航空法規全60問中 8問を掲載
問1航空機を航空の用に供するために必要な、航空法上の証明はどれか。
- ✔耐空証明
- 2予備品証明
- 3型式証明
- 4無線局免許
- 5騒音基準適合証明
解説:【正解】1「耐空証明」
【結論】航空機を航空の用に供するには、有効な耐空証明が必要である(航空法第11条)。
【3つの証明制度を区別する】
・型式証明(第12条)…その「型式の設計」が技術上の基準に適合することの証明。設計に対して与えられる。
・耐空証明(第10条)…「個々の航空機」が技術上の基準に適合することの証明。機体一機ごとに与えられる。
・予備品証明(第17条)…「装備品」が技術上の基準に適合することの証明。
型式証明を受けた型式であっても、個々の機体には耐空証明が必要である。型式証明があることで、耐空証明の検査(設計・製造過程・現状の3点)のうち一部が省略されるという関係にある。
【耐空証明の内容】検査に合格すると、耐空証明書とともに「運用限界等指定書」が交付される。ここには耐空類別、最大重量、重心位置の限界、速度・高度の限界、運航の形態などが指定される。これらの範囲内で運航しなければならない。
【有効期間】原則1年(第14条)。ただし国土交通大臣が定める整備規程を有する使用者の航空機については、その整備規程に定めるところにより1年を超える期間を指定できる。
【失効した場合】航空の用に供することができない。ただし修理場所への回送や試験飛行のためには、特別な飛行の許可(第11条ただし書き)を受けて飛行できる制度がある。
【混同注意】無線局免許は電波法に基づく別制度、騒音基準適合証明も別の制度である。いずれも必要だが、航空の用に供するための基本は耐空証明である。
【根拠・出典】航空法第11条、第10条
問2二等航空整備士が行うことができる業務の範囲として、最も適切なものはどれか。
- 1航空機の運航の管理
- ✔限定された種類・型式の航空機について、整備(大修理・大改造を除く)をした後の確認
- 3すべての航空機の整備および改造の確認
- 4航空交通管制業務
- 5航空機の設計の審査
解説:【正解】2「限定された種類・型式の航空機について、整備(大修理・大改造を除く)をした後の確認」
【結論】二等航空整備士は、限定された種類・型式の航空機について、整備(大修理・大改造を除く)をした後の確認を行うことができる。
【「確認」とは何か】航空法第19条は、整備または改造をした航空機は、有資格者による確認を受けなければ航空の用に供してはならないと定める。作業そのものは無資格者が行うことも可能だが、その結果が技術上の基準に適合していることの判定(確認)は、有資格者でなければ行えない。この確認により、機体は飛べる状態となる。
【一等・二等・運航整備士の違い】
・一等航空整備士…主として大型機(構造が複雑で高度な整備を要するもの)を対象とし、業務範囲が広い。
・二等航空整備士…主として小型機を対象とする。整備をした後の確認を行うが、大修理・大改造に該当するものの確認は業務範囲外である。
・航空運航整備士…運航のために行う整備(飛行前後の点検、軽微な整備、部品交換等で発動機・装備品の分解を伴わないもの)をした後の確認に限られる。
【限定という制約】技能証明には航空機の「種類」(飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船)および「型式」の限定が付される。範囲外の航空機については、作業に従事することはあっても確認はできない。限定を追加するには、所定の経験を満たしたうえで限定変更の申請と試験(審査)が必要である。
【混同注意】操縦士の技能証明には「等級」(陸上単発・陸上多発等)の限定が付されるが、整備士には等級の限定はない。この違いは頻出である。
【大修理・大改造の扱い】これらは修理改造検査を受けるか、認定事業場の確認主任者による確認が必要となる。
【根拠・出典】航空法第19条、第28条、施行規則附表
問3航空機に装備しなければならない救急用具のうち、「非常信号灯」の点検周期の考え方として最も適切なものはどれか。
- 1使用者が任意に定めてよく記録は不要である
- 2点検は不要である
- ✔航空法施行規則に定める期間ごとに点検し、記録を残す
- 4耐空証明更新時のみ点検する
- 5製造者の推奨のみに従い法令上の定めはない
解説:【正解】3「航空法施行規則に定める期間ごとに点検し、記録を残す」
【結論】救急用具は、航空法施行規則に定める期間ごとに点検し、結果を記録・保存しなければならない。
【救急用具とは何を指すか】航空法第62条および施行規則により、飛行の区域や形態に応じて次のものの装備が義務づけられる。
・救命胴衣(または浮力を有する救命具)
・救命ボート
・非常信号灯
・携帯用酸素装置
・防水携帯灯
・救急箱
・信号けん銃、極地用装具など(区域による)
【点検周期が定められている理由】これらは平時にはまったく使わない装備である。使わないまま置かれている間に、ゴムの劣化、ボンベのガス抜け、電池の消耗、有効期限の到来が静かに進行する。実際に必要となる場面(不時着水、緊急脱出)は生死を分ける状況であり、そのときに機能しなければ意味がない。したがって「使っていないから点検不要」ではなく、むしろ「使わないからこそ定期点検が必要」という性格を持つ。
【点検内容の例】
・救命胴衣…外観の損傷、気室の圧力保持(気密)、炭酸ガスボンベの重量と腐食、灯火の電池、有効期限。外観だけでは膨張機能の健全性を保証できない。
・非常信号灯…点灯確認、電池の有効期限。
・救急箱…内容品の員数と有効期限。
【記録の要件】装備品ごとの識別(部品番号・シリアル番号)、点検内容、次回期限、確認者を記録し、期限管理を行う。期限切れの装備品を搭載した状態での運航は認められない。
【使用者が任意に定められない】点検期間は法令で定められており、使用者の判断で延ばすことはできない。
【根拠・出典】航空法第62条、施行規則第150条・第151条
問4航空法第19条にいう「整備をした後の確認」を受けなければ航空の用に供してはならない、とされる趣旨として最も適切なものはどれか。
- 1航空機の保険料を算定するため
- 2整備士の勤務時間を管理するため
- 3部品の在庫を管理するため
- ✔整備の結果が技術上の基準に適合することを有資格者が確認し、耐空性を担保するため
- 5整備費用を明確にするため
解説:【正解】4「整備の結果が技術上の基準に適合することを有資格者が確認し、耐空性を担保するため」
【結論】確認の趣旨は、整備の結果が技術上の基準に適合することを有資格者が判定し、耐空性を担保することにある。
【なぜ作業と確認を分けるのか】航空法は、整備・改造の「作業」そのものには資格を求めていない。実際、工場では多くの作業が資格を持たない技能者により行われる。しかしその結果が基準に適合しているかの判定は、知識と経験を持つ有資格者でなければできない。この判定を「確認」として制度化することで、誰が作業したかにかかわらず、一定の水準が担保される。
【確認という行為の重み】確認は「この航空機は基準に適合しており、航空の用に供してよい」という法的な判定である。単なる作業完了の記録ではない。この署名の後、機体は乗客と乗員を乗せて飛ぶ。判定を誤れば人命に直結する。
【確認の根拠】確認は、整備マニュアル等の承認された資料と、耐空性審査要領等の技術上の基準に基づいて行う。自身の経験や他社の慣行のみを根拠とすることはできない。
【確認を行える者】
・航空整備士(技能証明の限定の範囲内)
・航空運航整備士(その業務範囲内)
・認定事業場の確認主任者(認定された業務の範囲内)
いずれも範囲の制約があり、範囲外の確認は上位者の承認があっても法的効力を持たない。
【自らの作業を自ら確認すること】有資格者であれば法令上は可能だが、確認バイアス(自分の作業は正しく行ったという記憶の補正)が働くため、誤りが直ちに重大な結果を招く作業(操縦系統の分解・組立て等)については、規程により作業者とは別の有資格者による独立確認が求められる。
【根拠・出典】航空法第19条
問5航空日誌の記載事項として、搭載用航空日誌に記載すべきでないものはどれか。
- 1飛行の年月日および飛行時間
- 2整備または改造の内容および確認者の署名
- 3耐空証明書の番号
- 4航空機の登録記号および型式
- ✔発動機のオーバーホール後の使用時間の累計のみを記録した独立の履歴
解説:【正解】5「発動機のオーバーホール後の使用時間の累計のみを記録した独立の履歴」
【結論】発動機やプロペラの使用時間累計・オーバーホール履歴は、地上備付け用の航空日誌に記載する事項である。
【なぜ日誌を分けるのか】航空日誌には2系統ある。
・搭載用航空日誌…機体に搭載する。航空機の識別、耐空証明に関する事項、飛行の年月日と時間、整備・改造の内容と確認、TCDの実施状況を記載する。
・地上備付け用航空日誌…発動機航空日誌、プロペラ航空日誌。地上に備え付ける。
分ける理由は明快である。発動機やプロペラは機体から取り外して別の機体に付け替えられる。機体の日誌に混ぜてしまえば、その発動機が通算で何時間使われ、いつオーバーホールされたかを追えなくなる。そこで発動機ごと、プロペラごとに独立した履歴を管理する。
【同じ発想の広がり】この考え方は、大型機における「モジュールごとの使用時間管理」「寿命管理部品(LLP)のシリアル番号ごとのサイクル管理」と同じである。移動する部品の履歴は、部品自身に紐づけて管理しなければならない。
【記録が失われると何が起きるか】発動機の総使用時間が証明できなければ、オーバーホール時期を判断できず、また残寿命を証明できないため資産価値も失われる。機体の売買では、記録の完全性が価格を左右する。
【例外規定】滑空機など一部の航空機については、備付けの一部に例外規定がある。
【訂正の作法】記録を訂正する際は、修正液や塗りつぶしで元の記載を判読不能にしてはならない。取り消し線で元の記載を残し、正しい内容と訂正者・訂正日を明示する。改ざんの疑いを生じさせないことが記録管理の基本である。
【根拠・出典】航空法施行規則第139条・第140条
問6耐空証明の効力が停止または失効する場合として、適切でないものはどれか。
- ✔使用者が変更されたとき
- 2航空機の登録が抹消されたとき
- 3国土交通大臣が耐空証明を取り消したとき
- 4航空機が使用条件の範囲を超えて使用されたとして効力が停止されたとき
- 5有効期間が満了したとき
解説:【正解】1「使用者が変更されたとき」
【結論】使用者(所有者)の変更のみによって、耐空証明が当然に失効するわけではない。
【耐空証明は「航空機」に対するもの】耐空証明は個々の航空機に対して与えられる証明であり、誰が所有・使用しているかとは独立している。したがって機体が売買されても、耐空証明はその機体に付いたまま有効期間まで存続する。ただし所有者・使用者の変更は登録事項の変更にあたるため、変更登録等の所定の手続が必要である。
【効力を失う事由】
・有効期間の満了…原則1年。
・登録の抹消…登録により国籍を取得しているため、抹消されれば前提が失われる。
・国土交通大臣による取消し。
・使用の停止命令、または効力の停止…耐空性の基準に適合しなくなったと認められる場合、国土交通大臣は予防的にこれを行うことができる(事故の発生を待つ必要はない)。
【売買時に引き継ぐべきもの】耐空証明そのものに加えて、次の記録が引き継がれなければならない。
・航空日誌(搭載用、地上備付け用)
・重量重心記録
・TCD・SBの実施状況
・寿命管理部品の履歴
これらが欠落した機体は、実際には整備されていても耐空性を証明できず、再実施や部品交換を要することになる。
【有効期間内でも安心できない】耐空証明は交付時点の適合を証明するにすぎない。有効期間内であっても、点検の周期内実施、TCDの実施、不具合の是正、記録の作成という耐空性維持の活動を怠れば、基準に適合しない状態となり得る。
【根拠・出典】航空法第10条〜第14条
問7航空機の飛行規程(AFM)に関する記述として正しいものはどれか。
- ✔運用限界、非常操作手順、性能等を定めたもので、航空機に備え付けて遵守しなければならない
- 2使用者が自由に内容を変更できる
- 3整備士のみが使用する書類である
- 4参考資料であり遵守義務はない
- 5耐空証明とは無関係の書類である
解説:【正解】1「運用限界、非常操作手順、性能等を定めたもので、航空機に備え付けて遵守しなければならない」
【結論】飛行規程は運用限界、非常操作手順、性能等を定めた書類で、航空機に備え付けて遵守しなければならない。
【飛行規程に記載される内容】
・運用限界…速度(VNE、VNO、VFE、VA等)、最大重量、重心位置の限界、荷重倍数、エンジンの運転限界、装備すべき装備品、運航の形態(計器飛行方式の可否等)。
・正常時の操作手順…始動、離陸、巡航、着陸の各段階における操作。
・非常時の操作手順…エンジン故障、火災、電気系統の故障、脚の不作動時の手順。
・性能資料…離着陸距離、上昇率、巡航性能。外気温、高度、重量、風の条件ごとの数値。
・重量重心…空虚重量、装備品リスト、ローディング・グラフ。
【耐空証明との一体性】飛行規程(または運用限界等指定書)は耐空証明の一部を構成する。ここに記載された限界の範囲内で運航して初めて、耐空証明が保証する耐空性が成立する。したがって使用者が任意に内容を変更することはできず、改訂は所定の手続を経て行われる。
【整備側にとっての意義】飛行規程は運航乗務員のための文書と思われがちだが、整備側も次の場面で参照する。
・計器のレンジマーキング(緑・黄・赤の弧線)の位置…飛行規程の限界値に基づく。ずれていれば修正が必要である。
・重量重心の限界値と、記録更新時の判定基準。
・代替静圧源使用時の高度計・速度計の補正値。
・エンジンの運転限界(回転数、油温、油圧、CHT)。
・装備すべき装備品の一覧。
【備え付けの義務】航空法第59条により、耐空証明書、航空機登録証明書、運用限界等指定書、搭載用航空日誌等とともに機体に備え付ける。
【根拠・出典】航空法第11条、第59条、耐空性審査要領
問8小型機の耐空証明を更新する際の現状検査の対象として、適切でないものはどれか。
- 1装備品および計器の作動状態
- ✔操縦者の飛行経歴
- 3機体構造の状態
- 4航空日誌等の記録
- 5発動機の状態
解説:【正解】2「操縦者の飛行経歴」
【結論】操縦者の飛行経歴は航空従事者の資格に係る事項であり、機体の耐空証明検査の対象ではない。
【耐空証明の検査は3点】航空法第10条により、設計・製造過程・現状について検査が行われる。更新時は主として現状の検査となる。
【現状検査で見るもの】
・機体構造の状態…腐食、亀裂、変形、修理の適正性。
・発動機・プロペラの状態…運転状態、性能、外観。
・装備品と計器の作動…規定の装備が揃い、正常に作動するか。有効期限が切れていないか。
・記録…航空日誌の記載、TCDの実施状況、重量重心の最新記録、寿命管理部品の履歴。
・書類…備え付け書類が揃っているか。
【受検前に使用者が準備すべきこと】
・航空日誌と整備記録の整理…記載漏れ、訂正の不備がないか。
・TCDの実施状況の整理…適用性の判断根拠を含めて説明できる状態にする。
・重量重心の最新の計算・計量記録。
・装備品の有効期限の確認…救急用具、消火器、ELT電池など。
・事前点検で判明した不具合の是正。
天候は使用者が管理できる事項ではなく、準備の対象ではない。
【検査の一部省略】型式証明を受けた型式であること、認定事業場において検査・確認を受けていることなどの要件を満たす場合、検査の一部が省略される。使用者の申し出だけで省略されるものではなく、無事故や低使用時間も省略要件ではない。むしろ長期間飛ばしていない機体には内部腐食などの固有のリスクがある。
【有効期間内の義務】更新に合格しても、それは交付時点の適合を示すにすぎない。有効期間内も耐空性維持の活動は継続する。
【根拠・出典】航空法第10条、第14条
機体・システム全71問中 8問を掲載
問9小型機の主翼構造で、外板が曲げおよびねじり荷重の一部を分担する構造形式はどれか。
- 1トラス構造
- ✔セミモノコック構造
- 3羽布張り構造
- 4チューブ構造
- 5支柱式構造
解説:【正解】2「セミモノコック構造」
【結論】セミモノコック構造は、外板が骨組みと協働して荷重を分担する形式である。
【3つの構造形式の比較】
・トラス構造…鋼管などを三角形に組んだ骨組みだけで荷重を受ける。外板や羽布は空力形状を作るだけで、荷重をほとんど分担しない。修理が比較的容易で、初期の航空機や一部の軽飛行機に用いられる。
・モノコック構造…外板(シェル)が主要な荷重を負担し、内部は形状保持のフレーム程度にとどまる。しかし薄板は圧縮に対して座屈しやすいため、そのままでは実用的でない。
・セミモノコック構造…外板に、縦方向のストリンガと円周方向のフレームを組み合わせて補強する。外板が曲げ・ねじり・せん断を分担しつつ、補強材が座屈を防ぐ。軽量で高剛性が得られ、現代の航空機の主流である。
【外板が荷重を負担するということ】セミモノコックでは、外板は単なる覆いではなく一次構造である。したがって外板の凹み(デント)、亀裂、腐食は構造強度に直接影響し、SRM等の許容基準に照らした評価が必要となる。「外板だから軽微」という判断は成り立たない。
【主翼のトルクボックス】主翼では、前後の桁と上下の外板で囲まれた閉断面(トルクボックス)が、曲げとねじりを主に負担する。閉断面であることがねじり剛性を桁違いに高める。この内部が燃料タンク(インテグラル・タンク)として利用されることが多い。
【曲げモーメントの分布】翼にかかる揚力を翼端から積算すると、曲げモーメントは翼付根で最大となる。したがって付根付近の構造が最も厚く、胴体との結合部は重要部位となる。
【根拠・出典】航空機構造
問10小型機の操縦系統に用いられるコントロール・ケーブルの点検で、最も注意すべき損傷はどれか。
- 1ターンバックルの塗装剥がれ
- 2ケーブルの全長のわずかな伸び
- ✔素線切れ(ブロークン・ワイヤ)
- 4被覆の軽微な汚れ
- 5表面のわずかな変色
解説:【正解】3「素線切れ(ブロークン・ワイヤ)」
【結論】コントロール・ケーブルで最も注意すべきは素線切れ(ブロークン・ワイヤ)である。
【なぜ素線切れが重大か】航空機用ケーブルは細い素線を撚り合わせた構造で、素線が切れれば断面積が減り、強度が直接低下する。しかも切れた素線は他の素線を傷つけ、破断が加速する。操縦系統のケーブルが破断すれば、その舵面の制御を失う。
【判定基準】一定長さ(例えば1インチ)あたりの素線切れの本数、および切れた位置(プーリを通過する部分か、直線部か)により、整備マニュアルの許容基準に照らして判定する。基準を超えれば交換となる。
【点検の方法】ウエスや手袋を巻いた手でケーブルを軽く握り、全長にわたって通す。切れた素線があれば引っかかりとして感じられる。素手で行うと切れた素線で手を傷つけるため必ず手袋を用いる。またプーリ、フェアリード、ガイドを通過する部分は摩耗が集中するため、重点的に確認する。
【素線切れ以外の点検事項】
・錆と腐食…特に湿気の滞留する部位、バッテリー付近、洗面所下部。
・キンク(折れ曲がり)…一度生じると強度が回復しない。
・摩耗…プーリやフェアリードとの接触部で径が細くなる。
・張力…テンションメータで測定する。スチール製ケーブルとアルミ合金製構造では熱膨張率が異なるため、測定時の外気温に応じた温度補正が必要である。
【関連部品の点検】プーリ(ベアリングの円滑さ、溝の摩耗と偏摩耗、ガードピン)、フェアリード(摩耗)、ターンバックル(ねじ込み量、安全止め)も併せて点検する。溝の偏摩耗は経路の乱れを示す手がかりとなる。
【根拠・出典】航空機システム(操縦系統)
問11航空機用タイヤの空気圧が規定より低い場合に生じやすい不具合として、最も適切なものはどれか。
- 1タイヤの膨張破裂
- 2トレッド中央部の偏摩耗
- 3ホイールベアリングの過熱防止
- ✔トレッド両ショルダ部の偏摩耗
- 5ブレーキの効き過ぎ
解説:【正解】4「トレッド両ショルダ部の偏摩耗」
【結論】空気圧が低いと、接地面の中央部が浮いて両ショルダ(肩部)に荷重が集中し、偏摩耗する。
【摩耗パターンから空気圧の異常を読む】
・空気圧が低い…トレッドの両端(ショルダ部)が偏摩耗する。中央部が浮くためである。
・空気圧が高い…トレッドの中央部が偏摩耗する。中央部が張り出して接地するためである。
・片側のみの偏摩耗…アライメント(トー、キャンバ)の狂い、脚の変形を疑う。
摩耗の様子を見れば、原因の見当がつく。
【低圧の本当の危険】偏摩耗以上に深刻なのが発熱である。空気圧が不足するとサイドウォールが過度に撓み、その繰返し変形により内部で発熱する。着陸時の高速回転と大荷重が加わると、コードの層間剥離やコード切れを生じ、最悪の場合バースト(破裂)に至る。タイヤのバーストは、破片が機体構造や油圧配管を損傷し、重大事故につながった事例がある。
【日常点検の重要性】タイヤは自然に空気が抜ける(1日あたり数パーセント)。したがって定期的な圧力確認が必要である。測定は温度の影響を受けるため、規定の条件(着陸後の一定時間経過後など)で行う。左右で圧力差が大きい場合は、片方の漏れを疑う。
【窒素を用いる理由】不活性であるため、ブレーキ過熱時にタイヤ内で酸化反応や燃焼を助長するおそれが小さい。また乾燥した窒素を用いることで水分による圧力変動と内部腐食を抑えられる。
【ヒューズ・プラグ】ブレーキ過熱によりホイールが高温になった際、易融合金が溶けて空気を抜き、破裂を防ぐ安全装置である。作動した場合は原因(ブレーキ過熱の理由)を調査する。
【根拠・出典】航空機システム(車輪・タイヤ)
問12航空機の防除氷装置のうち、小型機の主翼前縁に用いられる代表的な「除氷」方式はどれか。
- 1超音波振動方式
- 2化学液噴出方式のみ
- 3電熱方式
- 4加熱空気(ブリードエア)方式
- ✔空気圧作動のデアイサ・ブーツ方式
解説:【正解】5「空気圧作動のデアイサ・ブーツ方式」
【結論】小型機の主翼前縁には、空気圧作動のデアイサ・ブーツ方式が代表的である。
【防氷と除氷の考え方の違い】
・防氷(アンチアイス)…氷の付着そのものを防ぐ。表面を加熱し続ける必要があるため、大きなエネルギーを要する。高温のブリードエアが潤沢に得られる大型ジェット機に適する。
・除氷(デアイス)…付着した氷を周期的に除去する。氷が一定の厚さになるのを待って作動させるため、必要なエネルギーが小さい。大型のエネルギー源を持たない小型機やターボプロップ機に適する。
【デアイサ・ブーツの仕組み】主翼・尾翼の前縁にゴム製のチューブ状の膜を貼り、これを空気圧(エンジン駆動の真空ポンプの排気や専用ポンプ)で周期的に膨張・収縮させる。膨張により表面形状が変わることで、付着した氷が割れて剥離し、気流に吹き飛ばされる。
【使用上の注意】氷が薄すぎる段階で作動させると、氷が割れずにブーツの形状に沿って持ち上がり、以後の作動でも除去できなくなる(アイス・ブリッジング)現象が問題とされてきた。近年の研究では、現代のブーツではこの現象は生じにくいとされ、着氷を認めたら早期に作動させる運用が推奨されている。
【他の方式】
・電熱方式…ピトー管、静圧孔、風防、プロペラ・ブレード、一部の機体の翼前縁。
・化学液(TKS)方式…翼前縁の多孔質パネルから防氷液を滲み出させる。防氷と除氷の両方に使える。
・高温空気方式…大型ジェット機の翼前縁とエンジンカウル。
【整備上の点検】ブーツの亀裂、剥離、膨れ、摩耗。空気系統の漏れと弁の作動。ブーツ表面には指定された保護剤を用い、油や溶剤の付着を避ける。
【根拠・出典】航空機システム(防除氷)
問13セルフロッキング・ナット(ナイロン・インサート式)の使用上の注意として誤っているものはどれか。
- ✔回転部の主要な結合部にも自由に使用できる
- 2ボルトのねじ山がナット上面から出ていることを確認する
- 3指で最後までねじ込めるものは交換する
- 4ロック力が低下したものは再使用しない
- 5高温部には使用しない
解説:【正解】1「回転部の主要な結合部にも自由に使用できる」
【結論】ナイロン・インサート式セルフロッキング・ナットは、エンジンやプーリ等の回転部・可動部の主要結合部には自由に使用できない。
【なぜ制限されるのか】セルフロッキング・ナットの緩み止めは、ナイロンの弾性による摩擦に依存している。この摩擦力は次の要因で低下する。
・繰返しの着脱…ナイロンが変形して復元しなくなる。
・高温…ナイロンは耐熱性が低く、軟化・劣化する。
・振動と繰返し荷重。
一方、回転部や可動部の主要結合部では、脱落が直ちに重大な結果を招く。したがってコッタピン等による確実な機械的固定が要求される。
【使用上の基本ルール】
・高温部には使用しない…ナイロンの許容温度(一般に120℃程度)を超える箇所は不可。金属製のセルフロッキング・ナット(変形ねじ山式)や、他の緩み止めを用いる。
・ロック力が低下したものは再使用しない…指で最後までねじ込めるものは、ロック力が失われている証拠であり交換する。
・ボルトのねじ山がナット上面から適切に突出していることを確認する…ねじ山がナイロン部に達していなければロックが効かない。
・所定の種類と寸法のものを用いる。
【判定の目安】ナットをボルトにねじ込んだとき、ナイロン部に達した時点で明確な抵抗を感じるかどうか。抵抗なく最後まで回るなら交換である。
【他の緩み止め手段】
・コッタピン(割ピン)…城郭ナットとボルト穴を貫通させる。原則使い捨て。
・セーフティ・ワイヤ…緩む方向に張力がかかるよう掛ける。
・ロックワッシャ、タブワッシャ。
用途と要求に応じて使い分ける。
【根拠・出典】整備一般(締結)
問14航空機の重心位置を求める計算で用いる「モーメント」の定義として正しいものはどれか。
- 1アーム ÷ 重量
- ✔重量 × アーム
- 3重量 + アーム
- 4重量 × 重量
- 5重量 ÷ アーム
解説:【正解】2「重量 × アーム」
【結論】モーメント=重量×アーム(基準線からの距離)である。
【重量重心計算の基本手順】
1. 各項目(空虚重量、乗員、乗客、貨物、燃料)について、重量とアームを求める。
2. 各項目のモーメント=重量×アームを計算する。
3. 総重量=各重量の合計、総モーメント=各モーメントの合計。
4. 重心位置 CG = 総モーメント ÷ 総重量。
5. 得られたCGが、飛行規程の定める前方限界と後方限界の範囲内にあることを確認する。
【基準線(データム)】アームを測る起点となる仮想の基準面である。機種ごとに製造者が定め、機首先端、防火壁、機体より前方の空間などに設定される。基準線が異なればアームの値も異なるため、必ずその機種の資料に従う。整備士が任意に変更することはできない。
【%MACという表現】大型機では、平均空力翼弦(MAC)の前縁から測った距離の百分率で重心位置を表すことが多い。機体規模によらず統一的に扱えるためである。飛行規程の重心限界も%MACで示される。
【重心が範囲を外れると】
・前方限界超過…縦の静安定は増すが操縦桿が重くなり、着陸時の引き起こしが困難となる。尾翼の下向き力が増える分、失速速度も上昇する。
・後方限界超過…縦の静安定が低下し、操縦桿が軽くなって過大な操作をしやすい。失速やスピンからの回復が困難になるおそれがある。
【整備との結びつき】装備品の追加・撤去、改造、再塗装により空虚重量と重心が変化する。その都度、重量重心を再計算(変化が大きい場合や累積した場合は再計量)し、記録を更新する責任が使用者にある。
【根拠・出典】重量および重心位置
問15航空機に用いるコッタピン(割ピン)の取扱いとして、適切でないものはどれか。
- 1所定の径・長さのものを使用する
- 2曲げた脚が周囲に干渉しないよう処理する
- 3原則として再使用しない
- 4規定トルクの範囲内で締め付けた位置から、必要に応じてわずかに締め増して穴を合わせる
- ✔ナットの溝とボルトの穴が合うまでナットを緩める
解説:【正解】5「ナットの溝とボルトの穴が合うまでナットを緩める」
【結論】ナットの溝とボルト穴が合わない場合、規定トルク未満に緩める方向で合わせてはならない。
【正しい対処】規定トルクの範囲内で締め増して合わせるのが原則である。締付トルクには一定の範囲(例えば「50〜70インチポンド」)が指定されており、下限で締めて溝が合わなければ、上限までの範囲で締め増して合わせる。それでも合わない場合は、ワッシャの追加や交換により調整する(ただし規定の枚数と種類の範囲内で)。
【なぜ緩めてはいけないか】締付トルクは、ボルトに所要の軸力(締付力)を与えるために定められている。規定未満では軸力が不足し、
・繰返し荷重により緩みが進行する。
・接合面が滑り、ボルトにせん断力が集中する。
・疲労強度が大きく低下する。
コッタピンは緩み止めであって、締付力の代わりにはならない。
【コッタピンの基本ルール】
・原則として再使用しない…曲げ戻しにより金属疲労が生じている。
・所定の径と長さのものを使用する…細すぎれば強度不足、太すぎれば穴を傷める。
・曲げた脚が周囲に干渉しないよう処理する…突出した脚は工具や配線に引っかかり、また作業者を傷つける。規定の曲げ方(一方を上へ、他方を下へ折り返す等)に従う。
・城郭ナット(キャッスル・ナット)と組み合わせて用いる。
【緩み止めの手段の使い分け】
・コッタピン…回転部・可動部の主要結合部など、確実な固定が必要な箇所。
・セルフロッキング・ナット…高温部と、脱落が重大な結果を招く箇所を除く一般の締結。
・セーフティ・ワイヤ…緩む方向に張力がかかるよう掛ける。原則再使用しない。
用途と要求に応じて選定する。
【根拠・出典】整備一般(締結・安全止め)
問16小型機の重力式(グラビティ・フィード)燃料系統の特徴として、正しいものはどれか。
- 1低翼機で一般的である
- ✔燃料タンクがエンジンより高い位置にあり、重力で燃料を供給する
- 3燃料ポンプが必須である
- 4燃料の残量を検知できない
- 5常に加圧が必要である
解説:【正解】2「燃料タンクがエンジンより高い位置にあり、重力で燃料を供給する」
【結論】重力式燃料系統は、燃料タンクがエンジンより十分高い位置にある場合に成立し、重力で燃料を供給する。
【成立の条件】キャブレターの燃料流入口より、タンクの燃料面が十分高い位置にあることが必要である。この高低差(水頭)が燃料を押し出す圧力となる。したがって高翼機で、主翼内にタンクを持つ構成に適する。ポンプが不要なため、構造が単純で故障要因が少ない。
【低翼機ではなぜ使えないか】低翼機ではタンクがエンジンより低い位置になるため、重力では燃料が上がらない。エンジン駆動の燃料ポンプと、その故障に備えた電動補助ポンプ(ブースト・ポンプ)による圧力供給式が必要となる。
【重力式でも注意すべき点】
・タンクのベント(通気)…燃料が減るとタンク内が負圧になり、供給が止まる。ベントの閉塞(氷結、虫、異物)は燃料供給不良に直結する。
・姿勢の影響…急上昇や横滑りではタンク内の燃料が偏り、供給口が露出すると供給が途切れる。飛行規程には、残量が少ないときの使用制限が定められていることがある。
・フィルタの詰まり…重力式は供給圧力が低いため、フィルタの詰まりの影響を受けやすい。
【電動ブースト・ポンプの使用場面】圧力供給式の機体では、始動時、離着陸時(エンジン駆動ポンプ故障に備える)、燃料タンク切替時、高高度でのベーパ・ロック防止、エンジン駆動ポンプ故障時に使用する。使用方法は飛行規程で定められている。
【ベーパ・ロック】高温・低圧の条件で燃料が配管内で気化し、気泡が流れを妨げる現象である。ポンプの吸込み側で発生しやすく、ブースト・ポンプによる加圧が対策となる。高温時の再始動が困難になる原因ともなる。
【根拠・出典】航空機システム(燃料)
発動機全60問中 8問を掲載
問174サイクル・ピストン・エンジンの行程の順序として正しいものはどれか。
- 1吸入 → 燃焼(膨張)→ 圧縮 → 排気
- 2排気 → 吸入 → 圧縮 → 燃焼(膨張)
- ✔吸入 → 圧縮 → 燃焼(膨張)→ 排気
- 4吸入 → 圧縮 → 排気 → 燃焼(膨張)
- 5圧縮 → 吸入 → 燃焼(膨張)→ 排気
解説:【正解】3「吸入 → 圧縮 → 燃焼(膨張)→ 排気」
【結論】4サイクル・エンジンは、吸入 → 圧縮 → 燃焼(膨張)→ 排気の順で1サイクルを完了する。
【サイクルの構造】クランク軸2回転(720度)で4行程を完了する。
・吸入…吸気弁が開き、ピストンが下降して混合気を吸い込む。
・圧縮…両弁が閉じ、ピストンが上昇して混合気を圧縮する。上死点前の所定角度で点火する。
・燃焼(膨張)…燃焼による圧力でピストンが押し下げられる。唯一、仕事を生む行程である。
・排気…排気弁が開き、ピストンが上昇して燃焼ガスを押し出す。
【なぜ点火は上死点前なのか】燃焼には時間がかかるため、上死点で点火したのでは圧力の最大値がピストンが下がった後に来てしまい、効率が落ちる。上死点前に点火することで、上死点直後に最大圧力が得られるようにする。この進角が点火時期であり、進みすぎればデトネーションや逆転始動、遅れすぎれば出力低下と過熱を招く。
【バルブ・オーバーラップ】上死点付近で吸気弁と排気弁が同時に開いている期間である。排気の慣性を利用して掃気を促し、新気の充填効率を高める。またこの期間の空気流れがシリンダとバルブの冷却にも寄与する。ただし低回転時には吹き抜けを生じやすい。
【ガスタービンとの本質的な違い】ガスタービンも吸入・圧縮・燃焼・膨張という同じ過程を経るが、レシプロが同一空間で時間的に順次行うのに対し、ガスタービンは異なる空間で連続的に行う。この違いが、レシプロの定積サイクル(オットー)とガスタービンの定圧サイクル(ブレイトン)という理論サイクルの違いとして現れる。
【根拠・出典】航空発動機(往復動機関)
問18航空用ピストン・エンジンで、混合気が過濃(リッチ)である場合に現れる傾向として最も適切なものはどれか。
- 1燃料消費率が最小となる
- 2出力が常に最大となる
- 3デトネーションが起こりやすくなる
- ✔排気ガス温度(EGT)が低下し、点火栓がかぶりやすい
- 5排気ガス温度(EGT)が上昇する
解説:【正解】4「排気ガス温度(EGT)が低下し、点火栓がかぶりやすい」
【結論】過濃混合気では燃焼温度が下がるためEGTが低下し、未燃燃料により点火栓のかぶりを生じやすい。
【混合比と各パラメータの関係】混合気を濃い側から薄い側へ変えていくと、
・EGT…上昇していき、理論混合比付近で最大(ピーク)となり、さらに薄くすると低下する。
・出力…理論混合比よりやや濃い側(最良出力混合比)で最大となる。
・燃料経済性…理論混合比よりやや薄い側(最良経済混合比)で最良となる。
最良出力と最良経済の混合比が一致しない点が重要である。
【過濃側の問題】
・出力の低下、燃料の浪費。
・点火栓のかぶり(プラグ・ファウリング)…未燃燃料とカーボンが電極に堆積し、火花が飛ばなくなる。地上での長時間アイドル運転で起きやすい。
・シリンダ壁の油膜が燃料で洗い流され、潤滑不良を招く。
・カーボンの堆積によるバルブの密着不良。
【過希薄側の問題】
・EGTとCHTの上昇…デトネーション、バルブ焼損、ヘッドの亀裂の危険。
過濃は「もったいない」で済むことが多いが、過希薄は破損に直結する。したがって不明なときは濃い側に振るのが安全側の判断となる。
【高度との関係】高度が上がると空気密度が下がり、そのままでは混合気が過濃になる。したがってリーニングが必要となる。EGT計を用いてピークを見つけ、規定に従いリッチ側またはリーン側へ所定量ずらして設定する。
【CHT上昇時の対処】混合気を濃くする(燃料の気化潜熱で冷却する)、対気速度を上げる、カウル・フラップを開く、出力を下げる。さらに希薄にすることは逆効果である。
【根拠・出典】航空発動機(燃料系統)
問19航空用ピストン・エンジンのマグネトーに関する記述として正しいものはどれか。
- 1機体電源が失われると点火できなくなる
- 2バッテリーの電圧を昇圧する装置である
- 3始動時のみ作動する
- 4直流を直接点火栓に供給する
- ✔エンジンにより駆動され、機体電源に依存せず高電圧を発生する
解説:【正解】5「エンジンにより駆動され、機体電源に依存せず高電圧を発生する」
【結論】マグネトーはエンジンにより駆動される自励式の点火装置で、機体電源に依存せず高電圧を発生する。
【なぜ機体電源に依存しないのか】航空用ピストン・エンジンの点火系統は、機体の電気系統が完全に失われても作動し続けなければならない。マグネトーは、エンジンの回転により永久磁石と巻線の相対運動で起電力を生じさせるため、バッテリーも発電機も必要としない。エンジンが回っている限り点火は継続する。この独立性が、航空用としての最大の利点である。
【信頼性の確保】さらに、独立した2組のマグネトーを装備し、各シリンダに2本の点火栓を備える(デュアル・イグニッション)。これにより、
・一方の系統が故障しても運転を継続できる。
・2か所から同時に火炎が伝播するため燃焼時間が短縮され、出力と効率が向上する。
【マグネトー・チェック】地上で規定回転数において、点火スイッチをBOTHからR、Lへ切り替え、それぞれの回転数降下量を確認する。
・降下量が規定より大きい…その系統の点火不良。点火栓のかぶり、電極間隙の不良、ハーネスの絶縁不良、点火時期の狂い。
・両系統の降下量の差が大きい…片系統の不調。
・降下がまったくない…P(グラウンド)線の断線が疑われる。これは極めて危険な状態である。
【P線断線の危険】P線はマグネトーを接地して点火を止めるための線である。断線していると、点火スイッチをOFFにしてもマグネトーが生きたままとなり、プロペラを動かせばエンジンが始動する。したがってプロペラは常に「生きている」ものとして扱い、回転範囲に身体を入れない習慣が不可欠である。
【インパルス・カップリング】始動時の低回転で強い火花を得るとともに、点火時期を遅らせて逆転始動(キックバック)を防ぐ機構である。
【根拠・出典】航空発動機(点火系統)
問20定速プロペラにおいて、エンジン回転数が設定値より上昇した場合のガバナの作動として正しいものはどれか。
- ✔ブレード角を大きくして負荷を増し、回転数を下げる
- 2燃料流量を増加させる
- 3何も作動しない
- 4ブレード角を小さくして回転数をさらに上げる
- 5点火時期を進角させる
解説:【正解】1「ブレード角を大きくして負荷を増し、回転数を下げる」
【結論】回転数が設定値より上昇した場合、ガバナはブレード角を大きくして負荷を増し、回転数を下げる。
【定速プロペラの原理】プロペラのブレード角(ピッチ)を変えることで、プロペラが空気から受ける抵抗=エンジンにとっての負荷が変わる。
・ブレード角を大きく(ハイピッチ)→ 負荷が増える → 回転数が下がる。
・ブレード角を小さく(ローピッチ)→ 負荷が減る → 回転数が上がる。
ガバナはこの関係を利用し、設定回転数を保つようブレード角を自動調整する。
【ガバナの構造】フライウェイト(遠心錘)とスピーダ・スプリングの釣り合いで作動する。
・回転数が上昇(オーバースピード)→ 遠心力が増しフライウェイトが開く → パイロット弁が動き、油圧をハイピッチ側へ送る → 回転数が下がる。
・回転数が低下(アンダースピード)→ フライウェイトが閉じる → ローピッチ側へ → 回転数が上がる。
プロペラ・レバーはスピーダ・スプリングの張力を変え、設定回転数を決める。
【出力操作の順序】出力を減じるときはスロットル(マニホールド圧)を先に絞り、次にプロペラ・レバー(回転数)を絞る。逆の順序では、回転数が低い状態で高いマニホールド圧がかかり、筒内圧が過大となってデトネーションや軸受への過負荷を招く。出力を増すときはこの逆順である。
【フェザリング】多発機では、エンジン停止時にブレード角を約90度(気流とほぼ平行)にして抗力と風車回転を最小化する。油圧が失われた際にもフェザーへ移行するよう、カウンタウェイトとスプリング(または蓄圧空気)が用いられる。単発機の定速プロペラは、油圧喪失時にローピッチへ移行する設計が多い。
【根拠・出典】航空発動機(プロペラ)
問21航空用ピストン・エンジンのデトネーション(爆ぐ)に関する記述として誤っているものはどれか。
- 1過度に希薄な混合気で発生しやすい
- ✔点火栓以外の熱源による早期着火のことをいう
- 3シリンダヘッド温度の上昇が誘因となる
- 4オクタン価の低い燃料の使用が原因となる
- 5継続するとピストンやバルブの損傷に至る
解説:【正解】2「点火栓以外の熱源による早期着火のことをいう」
【結論】点火栓以外の熱源による早期着火はプレイグニッション(早期点火)であり、デトネーションとは別の現象である。
【デトネーション(爆ぐ)とは】点火栓による正常な火炎伝播が始まった後、まだ燃えていない末端の混合気(エンドガス)が、圧縮と輻射熱により自己着火して急激に燃焼する現象である。急峻な圧力波が生じ、金属的な打音(ノッキング音)を伴う。継続すればピストンの溶損、リングの固着、バルブの損傷、ヘッドの亀裂に至る。
【プレイグニッション(早期点火)とは】点火栓の点火より前に、過熱したカーボン片、点火栓の電極、排気弁といった熱源が混合気に着火してしまう現象である。圧縮行程の途中で燃焼が始まるため、ピストンを押し戻す方向に力が働き、極めて短時間で重大な損傷に至る。
【両者の関係】別現象だが相互に誘発し合う。デトネーションによる局所的な過熱がプレイグニッションを招き、プレイグニッションによる高温がデトネーションを促す。悪循環となりやすい。
【デトネーションの誘因】
・オクタン価の低い燃料の使用…最も直接的な原因。指定より低いオクタン価の燃料は使用できない。
・過度に希薄な混合気…燃焼温度が上がる。
・高い吸気温度…キャブレター・ヒートの不適切な使用、過給機による圧縮。
・高いシリンダヘッド温度…冷却不足。
・高いマニホールド圧に対する低い回転数…出力操作の順序を誤った場合。
・点火時期の進みすぎ。
【対処】混合気を濃くする、出力を下げる、対気速度を上げる、カウル・フラップを開く。いずれもシリンダの温度と圧力を下げる方向の操作である。
【根拠・出典】航空発動機(異常燃焼)
問22空冷式ピストン・エンジンのシリンダヘッド温度(CHT)が上昇した場合の一般的な対応として、適切でないものはどれか。
- 1出力を下げる
- 2上昇姿勢を緩めて対気速度を増し、冷却空気量を増やす
- 3カウル・フラップを開く
- ✔混合気をさらに希薄にする(リーン側にする)
- 5混合気を濃くする(リッチ側にする)
解説:【正解】4「混合気をさらに希薄にする(リーン側にする)」
【結論】CHTが上昇した場合に混合気をさらに希薄にすることは、燃焼温度をさらに上げるため誤りである。
【CHTが示すもの】シリンダ・ヘッドの温度であり、冷却空気の流れ、混合気の状態、出力設定、外気温を反映する。空冷エンジンでは冷却が飛行状態に依存するため、運転中の監視が重要となる。
【正しい対処の4つ】いずれも「冷却を増やす」か「発熱を減らす」かのいずれかである。
1. 対気速度を増す…上昇姿勢を緩めて水平に近づけると、冷却空気の流量が増える。上昇中に温度が上がりやすいのは、速度が低く出力が高いためである。
2. カウル・フラップを開く…冷却空気の流出口を広げ、流量を増やす。
3. 出力を下げる…発熱そのものを減らす。
4. 混合気を濃くする…燃料の気化潜熱で冷却する。また燃焼温度が下がる。
【なぜ希薄化が逆効果か】混合気を薄くすると燃焼温度が上がる(理論混合比付近で最高となる)。CHTとEGTがさらに上昇し、デトネーション、バルブ焼損、ヘッドの亀裂といった重大な損傷に至る危険がある。
【放置した場合の損傷】シリンダ・ヘッドの亀裂、バルブとバルブ・シートの焼損、ピストンの損傷、リングの固着。いずれも高額な修理を要し、飛行中に生じれば出力喪失につながる。
【冷却系統の整備】バッフル(導風板)とバッフル・シールは、冷却空気をシリンダのフィン間へ確実に導く重要な部品である。シールの破れや脱落は冷却空気の漏れを生じ、特定シリンダの過熱を招く。冷却フィンの損傷・欠損も放熱面積を減らす。CHTの異常を追う際は、これらの点検が不可欠である。
【根拠・出典】航空発動機(冷却系統)
問23シリンダ圧縮点検(ディファレンシャル・コンプレッション・テスト)で、圧縮漏れがオイル・フィラー口から聞こえる場合、疑われる箇所はどれか。
- 1冷却フィンの割れ
- 2点火栓の緩み
- ✔ピストンリングまたはシリンダ壁の摩耗
- 4吸気弁の漏れ
- 5排気弁の漏れ
解説:【正解】3「ピストンリングまたはシリンダ壁の摩耗」
【結論】オイル・フィラー口やブリーザから漏れ音が聞こえる場合、ピストンリングまたはシリンダ壁の摩耗が疑われる。
【圧縮点検の原理】ディファレンシャル・コンプレッション・テストでは、対象シリンダのピストンを圧縮上死点に置き、規定の圧力(例えば80psi)を送り込む。オリフィスを介した2つの圧力計の差から、シリンダ内に保持された圧力を読む。漏れが多ければ保持圧力が低くなる。
【漏れ箇所を音で切り分ける】これが本問の要点である。空気は漏れた先へ流れるため、音の出所が漏れ箇所を教えてくれる。
・吸気系統(キャブレターの吸込口、エアフィルタ)から音がする → 吸気弁の漏れ。弁が閉じ切っていない、シートの当たり不良、カーボンの噛み込み。
・排気管から音がする → 排気弁の漏れ。同上の原因に加え、焼損の可能性。
・オイル・フィラー口、ブリーザ、オイル・レベル・ゲージ孔から音がする → ピストンリングまたはシリンダ壁を経てクランクケースへ漏れている。リングの摩耗・固着、シリンダ壁の摩耗や傷。
・冷却フィンの間から音や泡が出る → シリンダ・ヘッドの亀裂(重大)。
【測定条件】暖機した状態で行うのが原則である。冷態ではピストンとシリンダの熱膨張が不足して隙間が大きく、漏れ量が過大に出て誤判定を招く。
【全シリンダが一様に低い場合】実際の劣化だけでなく、試験器の校正ずれ、オリフィスの規格違い、暖機不足、上死点位置の取り方といった測定条件の問題も疑うべきである。一部のシリンダのみが低い場合と切り分けて考える。
【リングの固着への対処】カーボンによる固着が疑われる場合、しばらく運転してから再測定すると改善することがある。改善しなければ分解を要する。
【根拠・出典】航空発動機(点検)
問24バルブ・クリアランス(タペット隙間)が過大な場合に生じる不具合として、最も適切なものはどれか。
- 1バルブが常に開いたままになる
- 2バルブの開弁時間が長くなり出力が増す
- 3圧縮比が上がる
- ✔バルブの開弁時間が短くなり、打音の発生と出力低下を招く
- 5何も起こらない
解説:【正解】4「バルブの開弁時間が短くなり、打音の発生と出力低下を招く」
【結論】バルブ・クリアランスが過大になると、開弁時間が短くなり、打音の発生と出力低下を招く。
【クリアランスの意味】カムとバルブの間の駆動系には、熱膨張を吸収するためのわずかな隙間(タペット隙間)が設けられる。エンジンが温まると各部が膨張してこの隙間が詰まるため、冷態で適切な隙間を確保しておく必要がある。
【過大な場合】
・カムがロッカアームを押し始めるまでに隙間を詰める分の空走が生じるため、バルブの開き始めが遅れ、閉じ終わりが早まる。結果として開弁時間(作動角)が短くなり、吸排気の効率が落ちて出力が低下する。
・隙間を詰める際の衝突により打音(タペット音)が発生する。この衝撃は部品の摩耗と損傷を早める。
【過小な場合(こちらの方が危険)】
・熱膨張により隙間がなくなると、バルブが完全に閉じなくなる。圧縮漏れが生じて出力が落ちるだけでなく、バルブがシートに接触して熱を逃がす経路が断たれるため、バルブが過熱して焼損する。
・排気バルブは特に高温にさらされるため、この危険が大きい。
【油圧式タペット】多くの航空用エンジンでは油圧式タペット(ハイドロリック・リフタ)を用い、油圧により隙間を自動的にゼロに保つ。これにより調整が不要となり、打音も生じない。ただし内部の詰まりや油圧不足により機能が失われることがある。
【排気バルブの冷却】排気バルブは中空構造とし、内部にナトリウムを封入したものがある。運転中に溶融したナトリウムがバルブの往復運動により内部を移動し、傘部の熱を軸部からガイドへ運んで放熱する。バルブ焼損を防ぐ工夫である。
【焼損の誘因】過希薄混合気、クリアランス過小、シートの当たり不良、冷却不足(バッフルの破損)。
【根拠・出典】航空発動機(動弁系統)
電子装備品・電気計器全59問中 8問を掲載
問25気圧高度計の目盛窓(Kollsman窓)に1013.25hPaをセットしたときに指示される高度はどれか。
- 1絶対高度
- 2密度高度
- ✔気圧高度(フライトレベル基準の高度)
- 4電波高度
- 5真高度
解説:【正解】3「気圧高度(フライトレベル基準の高度)」
【結論】1013.25hPa(標準大気圧)をセットしたときに指示されるのは気圧高度であり、これに基づく高度がフライトレベルである。
【気圧高度計の原理】高度上昇に伴う静圧の低下を、アネロイド(内部を真空にした金属製の薄い容器)の膨張として捉え、標準大気の圧力高度関係に基づいて高度に換算する。目盛窓(コルスマン窓)で基準気圧を設定することで、指示する高度の基準を変えられる。
【設定と指示される高度】
・1013.25hPa(29.92inHg)…気圧高度。標準大気を基準とした高度。一定高度(移行高度)以上ではすべての航空機がこの設定を用いる。全機が同じ基準を使うことで、相互の高度差が正しく保たれる。これがフライトレベルである。
・QNH…その地点の海面気圧に換算した値。設定すると平均海面上の高度(指示高度)を示す。地上で設定すれば飛行場の標高を指示する。
・QFE…飛行場の気圧。設定すると飛行場面上の高度を示す。地上でゼロを指示する。
【なぜ低高度と高高度で使い分けるのか】低高度では地形との間隔が問題となるためQNHを用いて実際の高度に近い値を得る。高高度では航空機同士の間隔が問題となるため、全機が同一の基準(1013.25hPa)を使う方が合理的である。
【気温補正】高度計は標準大気を前提としているため、実際の気層が標準より低温であれば、真高度は指示より低くなる。低温時の障害物間隔には注意が必要である。QNH設定は気圧の補正であって、気温の補正ではない。
【他の高度の概念】真高度(実際の海面からの高さ)、絶対高度(対地高度、電波高度計が示す)、密度高度(空気密度を標準大気の高度に換算したもの。性能計算に用いる)。
【根拠・出典】航空計器
問26小型機の直流電気系統において、バスバーの役割として最も適切なものはどれか。
- 1電流を蓄える
- 2交流を直流に変換する
- 3過電流を検出して回路を遮断する
- ✔電源からの電力を各回路へ分配する共通の導体である
- 5電圧を昇圧する
解説:【正解】4「電源からの電力を各回路へ分配する共通の導体である」
【結論】バスバーは、電源からの電力を各回路へ分配する共通の導体である。
【役割の単純さと重要性】バスバーは電気的には単なる導体だが、系統の構造を決める要である。発電機やバッテリーからの電力をここに集め、各負荷回路へ分配する。多数の負荷を1本ずつ電源へ配線するのではなく、共通の分配点を設けることで、配線を大幅に簡素化できる。
【バスの階層】重要度に応じて複数のバスに分けられる。
・メイン・バス…通常運航時の一般負荷。
・エッセンシャル(クリティカル)・バス…飛行の安全に不可欠な負荷。電源喪失時にも優先的に給電される。
・ホット・バッテリー・バス…バッテリーに直結され、マスタースイッチの状態にかかわらず常時給電される。非常用の最小限の機器。
この階層により、電源が細くなっても重要な機能を最後まで維持できる。
【混同しやすい他の機器】
・サーキット・ブレーカ/ヒューズ…過電流保護。回路を遮断する。
・TR(変圧整流器)…交流を直流に変換する。
・インバータ…直流を交流に変換する。
・バッテリー…電力を蓄える。
・電圧調整器…発電機の出力電圧を一定に保つ。
それぞれ役割が明確に異なる。
【整備上の着眼点】バスバーは大電流が流れる部位であるため、接続部の緩みや腐食は接触抵抗の増大を招き、電圧降下と局所的な発熱を生じる。締結の状態、変色や焦げの痕跡、絶縁の状態を確認する。バスバー周辺での作業では、工具による短絡に特に注意する。
【根拠・出典】航空機電気装備
問27磁気コンパスの自差(デビエーション)の主な原因はどれか。
- 1地球磁極と真北のずれ
- 2地球の自転
- 3気圧の変化
- 4対気速度の変化
- ✔機体の磁性体や電気系統がつくる磁界
解説:【正解】5「機体の磁性体や電気系統がつくる磁界」
【結論】自差(デビエーション)は、機体自身の磁性材料や電流がつくる磁界により生じる誤差である。
【偏差と自差の区別】この2つは頻出の混同ポイントである。
・偏差(バリエーション)…地球の磁北と真北のずれ。地球の性質によるもので、場所により異なる。航空図に等偏差線として記載されている。機体側では補正できない。
・自差(デビエーション)…その機体自身がつくる磁界による誤差。機体ごと、方位ごとに異なる。コンパス・スイングにより補正し、残る誤差を自差修正表に記録する。
【自差の原因】
・機体の磁性材料…鋼製の部品、エンジン、構造材。
・電流がつくる磁界…配線、モータ、発電機、スピーカ。したがって電気機器の作動状態により自差が変わる。
・搭載される磁性物品…工具、貨物。
【コンパス・スイング(自差修正)】
・実施場所…格納庫の鉄骨、他機、地中の鉄管など磁気的影響のない場所(コンパス・ローズ等)で行う。
・実施条件…エンジンを運転し、通常飛行時に使用する電気機器を作動させた状態で行う。機体を水平姿勢に近い状態に保つ。
・方法…機体を既知の方位に向け、指示との差を読み、補正磁石(コンペンセータ)で調整する。全周にわたって行う。
・記録…残存する誤差を自差修正表に記載し、機内に備え付ける。
【自差が変わる場面】装備品の追加・撤去、大きな磁性部品の交換、被雷、長期の同一方位での駐機。これらの後には再度のスイングが必要となる。
【整備上の注意】コンパス周辺に磁性物品や電子機器を置かない。取付けの緩みや液漏れ、気泡の有無も点検する。
【根拠・出典】航空計器
問28VOR装置が航空機に提供する情報として正しいものはどれか。
- ✔局に対する磁方位(ラジアル)
- 2高度
- 3進入角
- 4対地速度
- 5局までの距離
解説:【正解】1「局に対する磁方位(ラジアル)」
【結論】VORは地上局に対する磁方位(ラジアル)情報を提供する。
【VORの原理】地上局は全方向に基準となる位相の電波と、方位により位相が変化する電波を同時に送信する。機上装置はこの2つの位相差を測定することで、局から見た自機の方位(ラジアル)を求める。方位のみであり、距離は分からない。
【DMEとの併用】距離を得るにはDME(距離測定装置)が必要である。機上から質問信号を送り、地上局からの応答までの往復時間から距離(スラント・レンジ、斜距離)を求める。VOR/DMEを併用すれば、方位と距離から位置が一意に定まる。
【他の航法無線装置との区別】
・ADF/NDB…局の方向(相対方位)を示す。VORより精度が低く、雷雲や夜間効果の影響を受けやすい。
・ILS…滑走路中心線に対する左右のずれ(ローカライザ)と、進入角に対する上下のずれ(グライドスロープ)。進入専用。
・GNSS…衛星からの信号により位置を直接求める。
【周波数の使い分け】VORは108.00〜117.95MHzを使用する。このうち108.00〜111.95MHzの範囲では、小数点第1位が偶数のチャネルがVOR、奇数のチャネルがILSローカライザに割り当てられている。この使い分けは覚えておくとよい。
【整備上の着眼点】アンテナの取付けとシール、同軸ケーブルとコネクタの状態、規定を超える塗装の重ね塗り。アンテナ取付部からの浸水は構造の腐食と性能低下を招く。受信精度の確認は、規定の試験器または既知の局を用いて行う。
【根拠・出典】航法無線装置
問29対気速度計の誤差のうち、圧縮性による誤差を補正した速度を何というか。
- 1真対気速度(TAS)
- ✔等価対気速度(EAS)
- 3指示対気速度(IAS)
- 4較正対気速度(CAS)
- 5対地速度(GS)
解説:【正解】2「等価対気速度(EAS)」
【結論】圧縮性による誤差を補正した速度は等価対気速度(EAS)である。
【速度の階層を順に追う】
1. IAS(指示対気速度)…対気速度計がそのまま示す値。ピトー管と静圧孔から得た差圧を、標準海面上の密度を前提に速度に換算したもの。
2. CAS(較正対気速度)…IASに取付位置誤差(ピトー管・静圧孔の設置位置による誤差)と器差を補正したもの。飛行規程の補正表を用いる。失速速度や運用限界速度は通常CASで示される。
3. EAS(等価対気速度)…CASに空気の圧縮性による誤差を補正したもの。高速・高高度では空気が圧縮され、ピトー管が検出する動圧が理論値より大きくなるため、この補正が必要となる。低速ではCASとほぼ等しい。
4. TAS(真対気速度)…EASに空気密度の補正を加えたもの。実際に空気に対して進んでいる速度。高度が上がるほどTASはEASより大きくなる。
5. GS(対地速度)…TASに風の影響を加味したもの。
【なぜIASで飛ぶのか】揚力は動圧(1/2ρV²)に比例するため、同じIASであれば高度が変わっても揚力の状態は同じである。したがって失速速度も、運用限界速度も、IAS(正確にはCAS)で表す方が操縦上わかりやすい。TASは航法計算に用いる。
【マッハ数】TASを、その高度・温度における音速で除した値である。音速は気温のみの関数(a=20.05√T)であるため、高度が上がって気温が下がると音速が低下し、同じTASでもマッハ数は大きくなる。高高度では速度制限がマッハ数で与えられる理由である。
【整備との関係】ピトー管・静圧孔の閉塞や汚れ、静圧孔周辺の平滑性の乱れは、すべての速度指示の基礎を狂わせる。
【根拠・出典】航空計器
問30航空機の静電気を放電し、無線障害を軽減するために翼端等に取り付けられる装置はどれか。
- 1アレスタ
- 2アンテナ・カプラ
- ✔スタティック・ディスチャージャ
- 4ボンディング・ジャンパ
- 5サージ・プロテクタ
解説:【正解】3「スタティック・ディスチャージャ」
【結論】スタティック・ディスチャージャは、飛行中に帯電した静電気をコロナ放電させ、無線障害を軽減する装置である。
【なぜ機体が帯電するのか】飛行中、機体は雨滴、氷晶、塵埃、排気粒子との摩擦により電荷を帯びる(プリシピテーション・スタティック)。帯電量が増えると、機体の尖った部分(翼端、尾翼後縁、アンテナ)から不規則な放電が生じる。この放電が広帯域の電磁ノイズを発生させ、通信と航法(特にHF、VHF、ADF)に雑音として現れる。
【ディスチャージャの働き】翼端や舵面後縁に、細い抵抗性のロッドとその先端の微細な針を持つ装置を取り付ける。帯電した電荷を、この針から穏やかにコロナ放電させることで、機体からの不規則な放電を防ぐ。抵抗を持たせているのは、放電そのものがノイズ源にならないようにするためである。
【ボンディングとの役割分担】
・ボンディング…機体各部を導電的に接続して電位差をなくし、部材間での火花放電を防ぐ。電気系統の帰路確保、雷撃電流の経路確保も担う。
・スタティック・ディスチャージャ…機体全体に溜まった電荷を機外へ逃がす。
両者は補完的である。ボンディングだけでは電荷は機外へ出て行かず、ディスチャージャだけでは機体内部の電位差が残る。
【雷撃との区別】ディスチャージャは微弱な静電気を扱う装置であり、数万アンペアの雷撃電流を流す経路ではない。雷撃電流は機体構造(複合材部では導電メッシュ)を経路として流れるよう設計されている。
【整備上の点検】先端の摩耗と欠損、脱落、取付部の抵抗値。抵抗値が規定を外れると正常に放電せず、無線雑音の増加として現れる。ボンディングの腐食や緩みも同様の症状を招く。
【根拠・出典】航空機電気装備
問31小型機のオルタネータ(交流発電機+整流器)と直流発電機(ジェネレータ)の比較として、正しいものはどれか。
- 1直流発電機の方が常に軽量である
- 2オルタネータには整流が不要である
- ✔オルタネータは低回転域でも比較的高い出力が得られ、軽量である
- 4両者に性能差はない
- 5オルタネータは低回転域での出力が直流発電機より劣る
解説:【正解】3「オルタネータは低回転域でも比較的高い出力が得られ、軽量である」
【結論】オルタネータは低回転域でも比較的高い出力が得られ、軽量である。
【構造上の違い】
・直流発電機(ジェネレータ)…電機子(電力を発生する巻線)が回転し、整流子とブラシを介して直流を取り出す。大電流をブラシで受け渡すため、ブラシと整流子の摩耗が大きい。
・オルタネータ…界磁(磁界を作る側)が回転し、電機子は静止している。回転側へ流すのは小さな界磁電流だけなので、ブラシとスリップリングの負担が小さい。出力の交流はダイオードブリッジで整流する。
【低回転域での差】直流発電機は、整流子の構造上、一定以上の回転数がないと十分な電圧を得られない。地上でのアイドル運転中は充電できず、バッテリーが消耗しやすい。オルタネータは低回転でも所要の電圧を得やすく、アイドル中も充電できる。この差が実用上大きい。
【重量と大きさ】同じ出力を得るのに、オルタネータの方が小型軽量である。整流のためのダイオードが必要だが、半導体の小型化により総合的に有利となった。
【界磁電流の供給】オルタネータは自励式ではないため、界磁に外部から電流を流す必要がある。したがってバッテリーが完全に上がっていると発電を開始できない。マスタースイッチの界磁側(ALT側)を切ると発電が停止し、バッテリーからの放電のみとなる。
【故障探究の手順】「充電しない」場合は、ベルトの張力と滑り、界磁回路のブレーカとスイッチ、レギュレータ、配線・端子・接地を順に確認し、実際の出力電圧を測定する。いきなりの部品交換は原因を残したまま再発を招く。
【過電圧保護】レギュレータの故障で電圧が異常上昇すると、電球の焼損や電子機器の破壊を招く。過電圧保護リレーが界磁回路を遮断して機器を守る。
【根拠・出典】航空機電気装備
問32電圧調整器(ボルテージ・レギュレータ)の機能として正しいものはどれか。
- 1電線の抵抗を下げる
- 2発電機の回転数を制御する
- 3バッテリーを冷却する
- ✔界磁電流を制御して出力電圧を一定に保つ
- 5電流を整流する
解説:【正解】4「界磁電流を制御して出力電圧を一定に保つ」
【結論】電圧調整器は、界磁電流を制御して出力電圧を一定に保つ。
【なぜ電圧を制御する必要があるか】発電機の出力電圧は、回転数と界磁の強さに比例する。エンジン回転数はアイドルから最大まで大きく変動し、また負荷も刻々と変わる。何も制御しなければ、
・高回転時…電圧が上がりすぎて、電球の焼損、電子機器の破壊を招く。
・低回転時や高負荷時…電圧が下がり、機器の性能低下と充電不足を生じる。
そこで、電圧を監視して界磁電流を増減させ、出力電圧を規定値(直流系で28V前後、14V系では14V前後)に保つ。
【制御の原理】出力電圧が上がれば界磁電流を減らして磁界を弱め、下がれば界磁電流を増やして磁界を強める。回転数を制御するのではなく、磁界の強さで調整する点が要点である。
【併用される保護】
・過電圧保護(オーバーボルテージ・リレー)…レギュレータが故障して電圧が異常上昇した場合に、界磁回路を遮断して発電を止め、機器を保護する。作動時は原因の調査が必要である。
・逆流継電器(リバース・カレント・リレー)…発電機の電圧がバッテリー電圧を下回ったとき(低回転、故障時)に回路を開き、バッテリーから発電機への逆流を防ぐ。半導体化されたものもある。
【混同しやすい機器】
・整流…ダイオードブリッジ(オルタネータ内蔵)。
・バッテリーの冷却…そのような機器はない。
・電線の抵抗…配線の材質と断面積で決まる。
それぞれ役割が異なる。
【故障の症状】電圧計が異常に高い値、あるいは低い値を示す。アンメータが放電側を指し続ける。灯火の明るさが不安定。これらは電圧調整器またはその周辺の不具合を示唆する。
【根拠・出典】航空機電気装備