、状況の解釈を変えるなどして、求められる感情を実際に喚起しようとする調整である。 誤答の理由:Bは両者の説明が逆である。Cは実証と逆で、表層演技のほうが感情不協和(感じている感情と表出する感情の乖離)を生み、情緒的消耗やバーンアウト、離職意思と強く関連する。深層演技は消耗が相対的に小さく、達成感や顧客からの好反応と関連しうる。Dは誤りである。Aは誤りで、むしろ表層演技のほうが不自然さとして伝わりやすい。 補足:組織的な含意として、笑顔などの表示規則を厳格に課すだけの管理は表層演技を強い、消耗を増やす。深層演技を可能にする条件(顧客対応への裁量、休息、業務の意味づけの共有、困難な顧客への組織的な支援)を整えることが、従業員の健康とサービス品質の双方に資する。

倫理と意思決定全14問中 4問を掲載

問69
倫理的意思決定の基準として一般に挙げられる3つの立場の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
  • A効率・速度・正確性
  • ✔功利主義・権利・公正
  • C分配・手続き・相互作用
  • D認知・感情・行動
  • E期待・手段性・誘意性
解説:【正解】B「功利主義・権利・公正」 正解はB。倫理的判断の代表的な基準は、(1)功利主義(最大多数の最大幸福をもたらす帰結を重視する)、(2)権利(言論の自由、プライバシー、適正手続きなど基本的権利の尊重を重視する)、(3)公正(規則を公平かつ公正に適用し、便益と負担の配分の妥当性を重視する)である。 誤答の理由:Aは業務遂行の指標である。Cは組織的公正の次元であり、倫理理論の分類ではない(ただし公正基準と関連する)。Dは態度の3成分である。Eは期待理論の要素である。 補足:3基準はしばしば結論が食い違う。功利主義は効率と最大化を導きやすいが少数者の権利を犠牲にしうる。権利基準は個人の保護に優れるが、過度に適用すると生産性を損なう可能性がある。公正基準は弱い立場の保護に資するが、リスクや革新を抑制しうる。近年は、これらに加えて、徳倫理(どのような人物であるべきか)やケアの倫理(具体的な関係における責任)の視点も組織倫理の議論に取り入れられている。
問70
コールバーグの道徳性発達理論における3水準6段階のうち、「慣習的水準」の特徴として最も適切なものはどれか。
  • A罰の回避と自己利益の追求によって善悪を判断する
  • ✔他者の期待、対人的な調和、法と秩序の維持に基づいて善悪を判断する
  • C普遍的な倫理原則に基づき、法が原則に反する場合には原則を優先しうる
  • D道徳判断を一切行わない
  • E快楽の量のみによって判断する
解説:【正解】B「他者の期待、対人的な調和、法と秩序の維持に基づいて善悪を判断する」 正解はB。コールバーグは道徳的推論の発達を3水準6段階で整理した。前慣習的水準(段階1:罰の回避、段階2:自己利益の交換)、慣習的水準(段階3:身近な他者の期待に応え良い人であろうとする、段階4:社会の法と秩序の維持を重んじる)、後慣習的(原理的)水準(段階5:社会契約と個人の権利、段階6:普遍的倫理原則)である。 誤答の理由:Aは前慣習的水準である。Cは後慣習的水準である。Dは発達段階の記述ではない。Eは倫理理論の一つの立場を単純化したもので、段階の説明ではない。 補足:組織への含意として、多くの成人は慣習的水準にとどまるとされ、その場合、何が倫理的かの判断は組織の規範と周囲の行動に強く依存する。したがって、個人の道徳性に期待するだけでなく、組織が明示する規範と、実際に報われる行動が倫理的行動を大きく左右する。なお、この理論には文化的・性差的な偏りを指摘する批判(ギリガンによるケアの倫理からの批判など)がある。
問71
レストの倫理的意思決定の4要素モデルにおける段階として、最も適切な順序はどれか。
  • A道徳的判断 → 道徳的認識 → 道徳的行動 → 道徳的意図
  • ✔道徳的認識 → 道徳的判断 → 道徳的意図 → 道徳的行動
  • C道徳的行動 → 道徳的意図 → 道徳的判断 → 道徳的認識
  • D道徳的意図 → 道徳的認識 → 道徳的判断 → 道徳的行動
  • E道徳的認識 → 道徳的行動 → 道徳的意図 → 道徳的判断
解説:【正解】B「道徳的認識 → 道徳的判断 → 道徳的意図 → 道徳的行動」 正解はB。レストのモデルでは、倫理的行動に至るには4つの過程が必要とされる。(1)道徳的認識:その状況に倫理的な争点があると気づく、(2)道徳的判断:何が正しいかを判断する、(3)道徳的意図:正しいとされる行動を実行しようと意図する、(4)道徳的行動:実際に行動する。 誤答の理由:A・C・D・Eはいずれも順序が入れ替わっている。 補足:このモデルの実務的価値は、倫理的失敗がどの段階で生じたかを診断できる点にある。そもそも倫理問題として認識されていないのか(認識の失敗)、判断が誤っているのか、正しいと分かっていても実行の意図が形成されないのか(利害や圧力)、意図はあっても実行できないのか(勇気や手段の欠如)で、必要な対策は異なる。とりわけ第1段階の認識の失敗は、問題が「経営判断」や「業務上の慣行」として枠づけられているときに生じやすい。
問72
「倫理的フェイディング(ethical fading)」ないし道徳的離脱の説明として、最も適切なものはどれか。
  • A倫理規程が古くなり効力を失う現象
  • ✔意思決定の倫理的側面が、経済的・技術的な枠組みによって意識から後退し、倫理問題として認識されなくなる現象
  • C倫理研修の効果が時間とともに減衰する現象
  • D倫理的な人物が組織を離れる現象
  • E倫理的判断が完全に自動化される現象
解説:【正解】B「意思決定の倫理的側面が、経済的・技術的な枠組みによって意識から後退し、倫理問題として認識されなくなる現象」 正解はB。倫理的フェイディングとは、決定が「収益性の問題」「技術的な最適化」「法務上の処理」として枠づけられることで、その倫理的側面が意識から後退し、そもそも倫理問題として認識されなくなる現象である。レストのモデルでいえば、第1段階の道徳的認識が働かない状態にあたる。 誤答の理由:Aは規程の陳腐化であり別問題である。Cは訓練効果の減衰である。Dは人材流出である。Eは自動化の議論であり定義と異なる。 補足:関連する概念に、バンデューラの道徳的離脱がある。婉曲な表現の使用(「人員の適正化」)、責任の転嫁(「上からの指示だ」)、責任の分散(「みんなでやったことだ」)、結果の軽視(「誰も傷つかない」)、被害者の非難といった認知的機制によって、自らの行動と道徳基準の間の不協和が解消される。組織で用いられる語彙そのものが倫理的認識を左右するという点は、実務上重要な示唆である。

組織市民行動全15問中 4問を掲載

問73
組織市民行動(OCB)の定義として最も適切なものはどれか。
  • A上司の指示に従う義務的な行動
  • B職務記述書に明記された中核的な業務の遂行
  • ✔公式の職務要件には含まれないが、組織の効果的な機能に寄与する自発的な行動
  • D組織に損害を与える意図的な行動
  • E報酬と直接連動した成果達成行動
解説:【正解】C「公式の職務要件には含まれないが、組織の効果的な機能に寄与する自発的な行動」 正解はC。組織市民行動は、公式の報酬体系によって直接的に認識・報酬づけられているわけではなく、職務要件にも含まれないが、組織の効果的な機能を促進する裁量的な行動と定義される。同僚の援助、無用な対立の回避、規則の精神を尊重する態度、組織活動への自発的な参加などが含まれる。 誤答の理由:Bは課題業績(task performance)である。Aは職務上の義務への追従であり、裁量性を欠く。Dは反生産的職務行動である。Eは報酬連動の業績行動であり、裁量的・非報酬的という定義要件を満たさない。 補足:業績概念は一般に、課題業績(職務記述書に定められた中核業務の遂行)、文脈業績ないし組織市民行動(社会的・心理的な職場環境を支える行動)、適応業績(変化への対応と学習)に区分される。近年は、この3つに反生産的職務行動を加えた4区分で職務業績全体を捉える整理が一般的である。
問74
オーガンによる組織市民行動の5次元に含まれないものはどれか。
  • A利他主義(他者への直接的な援助)
  • B誠実性(要求水準を超えた勤勉さや規律の遵守)
  • Cスポーツマンシップ(些細な不都合について不平を述べない)
  • D市民道徳(組織の活動への建設的な関与)
  • ✔課題習熟(担当業務の技能水準の高さ)
解説:【正解】E「課題習熟(担当業務の技能水準の高さ)」 正解はE。オーガンの5次元は、利他主義、誠実性、スポーツマンシップ、礼儀正しさ(自分の行動が他者に及ぼす影響に配慮し、事前に情報を共有して問題を予防する)、市民道徳である。課題習熟は担当業務の遂行能力に関わる課題業績の要素であり、組織市民行動の次元ではない。 誤答の理由:A・B・C・Dはいずれも正規の次元である。5つ目が「礼儀正しさ」である点も併せて押さえたい。 補足:組織市民行動は、対象別に個人志向(同僚への援助など)と組織志向(組織の評判を守る、行事に参加するなど)に大別されることもある。両者は規定要因が異なり、個人志向の市民行動は同僚との関係の質に、組織志向の市民行動は組織的公正や組織支援の知覚に強く規定される傾向がある。
問75
組織市民行動の主要な規定要因として、最も適切なものはどれか。
  • A職務の物理的環境のみ
  • B勤続年数のみ
  • ✔職務満足、組織的公正の知覚、組織支援の知覚、上司との交換関係の質、誠実性などのパーソナリティ
  • D組織の規模のみ
  • E報酬の絶対額のみ
解説:【正解】C「職務満足、組織的公正の知覚、組織支援の知覚、上司との交換関係の質、誠実性などのパーソナリティ」 正解はC。メタ分析では、組織市民行動の規定要因として、職務満足、組織的公正(特に手続き的公正)の知覚、組織支援の知覚、上司との交換関係の質、組織コミットメント、そして誠実性や協調性といったパーソナリティが確認されている。 誤答の理由:A・B・D・Eはいずれも単一要因への還元であり、主要な規定要因の説明として不十分である。特にEについては、報酬の絶対額より、その配分が公正だと知覚されるかどうかのほうが市民行動と強く関連する。 補足:これらの規定要因の多くは、社会的交換理論で統一的に説明できる。従業員は、組織や上司から公正な扱いと支援を受けていると知覚すると、互恵性の規範に基づいて、義務を超えた貢献で応えようとする。逆に、契約上の義務のみが強調される経済的交換の関係では、市民行動は生じにくい。
問76
組織市民行動の負の側面に関する説明として、最も適切なものはどれか。
  • A市民行動は業績評価に一切影響しない
  • B市民行動には負の側面は存在しない
  • ✔過度の市民行動は本来業務の時間を圧迫し、役割過重やワーク・ファミリー・コンフリクト、消耗を招きうる
  • D市民行動は同僚の負担を必ず軽減する
  • E市民行動が多いほど常に組織成果が高まる
解説:【正解】C「過度の市民行動は本来業務の時間を圧迫し、役割過重やワーク・ファミリー・コンフリクト、消耗を招きうる」 正解はC。研究では、市民行動が過度になると、本来の職務に充てる時間と認知資源が圧迫され、役割過重、時間的圧迫、家庭生活への干渉、情緒的消耗を招きうることが示されている。また、市民行動が事実上期待され義務化する「シチズンシップ・プレッシャー」が生じると、裁量性という定義的特徴が失われ、ストレスの源となる。 誤答の理由:Bは一面的である。Aは誤りで、実際には市民行動が業績評価に影響することが多く、それが印象管理動機での実施を誘発する。Dは誤りで、援助が相手の学習機会を奪う場合や、援助者に依存が生じる場合がある。Eは誤りで、逓減する効果や負の効果が報告されている。 補足:実務的含意として、市民行動を評価に組み込むことには両義性がある。評価すれば動機づけられるが、同時に義務化と印象管理を招く。また、市民行動の負担が特定の層に偏る(頼まれやすい人に集中する)という公平性の問題も指摘されており、業務の再配分や役割の明確化による対処が必要となる。

ダイバーシティ全21問中 4問を掲載

問77
組織におけるダイバーシティ・マネジメントの3つの視点のうち、「統合と学習」の視点の説明として最も適切なものはどれか。
  • A多様性を数値目標の達成として管理する視点
  • B法令遵守と差別の排除を主目的とする視点
  • C多様な顧客層へのアクセスを得るために多様な人材を配置する視点
  • ✔多様な背景がもたらす視点や知識を業務の進め方そのものに取り込み、組織の学習と変革につなげようとする視点
  • E多様性への配慮を行わない視点
解説:【正解】D「多様な背景がもたらす視点や知識を業務の進め方そのものに取り込み、組織の学習と変革につなげようとする視点」 正解はD。トーマスとエリーは、多様性への組織の姿勢を3つに整理した。(1)差別と公正の視点:法令遵守と機会均等を重視し、同化を前提とするため、多様性の便益は限定的になる。(2)アクセスと正統性の視点:多様な市場に対応するため多様な人材を配置するが、当該人材が特定の役割に固定されやすい。(3)統合と学習の視点:多様な視点を業務プロセスや戦略そのものに反映させ、組織の学習に結びつける。成果につながりやすいのは第3の視点だとされる。 誤答の理由:Bは差別と公正の視点である。Cはアクセスと正統性の視点である。Aは手段の数値管理にすぎず、視点の分類ではない。Eは無策である。 補足:この整理の実務的含意は、多様性の確保(構成の変化)だけでは成果に結びつかず、意思決定過程や業務のやり方に多様な視点が実際に反映される仕組みが必要だという点にある。
問78
「インクルージョン(包摂)」の概念に関する説明として、最も適切なものはどれか。
  • A少数派に配慮して発言を控えること
  • B全員が同じ振る舞いをするよう同化を求めること
  • C多様な属性の人材を採用することそのもの
  • ✔集団への帰属感と、個人としての独自性の尊重がともに満たされていると成員が知覚している状態
  • E組織の構成比率が社会全体と一致していること
解説:【正解】D「集団への帰属感と、個人としての独自性の尊重がともに満たされていると成員が知覚している状態」 正解はD。インクルージョンは、成員が集団の一員として受け入れられている感覚(帰属感)と、自分らしさを抑えずに価値あるものとして扱われている感覚(独自性の尊重)が同時に満たされている状態として概念化される。いずれか一方のみでは、同化(帰属はあるが独自性が失われる)か差別化(独自性はあるが排除される)に陥る。 誤答の理由:Bは同化であり、独自性の要素を欠く。Cは構成の多様性であり、インクルージョンとは区別される。Aは配慮の名を借りた回避であり、対話の欠如を招く。Eは統計的な構成の話である。 補足:ダイバーシティが「誰がその場にいるか」であるのに対し、インクルージョンは「その場でどのように扱われるか」を指す。研究では、構成上の多様性が成果に結びつくかどうかを、インクルージョンの水準が調整することが示されている。多様な人材を採用しても包摂的でない環境では、離職と沈黙が生じ、多様性の便益は実現しない。
問79
「ステレオタイプ脅威(stereotype threat)」の説明として、最も適切なものはどれか。
  • A少数派が多数派に脅威を感じさせる現象
  • B他者に対して固定観念を抱く傾向そのもの
  • C固定観念に基づいて採用判断を行うこと
  • ✔自分の所属集団に関する否定的な固定観念を裏づけてしまうことへの懸念が、認知資源を奪い実際の遂行を低下させる現象
  • E固定観念が完全に消失した状態
解説:【正解】D「自分の所属集団に関する否定的な固定観念を裏づけてしまうことへの懸念が、認知資源を奪い実際の遂行を低下させる現象」 正解はD。ステレオタイプ脅威とは、自分の集団に対する否定的な固定観念が存在する領域で課題に取り組む際、その固定観念を確証してしまうのではないかという懸念が生じ、不安と自己監視によって作業記憶が圧迫され、本来の能力より低い遂行につながる現象である。 誤答の理由:Bは固定観念そのものであり、脅威は当事者側の心理的経験を指す。Cは差別的判断であり別の問題である。Aは概念の誤解である。Eは誤りである。 補足:緩和策として、課題を「能力の測定」ではなく「学習の機会」として枠づけること、当該領域における多様な役割モデルの提示、自己肯定の機会の提供、能力は伸長するという信念(成長マインドセット)の醸成が有効とされる。ただし近年は効果量の再現性に関する議論もあり、単一の介入で解消する問題ではなく、環境全体の設計が重要とされる。
問80
無意識バイアス研修(unconscious bias training)の効果に関する研究知見として、最も適切なものはどれか。
  • A研修は行動変容に直結することが確立している
  • B研修を実施すればバイアスは完全に消失する
  • C研修はまったく効果がないことが確立している
  • ✔認識の向上には一定の効果があるが、単発の研修だけでは行動や組織成果の変化に結びつきにくく、意思決定の仕組みの変更と併用する必要がある
  • E研修は法令上の義務であるため効果を検討する必要はない
解説:【正解】D「認識の向上には一定の効果があるが、単発の研修だけでは行動や組織成果の変化に結びつきにくく、意思決定の仕組みの変更と併用する必要がある」 正解はD。無意識バイアス研修は広く導入されているが、効果検証の結果は限定的である。バイアスの存在についての認識や知識は向上しやすい一方、実際の意思決定行動や組織の構成比率の変化にまで結びついた証拠は乏しい。場合によっては、バイアスは普遍的で不可避だという理解が、かえって是正の努力を弱める逆効果も指摘されている。 誤答の理由:Bは過大な期待である。Cは一面的で、認識面の効果は確認されている。Aは実証と整合しない。Eは効果検証を放棄する立場であり、資源配分の判断として不適切である。 補足:より効果が期待される介入は、判断の仕組みそのものを変えることである。具体的には、評価基準を候補者を見る前に確定する、構造化面接を用いる、候補者を個別ではなく複数まとめて比較評価する、応募書類から属性情報を除く、意思決定の結果を属性別に集計して説明責任を持たせる、といった手法が挙げられる。

国際・異文化全16問中 4問を掲載

問81
海外赴任者が経験する異文化適応の過程に関する古典的な記述として、最も適切なものはどれか。
  • A適応は赴任直後から一貫して直線的に進む
  • ✔当初の高揚(ハネムーン期)の後に幻滅と混乱の時期を経て、徐々に適応が進むという曲線を描くことが多い
  • C適応の困難は語学力のみによって決まる
  • D適応過程に個人差は存在しない
  • E適応が完了した後に困難が生じることはない
解説:【正解】B「当初の高揚(ハネムーン期)の後に幻滅と混乱の時期を経て、徐々に適応が進むという曲線を描くことが多い」 正解はB。異文化適応は、しばしば時間軸に沿った曲線として記述される。赴任直後は新奇性への高揚があり(ハネムーン期)、やがて日常生活と業務上の違いが蓄積して混乱と苛立ちが生じ(カルチャーショック期)、対処方略が形成されるにつれて回復し、適応に至るという流れである。 誤答の理由:Aは直線的な進行を想定しており、混乱期の存在を捉えていない。Cは語学のみへの還元で、価値観、業務慣行、対人規範の違いを無視している。Dは誤りで、個人特性(開放性、曖昧性への耐性、自己効力感)、家族の適応、組織の支援によって大きく異なる。Eは誤りで、帰任時にも困難が生じる。 補足:この曲線モデルには実証上の批判があり、すべての赴任者が同じ経路をたどるわけではない。近年の研究では、適応を業務への適応、対人関係への適応、生活全般への適応という複数の側面に分けて捉え、それぞれ規定要因が異なることが示されている。
問82
帰任時に生じる「逆カルチャーショック」に関する説明として、最も適切なものはどれか。
  • A帰任は常に容易であり問題は生じない
  • ✔帰任者が本国の変化や自身の変化に直面し、期待した役割や評価が得られず不適応を経験する現象であり、離職につながることがある
  • C帰任時の困難は赴任時より必ず小さい
  • D帰任者の経験は組織にとって価値がない
  • E帰任時の問題は語学力の低下のみである
解説:【正解】B「帰任者が本国の変化や自身の変化に直面し、期待した役割や評価が得られず不適応を経験する現象であり、離職につながることがある」 正解はB。帰任者は、本国の組織や社会が自分の不在中に変化していること、自らの価値観や視点が変化していること、そして海外での裁量の大きい役割に比べて帰任後の役割が限定的であることに直面しやすい。期待した処遇や活用が得られない場合、不満と離職につながる。 誤答の理由:Aは実証と反する。Cは誤りで、帰任時の困難は赴任時と同等以上に深刻な場合がある(帰国は容易だという予期があるため落差が大きい)。Dは誤りで、帰任者が獲得した知識とネットワークは組織にとって重要な資産である。Eは一面的である。 補足:組織的対応として、赴任中の本国との継続的な接点の維持(メンターの配置、定期的な情報提供)、帰任の半年から1年前からの配置計画の協議、帰任後に海外経験を活かせる役割の設計、経験を共有する場の提供が有効とされる。帰任者の離職は、投資した育成費用と獲得知識の双方を失う損失として認識される必要がある。
問83
海外赴任者の選抜において重視すべき基準として、最も適切なものはどれか。
  • A本国での技術的業績のみを基準とする
  • ✔技術的能力に加えて、対人関係能力、曖昧性への耐性、文化的感受性、家族の適応可能性を考慮する
  • C語学力のみを基準とする
  • D年齢と勤続年数のみを基準とする
  • E本人の希望のみを基準とする
解説:【正解】B「技術的能力に加えて、対人関係能力、曖昧性への耐性、文化的感受性、家族の適応可能性を考慮する」 正解はB。赴任の失敗要因の研究では、技術的能力の不足より、対人関係上の困難、文化への不適応、そして配偶者や家族の不適応が主要因として繰り返し指摘されている。したがって選抜では、技術的能力に加えて、対人関係能力、曖昧性への耐性、開放性、感情の安定性、そして家族の状況を考慮する必要がある。 誤答の理由:Aは技術偏重の典型的な誤りで、本国での高業績が海外での成功を保証しない。Cは語学のみへの還元である。Dは属性のみによる判断である。Eは本人の意向を尊重する点は重要だが、それのみでは適性の評価にならない。 補足:選抜と併せて、事前の異文化訓練(現地の文化、業務慣行、生活情報、対処方略の学習)、現地でのメンターの配置、家族への支援(配偶者のキャリア、子女の教育)が成功率を高める。特に配偶者の適応支援は、投資対効果の高い施策として知られている。
問84
「文化的知能(cultural intelligence)」の構成要素として、最も適切な組み合わせはどれか。
  • A知能・性格・価値観・態度
  • ✔メタ認知的・認知的・動機づけ的・行動的の4側面
  • C権力格差・個人主義・不確実性回避・男性性
  • D認知・感情・行動の3成分
  • E能力・善意・誠実性の3次元
解説:【正解】B「メタ認知的・認知的・動機づけ的・行動的の4側面」 正解はB。文化的知能は、(1)メタ認知的側面(異文化状況で自らの理解を意識的に点検し調整する)、(2)認知的側面(文化の規範や制度に関する知識)、(3)動機づけ的側面(異文化状況に関与しようとする関心と自信)、(4)行動的側面(言語・非言語の行動を状況に応じて柔軟に変える能力)の4側面から構成される。 誤答の理由:Aは個人差変数の列挙であり構成要素ではない。Cはホフステードの文化次元である。Dは態度の3成分である。Eは信頼の3次元である。 補足:文化的知能は訓練によって開発可能とされる点が実務上重要である。とりわけメタ認知的側面は、特定の国の知識を増やすことより汎用性が高い。個別の文化知識は国の数だけ必要になるが、「自分の解釈が文化的前提に依存しているかもしれない」と点検する習慣は、あらゆる異文化場面に転用できる。

キャリア全18問中 4問を掲載

問85
「バウンダリーレス・キャリア(boundaryless career)」の説明として最も適切なものはどれか。
  • A職務内容を一切変えないキャリア
  • B生涯にわたり一つの組織にとどまるキャリア
  • ✔単一組織内の階梯ではなく、組織の境界を越えて展開するキャリアであり、個人の技能とネットワークが移動可能性を支える
  • D組織が完全に管理するキャリア
  • E昇進のみを目標とするキャリア
解説:【正解】C「単一組織内の階梯ではなく、組織の境界を越えて展開するキャリアであり、個人の技能とネットワークが移動可能性を支える」 正解はC。バウンダリーレス・キャリアは、雇用関係の流動化を背景に提唱された概念で、キャリアの展開が単一組織の階層内に限定されず、組織、職種、産業の境界を越えて進むことを指す。個人の技能の移転可能性と組織を越えたネットワークが、その基盤となる。 誤答の理由:Bは伝統的な組織内キャリアである。Aは職務の固定であり無関係である。Dは組織主導のキャリア管理であり、境界を越える主体性という要素を欠く。Eは昇進志向であり、境界の概念とは異なる。 補足:関連する概念として、プロティアン・キャリア(自己の価値観と心理的成功を基準に、自ら方向づけ変化させるキャリア)がある。両者はしばしば併せて論じられるが、前者が物理的・心理的な移動可能性に、後者が主体性と価値基準に焦点を置く点で区別される。いずれも、キャリアの責任主体が組織から個人へ移行したという認識を共有している。
問86
シャインの「キャリア・アンカー」の概念として、最も適切な説明はどれか。
  • Aキャリアの最終到達点としての役職
  • B組織が従業員に与える職務等級
  • ✔自己の才能、動機、価値観についての自覚が結晶化したもので、キャリア上の選択において譲れない拠り所となる
  • D転職の回数
  • E職務経験の年数
解説:【正解】C「自己の才能、動機、価値観についての自覚が結晶化したもので、キャリア上の選択において譲れない拠り所となる」 正解はC。キャリア・アンカーは、職業経験を通じて形成される自己概念であり、「自分は何が得意か」「何をしたいのか」「何に意味を感じるか」という3つの問いへの答えが統合されたものである。選択を迫られたときに手放せない中核として機能する。 誤答の理由:Bは組織側の格付けである。Aは到達点であり、アンカーは選択の基準となる自己概念である。Dは行動の記録である。Eは経験量である。 補足:シャインは8つの類型を提示した。専門・職能別能力、全般管理能力、自律と独立、保障と安定、起業家的創造性、奉仕と社会貢献、純粋な挑戦、生活様式の統合である。実務的には、本人のアンカーと提供される役割が食い違うと、昇進のような客観的には望ましい処遇であっても不満と離職を招きうる。たとえば専門性をアンカーとする人物を管理職に登用する場合、この不整合が生じやすい。
問87
「エンプロイアビリティ(雇用され続ける能力)」に関する説明として、最も適切なものはどれか。
  • A雇用保障そのものを意味する
  • B特定の企業内でのみ通用する技能を指す
  • ✔労働市場において雇用を獲得し維持しうる能力であり、雇用の流動化に伴い、個人と組織双方の関心事となっている
  • D学歴のみによって決まる
  • E組織が関与すべき事柄ではない
解説:【正解】C「労働市場において雇用を獲得し維持しうる能力であり、雇用の流動化に伴い、個人と組織双方の関心事となっている」 正解はC。エンプロイアビリティは、労働市場において雇用を得て維持しうる能力を指す。長期雇用の保障が相対的に弱まる中で、組織が提供できるのは終身の雇用保障ではなく、成長機会を通じたエンプロイアビリティの向上だという議論が展開されてきた。 誤答の理由:Bは企業特殊的技能であり、移転可能性という要素を欠く。Aは誤りで、能力と保障は別概念である。Dは誤りで、技能、経験、ネットワーク、適応力を含む。Eは誤りで、組織にとっても人材の魅力度と定着に関わる関心事である。 補足:組織にとっての逆説として、エンプロイアビリティを高めると転職しやすくなるという懸念がある。しかし研究では、成長機会の提供が組織支援の知覚とコミットメントを高め、結果として定着に寄与しうることも示されている。鍵となるのは、能力向上の機会と、その能力を発揮できる社内の役割が併せて提供されるかである。
問88
「キャリア・プラトー(キャリアの停滞)」に関する説明として、最も適切なものはどれか。
  • A能力不足のみが原因である
  • B昇進の停止のみを指す
  • ✔昇進の見込みが乏しくなる構造的停滞と、職務内容に変化がなく学習が生じない内容的停滞が区別される
  • D停滞は必ず業績低下を招く
  • E停滞への対処は転職のみである
解説:【正解】C「昇進の見込みが乏しくなる構造的停滞と、職務内容に変化がなく学習が生じない内容的停滞が区別される」 正解はC。キャリア・プラトーは、階層上の昇進が見込みにくくなる構造的(階層的)停滞と、現在の職務において新たな学習や挑戦が生じない内容的(職務内容の)停滞に区別される。組織の階層が限られる以上、構造的停滞は多数の従業員が経験する常態である。 誤答の理由:Bは構造的停滞のみを指しており、内容的停滞を含まない。Aは誤りで、組織の階層構造、事業の成長率、人員構成といった組織側の要因が大きい。Dは誤りで、内容的停滞が伴わなければ業績や満足が維持される場合がある。Eは誤りで、職務の再設計、横断的な異動、専門職としての処遇、後進の育成役割など、組織内での対処が可能である。 補足:実務的に重要なのは、構造的停滞は避けられないと認識したうえで、内容的停滞を防ぐことである。昇進以外の成長経路(専門職コース、プロジェクト参加、ジョブ・クラフティングの余地、後進の指導役割)を設計することが、中堅層の動機づけ維持の鍵となる。

組織学習全16問中 4問を掲載

問89
「暗黙知」と「形式知」の区別として、最も適切な説明はどれか。
  • A形式知は移転できない
  • B暗黙知は文書化された知、形式知は個人の経験知である
  • C両者は同義である
  • D暗黙知は価値が低い
  • ✔暗黙知は言語化が困難で経験に根ざした知であり、形式知は言語や図表で表現され伝達可能な知である
解説:【正解】E「暗黙知は言語化が困難で経験に根ざした知であり、形式知は言語や図表で表現され伝達可能な知である」 正解はE。ポランニーに由来する区別で、暗黙知は「語りうるより多くを知っている」状態を指し、熟練、勘、身体化された技能、文脈依存の判断などが含まれる。形式知は言語、数式、図表、手順書として明示化され、伝達と蓄積が容易な知である。 誤答の理由:Bは両者の説明が逆である。Cは誤りである。Dは誤りで、暗黙知は模倣困難であるがゆえに競争優位の源泉となりうる。Aは誤りで、形式知はむしろ移転が容易である(同時に模倣もされやすい)。 補足:野中らは、両者の相互変換によって組織的な知識創造が進むと論じた。共同化(暗黙知から暗黙知へ、共体験による移転)、表出化(暗黙知から形式知へ、対話と比喩による言語化)、連結化(形式知から形式知へ、体系化と編集)、内面化(形式知から暗黙知へ、実践による体得)の4様式が循環するという枠組みである。
問90
知識移転を阻害する要因として、最も適切でないものはどれか。
  • A知識の暗黙性が高く文脈依存的であること
  • B送り手と受け手の関係が希薄で信頼が乏しいこと
  • C受け手側に関連する予備知識が不足していること
  • D外部由来の知識を軽視する組織内の傾向
  • ✔送り手と受け手が共通の言語と経験基盤を持つこと
解説:【正解】E「送り手と受け手が共通の言語と経験基盤を持つこと」 正解はE。送り手と受け手が共通の言語と経験基盤を共有していることは、知識移転を促進する条件であり、阻害要因ではない。 誤答の理由:A・B・C・Dはいずれも阻害要因である。Aは知識の粘着性の問題で、暗黙的で文脈依存的な知識ほど移転が困難である。Bは移転に必要な密なやりとりと動機づけを欠く。Cは吸収能力の不足であり、受け手が新しい知識を認識し同化し活用する基盤を欠く状態である。Dはいわゆる自前主義の傾向で、外部由来の知識を過小評価する態度である。 補足:吸収能力は、既存の関連知識の蓄積に依存するという再帰的な性質を持つ。すなわち、ある領域の知識を持つ組織ほど、その領域の新しい知識を取り込みやすい。したがって研究開発投資は、新知識の創出だけでなく、外部知識を取り込む能力の形成という副次的な機能を持つと論じられている。
問91
マーチが提示した「探索(exploration)」と「活用(exploitation)」の区別として、最も適切なものはどれか。
  • A活用のみが組織の存続に必要である
  • B探索は既存能力の効率化、活用は新規性の追求である
  • C両者は同義である
  • D探索のみが組織の存続に必要である
  • ✔探索は新たな可能性の追求と実験であり、活用は既存の知識や能力の洗練と効率化である
解説:【正解】E「探索は新たな可能性の追求と実験であり、活用は既存の知識や能力の洗練と効率化である」 正解はE。探索は、実験、変異、リスク負担、発見といった活動を通じて新たな可能性を追求することであり、成果は不確実で長期的である。活用は、既存の知識、技術、能力を洗練し効率化することであり、成果は確実で短期的である。 誤答の理由:Bは両者の説明が逆である。Cは誤りである。AとDはいずれも一方のみを重視しており、両者の均衡という中心的論点を捉えていない。 補足:マーチの重要な指摘は、両者が希少な資源を奪い合う関係にあり、しかも自己強化的な罠が生じやすいという点である。活用は短期的に確実な成果を生むため資源が集まりやすく、探索は成果が不確実なため縮小されやすい(成功の罠)。逆に探索に偏ると、成果に結実しないまま資源が枯渇する(失敗の罠)。この均衡問題への組織的対応が、両利きの経営として論じられている。
問92
「両利きの経営(ambidexterity)」の実現方法に関する説明として、最も適切なものはどれか。
  • A両利きの経営は理論上の概念であり実践例はない
  • B探索と活用は同時に追求できない
  • Cすべての部門で同一の管理手法を用いるべきである
  • D探索部門にも活用部門と同じ短期業績指標を適用すべきである
  • ✔探索と活用を担う組織単位を分離しつつ、経営層が上位で統合する方式や、同一単位内で使い分ける方式などが議論されている
解説:【正解】E「探索と活用を担う組織単位を分離しつつ、経営層が上位で統合する方式や、同一単位内で使い分ける方式などが議論されている」 正解はE。両利きの経営の実現方式としては、探索を担う単位と活用を担う単位を構造的に分離し、それぞれに適した文化・プロセス・評価指標を与えたうえで、経営層が資源配分と統合を担う「構造的両利き」と、同一の単位や個人が状況に応じて両者を使い分ける「文脈的両利き」が議論されている。 誤答の理由:Bは両立不能とする立場で、両利きの概念そのものを否定している。Cは誤りで、探索と活用では適した管理手法が異なる。Dは重要な誤りで、探索活動に短期の業績指標を課すと、確実性の高い活動に流れて探索が消滅する。Aは誤りである。 補足:構造的分離だけでは不十分だという指摘も重要である。分離された探索部門が本体から孤立すると、資源、販路、技術基盤といった既存の強みを活用できず、また成果が本体に統合されない。経営層による明示的な統合の意思と、共通の上位目標の提示が成功の条件とされる。

事例(個人)全25問中 4問を掲載

問93
営業担当の田中さんは「どれだけ努力しても目標は達成できない」と述べ、活動量が落ちている。目標は市場環境の悪化後も据え置かれ、担当地域の顧客は大幅に減少している。期待理論に基づく最も適切な診断はどれか。
  • A誘意性の問題であり、報酬の種類を見直すべきである
  • ✔期待(努力→業績)の問題であり、目標の現実性や必要な資源・支援を見直すべきである
  • C手段性の問題であり、評価と報酬の連動を明確にすべきである
  • D公平性の問題であり、他者との比較基準を変えるべきである
  • E能力の問題であり、直ちに配置転換すべきである
解説:【正解】B「期待(努力→業績)の問題であり、目標の現実性や必要な資源・支援を見直すべきである」 正解はB。期待理論は動機づけを「期待×手段性×誘意性」の乗算として捉える。田中さんの発言は「努力しても業績に結びつかない」という認識を示しており、これは期待(努力→業績の主観確率)が著しく低下した状態である。市場環境の悪化にもかかわらず目標が据え置かれているという事実も、この診断を裏づける。 誤答の理由:Aの誘意性は報酬の魅力の問題で、報酬の内容への言及がない本事例には当てはまらない。Cの手段性は「成果を出しても報われない」という認識の問題であり、発言内容と一致しない。Dの公平理論は他者との比較に関する概念であり、事例には比較対象が現れていない。Eは基本的帰属錯誤の典型で、状況要因(市場環境、目標の据え置き)を無視して個人の能力に原因を帰属している。 補足:介入としては、目標の現実的な再設定、担当地域や顧客リストの見直し、必要な支援と資源の提供が挙げられる。加えて、達成可能な中間目標を設定して小さな成功体験を積ませることは、自己効力感の回復を通じて期待を高める。
問94
ある製造ラインでは作業が細分化され、各作業者は同じ工程だけを繰り返している。欠勤と離職が増え、品質のばらつきも生じている。職務特性モデルに基づく改善策として最も適切なものはどれか。
  • A作業をさらに細分化して習熟を早める
  • B監視カメラを増設して作業の遵守状況を管理する
  • ✔技能多様性とタスク完結性を高め、成果のフィードバックが直接得られるよう職務を再設計する
  • D欠勤者への懲戒を強化する
  • E作業速度の目標値のみを引き上げる
解説:【正解】C「技能多様性とタスク完結性を高め、成果のフィードバックが直接得られるよう職務を再設計する」 正解はC。職務特性モデルでは、技能多様性、タスク完結性、タスク重要性が仕事の有意味感を、自律性が成果への責任感を、フィードバックが結果の知識をもたらし、これらが内発的動機づけ、品質、低い欠勤・離職につながるとされる。本事例は過度の専門化により、これらの中核次元が軒並み低い状態である。 誤答の理由:Aは専門化のさらなる推進であり、人的不経済を悪化させる。Bは統制の強化で、自律性をさらに下げる。Dは症状への対処であり、原因である職務設計に触れていない。Eは要求の引き上げのみで、資源や職務内容の改善を伴わない。 補足:具体策としては、複数工程を担当する職務拡大、工程の一区切りを一貫して担当させるタスク完結性の向上、品質データを作業者自身が直接確認できる仕組み、そして工程改善の権限付与による自律性の向上が考えられる。なお、この効果は成長欲求強度の高い従業員でより強く現れるため、全員に一律に適用するのではなく選択の余地を残す設計も有用である。
問95
あるコールセンターでは「1時間あたりの応答件数」のみを厳格な目標として管理した結果、件数は増えたが、顧客の問題が解決されないまま通話が打ち切られる事例が増加した。この状況の説明として最も適切なものはどれか。
  • A目標設定理論の効果が発揮された望ましい状態である
  • ✔測定される単一指標に行動が集中し、測定されない本質的な成果が犠牲になった状態である
  • C従業員の能力不足が原因である
  • D目標が容易すぎたことが原因である
  • E目標設定理論は業績と無関係であることを示している
解説:【正解】B「測定される単一指標に行動が集中し、測定されない本質的な成果が犠牲になった状態である」 正解はB。目標設定理論は具体的で困難な目標が業績を高めることを示す一方、その負の側面として、目標に設定された側面のみに努力が集中し、目標に含まれない重要な成果が軽視されることが指摘されている。本事例は、応答件数という測定容易な指標が、問題解決という本来の目的を置き換えた典型例である。 誤答の理由:Aは指標の達成のみを見て本来の成果を無視している。Cは能力への帰属だが、原因は制度設計にある。Dは逆で、目標が困難だからこそ達成手段が歪んだ。Eは誤りで、理論は業績を高めるがゆえにこの副作用が生じる。 補足:対処としては、成果を多面的に定義すること(解決率、顧客満足、再架電率と件数の併用)、学習目標の併用、そして数値未達が直ちに制裁に結びつく運用を避けることが挙げられる。単一指標への強い連動は、非倫理的行動の誘因にもなりうる点も併せて重要である。
問96
社内の技術ブログを趣味的に楽しんで執筆していた社員に対し、会社が「1本につき報奨金」を支給する制度を導入した。半年後、報奨金が廃止されると執筆はほぼ停止した。この現象の説明として最も適切なものはどれか。
  • A公平理論により不公平感が生じた
  • B強化理論により行動が完全に定着した
  • ✔認知的評価理論が示す過正当化効果により、内発的動機づけが外的報酬に置き換えられた
  • D期待理論の誘意性が高まった結果である
  • E目標設定理論の効果が現れた
解説:【正解】C「認知的評価理論が示す過正当化効果により、内発的動機づけが外的報酬に置き換えられた」 正解はC。自己決定理論の一部である認知的評価理論によれば、もともと内発的に動機づけられていた活動に、統制的と知覚される外的報酬が導入されると、行動の原因が「面白いから」から「報酬のため」へと移行し(知覚された因果の所在の外化)、報酬が撤去されると行動が維持されなくなる。 誤答の理由:Bは誤りで、行動が定着していれば報酬撤去後も継続するはずである。Aは他者との比較の問題であり、事例に比較対象は現れていない。Dは誤りで、誘意性の上昇だけでは撤去後の停止を説明できない。Eは目標設定の話であり、事例に目標の設定はない。 補足:この効果は報酬の性質に依存する。予告なしの事後的な報酬、卓越性に対する報酬、有能感を伝える情報的なフィードバック(具体的な称賛、読者の反応の共有)は内発的動機づけを損ないにくい。本事例では、報奨金より、読まれた実感や社内での専門家としての承認を高める設計のほうが適切だった可能性が高い。

事例(集団)全53問中 4問を掲載

問97
ある経営会議では、結束の強いメンバーが短時間で全会一致に至ることが多く、反対意見はほとんど出ない。リーダーは冒頭に自らの見解を明示し、外部の意見は求めていない。この状態のリスクとして最も適切なものはどれか。
  • Aフォールトラインが形成されている
  • B社会的手抜きが生じている
  • C集団極性化により意見が分散する
  • ✔集団浅慮が生じ、代替案の検討と反証の吟味が不十分になる
  • E共通情報バイアスは生じない
解説:【正解】D「集団浅慮が生じ、代替案の検討と反証の吟味が不十分になる」 正解はD。集団浅慮は、凝集性が高く、外部から隔離され、指示的なリーダーが存在し、体系的な検討手続きを欠く集団で生じやすい。本事例はこれらの条件をほぼ満たしており、全会一致の速さと反対意見の不在は、無謬性の幻想と自己検閲の兆候と解釈できる。 誤答の理由:Bは集団作業における努力低下であり、意思決定の質の問題とは異なる。Cの集団極性化は意見の極端化であり、分散ではない(記述自体が誤り)。Aのフォールトラインは属性の重なりによる下位集団の分断であり、全会一致の状態と対応しない。Eは誤りで、共有情報が優先される共通情報バイアスはむしろ併発しやすい。 補足:対策として、リーダーが自らの見解を最後に述べる、悪魔の代弁者を指名する、独立した下位集団に並行して検討させる、外部専門家を招く、決定後に再検討の会合を設ける、といった手続きが挙げられる。いずれも、全員一致の圧力を意図的に崩す設計である。
問98
12名のチームで共同作業を行ったところ、個々の貢献が識別できず、成果は全体でのみ評価されている。一部のメンバーの努力量が明らかに低下している。この状況への対処として最も適切なものはどれか。
  • Aチームの人数をさらに増やす
  • ✔個々の貢献が可視化される仕組みを設け、役割を明確に割り当て、必要ならチーム規模を縮小する
  • C全体目標のみをさらに引き上げる
  • D努力が低い者を公開の場で叱責する
  • E評価そのものを廃止する
解説:【正解】B「個々の貢献が可視化される仕組みを設け、役割を明確に割り当て、必要ならチーム規模を縮小する」 正解はB。社会的手抜きは、集団規模が大きく、個人の貢献が識別できない条件で生じやすい。したがって、貢献の可視化(成果物の担当明示、ピア評価)、役割の明確な割り当て、そして規模の適正化が有効な対処である。 誤答の理由:Aは責任の分散を強め、手抜きを助長する。Cは要求の引き上げのみで、識別可能性の問題に触れていない。Dは制裁による対処で、公開の叱責は防衛反応と関係悪化を招き、根本原因を解消しない。Eは誤りで、評価の廃止は識別可能性をさらに下げる。 補足:加えて、課題そのものを本人にとって意味あるものにすること、チーム効力感を高めること、集団の凝集性と業績規範を高めることも抑制要因となる。効果的なチーム規模は一般に9名以下とされることが多く、12名は調整コストと手抜きの両面で不利になりやすい。
問99
あるプロジェクト会議では、全員が既に知っている情報ばかりが繰り返し議論され、一部のメンバーだけが持つ重要な情報が最後まで共有されなかった。その結果、実行段階で重大な問題が判明した。この現象として最も適切なものはどれか。
  • A対比効果
  • B集団極性化
  • C社会的手抜き
  • ✔共通情報バイアス(隠れたプロフィール問題)
  • Eアンカリング効果
解説:【正解】D「共通情報バイアス(隠れたプロフィール問題)」 正解はD。集団討議では、複数の成員が共有している情報のほうが話題に上りやすく繰り返し言及されて重みを増す一方、一人しか持たない固有情報は提示されにくく、提示されても支持者がいないため軽視されやすい。その結果、全情報を統合すれば見えるはずの解が発見されない。 誤答の理由:Bの集団極性化は討議による意見の極端化である。Cは努力量の低下である。Aは直前の比較対象による評価の歪みである。Eは最初の情報への固着である。 補足:対策として、討議前に各自の固有情報を書面で提出させる、メンバーの専門領域を明示して「誰が何を知っているか」を可視化する、リーダーが未言及の情報を意図的に尋ねる、討議時間を十分に確保する(固有情報は後半に出やすい)といった手法がある。トランザクティブ・メモリー・システムの形成も、この問題の構造的な緩和策となる。
問100
ある企画会議では、対面のブレーンストーミングを行っているが、出てくるアイデアの数が少なく、発言も特定の人物に偏っている。改善策として最も適切なものはどれか。
  • Aリーダーが最初に模範となる案を提示する
  • B会議時間を延長して発言を促す
  • C参加人数を大幅に増やす
  • ✔まず各自が個別に案を書き出し、その後に順番に提示して議論する手順に変更する
  • E批判を自由に行えるようにする
解説:【正解】D「まず各自が個別に案を書き出し、その後に順番に提示して議論する手順に変更する」 正解はD。対面ブレーンストーミングの生産性低下は、順番待ちによる産出妨害、他者の評価への懸念、社会的手抜きによって説明される。各自が独立して案を書き出してから提示する手順(名義集団法やブレーンライティング)は、これらの機序を同時に緩和する。 誤答の理由:Bは時間の延長だけで、産出妨害と評価懸念の構造は変わらない。Cは人数増加により産出妨害と手抜きを悪化させる。Aはリーダーの先行提示がアンカーとなり、発想の幅を狭める。Eは批判の自由化で、評価懸念を高めアイデアの産出を抑制する(発散段階では批判を保留するのが原則である)。 補足:発言の偏りへの対処としては、順番に意見を求める進行、発言時間の管理、匿名での事前収集も有効である。電子的な同時入力の手段を用いれば、産出妨害が構造的に解消され、匿名性により地位バイアスも緩和される。

事例(組織)全73問中 4問を掲載

問101
技術革新が速く顧客要求も頻繁に変わる市場で、ある企業は詳細な規則、多段階の承認、機能別の厳格な分業を維持している。意思決定が遅く、現場の判断が上位に滞留している。処方として最も適切なものはどれか。
  • A規則と承認段階をさらに増やして例外を封じる
  • ✔現場への意思決定権限の委譲、公式化の緩和、部門横断的な調整機構の設置により有機的な性格を強める
  • C統制の範囲を狭めて管理者を増やす
  • Dすべての判断を本社に集約する
  • E組織図の名称のみを変更する
解説:【正解】B「現場への意思決定権限の委譲、公式化の緩和、部門横断的な調整機構の設置により有機的な性格を強める」 正解はB。環境の不確実性が高い状況では、情報処理の必要量が増えるため、現場に判断権限を置き、横断的な調整機構によって情報を素早く統合できる有機的構造が適合する。バーンズとストーカーの古典的知見と整合する。 誤答の理由:Aは規則の追加により例外を封じ込めようとする典型的な逆機能で、対応力をさらに失わせる。Cは階層を増やし意思決定を遅らせる。Dは集権化の強化で、環境適合と逆行する。Eは実質を伴わない形式的変更である。 補足:ガルブレイスの情報処理理論によれば、不確実性への対応は、情報処理の必要量を減らす(自己完結的な単位の創設、余剰資源の確保)か、情報処理能力を高める(情報システム、横断的な連結役やチームの設置)かのいずれかである。なお、同一企業内でも単位ごとに適切なモデルは異なり、全社一律の有機化が最適とは限らない。
問102
ある企業は階層削減のため管理職を半減し、一人の管理者が30名を直接管理する体制にした。半年後、部下の育成が滞り、判断が必要な案件が放置され、管理職の疲弊が深刻化している。この結果の説明として最も適切なものはどれか。
  • A統制の範囲は業績と無関係である
  • ✔統制の範囲の拡大に見合う条件(職務の標準化、部下の熟練、情報システム、支援機能)が整っていなかった
  • C管理職の能力不足のみが原因である
  • D階層は多いほど常に望ましい
  • E部下の意欲不足が原因である
解説:【正解】B「統制の範囲の拡大に見合う条件(職務の標準化、部下の熟練、情報システム、支援機能)が整っていなかった」 正解はB。統制の範囲を広げられるのは、部下の経験と能力が高い、職務が標準化され手続きが明確、進捗と成果が情報システムで把握できる、といった監督の必要性が低い条件が揃う場合である。これらを整えずに人数だけを増やせば、支援と指導が手薄になり、管理者の負荷が過大になる。 誤答の理由:Aは誤りで、範囲の適否は業績と満足に影響する。CとEはいずれも個人への帰属で、構造設計という状況要因を無視している。Dは一律の主張で、階層の多さには意思決定の遅延という別の弊害がある。 補足:フラット化を成功させるには、部下側の能力開発、業務の標準化と自律的な判断基準の明示、進捗の可視化、そして管理職が担っていた支援機能を別の形で用意すること(チームリーダー役割、メンター制度、専門スタッフ)が必要である。人数の設定は結果であって、出発点ではない。
問103
ある多国籍企業では、価格設定から採用手続きまで、あらゆる意思決定を本社が承認している。現地の市場変化への対応が遅れ、現地従業員の当事者意識も低い。改善の方向として最も適切なものはどれか。
  • Aすべての意思決定を現地に委ねる
  • ✔領域ごとに集権と分権の線引きを設計し、方針・基準は本社、実行と現地対応は現地に委ねる
  • C承認手続きの段階をさらに増やす
  • D現地法人を廃止して本社直営とする
  • E意思決定の基準を非公開にする
解説:【正解】B「領域ごとに集権と分権の線引きを設計し、方針・基準は本社、実行と現地対応は現地に委ねる」 正解はB。集権化と分権化は二者択一ではなく、領域ごとの設計である。実務では、中核的な価値観、安全基準、法令遵守、ブランドの一貫性、経営幹部の育成は集権とし、実行方法、現地の市場対応、日常的な人事運用は分権とする組み合わせが用いられる。 誤答の理由:Aは全面的な分権で、全社的な一貫性と統制を失う。Cは意思決定をさらに遅らせる。Dは形態の変更にすぎず、権限配分の問題を解決しない。Eは判断基準の秘匿で、現地の自律的判断をさらに困難にする。 補足:分権化を機能させる前提条件は、判断基準の共有、必要な情報へのアクセス、担い手の能力、そして結果責任の明確化である。これらを整えずに権限だけを移すと判断の質が下がり、逆に権限を移さずに責任だけを問うと当事者意識は育たない。標準化と現地適応のジレンマは、この線引きの設計問題として現れる。
問104
マトリクス構造を導入した企業で、担当者が職能上の上司とプロジェクト上の上司から矛盾する優先順位を示され、疲弊している。優先順位を裁定する仕組みはない。この状況の説明と対応として最も適切なものはどれか。
  • Aマトリクス構造では役割葛藤は生じない
  • ✔命令の一元性を放棄する構造では役割葛藤が生じやすく、優先順位の裁定手続きと評価責任の分担を明確にする必要がある
  • C担当者の調整能力の不足が原因である
  • D直ちに構造を単純化して機能別のみに戻すべきである
  • E評価をすべてプロジェクト側に一元化すれば解決する
解説:【正解】B「命令の一元性を放棄する構造では役割葛藤が生じやすく、優先順位の裁定手続きと評価責任の分担を明確にする必要がある」 正解はB。マトリクス構造は、相互依存的な活動の調整促進と専門人材の効率的共有という利点のために、命令の一元性を意図的に放棄する。その代償として二重報告に伴う役割葛藤とストレスが生じるため、機能させるには、優先順位の裁定ルール、資源配分の合意手続き、評価責任の分担を明示する必要がある。 誤答の理由:Aは構造の特性を否定しており誤りである。Cは個人への帰属で、構造的な矛盾を個人の負担に転嫁している。Dは短絡的で、マトリクスを採用した理由(横断的調整の必要)が消えるわけではない。Eは一元化により職能軸の専門性維持と人材育成が損なわれる。 補足:実務的な運用として、両軸の管理者が定期的に優先順位を協議する場、担当者が矛盾を報告できる経路、そして上位の裁定者の明示が挙げられる。担当者に「うまく調整せよ」と求める運用は、構造の設計不備を個人の努力で埋めさせるものであり、離職とバーンアウトを招きやすい。

総合・発展全47問中 4問を掲載

問105
動機づけ理論における「内容理論」と「過程理論」の区別として、最も適切なものはどれか。
  • A内容理論は認知過程を、過程理論は欲求の内容を扱う
  • ✔内容理論は人を動機づける要因が何かを説明し、過程理論は動機づけがどのような認知過程を経て生じるかを説明する
  • C内容理論は集団を、過程理論は個人を対象とする
  • D内容理論は実証的で、過程理論は理論的である
  • E両者に区別はない
解説:【正解】B「内容理論は人を動機づける要因が何かを説明し、過程理論は動機づけがどのような認知過程を経て生じるかを説明する」 正解はB。内容理論は「何が人を動機づけるのか」という動機づけの内容を扱い、マズローの欲求段階説、アルダファのERG理論、ハーズバーグの二要因理論、マクレランドの欲求理論が代表例である。過程理論は「どのような認知過程を経て動機づけが生じるか」を扱い、期待理論、公平理論と組織的公正、目標設定理論、自己決定理論、強化理論(認知を扱わない点で厳密には別系統だが行動の過程を説明する)が該当する。 誤答の理由:Aは両者の説明が逆である。Cは分析レベルの混同で、いずれも主として個人を対象とする。Dは誤りで、実証的支持の程度は理論ごとに異なり、この区別とは対応しない(実際には過程理論のほうが支持は厚い)。Eは誤りである。 補足:実務的には両者を補完的に用いるとよい。内容理論は「この人は何を求めているか」を考える枠組みを与え、過程理論は「なぜ努力が生じないか」を診断する枠組みを与える。たとえば期待理論は、期待・手段性・誘意性のどこに問題があるかという切り分けを可能にする。
問106
ハーズバーグの二要因理論と、ハックマンとオルダムの職務特性モデルの関係として、最も適切な説明はどれか。
  • A両者はまったく無関係の理論である
  • ✔二要因理論は職務内容そのものが満足を生むという主張を提示し、職務特性モデルはそれを操作可能な5次元と媒介過程として精緻化した
  • C職務特性モデルは二要因理論を否定するものである
  • D二要因理論のほうが実証的支持は厚い
  • E職務特性モデルは職務の外的条件のみを扱う
解説:【正解】B「二要因理論は職務内容そのものが満足を生むという主張を提示し、職務特性モデルはそれを操作可能な5次元と媒介過程として精緻化した」 正解はB。二要因理論は、達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進、成長といった職務内容に関わる要因が満足と動機づけを生むと主張し、職務充実という実務を生んだ。職務特性モデルは、その発想を技能多様性、タスク完結性、タスク重要性、自律性、フィードバックという測定可能な5次元と、3つの重要な心理状態を経る媒介過程として体系化した。 誤答の理由:Aは誤りで、理論的な系譜がある。Cは誤りで、否定ではなく精緻化である。Dは逆で、二要因理論は批判的事象法という調査方法への依存と自己奉仕バイアスの可能性が指摘され、実証的支持は職務特性モデルより弱い。Eは誤りで、職務特性モデルは職務内容の内的特性を扱う。 補足:職務特性モデルは、成長欲求強度という調整変数を導入した点でも進展があった。すべての従業員が職務充実を望むわけではないという知見は、二要因理論の一般化された主張への重要な留保となっている。
問107
期待理論と目標設定理論の関係として、最も適切な説明はどれか。
  • A両理論は同一の主張をしている
  • ✔困難な目標の付与は自己効力感と期待に影響しうるため、両者は補完的に作用しうるが、期待理論は困難な目標が期待を下げる可能性も示唆する
  • C両理論は相互に矛盾するため併用できない
  • D目標設定理論は認知過程を扱わない
  • E期待理論は目標の困難さを一切扱わない
解説:【正解】B「困難な目標の付与は自己効力感と期待に影響しうるため、両者は補完的に作用しうるが、期待理論は困難な目標が期待を下げる可能性も示唆する」 正解はB。目標設定理論は、具体的で困難な目標が業績を高めると主張する。期待理論の観点からは、目標が困難であるほど「努力すれば達成できる」という期待は低下しうるため、一見すると緊張関係がある。しかし、困難な目標の付与は「上司は自分にできると考えている」というメッセージとして自己効力感を高めうるため、受容され支援が伴う限り両者は補完的に働く。 誤答の理由:Aは同一視で、両者の焦点(目標の性質と、努力から報酬に至る認知連鎖)は異なる。Cは併用不能とする点で誤りである。Dは誤りで、目標設定理論も目標受容や自己効力感といった認知を扱う。Eは誤りで、期待理論は達成可能性の認知を中核概念とする。 補足:実務的な統合は、困難だが達成可能と本人が信じられる目標を、必要な資源と支援、そして進捗フィードバックとともに与えることである。目標だけを引き上げて資源を伴わせない運用は、期待を下げ、かつ非倫理的な達成手段への誘因を生む。
問108
公平理論と組織的公正論の関係として、最も適切な説明はどれか。
  • A組織的公正論は公平理論を否定した
  • ✔公平理論が扱った結果配分の公正は分配的公正として位置づけられ、その後、手続き的公正、相互作用的公正(対人的・情報的)へと概念が拡張された
  • C両者はまったく別の系譜に属する
  • D手続き的公正は分配的公正の一部である
  • E公平理論は手続きの公正さを主題としていた
解説:【正解】B「公平理論が扱った結果配分の公正は分配的公正として位置づけられ、その後、手続き的公正、相互作用的公正(対人的・情報的)へと概念が拡張された」 正解はB。アダムスの公平理論は、自他の「成果/投入」比の比較に基づく結果配分の公正さを扱った。その後の研究は、結果だけでなく、決定に至る手続きの公正さ(手続き的公正)、決定を伝える際の敬意(対人的公正)、説明の誠実さと十分さ(情報的公正)が独自の効果を持つことを示し、組織的公正という広い枠組みへと発展した。 誤答の理由:Aは否定ではなく包摂と拡張である。Cは誤りで、明確な理論的系譜がある。Dは誤りで、手続き的公正は分配的公正とは独立の次元である。Eは誤りで、公平理論の主題は結果の配分である。 補足:この発展の実務的意義は大きい。結果を望ましくできない場面(減給、降格、不採用、人員削減)でも、手続きと説明の公正さを確保することで、信頼の低下、報復行動、離職といった否定的反応を大きく緩和できる。これはフェア・プロセス効果として知られる。