分野別問題(解説つき)

公認心理師・臨床心理士|分野別 問題インデックス

最終更新:2026年8月11日

公認心理師・臨床心理士は24分野から出題されます。分野別に代表問題を掲載しています。全1000問をまとめて解くならトレーナーへ進んでください。

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公認心理師としての職責の自覚全42問中 8問を掲載

問1
公認心理師法における秘密保持義務に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1秘密保持義務は、公認心理師の登録を取り消された後は適用されない。
  • 2秘密保持義務違反には罰則規定がなく、行政指導のみが行われる。
  • 3秘密保持義務は、要支援者本人の同意があっても解除されない。
  • 4秘密保持義務は、業務上知り得た情報のうち診断名に限って適用される。
  • ✔秘密保持義務は、公認心理師でなくなった後においても継続する。
解説:公認心理師法第41条は「公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする」と定め、資格喪失後も義務が継続する。違反には第46条により罰則(1年以下の拘禁刑〈改正前は懲役〉又は30万円以下の罰金)があり、親告罪である。本人の同意がある場合や、虐待通告など法令に基づく場合は「正当な理由」に該当し得る。
問2
公認心理師法第42条第2項に定める「主治の医師の指示」について、最も適切なものはどれか。
  • 1要支援者に主治の医師がいる場合でも、心理的支援は独立して行うため指示は不要である。
  • 2主治の医師の指示は、精神科医の場合に限り受ける必要がある。
  • ✔要支援者に主治の医師がいる場合、その指示を受けなければならない。
  • 4主治の医師の指示に従わなかった場合、直ちに刑事罰が科される。
  • 5主治の医師の指示は、要支援者の同意がなくても医師から直接聴取すべきである。
解説:第42条第2項は「その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない」と規定する。診療科は精神科に限定されない。違反には刑事罰はないが、第32条第2項により登録の取消し又は名称使用停止の対象となり得る。なお主治医への連絡は要支援者の同意を得て行うことが原則である。
問3
公認心理師の名称使用制限に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1公認心理師は業務独占資格であり、無資格者は心理検査を実施できない。
  • 2登録を受けていない者が「心理師」という名称を用いることは制限されない。
  • 3名称使用制限違反には、1年以下の拘禁刑が科される。
  • 4名称使用制限は、営利目的で使用した場合にのみ適用される。
  • ✔公認心理師は名称独占資格であり、無資格者の名称使用には罰則がある。
解説:公認心理師は名称独占資格であり業務独占ではない。第44条は、公認心理師でない者が「公認心理師」の名称、及び「心理師」という文字を用いた名称を使用することを禁じており、違反には第49条により30万円以下の罰金が科される。無資格者が心理的支援そのものを行うことは法律上禁止されていない。
問4
インフォームド・コンセントに関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1支援の目的、方法、期間、料金、想定される効果と限界を説明する。
  • 2秘密保持の範囲と、その例外となる場合をあらかじめ説明する。
  • ✔同意はいったん取得すれば、支援方針を大きく変更する際も再取得は不要である。
  • 4未成年者の場合、本人の発達段階に応じた説明(アセント)を行う。
  • 5要支援者にはいつでも支援を中断・拒否する権利があることを伝える。
解説:インフォームド・コンセントは一度きりの手続きではなく、支援目標や技法を大きく変更する場合、新たな検査を導入する場合、記録を第三者に提供する場合などには改めて説明と同意が必要である(プロセスとしての同意)。未成年者では保護者の同意に加え、本人の理解力に応じたアセント(賛意)を得ることが求められる。
問5
心理職の多重関係(多重の役割関係)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1多重関係は、要支援者が同意していれば倫理的問題は生じない。
  • 2多重関係とは、複数の心理職が一人の要支援者を担当することをいう。
  • 3小規模地域では避けられないため、多重関係の配慮は不要である。
  • ✔多重関係は搾取や判断の歪みを生じ得るため、原則として避けるべきである。
  • 5終結後であれば、要支援者との性的関係も倫理上問題とならない。
解説:多重関係とは、専門的援助関係に加えて私的・経済的・社会的関係が重複する状態をいい、判断の客観性を損ない搾取のリスクを高めるため原則回避される。本人の同意があっても正当化されない。小規模地域等でやむを得ない場合は、境界の明確化・記録・スーパービジョンによる管理が必要となる。要支援者との性的関係は、終結後を含め職業倫理上明確に禁止される。
問6
秘密保持義務の例外(正当な理由)として、最も適切でないものはどれか。
  • 1要支援者が自傷他害の切迫した危険を示している場合。
  • 2児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合の通告。
  • 3裁判所から証言を命じられた場合。
  • 4要支援者本人から明確な同意を得て情報を提供する場合。
  • ✔所属機関の同僚が事例の内容に興味を示し、雑談として尋ねてきた場合。
解説:秘密保持の例外は、①明確で差し迫った生命の危険(自傷他害)、②虐待の通告義務(児童虐待防止法第6条等)、③法による命令(裁判所の命令等)、④本人の同意、⑤ケースカンファレンス等の正当な専門的必要性、などに限られる。業務上の必要性を欠く同僚との雑談は「正当な理由」に当たらず、守秘義務違反となる。
問7
【事例】中学2年生の女子A。スクールカウンセラーBとの面接で「死にたいと思うことがある。手首を切ったこともある。でも絶対に親にも先生にも言わないで」と述べた。Bの対応として、最も適切なものはどれか。
  • ✔自傷や自殺の危険について丁寧に評価し、守秘の限界を伝えたうえで、共有する相手と範囲をAと話し合う。
  • 2Aとの信頼関係を守るため、内容を誰にも伝えない。
  • 3Aの了解を得ずに、直ちに全教職員に周知する。
  • 4「そんなことを考えてはいけない」と伝え、話題を変える。
  • 5Aが成人するまで、記録を残さないようにする。
解説:生命の危険が関わる場合、秘密保持義務は解除され得る(秘密保持の例外)。しかし一方的な暴露は信頼関係を損なうため、まずリスクアセスメント(頻度・方法・意図・保護因子)を行い、守秘には限界があることを説明したうえで、誰に何をどう伝えるかを本人と協働的に検討することが原則である。無断での全教職員への周知は必要最小限の原則に反する。記録の作成は専門職の責務である。
問8
【事例】公認心理師Cが勤務するクリニックに、面接中の成人クライエントDの配偶者から電話があり「Dが何を話しているか教えてほしい。心配なのだ」と求められた。Cの対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1家族であるため、面接内容を要約して伝える。
  • ✔Dの同意なく通話内容を判断できないため、面接内容の有無を含め回答を控え、Dと相談する旨を伝える。
  • 3配偶者に、Dの診断名のみを伝える。
  • 4Dに無断で配偶者を次回面接に同席させる。
  • 5配偶者からの連絡があった事実をDに伝えない。
解説:成人クライエントの情報は、家族であっても本人の同意なく開示できない。通院・来談の事実自体も秘密に含まれるため、肯定も否定もせず慎重に応じる。ただし配偶者の心配は重要な情報でもあるため、連絡があった事実は本人に伝え、家族への対応方針を本人と協議するのが適切である。自傷他害の切迫した危険がある場合は例外的判断が必要となる。

問題解決能力と生涯学習全34問中 8問を掲載

問1
スーパービジョンに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1スーパーバイジーの心理的問題を治療することが主目的である。
  • 2熟練後は不要となるため、経験10年以上の心理職には勧められない。
  • ✔教育的・支持的・管理的機能を持ち、要支援者の利益保護にも資する。
  • 4スーパーバイザーは事例の責任を一切負わない。
  • 5グループ形式のスーパービジョンは、守秘義務の観点から認められない。
解説:Kadushinらの整理によれば、スーパービジョンには教育的機能(技能・知識の向上)、支持的機能(バーンアウト予防)、管理的機能(サービスの質と倫理の担保)の3機能がある。バイジー個人の治療は行わない(教育分析・個人療法とは区別される)。生涯学習の観点から経験年数を問わず継続が推奨され、グループSVも守秘の枠組みを設定したうえで広く行われる。
問2
臨床心理士資格の更新制度に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1更新制度はなく、一度取得すれば生涯有効である。
  • 23年ごとに更新が必要である。
  • 310年ごとに筆記試験を再受験する必要がある。
  • ✔5年ごとに所定の研修ポイントを取得して更新する必要がある。
  • 5更新は任意であり、行わなくても資格は失効しない。
解説:臨床心理士は5年ごとの資格更新制をとり、日本臨床心理士資格認定協会が定める研修等のポイント(所定の点数)を取得して申請する必要がある。生涯学習を制度的に担保する仕組みである。一方、公認心理師には現時点で更新制度はないが、法第43条で資質向上の責務が定められている。
問3
エビデンスに基づく心理実践(EBPP)の3要素に含まれないものはどれか。
  • 1最良の研究エビデンス
  • 2臨床的専門技能(臨床的熟練)
  • 3患者の特性・文化・価値観・意向
  • ✔実践家個人の直観のみに基づく判断
  • 5上記3要素の統合
解説:米国心理学会(APA)によるEBPPは、①利用可能な最良の研究エビデンス、②臨床家の専門技能、③患者の特性・文化・価値観・意向、の3要素を統合して意思決定することと定義される。個人の直観のみに依拠した判断はEBPPの理念に反する。エビデンスの階層ではメタアナリシス・系統的レビューが上位に位置づけられる。
問4
バーンアウト(燃え尽き症候群)の中核的構成要素として、Maslachが挙げていないものはどれか。
  • ✔被害妄想の出現
  • 2情緒的消耗感
  • 3脱人格化(非人間化)
  • 4個人的達成感の低下
  • 5対人援助職に生じやすいこと
解説:Maslachのバーンアウト概念は、情緒的消耗感、脱人格化(相手を人格をもつ存在として扱えなくなる)、個人的達成感の低下の3要素からなり、対人援助職に生じやすい。妄想は精神病症状であり構成要素ではない。予防にはスーパービジョン、業務量の調整、支援体制、セルフケア、役割の明確化が有効とされる。
問5
教育分析(訓練分析)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1事例の技法的助言を受けることが主目的である。
  • ✔訓練生自身が心理療法を受け、自己理解を深める過程である。
  • 3スーパービジョンと同一のものである。
  • 4資格取得に法律上必須である。
  • 5所属機関の上司が担当することが望ましい。
解説:教育分析は、訓練生自身がクライエントとして分析・心理療法を受けることにより、自己の無意識的葛藤や逆転移の傾向を理解する過程で、精神分析的訓練において重視される。事例検討や技法的助言を行うスーパービジョンとは目的も構造も異なる。法定の必須要件ではなく、上司が担当すると多重関係となるため避けられる。
問6
【事例】経験2年の公認心理師Fは、担当事例が増え、休日も仕事のことが頭を離れず、最近は面接中に集中できないと感じている。Fの対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1自己管理の問題であるため、誰にも相談せず耐える。
  • 2クライエントに事情を説明し、面接時間を自分の都合で短縮する。
  • ✔自身の消耗の状態を認識し、スーパービジョンや業務量の調整、セルフケアについて上司と相談する。
  • 4感情を切り離すため、クライエントへの共感を意図的にやめる。
  • 5直ちに退職する。
解説:情緒的消耗感の増大と集中困難はバーンアウトの初期兆候であり、放置すればクライエントへの支援の質に直結する。専門職には自己のコンディションを把握し維持する責務(セルフケア・自己モニタリング)があり、スーパービジョン、業務量とケースミックスの調整、休養の確保を組織的に検討することが適切である。脱人格化(共感の遮断)はバーンアウトの症状であって対処ではない。
問7
【事例】公認心理師Gは、事例検討会で自分の担当事例を提示することになった。準備として、最も適切なものはどれか。
  • 1クライエントの実名と勤務先を明記して配布する。
  • 2資料は検討会後も参加者が自由に持ち帰れるようにする。
  • 3検討会は専門家の集まりなので、匿名化は不要である。
  • ✔個人が特定されないよう情報を加工し、本人の同意取得や機関の規程を踏まえて提示する。
  • 5うまくいった点のみを提示し、困難な点は伏せる。
解説:事例検討は専門性向上のための正当な目的だが、匿名化(氏名・所属・固有のエピソードの加工)、必要に応じた本人の同意、参加者の守秘の確認、資料の回収・破棄といった配慮が不可欠である。また検討会の意義は困難点や迷いを共有し多角的な視点を得ることにあるため、うまくいった点のみの提示は目的にかなわない。
問8
【事例】公認心理師Kは、自分が用いている技法の有効性に確信がもてず迷っている。対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1自分の経験のみを根拠に継続する。
  • 2流行している技法に無条件で切り替える。
  • ✔対象となる問題に関する研究知見を調べ、クライエントの価値観と自身の技能に照らして方針を再検討する。
  • 4クライエントに技法の選択をすべて委ねる。
  • 5迷いは口外せず、誰にも相談しない。
解説:エビデンスに基づく心理実践(EBPP)は、最良の研究エビデンス、臨床的専門技能、クライエントの特性・文化・価値観・意向の3要素を統合して意思決定することを求める。経験のみへの依拠や流行への無批判な追随はいずれもこの理念に反する。文献の検討に加え、スーパービジョンやコンサルテーションで検討することが有用である。

多職種連携・地域連携全44問中 8問を掲載

問1
コンサルテーションとスーパービジョンの違いについて、最も適切なものはどれか。
  • 1コンサルテーションは上下関係を前提とし、指示に従う義務がある。
  • 2スーパービジョンは他職種に対して行うものである。
  • 3コンサルテーションでは、コンサルタントがケースの全責任を負う。
  • 4両者は同義であり、区別する実益はない。
  • ✔コンサルテーションは異なる専門性を持つ者同士の対等な関係で行われる。
解説:コンサルテーションは、異なる専門性を持つ者同士が対等な立場で、コンサルティが抱える業務上の課題について助言・検討する営みであり、ケースの責任はコンサルティ(依頼者)側に残る。助言を採用するか否かも依頼者の裁量である。一方スーパービジョンは同一専門領域内の階層的・教育的関係で、SVrは一定の責任を共有する。
問2
要保護児童対策地域協議会(要対協)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1設置は児童相談所に限定される。
  • 2虐待を受けた児童のみを対象とし、非行児童は対象外である。
  • ✔参加機関の構成員には守秘義務が課される。
  • 4本人・保護者の同意がなければ情報共有できない。
  • 5法的根拠はなく、任意の連絡会である。
解説:要対協は児童福祉法第25条の2に基づき地方公共団体が設置する(設置は努力義務)。要保護児童・要支援児童・特定妊婦を対象とし、虐待児に限られない。第25条の5により構成員に罰則付きの守秘義務が課されるため、本人同意がなくても関係機関間で必要な情報共有が可能である点が実務上の要である。
問3
地域包括ケアシステムに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1対象は要介護認定を受けた高齢者に限定される。
  • 2医療・介護のみを対象とし、住まいや生活支援は含まない。
  • 3都道府県が一元的に運営する仕組みである。
  • ✔おおむね中学校区を単位とした日常生活圏域を想定している。
  • 5精神障害者は対象に含まれない。
解説:地域包括ケアシステムは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(中学校区が目安)を単位に、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する仕組みで、市町村が主体となって構築する。近年は「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」として精神障害領域にも拡張されている。
問4
チーム医療における公認心理師の役割として、最も不適切なものはどれか。
  • 1心理アセスメントの結果を、他職種に理解可能な言葉で共有する。
  • 2カンファレンスで心理社会的側面からの見立てを提示する。
  • 3患者・家族の意思決定支援に関わる。
  • 4他職種のメンタルヘルス支援に関するコンサルテーションを行う。
  • ✔医師の治療方針に疑問がある場合、患者に直接その旨を伝え中止を勧める。
解説:多職種連携では、疑義がある場合はまず当該職種・チーム内で直接協議し、患者を巻き込んだ形で治療方針を否定することはチームの信頼と患者利益を損なう。心理職は心理社会的視点の提供、心理教育、意思決定支援、他職種へのコンサルテーションなどを担う。
問5
【事例】総合病院の公認心理師Gは、内科に入院中の患者Hから「主治医の説明が理解できず不安だ。でも忙しそうで聞けない」と相談を受けた。Gの対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1Gが主治医に代わって病状と治療方針を説明する。
  • 2「医師は忙しいので我慢するように」と伝える。
  • 3Hに無断で主治医に苦情として伝える。
  • ✔Hの理解と不安の内容を整理し、本人の同意を得たうえで主治医・看護師と共有し、再説明の機会を調整する。
  • 5他院でのセカンドオピニオンをすぐに勧める。
解説:病状や治療方針の説明は医師の責務であり、心理職が代行することはできない。心理職の役割は、患者が何を理解し何に不安を感じているかを整理し、本人の同意を得て医療チームに橋渡しして、患者が主体的に情報を得られるよう支援することである。無断での伝達は守秘の観点から不適切で、我慢を促すのは支援の放棄にあたる。
問6
【事例】地域包括支援センターから、独居の80代男性Iについて「ごみ屋敷状態で近隣とトラブルがあり、支援を拒否している」と公認心理師Jに相談があった。初期対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1本人の同意がなくても強制的に室内を清掃する。
  • 2近隣住民の要望を最優先し、直ちに施設入所を手続きする。
  • 3支援を拒否しているため、関与を終了する。
  • 4警察に通報し、退去を求める。
  • ✔支援拒否の背景(認知機能、抑うつ、喪失体験、過去の支援体験等)を多職種で見立て、関係づくりから始める。
解説:いわゆるセルフネグレクトが疑われる事例では、本人の意思・尊厳を尊重しつつ、背景にある認知症、うつ、身体疾患、喪失体験、過去の支援不信などを多職種で見立てることが出発点となる。強制的介入は関係を断絶させる。生命の危険がある場合は高齢者虐待防止法の枠組み(セルフネグレクトを含む対応)や成年後見制度の検討も行いつつ、粘り強い関係構築(アウトリーチ)が基本となる。
問7
【事例】精神科病院に長期入院していた統合失調症の50代男性Hの退院支援が始まった。公認心理師の役割として、最も適切なものはどれか。
  • 1退院後の住居と就労先を心理師が単独で決定する。
  • 2長期入院者は退院困難なので、支援を行わない。
  • 3本人の意向より家族の希望を優先する。
  • 4退院後は関与を終了する。
  • ✔本人の希望と生活能力、不安を整理し、多職種・地域の支援機関と情報を共有して退院後の生活を組み立てる。
解説:長期入院からの地域移行では、本人の希望を出発点に、生活技能、症状の自己管理、対人不安、経済面を評価し、精神保健福祉士、看護師、医師、相談支援専門員、訪問看護、グループホーム等と連携して支援体制を組み立てる。心理職は本人の意向表明の支援、心理教育、SST、退院後の不安への対応を担う。退院後の継続支援(アウトリーチ)も重要である。
問8
【事例】小学校で、担任・養護教諭・スクールソーシャルワーカー・スクールカウンセラーによるケース会議が開かれた。会議での公認心理師の関わりとして、最も適切なものはどれか。
  • ✔支援目標に照らして必要な範囲の情報を共有し、心理的な見立てと具体的な関わり方を提案する。
  • 2面接で聞いた内容をすべて詳細に報告する。
  • 3他職種の意見に一切異論を述べない。
  • 4心理職の専門用語で説明し、理解は各自に委ねる。
  • 5会議の記録は残さない。
解説:チーム支援では、守秘義務は個人ではなくチームで負う集団守秘義務として運用されるが、共有は支援目的に必要な範囲に限られる(必要最小限の原則)。心理職には、見立てを他職種に伝わる言葉で提示し、教室や家庭での具体的な関わり方に翻訳する役割が求められる。専門用語の多用や無批判な同調は連携の質を下げ、記録は組織的支援の基盤となる。

心理学・臨床心理学の全体像全35問中 8問を掲載

問1
1879年にライプツィヒ大学に世界初の心理学実験室を開設した人物は誰か。
  • 1W. James
  • 2S. Freud
  • ✔W. Wundt
  • 4J. B. Watson
  • 5G. T. Fechner
解説:W. Wundt(ヴント)は1879年にライプツィヒ大学に心理学実験室を創設し、実験心理学の祖とされる。内観法により意識を要素に分解する構成主義を唱えた。Jamesは機能主義、Fechnerは精神物理学、Watsonは行動主義、Freudは精神分析の創始者である。
問2
行動主義に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1意識体験を内観法によって精密に記述することを目指した。
  • ✔J. B. Watsonは、心理学の対象を客観的に観察可能な行動に限定すべきと主張した。
  • 3無意識的葛藤の解釈を中心的な方法とした。
  • 4全体は部分の総和以上であるという命題を掲げた。
  • 5自己実現傾向を人間の基本的動機とみなした。
解説:Watsonは1913年の「行動主義者の見た心理学」で、意識や内観を排し、刺激―反応という観察可能な行動を対象とすべきと主張した。1は構成主義(ヴント)、3は精神分析、4はゲシュタルト心理学、5は人間性心理学(Rogers, Maslow)の主張である。
問3
ゲシュタルト心理学の知覚の体制化に関する法則として、最も適切でないものはどれか。
  • 1近接の要因
  • 2類同の要因
  • 3閉合の要因
  • ✔強化の要因
  • 5よい連続の要因
解説:ゲシュタルト心理学(Wertheimer, Köhler, Koffka)は、近接・類同・閉合・よい連続・共通運命などの群化の要因(プレグナンツの法則)を示した。「強化」はオペラント条件づけの概念であり、ゲシュタルト心理学の法則ではない。仮現運動(φ現象)の研究がこの学派の出発点となった。
問4
人間性心理学(第三勢力)の特徴として、最も適切なものはどれか。
  • 1人間の行動をすべて条件づけの結果として説明する。
  • 2リビドーの発達段階により人格形成を説明する。
  • 3情報処理モデルにより認知過程を説明する。
  • 4脳の神経回路の観点から心的過程を還元的に説明する。
  • ✔自己実現傾向や主体性、現象学的な体験世界を重視する。
解説:人間性心理学は行動主義(第一勢力)と精神分析(第二勢力)に対する第三勢力として1950年代以降に台頭し、Rogersの自己理論、Maslowの欲求階層説・自己実現などに代表される。人間を全体的・主体的存在としてとらえ、現象学的な体験(内的照合枠)を重視する点が特徴である。
問5
生物心理社会モデル(BPSモデル)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1疾患を生物学的要因のみで説明するモデルである。
  • 2心理的要因を最も重視し、他を副次的に扱う。
  • ✔生物学的・心理的・社会的要因の相互作用として理解するモデルである。
  • 4Engelが提唱した生物医学モデルの別名である。
  • 5精神疾患にのみ適用されるモデルである。
解説:Engelが1977年に提唱した生物心理社会モデルは、生物医学モデルの還元主義を批判し、疾病と健康を生物学的要因(遺伝、脳、身体)、心理的要因(認知、感情、行動)、社会的要因(家族、職場、文化、経済)の相互作用として理解する枠組みである。身体疾患を含む医療全般に適用され、多職種連携の理論的基盤ともなっている。
問6
臨床心理学における「見立て(ケースフォーミュレーション)」に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1診断名を確定することそのものである。
  • 2一度作成したら変更しない。
  • 3クライエントには一切共有しない。
  • ✔問題の成り立ちと維持要因について仮説を立て、支援方針に結びつける作業である。
  • 5検査結果のみから機械的に導かれる。
解説:ケースフォーミュレーションは、問題がどのように生じ(発症因)、何によって維持され(維持因)、何が回復を支えるか(保護因)について仮説を立て、介入方針に結びつける作業である。診断名の付与とは異なり、個別性を重視する。支援経過の情報により随時修正される作業仮説であり、クライエントと共有し協働的に検討することが有用とされる。
問7
コミュニティ心理学の基本的考え方として、最も適切なものはどれか。
  • 1問題の原因を個人の病理に還元して理解する。
  • 2支援は専門機関の中で完結すべきである。
  • 3非専門家(ボランティア、当事者)の関与は避けるべきである。
  • 4危機介入はコミュニティ心理学の対象外である。
  • ✔個人と環境の適合を重視し、予防、エンパワメント、社会資源の活用を志向する。
解説:コミュニティ心理学は、個人の病理ではなく個人と環境の適合(person-environment fit)に着目し、予防(特に一次予防)、エンパワメント、危機介入、コンサルテーション、社会資源の開発とネットワーキング、非専門家の活用(当事者・ピアサポート)を重視する。待つ支援から出向く支援(アウトリーチ)への転換もその特徴である。
問8
臨床心理学の歴史に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔Witmerは1896年に世界初の心理クリニックを開設した。
  • 2Binetは投影法検査を開発した。
  • 3Rogersは行動療法の創始者である。
  • 4Beckは来談者中心療法を体系化した。
  • 5Wolpeは精神分析の創始者である。
解説:L. Witmerは1896年にペンシルベニア大学に心理クリニックを開設し、「臨床心理学(clinical psychology)」の語を用いたことで臨床心理学の祖とされる。Binetは知能検査(ビネー・シモン尺度)、Rogersは来談者中心療法、Beckは認知療法、Wolpeは系統的脱感作法(行動療法)、Freudは精神分析の創始者である。

心理学における研究全38問中 8問を掲載

問1
実験法における独立変数と従属変数の説明として、最も適切なものはどれか。
  • 1独立変数は測定される結果、従属変数は操作される要因である。
  • ✔独立変数は実験者が操作する要因、従属変数は測定される結果である。
  • 3独立変数と従属変数はいずれも統制されるべき要因である。
  • 4剰余変数を独立変数として扱うことで内的妥当性が高まる。
  • 5独立変数は必ず量的変数でなければならない。
解説:独立変数は実験者が意図的に操作する原因側の変数、従属変数はその影響を受けて測定される結果側の変数である。両者以外で従属変数に影響し得る変数を剰余変数(交絡変数)といい、統制することで内的妥当性が高まる。独立変数は群分けのような質的変数でもよい。
問2
無作為割付(ランダム割り付け)の主たる目的として、最も適切なものはどれか。
  • 1標本の代表性を高め、外的妥当性を確保するため。
  • ✔既知・未知の交絡変数を群間で均等化し、内的妥当性を高めるため。
  • 3検定力を高め、第2種の誤りを完全に排除するため。
  • 4測定尺度の信頼性を高めるため。
  • 5研究参加者の脱落を防ぐため。
解説:無作為割付は、参加者を確率的に各条件へ配分することで、年齢や重症度などの既知の交絡だけでなく、研究者が想定していない未知の交絡も期待値として群間で均等化し、因果推論の内的妥当性を高める。母集団からの無作為抽出(サンプリング)は外的妥当性に関わるもので、割付とは区別される。
問3
内的妥当性を脅かす要因として、最も適切でないものはどれか。
  • 1歴史(事件)
  • 2成熟
  • ✔標本の母集団代表性の低さ
  • 4テスト効果(練習効果)
  • 5統計的回帰
解説:Campbell & Stanleyが挙げた内的妥当性の脅威には、歴史、成熟、テスト効果、測定用具の変化、統計的回帰、選択、脱落(実験的死亡)などがある。標本の代表性の低さは、結果をどこまで一般化できるかという外的妥当性の問題であり、内的妥当性の脅威には分類されない。
問4
相関関係と因果関係に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1強い相関があれば因果関係があると結論できる。
  • 2相関係数が0であれば、2変数間にいかなる関連もない。
  • 3相関研究では時間的先行性が保証されるため、因果推論が可能である。
  • ✔第三変数の影響により、因果関係のない2変数間に相関が生じることがある。
  • 5相関係数の値は測定単位に依存して変化する。
解説:共変関係(相関)は因果の必要条件にすぎず、因果推論には①共変関係、②時間的先行性、③他の説明の排除、の3条件が要る。第三変数(交絡)により見かけ上の相関(擬似相関)が生じ得る。Pearsonの相関係数は線形関係の指標であり、U字型のような非線形関係では0に近くなる。また標準化されているため単位に依存しない。
問5
単一事例実験計画(シングルケースデザイン)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 11事例のみのため、実験的統制の概念は適用されない。
  • 2多層ベースラインデザインは、介入を同時に全対象へ導入する。
  • 3統計的検定を用いなければ効果を判断できない。
  • 4不可逆的な学習効果をもつ介入にABABデザインは最適である。
  • ✔ABABデザインでは、介入の除去後にベースラインへ戻るかを確認する。
解説:ABABデザイン(反転法)は、ベースライン(A)→介入(B)→介入除去(A)→再導入(B)と反転させ、行動が介入に随伴して変化するかで機能的関係を検証する。ただし学習のように不可逆な効果には反転が適さず、その場合は複数の行動・場面・対象に時間をずらして介入する多層ベースラインデザインを用いる。効果判定は視覚的分析が基本である。
問6
研究倫理に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • ✔研究上の必要があれば、参加者の同意なく診療記録を二次利用できる。
  • 2研究参加は自由意思に基づき、いつでも撤回できることを説明する。
  • 3ディセプション(欺瞞)を用いた場合、事後にデブリーフィングを行う。
  • 4研究計画は倫理審査委員会の承認を得る。
  • 5利益相反がある場合は適切に開示する。
解説:診療記録等の既存情報の研究利用には、原則としてインフォームド・コンセント、または適切なオプトアウト等の手続きと倫理審査委員会の承認が必要である(人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針)。研究上の必要性のみを理由に同意手続きを省略することはできない。
問7
質的研究に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1仮説検証を目的とし、代表性のある大標本を必要とする。
  • 2分析者の解釈は排除されるため、信頼性の検討は不要である。
  • 3グラウンデッド・セオリー・アプローチは量的研究の一手法である。
  • 4結果の一般化可能性が主要な評価基準である。
  • ✔現象の意味や過程を記述・理解することを目的とし、理論的サンプリングを用いることがある。
解説:質的研究は、現象の意味・過程・文脈を厚く記述し理解することを目的とし、理論的飽和に至るまでデータ収集と分析を並行させる理論的サンプリングを用いることがある(グラウンデッド・セオリー・アプローチ)。分析者の関与は不可避のため、トライアンギュレーション、メンバーチェッキング、監査可能性などにより信用性(trustworthiness)を担保する。統計的一般化ではなく、転用可能性が問われる。
問8
研究デザインとエビデンスレベルに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔系統的レビュー・メタアナリシスは、一般に最も高いエビデンスレベルに位置づけられる。
  • 2症例報告は無作為化比較試験より高いエビデンスレベルとされる。
  • 3横断研究は因果関係の立証に最も適する。
  • 4専門家の意見は最上位のエビデンスである。
  • 5コホート研究は介入研究の一種である。
解説:一般的なエビデンス階層では、系統的レビュー・メタアナリシス>無作為化比較試験(RCT)>コホート研究>症例対照研究>横断研究>症例報告>専門家の意見の順に位置づけられる。横断研究は同一時点の測定であり時間的先行性を示せない。コホート研究は曝露の有無を追跡する観察研究であり、介入研究ではない。

心理学に関する実験全41問中 8問を掲載

問1
尺度水準の説明として、最も適切なものはどれか。
  • 1名義尺度では大小関係を比較できる。
  • ✔比率尺度では比の計算が意味をもつ。
  • 3順序尺度では間隔の等価性が保証される。
  • 4間隔尺度には絶対原点(真の0)がある。
  • 5血液型は順序尺度である。
解説:名義尺度は分類のみ(血液型など)、順序尺度は大小の順序のみで間隔は等価でない、間隔尺度は間隔が等価だが絶対原点をもたない(摂氏温度、知能指数)、比率尺度は絶対原点をもち比の計算が可能(身長、反応時間、回数)。「30℃は15℃の2倍暑い」とは言えないが、「反応時間30秒は15秒の2倍」とは言える。
問2
帰無仮説検定における第1種の誤りの説明として、最も適切なものはどれか。
  • 1帰無仮説が偽であるのに棄却しない誤り。
  • 2効果量を過小評価する誤り。
  • ✔帰無仮説が真であるのに棄却してしまう誤り。
  • 4標本サイズを過大に設定する誤り。
  • 5検定力を1に近づけすぎる誤り。
解説:第1種の誤り(αエラー)は「本当は差がないのに、差があると判断する」誤りで、有意水準αがその確率を表す。第2種の誤り(βエラー)は「本当は差があるのに、差がないと判断する」誤りで、1−βを検定力(検出力)という。αを小さくするとβは大きくなるトレードオフがあり、標本サイズの増加は両者の改善に寄与する。
問3
効果量に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1効果量は標本サイズが大きいほど自動的に大きくなる。
  • 2p値が小さいほど効果量は必ず大きい。
  • 3Cohenのdは相関の効果量指標である。
  • ✔効果量は、差や関連の大きさを標本サイズに依存しにくい形で表す指標である。
  • 5効果量は有意差が認められた場合のみ報告する。
解説:効果量は差や関連の実質的な大きさを示す指標で、標本サイズに直接依存しない点がp値と大きく異なる。標本が巨大であればごく小さな差でも有意になるため、p値と併せて効果量と信頼区間を報告することが推奨される。Cohenのdは平均値差、rは相関、η²・偏η²は分散分析、オッズ比はカテゴリカルデータの効果量指標である。
問4
対応のあるt検定を用いるのが最も適切な場面はどれか。
  • 13群の平均値を同時に比較する。
  • 2独立した2群の分散を比較する。
  • 32つのカテゴリ変数の関連を検討する。
  • 41つの連続変数から別の連続変数を予測する。
  • ✔同一対象者の介入前後の得点を比較する。
解説:対応のあるt検定(対応標本t検定)は、同一対象者の前後比較やマッチングされた対の比較に用いる。3群以上の平均比較は分散分析、2群の分散比較はF検定、カテゴリ変数間の関連はχ²検定、予測は回帰分析を用いる。対応のあるデータに独立標本t検定を用いると検定力が低下する。
問5
因子分析に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔観測変数の背後にある潜在的な共通因子を抽出する手法である。
  • 2因子数は必ず観測変数の数と一致する。
  • 3斜交回転は因子間の相関を仮定しない。
  • 4因子負荷量は必ず0以上1以下の値をとる。
  • 5探索的因子分析では、事前に因子構造を明確に指定する。
解説:因子分析は複数の観測変数の相関構造から、背後の潜在的共通因子を推定する手法である。バリマックス回転など直交回転は因子間無相関を、プロマックス回転など斜交回転は因子間相関を仮定する。因子負荷量は因子と観測変数の相関に相当し、負の値もとる。事前に構造を指定して適合度を検証するのは確認的因子分析である。
問6
尺度の信頼性と妥当性に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1Cronbachのα係数は再検査信頼性の指標である。
  • ✔Cronbachのα係数は内的整合性の指標であり、項目数が多いほど高くなりやすい。
  • 3妥当性が高ければ、信頼性は必ずしも必要ない。
  • 4構成概念妥当性は、専門家が項目内容を吟味することのみで確認できる。
  • 5信頼性が高ければ、その尺度は必ず妥当である。
解説:Cronbachのαは項目間の内的整合性を示す指標で、項目数が増えると値が高くなりやすい性質がある。再検査信頼性は時間的安定性、評定者間信頼性は評定者の一致度を示す。信頼性は妥当性の必要条件だが十分条件ではない(安定して的外れな測定はあり得る)。構成概念妥当性は収束的・弁別的証拠など多面的に検討される。
問7
分散分析(ANOVA)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 12群の比較にのみ用いられる。
  • 2有意であれば、どの群間に差があるかも直ちに特定できる。
  • ✔3群以上の平均値の差を、全体として検定する手法である。
  • 4多重比較を行うと第1種の誤りが減少する。
  • 5二要因分散分析では交互作用は検討できない。
解説:分散分析は3群以上の平均値差を、群間分散と群内分散の比(F値)により全体として検定する。有意であっても具体的にどの対に差があるかは特定できないため、Tukey法やBonferroni法等の多重比較を行う。多重比較の補正は、検定の反復により膨張する第1種の誤りを制御するために行う。二要因以上のデザインでは主効果に加え交互作用を検討できる。
問8
正規分布に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1平均±1SDの範囲に、およそ95%のデータが含まれる。
  • 2平均、中央値、最頻値は必ず異なる値をとる。
  • 3偏差IQ130は、平均から1SD上に相当する。
  • ✔平均±1SDの範囲に、およそ68%のデータが含まれる。
  • 5標準化により、平均0・標準偏差100のz得点となる。
解説:正規分布では、平均±1SDに約68%、±2SD(正確には1.96SD)に約95%、±3SDに約99.7%が含まれる。平均・中央値・最頻値は一致する。偏差IQは平均100・SD15なので、130は平均から2SD上(上位約2.3%)に相当する。z得点は平均0・標準偏差1に標準化した値である。

知覚及び認知全42問中 8問を掲載

問1
知覚の恒常性に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1網膜像の変化に応じて、知覚される対象の性質も変化することをいう。
  • 2恒常性は明るさには生じるが、色には生じない。
  • ✔距離が変化して網膜像の大きさが変わっても、対象の大きさは一定に知覚される。
  • 4恒常性は乳児期には存在せず、学童期に獲得される。
  • 5恒常性が働くと錯視は生じなくなる。
解説:知覚の恒常性とは、観察条件が変化して近刺激(網膜像)が変わっても、遠刺激(対象そのもの)の性質が一定に知覚される現象で、大きさ・形・明るさ・色などに生じる。生後数か月の乳児でも大きさの恒常性が確認されている。恒常性の働きはPonzo錯視やAdelsonのチェッカーシャドウ錯視のように、むしろ錯視の一因ともなる。
問2
Baddeleyのワーキングメモリモデルの構成要素に含まれないものはどれか。
  • 1音韻ループ
  • 2視空間スケッチパッド
  • 3中央実行系
  • ✔感覚記憶レジスタ
  • 5エピソード・バッファ
解説:Baddeleyのワーキングメモリモデルは、当初は中央実行系・音韻ループ・視空間スケッチパッドの3要素からなり、2000年にエピソード・バッファが追加された。感覚記憶(感覚レジスタ)はAtkinson & Shiffrinの多重貯蔵モデルにおける最初の段階であり、ワーキングメモリモデルの構成要素ではない。
問3
系列位置効果に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1初頭効果は短期記憶、新近性効果は長期記憶を反映する。
  • 2リストの中央部の項目が最も再生されやすい。
  • 3提示速度を遅くすると新近性効果が増大する。
  • 4系列位置効果は視覚呈示でのみ生じる。
  • ✔遅延再生(干渉課題の挿入)により新近性効果が消失する。
解説:系列位置曲線はU字型を示し、リスト前半の初頭効果はリハーサルによる長期記憶への転送を、末尾の新近性効果は短期記憶に残存する情報を反映すると考えられる。再生前に計算課題などの干渉を挟むと新近性効果のみが消失し、提示速度を遅くすると初頭効果のみが増大する。この二重乖離が短期・長期記憶の区別を支持する。
問4
選択的注意に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔Treismanの減衰説では、非注意チャネルの情報は弱められるが完全には遮断されない。
  • 2カクテルパーティ効果は、非注意情報が完全に遮断されることを示す。
  • 3Broadbentのフィルタ理論は、意味処理の後に選択が生じるとした。
  • 4非注意性盲(inattentional blindness)は注意の容量が無限であることを示す。
  • 5ストループ効果は注意の分割が容易であることを示す。
解説:Broadbentの初期選択説(フィルタ理論)は物理的特徴による早期の遮断を仮定したが、非注意耳で自分の名前に気づく現象などから、Treismanは非注意情報が完全遮断ではなく減衰されるとする減衰説を提唱した。非注意性盲は注意資源の限界を、ストループ効果は自動処理の干渉と抑制の必要性を示す。
問5
奥行き知覚の手がかりのうち、両眼手がかりに該当するものはどれか。
  • 1きめの勾配
  • ✔両眼視差
  • 3重なり(遮蔽)
  • 4運動視差
  • 5線遠近法
解説:奥行き手がかりは、両眼手がかり(両眼視差、輻輳)と単眼手がかりに分かれる。単眼手がかりには絵画的手がかり(重なり、きめの勾配、線遠近法、大気遠近法、相対的大きさ、陰影)と運動手がかり(運動視差)がある。両眼視差は左右の網膜像のずれで、立体視(ステレオ視)の主要な基盤となる。
問6
長期記憶の分類に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1手続き記憶は宣言的記憶に含まれる。
  • ✔エピソード記憶と意味記憶は、いずれも宣言的(顕在)記憶に分類される。
  • 3プライミングは顕在記憶の一種である。
  • 4意味記憶は、特定の時間・場所と結びついた個人的体験の記憶である。
  • 5展望的記憶は過去の出来事の記憶を指す。
解説:長期記憶は、言語化可能な宣言的(顕在)記憶と、言語化しにくい非宣言的(潜在)記憶に大別される。宣言的記憶はエピソード記憶(時空間的文脈を伴う個人的体験)と意味記憶(一般的知識)に分かれ、非宣言的記憶には手続き記憶、プライミング、古典的条件づけが含まれる。展望的記憶は「これからすること」の記憶である。
問7
忘却と記憶の変容に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1Ebbinghausの忘却曲線では、忘却は時間とともに一定の速度で進行する。
  • ✔目撃証言は事後情報により変容し得る(事後情報効果)。
  • 3順向干渉とは、後の学習が先の学習の記憶を妨害することをいう。
  • 4フラッシュバルブ記憶は、鮮明であるため常に正確である。
  • 5舌先現象は、記憶が完全に消失していることを示す。
解説:Loftusらの研究により、事件後に与えられた情報(誘導的な質問の語法等)が記憶を変容させることが示されている(事後情報効果)。忘却曲線は初期に急速で以後緩やかになる。先の学習が後の記憶を妨げるのが順向干渉、後の学習が先の記憶を妨げるのが逆向干渉である。フラッシュバルブ記憶は主観的鮮明さと正確さが一致しない。舌先現象は検索の失敗であり、貯蔵の喪失ではない。
問8
ヒューリスティックに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1代表性ヒューリスティックは、常に正確な確率判断をもたらす。
  • 2アンカリング効果は、初期値の影響を受けない判断を指す。
  • ✔利用可能性ヒューリスティックとは、思い出しやすさに基づき頻度や確率を判断することをいう。
  • 4ヒューリスティックはアルゴリズムと同義である。
  • 5確証バイアスとは、自説に反する情報を優先的に探索する傾向である。
解説:利用可能性ヒューリスティックは、想起しやすい事例に基づいて頻度や確率を過大に見積もる判断方略で、報道の多い事故の危険性を過大評価する例が知られる。代表性ヒューリスティックは典型性に基づく判断で、基準率の無視や連言錯誤を生む。アンカリングは初期値に引きずられる効果、確証バイアスは自説に合う情報を優先的に探す傾向である。ヒューリスティックは簡便法であり、必ず正解に至るアルゴリズムとは異なる。

学習及び言語全39問中 8問を掲載

問1
古典的条件づけにおける用語の対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1食物=条件刺激、メトロノーム音=無条件刺激
  • 2唾液分泌=条件刺激、食物=条件反応
  • ✔食物=無条件刺激、メトロノーム音=条件刺激
  • 4メトロノーム音=無条件反応、唾液分泌=無条件刺激
  • 5食物=中性刺激、メトロノーム音=無条件反応
解説:Pavlovの実験では、生得的に唾液分泌(無条件反応)を引き起こす食物が無条件刺激、もともと中性刺激であったメトロノーム音が対提示を経て条件刺激となり、これによって生じる唾液分泌が条件反応となる。条件刺激を単独提示し続けると消去が生じ、時間経過後に自発的回復が起こることがある。
問2
オペラント条件づけの強化スケジュールのうち、消去抵抗が最も大きいものはどれか。
  • 1連続強化
  • 2固定間隔スケジュール
  • 3固定比率スケジュール
  • ✔変動比率スケジュール
  • 5消去手続き
解説:変動比率(VR)スケジュールは、平均して一定回数の反応後に不規則に強化されるもので、高頻度で安定した反応を生み、消去抵抗が最も大きい。ギャンブル行動の維持機序として説明される。固定間隔ではスキャロップ(強化直前に反応が増える)が、固定比率では強化後の休止が観察される。連続強化は習得は速いが消去も速い。
問3
負の強化に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1嫌悪刺激を与えることで行動を減少させること。
  • ✔嫌悪刺激を除去することで行動を増加させること。
  • 3好子を除去することで行動を減少させること。
  • 4好子を与えることで行動を増加させること。
  • 5刺激を与えず行動を放置すること。
解説:強化は行動を増加させ、弱化(罰)は減少させる。「正」は刺激の提示、「負」は刺激の除去を指す。したがって負の強化は嫌悪刺激の除去による行動増加(回避・逃避行動の成立)である。1は正の弱化、3は負の弱化(タイムアウト、レスポンスコスト)、4は正の強化にあたる。回避行動の維持は不安症の維持機序の理解に不可欠である。
問4
観察学習(モデリング)の下位過程として、Banduraが挙げていないものはどれか。
  • 1注意過程
  • 2保持過程
  • 3運動再生過程
  • 4動機づけ過程
  • ✔消去過程
解説:Banduraの観察学習は、注意(モデルに注目する)、保持(symbolic表象として記憶する)、運動再生(行動として再現する)、動機づけ(遂行を促す誘因)の4過程からなる。他者が強化される様子を見ることで学習が生じる代理強化が特徴で、直接的な強化がなくとも学習が成立する点が伝統的行動理論との相違である。
問5
言語獲得に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔語彙爆発は生後1歳半頃からみられる語彙数の急激な増加である。
  • 2Skinnerは、生得的な言語獲得装置(LAD)を仮定した。
  • 3Chomskyは、言語獲得を強化と模倣のみで説明できるとした。
  • 4喃語は言語環境に依存せず、聴覚障害の有無に関わらず同様に発達する。
  • 5一語文は通常3歳頃から出現する。
解説:1歳半頃から語彙が急激に増える現象を語彙爆発(ボキャブラリー・スパート)という。生得的な言語獲得装置(LAD)や普遍文法を仮定したのはChomskyで、Skinnerは言語行動を強化により説明した。喃語は初期は普遍的だが、6か月以降は母語の音韻に近づき、聴覚障害児では反復喃語の発達が異なる。一語文は概ね1歳前後、二語文は2歳前後に出現する。
問6
シェイピング(行動形成)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1望ましくない行動に嫌悪刺激を与える手続き。
  • 2強化を一切与えず行動を消去する手続き。
  • 3複数の行動を一連の流れとして結合する手続き。
  • 4刺激の弁別を訓練する手続き。
  • ✔目標行動に近い反応を段階的に強化し、新しい行動を形成する手続き。
解説:シェイピングは、目標行動に接近する反応(逐次接近反応)を段階的に分化強化することで、もともと生起しない新しい行動を形成する手続きである。複数の行動を順に連結するのはチェイニング、先行刺激による援助を段階的に減らすのはフェイディング、刺激の識別を形成するのは弁別訓練である。
問7
応用行動分析における三項随伴性の説明として、最も適切なものはどれか。
  • ✔先行事象(A)―行動(B)―結果事象(C)の枠組みで行動を分析する。
  • 2刺激―反応―刺激の連鎖を指す。
  • 3行動の原因を性格特性に帰属する分析枠組みである。
  • 4行動の生物学的基盤を分析する枠組みである。
  • 5結果事象のみに着目する分析法である。
解説:三項随伴性(ABC分析)は、行動(Behavior)を、それに先行する状況(Antecedent)と、行動の直後に生じる結果(Consequence)との関係で捉える枠組みである。問題行動の機能(注目獲得、要求、逃避・回避、感覚刺激)を推定し、先行条件の調整と代替行動の分化強化につなげる。特性への帰属ではなく、環境との相互作用に焦点を当てる点が特徴である。
問8
レスポンデント条件づけを応用した技法として、最も適切なものはどれか。
  • 1トークンエコノミー
  • ✔系統的脱感作法
  • 3タイムアウト
  • 4レスポンスコスト
  • 5プレマックの原理の応用
解説:系統的脱感作法(Wolpe)は、リラクセーション(弛緩反応)と不安喚起刺激を対提示し、不安反応と両立しない反応を条件づける逆制止の原理に基づく、レスポンデント条件づけの応用技法である。不安階層表を用い、弱い刺激から段階的に進める。トークンエコノミー、タイムアウト、レスポンスコスト、プレマックの原理はいずれもオペラント条件づけの応用である。

感情及び人格全38問中 8問を掲載

問1
情動の末梢起源説(James-Lange説)の主張として、最も適切なものはどれか。
  • 1情動体験が先に生じ、その結果として身体反応が起こる。
  • ✔身体的変化の知覚が情動体験である。
  • 3視床が同時に大脳皮質と末梢へ信号を送ることで情動が生じる。
  • 4生理的喚起の原因を認知的に解釈することで情動が決まる。
  • 5情動は表情筋のフィードバックのみで決定される。
解説:James-Lange説(末梢起源説)は「悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しい」と表現され、刺激→身体反応→その知覚=情動体験という順序を主張する。3はCannon-Bard説(中枢起源説)、4はSchachter-Singerの2要因説である。表情フィードバック仮説は末梢起源説の系譜にあるが、情動を表情のみで決定するとまでは主張しない。
問2
Schachter & Singerの情動2要因説に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1生理的喚起の種類が情動の質を決定する。
  • ✔生理的喚起とその原因に対する認知的評価の組合せで情動が決まる。
  • 3認知的評価は情動生起に不要である。
  • 4情動は生理的喚起なしに生じる。
  • 5情動の質は視床下部の活動のみで決まる。
解説:Schachter & Singer(1962)は、アドレナリン投与実験により、未分化な生理的喚起に対して状況手がかりによる認知的ラベリングが加わることで特定の情動が体験されるとした。喚起の原因が説明されている群では周囲の情動的行動に影響されにくかった。吊り橋実験(Dutton & Aron)の錯誤帰属もこの枠組みで理解される。
問3
ビッグ・ファイブ(5因子モデル)の因子に含まれないものはどれか。
  • 1神経症傾向
  • 2外向性
  • ✔内的統制
  • 4開放性
  • 5誠実性(勤勉性)
解説:ビッグ・ファイブは、神経症傾向(N)、外向性(E)、開放性(O)、協調性(A)、誠実性(C)の5因子からなり、語彙アプローチと因子分析により文化を越えた頑健性が示されている。内的統制-外的統制はRotterのローカス・オブ・コントロール(統制の所在)概念であり、5因子には含まれない。
問4
人格の類型論と特性論に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1特性論は人を少数の典型に分類し、全体像を直観的に把握しやすい。
  • 2類型論は個人差を連続的な次元上の量として記述する。
  • 3Allportは類型論の代表的提唱者である。
  • ✔Kretschmerは体型と気質の関連から類型論を展開した。
  • 5類型論は中間型や移行型の記述に優れている。
解説:Kretschmerは細長型と統合失調気質、肥満型と循環気質(躁うつ気質)、闘士型と粘着気質を対応づける類型論を提唱した。類型論は少数の典型に分類し全体像の把握に優れる反面、中間型や個人内変動の記述が苦手である。特性論(Allport、Cattell、5因子モデル)は連続的次元による量的記述を行う。
問5
Lazarusのストレス理論における認知的評価について、最も適切なものはどれか。
  • 1一次的評価では、対処資源の有無を検討する。
  • 2二次的評価では、その出来事が自分にとって脅威かどうかを判断する。
  • 3認知的評価は一度行われると再評価されることはない。
  • 4問題焦点型コーピングは常に情動焦点型より適応的である。
  • ✔一次的評価で脅威と判断され、二次的評価で対処可能性が低いとされるとストレス反応が強まる。
解説:Lazarus & Folkmanのトランスアクショナルモデルでは、一次的評価で出来事が無関係/無害-肯定的/ストレスフル(害・損失、脅威、挑戦)かを、二次的評価で対処資源と対処可能性を評価する。両評価の組合せでストレス反応の強度が決まり、状況の推移に伴って再評価が行われる。コーピングの適応性は状況の統制可能性に依存し、統制不能な状況では情動焦点型が有効なこともある。
問6
基本情動に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1表情の解読は文化により完全に異なり、共通性はない。
  • 2基本情動には嫉妬・罪悪感・誇りが含まれる。
  • 3情動は表情に一切反映されない。
  • ✔Ekmanは、表情表出に文化を越えた普遍性がある基本情動を示した。
  • 5表示規則(display rule)は生得的で文化差がない。
解説:Ekmanらは、喜び・悲しみ・怒り・驚き・恐れ・嫌悪の6つの基本情動について、表情の表出と認識に文化を越えた共通性があることを示した。一方、どの場面でどの情動をどの程度表出してよいかという表示規則には文化差があり、社会的に学習される。嫉妬・罪悪感・誇りは自己意識的情動と呼ばれ、自己概念の発達を前提とする二次的情動である。
問7
気質に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1気質は成人期に初めて出現する特性である。
  • 2気質は環境の影響を全く受けない固定的特性である。
  • 3適合の良さ(goodness of fit)とは、気質の優劣を示す概念である。
  • 4気質は学習によってのみ形成される。
  • ✔Thomas & Chessは、扱いやすい子・扱いにくい子・出だしの遅い子の類型を示した。
解説:Thomas & Chessのニューヨーク縦断研究は、活動水準、周期性、接近・回避、順応性、反応閾値、反応強度、気分の質、気の散りやすさ、注意の範囲と持続性の9次元から、扱いやすい子(easy)、扱いにくい子(difficult)、出だしの遅い子(slow-to-warm-up)の3類型を示した。気質は生物学的基盤をもち乳児期から観察されるが、養育環境との「適合の良さ」により発達の帰結が左右されるとされる。
問8
パーソナリティ症(パーソナリティ障害)のDSM-5-TRにおけるクラスター分類として、最も適切なものはどれか。
  • ✔クラスターBは、反社会性・境界性・演技性・自己愛性を含む。
  • 2クラスターAは、演技性・自己愛性を含む。
  • 3クラスターCは、猜疑性(妄想性)・シゾイド・統合失調型を含む。
  • 4クラスターAは、回避性・依存性・強迫性を含む。
  • 5クラスター分類は3群ではなく5群である。
解説:DSM-5-TRでは、クラスターA(奇妙・風変わり:猜疑性/妄想性、シゾイド、統合失調型)、クラスターB(演技的・情緒的・移り気:反社会性、境界性、演技性、自己愛性)、クラスターC(不安・恐怖:回避性、依存性、強迫性)の3群に分類される。パーソナリティ症は、青年期または成人期早期から持続する、文化的期待から著しく偏った内的体験と行動の様式と定義される。

脳・神経の働き全39問中 8問を掲載

問1
前頭前野の機能として、最も適切でないものはどれか。
  • ✔一次視覚情報の受容
  • 2ワーキングメモリ
  • 3反応抑制
  • 4計画・意思決定
  • 5社会的行動の調整
解説:前頭前野は実行機能(ワーキングメモリ、反応抑制、認知的柔軟性、プランニング)や社会的行動の調整を担い、損傷により脱抑制や社会的判断の障害(Phineas Gageの症例、前頭側頭型認知症)が生じる。一次視覚情報の受容は後頭葉の一次視覚野(V1、Brodmann17野)の機能である。
問2
失語症に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1Broca失語では、流暢に話せるが理解が著しく障害される。
  • 2Wernicke失語では、発話は非流暢で努力性となる。
  • ✔Broca失語では発話が非流暢で、比較的理解は保たれる。
  • 4伝導失語では復唱が良好に保たれる。
  • 5失語症はいずれも右半球の損傷で生じる。
解説:Broca失語(運動性失語)は左下前頭回の損傷により発話が非流暢・努力性となり、理解は比較的保たれ、自己の障害への自覚がある。Wernicke失語(感覚性失語)は左上側頭回後部の損傷により発話は流暢だが錯語が多く理解が障害され、病識が乏しい。伝導失語では弓状束の障害により復唱が特に障害される。言語野は多くの人で左半球に優位である。
問3
海馬の機能に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1手続き記憶の形成に中心的役割を果たす。
  • ✔エピソード記憶の固定化(記銘)に重要な役割を果たす。
  • 3海馬の両側損傷では、既に固定化された遠隔記憶がすべて失われる。
  • 4海馬は情動の中でも特に恐怖反応の中枢である。
  • 5海馬は運動の協調とバランスを司る。
解説:海馬は新規のエピソード記憶・宣言的記憶の記銘と固定化に不可欠で、両側切除を受けたH.M.の症例では重篤な前向性健忘が生じた一方、手続き記憶の学習と遠い過去の遠隔記憶は保たれた。手続き記憶には大脳基底核・小脳、恐怖反応には扁桃体、運動協調には小脳が関与する。
問4
扁桃体の機能として、最も適切なものはどれか。
  • 1言語の統語処理
  • 2呼吸と心拍の自律的調節
  • ✔恐怖・情動の処理と情動記憶の修飾
  • 4身体の平衡の維持
  • 5視覚情報の一次処理
解説:扁桃体は側頭葉内側に位置し、恐怖条件づけをはじめとする情動処理、情動的な出来事の記憶の増強、脅威刺激の急速な検出に関与する。PTSDでは扁桃体の過活動と内側前頭前野による抑制の低下が指摘される。呼吸・心拍の調節は延髄、平衡は小脳・前庭系、視覚一次処理は後頭葉が担う。
問5
神経伝達物質に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1セロトニンは主にパーキンソン病の運動症状と直接関連する。
  • 2GABAは中枢神経系の主要な興奮性伝達物質である。
  • 3アセチルコリンの過剰がAlzheimer型認知症の主因とされる。
  • ✔ドパミンは報酬系に関与し、中脳辺縁系の過活動が統合失調症の陽性症状と関連するとされる。
  • 5ノルアドレナリンは睡眠導入の主要な伝達物質である。
解説:ドパミン仮説では、中脳辺縁系のドパミン過剰が幻覚・妄想などの陽性症状に、中脳皮質系の低下が陰性症状に関与するとされる。黒質線条体系のドパミン低下はパーキンソン症状(抗精神病薬の錐体外路症状も同機序)を生む。GABAは主要な抑制性伝達物質、Alzheimer型認知症ではアセチルコリンの低下がみられ、コリンエステラーゼ阻害薬が用いられる。
問6
自律神経系に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1交感神経の活性化により心拍数は低下する。
  • 2副交感神経の活性化により瞳孔は散大する。
  • ✔交感神経は闘争・逃走反応に関与し、心拍数・血圧を上昇させる。
  • 4自律神経系は運動神経の一種である。
  • 5消化活動は交感神経の活性化により促進される。
解説:交感神経は緊急時の闘争・逃走反応に関与し、心拍数・血圧・血糖の上昇、瞳孔散大、気管支拡張、消化活動の抑制をもたらす。副交感神経は休息と消化を担い、心拍数低下、瞳孔縮小、消化促進に働く。両者は拮抗的に作用し恒常性を維持する。自律神経系は末梢神経系のうち不随意的な内臓機能を制御する系で、運動神経(体性神経系)とは区別される。
問7
HPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質系)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1副腎髄質からコルチゾールが分泌される。
  • 2コルチゾールは即時的な闘争・逃走反応を担う。
  • 3HPA軸はネガティブ・フィードバック機構をもたない。
  • ✔ストレス時にコルチゾールの分泌が増加する。
  • 5慢性ストレスでもHPA軸の機能に変化は生じない。
解説:ストレス時には視床下部からCRH、下垂体前葉からACTHが分泌され、副腎皮質からコルチゾールが分泌される。コルチゾールは血糖上昇や免疫抑制などに働き、上位にネガティブ・フィードバックをかける。即時的な闘争・逃走反応は交感神経-副腎髄質系(アドレナリン)が担う。慢性ストレスやうつ病、PTSDではHPA軸の調節異常が報告されている。
問8
遂行機能障害と前頭葉損傷に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1遂行機能障害では記憶がすべて失われる。
  • 2前頭葉損傷では必ず失語が生じる。
  • 3遂行機能は知能検査のIQで十分に評価できる。
  • 4遂行機能障害は日常生活に影響しない。
  • ✔ウィスコンシン・カード分類課題では、保続(セットの転換困難)がみられる。
解説:ウィスコンシン・カード分類課題(WCST)は前頭葉機能(セット転換、概念形成)の評価に用いられ、前頭葉損傷者では規則変更後も以前の分類を続ける保続がみられる。遂行機能障害は、計画、開始、抑制、切り替え、モニタリングの障害として現れ、IQが保たれていても日常生活・就労に大きな支障を来す点が重要である。BADSやTMT等の検査も用いられる。

社会及び集団に関する心理学全38問中 8問を掲載

問1
認知的不協和理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1報酬が大きいほど、態度変容は大きくなる。
  • 2認知的不協和は、行動と態度が一致しているときに生じる。
  • 3不協和の低減は、必ず行動の変更によってなされる。
  • 4Festingerは、不協和は心地よい状態であるとした。
  • ✔不十分な正当化の条件下で、態度変容が生じやすい。
解説:Festinger & Carlsmith(1959)の実験では、退屈な課題を「面白かった」と他者に伝える報酬が1ドル(不十分な正当化)の群のほうが、20ドル群より課題を面白かったと評価した。行動を外的報酬で正当化できないと不協和が高まり、態度のほうを変えて低減するためである。不協和は不快な緊張状態で、態度変更・認知の追加・重要性の低減などにより低減される。
問2
傍観者効果に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔責任の分散、多元的無知、評価懸念が援助抑制の要因となる。
  • 2周囲に人が多いほど、援助行動は促進される。
  • 3緊急性が明確な場面では、傍観者効果は必ず消失する。
  • 4傍観者効果は子どもにのみ生じる。
  • 5Latané & Darleyは、援助行動を単一段階の過程として説明した。
解説:Latané & Darleyは、他者の存在により①責任の分散、②多元的無知(他者が動じないので緊急ではないと解釈する)、③評価懸念(誤った行動を笑われる恐れ)が生じ、援助が抑制されることを示した。援助行動は、出来事への注目→緊急事態の解釈→責任の引き受け→援助方法の判断→実行、という多段階過程で説明される。
問3
社会的手抜き(social loafing)が生じにくくなる条件として、最も適切なものはどれか。
  • 1集団の人数を増やす。
  • ✔個人の貢献度が特定・評価可能である。
  • 3課題が単純で誰でもできる。
  • 4成果が集団全体としてのみ評価される。
  • 5集団の凝集性が低い。
解説:社会的手抜き(Ringelmann効果)は、集団作業時に個人の努力量が低下する現象で、個人の貢献が identifiable(特定可能)でない場合に生じやすい。個人の貢献度を可視化・評価する、課題の意味づけを高める、集団凝集性を高める、課題を魅力的にする、といった条件で低減する。他者の存在が単純課題の遂行を促進する社会的促進とは対照的である。
問4
基本的な帰属の誤り(対応バイアス)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1自己の成功を状況に、失敗を能力に帰属する傾向。
  • 2集団間で内集団を過小評価する傾向。
  • ✔他者の行動の原因を、状況要因より内的属性に帰属しやすい傾向。
  • 4行為者は自らの行動を性格に帰属しやすい傾向。
  • 5少数派の意見に同調しやすい傾向。
解説:基本的な帰属の誤りは、他者の行動を説明する際に状況の影響を過小評価し、性格などの内的属性を過大視する傾向をいう。自己の成功は内的に、失敗は外的に帰属する傾向は自己奉仕的バイアス。行為者は状況に、観察者は行為者の性格に帰属しやすい違いを行為者-観察者バイアスという。
問5
Aschの同調実験に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1課題は曖昧で、正答が判別できないものであった。
  • 2同調率はサクラの人数に比例して無制限に増加する。
  • 3参加者の約9割が全試行で同調した。
  • ✔サクラの中に1人でも味方(正答者)がいると、同調率は大きく低下する。
  • 5同調は規範的影響とは無関係である。
解説:Aschの線分判断課題は正答が明白な課題であり、それでも約3分の1の試行で誤答への同調が生じた。同調圧力は多数派が3〜4人程度で頭打ちとなり、味方が1人いるだけで同調率は劇的に低下する。同調の背景には、正しくありたい動機による情報的影響と、受容されたい動機による規範的影響がある。
問6
集団極性化および集団思考(groupthink)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1集団討議は必ず中庸な結論をもたらす。
  • ✔集団討議により、個人の当初の傾向がより極端になることがある。
  • 3集団思考は、多様な意見が活発に交わされる集団で生じやすい。
  • 4集団思考の予防に、外部からの評価や異論の奨励は無効である。
  • 5リスキーシフトは集団極性化とは無関係の現象である。
解説:集団極性化は、討議を経て集団の判断が当初の平均的傾向をより強める方向に偏る現象で、危険側に振れる場合をリスキーシフト、慎重側に振れる場合をコーシャスシフトという。集団思考(Janis)は、凝集性が高く外部から遮断され、強力なリーダーがいる集団で、批判的検討が抑制され不合理な決定に至る現象で、異論の奨励(悪魔の代弁者)、外部評価、匿名の意見表明等が予防策となる。
問7
説得的コミュニケーションに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1精緻化見込みモデルでは、関与度が高いと周辺的ルートで処理される。
  • 2情報源の魅力は、中心的ルートの主要な手がかりである。
  • ✔中心的ルートによる態度変化は、周辺的ルートによる変化より持続しやすい。
  • 4スリーパー効果とは、直後に説得効果が最大となる現象である。
  • 5恐怖喚起は強いほど常に効果的である。
解説:Petty & Cacioppoの精緻化見込みモデルでは、関与度と処理能力が高い場合は論拠の質を吟味する中心的ルート、低い場合は情報源の魅力や量などの周辺的手がかりに依拠する周辺的ルートで処理される。中心的ルートによる態度変化のほうが持続的で反論に抵抗しやすい。スリーパー効果は、信憑性の低い情報源の効果が時間経過後に現れる現象。恐怖喚起は、対処可能性の情報を伴わないと防衛的回避を招く。
問8
対人魅力に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1類似性は対人魅力を低下させる要因である。
  • 2近接性は対人魅力とは無関係である。
  • 3返報性の原理は対人魅力には作用しない。
  • ✔単純接触効果とは、繰り返し接触することで好意度が高まる現象である。
  • 5自己開示は関係の深まりを妨げる。
解説:Zajoncの単純接触効果は、対象への反復接触が好意度を高める現象で、意識的な認識を伴わなくても生じる。対人魅力の規定因としては、近接性(物理的近さ)、類似性(態度・価値観の一致)、返報性(好意を寄せられると好意を返す)、身体的魅力などが知られる。自己開示は返報的に進行し、関係の親密化に寄与する(社会的浸透理論)。

発達全42問中 8問を掲載

問1
Piagetの認知発達段階に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1前操作期には保存概念が成立している。
  • 2具体的操作期では、仮説演繹的思考が可能となる。
  • 3形式的操作期は6歳頃から始まる。
  • 4各段階の順序は個人により入れ替わる。
  • ✔感覚運動期の後半に、対象の永続性が成立する。
解説:Piagetは感覚運動期(0〜2歳)、前操作期(2〜7歳)、具体的操作期(7〜11歳)、形式的操作期(11歳以降)を提唱した。対象の永続性は感覚運動期後半に成立する。前操作期は自己中心性(三つ山課題)が特徴で保存概念は未成立、保存は具体的操作期に成立し、仮説演繹的・抽象的思考は形式的操作期に可能となる。段階の順序は不変とされる。
問2
Eriksonの心理社会的発達理論において、青年期の発達課題として最も適切なものはどれか。
  • ✔同一性 対 同一性拡散
  • 2基本的信頼 対 不信
  • 3自律性 対 恥・疑惑
  • 4勤勉性 対 劣等感
  • 5生殖性 対 停滞
解説:Eriksonは8段階の心理社会的発達を提唱し、乳児期は基本的信頼対不信、幼児期前期は自律性対恥・疑惑、幼児期後期は自主性対罪悪感、学童期は勤勉性対劣等感、青年期は同一性(アイデンティティ)対同一性拡散、成人期初期は親密性対孤立、成人期中期は生殖性(世代性)対停滞、老年期は統合対絶望を課題とする。
問3
Ainsworthのストレンジ・シチュエーション法におけるアタッチメントの分類について、最も適切なものはどれか。
  • 1Aタイプ(回避型)は、再会時に養育者に強く接近し激しく泣く。
  • ✔Bタイプ(安定型)は、再会時に養育者との接触により速やかに落ち着く。
  • 3Cタイプ(アンビバレント型)は、分離時にほとんど混乱を示さない。
  • 4Dタイプ(無秩序・無方向型)は、最も適応的な型とされる。
  • 5分類は生涯を通じて完全に不変である。
解説:Bタイプ(安定型)は分離時に混乱するが再会時に接触で速やかに鎮静し、安全基地として機能する。Aタイプ(回避型)は分離時の混乱が乏しく再会時に養育者を避け、Cタイプ(アンビバレント/抵抗型)は分離時に激しく混乱し再会時も怒りを示して落ち着きにくい。Main & Solomonが加えたDタイプ(無秩序・無方向型)は虐待等との関連が指摘され、最もリスクが高い。
問4
「心の理論」に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1誤信念課題は通常2歳頃に通過する。
  • 2自閉スペクトラム症では、誤信念課題の通過が定型発達より早い。
  • ✔他者が自分とは異なる信念をもつことを理解する能力である。
  • 4心の理論は言語発達とは無関係に発達する。
  • 5サリー・アン課題は、共同注意を測定する課題である。
解説:心の理論は、自他が異なる心的状態(信念・欲求・意図)をもつことを理解する能力で、サリー・アン課題などの誤信念課題は通常4〜5歳頃に通過する。自閉スペクトラム症では通過が遅れやすいことが報告されている(Baron-Cohenら)。言語能力、とくに補文構造の理解や実行機能との関連も指摘されている。共同注意は生後9か月頃から発達する別概念である。
問5
Vygotskyの発達の最近接領域(ZPD)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1子どもが一人で達成できる水準そのものを指す。
  • 2教育は完成した発達水準にのみ働きかけるべきとされる。
  • 3ZPDは生得的に決定され、教育により変化しない。
  • ✔一人では達成できないが、他者の援助により達成できる領域を指す。
  • 5足場かけ(スキャフォールディング)はZPDと無関係な概念である。
解説:ZPDは、独力で解決できる現在の発達水準と、他者の援助や協同により解決可能な水準との差の領域を指す。教育はこのZPDに働きかけることで発達を先導するとされる。Bruner らの足場かけ(スキャフォールディング)は、援助を段階的に減らしながら自立を促す教授方略で、ZPD概念と結びつけて論じられる。
問6
Baltesの生涯発達心理学におけるSOC理論について、最も適切なものはどれか。
  • 1加齢は一貫した喪失の過程であるとする理論である。
  • 2流動性知能は加齢により上昇し続けるとする。
  • 3発達を生物学的要因のみで説明する理論である。
  • 4老年期には可塑性が完全に失われるとする。
  • ✔選択・最適化・補償による適応方略を指す。
解説:BaltesのSOC理論は、加齢に伴う資源の減少に対し、目標を絞る「選択(Selection)」、残存資源を有効活用する「最適化(Optimization)」、代替手段を用いる「補償(Compensation)」により適応するとする。生涯発達心理学は発達を獲得と喪失の多方向的過程とみなし、老年期にも可塑性を認める。結晶性知能は高齢まで比較的保たれ、流動性知能は成人期以降低下しやすい。
問7
乳児の視覚的発達に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔選好注視法により、新生児が人の顔様の刺激を好むことが示されている。
  • 2新生児の視力は成人とほぼ同等である。
  • 3視覚的断崖の実験は、聴覚の発達を調べたものである。
  • 4乳児は生後6か月まで色の弁別が全くできない。
  • 5新生児模倣は存在が完全に否定されている。
解説:Fantzの選好注視法により、新生児が複雑な図形や顔様のパターンを好んで注視することが示された。新生児の視力は0.02〜0.05程度で、生後1年をかけて発達する。Gibson & Walkの視覚的断崖は奥行き知覚と情動的シグナルの利用(社会的参照)を調べたものである。新生児模倣は追試で議論があるものの、否定されたと断定できる段階にはない。
問8
Kohlbergの道徳性発達理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1慣習的水準では、普遍的な倫理原則が判断基準となる。
  • ✔前慣習的水準では、罰の回避や報酬が判断基準となる。
  • 3後慣習的水準では、法や秩序の維持が最上位の基準となる。
  • 4発達段階は年齢により自動的に進行する。
  • 5Gilliganは、Kohlbergの理論を全面的に支持した。
解説:Kohlbergは、前慣習的水準(罰と服従、道具的相対主義)、慣習的水準(対人的同調=よい子、法と秩序)、後慣習的水準(社会契約、普遍的倫理原則)の3水準6段階を提唱した。モラルジレンマ課題(ハインツのジレンマ)への理由づけで段階を判定する。Gilliganは、この理論が正義の倫理に偏り、ケアと責任の視点(女性に多くみられる)を過小評価していると批判した。

障害者(児)の心理学全42問中 8問を掲載

問1
DSM-5-TRにおける自閉スペクトラム症の診断基準として、最も適切なものはどれか。
  • ✔社会的コミュニケーションの持続的欠陥と、限定された反復的な行動様式の2領域が必須である。
  • 23歳以前に必ず明らかな症状が確認されなければならない。
  • 3知的発達症を伴うことが診断の必須要件である。
  • 4感覚の過敏・鈍麻は診断基準に含まれない。
  • 5多動・衝動性が中核症状である。
解説:DSM-5以降、自閉スペクトラム症は①社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応の持続的欠陥、②行動・興味・活動の限定された反復的な様式(常同行動、同一性へのこだわり、限定的興味、感覚過敏・鈍麻を含む)の2領域を必須とする。症状は発達早期から存在するが、社会的要求が能力を超える時期まで顕在化しないこともある。知的発達症の併存は必須要件ではなく、併存の有無を特定する。
問2
注意欠如多動症(ADHD)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1症状は必ず12歳以降に出現する。
  • ✔不注意優勢型、多動衝動性優勢型、混合型に分類される。
  • 3症状は単一の場面でのみ認められればよい。
  • 4成人期には必ず症状が消失する。
  • 5薬物療法は診断後直ちに単独で行うことが第一選択である。
解説:DSM-5-TRでは、不注意優勢に存在、多動・衝動性優勢に存在、混合して存在の3型に分類される。いくつかの症状が12歳になる前から存在し、家庭・学校など2つ以上の状況で認められることが要件である。成人期にも約半数で症状が持続する。治療は環境調整・心理社会的支援を基盤とし、必要に応じて薬物療法を併用する。
問3
限局性学習症(SLD)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1全般的な知的能力の低下により学習困難が生じる状態を指す。
  • 2適切な教育を受ける前から診断が確定できる。
  • ✔読字・書字・算数の特定領域に、年齢に比して著しい困難が持続する。
  • 4視力・聴力障害による学習困難も含まれる。
  • 5困難は数週間で改善するのが一般的である。
解説:限局性学習症は、全般的知能に比して読字・読解、綴字・書字表出、数概念・数的推論といった特定領域に著しい困難が持続する状態である。適切な介入を受けても6か月以上持続することが要件で、知的発達症、視聴覚障害、不適切な教育などによる困難は除外される。日本の教育領域で用いられるLD(学習障害)の定義とは範囲がやや異なる点にも注意する。
問4
知的発達症(知的能力障害)の診断において重視される点として、最も適切なものはどれか。
  • 1IQ値のみで重症度を判定する。
  • 218歳以降の発症でも診断される。
  • 3適応機能が良好であってもIQ70未満なら診断される。
  • ✔概念的・社会的・実用的領域における適応機能の水準を重視する。
  • 5重症度は軽度・重度の2段階で判定する。
解説:DSM-5以降、知的発達症の重症度はIQ値ではなく、概念的・社会的・実用的の3領域における適応機能の水準に基づいて軽度・中等度・重度・最重度の4段階で判定される。知的機能の欠陥と適応機能の欠陥の両方が必要で、発達期に発症することが要件である。支援の必要度を反映させる考え方への転換を示す。
問5
障害者差別解消法における合理的配慮に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1事業者による合理的配慮の提供は、現在も努力義務にとどまる。
  • 2均衡を失した過重な負担を伴う場合でも、必ず提供しなければならない。
  • 3配慮の内容は行政が一律に定めており、個別の調整は行わない。
  • 4障害者手帳を所持していない者は対象とならない。
  • ✔本人や家族等からの意思の表明を起点に、建設的対話を通じて調整される。
解説:合理的配慮は、社会的障壁の除去について本人等から意思の表明があった場合に、過重な負担にならない範囲で、建設的対話を通じて個別に調整して提供される。2021年改正法(2024年4月施行)により、従来努力義務であった事業者による提供も法的義務となった。対象は手帳の有無を問わず、社会的障壁により継続的に日常生活・社会生活に制限を受ける状態にある者である。
問6
【事例】小学3年生の男児K。教室では離席が多く、話しかけても指示が入りにくい。板書の書き写しに時間がかかり、宿題の提出忘れが目立つ。担任からスクールカウンセラーに相談があった。まず行うべき対応として、最も適切なものはどれか。
  • ✔行動観察と関係者からの情報収集を行い、場面・時間帯・課題内容による行動の違いを整理する。
  • 2直ちに医療機関を受診させ、服薬を開始してもらう。
  • 3叱責と罰を徹底し、行動を修正する。
  • 4保護者の養育態度に問題があると伝える。
  • 5特別支援学級への転籍を直ちに提案する。
解説:行動上の困難は、発達特性のほか、聴力・視力、学習内容の難度、環境刺激、対人関係、家庭状況など多様な要因で生じ得る。まず具体的な行動を、いつ・どこで・どのような条件下で生じるか(機能的アセスメント)で整理し、仮説を立てることが出発点となる。原因を保護者に帰属させることや、アセスメント前の受診・転籍の提案は不適切である。
問7
【事例】高校1年生の女子L。自閉スペクトラム症の診断がある。学校で「話し方がきつい」と友人関係のトラブルが続き、本人は「なぜ嫌われるのか分からない」と訴える。支援として、最も適切なものはどれか。
  • 1性格の問題として、本人に反省を促す。
  • ✔対人場面の具体的状況を一緒に振り返り、社会的スキルの視覚的・具体的な学習と、周囲への理解啓発を並行して行う。
  • 3友人関係を避けるため、休み時間は常に別室で過ごさせる。
  • 4本人の特性は変えられないため、支援は行わない。
  • 5診断名を学級全体に公表し、配慮を求める。
解説:ASDのある生徒では、暗黙の社会的ルールの学習が困難な場合があり、具体的・視覚的な手がかりを用いたソーシャルスキルトレーニングやコミック会話などが有効である。同時に、本人だけに適応を求めるのではなく、環境側の理解と調整(二重の共感問題の視点)が不可欠である。診断名の公表は本人・保護者の同意なしに行えず、隔離は社会参加の機会を奪う。
問8
【事例】5歳の男児M。言葉の遅れがあり、こだわりが強く、集団活動への参加が難しい。保護者は「様子を見ていればそのうち伸びる」と考え、療育の勧めに消極的である。公認心理師の対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1保護者の考えを尊重し、何も働きかけない。
  • 2「放置すれば取り返しがつかない」と危機感をあおる。
  • ✔保護者の不安や思いを受け止めつつ、Mの得意・不得意を具体的に共有し、療育の目的と内容を情報提供する。
  • 4保護者の同意なく療育機関に申し込む。
  • 5保護者の理解不足を指摘し、児童相談所に通告する。
解説:保護者の消極性の背景には、障害受容の過程にある葛藤、情報不足、周囲の目への不安などがある。まず気持ちを受け止め、子どもの具体的な姿(できていること・つまずいていること)を共有し、療育が「治す」ためでなく発達を支える場であることを分かりやすく伝える。恐怖喚起や無断手続き、通告は不適切で、保護者との協働関係が支援の基盤となる。

心理状態の観察及び結果の分析全49問中 8問を掲載

問1
WAIS-IVに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔全検査IQと4つの指標得点(言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度)が算出される。
  • 2適用年齢は5歳0か月から16歳11か月である。
  • 3指標得点の平均は50、標準偏差は10である。
  • 4下位検査の評価点は平均100、標準偏差15である。
  • 5動作性IQと言語性IQが算出される。
解説:WAIS-IVの適用年齢は16歳0か月〜90歳11か月で、FSIQと言語理解(VCI)・知覚推理(PRI)・ワーキングメモリー(WMI)・処理速度(PSI)の4指標が算出される。合成得点は平均100・SD15、下位検査の評価点は平均10・SD3である。言語性IQ/動作性IQはWAIS-IIIまでの枠組みで、WAIS-IVでは廃止された。5歳0か月〜16歳11か月はWISC-IVの適用年齢である。
問2
WISC-Vに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1WISC-IVと同じ4指標構造を維持している。
  • ✔主要指標は言語理解・視空間・流動性推理・ワーキングメモリー・処理速度の5つである。
  • 3適用年齢は2歳6か月からである。
  • 4全検査IQは算出されない。
  • 5処理速度指標は廃止された。
解説:WISC-V(日本版2021年刊行)は、WISC-IVの知覚推理指標を視空間指標(VSI)と流動性推理指標(FRI)に分割し、言語理解・視空間・流動性推理・ワーキングメモリー・処理速度の5つの主要指標構造となった。適用年齢は5歳0か月〜16歳11か月。全検査IQに加え、補助指標(量的推理、聴覚ワーキングメモリー、非言語性能力など)も算出できる。
問3
投影法検査に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1ロールシャッハ・テストは、被検査者に構造化された選択肢を提示する。
  • 2TATは10枚の左右対称なインクブロット図版を用いる。
  • ✔投影法は曖昧な刺激への反応から、意識されにくい側面をとらえようとする。
  • 4バウムテストは、樹木の描画から知能水準を数量的に測定する検査である。
  • 5投影法は質問紙法に比べ、一般に信頼性・妥当性の実証が容易である。
解説:投影法は、曖昧で多義的な刺激に対する反応にパーソナリティが投影されるという仮説に基づき、被検査者が意識化・言語化しにくい側面へ接近する。ロールシャッハは10枚のインクブロット、TAT(主題統覚検査)は人物等が描かれた曖昧な絵画に物語を作らせる。バウムテストは主にパーソナリティや心理的状態の把握に用いる。標準化と信頼性・妥当性の実証は質問紙法より難しい。
問4
MMPI(ミネソタ多面的人格目録)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1投影法の代表的検査である。
  • 2臨床尺度は3尺度で構成される。
  • 3自由記述式の回答形式をとる。
  • ✔妥当性尺度により、受検態度の偏りを検討できる。
  • 5所要時間は5分程度と短い。
解説:MMPIは550項目(原法)の質問紙法検査で、10の臨床尺度に加え、?(疑問)・L(虚偽)・F(頻度)・K(修正)などの妥当性尺度をもつ点が大きな特徴である。これにより、防衛的態度や症状の誇張といった受検態度の偏りを検討できる。実施には相応の時間を要し、プロフィール全体のパターンから解釈を行う。
問5
テストバッテリーを組む際の考え方として、最も適切なものはどれか。
  • 1同一種類の検査を多数実施するほど、多面的理解が深まる。
  • 2被検査者の負担は考慮する必要がない。
  • 3検査数が多いほど、結果の信頼性は必ず高まる。
  • 4必ず投影法から実施しなければならない。
  • ✔アセスメントの目的に応じ、異なる水準・方法の検査を組み合わせる。
解説:テストバッテリーは、質問紙法・投影法・作業検査法・知能検査など、意識水準や測定方法の異なる検査を目的に応じて組み合わせ、多面的な理解を得る手続きである。検査の目的、被検査者の負担(時間・侵襲性・疲労)、実施順序(侵襲性の低いものから)を考慮する必要があり、やみくもに数を増やすことは適切でない。面接・行動観察と統合して解釈することが前提となる。
問6
認知症のスクリーニング検査に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔MMSEは30点満点で、一般に23点以下が認知機能低下の疑いとされる。
  • 2HDS-Rは40点満点である。
  • 3MMSEには図形模写などの動作性課題は含まれない。
  • 4スクリーニング検査の結果のみで認知症の確定診断が可能である。
  • 5MoCA-Jは重度認知症の鑑別に特化した検査である。
解説:MMSE(Mini-Mental State Examination)は30点満点で、23点以下(あるいは一般に24点未満)が認知機能低下の疑いとされ、見当識・記銘・計算・想起・言語・図形模写などを含む。HDS-R(改訂長谷川式)は30点満点で20点以下が疑いとされ、動作性課題を含まない。MoCA-Jは軽度認知障害(MCI)の検出に感度が高い。いずれもスクリーニングであり、確定診断は医師が画像・血液検査等を含め総合的に行う。
問7
検査得点の解釈に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1得られた得点は真の値であり、誤差を考慮する必要はない。
  • ✔信頼区間は、測定の標準誤差を用いて得点の幅を示すものである。
  • 3偏差IQ100は、同年齢集団の下位25%に位置することを意味する。
  • 4パーセンタイル順位50は、平均から1SD上を意味する。
  • 5指標間差の解釈では、統計的有意差のみを見れば十分である。
解説:検査得点には必ず測定誤差が含まれるため、測定の標準誤差(SEM)を用いた信頼区間とともに解釈する。偏差IQは平均100・SD15で、100はパーセンタイル50(同年齢集団の中央)に相当する。指標間差の解釈では、統計的有意性(有意差の有無)に加え、その差がどの程度の頻度で出現するか(出現率・稀少性)も検討し、生活場面の情報と統合して意味づける必要がある。
問8
心理検査のフィードバックに関する記述として、最も適切でないものはどれか。
  • 1専門用語を避け、被検査者が理解できる言葉で伝える。
  • 2得意な面や強みについても具体的に伝える。
  • ✔検査結果の数値のみを正確に伝えれば十分である。
  • 4被検査者の反応を確認しながら、対話的に進める。
  • 5今後の支援や生活場面での具体的な工夫につなげる。
解説:フィードバックは結果の告知ではなく、被検査者の自己理解と今後の支援につながる協働的な営みである(治療的アセスメント)。数値の羅列は理解を助けず、時に傷つきを生む。弱さだけでなく強みを伝え、日常生活での具体的方策に翻訳し、相手の反応を確かめながら対話的に進めることが求められる。

心理に関する支援全55問中 8問を掲載

問1
認知行動療法における認知再構成法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1不快な思考を意識から完全に消し去ることを目標とする。
  • 2常にポジティブな考え方に置き換えることを目的とする。
  • 3行動実験は認知再構成法とは無関係な技法である。
  • ✔非機能的な自動思考を同定し、根拠と反証を検討して適応的な思考を探る。
  • 5スキーマの検討は認知行動療法では扱わない。
解説:認知再構成法は、状況-認知(自動思考)-感情-行動のつながりを整理し、自動思考の根拠と反証を検討して、よりバランスのとれた適応的思考を導く技法である。単なるポジティブ思考への置換ではなく、現実に即した柔軟な認知の獲得を目指す。行動実験により実際に検証することも重要で、より深い水準の中核信念・スキーマも治療対象となる。
問2
曝露反応妨害法(ERP)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1不安が高まった時点で直ちに曝露を中止することが原則である。
  • 2強迫行為を積極的に行わせることで不安を低減させる。
  • 3本人の同意がなくても実施可能である。
  • 4曝露は必ず最も強い不安階層から開始する。
  • ✔強迫症に対して、不安を喚起する刺激に曝露し、強迫行為を行わないよう援助する。
解説:ERPは強迫症に対する第一選択の心理療法で、不安・不快を喚起する刺激に意図的に接触し(曝露)、不安低減のための強迫行為(儀式)を行わないでいる(反応妨害)ことにより、馴化と「予期した破局は起こらない」という抑制学習を促す。不安階層表に基づき低い段階から段階的に進めるのが一般的で、不安上昇時の中断は回避を強化する。十分な心理教育と同意が前提である。
問3
Rogersが挙げたセラピストの中核3条件に含まれないものはどれか。
  • 1自己一致(純粋性)
  • 2無条件の肯定的関心
  • 3共感的理解
  • ✔解釈による無意識の意識化
  • 5上記3条件のクライエントへの伝達
解説:Rogersの中核3条件は、①自己一致(純粋性・真実性)、②無条件の肯定的関心(受容)、③共感的理解であり、これらがクライエントに伝わっていることが必要とされる。解釈により無意識を意識化するのは精神分析的アプローチの技法である。来談者中心療法は、実現傾向を信頼し、指示や解釈を控える非指示的態度を基本とする。
問4
動機づけ面接(MI)の原則として、最も適切でないものはどれか。
  • ✔正したい反射に従い直面化して説得する
  • 2共感を表現する
  • 3矛盾を拡大する
  • 4抵抗に巻き込まれず受け流す
  • 5自己効力感を支持する
解説:動機づけ面接は、両価性を抱えるクライエントの内発的な変化動機を引き出す協働的な面接スタイルで、共感の表現、矛盾(現状と価値・目標のずれ)の拡大、抵抗との対立を避ける、自己効力感の支持を原則とする。専門家が「正してあげたい」衝動に従って説得・直面化すると(正したい反射)、かえって維持トークと抵抗を強めるため戒められる。チェンジトークを引き出し強化することが中核となる。
問5
家族療法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1問題を抱える個人(IP)の内的病理の除去を第一目標とする。
  • ✔家族を相互に影響し合うシステムとみなし、円環的因果律で理解する。
  • 3問題の原因となった家族成員を特定し、責任を明確化する。
  • 4必ず家族全員が同席しなければ実施できない。
  • 5リフレーミングは家族療法では用いられない技法である。
解説:家族療法は家族を一つのシステムとみなし、直線的因果律(誰が原因か)ではなく円環的因果律(相互作用のパターン)で問題を理解する。問題を呈する個人はIP(Identified Patient)と呼ばれ、家族システムの機能を示す存在として位置づけられる。犯人探しは避けられ、リフレーミング、ジョイニング、構造の変容、逆説的介入などの技法が用いられる。
問6
精神分析における転移に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1セラピストがクライエントに向ける感情反応を転移という。
  • 2転移は治療の妨げにすぎず、直ちに解消すべきものである。
  • ✔クライエントが過去の重要な他者への感情をセラピストに向ける現象である。
  • 4陽性転移のみが治療的意味をもつ。
  • 5転移は治療開始から数年経過しないと生じない。
解説:転移は、クライエントが過去の重要な他者(多くは養育者)に向けていた感情や関係パターンを、無意識のうちにセラピストへ向ける現象で、精神分析では作業の中核的素材とされる。セラピスト側の反応は逆転移と呼ばれ、これも理解の手がかりとなる。陽性・陰性いずれの転移も、抵抗の分析とともに解釈の対象となり、治療同盟の維持と両立させることが重要である。
問7
心的外傷後ストレス症(PTSD)に対する心理療法として、有効性のエビデンスが確立しているものはどれか。
  • 1自律訓練法
  • 2催眠による記憶の完全な消去
  • 3単回のデブリーフィング
  • ✔持続エクスポージャー療法(PE)
  • 5遊戯療法のみによる成人の治療
解説:PTSDに対しては、トラウマ焦点化認知行動療法である持続エクスポージャー療法(PE)、認知処理療法(CPT)、EMDRが第一選択として国際的ガイドラインで推奨されている。単回の心理的デブリーフィングは、かえって症状を悪化させ得るとして推奨されない。急性期には心理的応急処置(PFA)による安全・安心の確保と生活支援が優先される。
問8
集団療法の治療因子として、Yalomが挙げていないものはどれか。
  • 1普遍性
  • 2希望をもたらすこと
  • 3愛他主義(利他性)
  • 4情報の伝達
  • ✔個人の秘密の全面的公開義務
解説:Yalomは集団精神療法の治療因子として、希望をもたらすこと、普遍性(自分だけではないという認識)、情報の伝達、愛他主義、初期家族関係の修正的繰り返し、社会適応技術の発達、模倣行動、対人学習、集団の凝集性、カタルシス、実存的因子の11因子を挙げた。守秘は集団の安全を保つ枠組みであり、参加者に秘密の全面公開を義務づけることはない。

健康・医療に関する心理学全45問中 8問を掲載

問1
行動変容ステージモデル(トランスセオレティカルモデル)の段階として、最も適切な順序はどれか。
  • ✔前熟考期→熟考期→準備期→実行期→維持期
  • 2熟考期→前熟考期→準備期→維持期→実行期
  • 3準備期→前熟考期→熟考期→実行期→維持期
  • 4実行期→準備期→熟考期→維持期→前熟考期
  • 5前熟考期→準備期→熟考期→維持期→実行期
解説:Prochaskaらの行動変容ステージモデルは、前熟考期(6か月以内に変える意図がない)→熟考期(6か月以内に変える意図がある)→準備期(1か月以内に変える意図と準備がある)→実行期(変えて6か月未満)→維持期(6か月以上継続)と進む。各段階に応じた働きかけ(意識の高揚、自己再評価、刺激統制、強化マネジメントなど)が有効とされ、逆戻りも過程の一部とみなす。
問2
緩和ケアに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1がんの終末期に限って提供される。
  • ✔診断時から治療と並行して提供されるべきものである。
  • 3対象は身体的苦痛のみである。
  • 4家族は支援の対象に含まれない。
  • 5積極的治療を中止した患者のみが対象となる。
解説:WHOの定義では、緩和ケアは生命を脅かす疾患に伴う問題に直面する患者と家族に対し、診断早期から、身体的・心理的・社会的・スピリチュアルな苦痛(全人的苦痛:トータルペイン)を予防・緩和して QOLを改善するアプローチである。がんに限定されず、積極的治療と並行して提供され、家族・遺族も支援対象(遺族ケア)に含まれる。
問3
アルコール使用障害への支援に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1本人が底つき体験をするまで、家族は一切関与すべきでない。
  • 2断酒を拒否する者には、いかなる支援も提供できない。
  • ✔動機づけ面接や集団療法、自助グループの活用が有効とされる。
  • 4家族による飲酒の後始末(イネイブリング)は回復を促進する。
  • 5スクリーニングにはHDS-Rが用いられる。
解説:アルコール使用障害では、動機づけ面接、認知行動療法(引き金と対処の検討)、集団療法、断酒会やAAなどの自助グループ、家族支援(CRAFT)の組合せが有効である。「底つきを待つ」という古典的発想は現在は支持されず、早期の介入が推奨される。飲酒の後始末は問題の直面化を妨げるイネイブリングとなる。スクリーニングにはAUDITやCAGEを用いる。
問4
周産期のメンタルヘルスに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1マタニティ・ブルーズは産後数か月続く重篤な状態である。
  • 2産後うつ病の発症率は約0.1%と極めてまれである。
  • 3産褥精神病は緊急性が低く、経過観察でよい。
  • ✔EPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)は産後うつのスクリーニングに用いられる。
  • 5父親には産後のメンタルヘルス上の問題は生じない。
解説:EPDSは10項目の自記式質問票で、産後うつのスクリーニングに広く用いられる(一般に9点以上が要支援の目安、項目10の自傷念慮に注意)。マタニティ・ブルーズは産後数日〜2週間程度で軽快する一過性の状態、産後うつ病の頻度は約10%前後とされる。産褥精神病は急激に発症し自他への危険を伴うため緊急対応を要する。父親の産後うつも近年注目されている。
問5
サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1被災直後に、詳細なトラウマ体験の語りを促すことを中核とする。
  • 2専門的な心理療法を災害現場で直ちに実施する技法である。
  • 3全員に一律に実施すべき標準治療である。
  • 4子どもは対象外である。
  • ✔安全・安心の確保、現実的ニーズへの対応、社会的支援へのつなぎを重視する。
解説:PFAは、災害・事件直後の被災者に対する人道的・支持的・実際的な支援の枠組みで、「見る・聞く・つなぐ」を柱とする。安全と安心感の確保、落ち着きを取り戻す援助、現実的ニーズ(水・食料・情報・家族の安否)への対応、社会的支援へのつなぎを重視し、体験の詳細を語るよう促すことはしない。年齢を問わず用いられ、押しつけではなく相手のペースを尊重する。
問6
【事例】50代の女性A2。乳がんの手術後、補助療法の選択に迷い「どうしたらいいか分からない」と涙ぐむ。公認心理師の対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1医学的に最も推奨される治療を心理師が助言する。
  • 2「考えても仕方がない」と伝え、話題を変える。
  • 3家族に決定を委ねるよう勧める。
  • ✔迷いや不安の内容を整理し、本人が大切にしたい価値を明確にしたうえで、医療者との対話を支える。
  • 5決断できるまで面接を中止する。
解説:治療選択の場面における心理職の役割は、医学的助言ではなく、意思決定支援である。何に迷い何を恐れているのかを整理し、本人が重視する価値(生活・仕事・家族・副作用の受け止め)を言語化し、医療者に伝えられるよう支える(共同意思決定:SDM)。決定の丸投げや回避、心理職による治療推奨は役割を逸脱する。
問7
【事例】救命救急センターに、交通事故で搬送された30代男性B2の家族が到着した。家族は動揺が激しく、状況を理解できていない。公認心理師の初期対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1事故の詳細な経緯を家族から聴取する。
  • 2「必ず助かります」と保証する。
  • 3泣くことは回復を妨げるため、感情表出を止める。
  • 4直ちに詳細な心理検査を実施する。
  • ✔落ち着いて話せる場所を確保し、安全と安心を提供したうえで、必要な情報とニーズを確認して医療者につなぐ。
解説:危機介入・心理的応急処置(PFA)の原則に基づき、まず物理的・心理的な安全と安心の確保、落ち着きを取り戻す援助、現実的ニーズ(情報、連絡、休息)への対応、適切な支援へのつなぎを行う。詳細な聴取や検査、根拠のない保証、感情表出の抑制はいずれも不適切である。急性期には自然回復力を支えることが基本となる。
問8
【事例】糖尿病で通院中の40代男性C2。食事療法が守れず、HbA1cが悪化している。「分かってはいるが続かない」と話す。公認心理師の対応として、最も適切なものはどれか。
  • ✔できていない点ではなく、実行を妨げている具体的要因と、すでにできていることを一緒に探索する。
  • 2自己管理の不足を指摘し、危機感を持たせる。
  • 3食事内容をすべて心理師が決定する。
  • 4守れないなら通院を中止するよう伝える。
  • 5家族に監視を徹底させる。
解説:「分かっているが続かない」は両価性の表れであり、知識不足ではない。叱責や恐怖喚起は自己効力感を下げ、かえって行動を阻害する。行動を妨げる具体的な障壁(勤務形態、外食、ストレス性の摂食、家族の食習慣)と、すでにできている例外を協働的に探索し、実行可能な小さな目標を本人が選ぶ形が有効である(動機づけ面接、行動変容ステージに応じた支援)。

福祉に関する心理学全43問中 8問を掲載

問1
児童虐待防止法における通告義務に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、通告しなければならない。
  • 2虐待の事実を確認できた場合にのみ通告義務が生じる。
  • 3通告は児童の保護者の同意を得たうえで行う必要がある。
  • 4通告により守秘義務違反の責任を問われる。
  • 5通告先は警察署に限られる。
解説:児童虐待防止法第6条は、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者すべてに、市町村・都道府県の設置する福祉事務所・児童相談所への通告を義務づける。確証は不要で「思われる」段階で足りる。第6条第3項により、通告は刑法の秘密漏示罪その他の守秘義務に関する規定に妨げられない。保護者の同意は不要である。虐待種別は身体的・性的・ネグレクト・心理的虐待の4類型で、面前DVは心理的虐待にあたる。
問2
児童相談所の一時保護に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1保護者の同意がなければ一切実施できない。
  • ✔児童の安全確保のため、必要と認める場合に児童相談所長の判断で実施できる。
  • 3一時保護の期間に法律上の目安はない。
  • 4一時保護中は、学習の機会を提供する必要はない。
  • 5対象は身体的虐待を受けた児童に限られる。
解説:一時保護は児童福祉法第33条に基づき、児童の安全の迅速な確保・アセスメント等のため、児童相談所長または都道府県知事の判断により、保護者の同意がなくても実施できる。期間は原則2か月以内で、延長には要件がある。近年の法改正により、親権者等の同意がない一時保護には裁判官が発する状の審査(司法審査)が導入された。保護中も学習権・生活の質への配慮が求められる。
問3
高齢者虐待防止法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1虐待の類型に経済的虐待は含まれない。
  • 2通報先は警察署に限られる。
  • ✔養護者による虐待のほか、養介護施設従事者等による虐待も対象である。
  • 4通報は虐待の事実が確定してから行う。
  • 5本人が虐待を否定した場合、通報してはならない。
解説:高齢者虐待防止法は、身体的虐待、介護・世話の放棄放任(ネグレクト)、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待の5類型を定め、養護者(家族等)と養介護施設従事者等の双方による虐待を対象とする。生命・身体に重大な危険がある場合の通報は義務、それ以外は努力義務で、通報先は市町村である。高齢者本人が否定していても、専門職には通報が求められる。
問4
認知症のBPSD(行動・心理症状)への対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1まず薬物療法により症状を抑制することを第一選択とする。
  • 2訂正のため、事実誤認を繰り返し明確に指摘する。
  • 3本人の訴えは病気によるものなので傾聴しない。
  • ✔身体状態や環境要因、本人の心理的背景を検討し、非薬物的介入を優先する。
  • 5行動制限を行うことが最も安全で望ましい。
解説:BPSDには、疼痛・便秘・脱水・感染・薬剤といった身体要因、環境の変化や不適切な関わりといった心理社会的要因が背景にあることが多く、まず要因の同定と環境調整・関わり方の工夫など非薬物的介入を優先することが原則である。事実の直面化は不安と混乱を強めやすく、感情に寄り添い安心を提供する対応(バリデーション、パーソン・センタード・ケア)が推奨される。
問5
障害者総合支援法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1対象は身体障害者と知的障害者に限られる。
  • 2サービス利用にあたり、障害支援区分の認定は不要である。
  • 3利用者負担は応益負担を原則としている。
  • 4市町村ではなく都道府県が支給決定を行う。
  • ✔身体・知的・精神障害(発達障害を含む)および難病等が対象である。
解説:障害者総合支援法(2013年施行)は、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)に加え、一定の難病等も対象とする。介護給付の利用には障害支援区分の認定が必要で、支給決定は市町村が行う。自立支援法時代の応益(定率)負担から、家計の負担能力に応じた応能負担を原則とする仕組みへ改められた。
問6
【事例】保育所の職員から「4歳児F2の腕に不自然なあざが繰り返しみられ、『パパにやられた』と話した」と公認心理師に相談があった。適切な対応はどれか。
  • 1確証が得られるまで様子をみる。
  • 2保護者に事実を確認し、否定されれば対応を終了する。
  • 3F2に繰り返し詳細を尋ね、証言を録音する。
  • ✔虐待を受けたと思われる児童として、市町村または児童相談所へ速やかに通告する。
  • 5職員に対し、他言しないよう指示する。
解説:児童虐待防止法第6条により、虐待を受けたと「思われる」段階で通告義務が生じ、確証は不要である。通告は守秘義務違反とならない。子どもへの反復的な事情聴取は記憶の汚染と二次被害を招くため避け、聴取は司法面接(代表者聴取)の枠組みで専門的に行う。保護者への直接確認は、状況によっては子どもの危険を高めるため慎重を要する。
問7
【事例】児童養護施設で生活する10歳男児G2。職員に激しく反抗する一方、初対面の大人に過度になれなれしく接近する。被虐待の既往がある。理解として、最も適切なものはどれか。
  • 1わがままな性格の問題である。
  • 2反抗は罰により速やかに消去すべきである。
  • 3誰にでも懐くので、対人関係に問題はない。
  • 4施設不適応であるため、直ちに措置変更する。
  • ✔アタッチメントの形成不全や被虐待体験の影響として理解し、安全で一貫した関わりを継続する。
解説:被虐待児では、無差別的な愛着行動(脱抑制型対人交流症)や、試し行動、激しい反抗が同時にみられることがあり、いずれもアタッチメントの困難と対人不信の表れとして理解される。特定の大人との安全で一貫した関係の積み重ね、予測可能な枠組み、トラウマインフォームドケアの視点が重要で、罰的対応や安易な措置変更は喪失体験を重ね、症状を悪化させ得る。
問8
【事例】要介護3の認知症高齢者H2を在宅で介護する娘が「もう限界。時々つい強く当たってしまう」と訴えた。公認心理師の対応として、最も適切なものはどれか。
  • ✔介護負担と孤立を評価し、レスパイトを含む介護サービスの調整と心理的支援を、地域包括支援センター等と連携して行う。
  • 2虐待者として直ちに通報し、関与を終える。
  • 3「家族なのだから我慢すべき」と伝える。
  • 4娘の性格の問題として、指導を行う。
  • 5H2を直ちに施設入所させる手続きのみを行う。
解説:養護者による高齢者虐待の多くは、介護負担、知識不足、孤立、経済的困難、BPSDへの対処困難を背景とする。養護者支援は高齢者虐待防止法にも位置づけられており、通報と支援は対立しない。介護保険サービス(デイサービス、ショートステイ等のレスパイト)の調整、BPSDへの対応方法の共有、介護者の心理的支援を地域包括支援センター等と連携して行う。生命の危険がある場合は分離を検討する。

教育に関する心理学全44問中 8問を掲載

問1
いじめ防止対策推進法におけるいじめの定義に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔対象児童等が心身の苦痛を感じているものをいい、インターネット上の行為も含む。
  • 2加害者に害を与える意図があった場合に限られる。
  • 3継続的・反復的に行われたもののみをいう。
  • 4身体的暴力を伴うものに限られる。
  • 5学校の教職員が認定した場合にのみ、いじめとして扱われる。
解説:同法第2条は、いじめを「当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」と定義する。加害の意図や反復性は要件でなく、被害児童の主観的苦痛を基準に幅広く認知する枠組みである。生命・心身・財産に重大な被害等が生じた疑いは重大事態として調査が求められる。
問2
不登校への対応に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1登校再開のみを唯一の目標とする。
  • ✔社会的自立を目指し、多様な学びの場を含めて支援する。
  • 3本人の意思にかかわらず、速やかな登校刺激が最優先される。
  • 4不登校は必ず本人の怠学によるものである。
  • 5教育支援センターやフリースクールの利用は、出席扱いとされることはない。
解説:文部科学省の通知では、不登校児童生徒への支援は「登校のみを目標とするのではなく、社会的自立を目指す」ことが基本とされる。要因は多様(心理的・情緒的・身体的・社会的要因、いじめ、発達特性、家庭状況など)で、怠学と決めつけない見立てが必要である。教育支援センター、フリースクール、ICTを活用した学習等は、一定の要件のもとで指導要録上の出席扱いとすることができる。
問3
スクールカウンセラーの職務に関する記述として、最も適切でないものはどれか。
  • 1児童生徒へのカウンセリング
  • 2保護者・教職員へのコンサルテーション
  • ✔担任教員に代わって学級全体の成績評価を行うこと
  • 4児童生徒の心理教育・予防的取組
  • 5校内の危機対応への協力
解説:スクールカウンセラーの職務は、児童生徒への相談、保護者・教職員へのコンサルテーション、教職員研修、心理教育・予防的取組(ストレスマネジメント教育等)、事件事故発生時の緊急支援など多岐にわたる。学習評価は教員の職務であり、SCが代行するものではない。学校組織の一員として、チーム学校の枠組みの中で守秘と情報共有のバランス(集団守秘義務)を図ることが求められる。
問4
学習性無力感に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1報酬が過剰に与えられることで意欲が低下する現象である。
  • 2自らの反応と結果が随伴していると学習することで生じる。
  • 3内発的動機づけが外的報酬により低下する現象を指す。
  • ✔Seligmanらの犬を用いた実験で見出された現象である。
  • 5抑うつとの関連は否定されている。
解説:学習性無力感は、Seligman & Maierの回避不能なショックを用いた実験で見出された現象で、自らの反応と結果が随伴しない(何をしても変わらない)経験の反復により、回避可能な状況でも反応しなくなる。抑うつのモデルとして展開され、後に原因帰属の様式(内的・安定的・全般的帰属)を加えた改訂版が提唱された。外的報酬による内発的動機づけの低下はアンダーマイニング効果である。
問5
特別支援教育に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1対象は特別支援学校に在籍する児童生徒に限られる。
  • 2個別の教育支援計画は、学校のみで作成し家庭とは共有しない。
  • 3通級による指導は中学校では実施されない。
  • 4特別支援教育コーディネーターは外部の専門家が務める。
  • ✔通常の学級に在籍する発達障害等のある児童生徒も対象となる。
解説:特別支援教育は、特別支援学校・特別支援学級のみならず、通常の学級に在籍する発達障害等のある児童生徒を含め、すべての学校で行われる。関係機関の連携による長期的視点の「個別の教育支援計画」と、指導のための「個別の指導計画」を作成し、保護者と共有・協働する。通級による指導は小・中学校に加え高等学校でも制度化されている。コーディネーターは校内の教員が指名される。
問6
【事例】中学1年生の男子K2について、「同級生から繰り返しからかわれ、持ち物を隠された。本人は苦痛を訴えている」と担任から相談があった。学校の対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1加害生徒に悪意がなければ、いじめとして扱わない。
  • 2当事者同士で解決させ、教職員は介入しない。
  • 3被害生徒に「気にしすぎ」と伝え、強くなるよう励ます。
  • ✔被害生徒の苦痛を基準にいじめとして認知し、組織的対応(いじめ対策組織)につなげる。
  • 5被害生徒のみを別室に移し、加害生徒への対応は行わない。
解説:いじめ防止対策推進法では、加害の意図や継続性ではなく、対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているかを基準にいじめを認知する。認知した場合は担任個人の対応にとどめず、学校のいじめ防止対策組織による組織的対応(事実確認、被害児童の安全確保、加害児童への指導、保護者対応、必要に応じ関係機関連携)を行う。被害者にのみ変化を求める対応は不適切である。
問7
【事例】小学6年生の女子L2は3か月間欠席が続いている。家庭訪問すると本人は在宅し、ゲームをして過ごしている。母は「無理にでも行かせるべきか」と迷っている。スクールカウンセラーの対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1直ちに毎朝の強制的な登校を促す。
  • 2ゲームを取り上げれば登校すると助言する。
  • 3登校しない限り支援できないと伝える。
  • 4本人と会わず、母親のみに対応を指示する。
  • ✔背景要因(いじめ、学習困難、発達特性、家庭状況、心身の不調)を多面的に見立て、本人・家庭・学校で段階的な目標を検討する。
解説:不登校の背景は多様で、いじめ、学業不振、発達特性、対人不安、起立性調節障害など身体疾患、家庭状況が複合することが多い。まず多面的な見立てを行い、社会的自立を見据えて、家庭での生活リズム、居場所(教育支援センター、フリースクール、保健室・別室登校)、学習保障など段階的な目標を協働で設定する。一律の強制やゲームの没収は関係を損ないやすく、母親のみへの指示も十分でない。
問8
【事例】高校2年生の男子M2が「進路が決まらず、自分が何をしたいのか分からない」と来談した。スクールカウンセラーの対応として、最も適切なものはどれか。
  • ✔自己理解と職業理解の両面を広げ、価値観・興味・経験を言語化しながら、意思決定の過程を支える。
  • 2適職検査の結果に基づき、就くべき職業を指定する。
  • 3「まだ若いので考えなくてよい」と伝える。
  • 4偏差値に基づき進学先を決定する。
  • 5保護者の希望を優先するよう助言する。
解説:青年期の進路の迷いは、アイデンティティ探求の過程として理解される(モラトリアム)。キャリア支援では、興味・価値観・能力の自己理解と、職業・進学に関する情報(職業理解)の双方を広げ、意思決定のプロセス自体を支えることが中心となる。検査結果は対話の素材であり、職業の指定に用いるものではない。他者の希望への一方的な同調は同一性の確立を妨げ得る。

司法・犯罪に関する心理学全38問中 8問を掲載

問1
少年法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔家庭裁判所が全件送致を受け、調査・審判を行う。
  • 2少年事件は、原則として検察官が処分を決定する。
  • 3審判は公開が原則である。
  • 418歳・19歳の者は少年法の適用対象外である。
  • 5保護処分には、罰金刑が含まれる。
解説:少年事件は全件が家庭裁判所に送致され(全件送致主義)、家庭裁判所調査官による社会調査、必要に応じた少年鑑別所での鑑別を経て審判が行われる。審判は非公開で、教育的・保護的措置を基本とする。保護処分は保護観察、児童自立支援施設等送致、少年院送致である。2022年施行の改正により、18歳・19歳は「特定少年」として少年法の適用を受けつつ、原則逆送対象事件の拡大など特例が設けられた。
問2
医療観察法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1処遇の要否は検察官が単独で決定する。
  • ✔対象は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者である。
  • 3入院処遇の期間は法律上一律に3年と定められている。
  • 4対象行為に殺人は含まれない。
  • 5地域社会における処遇(通院処遇)の制度はない。
解説:医療観察法は、心神喪失または心神耗弱の状態で殺人・放火・強盗・不同意性交等・傷害などの重大な他害行為を行い、不起訴処分や無罪等となった者を対象とする。処遇の要否と内容は、裁判官と精神保健審判員(精神科医)の合議体が決定する。入院処遇のほか通院処遇があり、社会復帰調整官が生活環境の調整と精神保健観察を担う。期間は一律ではなく、個別に判断される。
問3
司法面接(forensic interview)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1繰り返し面接を行い、詳細な記憶を積み上げることが望ましい。
  • 2誘導的な質問により記憶を明確化することが推奨される。
  • ✔原則として早期に1回、自由報告を重視して行い、録音録画を行う。
  • 4面接者は事前に事件の詳細を被面接者に伝える。
  • 5子どもの被害事案では用いられない。
解説:司法面接(NICHDプロトコル等)は、被害・目撃児童等から、暗示や誘導による記憶の変容を避けつつ正確な情報を得るための構造化面接である。原則として可能な限り早期に1回のみ実施し、負担軽減と記憶汚染防止のため録音録画を行う。オープン質問による自由報告を最大限重視し、誘導質問・クローズド質問は最小限にとどめる。日本では検察・警察・児童相談所による代表者聴取として運用されている。
問4
犯罪者処遇におけるRNR原則に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1リスクの低い対象者ほど高密度の介入を行うべきである。
  • 2ニーズ原則とは、対象者の希望する支援を優先することをいう。
  • 3反応性原則とは、処遇者の意向に対象者を合わせさせることをいう。
  • ✔リスク・ニーズ・反応性の3原則からなり、再犯リスクに応じた介入強度を設定する。
  • 5静的リスク要因への介入が処遇の中心となる。
解説:RNR原則は、①リスク原則(再犯リスクの高い者により高密度の介入を配分する)、②ニーズ原則(再犯に直接関連する動的リスク要因=犯因性ニーズを標的とする)、③反応性原則(対象者の学習スタイル・能力・動機に合わせた方法を用いる)からなる。年齢や前科などの静的リスク要因は変えられないため、反社会的態度・交友・物質使用などの動的要因が介入標的となる。低リスク者への過剰介入は逆効果となり得る。
問5
家庭裁判所調査官の職務として、最も適切なものはどれか。
  • 1少年に対する保護処分の決定
  • 2少年院における矯正教育の実施
  • 3刑事裁判における量刑の決定
  • 4被疑者の取調べ
  • ✔少年や保護者の調査・面接および環境調整に関する報告
解説:家庭裁判所調査官は、少年事件では少年・保護者との面接、心理検査、学校・関係機関の照会等による社会調査を行い、少年の要保護性や環境について裁判官に報告・意見を述べる。家事事件では子の監護に関する調査等も担う。処分の決定は裁判官が行い、矯正教育は少年院の法務教官、収容鑑別は少年鑑別所の法務技官(心理)が担当する。
問6
【事例】万引きを繰り返し家庭裁判所に送致された15歳の少年N2について、家庭裁判所調査官が社会調査を行うこととなった。調査の内容として、最も適切なものはどれか。
  • 1非行事実の有無を証拠により認定する。
  • 2処分を決定し、少年に告知する。
  • 3少年院での矯正教育を実施する。
  • ✔少年の性格、生育歴、家庭・学校環境、交友関係等から要保護性を検討する。
  • 5被害弁償額を算定し、支払を命じる。
解説:家庭裁判所調査官の社会調査は、少年の資質(性格、知能、発達特性)と環境(家庭、学校、交友)を把握し、再非行の危険性と教育可能性を含む「要保護性」を検討して裁判官に報告・意見を述べるものである。非行事実の認定と処分の決定は裁判官が行い、矯正教育は少年院の法務教官が担う。少年審判は非公開で、教育的・保護的性格をもつ。
問7
【事例】性犯罪被害を受けた20代女性O2が、被害から1週間後に来談した。悪夢、フラッシュバック、外出困難がみられる。公認心理師の対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1被害状況を詳細に語らせ、感情を発散させる。
  • 21か月未満のためPTSDではなく、支援は不要である。
  • 3直ちに加害者への対応を本人に指示する。
  • 4警察・医療への相談は本人に知らせない。
  • ✔安全と生活の安定を最優先に支援し、症状の心理教育を行いつつ、経過をみて適応があればトラウマ焦点化治療を検討する。
解説:受傷直後から1か月未満の症状は急性ストレス症の範疇にあり、多くは自然回復するため、まず安全の確保、生活の安定、症状は異常な出来事への正常な反応であるという心理教育、社会資源(性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター、産婦人科受診、被害者支援)の情報提供が優先される。詳細な語りの強要や単回デブリーフィングは有害となり得る。症状が持続する場合にPE・CPT・EMDR等を検討する。
問8
【事例】離婚調停中の夫婦について、家庭裁判所から子(8歳)の監護に関する調査が行われることとなった。子への面接における留意点として、最も適切なものはどれか。
  • ✔子が忠誠葛藤に置かれやすいことに配慮し、負担の少ない形で意向と生活実態を把握する。
  • 2どちらの親と暮らしたいか、二者択一で明確に答えさせる。
  • 3面接内容を両親にそのまま伝える。
  • 4子の意向は考慮する必要がない。
  • 5子の発言をそのまま事実として採用する。
解説:父母の対立下にある子は、一方を選ぶことがもう一方への裏切りとなる忠誠葛藤に置かれやすく、直接的な二者択一を迫ることは強い心理的負担となる。年齢・発達段階に応じ、日常生活の様子や関係性を含めて負担の少ない方法で意向と実態を把握する。子の意見は年齢に応じて尊重されるが(子どもの権利条約第12条)、被暗示性や葛藤状況の影響も踏まえ、他の情報と統合して評価する。

産業・組織に関する心理学全42問中 8問を掲載

問1
ストレスチェック制度に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔常時50人以上の労働者を使用する事業場に実施義務がある。
  • 2検査結果は、本人の同意なく事業者に通知される。
  • 3高ストレス者は必ず医師の面接指導を受けなければならない。
  • 4実施者は人事権を有する者が務めることが望ましい。
  • 5目的は労働者のメンタルヘルス不調者を選別・配置転換することである。
解説:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度は、常時50人以上の事業場に年1回以上の実施義務がある(50人未満は努力義務)。結果は実施者から本人に直接通知され、事業者への提供には本人の同意が必要である。高ストレス者が申出た場合に医師の面接指導が行われ、事業者は結果に基づき就業上の措置を検討する。目的は一次予防(不調の未然防止)と職場環境改善であり、選別を目的としない。人事権を有する者は実施の事務に従事できない。
問2
NIOSHの職業性ストレスモデルに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1職場のストレッサーのみでストレス反応が決まるとする。
  • ✔職場のストレッサー、個人要因、仕事外の要因、緩衝要因を含む包括的モデルである。
  • 3仕事の要求度と裁量度の2次元のみで説明する。
  • 4努力と報酬の不均衡に着目したモデルである。
  • 5組織のパフォーマンスを予測するための業績モデルである。
解説:NIOSH職業性ストレスモデルは、職場のストレッサー→急性ストレス反応→疾病という主経路に、個人要因(年齢・性格等)、仕事外の要因(家庭・経済)、緩衝要因(上司・同僚・家族の支援)が影響するとする包括的モデルである。仕事の要求度-コントロールモデル(Karasek)、努力-報酬不均衡モデル(Siegrist)は別のモデルで、いずれも職業性ストレスの主要理論である。
問3
Herzbergの二要因理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1給与や労働条件は動機づけ要因である。
  • 2衛生要因を充実させれば、直接的に高い満足が得られる。
  • ✔達成、承認、仕事そのものは動機づけ要因であり、満足感をもたらす。
  • 4動機づけ要因の不足は、直ちに強い不満をもたらす。
  • 5職務満足と職務不満足は、単一の連続体の両端である。
解説:Herzbergは、職務満足をもたらす動機づけ要因(達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進、成長)と、不足すると不満を生む衛生要因(給与、作業条件、対人関係、監督、会社の方針)を区別し、両者は別次元であるとした。衛生要因の改善は不満を減らすが積極的満足には直結しないため、職務充実(job enrichment)による動機づけ要因の強化が重要とされる。
問4
三隅二不二のPM理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1P機能は集団維持機能、M機能は目標達成機能を指す。
  • 2PM型よりpm型のほうが生産性・満足度が高い。
  • 3リーダーの生得的特性のみを重視する理論である。
  • ✔P機能(目標達成)とM機能(集団維持)の高低により4類型に分類される。
  • 5状況要因を導入したコンティンジェンシー理論である。
解説:PM理論では、P機能(Performance:目標達成・課題遂行)とM機能(Maintenance:集団維持・人間関係配慮)の高低の組合せでPM型・Pm型・pM型・pm型の4類型に分類し、両機能とも高いPM型が生産性・部下の満足度の両面で最も有効とされる。特性論ではなく行動論に位置づけられ、状況適合理論としてはFiedlerのコンティンジェンシー理論などがある。
問5
復職支援(リワーク)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1主治医の復職可能の診断書があれば、直ちに従前の業務量に復帰させる。
  • 2試し出勤制度は法律で一律に禁止されている。
  • 3復職判定は心理職が単独で行う。
  • 4再発予防のための職場環境調整は不要である。
  • ✔職場復帰支援は、休業開始から職場復帰後のフォローアップまでの段階的な過程である。
解説:厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、①病気休業開始・休業中のケア、②主治医による職場復帰可能の判断、③職場復帰の可否判断と支援プランの作成、④最終的な職場復帰の決定、⑤職場復帰後のフォローアップ、の5ステップが示される。主治医の診断書は生活面の回復を示すことが多く、業務遂行能力の評価と段階的な業務量調整、環境調整が必要である。判断は産業医等を含む関係者の連携で行う。
問6
【事例】うつ病で3か月休職していた40代男性P2が、主治医から「復職可能」との診断書を得て復職を希望している。企業内の公認心理師の対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1診断書に基づき、直ちに従前どおりの業務量で復職させる。
  • ✔生活リズム・作業遂行能力・症状の安定を評価し、産業医・人事・上司と連携して段階的な復職プランを作成する。
  • 3再発リスクがあるため、復職を認めない。
  • 4本人の希望のみに基づき、配置転換を即決する。
  • 5復職後のフォローアップは不要である。
解説:主治医の「復職可能」は日常生活レベルの回復を示すことが多く、業務遂行能力の評価とは必ずしも一致しない。厚生労働省の手引きに沿い、生活記録表等による生活リズムの確認、模擬的作業や試し出勤による評価を行い、産業医の意見を踏まえて段階的な業務量調整と職場環境の調整を含む復職支援プランを作成し、復職後もフォローアップを継続する。復職拒否や即断の配置転換は適切でない。
問7
【事例】ストレスチェックの結果、ある部署で高ストレス者が突出して多いことが判明した。事業場の対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1高ストレス者の氏名を部署内に公表し、注意を促す。
  • 2該当部署の従業員を一斉に配置転換する。
  • ✔集団分析の結果を活用し、業務量・裁量度・支援体制など職場環境の改善を検討する。
  • 4個人結果を上司に開示し、指導させる。
  • 5結果は個人の問題であるため、組織的対応は行わない。
解説:ストレスチェックの集団分析(努力義務)は、職場環境改善という一次予防に活用することが制度の目的である。仕事の量的・質的負担、裁量度、上司・同僚の支援、評価の公正さなどの要因を検討し、業務プロセスや体制の改善につなげる。個人結果は本人の同意なく事業者や上司に開示できず、公表や不利益取扱いは法令違反となる。
問8
【事例】新入社員Q2が「上司から人格を否定する発言を繰り返される」と社内相談窓口に訴えた。公認心理師の対応として、最も適切なものはどれか。
  • 1「新人にはよくあること」と伝え、耐えるよう助言する。
  • 2本人の同意なく上司に事実確認を行う。
  • 3事実関係が不明なため、記録を残さない。
  • ✔本人の心身の状態を評価し、意向を確認したうえで、社内のハラスメント対応体制につなぐ道筋を一緒に検討する。
  • 5直ちに退職を勧める。
解説:パワーハラスメント防止措置は労働施策総合推進法により事業主の義務とされ、相談体制の整備、事実関係の迅速・適正な確認、被害者への配慮措置、再発防止措置が求められる。心理職はまず本人の安全と心身の状態を評価し、意向(誰に、どこまで伝えるか)を確認したうえで、相談窓口・人事・産業医等の対応体制につなぐ。無断の事実確認は不利益や報復のリスクを高める。相談記録は適切に作成・管理する。

人体の構造と機能及び疾病全40問中 8問を掲載

問1
糖尿病に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔2型糖尿病はインスリン抵抗性と分泌低下が関与し、生活習慣が発症に関与する。
  • 21型糖尿病は生活習慣が主因である。
  • 3低血糖症状に意識障害は含まれない。
  • 4血糖コントロールの指標としてCRPが用いられる。
  • 5糖尿病では抑うつの合併率が一般人口より低い。
解説:1型糖尿病は主に自己免疫機序による膵β細胞の破壊でインスリンが絶対的に不足する病態で、生活習慣が主因ではない。2型はインスリン抵抗性と分泌低下が関与し、肥満・運動不足等が発症に関わる。血糖コントロールの指標はHbA1c。低血糖では発汗・動悸・振戦に続き、意識障害や痙攣を来し得る。糖尿病患者の抑うつ合併率は一般人口より高く、療養行動(セルフケア)への影響が大きいため心理支援が重要である。
問2
脳血管障害に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1左半球損傷では、失語症より半側空間無視が生じやすい。
  • ✔右半球損傷では、半側空間無視が生じやすい。
  • 3脳梗塞は出血性病変である。
  • 4くも膜下出血の典型的症状は緩徐に進行する頭重感である。
  • 5脳血管障害後にうつ状態が生じることはまれである。
解説:半側空間無視は右半球(特に右頭頂葉)損傷で左空間に対して生じやすく、失語症は左半球損傷で生じやすい。脳梗塞は血管閉塞による虚血性病変、脳出血・くも膜下出血は出血性病変で、くも膜下出血は突然の激しい頭痛が典型である。脳卒中後うつ(PSD)は約3割にみられ、リハビリテーションの阻害要因となるため心理的支援が重要である。
問3
がん患者の心理的反応に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1適応障害やうつ病の合併はまれである。
  • 2せん妄は終末期にはほとんどみられない。
  • ✔告知後の一時的な不安や抑うつは、通常2週間程度で軽減することが多い。
  • 4サバイバーには心理的課題は残らない。
  • 5家族の心理的負担は臨床上考慮する必要がない。
解説:がん告知後には強い衝撃・不安・抑うつが生じるが、多くは1〜2週間程度で軽減し日常機能が回復する(正常反応)。それが遷延・重篤化すると適応障害やうつ病となり、合併率は決して低くない。終末期にはせん妄の頻度が高い。治療終了後のサバイバーにも再発不安や社会復帰の課題が残り、家族は「第二の患者」として支援対象となる。
問4
身体疾患と精神症状の関連について、最も適切なものはどれか。
  • 1甲状腺機能亢進症では、意欲低下と過眠が典型的である。
  • 2ステロイド薬は精神症状を引き起こすことはない。
  • 3貧血や電解質異常が精神症状の原因となることはない。
  • ✔甲状腺機能低下症では、抑うつ様の症状が出現することがある。
  • 5抑うつ症状を認めた場合、身体疾患の検討は不要である。
解説:甲状腺機能低下症では活動性低下・易疲労感・抑うつ・認知機能低下がみられ、うつ病との鑑別を要する。逆に亢進症では焦燥・不安・不眠・動悸など躁的ないし不安様の症状が出やすい。ステロイド、インターフェロン、一部の降圧薬などの薬剤性、貧血、電解質異常、ビタミン欠乏、感染症なども精神症状を引き起こす。器質因・薬剤性の除外は精神科アセスメントの基本である。
問5
睡眠に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1ノンレム睡眠中は眼球が急速に運動する。
  • 2睡眠は一晩を通じて均質で、周期性はない。
  • 3深いノンレム睡眠は明け方に集中する。
  • ✔レム睡眠中には、骨格筋の緊張が低下し、鮮明な夢がみられやすい。
  • 5加齢により深睡眠の割合は増加する。
解説:レム睡眠は急速眼球運動と骨格筋の緊張低下を伴い、鮮明な夢体験が報告されやすい。ノンレム睡眠は徐波の出現する深い睡眠を含み、深睡眠は睡眠前半に多く出現する。睡眠は約90分周期でレムとノンレムを繰り返す。加齢により深睡眠は減少し、中途覚醒が増える。ナルコレプシーでは入眠時レム期や情動脱力発作(カタプレキシー)がみられる。
問6
循環器疾患と心理的要因に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1抑うつは心疾患の予後と無関係である。
  • 2心筋梗塞後に不安・抑うつが生じることはまれである。
  • 3心臓リハビリテーションに心理的支援は含まれない。
  • 4怒りや敵意は循環器系に影響しない。
  • ✔タイプA行動パターンは、冠動脈疾患のリスク要因として研究されてきた。
解説:Friedman & RosenmanのタイプA行動パターン(競争的、性急、敵意)は冠動脈疾患のリスク要因として研究され、特に敵意・怒りの成分の寄与が重視されている。心筋梗塞後には不安・抑うつが高率に生じ、抑うつは予後不良と関連することが知られる。心臓リハビリテーションは運動療法に加え、患者教育、禁煙、ストレスマネジメントなど心理社会的支援を含む包括的プログラムである。
問7
【事例】術後3日目の75歳男性Q2が、夜間に「知らない人がいる」と興奮し、点滴を抜こうとした。日中は比較的落ち着いている。考えられる状態として、最も適切なものはどれか。
  • 1Alzheimer型認知症の発症
  • 2統合失調症の初発
  • 3解離性障害
  • 4パニック症
  • ✔せん妄
解説:術後、高齢、環境変化という状況下で急性に生じ、夜間に増悪する意識障害、幻視、興奮、注意の障害はせん妄に特徴的である。原因(薬剤、疼痛、脱水、感染、電解質異常、低酸素、便秘、睡眠障害)の同定と除去が第一で、環境調整(照明、時計・カレンダー、眼鏡・補聴器、家族の付き添い、日中の離床)が重要である。認知症は準備因子となるが、経過が緩徐である点で区別される。
問8
免疫と心理的要因に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1心理的要因は免疫系に一切影響しない。
  • 2コルチゾールは免疫を亢進させる。
  • 3急性ストレスと慢性ストレスの免疫への影響は同一である。
  • 4アレルギー疾患に心理的要因は関与しない。
  • ✔慢性ストレスは免疫機能に影響を及ぼし得る(精神神経免疫学)。
解説:精神神経免疫学の知見では、慢性ストレスはHPA軸を介したコルチゾールの持続的上昇などにより免疫機能を抑制し、感染症への罹患しやすさや創傷治癒の遅延と関連することが示されている。コルチゾールは免疫抑制的に働く。急性ストレスでは一時的に一部の免疫指標が亢進するなど、時間経過により影響は異なる。アトピー性皮膚炎や気管支喘息では心理社会的要因の関与が知られる。

精神疾患とその治療全45問中 8問を掲載

問1
統合失調症に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1陰性症状には幻覚・妄想が含まれる。
  • 2発症は通常50歳以降である。
  • 3抗精神病薬は主にセロトニン再取り込みを阻害する。
  • 4心理社会的支援は薬物療法が奏効した後にのみ開始すべきである。
  • ✔感情の平板化、意欲欠如、社会的引きこもりは陰性症状である。
解説:陽性症状は幻覚・妄想・思考障害・興奮など、陰性症状は感情の平板化、意欲・自発性の低下、思考の貧困、社会的引きこもりなどで、後者はより経過に影響しやすい。好発年齢は思春期〜30歳前後。抗精神病薬は主にドパミンD2受容体を遮断する(非定型薬はセロトニン受容体にも作用)。薬物療法と並行して、心理教育、SST、認知機能リハビリテーション、家族支援、ACT等の心理社会的支援を早期から行うことが推奨される。
問2
DSM-5-TRにおけるうつ病(大うつ病性障害)の診断に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔症状が2週間以上持続することが必要である。
  • 2抑うつ気分が必須であり、興味・喜びの喪失では代替できない。
  • 3食欲や睡眠の変化は診断基準に含まれない。
  • 4症状が1週間持続すれば診断できる。
  • 5機能の障害の有無は問わない。
解説:大うつ病エピソードは、抑うつ気分または興味・喜びの著しい減退のいずれかを含む5つ以上の症状が、同じ2週間の間にほぼ毎日存在し、著しい苦痛または機能の障害を引き起こすことを要件とする。症状には体重・食欲の変化、不眠・過眠、精神運動性の焦燥・制止、易疲労感、無価値感・罪責感、思考力減退、死についての反復思考が含まれる。物質・他の医学的疾患による場合は除外する。
問3
双極症(双極性障害)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1双極II型では、躁病エピソードが必須である。
  • ✔双極I型の診断には、躁病エピソードの存在が必要である。
  • 3うつ病相への治療は抗うつ薬の単独投与が第一選択である。
  • 4気分安定薬は用いられない。
  • 5初発エピソードは必ず躁病相である。
解説:双極I型は躁病エピソード(1週間以上、著しい機能障害・入院・精神病性の特徴を伴い得る)の存在で診断され、双極II型は軽躁病エピソードと大うつ病エピソードで構成される。初発はうつ病相であることが多く、うつ病との鑑別が課題となる。抗うつ薬の単独投与は躁転や急速交代化のリスクがあり、リチウム等の気分安定薬や一部の非定型抗精神病薬が治療の中心となる。心理教育による再発予兆の把握も重要である。
問4
パニック症に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1パニック発作は通常30分以上かけて徐々に増強する。
  • 2パニック発作は必ず生命の危険を伴う。
  • ✔予期不安と広場恐怖的な回避行動が症状の維持に関与する。
  • 4治療では回避行動を積極的に維持させる。
  • 5心理療法は無効であり、薬物療法のみが有効である。
解説:パニック発作は突然生じ、通常10分以内に強度がピークに達する。発作そのものは生命の危険を伴わないが、身体感覚を破局的に解釈する認知(「心臓発作だ」)、次の発作への予期不安、状況の回避が悪循環を形成し症状を維持する。治療は心理教育、認知再構成、内部感覚曝露・状況曝露を含む認知行動療法が有効で、SSRI等の薬物療法と併用される。回避の維持は症状を持続させる。
問5
心的外傷後ストレス症(PTSD)の症状群として、DSM-5-TRに含まれないものはどれか。
  • 1侵入症状(再体験)
  • 2回避
  • 3認知と気分の陰性の変化
  • ✔多幸感の持続
  • 5覚醒度と反応性の著しい変化
解説:DSM-5-TRのPTSDは、①侵入症状(フラッシュバック、悪夢、侵入的記憶)、②外傷関連刺激の持続的回避、③認知と気分の陰性の変化(否定的信念、自責、興味減退、陽性感情の持続的欠如、解離性健忘)、④覚醒度と反応性の著しい変化(過覚醒、驚愕反応、易怒性、無謀な行動、睡眠障害)の4症状群からなり、1か月以上持続することが要件である。多幸感の持続は含まれない。
問6
神経性やせ症に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1本人が低体重を苦痛と感じていることが診断の要件である。
  • 2身体的合併症はまれで、外来管理のみで足りることが多い。
  • 3リフィーディング症候群のリスクは考慮しなくてよい。
  • 4家族を治療に関与させることは有害である。
  • ✔体重増加への強い恐怖と、体重・体型に関する認知の障害を特徴とする。
解説:神経性やせ症は、必要量に比して摂取制限による有意な低体重、体重増加または肥満になることへの強い恐怖、体重・体型の体験の障害(自己評価への過剰な影響、低体重の深刻さの認識欠如)を特徴とする。病識が乏しいことが多い。電解質異常、徐脈、無月経、骨密度低下等の合併症があり、急速な栄養再開ではリフィーディング症候群に注意を要する。青年期では家族基盤型治療(FBT)が有効性を示している。
問7
向精神薬の副作用に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔抗精神病薬では、錐体外路症状や悪性症候群に注意する。
  • 2SSRIは投与直後から確実に効果が現れる。
  • 3ベンゾジアゼピン系薬剤に依存形成のリスクはない。
  • 4抗うつ薬の中断は、いつでも自己判断で急に行ってよい。
  • 5リチウムは血中濃度の測定を要しない。
解説:抗精神病薬はドパミンD2遮断により、パーキンソン様症状・アカシジア・急性ジストニア・遅発性ジスキネジアといった錐体外路症状や、高熱・筋強剛・意識障害を呈する悪性症候群(致死的)を生じ得る。SSRIは効果発現に通常2〜4週を要し、投与初期に消化器症状や賦活症候群が出ることがある。ベンゾジアゼピンは依存・耐性形成のリスクがあり、抗うつ薬の急な中断は中断症候群を招く。リチウムは治療域が狭く血中濃度モニタリングが必須である。
問8
社交不安症に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔他者から否定的に評価されることへの著しい恐怖を特徴とする。
  • 2人前での不安が一切生じないことが特徴である。
  • 3回避行動は症状の改善に寄与する。
  • 4発症は通常50歳以降である。
  • 5認知行動療法の有効性は示されていない。
解説:社交不安症は、他者の注視を浴びる可能性のある社交場面において、否定的に評価されることへの著しい恐怖・不安を抱き、その場面を回避するか強い苦痛を伴って耐える状態が持続する(成人では通常6か月以上)。発症は思春期・青年期が多い。自己に対する注意の過剰な集中、事前・事後の反すう、安全行動が症状を維持し、認知行動療法(認知再構成と曝露)やSSRIの有効性が確立している。

公認心理師に関係する制度全48問中 8問を掲載

問1
精神保健福祉法における医療保護入院に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1本人の同意に基づく入院形態である。
  • ✔精神保健指定医1名の診察と家族等の同意により行われる。
  • 3自傷他害のおそれがある場合に、都道府県知事の権限で行われる。
  • 472時間を限度とする応急的な入院形態である。
  • 5指定医の診察は不要である。
解説:医療保護入院は、精神保健指定医1名が入院の必要性を認め、かつ本人の同意が得られない場合に、家族等の同意(家族等がない等の場合は市町村長の同意)により行われる。任意入院は本人同意、措置入院は自傷他害のおそれがあり指定医2名の診察一致に基づき都道府県知事が決定する。応急入院は家族等の同意が得られない緊急時に72時間を限度として行われる。近年の改正で入院期間の定めと更新手続き、入院者訪問支援事業等が整備された。
問2
自殺対策基本法および自殺総合対策大綱に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1自殺は個人の自由な選択であり、社会的取組の対象外とされている。
  • 2対策の主体は国のみで、地方公共団体は関与しない。
  • ✔自殺を個人の問題ではなく社会的要因を含む問題として捉え、総合的対策を推進する。
  • 4ゲートキーパーは医師免許を有する者に限られる。
  • 5遺族への支援は対象に含まれない。
解説:自殺対策基本法は、自殺を個人の問題としてではなく、健康問題・経済問題・家庭問題等の社会的要因が複合した「追い込まれた末の死」と捉え、生きることの包括的支援として総合的対策を推進する。都道府県・市町村には自殺対策計画の策定が義務づけられている。ゲートキーパーは、変化に気づき声をかけ、話を聴き、必要な支援につなぎ、見守る役割で、資格の有無を問わず誰もが担い得る。遺族へのポストベンションも重要な柱である。
問3
介護保険制度に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1保険者は都道府県である。
  • 2第2号被保険者は20歳以上65歳未満の医療保険加入者である。
  • 3要介護認定は主治医が単独で行う。
  • ✔第1号被保険者は65歳以上の者である。
  • 5認知症は特定疾病に含まれない。
解説:介護保険の保険者は市町村(および特別区)で、第1号被保険者は65歳以上、第2号被保険者は40歳以上65歳未満の医療保険加入者である。第2号被保険者は末期がん、初老期における認知症、脳血管疾患など16の特定疾病に起因する場合に限りサービスを利用できる。要介護認定は、認定調査と主治医意見書に基づく一次判定と、介護認定審査会による二次判定を経て市町村が行う。
問4
個人情報保護法における要配慮個人情報に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1氏名と住所のみからなる情報を指す。
  • 2取得に本人の同意は不要である。
  • 3第三者提供にオプトアウト手続きが利用できる。
  • 4心理検査の結果は一切個人情報に該当しない。
  • ✔病歴や心身の機能の障害など、不当な差別や偏見が生じ得る情報を指す。
解説:要配慮個人情報とは、人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪被害の事実、心身の機能の障害など、不当な差別・偏見その他の不利益が生じないよう特に配慮を要する情報をいう。取得には原則として本人の同意が必要で、第三者提供におけるオプトアウト手続きは利用できない。心理検査結果や相談記録は、病歴等に関わる要配慮個人情報を含み得るため、厳格な管理が求められる。
問5
労働安全衛生法および関連指針に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔メンタルヘルス対策における4つのケアは、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアである。
  • 2ラインによるケアとは、労働者本人が自らのストレスに気づき対処することである。
  • 3事業場外資源によるケアは法令上認められていない。
  • 4産業医の選任義務は常時10人以上の事業場に生じる。
  • 5長時間労働者への医師の面接指導制度は存在しない。
解説:「労働者の心の健康の保持増進のための指針」は、①セルフケア(労働者自身)、②ラインによるケア(管理監督者)、③事業場内産業保健スタッフ等によるケア(産業医・保健師・心理職等)、④事業場外資源によるケア(EAP、医療機関等)の4つのケアを継続的・計画的に行うことを求める。産業医の選任義務は常時50人以上の事業場に生じ、長時間労働者に対する医師の面接指導制度も法定されている。
問6
発達障害者支援法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1対象は知的障害を伴う者に限られる。
  • ✔発達障害を、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢で発現するものと定義している。
  • 3支援の対象は18歳未満に限定される。
  • 4発達障害者支援センターの設置根拠は児童福祉法である。
  • 5社会的障壁の除去という視点は含まれていない。
解説:発達障害者支援法は、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義する。知的障害の有無は問わず、対象年齢の上限もない。2016年改正では、社会的障壁により日常生活・社会生活に制限を受ける状態という社会モデルの視点、切れ目のない支援、就労・教育・司法手続における配慮等が強化された。
問7
精神障害者保健福祉手帳に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1有効期間の定めはない。
  • 2申請先は都道府県知事であり、市町村を経由しない。
  • 3発達障害は対象とならない。
  • 4取得しなければ精神科医療を受けられない。
  • ✔等級は1級から3級まである。
解説:精神障害者保健福祉手帳は精神保健福祉法に基づき、精神障害により長期にわたり日常生活・社会生活への制約がある者を対象とし、等級は1級(日常生活が不能)、2級(日常生活に著しい制限)、3級(日常生活・社会生活に制限)の3段階である。有効期間は2年で更新申請が必要。申請は市町村を経由して都道府県知事(政令指定都市市長)に行う。発達障害も対象となり得る。
問8
自立支援医療(精神通院医療)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔精神疾患による通院医療費の自己負担が原則1割に軽減される。
  • 2入院医療も対象に含まれる。
  • 3所得に関わらず自己負担の上限額は設定されない。
  • 4精神障害者保健福祉手帳の所持が必須である。
  • 5有効期間は5年である。
解説:自立支援医療(精神通院医療)は障害者総合支援法に基づく制度で、精神疾患による継続的な通院医療の自己負担が原則1割に軽減され、さらに世帯所得等に応じた月額自己負担上限が設定される。対象は通院医療であり入院は含まれない。手帳の所持は要件ではなく、有効期間は1年で更新が必要である。

その他(心の健康教育等)全37問中 8問を掲載

問1
予防の3水準に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1一次予防は、発症した者の重症化を防ぐことをいう。
  • 2二次予防は、再発予防とリハビリテーションを指す。
  • ✔一次予防は発生の未然防止、二次予防は早期発見・早期対応、三次予防は再発防止と社会復帰である。
  • 4三次予防は、健康教育による意識啓発を指す。
  • 5スクリーニングは三次予防に分類される。
解説:Caplanの予防モデルでは、一次予防が発生そのものの未然防止(健康教育、ストレスマネジメント教育、環境調整)、二次予防が早期発見・早期対応(スクリーニング、ゲートキーパー、相談体制)、三次予防が重症化・再発の防止と社会復帰支援(リハビリテーション、リワーク、ポストベンション)にあたる。学校・職場のメンタルヘルス施策はこの枠組みで整理される。
問2
自殺のポストベンションに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1自殺の詳細な手段や場所を関係者全体に周知する。
  • 2できるだけ早く日常に戻すため、感情表出は抑制させる。
  • 3報道機関に対する配慮を求める必要はない。
  • ✔遺された人々のケアと、群発自殺の予防を目的とする。
  • 5対象は遺族のみで、同僚や同級生は含まれない。
解説:ポストベンションは、自殺が起きた後に遺された人々(遺族、友人、同級生、同僚、支援者)の心理的影響を緩和し、連鎖・群発自殺を予防する取組である。手段や場所の詳細な伝達、美化・単純化した説明は模倣を招くため避け、WHOの自殺報道ガイドラインに沿った配慮を求める。事実を必要な範囲で正確に伝え、感情表出を許容しつつ、支援資源を明示することが基本となる。
問3
心の健康教育(心理教育)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1知識の一方向的な伝達のみで完結すべきである。
  • 2対象は診断のついた患者本人に限られる。
  • 3統合失調症の再発予防における家族心理教育の有効性は否定されている。
  • 4学校での実施は法令上禁止されている。
  • ✔疾病や対処に関する知識を提供し、当事者・家族が主体的に対処する力を高めることを目指す。
解説:心理教育は、疾患・症状・対処法・利用できる資源に関する情報を、当事者や家族が受け入れやすい形で提供し、主体的な対処力(エンパワメント)を高める体系的な援助である。統合失調症では家族心理教育がEE(感情表出)の低減を通じて再発率を有意に下げることが示されている。学校では、ストレスマネジメント教育、SOSの出し方に関する教育等として広く実施されている。
問4
学校における「SOSの出し方に関する教育」に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1自殺の手段について詳細に教えることを含む。
  • 2対象は教職員のみである。
  • 3相談してはいけない場面を教えることが中心である。
  • ✔困難に直面したとき、信頼できる大人に相談する方法を具体的に学ぶことを目的とする。
  • 5一次予防ではなく三次予防に位置づけられる。
解説:SOSの出し方に関する教育は、自殺対策基本法および自殺総合対策大綱に基づき学校で推進される取組で、心の危機に気づく力、援助希求(助けを求める)行動のスキル、身近な信頼できる大人や相談窓口につながる方法を児童生徒が具体的に学ぶことを目的とする。同時に、相談を受ける側の大人の対応力向上も重要である。発生の未然防止を目指す一次予防に位置づけられる。
問5
職場・学校におけるメンタルヘルスリテラシーに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1医療者のみが備えるべき知識である。
  • 2スティグマの低減とは無関係である。
  • 3知識の提供は行動変容に一切つながらない。
  • ✔精神疾患に関する正しい知識と、援助希求・支援行動を促す力を指す。
  • 5早期発見・早期介入は推奨されない。
解説:メンタルヘルスリテラシーは、精神疾患の認識、リスク要因と原因の知識、自助と専門的援助に関する知識、援助希求を促す態度、情報の入手能力を含む概念である。知識の普及はスティグマの低減、早期の相談行動、周囲による適切な対応(ゲートキーパー機能)につながる。学校では2022年度から高等学校保健体育で精神疾患の内容が扱われている。
問6
ストレスマネジメント教育に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1ストレスを完全になくすことを目標とする。
  • 2教育は成人のみを対象とする。
  • 3リラクセーション技法は効果がないとされる。
  • 4災害後の学校では実施すべきでない。
  • ✔ストレス反応の理解と、リラクセーションや認知的対処などの具体的技法の習得を目的とする。
解説:ストレスマネジメント教育は、ストレッサー・認知的評価・ストレス反応の仕組みを理解し、呼吸法、漸進的筋弛緩法、動作法などのリラクセーション、認知的対処、問題解決、サポートの活用といった具体的技法を習得することを目的とする。ストレスの完全な除去ではなく、うまく付き合う力の育成を目指す。児童生徒を対象とした一次予防として広く行われ、災害後の学校支援でも有用性が示されている。
問7
【事例】中学校から「全校生徒向けのストレスマネジメント授業をしてほしい」と依頼された。実施計画として、最も適切なものはどれか。
  • 1専門用語を用いた講義形式で、知識を網羅的に伝える。
  • 2生徒の個人的な悩みを全体の前で発表させる。
  • 3教員は参加しないほうがよい。
  • ✔発達段階に合わせ、体験的な演習を含めて構成し、事後に相談窓口を明示する。
  • 5効果測定は行わず、一度きりの実施とする。
解説:心の健康教育は、発達段階に応じた平易な言葉と体験的演習(呼吸法、筋弛緩、リフレーミングの練習)で構成することが効果的である。授業により自身の苦しさに気づく生徒が出るため、事後の相談窓口の明示とフォロー体制の準備が不可欠である。教員が同席・参加することで日常場面での般化が促され、事前事後のアンケートによる効果測定と改善も望ましい。
問8
【事例】企業から「管理職向けのメンタルヘルス研修」を依頼された。内容として、最も適切なものはどれか。
  • 1部下の疾患を診断する方法を教える。
  • 2部下の相談内容を必ず全社で共有するよう指導する。
  • 3管理職自身のセルフケアは扱わない。
  • 4問題のある部下を早期に配置転換する方法を教える。
  • ✔いつもと違う様子への気づき、声のかけ方、産業保健や相談窓口へのつなぎ方を中心に構成する。
解説:管理職向け研修は4つのケアのうち「ラインによるケア」に相当し、部下の変化への気づき(勤怠、業務遂行、表情や言動の変化)、傾聴を基本とした声のかけ方、産業医・相談窓口へのつなぎ方、職場環境改善、復職者への対応が中心となる。診断は医師の役割であり、プライバシーへの配慮も必須である。管理職自身が高ストレス状態にあることも多く、セルフケアも重要な内容である。