分野別問題(解説つき)

航空運航整備士|分野別 問題インデックス

最終更新:2026年9月3日

航空運航整備士の学科試験は4分野から出題されます。分野別に代表問題を掲載しています。全250問をまとめて解くならトレーナーへ進んでください。

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航空法規全60問中 8問を掲載

問1
航空運航整備士の業務範囲として、最も適切なものはどれか。
  • ✔限定された種類・型式の航空機について、運航のため必要な整備(発動機・装備品の分解を伴わないもの)をした後の確認
  • 2航空機の設計変更の承認
  • 3航空機の大修理および大改造をした後の確認
  • 4航空交通管制の指示
  • 5航空機の型式証明に係る検査
解説:【正解】1「限定された種類・型式の航空機について、運航のため必要な整備(発動機・装備品の分解を伴わないもの)をした後の確認」 【結論】航空運航整備士は、限定された種類・型式の航空機について、運航のため必要な整備(発動機・装備品の分解を伴わないもの)をした後の確認を行う。 【3つの整備士資格の関係】 ・一等航空整備士…主として大型機を対象とし、業務範囲が広い。 ・二等航空整備士…主として小型機を対象とする。大修理・大改造の確認は業務範囲外である。 ・航空運航整備士…運航のために行う整備に限られる。飛行前後の点検、軽微な整備、装備品の交換等で、発動機や装備品の分解を伴わないもの。 【なぜこの区分があるのか】航空運送事業では、機体が各地の空港を巡って運航する。到着した機体を短時間で点検し、不具合を処置して次の便へ送り出す業務が、日々多数発生する。この業務は「運航を支える整備」であり、工場での分解整備とは求められる知識と技能の性格が異なる。そこで、運航整備に特化した資格が設けられている。 【業務範囲の境界】 ・行えるもの…飛行前後の点検、油脂類の補給、簡単な部品の交換、MELの適用に伴う措置、不具合の受付と処置、そしてこれらの確認。 ・行えないもの…発動機や装備品の分解を伴う整備の確認、大修理・大改造の確認。これらは一等・二等航空整備士、または認定事業場の確認主任者による。 【限定】種類(飛行機、回転翼航空機等)および型式の限定が付される。範囲外の航空機については、作業に従事することはあっても確認はできない。 【確認という行為の重み】業務範囲が限られていても、確認は「この機体を航空の用に供してよい」という法的判定である。その署名の後、機体は乗客と乗員を乗せて飛ぶ。範囲の広狭にかかわらず、責任の質は変わらない。 【根拠・出典】航空法第28条、施行規則附表
問2
飛行の安全に影響を及ぼす不具合を発見した場合の措置として、最も適切なものはどれか。
  • 1口頭で機長に伝えるのみでよい
  • ✔航空日誌に記載し、規定に従って処置し、確認を受けるまで航空の用に供さない
  • 3次回の定期整備まで記録せずに待つ
  • 4運航に支障がなければ何も行わない
  • 5整備士の判断で記録を省略できる
解説:【正解】2「航空日誌に記載し、規定に従って処置し、確認を受けるまで航空の用に供さない」 【結論】不具合は航空日誌に記載し、規定に従って処置し、確認を受けるまで航空の用に供してはならない。 【3つの要素が揃って初めて完結する】 1. 記録…航空日誌等に、いつ、どの飛行フェーズで、どのような現象が生じたかを具体的に記載する。「調子が悪い」といった抽象的な記載では、後日の切り分けにも傾向分析にも役立たない。 2. 処置…整備規程と整備マニュアルに従って処置する。あるいはMELの適用により、運用制限と修理期限のもとで運航を可能とする。 3. 確認…航空法第19条により、有資格者の確認を受ける。これを経て初めて航空の用に供することができる。 【口頭連絡では足りない理由】 ・記録に残らなければ、次の担当者、次の到着地、そして技術部門に情報が伝わらない。 ・同じ不具合が繰り返されていることに気づけない。リピート管理ができなければ、対症的な処置を繰り返すだけで根本原因に到達しない。 ・耐空性を証明する根拠が残らない。 ・後日の調査で、その不具合がいつから存在したかが分からない。 【記録を省略できない】整備士の判断で記録を省略することは認められない。「大したことではない」という判断そのものが、記録と基準に照らした判定を経ていない。 【記録すべき内容】現象(いつ、どこで、どのような)、調査の結果、実施した処置、参照した資料の章番号と改訂版、使用部品の部品番号とシリアル番号、実施した試験の結果、実施者と確認者。第三者が読んで再現できる記述であることが求められる。 【機長への伝達】実施した処置、MEL適用の有無と運用制限、残存する不具合を記録により明示して伝える。 【根拠・出典】航空法第19条、第58条
問3
MEL(Minimum Equipment List:最小装備品リスト)に基づく運航について、正しい記述はどれか。
  • 1MELは機長の判断のみで適用できる
  • 2不具合装備品を無期限に修理しないまま運航できる
  • ✔定められた運用制限および整備上の手順を遵守すれば、一部の装備品が不作動でも運航できる
  • 4MELは装備品の追加装備を定めたものである
  • 5MELの適用に記録は不要である
解説:【正解】3「定められた運用制限および整備上の手順を遵守すれば、一部の装備品が不作動でも運航できる」 【結論】MELは、定められた運用制限と整備手順を適用し、修理期限内に修復することを条件に、一部の装備品が不作動でも運航を認めるものである。 【なぜこの制度があるのか】現代の航空機は、多くの機能を冗長化して装備している。したがって、ある装備品が1つ不作動でも、他の装備や運用上の工夫により、安全性を損なわずに飛行できる場合がある。一方、あらゆる不具合で即座に運航を止めれば、定時性が著しく損なわれる。そこで、安全を確保しつつ運航の柔軟性を持たせる仕組みとして、MELが設けられている。 【適用の3要素】 ・M手順(Maintenance Procedure)…整備部門が実施する措置。装備品の切離し、回路の安全化(ブレーカの引抜きとタグ)、固縛、操作部への「INOP」表示。誤操作を防ぎ、他の系統への影響を断つ。 ・O手順(Operational Procedure)…運航乗務員が遵守する運用上の手順と制限。使用できる進入方式の制限、高度・速度・区域の制限、代替の操作手順。 ・修理期限…カテゴリA〜Dにより定められる。一般にAは項目ごとの個別規定、Bは3暦日、Cは10暦日、Dは120暦日。 【無期限ではない】修理期限は拘束力を持つ。期限内に恒久処置を完了させなければならない。所定の延長手続による承認がない限り、期限を過ぎた機体を運航の用に供することはできない。 【記録と伝達】適用項目、運用制限、修理期限を航空日誌等に記載し、運航乗務員へ確実に伝達する。整備側と運航側の双方が手順を実施して初めて適用が成立する。 【MMELとの関係】MMELは型式ごとに製造国当局が承認する標準である。事業者はこれと同等以上に厳しい内容のMELを作成し、認可を受ける。緩やかにすることはできない。 【根拠・出典】整備規程/MEL・CDL
問4
耐空証明書および運用限界等指定書に関する記述として正しいものはどれか。
  • 1運用限界は参考値であり遵守義務はない
  • 2整備士が任意に内容を変更できる
  • 3有効期間の定めはない
  • ✔航空機に搭載し、運用限界の範囲内で運航しなければならない
  • 5機体に搭載する必要はない
解説:【正解】4「航空機に搭載し、運用限界の範囲内で運航しなければならない」 【結論】耐空証明書は航空機に備え付け、運用限界の範囲内で運航しなければならない。 【2つの書類の関係】 ・耐空証明書…「この航空機は技術上の基準に適合している」ことを証明する。型式、登録記号、製造番号、耐空類別、有効期間が記載される。 ・運用限界等指定書…「どの範囲で適合しているのか」を具体的に指定する。最大重量、重心位置の限界、速度・高度の限界、耐空類別、運航の形態、装備すべき装備品。 証明書だけでは、どこまでが保証されているのか分からない。両者は一体として機能する。 【範囲外は保証されていない】耐空証明は、指定された運用限界の範囲内での耐空性を証明するものである。範囲を超える運航については、何も保証していない。したがって限界を超えた運航は、法令違反であると同時に、実際に危険である。 【備え付けの義務】航空法第59条により、航空機登録証明書、耐空証明書、運用限界等指定書(または飛行規程)、搭載用航空日誌、運航規程・整備規程の写し(事業者の場合)、無線局免許状を機体に備え付ける。当局の立入検査、他国での運航、事故時の対応において、機体とともにあることが求められる。 【整備側での活用】運航乗務員のための書類と思われがちだが、整備側も参照する。 ・計器のレンジマーキングの位置…限界値に基づく。ずれていれば修正する。 ・重量重心の判定基準。 ・装備すべき装備品の一覧…MELの適用や装備の欠落を判断する基礎。 ・発動機の運転限界…試運転時の判定。 【出発前の確認】備え付け書類が揃い、有効期限内であることを確認する。期限切れや旧版のまま運航すれば、それ自体が法令違反となる。 【根拠・出典】航空法第11条、第59条
問5
耐空性改善通報(TCD)に関する記述として最も適切なものはどれか。
  • 1遵守は使用者の任意である
  • 2サービス・ブレティンと同義である
  • 3対象は輸入航空機に限られる
  • 4製造者が任意に発行する参考情報である
  • ✔国土交通大臣が発行し、対象機の使用者は指定された期限内に指示された措置をとらなければならない
解説:【正解】5「国土交通大臣が発行し、対象機の使用者は指定された期限内に指示された措置をとらなければならない」 【結論】TCDは国土交通大臣が発行し、対象機の使用者は指定された期限内に指示された措置をとらなければならない。 【TCDの性格】航空機、発動機、プロペラ、装備品について、安全上の問題が判明した際に、当局が発行する強制的な指示である。諸外国のAD(Airworthiness Directive)に相当する。内容は、点検の実施、部品の交換、改修、運用の制限など多岐にわたる。 【SBとの決定的な違い】 ・SB(サービス・ブレティン)…製造者が発行する技術情報。実施は原則として使用者の判断に委ねられる。ただし内容と重要度を評価する責任は使用者にある。 ・TCD…当局が発行し、法的な実施義務を伴う。指定された期限内に実施しなければ、その機体は耐空性の基準に適合しない状態となり、航空の用に供することができない。 重要なSBが当局によりTCDとして発行されることも多く、両者は独立ではなく連続している。 【反復型TCD】一度実施すれば完了するものと、一定の飛行時間・サイクル・暦時間ごとに反復実施を求めるものがある。後者では、初回実施日を起点として次回期限を算出し、整備計画に組み込んで管理しなければならない。期限管理の欠落は、気づかぬうちの期限超過運航を招く。 【記録】実施年月日、TCD番号、実施内容、確認者、次回期限を記録し保存する。耐空証明の更新検査でも確認され、また機体の売買では資産価値を左右する。 【運航整備での関わり】ラインでは、TCDの実施状況を確認したうえで機体を受領し、確認を行う。期限が迫っているものがあれば、部品と要員を手配して計画的に実施する。期限直前の対応では間に合わない。 【根拠・出典】航空法第10条・第16条関連、TCD制度
問6
航空機の重量および重心位置の管理について、正しい記述はどれか。
  • ✔改造・装備品の変更等により重量重心が変化した場合は再計算または再計量が必要である
  • 2重心位置は運航に影響しない
  • 3空虚重量は変化しない
  • 4重量計測は製造時のみ行えばよい
  • 5改造や装備品変更後も再計算は不要である
解説:【正解】1「改造・装備品の変更等により重量重心が変化した場合は再計算または再計量が必要である」 【結論】改造や装備品の変更等により重量重心が変化した場合は、再計算または再計量が必要である。 【なぜ管理が必要か】重心位置は、機体の縦の安定性、操縦性、失速特性に直接影響する。 ・前方限界を超えると…安定は増すが操縦桿が重くなり、着陸時の引き起こしが困難となる。尾翼の下向き力が増える分、失速速度も上昇する。 ・後方限界を超えると…安定が低下し、操縦桿が軽くなって過大な操作をしやすい。失速やスピンからの回復が困難になる。 いずれも重大な危険である。 【変化する場面】 ・装備品の追加・撤去…アビオニクスの換装、座席の増減、機内固定搭載品の変更。 ・改造。 ・再塗装…塗膜は無視できない質量である。 ・修理…パッチ、ダブラ、補強材の追加。 これらは運航整備の現場でも生じる。 【再計算と再計量】 ・再計算…変更した品目の重量とアームが分かっていれば、既存の空虚重量とモーメントに加減して求める。 ・再計量…変更が大きい場合、累積して計算値の信頼性が低下した場合、記録が不明確な場合に実施する。実測により基準をリセットする。 【責任の所在】重量重心記録の維持は使用者の責任であり、整備側が変更を生じさせた以上、記録の更新も整備側が担う。この記録が、運航側が行うロード・シートの計算の基礎となる。更新の遅れは、運航側の判断を誤らせる。 【運航整備での実務】搭載書類の重量重心データが最新であることを確認する。装備品の交換を行った際は、重量への影響を評価し、必要なら記録の更新を技術部門へ連絡する。 【根拠・出典】重量および重心位置管理
問7
CDL(Configuration Deviation List)に関する記述として正しいものはどれか。
  • ✔外板やフェアリング等の一部が欠落した状態での運航条件を定めたリストである
  • 2貨物搭載順序を定めたリストである
  • 3乗員の資格要件を定めたリストである
  • 4装備品の不作動を許容するリストである
  • 5整備士の工具リストである
解説:【正解】1「外板やフェアリング等の一部が欠落した状態での運航条件を定めたリストである」 【結論】CDLは、フェアリングやパネル等の一部が欠落した状態での運航条件を定めたリストである。 【MELとの対比】 ・MEL…「装備品の不作動」を扱う。無線機、灯火、ポンプ、計器といった機器が使えない状態での運航条件。 ・CDL…「二次構造部材の欠落」を扱う。フェアリング、アクセス・パネル、シール、静電放電器といった、主要な荷重を負担しない部材が失われた状態での運航条件。 対象がまったく異なる。両者とも飛行規程の一部として承認され、運航の柔軟性を確保する仕組みである点は共通する。 【なぜ二次構造なら許容できるのか】フェアリングやパネルは、空力形状を整えて抗力を減らし、内部を保護する部材である。主要な荷重を負担しないため、欠落しても構造強度は保たれる。ただし、 ・抗力が増加し、燃料消費と性能に影響する。 ・気流が乱れ、下流の部材や操縦性に影響する場合がある。 ・隣接部材への荷重が変わり、さらなる脱落を招くおそれがある。 そこでCDLは、性能上の補正(離陸重量の減算、燃料の追加)と運用制限(速度、高度、区域)を定める。 【適用時の措置】 ・CDLの該当項目を確認し、定められた補正と制限を適用する。 ・隣接部材の脱落防止処置…欠落部の周囲のファスナやシールが健全であることを確認する。必要なら追加の固定を行う。 ・記録し、運航乗務員へ伝達する。性能補正は運航側の計算に直結する。 【一次構造は対象外】主翼桁、胴体外板、与圧隔壁といった一次構造の欠落は、CDLで扱えない。これらは修理が必須である。 【欠落の原因究明】なぜ失われたのかを調べる。ファスナの緩み、疲労、接触。同じことが繰り返されないよう対策する。 【根拠・出典】飛行規程/MEL・CDL
問8
整備の記録に不具合内容と処置を記載する際の要件として、最も適切なものはどれか。
  • 1参照資料は記載しない方がよい
  • ✔不具合の内容、原因の調査結果、実施した処置、参照した資料、確認者を明確に記載する
  • 3処置の結果のみを簡潔に書けばよい
  • 4略語のみで記載する
  • 5記載者名は不要である
解説:【正解】2「不具合の内容、原因の調査結果、実施した処置、参照した資料、確認者を明確に記載する」 【結論】不具合の内容、原因の調査結果、実施した処置、参照した資料、確認者を明確に記載する。 【記録の目的から要件が導かれる】整備記録は、 ・耐空性を証明する。 ・後日の不具合調査に用いる。 ・傾向分析(リピート管理)の入力となる。 ・事故調査の資料となる。 これらを果たすには、「第三者が読んで再現できる」記述であることが必要となる。 【記載すべき5要素】 1. 不具合の内容…いつ、どの飛行フェーズで、どのような現象が生じたか。表示内容、音、におい、作動の状態を具体的に。断続的なら発生条件(温度、振動、高度)も。 2. 原因の調査結果…何を確認し、何が分かったか。除外した可能性も含めると、次の担当者に有用である。 3. 実施した処置…何を、どのように行ったか。使用部品の部品番号とシリアル番号。 4. 参照した資料…整備マニュアルの章番号と改訂版、TCD番号、エンジニアリング・オーダの番号。「何を根拠に適合と判定したのか」を示す。 5. 実施者と確認者…署名または識別。 【抽象的な記載の弊害】「調子が悪い」「点検した」「異常なし」といった記載では、 ・工場側が再現できず、NFF(異常なし返却)となる。 ・同じ不具合が繰り返されていることに気づけない。 ・次の担当者が一から調べ直すことになる。 【略語と用語】社内で通用する略語も、第三者や当局には伝わらないことがある。規定された用語を用いる。 【訂正】取り消し線で元の記載を残し、訂正内容と訂正者・訂正日を明示する。修正液や塗りつぶしは認められない。 【根拠・出典】航空法第19条・第58条、整備規程

機体・システム全71問中 8問を掲載

問9
飛行前点検(プリフライト・チェック)でピトー管を点検する際の主眼として、最も適切なものはどれか。
  • 1塗装の艶を確認する
  • ✔カバーの取り外しと、孔の詰まり・変形の有無を確認する
  • 3内部の作動油量を確認する
  • 4電圧を測定する
  • 5取付ボルトを増し締めする
解説:【正解】2「カバーの取り外しと、孔の詰まり・変形の有無を確認する」 【結論】ピトー管の点検では、カバーの取り外しと、孔の詰まり・変形の有無を確認する。 【なぜ最重要の点検箇所か】ピトー管が閉塞すると、対気速度計が誤指示する。全圧が固定されるため、上昇すれば静圧の低下により差圧が拡大し、実際には減速していても速度が増加しているように指示する。乗員がこれを信じて減速すれば、失速に至る。ピトー管の閉塞が要因となった重大事故は複数あり、この点検の重要性は極めて高い。 【閉塞の原因】 ・カバーの取り外し忘れ…最も単純で、最も起きやすい。目立つ表示(ストリーマ)付きのカバーを用い、員数を照合して確実に外す。 ・虫の営巣…駐機中に虫がピトー管の孔に巣を作る事例は実際に多い。カバーの装着が有効な予防となる。 ・氷…ヒータの不作動、あるいは地上での着氷。 ・洗浄剤や塗料の残留…作業時の養生と、作業後の除去確認。 ・異物、腐食。 【確認すべき事項】 ・カバーが確実に外されていること。 ・孔に詰まりがないこと…目視で確認する。細い針金等を差し込んで清掃することは、内部を損傷するため行わない。 ・変形と損傷…衝突、接触による。 ・ドレン孔の詰まり…侵入した水を排出する孔である。詰まれば水が滞留し、圧力の伝達が乱れる。 ・ヒータの作動(規定の方法で)。 【静圧孔も併せて確認】静圧孔の閉塞、汚れ、塗装やテープの残り、周辺の平滑性。静圧は高度計・対気速度計・昇降計のすべてに供給されるため、影響が広い。周辺の段差やへこみも気流を乱して誤差を生む。 【出発前の最終確認】カバー類と安全ピンの員数照合は、出発前確認の重要な項目である。 【根拠・出典】運航整備(飛行前点検)
問10
航空機の給油作業における静電気対策として、最も適切なものはどれか。
  • 1ノズルを接地すれば航空機の接地は不要である
  • 2接地は不要である
  • ✔給油車・航空機・給油ノズル(受口)を相互にボンディングし、さらに接地する
  • 4乾燥時のみボンディングすればよい
  • 5給油車と航空機のみを接地する
解説:【正解】3「給油車・航空機・給油ノズル(受口)を相互にボンディングし、さらに接地する」 【結論】給油車・航空機・給油ノズル(受口)を相互にボンディングし、さらに接地する。 【なぜ静電気が生じるのか】燃料が配管やホースを高速で流れると、液体と管壁の摩擦により電荷が分離する。この電荷が燃料とともに機体のタンクへ運ばれ、蓄積する。給油の流量が大きいほど、また燃料の導電率が低いほど、発生量が多い。 【何が危険か】タンク内の気相部には燃料蒸気と空気の混合気が存在する。ここに火花が飛べば、爆発に至る。給油作業は、可燃性混合気と静電気が同時に存在する、極めて危険な作業である。 【ボンディングと接地の役割の違い】ここが要点である。 ・ボンディング…給油車、航空機、ノズル(受口)を相互に導電接続し、同電位にする。電位差がなければ、両者の間に火花は飛ばない。火花防止の本質はこの等電位化にある。 ・接地(アース)…蓄積した電荷を大地へ逃がす。電荷そのものを減らす。 両者は補完的であり、どちらか一方では不十分である。「機体と給油車だけ接地すればよい」という理解は、両者の間の電位差を考慮していない点で不十分である。 【作業の順序】接続は給油の前に行い、給油が完全に終わるまで外さない。給油中に外せば、その瞬間に電位差が生じ得る。 【その他の静電気対策】 ・給油の初期は流量を抑える…急激な流れは発生量を増やす。 ・作業者自身の対策…帯電しにくい服装と導電性のある靴、作業前に接地された金属部に触れて放電する。 ・燃料への帯電防止添加剤。 【あわせて確認】燃料の種別(誤給油の防止)、水抜き、給油量と重量重心への影響。 【根拠・出典】運航整備(給油作業の安全)
問11
航空機の牽引(トーイング)作業における注意事項として、適切でないものはどれか。
  • 1前脚の操向限界角(ターン・リミット)を超えないようにする
  • 2前脚のステアリング・バイパス(トーイング・ピン)を所定の状態にする
  • 3ウイングウォーカーを配置し障害物との間隔を確認する
  • ✔作業を早めるため急発進・急停止を行う
  • 5ブレーキ操作要員をコックピットに配置する
解説:【正解】4「作業を早めるため急発進・急停止を行う」 【結論】急発進・急停止は脚構造やタイヤに過大な荷重を与えるため行ってはならない。 【牽引作業の危険】機体は数十トンに達する質量を持ち、その慣性は極めて大きい。急発進・急停止は、 ・前脚とトーバーに過大な荷重を与える。トーバーには過負荷で折れるシャーピンが設けられているが、これに頼るべきではない。 ・脚構造そのものを損傷する。目に見えない内部損傷が残ることもある。 ・機体が振れて、周囲の障害物や他機に接触する。 ・機内にいる者が転倒する。 【守るべき事項】 ・ステアリングのバイパス処置…前脚のステアリング機構を、牽引時に自由に回るよう切り離す。トーイング・ピンの装着や、バイパス・レバーの操作による。これを怠れば、ステアリング機構に過大な力がかかり損傷する。 ・操向限界角の遵守…前脚には、それ以上回すと機構や構造を損傷する限界角がある。機体には表示があり、また牽引車の運転者と誘導者が監視する。超えたおそれがあれば、事実を記録し、規定の点検を実施する。 ・ブレーキ要員の配置…操縦室にブレーカ要員を配置し、通信を保つ。緊急時に停止できる手段を確保する。機種と規定により、無人での牽引が認められる場合もある。 ・ウイングウォーカーの配置…翼端と尾部の間隔を監視する。狭い駐機場では特に重要である。 ・緩やかな加減速と、規定の速度。 【事前の確認】経路上の障害物、路面の状態、風、他機と車両の動き、トーバーとピンの状態、脚の安全ピン。 【接触した場合】事実を報告・記録し、損傷評価を経てから運航可否を判断する。外観に変化がなくても報告する。 【根拠・出典】運航整備(地上取扱い)
問12
デアイシング(除氷)とアンチアイシング(防氷)の違いとして正しいものはどれか。
  • 1除氷後はホールドオーバー・タイムを考慮する必要はない
  • 2防氷は温水のみを用いる
  • 3除氷は飛行中のみ、防氷は地上のみ行う
  • 4両者は同義である
  • ✔除氷は既に付着した氷雪を除去する作業、防氷は氷雪の付着を一定時間防ぐ作業である
解説:【正解】5「除氷は既に付着した氷雪を除去する作業、防氷は氷雪の付着を一定時間防ぐ作業である」 【結論】除氷は既に付着した雪氷を除去する作業、防氷はその後の付着を一定時間防ぐ作業である。 【なぜ雪氷が危険か】主翼上面のわずかな粗さでも、境界層を乱して最大揚力係数を大きく低下させ、失速速度を上昇させる。氷の重量や抗力の増加以上に、この揚力低下が致命的である。「サンドペーパー程度の粗さでも危険」といわれるのはこのためである。過去に、除氷を怠った機体が離陸直後に失速した事故が複数発生している。 【2段階の作業】 ・除氷(デアイシング)…加熱した除氷液(TYPE I、通常はオレンジ色に着色)を吹き付け、付着した雪氷を融かして流し去る。この段階では、その後の再付着を防ぐ効果はほとんどない。 ・防氷(アンチアイシング)…増粘剤を含む防氷液(TYPE II、III、IV)を塗布する。粘性が高いため機体表面に留まり、降雪や着氷性の降水があっても一定時間、氷の付着を防ぐ。離陸時の気流により流れ落ちる設計となっている。 降雪が続く条件では、除氷に続けて防氷を行う(2ステップ方式)。 【ホールドオーバー・タイム(HOT)】防氷液が効果を保つ時間である。液の種類と濃度、外気温、降水の種類と強度、風、機体表面温度により変動し、HOTテーブルから読み取る。HOTを超過すれば、再度の除氷・防氷が必要となる。 【クリーン・エアクラフト・コンセプト】離陸時に、重要な表面(翼、尾翼、操縦翼面)に付着物がない状態であることを要求する原則である。最終的な確認(プリテイクオフ・チェック)が不可欠である。 【作業上の注意】金属ヘラ等で削り取ってはならない。外板と塗装を損傷する。センサ、プローブ、エンジンへの液の吹き付けにも制限がある。 【根拠・出典】運航整備(地上除氷・防氷)
問13
航空機のタイヤに窒素を充填する主な理由として、最も適切なものはどれか。
  • ✔不活性で酸化・燃焼のおそれが少なく、温度変化による圧力変動や水分の影響も小さいため
  • 2静電気を発生させるため
  • 3空気より安価なため
  • 4タイヤの摩耗を直接減らすため
  • 5空気より軽く重量を減らせるため
解説:【正解】1「不活性で酸化・燃焼のおそれが少なく、温度変化による圧力変動や水分の影響も小さいため」 【結論】窒素は不活性で、酸化・燃焼のおそれが少なく、温度変化による圧力変動や水分の影響も小さい。 【最大の理由は不活性であること】ブレーキが過熱すると、その熱がホイールを通じてタイヤ内部の気体に伝わる。空気を充填していれば、内部の酸素が高温下でゴムやその分解生成物と反応し、酸化・燃焼を助長するおそれがある。過去には、タイヤ内部での爆発的な燃焼が報告されている。窒素は不活性であり、この反応に関与しない。 【水分の問題】圧縮空気には水分が含まれる。タイヤ内部に水分があると、 ・温度変化による圧力変動が大きくなる。水は気化・凝縮により体積が大きく変わるため、地上と上空、あるいは離着陸時の温度差で内圧が不安定になる。 ・ホイールの内面を腐食させる。 ・低温で凍結し、アンバランスの原因となる。 乾燥した窒素を用いれば、これらを避けられる。 【誤答肢の検討】 ・軽量化…空気と窒素の密度差はわずかであり、重量軽減が理由ではない。 ・摩耗の低減…充填ガスの種類は摩耗に直接影響しない。摩耗は空気圧、アライメント、着陸の仕方による。 ・静電気の発生…むしろ避けるべきことである。 ・価格…窒素の方が高い。 【充填時の安全】タイヤは高圧(機種により数百kPaから1MPaを超える)である。充填時は防護具を用い、車軸方向(タイヤの正面)に立たない。破裂すれば車軸方向に強い破片飛散を伴う。 【関連】ヒューズ・プラグは、過熱時に溶融して空気を抜き、破裂を防ぐ。作動した場合は原因を調査する。オレオ・ストラットにも窒素を用いる。 【根拠・出典】運航整備(車輪・タイヤ)
問14
地上でのエンジン運転(グラウンド・ラン)における安全上の措置として、適切でないものはどれか。
  • 1車輪止め(チョーク)を確実に装着する
  • ✔風向にかかわらず常に追い風で運転する
  • 3消火器を配置し、監視要員を置く
  • 4周囲のFOD(異物)を除去する
  • 5吸込み危険区域・排気危険区域を設定し立入りを制限する
解説:【正解】2「風向にかかわらず常に追い風で運転する」 【結論】風向にかかわらず追い風で運転することは不適切である。原則として向かい風で行う。 【なぜ向かい風か】 ・排気の再吸入を防ぐ…追い風では、後方へ吹き出した高温の排気ガスが風に押し戻され、エンジンが自らの排気を吸い込むおそれがある。高温ガスの吸入は推力の変動、EGTの上昇、サージを招く。 ・排気の滞留を防ぐ…周囲に高温ガスと有害な排気が滞留すれば、作業者と周辺への危険となる。 ・エンジンへの流入を安定させる…向かい風であれば、インレットへの流れが安定し、流れの歪みが少ない。強い横風や追い風は流れを乱し、サージの誘因となる。 【その他の必須措置】 ・吸込み危険区域と排気危険区域の設定…推力(回転数)に応じて範囲が変わる。整備マニュアルに図示されている。区域内への立入りと物品の持込みを厳格に管理する。人が吸い込まれる事故、排気で吹き飛ばされる事故が実際に発生している。 ・車輪止め(チョーク)の確実な装着…推力により機体が動き出す。 ・消火器の配置と監視要員…始動時の火災、燃料漏れに備える。監視要員は緊急停止の合図を出せる位置に配置する。 ・FODの除去…周囲の小石、工具、ウエス、ゴミ。吸い込めばファン・ブレードを損傷する。作業前のFODウォークが有効である。 ・機体の固定とブレーキ…パーキングブレーキ、必要に応じタイダウン。 ・操縦室との通信…ヘッドセットまたは標準の手信号。通話が途絶えたら作業を中断する。 【資格】エンジン運転は、所定の訓練と資格認定を受けた者が、定められた手順に従って実施する。 【根拠・出典】運航整備(エンジン地上運転)
問15
駐機中の航空機に対して行う係留(モアリング)の目的として、最も適切なものはどれか。
  • 1燃料の蒸発を防ぐ
  • 2タイヤの摩耗を防ぐ
  • 3塗装の保護
  • 4電池の放電を防ぐ
  • ✔強風等による移動・転覆・損傷を防止する
解説:【正解】5「強風等による移動・転覆・損傷を防止する」 【結論】係留の目的は、強風等による機体の移動・転覆・損傷を防ぐことである。 【なぜ必要か】航空機は軽量で、翼という大きな揚力面を持つ。駐機中でも、強風を受ければ、 ・揚力が発生して機体が浮き上がる、あるいは片翼が持ち上がる。 ・機体が押されて移動する。 ・最悪の場合、転覆する。 特に小型機は影響を受けやすいが、大型機でも台風級の風では危険となる。実際に、強風による駐機機の損傷は各地で発生している。 【係留の方法】機体の指定された係留点(タイダウン・リング)に、ロープまたはチェーンを掛け、地上の係留環に固定する。 ・規定の位置に掛ける…構造が荷重を受け止められる箇所である。任意の場所に掛ければ、そこを損傷する。 ・適切な張り具合…緩すぎれば機体が動いて衝撃荷重が加わる。張りすぎれば構造に常時荷重をかける。 ・一般に、主翼2箇所と尾部の3点で係留する。 【併せて行う措置】 ・車輪止め(チョーク)…前後に確実に装着する。 ・コントロール・ロック(ガスト・ロック)…操縦系統を固定し、舵面が風で暴れることを防ぐ。舵面の暴れは、ヒンジ、ストッパ、リンク機構を損傷する。 ・カバー類…ピトー管、静圧孔、エンジン吸排気口、風防。異物、虫、雨雪の侵入を防ぐ。 ・接地…静電気の蓄積を防ぐ。 ・燃料の搭載…重量を増やして安定させることがある。 【出発前の確認】係留の解除、チョークの撤去、コントロール・ロックの解除、カバー類の取外しと員数照合。残置は重大な結果を招く。 【根拠・出典】運航整備(地上取扱い)
問16
主脚のダウンロック確認および脚下げ位置指示に関する整備上の注意として、適切でないものはどれか。
  • 1位置検出スイッチ(プロキシミティ・センサ)の隙間を規定値に調整する
  • ✔指示灯が点灯していれば機構の点検は省略してよい
  • 3ダウンロック機構の摩耗とがたを点検する
  • 4リギングの寸法を規定に従って確認する
  • 5指示灯の球切れを点検する
解説:【正解】2「指示灯が点灯していれば機構の点検は省略してよい」 【結論】指示灯が点灯していても、機構そのものの健全性は保証されない。機構の点検は省略できない。 【指示灯が示すもの】脚の位置指示灯は、位置検出センサ(プロキシミティ・センサ)が「所定の位置関係を検出した」ことを示すにすぎない。センサは、ターゲットとの隙間が規定値内にあるかどうかを検出する誘導式の装置である。 【なぜ危険な誤解が生じるか】センサの隙間が不適切であれば、 ・隙間が狭すぎる…実際にはロック機構が完全に係合していなくても、センサが「近い」と判定して点灯する。これが最も危険である。乗員は脚が確実にロックされたと信じて着陸するが、着陸荷重で脚が折れ畳まれるおそれがある。 ・隙間が広すぎる…実際にロックしていても点灯しない。不要な遅延と着陸のやり直しを招くが、危険という意味では前者に劣る。 非対称なリスクである。 【したがって点検すべきこと】 ・ダウンロック機構の摩耗とがた…オーバーセンタ・リンク、フック、ローラ、ピン。がたが大きければ、荷重下で位置がずれる。 ・リギング寸法…規定の位置関係が保たれているか。 ・センサとターゲットの隙間…専用のギャップ・ゲージ(非磁性材)で測定し、規定値に調整する。 ・ターゲットの変形、脱落、センサの取付けの緩み。 ・指示灯そのもの…球切れ、ランプ・テストによる確認。 【この考え方の一般性】「指示は状態を示すが、状態の健全性を保証しない」という原則は、脚に限らない。ドアの閉表示、リバーサの格納表示、フラップの位置指示も同様である。指示を鵜呑みにせず、機構を確認する習慣が必要である。 【根拠・出典】運航整備(降着装置)

発動機全60問中 8問を掲載

問17
ターボファン・エンジンの始動時に監視すべき事項として、最も重要度が高いものはどれか。
  • 1機内照明の明るさ
  • 2タイヤ空気圧
  • ✔EGT(排気ガス温度)の上昇率と最高値
  • 4窓の曇り
  • 5客室温度
解説:【正解】3「EGT(排気ガス温度)の上昇率と最高値」 【結論】始動時はEGTの上昇率と最高値の監視が最も重要である。 【なぜEGTか】始動は、エンジンにとって最も過酷な局面の一つである。 ・回転数が低く、圧縮機からの空気流量が少ない。冷却が不十分である。 ・燃料と空気の混合が不安定である。 この状態で燃料が過多になれば、燃焼温度が急上昇し、タービン部が瞬時に損傷する。EGTは、この危険を直接示す唯一のパラメータである。したがって始動中は、EGT計から目を離さない。 【監視すべき異常】 ・ホット・スタート…EGTが限界を超える、あるいは急上昇する。原因は燃料過多、空気流量の不足、始動時の追い風。直ちに燃料を遮断する。判断が数秒遅れれば、高価なタービン部品を損傷する。 ・ハング・スタート…着火はしたが、回転数がアイドルまで上がらず停滞する。この間EGTは上昇傾向となる。原因はスタータの出力不足、供給空気の圧力・流量不足、燃料制御の不良。限界に達する前に燃料を遮断する。 ・ノー・スタート(着火しない)…規定時間内に着火しなければ燃料を遮断し、ドライ・モータリングでテールパイプ内の残留燃料を排出する。残留したまま再始動すれば、テールパイプ火災に至る。 【併せて監視するもの】N2の立ち上がり(規定回転数で燃料を投入する)、N1の追随、潤滑油圧の立ち上がり、始動所要時間、振動、燃料流量。 【スタータのデューティ・サイクル】連続作動時間と冷却時間の制限を守る。過熱は巻線・軸受の損傷とクラッチの焼損を招く。 【異常時の共通対応】直ちに燃料を遮断する。躊躇しないことが損傷を最小にする。 【根拠・出典】運航整備(エンジン始動)
問18
エンジンの外部目視点検(ウォークアラウンド)で、ファン・ブレード前縁に発見された小さな打痕(ニック)について、最も適切な対応はどれか。
  • 1テープで覆って飛行する
  • 2報告せず記録もしない
  • 3整備士の判断でヤスリを用いて任意に成形する
  • ✔整備マニュアルの損傷許容限界と修理基準に照らして判定し、必要な処置を行う
  • 5直ちに運航を継続してよい
解説:【正解】4「整備マニュアルの損傷許容限界と修理基準に照らして判定し、必要な処置を行う」 【結論】整備マニュアルの損傷許容限界と修理基準に照らして判定し、必要な処置を行う。 【なぜ小さな打痕が問題か】ファン・ブレードは高速回転し、大きな遠心力と繰返し荷重を受ける。前縁の小さな打痕(ニック)や欠け(ダメージ)は、そこが鋭い切欠きとなって応力集中を生じ、高サイクル疲労の起点となる。放置すれば亀裂が進展し、ブレードの破断に至る。ブレードが破断すれば、激しい不釣合いと、破片によるエンジンと機体の損傷を招く。 【判定の要素】整備マニュアルには、 ・位置…前縁か後縁か、翼根からの距離、翼幅方向の位置。応力の高い部位ほど許容が厳しい。 ・深さ、長さ、面積。 ・累積…既に修理された箇所との距離、1枚あたりの許容数。 これらに応じた許容限界と、修理(ブレンド)の可否が定められている。 【ブレンド修理】許容範囲内であれば、規定の形状(滑らかなテーパ)と工具、仕上げにより、切欠きを除去して応力集中を緩和する。 ・任意の成形は認められない。形状が不適切なら応力集中が残る、あるいは翼型が崩れる。 ・除去量が翼型の許容を超えないことを確認する。 ・複数枚に及ぶ場合、質量分布の変化が振動に影響するため、必要に応じて対称位置の処理やトリム・バランスを行う。 ・実施内容と位置を記録する。以後の点検で重点観察対象となる。 【認められないこと】無処置での運航、テープで覆う、記録しない。いずれも疲労破壊の起点を残す。 【FODの予防】エプロンのFODウォーク、ツール・コントロール、携行品の管理。多くのニックは吸い込んだ異物による。 【根拠・出典】運航整備(発動機点検)
問19
エンジン潤滑油の油量点検(オイル・レベル・チェック)を行う一般的なタイミングとして、最も適切なものはどれか。
  • 1エンジン停止直後から長時間経過した後
  • 2始動直前のモータリング中
  • 3エンジン運転中
  • 4点検時期は問わない
  • ✔エンジン停止後、整備マニュアルに定める所定時間内
解説:【正解】5「エンジン停止後、整備マニュアルに定める所定時間内」 【結論】エンジン停止後、整備マニュアルに定める所定時間内に点検する。 【なぜ時間が問題になるか】ガスタービンの潤滑系統はドライサンプ方式である。運転中、油はタンクからプレッシャ・ポンプで各軸受へ送られ、スカベンジ・ポンプでタンクへ戻される。停止すると、 ・系統内に残った油が、重力により少しずつ移動する。機種により、サンプからタンクへ戻り続ける場合と、逆にタンクからサンプへ落ちる場合がある。 ・運転中に泡立っていた油の気泡が消え、見かけの体積が減る。 このため、停止からの経過時間により油面が変化する。規定時間内であれば、その時間における油面と実際の油量の関係が把握されているため、正しく判定できる。 【時間を外れた場合】整備マニュアルの規定手順(一般にドライ・モータリングを行い、油を規定の分布に戻してから点検する)に従う。「だいたいこのくらい」で補給すれば、過多または不足となる。 【補給の過多も問題】油量が多すぎれば、 ・ブリーザから吹き出し、油消費として現れる。 ・攪拌損失が増え、油温が上昇する。 不足はもちろん潤滑不良を招く。どちらも避けなければならない。 【補給時の注意】 ・指定された銘柄・規格の油を使用する。 ・異なる規格との混合可否を必ず確認する。合成油は規格ごとに添加剤が異なり、任意の混合はスラッジ生成やシール劣化を招く。 ・フィラーキャップを確実に締結し、施錠を確認する。緩みは飛行中の油の喪失に直結する。 ・補給量を記録する。 【消費傾向の監視】運転時間あたりの補給量を記録し、傾向を追う。急増はシール劣化や内部漏れを示唆する。ETOPSでは特に厳格な監視が求められる。 【根拠・出典】運航整備(潤滑系統)
問20
エンジンのFOD(Foreign Object Damage)を防止するための措置として、適切でないものはどれか。
  • ✔作業中に不要となった小部品は機体近傍に一時的に置いておく
  • 2工具・部品の持込み数と持出し数を照合する(ツール・コントロール)
  • 3帽子・筆記具など飛散しやすい携行品を管理する
  • 4ランプ・エプロンのFODウォークを実施する
  • 5作業後にカウルやインテークの内部を点検する
解説:【正解】1「作業中に不要となった小部品は機体近傍に一時的に置いておく」 【結論】不要となった小部品を機体近傍に一時的に置くことは、FODの直接的な原因となる。 【FODとは】Foreign Object Damage(異物による損傷)である。エンジンが吸い込んだ異物がファン・ブレードや圧縮機翼を損傷する。タイヤが踏んで損傷することもある。損傷したブレードは疲労破壊の起点となり、また修理・交換に多額の費用と機体の停留を要する。 【なぜ機体近傍への仮置きが危険か】エンジンの吸込み気流は極めて強い。地上に置かれた小部品、工具、キャップ、ウエス、ボルトは、簡単に吸い上げられる。また他機のジェット・ブラストや風によって移動し、エプロン上を転がって別の機体に吸い込まれることもある。「自分の作業の近くだから安全」とはならない。 【有効なFOD防止策】 ・FODウォーク…ランプ・エプロンを人が並んで歩き、目視で異物を拾う。定期的に実施する。 ・ツール・コントロール…工具の持込み数と持出し数を照合する。シャドーボード(工具の形が描かれた収納板)により、欠けている工具が一目で分かる仕組み。 ・作業後の残置物確認…カウルやインテーク内部、パネル内部を確認する。 ・携行品の管理…帽子、筆記具、名札、携帯電話。飛散しやすいものは固定するか持ち込まない。 ・部品と包装材の管理…取り外した部品は速やかに容器へ収める。包装材、テープ、ウエスも同様である。 ・排水口とドレンの管理。 【FODの発見時】異物を発見したら拾って処分するだけでなく、どこから来たのかを考える。特定の作業や機材に起因していれば、傾向として対策できる。 【損傷の疑いがある場合】ファン・ブレードと圧縮機前段を点検し、許容基準に照らして判定する。 【根拠・出典】運航整備(FOD防止)
問21
ターボファン・エンジンにおいて、逆推力装置を作動させる際の一般的な制限として正しいものはどれか。
  • 1対地速度に関係なく最大逆推力を維持してよい
  • ✔接地後に作動させ、規定の速度以下でアイドル・リバースに戻す
  • 3飛行中の作動が推奨される
  • 4接地前から作動させてよい
  • 5作動後は点検不要である
解説:【正解】2「接地後に作動させ、規定の速度以下でアイドル・リバースに戻す」 【結論】逆推力装置は接地後に作動させ、規定の速度以下でアイドル・リバースに戻す。 【なぜ接地後か】飛行中の作動は、機体の制御喪失に直結する。片側だけが展開すれば強いヨーイング・モーメントが生じ、また揚力分布が乱れる。このためWOW(対地・空中判定)信号やスロットル位置と連動した多重のインタロックが設けられている。整備作業でリバーサを扱う際も、この安全機構を理解しておく必要がある。 【なぜ低速で戻すのか】逆推力は排気を前方斜めへ吹き出す。対地速度が下がると、 ・排気ガスが機体の前方に留まり、エンジンが自らの高温排気を吸い込む(リインジェスチョン)。推力の変動、EGTの上昇、サージを招く。 ・排気により舞い上げられた異物(砂、小石、雪、水)を吸い込む。FODとなる。 ・視界を悪化させる(雪や砂の巻き上げ)。 このため、規定速度(機種により60ノット前後)以下でアイドル・リバースへ戻す運用が定められている。 【カスケード式とターゲット式】 ・カスケード式…バイパス流をブロッカ・ドアで塞ぎ、カスケード(格子状の翼列)で前方斜めへ偏向する。高バイパス比エンジンでは推力の大部分をファン気流が占めるため、これで十分な逆推力が得られる。現在の主流。 ・ターゲット(クラムシェル)式…排気全体を椀状の板で受け止めて反転させる。低バイパス比エンジンで用いられる。 【整備上の安全】展開状態で作業する際は、規定のロックアウト(安全ピン、ロッド、ストラット)を装着し、操縦室に警告タグを掲示する。油圧・空気圧をかけたままの保持や人力での保持は、重大な挟まれ災害を招く。 【地上試験】排気の方向、周囲の退避、作動時間と推力設定の制限を守る。 【根拠・出典】運航整備(逆推力装置)
問22
エンジン・カウル(ナセル)の開閉作業における注意として、適切でないものはどれか。
  • 1作業終了後に工具や部品の残置がないことを確認する
  • 2ホールド・オープン・ロッドを確実に固定する
  • ✔時間短縮のためラッチの確認は代表箇所のみとする
  • 4風速が強い日はカウルの開放に注意する
  • 5閉鎖時にラッチが全数確実に掛かっていることを確認する
解説:【正解】3「時間短縮のためラッチの確認は代表箇所のみとする」 【結論】強風時のカウル開放には注意を要し、風速条件の確認とホールド・オープン・ロッドの確実な固定が必要である。 【なぜ強風が危険か】エンジン・カウルは大きな面積を持つ。開いた状態で風を受ければ、 ・突然煽られて全開方向へ叩きつけられ、ヒンジ、ラッチ、カウル本体を損傷する。 ・作業者が挟まれる、あるいは叩かれて負傷する。 ・カウルが破損すれば、修理費用と機体の停留を招く。 実際に、強風下でのカウル開放による損傷と負傷が発生している。 【守るべき事項】 ・風速条件の確認…整備マニュアルには、開放可能な風速の限界が定められている場合がある。 ・ホールド・オープン・ロッド(支持棒)の確実な固定…開いた位置で保持する。取付けが不完全なら、カウルが落下する。 ・機体の向き…可能なら風下側で作業する、あるいは機体の向きを変える。 ・作業終了後、速やかに閉じる。 【閉鎖時の最重要事項】ラッチが全数、確実に掛かっていることを確認する。「代表箇所のみ」の確認は認められない。カウル・ラッチの未固定は、飛行中のカウル脱落という重大事象に直結する。脱落したカウルは、後方の構造やエンジンに損傷を与え、地上へ落下する。実際にこの事象が繰り返し発生しており、確認手順の徹底が求められている。 【確認の工夫】ラッチの位置は目視しにくいことが多い。かがんで下から見る、手で触れて確認する、複数人で確認するといった方法が採られる。「見たつもり」を避ける仕組みが必要である。 【作業終了時の総合確認】工具と部品の残置、配線・配管の状態、ラッチの全数締結、記録。 【根拠・出典】運航整備(地上取扱い)
問23
燃料タンクのウォータ・ドレン(水抜き)作業に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1採取した燃料は必ずタンクへ戻す
  • 2水抜きは不要である
  • ✔給油後、水が沈降するのに十分な時間を置いてから最低部のドレンから採取する
  • 4給油直後に行うのが最も効果的である
  • 5水は燃料と混ざるため検出できない
解説:【正解】3「給油後、水が沈降するのに十分な時間を置いてから最低部のドレンから採取する」 【結論】給油後、水が沈降するのに十分な時間を置いてから、最低部のドレンから採取する。 【なぜ時間が必要か】水は燃料より比重が大きいため、静置すればタンク最低部に沈む。しかし給油直後は、注入の勢いで燃料と水が撹拌され、水滴が浮遊した状態にある。この状態でドレンから採取しても、底部に集まっていない水は検出できない。規定の沈降時間(機種と条件により、数十分程度)を置くことで、水が最低部に集まり、確実に採取できる。 【水がなぜ問題か】 ・エンジンの停止…燃料に代わって水が送られれば燃焼できない。 ・氷結によるフィルタ閉塞…高高度の低温で溶存水分や遊離水が凍り、燃料の流れを妨げる。 ・タンク内面の腐食…水と燃料の界面で局部腐食が進行する。 ・微生物の繁殖…水と燃料の界面で微生物が繁殖し、スラッジを形成する。フィルタ目詰まり、燃料量計の誤指示、腐食を招く。 【採取と確認】 ・透明な容器に採取する。静置して、底に水の層(界面)が見えないかを確認する。 ・水検知ペーストや水検知カプセルを用いる方法もある。 ・色とにおいで燃料種別も確認する。誤給油の検出。 ・異物、沈殿物、スラッジの有無。 【採取燃料の扱い】タンクへ戻さない。水や異物を含む可能性があるためである。規定の方法で処分する。 【実施のタイミング】飛行前点検の項目である。また給油後、燃料補給を受けた後、長期駐機の後は特に重要である。寒冷地では氷結防止添加剤の管理も併せて行う。 【複数のドレン】タンクには複数のドレン点がある。機体の姿勢により最低部が変わるため、規定の全箇所から採取する。 【根拠・出典】運航整備(燃料系統)
問24
エンジン潤滑油を補給する際の注意として、適切でないものはどれか。
  • 1異なる規格の油との混合可否を確認する
  • 2指定された銘柄・規格の油を使用する
  • 3補給量を記録し、油消費傾向を監視する
  • ✔在庫の都合により規格の異なる油を任意に混合する
  • 5オイルタンクのフィラーキャップを確実に締め、施錠を確認する
解説:【正解】4「在庫の都合により規格の異なる油を任意に混合する」 【結論】在庫の都合により規格の異なる油を任意に混合してはならない。 【なぜ混合が危険か】航空エンジンの潤滑油は、基油と多数の添加剤(酸化防止剤、清浄分散剤、極圧添加剤、消泡剤)の組合せで設計されている。異なる規格の油を混ぜると、 ・添加剤同士が反応し、スラッジや沈殿を生じる。これが油通路やフィルタを詰まらせる。 ・添加剤の効果が相殺され、想定した性能(酸化安定性、清浄性、油膜保持)が得られない。 ・シール材との適合性が変わり、劣化や膨潤を招く。 ・粘度特性が変化する。 いずれも、混ぜた直後には分からず、時間の経過とともに不具合として現れる。 【混合可否の確認】整備マニュアルには、混合が認められる組合せと、認められない組合せが明示されている。同じ規格内でも銘柄が異なれば制限がある場合がある。必ず確認する。やむを得ず異種の油を入れた場合は、規定に従い抜取り、洗浄、フィルタ交換等の措置を行い、記録する。 【補給時のその他の注意】 ・指定された銘柄・規格を使用する。 ・補給量を記録し、油消費傾向を監視する…運転時間あたりの補給量の急増は、シール劣化、内部漏れ、ブリーザ詰まりを示唆する。ETOPSでは特に厳格な監視が求められる。 ・フィラーキャップを確実に締結し、施錠を確認する…緩みは飛行中の油の喪失に直結する。カウルを閉じる前の最終確認項目である。 ・こぼれた油の清拭…滑って転倒する、あるいは後の点検で漏れと誤認する。 ・点検のタイミング…停止後の所定時間内。時間を外れた場合は規定手順で油面を安定させる。 【油の状態も見る】色、においの異常、金属粉の混入。 【根拠・出典】運航整備(潤滑系統)

電子装備品・電気計器全59問中 8問を掲載

問25
地上電源(GPU)を航空機に接続する際の一般的な手順として、最も適切なものはどれか。
  • 1給電状態のままプラグを接続する
  • 2接地は不要である
  • ✔電圧・周波数が規定値であることを確認し、機側スイッチを切った状態でプラグを接続してから給電する
  • 4接続後に電圧を任意に調整する
  • 5電圧・周波数を確認せず接続する
解説:【正解】3「電圧・周波数が規定値であることを確認し、機側スイッチを切った状態でプラグを接続してから給電する」 【結論】電圧・周波数が規定値であることを確認し、機側スイッチを切った状態でプラグを接続してから給電する。 【なぜ無通電で接続するのか】通電状態でプラグを抜き差しすると、 ・接点でアークが発生し、接点を損傷する。損傷した接点は接触抵抗が増え、発熱と電圧降下を招く。 ・機上の電子機器に電圧サージを与え、損傷させるおそれがある。 ・作業者の感電と火傷の危険。 したがって、接続は無通電で行い、確実に嵌合してから給電する。取外しも同様に、給電を止めてからプラグを抜く。 【電圧・周波数の確認】 ・交流…115V/200V、400Hz、三相。相回転も正しいこと。相回転が逆であれば三相モータが逆転する。 ・直流…28V(機種により14V)。極性が正しいこと。 規定と異なる電源を接続すれば、機上機器を破壊する。特に直流の極性逆接続は、接続の瞬間にダイオードや電子機器を破壊する。「短時間だから」という理由は成り立たない。 【接続の確実さ】プラグは所定の位置まで確実に挿入する。半挿しは接触不良によるアークと発熱を招く。多くのコネクタには、正しく挿入されたことを示す機構やインタロックがある。 【地上電源を使う理由】バッテリーのみで長時間機器を作動させると、過放電により容量低下と寿命短縮を招き、最悪の場合エンジン始動不能となる。地上作業では地上電源またはAPU電源を用いるのが原則である。 【GPUの管理】供給する電圧・周波数の安定性、ケーブルとプラグの損傷、接地、そして機材自体の点検(制動装置、油漏れ)。GPUによる機体への接触も、グラウンド・ダメージの一因である。 【使用後】速やかに取り外し、扉やカバーを閉じる。 【根拠・出典】運航整備(地上電源)
問26
サーキット・ブレーカがトリップした場合の一般的な取扱いとして、最も適切なものはどれか。
  • 1無視して運航する
  • 2定格の大きいブレーカに交換する
  • 3テープで押し込んだ状態に固定する
  • ✔原因を確認したうえで、規定に従い原則1回のみリセットを試み、再度トリップした場合はリセットしない
  • 5直ちに何度でもリセットしてよい
解説:【正解】4「原因を確認したうえで、規定に従い原則1回のみリセットを試み、再度トリップした場合はリセットしない」 【結論】原因を確認したうえで、規定に従い原則1回のみリセットを試み、再度トリップした場合はリセットしない。 【トリップが意味すること】サーキット・ブレーカは、配線が許容する電流を超えたときに回路を遮断する。すなわちトリップは、その回路に異常があったという明確な信号である。偶然でも寿命でもない。 【なぜ繰返しリセットが危険か】短絡や地絡が生じている場合、リセットするたびにその箇所で大電流が流れ、アークが発生する。アークは被覆を炭化させ、炭化層が導電路となって隣接配線へ損傷が拡大する(アーク・トラッキング)。数回のリセットで、配線束全体の焼損と機内火災に至るおそれがある。実際に、繰返しリセットが火災につながった事例がある。 【規定の取扱い】 ・飛行中…その回路が飛行の安全に必要なものであれば、規定に従い1回のみリセットを試みることが認められる場合がある。焦げた臭いや煙があればリセットしない。 ・地上…原因を調査してから対応する。 ・再度トリップしたら、リセットせず不具合として記録・処置する。 【厳禁事項】 ・定格の大きいブレーカへの交換…過電流が流れても切れなくなり、配線が先に焼ける。 ・テープや異物で押し込んで固定する…保護が完全に失われる。この行為による火災が実際に発生している。 ・原因を確認せずに何度もリセットする。 【原因の調査】配線図をもとに、短絡、地絡、過負荷、機器の内部異常を切り分ける。導通試験と絶縁抵抗試験を用いる。 【整備作業でのコリング】作業のためブレーカを引き抜く場合は、識別できるタグを装着し、引抜き数を記録して復旧を管理する。復旧漏れは次の便で機能喪失として現れる。 【根拠・出典】運航整備(電気系統)
問27
航空機の酸素系統を取り扱う際の注意として、適切でないものはどれか。
  • 1油脂類の付着を厳に避ける
  • 2作業前に清浄な工具と手を用いる
  • 3バルブは急激に開かず徐々に開く
  • 4所定の航空機用酸素を使用する
  • ✔潤滑のため一般のグリースを塗布する
解説:【正解】5「潤滑のため一般のグリースを塗布する」 【結論】酸素系統に一般のグリースや油を塗布してはならない。 【なぜ厳禁か】高圧の酸素は、油脂類と接触すると急激な酸化反応を起こす。断熱圧縮による温度上昇が加われば、発火・爆発に至る。通常の大気中では問題にならない油分でも、高濃度・高圧の酸素中では激しく燃焼する。これは化学的な必然であり、「少量なら」という例外はない。 【守るべき事項】 ・油脂類の付着を厳に避ける…工具、手、ウエス、作業台。油の付いた手で酸素系統の部品に触れない。 ・作業前に、清浄な工具と手で行う…専用の工具を用意し、油分のない状態を保つ。 ・潤滑が必要な場合は、酸素系統専用の適合品のみを用いる…酸素と反応しない特殊な潤滑剤が指定されている。一般のグリースは絶対に使わない。 ・バルブは急激に開かず徐々に開く…急開すると下流の気体が断熱圧縮され、局所的に高温となる。これが油分や異物と反応すれば発火する。 ・所定の航空機用酸素を使用する…医療用や工業用とは純度と水分含有量が異なる。水分は低温で凍結し、系統を閉塞させる。 【化学式酸素発生器】客室用に用いられる。塩素酸ナトリウム等の化学反応で酸素を発生させる使い切りの装置で、作動時に高温となる。輸送・保管時は安全ピン等で不用意な作動を防ぐ。過去に、期限切れの発生器が安全措置なしに貨物搭載され、機内火災により多数の犠牲者を出した事故がある。 【点検事項】圧力(温度補正を伴う)、有効期限、漏れ、マスクとホースの状態、供給の作動。 【根拠・出典】運航整備(酸素系統)
問28
ATCトランスポンダのモードCが提供する情報はどれか。
  • ✔識別コードと気圧高度情報
  • 2進行方向のみ
  • 3燃料残量
  • 4対地速度
  • 5識別コードのみ
解説:【正解】1「識別コードと気圧高度情報」 【結論】モードCは、識別コードに加えて気圧高度情報を応答する。 【トランスポンダのモード】 ・モードA…識別コード(スコーク・コード、4桁の8進数)のみを応答する。管制官が個々の機体を識別できる。 ・モードC…モードAの情報に加え、気圧高度を応答する。高度は1013.25hPa基準の気圧高度であり、機上のQNH設定とは無関係である。管制側で必要な補正を行う。 ・モードS…個別のアドレス(機体ごとに固有)による選択呼出しが可能である。特定の機体だけに質問できるため、電波の輻輳が軽減される。またデータリンク機能を持ち、ADS-B Outの送信にも用いられる。TCASの機能にも不可欠である。 【なぜ高度情報が重要か】管制官が水平位置だけでなく高度も把握できることで、垂直方向の間隔設定が可能となる。また高度情報はTCASの動作の基礎でもある。相手機の高度が分からなければ、衝突の危険を判定できない。 【高度情報の源】エンコーディング・アルティメータまたはエア・データ・コンピュータから供給される。したがって静圧系統の健全性が、送信される高度の正確さに直結する。静圧孔の閉塞や周辺の平滑性の乱れは、管制に誤った高度を伝えることになる。 【地上での注意】地上で不用意にモードCで送信すると、管制のレーダ画面に不要なターゲットを表示させ、また近傍を飛行する機のTCASに影響を与えるおそれがある。地上ではスタンバイまたはグラウンド・モードとし、整備上の試験は規定の手順(アンテナへのカプラ使用、テスト・モード、関係機関との調整)に従う。 【整備上の着眼点】アンテナの取付けとシール、同軸ケーブル、静圧系統。 【根拠・出典】航法・監視装置
問29
ELT(航空機用救命無線機)に関する記述として誤っているものはどれか。
  • 1衝撃を検知して自動的に作動する型式がある
  • ✔電池には有効期限がなく交換は不要である
  • 3406MHzで衛星経由の遭難信号を送信するものがある
  • 4121.5MHzは現場での捜索用ホーミング信号に用いられる
  • 5誤作動時は速やかに停止し、関係機関へ通報する必要がある
解説:【正解】2「電池には有効期限がなく交換は不要である」 【結論】ELTの電池には有効期限があり、期限到来時や規定時間以上作動させた場合は交換が必要である。「無交換でよい」は誤りである。 【ELTの役割】墜落等の衝撃を検知して自動的に作動し、遭難信号を発信する。捜索救難機関が位置を特定するための最後の手段である。 【周波数と役割】 ・406MHz…衛星(COSPAS-SARSAT)経由で遭難信号を送信する。デジタル信号に機体の識別情報を含み、GPS位置情報を送信できる型式もある。世界中どこでも受信され、精度の高い位置が得られる。 ・121.5MHz…現場での捜索用ホーミング信号。捜索機や捜索隊が電波の方向を頼りに接近するために用いる。 両者は補完的である。衛星で大まかな位置を特定し、現場でホーミングにより絞り込む。 【自動作動】Gスイッチ(衝撃検知)により、規定の加速度を検知すると自動的に作動する。したがって取付けの向きが指定と異なれば、実際の墜落時に作動しないおそれがある。取付けの向きは必ず指定に従う。 【電池の管理】 ・有効期限…電池には期限が定められ、本体に表示される。期限を過ぎれば、必要なときに規定時間の発信ができない。 ・累積作動時間…規定時間以上作動させた場合も交換が必要である。誤作動や試験による作動も累積する。 ・記録による管理。 【誤作動時の対応】速やかに停止し、関係機関へ通報する。放置すれば無用な捜索活動を招く。硬い着陸、地上での衝撃、整備作業中の誤操作により作動することがある。 【試験の注意】発信を伴う試験は、定められた時間帯(毎時最初の5分間など)に短時間で行う。事前の調整が求められる場合もある。 【根拠・出典】運航整備(救命無線機)
問30
航空機のバッテリーを取り外す際の一般的な手順として、最も適切なものはどれか。
  • 1端子を同時に外す
  • 2プラス端子から外し、取付け時もプラス端子から接続する
  • 3順序は任意でよい
  • ✔マイナス(アース)端子から外し、取付け時はプラス端子から接続する
  • 5通電したまま端子を外す
解説:【正解】4「マイナス(アース)端子から外し、取付け時はプラス端子から接続する」 【結論】取外しはマイナス(アース)端子から先に外し、取付け時はプラス端子から接続する。 【なぜこの順序か】機体構造は接地(アース)されており、バッテリーのマイナス端子と電気的に繋がっている。 ・取外し時…マイナス端子を先に外せば、バッテリーと機体構造の接続が切れる。その後にプラス端子を外す際、工具が誤って機体構造に触れても、回路が成立しないため短絡しない。 ・逆に、プラス端子を先に外そうとすると…その工具が機体構造に触れた瞬間、バッテリーのプラスから工具、機体構造、マイナス端子へと大電流が流れる。強烈なアークが発生し、工具が溶け、火傷と目の損傷、そしてバッテリーからのガス噴出や爆発を招くおそれがある。 ・取付け時…逆順である。プラス端子を先に接続し、最後にマイナス端子を接続する。最後の接続の瞬間まで、回路が成立しない状態を保つ。 【この原則の一般性】自動車を含め、直流電源を扱うすべての場面で共通する原則である。「アース側を最後に繋ぎ、最初に外す」と覚える。 【併せて守る事項】 ・作業前にバッテリー・スイッチを切る。 ・火気厳禁…バッテリーからは水素が発生する。爆発性である。 ・工具の絶縁…端子付近では、絶縁された工具を用いる。 ・保護具…電解液は硫酸(鉛蓄電池)または水酸化カリウム(ニッケル・カドミウム)であり、皮膚と眼に有害である。 ・重量…航空機用バッテリーは重い。腰を痛めないよう、適切な姿勢と補助具を用いる。 【取付け後】端子の締結、腐食防止処置、固縛の確実さ、機能確認。緩みは接触抵抗の増大による発熱と、振動による損傷を招く。 【根拠・出典】運航整備(電気系統)
問31
航空機の外部灯火のうち、右翼端に装備される航行灯(ポジション・ライト)の色として正しいものはどれか。
  • 1青
  • 2白
  • ✔緑
  • 4黄
  • 5赤
解説:【正解】3「緑」 【結論】右翼端の航行灯は緑色である。 【航行灯の配置と色】 ・左翼端…赤(Red) ・右翼端…緑(Green) ・尾部…白(White) この配置は国際的に統一されており、船舶の航海灯と同じ約束である。 【なぜこの配置か】他機から見たとき、その機体がどちらを向いているかを判断するためである。 ・相手機の赤と緑の両方が見える…正面から近づいてくる。最も注意を要する。 ・緑だけが見える…相手機の右側面を見ている。相手は自分の右から左へ進んでいる。 ・赤だけが見える…相手機の左側面を見ている。 ・白だけが見える…相手機の後方から追いついている。 灯火の見え方から、相対的な運動を推定できる。夜間の見張りにおける基本である。 【覚え方】右舷が緑、左舷が赤。船舶と共通であり、「右手に緑」と対応づける方法がある。 【衝突防止灯(アンチコリジョン・ライト)】航行灯に加えて装備が求められる。赤色の回転灯またはストロボ(白色)で、明滅により遠方からの視認性を高める。エンジン始動前から機体が動く可能性のある間、点灯される。地上作業者にとっては「エンジンが始動する、または機体が動く」という予告であり、点灯を確認したら危険区域から退避する。 【その他の外部灯火】着陸灯、タキシー灯、翼端照射灯(着氷確認用)、ロゴ灯。 【整備上の点検】点灯と明るさ、レンズの割れ・曇り・変色(視認距離の低下)、取付けの緩みとシール(浸水)、規定の発光色。着陸灯は地上で長時間点灯すると過熱するため、確認は短時間にとどめる。 【根拠・出典】航空法第60条、施行規則第132条の2
問32
アビオニクス機器の冷却(アビオニクス・クーリング)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 1ラックの通気口は塞いでよい
  • 2冷却は不要である
  • 3冷却は与圧系統が兼ねるため点検不要である
  • ✔冷却ファンやエア・ダクトにより機器を冷却し、フィルタの目詰まりや排気口の閉塞に注意する
  • 5機器は高温ほど信頼性が上がる
解説:【正解】4「冷却ファンやエア・ダクトにより機器を冷却し、フィルタの目詰まりや排気口の閉塞に注意する」 【結論】冷却ファンやエア・ダクトにより機器を冷却し、フィルタの目詰まりや排気口の閉塞に注意する。 【なぜ冷却が必要か】アビオニクス機器は動作に伴い発熱する。温度が上がれば、 ・半導体の特性が変化し、誤動作を招く。 ・部品の寿命が急速に短くなる。一般に、温度が10℃上がると寿命が半減するといわれる。 ・はんだ接合部の熱疲労が進む。 したがって冷却は快適性の問題ではなく、機能と寿命に直結する要件である。 【冷却の構成】アビオニクス・ベイでは、ファンで空気を循環させ、ラックを通して機器を冷却し、熱交換器で熱を捨てる(外気、あるいは空調空気と熱交換する)。機器によっては個別に冷却空気が導かれる。空調系統の一部として構成されることもある。 【点検すべき事項】 ・フィルタの目詰まり…埃、繊維くず、油分の付着。定期的な清掃・交換が必要である。目詰まりすれば風量が落ち、温度が上がる。 ・ダクトの外れ、破れ、つぶれ…冷却空気が機器に届かなくなる。作業でダクトを外した後、復旧を忘れることがある。 ・排気口と通気口の閉塞…ラックの通気口を物品で塞がない。機器の周囲に十分な空間を確保する。 ・ファンの作動と異音…軸受の劣化は風量低下と異音として現れる。 ・過熱警報系統の作動。 【症状としての現れ方】冷却不足は、機器が高温になる特定の条件下でのみ不具合が出る形で現れる。「地上では正常だが飛行中のみ」「長時間運用すると発生する」といった断続的な不具合の背後に、冷却の問題が隠れていることがある。 【作業時の配慮】取り外したダクト、フィルタ、カバーを確実に復旧する。 【根拠・出典】運航整備(アビオニクス)