エンジン本体全48問中 4問を掲載
問14サイクルガソリン・エンジンの行程順序として適切なものは次のうちどれか。
- 1吸入 → 燃焼 → 圧縮 → 排気
- 2排気 → 圧縮 → 吸入 → 燃焼
- 3圧縮 → 吸入 → 排気 → 燃焼
- ✔吸入 → 圧縮 → 燃焼(膨張) → 排気
- 5吸入 → 排気 → 圧縮 → 燃焼
解説:【正解】4「吸入 → 圧縮 → 燃焼(膨張) → 排気」
【順序】吸入 → 圧縮 → 燃焼(膨張・爆発) → 排気
【各行程で何が起きるか】
① 吸入:吸気バルブが開き、ピストンが下降して混合気(または空気)を吸い込む
② 圧縮:両バルブが閉じ、ピストンが上昇して混合気を圧縮する。温度と圧力が上がる
③ 燃焼:圧縮上死点付近で点火し、燃焼ガスの圧力がピストンを押し下げる。ここだけが動力を生む
④ 排気:排気バルブが開き、ピストンが上昇して燃焼ガスを押し出す
【クランク2回転で1サイクル】各行程が180°ずつ、合計720°である。この「2回転で1サイクル」という点が、多くの計算の前提になる。
・吸入空気量=行程容積×(回転速度÷2)
・1気筒あたりの点火回数=回転速度÷2
・出力の式でも(N÷2)が現れる
【動力を生むのは1行程だけ】4行程のうち膨張行程だけが仕事をする。残りの3行程は、他気筒の力かフライホイールの慣性で乗り切っている。単気筒で回転が不安定なのはこのためである。
【2サイクルとの違い】2サイクルはクランク1回転で1サイクルを完了する。毎回転で燃焼するため出力を大きくしやすいが、掃気時に新気が吹き抜けるため燃費と排出ガスで不利になる。
【実際のバルブ・タイミング】理論上は各行程がちょうど180°だが、実際は吸気バルブが上死点前に開き下死点後に閉じるなど、慣性を利用するために前後にずらしてある。
問2圧縮比を表す式として適切なものは次のうちどれか。ただしVsを行程容積、Vcを燃焼室容積とする。
- 1Vc / Vs
- 2Vs × Vc
- ✔(Vs + Vc) / Vc
- 4Vs / Vc
- 5(Vs + Vc) / Vs
解説:【正解】3「(Vs + Vc) / Vc」
【正しい式】ε=(Vs+Vc)÷Vc
Vs:行程容積(ピストンが上死点から下死点まで動く間に掃過する容積)
Vc:燃焼室容積(ピストンが上死点にあるときのシリンダ内容積)
【式の意味】ピストンが下死点にあるときの全容積を、上死点にあるときの容積で割った比である。「どれだけ圧縮するか」を表す。
【最も多い誤り】Vs÷Vc としてしまうこと。分子には燃焼室容積を加える必要がある。行程容積450cm³、燃焼室容積50cm³なら
・正:(450+50)÷50=10
・誤:450÷50=9
1だけずれる。
【逆算の式】Vc=Vs÷(ε−1)。この形も頻出である。導出は
ε×Vc=Vs+Vc → Vc(ε−1)=Vs → Vc=Vs÷(ε−1)
【圧縮比が高いことの意味】
・利点:膨張比も大きくなり、熱効率が向上する
・欠点:圧縮端の温度と圧力が上がり、ノッキングが起こりやすくなる
この相反をどう解決するかが技術の焦点である。直噴化による気化冷却、可変バルブ・タイミング、精密なノック制御により、近年は高圧縮比化が進んでいる。
【一般的な値】自然吸気ガソリンで9〜13程度。過給エンジンは低め、ディーゼルは15〜23と高い。
【実務での応用】面研やガスケット厚の変更は燃焼室容積を変えるため、圧縮比に直接影響する。
問3ノッキングに関する記述として不適切なものは次のうちどれか。
- 1点火時期を過度に進角させると発生しやすい
- 2オクタン価の低いガソリンを使用すると発生しやすい
- 3圧縮比を高くすると発生しやすい
- 4冷却水温が高いと発生しやすい
- ✔混合気が過濃(リッチ)なときに最も発生しやすい
解説:【正解】5「混合気が過濃(リッチ)なときに最も発生しやすい」
【ノッキングとは】点火プラグからの火炎が到達する前に、燃焼室末端の未燃ガスが自己着火する現象である。急激な圧力上昇が衝撃波となり、金属的な打音として聞こえる。
【なぜ起きるか】火炎が伝播する間、末端の未燃ガスは圧縮され続けて温度が上がる。火炎が届く前に自己着火の温度に達すると、一斉に燃焼する。
【促進する要因】
・圧縮比が高い
・点火時期が進みすぎている
・オクタン価の低い燃料
・吸気温度・筒内温度が高い(冷却系の不調、過給、デポジットの蓄熱)
・混合気が薄い(燃焼速度が遅く、末端ガスが長く圧縮される)
・高負荷・低回転(充填量が多く、火炎伝播に時間がかかる)
【抑制する対策】
・点火時期の遅角(ノック・センサによる制御)
・オクタン価の高い燃料
・EGRによる燃焼温度の低下
・デポジットの除去
・冷却の改善、インタクーラの活用
【誤りやすい記述】「圧縮比を高くするとノッキングを抑制できる」は誤りである。圧縮比を上げると圧縮端の温度と圧力が上がり、むしろ起こりやすくなる。
【放置した場合の被害】ピストンの溶損、リングの折損、ベアリングの損傷。金属音は軽く聞こえても、内部では激しい衝撃波が発生している。
【過早着火との違い】ノッキングは点火「後」に末端ガスが自己着火する現象。過早着火は点火「前」に高温部が着火させる現象である。
問4ピストン・リングの主な作用として不適切なものは次のうちどれか。
- 1熱伝導作用
- 2オイル制御作用
- 3燃焼ガスの吹き抜けを防ぐ作用
- ✔ピストンの回転を防止する作用
- 5気密作用(シール作用)
解説:【正解】4「ピストンの回転を防止する作用」
【ピストン・リングの3つの作用】
① 気密作用:燃焼ガスがクランクケースへ漏れるのを防ぐ(コンプレッション・リング)
② 熱伝導作用:ピストンが受けた熱をシリンダ壁へ伝え、冷却水へ逃がす
③ オイル制御作用:シリンダ壁の油膜を適量に調整する(オイル・リング)
【②が見落とされやすい】ピストンは燃焼ガスに直接さらされて高温になるが、直接冷却されていない。受けた熱の大部分は、リングを通じてシリンダ壁へ伝わり、冷却水に吸収される。リングが固着したり摩耗したりすると、この熱の逃げ道が細くなり、ピストンが過熱する。
【③の重要性】油膜が厚すぎるとオイル消費が増え、薄すぎると焼付く。オイル・リングは余分な油をかき落とし、適度な油膜を残す役割を持つ。
【リングの構成】一般に3本
・トップ・リング:主に気密
・セカンド・リング:気密の補助とオイル制御
・オイル・リング:オイル制御が主
【誤りやすい記述】「動力を発生する」「燃料を霧化する」といった、リングの役割ではないものが選択肢に入る。
【摩耗・固着による症状】
・圧縮漏れ(圧縮圧力の低下、出力低下、始動不良)
・ブローバイの増加
・オイル上がり(青白煙、オイル消費の増大)
・ピストンの過熱
【点検】圧縮圧力とウェット・テスト、合口すき間の測定、ブローバイ量の確認を組み合わせる。
燃料装置全22問中 4問を掲載
問5ガソリンの理論空燃比(ストイキオメトリック)として最も近い値は次のうちどれか。
- 1約17.0 : 1
- 2約9.0 : 1
- 3約20.5 : 1
- ✔約14.7 : 1
- 5約12.5 : 1
解説:【正解】4「約14.7 : 1」
【理論空燃比とは】燃料が過不足なく完全燃焼するのに必要な、空気と燃料の質量比である。ガソリンでは約14.7:1。
【意味】燃料1kgを完全に燃やすには、空気14.7kgが必要ということである。体積で考えると、空気は非常に軽いため膨大な量になる。
【なぜこの値が重要か】三元触媒の浄化率が最も高くなるのが、この付近のごく狭い範囲だからである。
【三元触媒の要求】
・COとHCを酸化する → 酸素が必要
・NOxを還元する → 酸素を奪う必要がある
この2つを同時に成立させられるのは、酸素が過不足ない理論空燃比付近だけである。この狭い範囲をウインドウという。
【だからフィードバック制御が必要】O2センサやA/Fセンサで排気中の酸素を検出し、噴射量を絶えず補正する。理論空燃比を挟んで濃い・薄いを繰り返しながら、平均を14.7に保っている。
【他の重要な空燃比】
・最大出力空燃比:12〜13程度(やや濃い)。燃焼速度が最も速い。また濃くすることで燃焼温度が下がり、部品の熱害も防げる
・最良燃費空燃比:16程度(やや薄い)。燃料の無駄が少ない
【運転条件による使い分け】
・全開加速:出力を優先し濃くする(このとき触媒の浄化率は落ちる)
・定常走行:理論空燃比でフィードバック
・減速時:燃料カット
【計算への応用】燃料8kgを燃やすのに必要な空気は 8×14.7=117.6kg である。
問6電子制御式燃料噴射装置において、インジェクタからの噴射量を主に決定する要素は次のうちどれか。
- ✔バルブの開弁時間(噴射パルス幅)
- 2排気管の長さ
- 3インジェクタの噴口径のみ
- 4冷却水の流量
- 5燃料タンクの残量
解説:【正解】1「バルブの開弁時間(噴射パルス幅)」
【基本的な決定要素】インジェクタの開弁時間(噴射パルス幅)である。
【なぜ時間で決まるか】インジェクタは、燃圧が一定に保たれていれば、開いている時間に比例した量を噴射する。したがって
噴射量 ∝ 開弁時間
となる。ECUはこの時間を制御することで噴射量を決めている。
【燃圧が一定である前提】プレッシャ・レギュレータが、吸気管圧力との差圧を一定に保つ。これにより、吸気管の負圧が変化しても噴射量が変わらない。
【なぜ差圧を一定にするか】インジェクタは吸気管内へ噴射する。吸気管が負圧なら噴射しやすく、大気圧に近ければ噴射しにくい。差圧を一定にすれば、この影響を排除できる。
【基本噴射量の決め方】
・吸入空気量(エア・フロー・メータ)または吸気管圧力と回転速度(速度密度方式)
・これに理論空燃比を掛けて必要な燃料量を求める
【補正の要素】
・水温(冷間増量)
・吸気温(密度補正)
・スロットル開度の変化(加速増量)
・O2/A/Fセンサによるフィードバック
・学習値
・バッテリ電圧(低いとインジェクタの開弁が遅れるため、その分を補正する)
【診断への応用】データ・ストリームで噴射パルス幅を確認すると、ECUがどれだけの燃料を要求しているかが分かる。規定より長ければ「空気が余分」か「燃料が不足」を示す。
問7プレッシャ・レギュレータの役割として適切なものは次のうちどれか。
- 1燃料温度を一定に保つ
- 2燃料ポンプの回転速度を制御する
- ✔インジェクタ前後の差圧を一定に保つ
- 4燃料タンク内を加圧する
- 5燃料中の水分を分離する
解説:【正解】3「インジェクタ前後の差圧を一定に保つ」
【役割】燃料の圧力を一定に保つ。
【なぜ一定にする必要があるか】インジェクタの噴射量は、開弁時間と燃圧で決まる。ECUは開弁時間だけを制御しているため、燃圧が変動すると噴射量が狂う。
【従来の方式(リターン式)】インジェクタと同じ燃料レールに取り付け、吸気管負圧を導く。
・吸気管圧力との「差圧」を一定に保つ
・余剰の燃料はリターン配管でタンクへ戻す
【なぜ差圧を一定にするか】インジェクタは吸気管内へ噴射する。噴射先の圧力が変われば、同じ燃圧でも噴射量が変わってしまう。差圧を一定にすればこの影響を排除できる。
【近年の方式(リターンレス式)】タンク内のポンプ・モジュールにレギュレータを組み込み、大気圧との差で一定圧に保つ。
・リターン配管が不要になり、コストと重量を削減できる
・タンク内の燃料温度の上昇を抑えられる(戻り燃料が熱を持ち込まない)
・蒸発ガスの発生を抑えられる
・吸気管圧力の影響は、ECUが噴射時間で補正する
【故障の症状】
・燃圧が高すぎる → 噴射量が過多になり、混合気が濃くなる。黒煙、燃費悪化、プラグのくすぶり
・燃圧が低すぎる → 噴射量が不足し、薄くなる。出力低下、高負荷時の息つき
・保持できない → 停止後に燃圧が抜け、高温時の再始動が困難になる
【点検】燃圧計を接続し、規定値と比較する。またポンプ停止後の圧力低下速度も確認する。
問8電動式燃料ポンプの吐出圧力が規定より低い場合に生じる現象として適切なものは次のうちどれか。
- 1アイドリングのみ不安定になる
- 2燃料消費率が必ず向上する
- ✔高負荷時に燃料不足となり出力が低下する
- 4点火時期がずれる
- 5混合気が濃くなり黒煙が出る
解説:【正解】3「高負荷時に燃料不足となり出力が低下する」
【燃圧が低いとどうなるか】インジェクタの開弁時間が同じでも、噴射される燃料の量が減る。混合気が薄くなる。
【症状の現れ方】
・アイドリングは比較的正常なことが多い(要求量が少ないため)
・高負荷や高回転で息つき、出力不足が顕著になる
・加速時の息つき
・登坂で速度が伸びない
【なぜ高負荷で顕著か】要求される燃料量が多いほど、供給能力の不足が表面化する。アイドリングでは必要量が少ないため、能力が落ちていても足りてしまう。
【ECUの補正と限界】O2センサが薄いと検出すれば、ECUは開弁時間を延ばして補正する。しかし
・補正には限界がある
・全開時は開弁時間の余裕がなくなる(デューティ100%に近づく)
・学習値が増量側に大きく偏る
【原因】
① 燃料フィルタの詰まり
② 燃料ポンプの能力低下(経年、モータの摩耗)
③ ポンプへの供給電圧の低下(配線、リレー、接触抵抗)
④ プレッシャ・レギュレータの不良(戻しすぎ)
⑤ 燃料の残量不足、配管の詰まり
【③の見落とし】ポンプ自体は正常でも、電圧が低ければ回転が落ちて吐出量が減る。ポンプ端子での電圧を測定する価値がある。
【点検方法】
・燃圧計を接続し、アイドリング時と高負荷時の圧力を測る
・ポンプ停止後の圧力保持を確認する
・ポンプ端子の電圧を測定する
【診断の型】「高負荷でのみ症状が出る」なら供給能力を疑う。これは燃料、点火、空気のいずれにも当てはまる考え方である。
排出ガス全26問中 4問を掲載
問9三元触媒(TWC)が浄化する成分の組合せとして適切なものは次のうちどれか。
- 1CO・NOx・PM
- 2HC・CO2・H2O
- 3CO・HC・CO2
- ✔CO・HC・NOx
- 5HC・NOx・SOx
解説:【正解】4「CO・HC・NOx」
【浄化する3成分】CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)。この3つを同時に処理するため「三元」と呼ぶ。
【それぞれの反応】
・CO → 酸化してCO2にする(酸素が必要)
・HC → 酸化してCO2とH2Oにする(酸素が必要)
・NOx → 還元してN2にする(酸素を奪う)
【最大の技術的課題】酸化には酸素が要り、還元には酸素を奪う必要がある。相反する反応を同時に成立させなければならない。
【解決策:理論空燃比での運転】酸素が過不足ない状態でのみ、両方が成立する。この狭い範囲を「ウインドウ」という。
【だからフィードバック制御が必要】O2センサやA/Fセンサで排気中の酸素を検出し、噴射量を絶えず補正する。理論空燃比を挟んで濃い・薄いを繰り返し、平均を14.7に保つ。
【酸素吸蔵能力(OSC)】触媒に含まれるセリアなどが、酸素を一時的に蓄えたり放出したりする。これにより、わずかな空燃比の変動を吸収し、浄化率を保っている。この能力の低下が触媒劣化の判定に使われる。
【CO2は浄化対象ではない】CO2は完全燃焼の結果であり、有害成分ではない。ただし温室効果ガスであるため、燃費の改善が求められる。
【活性温度】概ね300℃以上でないと十分に機能しない。始動直後の対策として、点火時期の遅角や二次空気の導入が行われる。
【貴金属】白金、パラジウム、ロジウムが用いられる。ロジウムが主にNOxの還元を担う。
問10EGR装置の主な目的として適切なものは次のうちどれか。
- ✔NOxの低減
- 2HCの低減
- 3COの低減
- 4PMの低減
- 5燃料消費率の悪化防止のみ
解説:【正解】1「NOxの低減」
【目的】NOx(窒素酸化物)を低減する。
【NOxが生成される条件】燃焼室内の温度が高いほど生成される。空気中の窒素と酸素が、高温下で反応するためである。おおよそ1,800K(約1,500℃)を超えると急激に増える。
【EGRの原理】排気の一部を吸気へ戻す。
① 排気は既に燃焼済みで、酸素をほとんど含まない
② これが混合気に混ざると、燃焼に関与しない不活性なガスが増える
③ 同じ発熱量が、より多くのガスを暖めることになる
④ 結果として燃焼最高温度が下がる
⑤ NOxの生成が抑えられる
【副次的な効果:ポンプ損失の低減】ガソリン・エンジンでは、EGRを導入した分だけスロットルを開けられる。吸気の絞りが減るためポンプ損失が小さくなり、燃費が改善する。
【EGR率の限界】多すぎると
・燃焼が不安定になり、失火する
・HCが増える
・出力が低下する
運転条件に応じた最適な率が制御されている。
【作動しない条件】
・冷間時(燃焼が不安定になるため)
・アイドリング時
・全開加速時(出力を優先するため)
これらは正常な制御である。
【故障の症状】
・開き固着 → アイドリング不調、失火、出力低下
・閉じ固着 → NOxの増加、ノッキングしやすくなる
【デポジット】排気が通るため、すすやカーボンが堆積して固着しやすい。清掃が有効な場合がある。
問11ブローバイ・ガス還元装置(PCV)に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1ブローバイ・ガスを排気管へ導く
- 2燃料タンクの蒸発ガスを処理する
- 3ブローバイ・ガスを大気に放出する
- 4排気ガスを吸気に再循環させる
- ✔ブローバイ・ガスを吸気系に戻して再燃焼させる
解説:【正解】5「ブローバイ・ガスを吸気系に戻して再燃焼させる」
【ブローバイ・ガスとは】ピストン・リングのすき間から、燃焼室からクランクケースへ漏れ出るガスである。未燃焼混合気、燃焼ガス、オイル・ミストを含む。
【なぜ処理が必要か】
① 大気へ放出すればHCの排出になる(法規制されている)
② クランクケース内に溜まると内圧が上がり、シールから油漏れを招く
③ 水分や酸性成分がオイルを劣化させ、スラッジの原因になる
【PCVの仕組み】クランクケース内のガスを吸気系へ導き、再び燃焼させる。
・PCVバルブ:吸気管負圧に応じて流量を調整する
・新気導入経路:エア・クリーナ側からクランクケースへ新気を入れ、換気を促す
【なぜ流量調整が必要か】
・アイドリング時:吸気管負圧が大きい。全開で吸うと混合気が乱れるため、流量を絞る
・高負荷時:負圧が小さい。ブローバイも多いため、流量を増やす
PCVバルブがこの調整を行う。
【詰まった場合の症状】
・クランクケース内圧の上昇 → オイル・シールからの漏れ、レベル・ゲージの押し出し
・オイルの劣化促進(スラッジ、乳化)
・オイル消費の増加
【開きすぎ(固着)の症状】アイドリング時に余分な空気が入り、回転が不安定になる。二次空気の吸い込みと同じ症状である。
【ブローバイ量の増加】リングやシリンダの摩耗を示唆する。フィラ・キャップを外して吹き返しを見る簡易的な確認方法がある。
問12チャコール・キャニスタに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1吸入空気中のごみを除去する
- 2冷却水中の錆を除去する
- 3エンジン・オイル中のスラッジを除去する
- 4排気ガス中のPMを捕集する
- ✔燃料タンク内で発生した蒸発ガス(HC)を活性炭に吸着させる
解説:【正解】5「燃料タンク内で発生した蒸発ガス(HC)を活性炭に吸着させる」
【役割】燃料タンク内で発生した蒸発ガス(燃料の蒸気)を、活性炭に吸着して大気への放出を防ぐ。
【なぜ必要か】ガソリンは揮発性が高い。タンク内では常に蒸発しており、温度上昇でさらに増える。これを大気へ放出すればHCの排出となり、法規制の対象である。
【活性炭の働き】微細な孔を無数に持ち、表面積が極めて大きい。ここに燃料の分子が物理的に吸着される。
【パージ(脱離)】吸着したままでは容量が飽和する。適切な運転条件下で、吸気管負圧を利用して活性炭から燃料を脱離させ、吸気系へ導いて燃焼させる。
【パージの制御】パージ・バルブ(VSV)をECUが制御する。
・パージすると混合気が濃くなるため、空燃比制御と協調させる必要がある
・アイドリング時や冷間時はパージを制限する(燃焼が乱れるため)
・一定の運転条件が整ったときに実行する
【リーク診断】OBDは、この系統に漏れがないかを診断する。加圧または減圧して、圧力が保持されるかを見る。
【最も多いDTCの原因】燃料キャップの締め忘れ、またはシールの劣化である。系統が密閉されないため漏れと判定される。
【その他の故障】
・キャニスタの破損、詰まり
・ホースの亀裂、外れ
・パージ・バルブの固着(開いたままなら常時パージされ、アイドリングが不安定になる)
【給油時の注意】給油口を開けたままにすると系統が開放される。給油後は確実にキャップを締める。
電子制御全32問中 4問を掲載
問13ジルコニア式O2センサに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1排気温度を電圧に変換して検出する
- ✔混合気が濃いとき約0.8〜1Vの起電力を発生する
- 3混合気が薄いとき約0.8〜1Vの起電力を発生する
- 4低温時に最も正確な起電力を発生する
- 5抵抗値の変化で空燃比を検出する
解説:【正解】2「混合気が濃いとき約0.8〜1Vの起電力を発生する」
【原理】ジルコニア(二酸化ジルコニウム)は高温になると、両側の酸素濃度に差があるとき起電力を発生する性質を持つ。センサの内側は大気(酸素濃度約21%)、外側は排気ガスに接している。この濃度差が電圧となって現れる。
【出力の特性】理論空燃比を境に急激に電圧が変化する。
・混合気が濃い(排気中の酸素が少ない)→ 濃度差が大きい → 約0.8〜0.9V
・混合気が薄い(排気中に酸素が残る)→ 濃度差が小さい → 約0.1V
【なぜ急激に変化するか】理論空燃比では酸素がちょうど使い切られる。わずかでも濃ければ酸素はゼロに近く、わずかでも薄ければ酸素が残る。この境目で出力が飛ぶように変わるため、理論空燃比の検出には適しているが、どれくらい濃い/薄いかという量は測れない。
【活性温度】概ね300℃以上でないと起電力を発生しない。始動直後は機能しないため、ヒータで早期に加熱する。ヒータ回路はセンサ素子とは別系統である。
【正常な波形】フィードバック制御中は0.1〜0.9Vの間を周期的に往復する。1秒間に数回の切り替わりが正常な状態である。
【異常の判定】
・0.45V付近で動かない → 活性していない、劣化、断線
・変化が遅い → 応答低下(触媒の診断にも影響する)
・常に高い/低い → 実際に空燃比が偏っている可能性もある
【被毒】シリコン、鉛、リン、硫黄などが表面に付着すると感度が落ちる。不適切なシール剤やオイル消費が原因になる。
問14熱線式(ホットワイヤ式)エア・フロー・メータの特徴として不適切なものは次のうちどれか。
- 1吸入空気の質量流量を直接検出できる
- 2吸入空気温度による補正が原則として不要である
- ✔脈動の大きい領域でも誤差が全く生じない
- 4高度(大気圧)が変化しても補正が不要である
- 5可動部がないため応答性が良い
解説:【正解】3「脈動の大きい領域でも誤差が全く生じない」
【原理】発熱体(白金線または薄膜)を一定温度に保つよう電流を流す。空気が流れると熱が奪われるため、温度を維持するのに必要な電流が増える。この電流量から空気の流量を求める。
【最大の利点:質量流量を直接検出できる】
・空気の密度は温度と気圧で変わる。同じ体積でも、寒い日や標高の低い場所では質量が多い。
・燃料の量は「空気の質量」に対して決めるべきである。
・熱線式は、奪われる熱量が質量流量に対応するため、温度や気圧の補正をほとんど必要としない。
【他方式との比較】
・フラップ式(可動ベーン式):機械的に空気の力で羽根を動かす。体積流量を測るため密度補正が必要。応答も遅い。
・カルマン渦式:渦の発生周波数から体積流量を測る。同様に補正が必要。
・Dジェトロニック(速度密度方式):吸気管圧力と回転速度から推定する。直接計測ではない。
【弱点:汚れに敏感】発熱体にオイル・ミストやほこりが付着すると、熱が伝わりにくくなる。すると「空気が少ない」と誤検出し、燃料が不足してリーン側に偏る。
【自己清浄機能】エンジン停止後に発熱体を高温にして付着物を焼き切る機能を持つものがある。
【点検】データ・ストリームの吸入空気量が妥当かを確認する。アイドリング時の理論値と大きく乖離していれば汚れや故障を疑う。専用クリーナでの清掃が有効な場合がある。
問15スロットル・ポジション・センサの主な機能として適切なものは次のうちどれか。
- 1燃料圧力を検出する
- 2クランク角度を検出する
- 3吸入空気量を直接計測する
- ✔スロットル・バルブの開度を電気信号に変換する
- 5冷却水温を検出する
解説:【正解】4「スロットル・バルブの開度を電気信号に変換する」
【機能】スロットル・バルブの開度を電気信号(電圧)としてECUへ伝える。
【原理】可変抵抗(ポテンショメータ)方式が一般的である。基準電圧5Vを抵抗体で分圧し、摺動子の位置に応じた電圧を出力する。全閉で約0.5V、全開で約4.5Vといった特性を持つ。
【なぜ0Vと5Vにしないか】断線や短絡を判別するためである。正常時は0.5〜4.5Vの範囲にあるので、0Vなら断線か短絡、5Vなら短絡と判断できる。
【この信号の用途】
・運転者の要求(加速したいのか、減速したいのか)の判断
・加速増量補正、減速時の燃料カット
・アイドル判定(全閉スイッチの役割)
・点火時期の補正
・ATの変速制御(負荷の判断)
【典型的な不具合】抵抗体の局所的な摩耗による信号の欠落。特定の開度で一瞬0Vに落ちる。
・定常測定では発見できない(全閉と全開だけ測っても正常)
・全域をゆっくり動かしながらオシロスコープで波形を観察する必要がある
・その開度を通過する瞬間に息つきやショックが出る
【非接触式】ホール素子を用いた非接触式は摺動部がないため摩耗しない。電子制御スロットルでは複数系統を備え、相互に監視している。
【診断の型】センサは「値」だけでなく「変化の連続性」を確認する。
問16ノック・センサに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1点火二次電圧の低下で検出する
- 2排気温度からノッキングを判定する
- ✔圧電素子でシリンダ・ブロックの振動を検出する
- 4冷却水温の変化で検出する
- 5筒内圧力を直接測定する
解説:【正解】3「圧電素子でシリンダ・ブロックの振動を検出する」
【原理】圧電素子(ピエゾ素子)を用いる。ノッキング特有の振動(一般に数kHz〜十数kHz)を受けると、素子が変形して電圧を発生する。
【なぜ特定の周波数か】ノッキングによる衝撃波は、燃焼室の形状と大きさで決まる固有の周波数を持つ。ECUはこの周波数帯だけを抽出し、通常の機械振動と区別している。
【制御の流れ】
① センサが振動を検出
② ECUが点火時期を遅角させる(ノッキングを回避)
③ ノッキングが収まれば徐々に進角させ、最適な点火時期に戻していく
この繰り返しにより、常にノッキング限界の直前で運転できる。
【この制御の意義】
・燃料のオクタン価がばらついても対応できる
・デポジットの堆積や気温の変化にも追従する
・結果として、より高い圧縮比を採用でき、熱効率を高められる
【センサ不良の影響】ノッキングを検出できないため、
・保護のため点火時期を一律に遅角させる制御になる(出力と燃費が低下する)
・または遅角されずノッキングが継続し、ピストンの溶損などに至る
車種により対応が異なる。
【取付け上の注意】締付けトルクが規定されている。緩いと振動が正しく伝わらず、締めすぎると素子を損傷する。座面の異物も検出精度に影響する。
【診断】DTCの有無と、実際にノッキング音がしているかを併せて確認する。センサが正常でも、燃料や冷却系の問題で実際にノッキングしている場合がある。
点火装置全20問中 4問を掲載
問17点火時期の進角に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1エンジン回転速度が高くなるほど遅角させる必要がある
- 2進角量は回転速度に関係なく一定でよい
- ✔エンジン回転速度が高くなるほど進角させる必要がある
- 4負荷が小さいときほど遅角させる必要がある
- 5進角させるほど必ず出力が増加する
解説:【正解】3「エンジン回転速度が高くなるほど進角させる必要がある」
【なぜ進角が必要か】混合気に着火してから最大圧力に達するまでには、一定の「時間」がかかる。数msのオーダーである。この時間はほぼ一定なので、回転速度が上がるほど早い「角度」で点火しなければ間に合わない。
【数値で確認】
・3,000min⁻¹ → 1回転20ms。30°は約1.67ms
・6,000min⁻¹ → 1回転10ms。30°は約0.83ms
同じ角度でも、高回転では時間が半分になる。だから角度を増やす(進角する)必要がある。
【最適な点火時期】最大圧力が上死点後10〜15°付近で発生するのが最も効率的とされる。
・上死点前に最大圧力が来ると、ピストンを押し戻す力になる
・遅すぎると、膨張が始まってから燃えるため仕事に変換されにくい
【MBT】最大トルクが得られる最小の進角である。これより進めても出力は増えず、ノッキングのリスクだけが増す。
【進角量を決める要素】
・エンジン回転速度:高いほど進角
・負荷:低負荷では進角、高負荷では遅角(ノッキング対策)
・水温:冷間では進角することがある
・ノック・センサの信号:ノッキングを検出したら遅角
・EGR率:EGRが多いと燃焼が遅くなるため進角
【進角しすぎの弊害】ノッキングが発生する。ピストンの溶損やリングの折損に至る。
【遅角しすぎの弊害】出力と燃費が低下し、排気温度が上昇する。触媒やバルブへの熱害を招く。
【始動直後の意図的な遅角】触媒を早期に暖めるため、あえて遅角して排気温度を上げる制御がある。
問18スパーク・プラグの熱価に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1熱価が高いプラグは焼け型で放熱しにくい
- ✔熱価が高いプラグは冷え型で放熱しやすい
- 3熱価が低いほど高負荷連続運転に適する
- 4熱価は電極間のギャップ寸法を表す
- 5熱価はプラグのねじ径を表す
解説:【正解】2「熱価が高いプラグは冷え型で放熱しやすい」
【熱価とは】プラグが受けた熱を、どれだけ逃がしやすいかを表す指数である。
・熱価が高い=冷え型:放熱しやすく、電極温度が上がりにくい
・熱価が低い=焼け型:放熱しにくく、電極温度が上がりやすい
【放熱性を決めるもの】主に碍子脚部の長さである。
・脚が短い → 熱の伝達距離が短く、放熱しやすい(冷え型)
・脚が長い → 燃焼ガスに触れる面積が大きく、放熱しにくい(焼け型)
【自己清浄温度】電極温度が概ね450〜500℃以上になると、付着したカーボンが焼き切られる。この温度に達しないとカーボンが堆積し、絶縁が低下して失火する(くすぶり)。
【許容温度の上限】概ね800〜900℃を超えると、電極が過早着火の起点になる。
【つまり適切な温度範囲がある】この範囲に収まる熱価を選ぶ必要がある。
【使用条件による選択】
・高速高負荷が多い → 熱価が高い(冷え型)。放熱性を優先する
・低速短距離が多い → 熱価が低い(焼け型)。自己清浄温度に達しやすくする
【熱価が合わない場合】
・高すぎる(冷えすぎ)→ 自己清浄温度に達せず、くすぶって失火する
・低すぎる(熱すぎ)→ 電極が過熱し、過早着火の起点になる。ピストンの溶損に至ることもある
【焼け具合での判断】
・きつね色 → 適正
・黒くすすけている → 熱価が高すぎる、または混合気が濃い
・白く焼けている、電極が溶けている → 熱価が低すぎる、または混合気が薄い
【原則】メーカ指定の熱価を使用する。安易な変更は重大な損傷を招く。
問19点火二次電圧の波形において、点火電圧(スパーク電圧)が異常に高くなる原因として適切なものは次のうちどれか。
- 1混合気が過濃である
- 2プラグのくすぶり(カーボン付着)
- 3二次側の絶縁不良によるリーク
- 4圧縮圧力の低下
- ✔プラグ・ギャップの過大
解説:【正解】5「プラグ・ギャップの過大」
【点火電圧とは】放電を開始するのに必要な電圧である。二次波形の最初の鋭いピークとして現れる。
【高くなる原因】絶縁破壊に、より高い電圧が必要な状態である。
① プラグ・ギャップの過大:電極の摩耗により隙間が広がる
② 混合気が薄い:気体の絶縁性が高く、放電しにくい
③ 筒内圧力が高い:密度が高いほど絶縁性が上がる(過給、圧縮比の上昇)
④ 高圧コードや接続部の抵抗増大、断線しかけ
⑤ プラグ・キャップの接触不良
【エネルギは一定である】コイルが蓄えたエネルギは決まっている。したがって
・高い電圧で放電すれば、短時間で消費される(放電時間が短くなる)
・低い電圧なら長く続く
電圧と時間は反比例の関係にある。
【逆のパターン(点火電圧が低い)】
・プラグのくすぶり:カーボン付着による絶縁低下
・ギャップが狭い
・混合気が濃い
・圧縮圧力の低下
【診断への応用】この波形から、プラグの状態だけでなく、混合気や圧縮の状態まで推定できる。気筒間で比較すれば、特定気筒の異常が見つかる。
【失火との関係】要求電圧がコイルの発生できる電圧を超えると失火する。ギャップが広がると、高負荷時に余裕がなくなり失火しやすくなる。
【DI方式での測定】高圧コードがないため、専用のアダプタや誘導ピックアップが必要になる。
【実務での価値】部品を外さずに、運転状態のまま各気筒の状態を評価できる効率的な手段である。
問20ダイレクト・イグニッション(DI)方式の特徴として適切なものは次のうちどれか。
- 1点火時期の電子制御ができない
- 2高圧コードが長くなる
- 31つのコイルで全気筒を点火する
- ✔気筒ごとに点火コイルを備え高電圧の配電損失が少ない
- 5ディストリビュータで配電する
解説:【正解】4「気筒ごとに点火コイルを備え高電圧の配電損失が少ない」
【方式】各気筒のプラグに、専用の点火コイルを直結する。ディストリビュータや高圧コードが不要になる。
【従来方式(ディストリビュータ式)】1つのコイルで発生させた高電圧を、ディストリビュータで各気筒へ分配する。
【DIの利点】
① 高電圧の伝達距離が最短:コードやディストリビュータでの電圧降下、リークがない
② 高い二次電圧が得られる:希薄混合気や高圧縮でも確実に着火できる
③ 気筒ごとに独立制御できる:ノック制御を気筒ごとに行える
④ ディストリビュータの機械的な摩耗がない
⑤ 電波ノイズが少ない
⑥ コイルの充電時間を長く取れる:1つのコイルが2回転に1回しか作動しないため、高回転でも十分なエネルギを蓄えられる
【⑥が高回転で重要】ディストリビュータ式では、1つのコイルが全気筒分を担当する。4気筒なら2回転で4回作動するため、高回転では充電時間が不足しやすい。DIならこの制約がない。
【構造】コイルに駆動回路(パワー・トランジスタ)を内蔵するものが多い。ECUからは点火信号だけを送る。
【点検上の注意】
・高圧コードがないため、従来の二次波形測定には専用のアダプタが必要
・コイル単体の抵抗測定では、内蔵回路のため正しく判定できない場合がある
・入れ替えによる切り分けが有効である
【故障の切り分け】失火のDTCが出たら、コイルを隣の気筒と入れ替えてDTCが移動するか確認する。移動すればコイルが原因である。
動弁装置全21問中 4問を掲載
問21バルブ・クリアランスが規定値より大きい場合に生じる現象として適切なものは次のうちどれか。
- 1バルブが密着せず圧縮漏れを生じる
- ✔バルブの開き時期が遅くなり開弁期間が短くなる
- 3バルブの開き時期が早くなり開弁期間が長くなる
- 4バルブ・タイミングは変化しない
- 5バルブ・スプリングが折損する
解説:【正解】2「バルブの開き時期が遅くなり開弁期間が短くなる」
【クリアランスの役割】熱膨張の余裕である。エンジンが暖まるとバルブやロッカ・アームが膨張して伸びる。冷間時にすき間がないと、暖機後にバルブが押され続けて閉じなくなる。
【過大な場合に起きること】
① カムがバルブを押し始めるのが遅れ、閉じるのが早まる → 開弁期間が短くなる
② リフト量も減少する
③ 打音(タペット音)が発生する
④ 吸排気の効率が落ち、特に高回転域の出力が低下する
【過小な場合との対比】
・過小 → バルブが密着せず、圧縮漏れとバルブの焼損を招く。音は出ないため気づきにくい。
・過大 → 音が出るので気づきやすいが、性能は低下する
どちらが危険かといえば過小である。特に排気バルブは元々高温にさらされているため、熱を逃がせないと焼損に至る。
【なぜバルブは熱を逃がせなくなるのか】バルブは、シートに密着したときに傘部の熱をヘッドへ逃がしている。密着しなければ熱の逃げ道が失われる。加えて閉じきらない隙間から高温の燃焼ガスが吹き抜け、傘部を局所的に加熱する。
【測定条件】原則として冷間時に行う。該当気筒を圧縮上死点(吸排気とも閉じてカムがベース円で接している状態)に合わせる。
【調整方法】
・スクリュ式:アジャスト・スクリュとロック・ナットで調整する
・シム式:新シム厚=現シム厚±(実測−規定)で必要厚を求めて交換する
【油圧式ラッシュ・アジャスタ】油圧で自動的にゼロに保つため調整不要。オイルの劣化やエア噛みで打音が出る。
問22OHC(オーバ・ヘッド・カムシャフト)式動弁機構の特徴として適切なものは次のうちどれか。
- 1動弁部品点数がOHV式より必ず多い
- 2プッシュ・ロッドが必ず必要である
- ✔往復運動部分の慣性質量が小さく高速回転に適する
- 4バルブがシリンダ・ブロック側にある
- 5カムシャフトがシリンダ・ブロックにある
解説:【正解】3「往復運動部分の慣性質量が小さく高速回転に適する」
【構造】カムシャフトをシリンダ・ヘッド上に配置し、バルブを直接またはロッカ・アームを介して駆動する方式である。
【OHV(オーバ・ヘッド・バルブ)との比較】
・OHV:カムシャフトはブロック内にあり、プッシュ・ロッドとロッカ・アームを介してバルブを駆動する
・OHC:カムシャフトがヘッド上にあり、駆動経路が短い
【OHCの利点】
① 動弁系の慣性質量が小さい:プッシュ・ロッドがないため、高回転でもバルブが追従しやすい
② バルブ・タイミングの精度が高い:部品が少なく、たわみや遊びによる誤差が小さい
③ 高回転化に有利:サージングやバルブ・ジャンプが起こりにくい
④ 燃焼室形状の自由度が高い:バルブの配置を最適化しやすい
【OHCの欠点】カムシャフトがヘッド上にあるため、クランクからの駆動距離が長い。タイミング・ベルトやチェーンが必要で、その保守が生じる。
【SOHCとDOHC】
・SOHC:カムシャフト1本で吸排気の両方を駆動する
・DOHC:吸気用と排気用に2本を持つ。バルブ挟み角の設計自由度が高く、4バルブ化しやすい
【なぜ高回転化に慣性が効くか】バルブを開閉する力は、質量×加速度である。回転が上がるほど加速度が増すため、質量が大きいと必要な力が急増する。スプリングの力を超えるとバルブが追従できなくなる(バルブ・ジャンプ)。
【現代の主流】高回転高出力と燃焼室形状の最適化を両立するため、DOHC4バルブが標準的である。
問23可変バルブ・タイミング機構(VVT)により低速域で吸気バルブの開時期を遅くする(遅角させる)ことの主な効果として適切なものは次のうちどれか。
- 1オーバラップを大きくして高速出力を上げる
- 2バルブ・リフト量を増やす
- ✔オーバラップを小さくして排気の吹き返しを抑えアイドリングを安定させる
- 4圧縮比を上げる
- 5排気温度を上げる
解説:【正解】3「オーバラップを小さくして排気の吹き返しを抑えアイドリングを安定させる」
【何が変わるか】吸気バルブの開時期を遅らせると、上死点付近でのバルブ・オーバラップが小さくなる。
【オーバラップとは】吸気バルブと排気バルブが同時に開いている期間である。上死点をはさんで生じる。
【低速でオーバラップが大きいと困る理由】
・排気の流速が遅く、慣性による掃気効果が働かない
・むしろ排気が吸気側へ逆流する(吹き返し)
・新気が排気で希釈され、燃焼が不安定になる
・アイドリングが安定しない、HCが増える
【遅角による効果】オーバラップが減るため
・排気の逆流が抑えられる
・アイドリングと低速での燃焼が安定する
・低速トルクが向上する
・HCの排出が減る
【高速域では逆に進角させる】高回転では排気の流速が速く、慣性で新気を引き込む効果(掃気)が有効に働く。オーバラップを大きくすることで充填効率が高まり、高回転域の出力が向上する。
【VVTが解決した相反】従来は「低速安定か高回転出力か」を設計時に選ばざるを得なかった。VVTにより運転条件ごとに最適なタイミングを選べるようになり、両立が可能になった。
【作動の仕組み】油圧でカム・スプロケット内部のアクチュエータを動かし、カムシャフトの位相を変える。オイル・コントロール・バルブ(OCV)が油路を切り替える。
【整備上の注意】油圧で作動するため、オイルの量と状態が直接影響する。指定粘度の厳守と交換時期の管理が重要である。
問24バルブ・スプリングのサージングに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1スプリングが錆びる現象
- 2スプリングが折損して飛散する現象
- 3バルブが座面に密着しない現象
- ✔スプリングの固有振動数とカムの作用周期が共振する現象
- 5スプリングが熱で軟化する現象
解説:【正解】4「スプリングの固有振動数とカムの作用周期が共振する現象」
【サージングとは】バルブ・スプリング自体が固有振動数で共振し、波打つように振動する現象である。
【なぜ起きるか】スプリングは質量とばね性を持つため、固有の振動数がある。カムによる開閉の周期(またはその倍数)がこれと一致すると共振する。
【何が問題か】
① スプリングが波打つと、バルブを押さえる力が瞬間的に不足する
② バルブがカムに追従できず、着座が乱れる(バルブ・ジャンプ、バウンス)
③ 密着不良による圧縮漏れ、バルブとシートの損傷
④ 最悪の場合、スプリングの折損やバルブとピストンの干渉
【対策】固有振動数を分散させ、共振点を作らないようにする。
・不等ピッチ・スプリング:巻きの間隔を変え、部分ごとに固有振動数を変える
・二重スプリング:内外で異なる特性のスプリングを組み合わせ、互いの振動を減衰させる
・円錐(テーパ)スプリング:径を変えることで振動数を分散させる
・軽量化:動弁系全体の慣性を減らし、必要なばね力を下げる
【高回転型で特に重要】回転が上がるほど加振周波数が高くなり、共振点に達しやすい。高回転を狙うエンジンでは必須の対策である。
【ニューマチック・バルブ・スプリング】金属ばねの代わりに気体の圧縮を利用する方式もある。サージングが原理的に生じないため、極めて高い回転数に対応できる。
【整備上の確認】自由長、直角度、セット荷重を測定する。へたりがあると追従性が落ち、共振も起こりやすくなる。
冷却装置全18問中 4問を掲載
問25LLC(ロング・ライフ・クーラント)の主成分として適切なものは次のうちどれか。
- ✔エチレン・グリコール
- 2硫酸
- 3シリコン・オイル
- 4軽油
- 5メタノール
解説:【正解】1「エチレン・グリコール」
【主成分】エチレン・グリコールである。これに防錆剤などの添加剤を加え、水で希釈して使用する。
【エチレン・グリコールの性質】
・水と混ぜると凝固点が下がる(不凍性)
・沸点も上がる
・粘度は水より高い
・比熱と熱伝導率は水より低い
【この最後の性質が重要】濃度を上げすぎると冷却性能が落ちる。「濃いほど安心」ではない。一般に30〜50%の範囲で、地域の最低気温に応じて選定する。
【濃度と凍結温度の目安】
・30% → 約−15℃
・50% → 約−35℃
(製品により異なる)
【添加剤の役割】
・防錆・防食:アルミ、鉄、銅など異種金属の腐食を防ぐ
・キャビテーション侵食の防止
・消泡
・ゴム部品との適合性
【添加剤は消耗する】使用とともに効果が薄れる。これが定期交換の主な理由である。凍結防止性能だけなら長期間保たれるが、防錆性能が失われれば内部が腐食する。
【種類】
・従来型LLC:2年程度で交換
・スーパーLLC(長寿命型):7年程度など、長い交換周期
種類の混用は避け、指定品を使用する。色による識別は目安にすぎない。
【有毒性】エチレン・グリコールは有毒である。甘いにおいがあるため誤飲の危険がある。廃液は適正に処理する。
【点検】比重計または屈折計で濃度を測定する。液量、色、濁り、油分の混入も確認する。
問26サーモスタットに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1冷却水の圧力を一定に保つ
- ✔冷却水温が低いときバイパス通路側へ流し暖機を促進する
- 3冷却水の量を検出する
- 4ラジエータ・ファンを回転させる
- 5冷却水温が低いときにラジエータへ冷却水を流す
解説:【正解】2「冷却水温が低いときバイパス通路側へ流し暖機を促進する」
【役割】冷却水の流れを制御し、エンジンを適正温度に保つ。
【動作】ワックス・ペレット式が主流である。内部のワックスが温度で膨張・収縮し、弁を開閉する。
・低水温:閉じている。冷却水はバイパス経路でエンジン内部のみを循環する
・規定温度:開き始める
・高水温:全開になり、ラジエータへ流れて放熱する
【なぜ低温時に閉じるか】暖機を早めるためである。早く適正温度に達すれば
・冷間増量が早く解除され、燃費が改善する
・オイルの粘度が下がり、摩擦損失が減る
・触媒が早く活性化する
・ヒータが早く効く
【閉じ固着の症状】オーバヒートである。
・上部ホースは熱いが下部ホースが冷たい(ラジエータへ流れていない)
・水温が急上昇する
【開き固着の症状】オーバクールである。
・水温が規定まで上がらない
・暖機が遅く、燃費が悪化する
・ヒータの効きが悪い
【症状が正反対である点が重要】どちらの固着かで、まったく逆の症状になる。
【点検方法】取り外して湯に入れ、温度を上げながら開弁するかを見る。開弁開始温度と全開温度が定められている。
【簡易的な確認】冷間から始動し、上部ホースの温度変化を観察する。暖機完了まで冷たく、その後急に熱くなれば正常である。
【取付け時の注意】ジグル・バルブ(空気抜きの小穴)の向きが指定されている。上向きに取り付けないとエア抜きができない。
問27ラジエータ・キャップのプレッシャ・バルブの作用として適切なものは次のうちどれか。
- 1冷却水の流量を制御する
- 2冷却水の凍結を防止する
- 3冷却水温を一定に保つ
- 4冷却系統を減圧して沸点を下げる
- ✔冷却系統を加圧して冷却水の沸点を上げる
解説:【正解】5「冷却系統を加圧して冷却水の沸点を上げる」
【作用】冷却系内の圧力が規定を超えたとき開き、余剰の冷却水をリザーブ・タンクへ逃がす。
【なぜ加圧するか】液体は圧力が高いほど沸騰しにくい。加圧により沸点を上げ、オーバヒートしにくくする。
【効果の大きさ】約100kPa加圧すれば、水の沸点は約120℃まで上がる。LLCを混合すればさらに高くなる。この余裕が、高負荷時のオーバヒートを防いでいる。
【もう一つのバルブ】バキューム・バルブは、冷却後の負圧で開き、リザーブ・タンクから冷却水を吸い戻す。
【2つのバルブの役割分担】
・プレッシャ・バルブ:温度上昇で膨張した分を逃がす
・バキューム・バルブ:温度低下で収縮した分を吸い戻す
これにより冷却水の総量が保たれる。
【プレッシャ・バルブの不良】
・開弁圧が低い → 十分に加圧されず沸点が上がらない。オーバヒートしやすくなる
・開かない → 圧力が過大になり、ホースやラジエータを損傷する
【バキューム・バルブの不良】戻らないため、リザーブ・タンクだけ満タンでラジエータ側が不足する。「リザーブは十分なのにオーバヒートする」症例の原因になる。またホースが負圧で潰れることもある。
【点検】キャップ・テスタで開弁圧を測定し、規定値と比較する。
【安全上の重大な注意】高温時に開けてはならない。加圧されているため、開けた瞬間に圧力が下がって冷却水が沸騰し、噴出する。重度のやけどを負う。
【劣化】シール部のゴムが経年で硬化する。消耗品として定期的に点検・交換する。
問28電動ラジエータ・ファンの制御に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1エンジン回転速度に比例して回転する
- 2制御はされていない
- 3常時最大回転で作動する
- 4水温にかかわらず一定周期で作動する
- ✔水温やエアコンの作動状況に応じてECUがリレー等を介して制御する
解説:【正解】5「水温やエアコンの作動状況に応じてECUがリレー等を介して制御する」
【制御の基本】水温センサの信号に基づき、ECU(またはサーモ・スイッチ)がファンを作動させる。
【作動の条件】
・冷却水温が規定を超えたとき
・エアコンのコンプレッサが作動したとき(コンデンサの放熱のため)
・車種によっては車速や外気温も考慮する
【なぜエアコンで作動するか】コンデンサはラジエータの前に配置されることが多い。冷媒の放熱には風が必要である。停車中やアイドリングでは走行風がないため、ファンで送風する。
【多段制御】高速と低速の2段階、またはデューティ制御で連続的に回転を変える方式がある。
・必要な分だけ回すことで、消費電力と騒音を抑える
【エンジン停止後の作動】高負荷走行の後、停止後もしばらく回して冷却を継続する制御がある。これは正常な動作である。
・ターボ車やハイブリッド車で一般的
・数分から十数分で自然に停止する
【機械式(ファン・カップリング)との違い】
・機械式:エンジンでベルト駆動される。回転速度はエンジン回転に依存する
・電動式:エンジン回転と独立して制御できる。停止中も作動できる
【故障の切り分け】上流から順に電圧を追う。
① ヒューズ
② リレー(作動音の有無、接点の導通)
③ 水温センサの信号(データ・ストリームで確認)
④ モータ端子への電圧
⑤ モータ本体とアース
④が決定的である。電圧が来ているのに回らなければモータ側、来ていなければ上流である。
【症状】「停車時に水温が上がり、走行すると下がる」ならファン系統を強く疑う。
潤滑装置全17問中 4問を掲載
問29エンジン・オイルの粘度表示「10W-30」の「W」が意味するものは次のうちどれか。
- 1Water(耐水性)
- ✔Winter(低温側の規格)
- 3Weight(重量)
- 4Wear(耐摩耗性)
- 5Wide(適用範囲)
解説:【正解】2「Winter(低温側の規格)」
【Wの意味】Winter(冬)の略である。低温側の粘度グレードを示す。
【表示の読み方】
・10W:低温での粘度特性。数字が小さいほど低温での流動性が良い
・30:高温(100℃)での粘度特性。数字が大きいほど高温で硬い
【マルチグレード・オイル】低温側と高温側の両方の規格を満たすオイルである。粘度指数向上剤により、温度による粘度変化を小さくしている。
【シングル・グレードとの違い】かつては「SAE30」のように1つの数字だけの製品があった。温度による粘度変化が大きく、季節ごとに使い分ける必要があった。
【なぜ両方が必要か】
・低温:粘度が高すぎると、クランキングが重く、油が回るのに時間がかかる。始動直後の摩耗が増える
・高温:粘度が低すぎると、油膜が保持できず焼付く
1つの油で両立させる必要がある。
【低温側の数字と使用可能温度】数字が小さいほど、より低温でも流動する。寒冷地では0Wや5Wが適する。
【指定粘度を守る理由】
・低すぎる → 油圧の低下、油膜切れ、オイル消費の増加
・高すぎる → 始動性の悪化、油路抵抗の増大、燃費悪化
・VVTやラッシュ・アジャスタの作動不良(油圧で動く機構)
【VVT搭載車での重要性】指定粘度から外れると、機構の応答が悪くなる、または作動しない。
【品質規格は別】粘度(SAE)と品質(API、ILSACなど)は異なる指標である。両方を確認する必要がある。
問30オイル・プレッシャが低下する原因として不適切なものは次のうちどれか。
- 1軸受のすき間過大
- 2オイル・ストレーナの詰まり
- 3オイル量の不足
- 4オイルの粘度が低すぎる
- ✔リリーフ・バルブが固着して閉じたままになっている
解説:【正解】5「リリーフ・バルブが固着して閉じたままになっている」
【油圧が低下する原因を4方向で整理する】
【A】油そのものの問題
・量の不足
・粘度の低下(劣化、高温、燃料希釈)
・発泡(入れすぎによる撹拌、エア噛み)
【B】作る側の問題
・オイル・ポンプの摩耗、吐出量の低下
・リリーフ・バルブの開き固着(常に逃がしている)
【C】経路の問題
・ストレーナの詰まり
・オイル・フィルタの詰まり(バイパス・バルブが開けば油は流れるが、濾過はされない)
・油路の詰まり
【D】逃げる側の問題
・軸受のオイル・クリアランス過大(摩耗により隙間が広がる)
・油路からの漏れ
【誤りやすい記述】「リリーフ・バルブが閉じたまま固着している」は油圧が「上がる」原因である。低下の原因ではない。
・開き固着 → 常に逃がすので油圧が下がる
・閉じ固着 → 逃がせないので油圧が上がりすぎる
方向が正反対である。
【燃料希釈】短距離走行の繰り返しや、インジェクタの不良で燃料がオイルに混入する。粘度が下がり油圧が低下する。オイルの量が増え、燃料臭がするのが特徴である。
【診断の順序】
① 油量と状態を確認する(最も簡単で頻度が高い)
② 圧力計で実測する(警告灯だけでは判断できない)
③ 粘度と希釈の有無を確認する
④ 経路の詰まりを疑う
⑤ 軸受のクリアランスを測定する(分解を伴う)
【警告灯の限界】警告灯はごく低い圧力で点灯する設計である。点灯しなくても不足していることがある。
問31エンジン・オイルの油圧を実測する方法として適切なものは次のうちどれか。
- 1警告灯の点灯で判断する
- 2オイルの色で判断する
- 3油量ゲージで判断する
- 4エンジン音で判断する
- ✔油圧スイッチを外し、その位置に圧力計を取り付けて規定回転で測定する
解説:【正解】5「油圧スイッチを外し、その位置に圧力計を取り付けて規定回転で測定する」
【なぜ実測が必要か】油圧警告灯は、ごく低い圧力(数十kPa程度)で点灯する設計である。点灯しなくても、油圧が規定を下回っていることがある。
【実測の方法】
① 油圧スイッチ(プレッシャ・スイッチ)を取り外す
② その穴に油圧計を取り付ける
③ 暖機後、規定の回転速度で測定する
【測定条件が重要】
・油温:油圧は油温で大きく変わる。冷間時は粘度が高く油圧が高め、暖機後は低めに出る。指定された油温で測る
・回転速度:アイドリング時と、規定回転(3,000min⁻¹など)の両方で測る
【判定】規定値と比較する。
・アイドリング時:100kPa以上など
・規定回転時:350〜500kPaなど
車種により異なる。
【油圧が低い場合の切り分け】4方向で整理する。
【A】油そのもの:量不足、粘度低下、燃料希釈、発泡
【B】作る側:ポンプの摩耗、リリーフ・バルブの開き固着
【C】経路:ストレーナやフィルタの詰まり
【D】逃げる側:軸受のオイル・クリアランス過大
【最初に確認すべきこと】油量と状態である。最も簡単で、頻度も高い。
【燃料希釈】短距離走行の繰り返しやインジェクタの不良で燃料が混入する。粘度が下がり油圧が低下する。量が増え、燃料臭がするのが特徴である。
【警告灯だけで判断しない】これが最も重要な点である。実測により、本当に低いのか、検出側の問題かを切り分けられる。
問32オイル・フィルタに内蔵されるバイパス・バルブの役割として適切なものは次のうちどれか。
- 1油圧を高める
- 2オイルの流量を制限する
- ✔エレメントが詰まった際に濾過せずオイルを通し、潤滑の途絶を防ぐ
- 4オイルを濾過する
- 5オイルを冷却する
解説:【正解】3「エレメントが詰まった際に濾過せずオイルを通し、潤滑の途絶を防ぐ」
【役割】フィルタが詰まった場合、または低温で粘度が高く流れにくい場合に開き、フィルタを迂回してオイルを供給する。
【なぜ迂回させるか】濾過されないオイルが流れることになるが、それでも「オイルが全く流れない」よりはるかにましである。潤滑の途絶は数秒で焼付きを招く。安全側の設計である。
【開く条件】フィルタ前後の差圧が規定を超えたときである。
・エレメントの目詰まり
・低温始動時(粘度が高く抵抗が大きい)
【重要な認識】バイパス・バルブが開いた状態では、異物が濾過されずに循環する。摩耗が加速する。定期交換が前提の設計であり、詰まりを放置してよいという意味ではない。
【リリーフ・バルブとの違い】
・バイパス・バルブ:フィルタ部にあり、フィルタを迂回させる。目的は潤滑の確保
・リリーフ・バルブ:オイル・ポンプにあり、油圧が過大なときに逃がす。目的は過圧の防止
役割も位置も異なる。混同しやすい。
【アンチ・ドレン・バック・バルブ】フィルタに内蔵されるもう一つの弁である。エンジン停止中にフィルタ内のオイルが抜けるのを防ぐ。これがないと、始動時に油圧が立ち上がるまで時間がかかる。
【フィルタ交換時の注意】
・Oリングに薄くオイルを塗る(かじり防止と密着性の確保)
・古いOリングが残っていないか必ず確認する(二重装着は漏れの原因)
・手締めしてから規定トルクまたは規定回転角で締める
・始動後に油圧警告灯の消灯と漏れを確認する
【指定品の使用】バイパス・バルブの開弁圧や濾過性能は設計されている。指定品を使用する。
吸排気装置全18問中 4問を掲載
問33ターボチャージャに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1吸入空気を冷却することのみを目的とする
- ✔排気ガスのエネルギでタービンを回して過給する
- 3過給圧が高いほどノッキングは起こりにくくなる
- 4低速域から高速域まで応答遅れは生じない
- 5クランクシャフトの動力で直接駆動される
解説:【正解】2「排気ガスのエネルギでタービンを回して過給する」
【原理】排気のエネルギでタービンを回し、同軸のコンプレッサで吸気を圧縮して押し込む。
【なぜ出力が上がるか】エンジンの出力は、燃焼させられる燃料の量で決まる。燃料を増やすには、それに見合う空気が必要である。過給により空気の密度を上げれば、同じ排気量でもより多くの空気を吸い込める。
【捨てていたエネルギの回収】排気は高温高圧のまま大気へ捨てられていた。この一部を回収するため、機械式過給機(スーパーチャージャ)と違ってエンジンの動力を直接消費しない。
【インタクーラが必要な理由】圧縮すると空気の温度が上がる。温度が上がれば密度は下がるため、せっかくの過給効果が減る。加えて
・吸気温度が高いとノッキングしやすくなる
・燃焼温度が上がりNOxが増える
インタクーラで冷やすことで、これらを改善する。
【ウエスト・ゲート】過給圧が規定を超えると、排気の一部をタービンを迂回させて逃がす。過給圧の上がりすぎはエンジンの損傷を招くため必須の機構である。
【ターボ・ラグ】排気の流量が少ない低回転では過給が効かない。回転が上がるまで応答が遅れる。可変ノズル機構やツイン・ターボで改善する。
【整備上の重要な注意】
・高負荷走行の直後にエンジンを止めると、軸受のオイルが炭化して焼付く。しばらくアイドリングして温度を下げる
・オイル管理が極めて重要である。高温高速で回転する軸受は、オイルの劣化に敏感である
・吸気系の漏れは過給圧の低下として現れる。目視では見つけにくく、加圧試験が有効である
問34吸気管の慣性効果(慣性過給)に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1吸気の脈動は常に有害である
- 2吸気管を長くすると高速域の出力が必ず増す
- 3吸気管を短くすると低速トルクが向上する
- ✔吸気管を長くすると低速域の充填効率が高まりやすい
- 5吸気管長は充填効率に影響しない
解説:【正解】4「吸気管を長くすると低速域の充填効率が高まりやすい」
【原理】吸気バルブが閉じると、管内を流れていた空気が急に止まる。このとき圧力波が発生し、吸気管内を往復する。この圧力波が、次に吸気バルブが開くタイミングで戻ってくると、空気を押し込む効果が得られる。
【なぜ「過給」と呼ぶか】外部から圧縮するわけではないが、結果として大気圧より高い圧力で押し込まれるため、充填効率が100%を超えることがある。
【管の長さと回転数の関係】圧力波が往復する時間は、管の長さと音速で決まる。
・長い管 → 往復に時間がかかる → 低回転で同調する
・短い管 → 往復が速い → 高回転で同調する
【同調しないと逆効果】タイミングが合わないと、圧力波が逆位相で戻り、かえって充填効率を下げることもある。
【設計上の相反】固定長の吸気管では、低速か高速のどちらかに合わせるしかない。
【可変吸気システムによる解決】バルブで経路を切り替える。
・低回転:長い経路を使い、低速トルクを高める
・高回転:短い経路に切り替え、高回転出力を高める
これにより広い回転域で充填効率を確保できる。
【排気側の同調】排気にも同様の効果がある。排気の慣性で排気ポート内に負圧を生じさせ、オーバラップ中に新気を引き込む(掃気効果)。
【等長エキゾースト】各気筒からの排気管長をそろえ、干渉を最適化する設計である。
【整備との接点】吸気系のダクトの外れ、レゾネータの破損は、この設計された流れを乱す。出力低下や異音の原因になる。
問35排気の脈動を利用した排気管の同調(排気慣性効果)に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1排気管の長さは効果に影響しない
- 2低速域でのみ効果がある
- 3排気を遅らせて背圧を高めることが目的である
- 4排気管を短くするほど低速トルクが増す
- ✔排気の圧力波による負圧を排気バルブ付近に到達させ、掃気と充填効率を高める
解説:【正解】5「排気の圧力波による負圧を排気バルブ付近に到達させ、掃気と充填効率を高める」
【原理】排気バルブが開くと、高圧の排気が一気に流れ出る。この流れには慣性があり、バルブが閉じる直前も勢いよく流れ続けている。
【生じる効果】排気が流れ去ることで、排気ポート内に一時的な負圧が生じる。この負圧が、オーバラップ中に吸気側から新気を引き込む(掃気効果)。
【なぜ充填効率が上がるか】
・燃焼室内の残留ガスが押し出される
・その分だけ新気が多く入る
・次のサイクルでより多くの燃料を燃やせる
【同調する回転数】圧力波が往復する時間は排気管の長さで決まる。特定の回転域で効果が最大になる。
【等長エキゾースト】各気筒からの排気管長をそろえる設計である。
・干渉のタイミングがそろい、効果が安定する
・各気筒の排気抵抗が均等になる
・独特の排気音になることでも知られる
【集合部の設計】どの気筒どうしを先に集合させるかも重要である。点火順序を考慮し、排気の干渉が有利に働く組合せを選ぶ。
【4-2-1集合】まず2本ずつ集合させ、次に1本にまとめる。低中速での干渉を有利にする。
【4-1集合】4本を一度に集合させる。高回転向きである。
【オーバラップとの関係】この効果を活かすにはオーバラップが必要である。しかしオーバラップが大きすぎると、低速では排気が吸気側へ逆流する。可変バルブ・タイミングがこの相反を解決する。
【整備との接点】排気漏れがあると、この設計された流れが乱れる。また触媒の詰まりは背圧を上げ、掃気を妨げる。
問36可変吸気システムの目的として適切なものは次のうちどれか。
- 1吸気を浄化する
- 2吸気を冷却する
- 3吸気音を大きくする
- ✔回転域に応じて吸気管長や通路を切り替え、低速トルクと高速出力を両立させる
- 5排気を再循環させる
解説:【正解】4「回転域に応じて吸気管長や通路を切り替え、低速トルクと高速出力を両立させる」
【目的】広い回転域で充填効率を高め、低速トルクと高回転出力を両立させる。
【背景にある物理】吸気管内の圧力波(慣性効果)は、管の長さによって同調する回転数が決まる。
・長い管 → 低回転で同調
・短い管 → 高回転で同調
固定長では、どちらかに合わせるしかなかった。
【可変吸気の仕組み】バルブで吸気経路を切り替える。
・低回転域:長い経路を使う。慣性効果で低速トルクが向上する
・高回転域:バルブを開いて短い経路に切り替える。抵抗が減り、高回転での充填効率が上がる
【切替えの制御】ECUが回転速度と負荷に応じて、負圧アクチュエータまたはモータでバルブを駆動する。
【効果】
・低速トルクの向上:発進や登坂での扱いやすさ
・高回転出力の向上
・燃費の改善(効率の良い領域が広がる)
【類似の技術】
・可変バルブ・タイミング(VVT):バルブの開閉時期を変える
・可変バルブ・リフト:リフト量と作用角を変える
・可変ノズル・ターボ:過給の特性を変える
いずれも「運転条件に応じて最適化する」という同じ思想である。
【故障の症状】バルブが固着すると、切り替わらない領域で出力が落ちる。
・低回転で固着 → 高回転が伸びない
・高回転で固着 → 低速トルクが不足する
【点検】アクティブ・テストでバルブを作動させ、実際に動くか確認する。負圧式なら、ホースの外れやダイヤフラムの破れも確認する。
電装全51問中 4問を掲載
問37鉛バッテリの電解液比重に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1放電が進むほど比重は高くなる
- 2比重は完全充電時に約1.100となる
- 3比重は液温が上がると高くなる
- 4比重は充電状態と無関係である
- ✔放電が進むほど比重は低くなる
解説:【正解】5「放電が進むほど比重は低くなる」
【比重が変化する原理】鉛バッテリは、放電時に極板の活物質と硫酸が反応して硫酸鉛になり、同時に水が生じる。硫酸が消費され水が増えるため、電解液の密度(比重)が下がる。充電すると逆の反応が進み、比重が戻る。
【判定の目安(20℃換算)】
・1.280前後:完全充電
・1.220前後:約50%放電
・1.160前後:完全放電
【温度換算が必要な理由】電解液は温度が上がると膨張して密度が下がる。同じ充電状態でも高温では低く出る。判定基準は20℃を基準としているため、換算しないと誤判定する。
【換算式】S20=St+0.0007×(t−20)
・高温で測った → 換算すると値は大きくなる
・低温で測った → 換算すると値は小さくなる
【各セルを個別に測る意味】
・全セルが一様に低い → 充電不足
・1セルだけ極端に低い → そのセルの不良(内部短絡、活物質の脱落)。充電しても回復しない。
【比重で分かること・分からないこと】比重は充電状態を示すが、容量(どれだけの電気を蓄えられるか)は示さない。劣化して容量が減っていても、比重は正常なことがある。始動性の判定には負荷試験が必要である。
【MFバッテリ】制御弁式は液の補充も比重測定もできない構造が多い。この場合は開放電圧や専用テスタで判定する。
【取扱いの注意】電解液は希硫酸である。皮膚や衣服、塗装面に付着しないよう保護具を使用し、付着したら大量の水で洗い流す。
問38オルタネータ(交流発電機)に関する記述として不適切なものは次のうちどれか。
- 1ロータ・コイルに界磁電流を流して磁界をつくる
- 2ダイオードで整流して直流を取り出す
- ✔発生電圧はエンジン回転速度に比例して上昇し続ける
- 4ICレギュレータで発生電圧を制御する
- 5ステータ・コイルに三相交流が発生する
解説:【正解】3「発生電圧はエンジン回転速度に比例して上昇し続ける」
【基本構造】
・ロータ:界磁コイルに電流を流して電磁石にする。これが回転して磁界を作る。
・ステータ:固定側の3組のコイル。回転する磁界により三相交流が誘起される。
・レクチファイヤ(ダイオード):三相交流を直流に整流する。
・ICレギュレータ:界磁電流を制御して発生電圧を一定に保つ。
【なぜ交流発電機なのか】直流発電機はブラシと整流子で機械的に整流するため、摩耗が激しく高回転に向かない。交流発電機はダイオードで電気的に整流するため、小型軽量で高出力、耐久性にも優れる。
【電圧が一定に保たれる仕組み】回転速度が上がれば発生電圧も上がろうとする。レギュレータは界磁電流を減らして磁界を弱め、電圧を約14V前後に保つ。逆に回転が低い、または負荷が大きいときは界磁電流を増やす。
【なぜ約14Vか】12V系バッテリを充電するには、バッテリの起電力より高い電圧が必要である。13.5〜14.5V程度が一般的である。
【誤りやすい記述】「発生電圧は回転速度に比例して上昇し続ける」は誤りである。レギュレータの働きによって一定に制御される。もし比例して上がり続ければ、高回転で過充電となり電装品を破壊する。
【故障の症状】
・発電しない → 充電警告灯の点灯、バッテリ上がり
・過充電 → バッテリ液の減少、電球切れ、ECUの損傷
・ダイオードの1つが不良 → 出力低下と波形のリップル増大
【点検】負荷をかけた状態での発電電圧と出力電流を測定する。オシロスコープでの波形観察も有効である。
問39スタータ・モータのマグネット・スイッチ(ソレノイド)の作用として適切なものは次のうちどれか。
- 1バッテリの充電電流を制限する
- ✔ピニオン・ギヤの押し出しと主回路の開閉を行う
- 3オーバランニング・クラッチを潤滑する
- 4発電電圧を制御する
- 5点火時期を制御する
解説:【正解】2「ピニオン・ギヤの押し出しと主回路の開閉を行う」
【2つの役割を同時に果たす】
① ピニオン・ギヤをリング・ギヤへ押し出して噛み合わせる(機械的な作用)
② 主回路の接点を閉じ、モータへ大電流を流す(電気的な作用)
【なぜ同時でなければならないか】先にモータが回るとピニオンが噛み合わず、歯を傷める。先に噛み合ってから通電することで、確実な始動ができる。実際には、プランジャの動きの終盤で接点が閉じるよう設計されている。
【なぜ大電流を直接スイッチしないか】始動時には数百アンペアが流れる。これをイグニッション・スイッチで直接開閉すると、スイッチと配線を極太にする必要があり、接点も焼損する。小さな制御電流でマグネット・スイッチを動かし、その接点で大電流を通す構成にすることで、配線とスイッチを小型化できる。
【故障の症状と切り分け】
・「カチッ」と音がするがモータが回らない → プランジャは動いているが主接点が導通していない(接点の焼損、または主回路の抵抗過大)
・音もしない → コイル回路の断線、イグニッション・スイッチ、スタータ・リレー、または安全スイッチの不良
・モータは回るがクランキングしない → ピニオンやリング・ギヤの摩耗・欠損、オーバランニング・クラッチの滑り
【オーバランニング・クラッチ】始動後にエンジンがピニオンを逆に駆動しないよう、一方向にのみ動力を伝える機構である。これが滑ると、モータは回るのにクランキングしない。
【点検】始動時のマグネット・スイッチ前後の電圧降下を測ると、接点の状態が判定できる。
問40前照灯の光軸調整に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1上向きに調整するほど安全である
- 2光軸は調整不要である
- 3タイヤ空気圧は測定に影響しない
- 4明るければ方向は問わない
- ✔規定の測定条件(車両状態・距離等)を整えたうえでテスタにより調整する
解説:【正解】5「規定の測定条件(車両状態・距離等)を整えたうえでテスタにより調整する」
【なぜ光軸が重要か】
・下向きすぎる → 遠方が見えず、危険の発見が遅れる
・上向きすぎる → 対向車を幻惑し、重大事故の原因になる
保安基準でも、前照灯の照射方向には基準が定められている。
【測定の条件】
・規定の測定距離(テスタの指定による)
・車両を平坦な場所に置く
・タイヤの空気圧を規定値にする
・積載状態を規定にする(一般に空車+運転者1名など、車種の指定による)
・燃料量も指定がある場合がある
【なぜ車両の状態が影響するか】車両の姿勢が変われば、灯体の向きも変わる。後部に重い荷物を積めば前が上がり、光軸は上向きになる。空気圧が低ければ車高が下がる。
【調整の方法】専用の前照灯試験機(ヘッドライト・テスタ)を使用する。上下と左右の調整ねじで、光度の最も高い点(エルボー点やカットオフ・ライン)を規定位置に合わせる。
【ロービームでの測定】現在の基準では、すれ違い用前照灯(ロービーム)で測定するのが原則である。ハイビームで測定する規定もあるが、車両の年式により異なる。
【バルブ交換時の注意】
・光源の位置が変わると配光が崩れる。指定の形式のバルブを使う。
・HIDやLEDへの変更は、灯体との適合が確認できるものを使い、交換後は必ず光軸を確認する。
・光度だけ高くても、配光が適切でなければ基準を満たさず、対向車を幻惑する。
【オート・レベリング装置】車高センサで姿勢を検出し、自動で光軸を補正する装置である。センサや部品の交換後は初期化が必要な場合がある。
制動装置全32問中 4問を掲載
問41ブレーキ液のベーパ・ロックに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1ライニングが過熱して摩擦係数が低下する現象
- 2ドラムが熱膨張して片効きする現象
- ✔ブレーキ液に気泡が生じてペダルが効かなくなる現象
- 4ブレーキ液が凍結する現象
- 5ホイール・シリンダが固着する現象
解説:【正解】3「ブレーキ液に気泡が生じてペダルが効かなくなる現象」
【現象】ブレーキ液が沸騰して気泡(ベーパ)が生じ、その気泡が圧縮されることで液圧が伝わらなくなる状態である。
【なぜ効かなくなるか】液体は圧縮されないため、踏力がそのまま液圧として伝わる。しかし気体は圧縮されるため、ペダルを踏んでも気泡が縮むだけで、キャリパへ圧力が届かない。ペダルがスカスカになり、床まで踏み込んでも制動力が得られない。
【発生する条件】
・長い下り坂でのフット・ブレーキの多用
・引きずりによる継続的な発熱
・ブレーキ液の含水率が高い(沸点が下がっている)
【なぜ含水率が問題か】グリコール系のブレーキ液は吸湿性を持つ。大気中の水分をリザーバのブリーザや、ゴム部品を通じて徐々に吸収する。
・新品時:沸点が高い(DOT4で230℃以上など)
・吸湿後:沸点が大きく下がる(湿潤沸点は乾燥沸点より数十℃低い)
【だから定期交換が必要】液が汚れていなくても、含水率が上がれば性能は落ちる。走行距離ではなく経過年数で交換時期を判断する理由である。一般に2年ごとが目安とされる。
【フェードとの違い】
・フェード:摩擦材(パッドやライニング)の過熱により摩擦係数が低下する。ペダルの感触は変わらないが効かない。
・ベーパ・ロック:液側の問題。ペダルがスカスカになる。
症状の違いで区別できる。
【予防】長い下り坂ではエンジン・ブレーキを主体に使う。定期的な液交換を行う。引きずりがあれば修理する。
問42ディスク・ブレーキがドラム・ブレーキと比較して優れている点として適切なものは次のうちどれか。
- 1パッドの摩耗が少ない
- 2駐車ブレーキ機構が簡単である
- 3自己倍力作用が大きい
- ✔放熱性が良くフェードしにくい
- 5制動力が同一踏力で必ず大きい
解説:【正解】4「放熱性が良くフェードしにくい」
【最大の利点:放熱性】ディスク(ロータ)が外気に露出しているため、熱を大気へ逃がしやすい。
【なぜ放熱が重要か】ブレーキは運動エネルギを熱に変換する装置である。発生した熱を逃がせないと摩擦材の温度が上がり、摩擦係数が低下する(フェード)。
【その他の利点】
① フェードしにくい:放熱性の高さによる
② 水がかかっても回復が早い:回転による遠心力で水が飛ぶ
③ 効きが安定している:自己倍力作用がないため、摩擦係数の変化が制動力の変化に直結しない
④ 制動力の左右差が出にくい
⑤ 点検が容易:パッドの残量を目視で確認しやすい
⑥ 放熱により歪みが生じにくい
【③の補足】ドラム・ブレーキのリーディング・シューには自己倍力(セルフ・サーボ)作用がある。ドラムに引き込まれる力で押し付けが強まる。効きは大きいが、摩擦係数がわずかに変化すると制動力が大きく変わるため、安定性に劣る。
【ドラム・ブレーキの利点】
・自己倍力作用により、小さな力で大きな制動力が得られる
・駐車ブレーキとの組合せが容易
・密閉構造のため、泥や水の侵入が少ない環境で有利
【ディスクの欠点】自己倍力作用がないため、倍力装置(マスタ・バック)が必要である。またパッドの摩耗が速い傾向がある。
【現在の主流】前輪はディスク、後輪はディスクまたはドラムという構成が一般的である。前輪は制動時の荷重移動により負担が大きいため、放熱性が重視される。
問43タンデム・マスタ・シリンダを採用する主な目的として適切なものは次のうちどれか。
- 1ブレーキ液の温度上昇を防ぐ
- 2液量を節約する
- 3ペダル踏力を軽減する
- ✔二系統に分けて一方が失陥しても制動力を確保する
- 5ABSの作動を助ける
解説:【正解】4「二系統に分けて一方が失陥しても制動力を確保する」
【構造】1つのシリンダ内に2つのピストンを直列に配置し、独立した2系統の液圧を発生させる。
【目的】一方の系統が失陥しても、他方で制動力を確保するためである。
【なぜ必要か】単一系統では、どこか1か所で液漏れが起きただけで全輪の制動力が失われる。これは致命的である。2系統に分けることで、片方が失われても最低限の制動力を残せる。
【配管方式】
・前後分割式:前輪系統と後輪系統に分ける。構造が簡単。ただし前輪系統が失陥すると、後輪だけになり制動力が大きく不足する。
・X配管式(ダイアゴナル):右前と左後、左前と右後を組み合わせる。どちらが失陥しても前輪1輪が残るため、制動力の低下が少ない。前輪駆動車で多く採用される。
【失陥時の症状】
・ペダルのストロークが大きくなる(片方の系統が液圧を発生しないため)
・制動力が明らかに低下する
・警告灯が点灯する(液面低下またはプレッシャ・ディファレンシャル・スイッチによる)
【内部漏れとの区別】
・外部漏れ:液面が下がり、漏れた跡が残る
・内部漏れ:カップを越えて液がリザーバへ戻る。液面は減らないが、踏み続けるとペダルが徐々に沈む
【点検】ペダルを一定の力で踏み続け、沈まないことを確認する。沈むなら内部漏れを疑う。
【関連する安全装置】制動力の配分を調整するプロポーショニング・バルブ、失陥を検知する警告装置も、同じ思想に基づく。
問44真空式制動倍力装置(マスタバック)が作用しなくなる原因として不適切なものは次のうちどれか。
- 1バキューム・ホースの外れ
- 2ダイヤフラムの破損
- 3エンジンの吸気管負圧の不足
- ✔ブレーキ液の量が規定より多い
- 5チェック・バルブの不良
解説:【正解】4「ブレーキ液の量が規定より多い」
【作動原理】エンジンの吸気管負圧を利用する。ダイヤフラムの片側に負圧、もう片側に大気圧を導き、その差圧でペダルの踏力を増大させる。
【必要な要素】
① 負圧源:エンジンの吸気管、または負圧ポンプ
② 負圧を導くホースと、逆流を防ぐチェック・バルブ
③ 気密が保たれたダイヤフラムとハウジング
④ 大気を導入するバルブ機構
【作用しなくなる原因】
・負圧ホースの外れ、亀裂、詰まり
・チェック・バルブの不良(負圧が保持されない)
・ダイヤフラムの破れ(気密が失われる)
・エンジンの停止(負圧が発生しない)
・吸気管負圧の不足(過給機付きエンジンで負圧が得られない条件など)
【誤りやすい選択肢】ブレーキ液の量、パッドの摩耗、ディスクの摩耗などは、倍力装置の作動とは無関係である。倍力装置は「踏力を増やす」機構であり、液圧系統の下流とは別系統である。
【チェック・バルブの役割】エンジン停止後も負圧を保持する。これにより、停止後も数回はアシストされた制動が可能になる。バルブが不良だと、停止直後からペダルが極端に重くなる。
【エンジン停止時の重要性】牽引時や故障で停止した場合、アシストが失われる。ペダルが著しく重くなるため、強い踏力が必要になることを運転者に伝える必要がある。
【点検方法】
① エンジン停止でペダルを数回踏み、負圧を抜く
② ペダルを踏んだままエンジンを始動する
③ ペダルがわずかに沈めば正常(負圧が発生してアシストが効いた証拠)
走行装置全26問中 4問を掲載
問45タイヤの表示「195/65R15 91H」の「65」が示すものは次のうちどれか。
- ✔偏平率(%)
- 2タイヤ幅(mm)
- 3リム径(インチ)
- 4速度記号
- 5荷重指数
解説:【正解】1「偏平率(%)」
【表示の読み方】
・195:タイヤ幅(mm)
・65:偏平率(%)
・R:ラジアル構造
・15:リム径(インチ)
・91:荷重指数(ロード・インデックス)
・H:速度記号
【偏平率とは】断面高さ÷断面幅×100 である。この例では、断面高さが幅の65%であることを示す。
【計算例】幅195mm、偏平率65%なら
断面高さ=195×0.65=約127mm
外径=リム径+断面高さ×2=15インチ(381mm)+127×2=約635mm
【偏平率が小さいタイヤの特性】
・サイドウォールが低く剛性が高い → 操縦応答が鋭い
・たわみが少なく、コーナリング時の変形が小さい
・一方で乗り心地は硬く、路面からの衝撃を吸収しにくい
・ホイールが損傷しやすい(段差でリムが直接当たる)
【インチアップの考え方】ホイール径を上げる場合、外径をなるべく変えないよう偏平率を下げる。外径が変わると
・速度計に誤差が生じる
・ABSやトラクション制御の基準がずれる
・フェンダとのクリアランスが変わる
【荷重指数と速度記号】いずれも純正以上のものを選ぶ。荷重指数が不足すると、指定空気圧でも負荷能力が足りず危険である。
【整備上の確認】サイズ変更の際は、外径、荷重指数、速度記号、リム幅の適合をすべて確認する。
問46ホイール・アライメントのトーインに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1前から見た車輪の傾き
- 2車軸の上下方向の傾き
- 3車輪の回転中心と接地点のずれ
- ✔上から見て前輪の前側が後側より狭い状態
- 5キング・ピンの傾き
解説:【正解】4「上から見て前輪の前側が後側より狭い状態」
【トーとは】上から見たときの、左右輪の前端と後端の間隔の差である。
・トーイン:前端が後端より狭い(内向き)
・トーアウト:前端が後端より広い(外向き)
【なぜトーインを付けるか】走行中、タイヤは転がり抵抗により外向きに開こうとする。特に正キャンバが付いていると、キャンバ・スラストで外向きの力が生じる。あらかじめ内向きにしておくことで、走行中に平行になる。
【前輪駆動車では逆のことも】駆動力がかかると内向きに閉じようとするため、静止時にトーアウト気味に設定する車種もある。駆動方式により最適値が異なる。
【狂った場合の症状】
・直進安定性の悪化
・タイヤの偏摩耗:のこぎり刃状(フェザー・エッジ)の摩耗が生じる
・燃費の悪化(タイヤが横滑りしながら転がるため)
・ステアリングの戻りの悪化
【摩耗パターンでの判別】
・トーインが過大 → タイヤの外側が摩耗する
・トーアウトが過大 → 内側が摩耗する
・のこぎり刃状の摩耗 → トーの狂いに特徴的
【調整方法】タイロッドの長さで調整する。左右均等に調整しないと、ステアリング・ホイールのセンタがずれる。
【測定の前提】空気圧、足回りのがた、車高、積載条件を規定に整える。がたがある状態では正しく測れない。
【調整後の確認】ステアリング・ホイールのセンタ位置、直進性、舵角センサの初期化(電子制御車)。
問47ラジアル・タイヤがバイアス・タイヤと比較して優れている点として不適切なものは次のうちどれか。
- ✔サイド・ウォールが柔軟なため悪路での耐カット性に優れる
- 2偏摩耗しにくい
- 3転がり抵抗が小さく燃費に有利である
- 4トレッドの剛性が高く接地性が良い
- 5高速走行時の安定性が良い
解説:【正解】1「サイド・ウォールが柔軟なため悪路での耐カット性に優れる」
【構造の違い】
・バイアス:カーカスのコードを、進行方向に対して斜め(30〜40°)に交差させて重ねる
・ラジアル:コードを進行方向に対して直角(放射状)に配置し、その上にベルト(補強帯)を巻く
【ラジアルの利点】
① 転がり抵抗が小さい:サイドウォールとトレッドの機能が分離され、変形によるエネルギ損失が少ない。燃費に有利
② 発熱が少ない:変形が少ないため、高速走行での耐久性に優れる
③ 接地面が安定する:ベルトがトレッドを支えるため、荷重や横力がかかっても接地形状が保たれる
④ 操縦安定性に優れる
⑤ 耐摩耗性が高い(寿命が長い)
【ラジアルの欠点】
・サイドウォールが柔らかいため、低速での乗り心地がやや硬く感じられることがある
・構造が複雑で製造コストが高い
・修理の制約が多い
【誤りやすい記述】「サイドウォールの剛性が高い」は誤りである。ラジアルはサイドウォールが柔軟で、トレッド部をベルトで支える構造である。この機能分離が性能の源である。
【なぜ機能分離が有利か】
・サイドウォール:柔軟にたわみ、衝撃を吸収する
・トレッド:ベルトで支えられ、接地形状を保つ
バイアスでは両者が一体のため、どちらかを優先すると他方が犠牲になる。
【現在の状況】乗用車用はほぼすべてラジアルである。バイアスは一部の特殊用途に限られる。
【混用の禁止】ラジアルとバイアスを同一車両に混在させてはならない。特性が大きく異なり、挙動が不安定になる。
問48ホイール・アライメントのキャンバに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1操舵時の左右輪の切れ角差である
- ✔前から見て車輪の上部が外側に傾いている状態を正(ポジティブ)キャンバという
- 3横から見た操舵軸の傾きである
- 4車輪の回転中心と接地点のずれである
- 5上から見た左右輪の前後の間隔差である
解説:【正解】2「前から見て車輪の上部が外側に傾いている状態を正(ポジティブ)キャンバという」
【キャンバとは】前から見たときの車輪の傾きである。
・正キャンバ:上側が外に開いている
・負キャンバ:上側が内に倒れている
【正キャンバの目的(従来)】
・荷重によるナックルやアームのたわみを見越して、走行時に垂直になるようにする
・キング・ピン・オフセットを小さくし、操舵力を軽くする
・ホイール・ベアリングの内側に荷重を集めて、外側の負担を減らす
【負キャンバの目的(近年)】旋回時にタイヤが外側へ倒れ込むのを見越して、コーナリング時の接地面積を確保する。操縦性を重視する車種で採用される。
【狂った場合の症状】
・偏摩耗:正キャンバなら外側、負キャンバなら内側が摩耗する
・左右差があると片流れする(正キャンバが大きい側へ引かれる)
【なぜ片流れするか】傾いた車輪は、円錐を転がしたときのように傾いた方向へ進もうとする(キャンバ・スラスト)。左右で差があるとこの力が釣り合わない。
【調整の可否】調整機構を持たない車種が多い。その場合、規定外なら
・部材の変形(事故、縁石への乗り上げ)
・ブシュやボール・ジョイントの摩耗
・スプリングのへたりによる車高の変化
を疑い、原因部品を交換する。無理に調整してはならない。
【測定の前提】空気圧、足回りのがた、車高、積載条件を整える。特に車高はキャンバに直結する。
【キャスタ、トーとの関係】3つは相互に影響する。1つだけ調整して終わりにせず、全体を確認する。
動力伝達全30問中 4問を掲載
問49トルク・コンバータのステータの働きとして適切なものは次のうちどれか。
- 1オイルの温度を下げる
- 2エンジンの動力を直接出力軸に伝える
- 3ロックアップを行う
- 4変速比を機械的に切り替える
- ✔オイルの流れの向きを変えてトルクを増大させる
解説:【正解】5「オイルの流れの向きを変えてトルクを増大させる」
【トルコンの3要素】
・ポンプ・インペラ:エンジン側。オイルに流れを与える
・タービン・ランナ:変速機側。オイルの流れを受けて回る
・ステータ:両者の間にあり、オイルの流れの向きを変える
【ステータがなければ】タービンから戻ってきたオイルは、ポンプの回転を妨げる向きで流れ込む。これでは効率が悪く、トルクの増大も得られない。単なる流体継手になる。
【ステータの働き】戻りのオイルの流れを、ポンプの回転を助ける向きに変える。これによりポンプへ加わる力が増し、出力側のトルクが入力側より大きくなる。これがトルク増大作用である。
【増大の大きさ】停止直前(ストール時)に最大となり、一般に2〜2.5倍程度である。発進時に大きな駆動力が得られる理由である。
【ワンウェイ・クラッチの役割】ステータは一方向にのみ固定される。
・速度比が小さいとき(発進時):ステータが固定され、トルク増大が働く
・速度比が大きくなると(クラッチ・ポイント以降):オイルの流れの向きが変わり、ステータが空転する
・空転後は流体継手として作用し、トルク増大はなくなる
【なぜ空転させるか】固定したままだと、高速域でオイルの流れを妨げて効率が落ちる。空転させることで抵抗をなくす。
【故障の症状】
・ステータのワンウェイ・クラッチが滑る → 発進時のトルク増大が得られず、加速不良
・固着する → 高速域で効率が落ち、最高速の低下と油温の上昇
【ロックアップとの違い】ロックアップは機械的に直結して滑りをなくす別の機構である。
問50CVT(ベルト式無段変速機)に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1変速比の幅は狭い
- ✔プーリ幅を変えて変速比を連続的に変化させる
- 3変速段が有限で段付き感がある
- 4エンジン回転を常に最高出力点に保つ
- 5トルコンを持つことはない
解説:【正解】2「プーリ幅を変えて変速比を連続的に変化させる」
【構造】2つのプーリ(駆動側と従動側)に金属ベルト(またはチェーン)を掛け、プーリの溝幅を変えることで変速比を連続的に変える。
【変速の原理】プーリはV字型の溝を持つ。可動シーブを油圧で動かして溝幅を変えると、ベルトの巻き掛け半径が変わる。
・駆動側の溝を狭める → 半径が大きくなる → 増速(ハイ側)
・駆動側の溝を広げる → 半径が小さくなる → 減速(ロー側)
従動側は逆に動き、ベルトの全長が一定に保たれる。
【最大の利点】変速比が無段階に変わる。したがって
・エンジンを常に効率の良い回転域に保てる(燃費に有利)
・変速ショックがない
・加速時に回転が一定のまま速度が上がるという特有の感覚
【金属ベルトの構造】多数の金属エレメントを、積層した薄いリング(スチール・バンド)で束ねた構造である。
【重要な点:押して伝える】一般的なベルトは「引っ張って」動力を伝えるが、CVTの金属ベルトはエレメントが「押し合って」伝える。圧縮で伝達するため、高いトルクに耐えられる。
【CVTフルードが特殊な理由】
・プーリとベルトの間で適切な摩擦係数を保つ必要がある
・低すぎれば滑り、高すぎても摩耗を招く
・専用の摩擦特性が設計されている
ATFで代用すると滑りや焼損を招く。必ず指定品を使用する。
【整備上の注意】油圧制御が中核であるため、フルードの量と状態、ライン圧の管理が重要である。
問51トルク・コンバータのロックアップ機構の目的として適切なものは次のうちどれか。
- ✔流体を介さず直結して滑りをなくし燃費を向上させるため
- 2トルクを最大に増大させるため
- 3変速をなめらかにするため
- 4オイルを冷却するため
- 5発進性能を高めるため
解説:【正解】1「流体を介さず直結して滑りをなくし燃費を向上させるため」
【トルコンの弱点】流体を介して動力を伝えるため、入力側と出力側に必ず滑りが生じる。この滑りがエネルギ損失となり、燃費を悪化させる。
【ロックアップ機構】特定の条件下で、ポンプとタービンを機械的に直結する。摩擦板を押し付けて滑りをなくす。
【効果】
・伝達効率が向上し、燃費が改善する
・エンジン回転と車速が一致するため、加速の感覚が明確になる
・油温の上昇が抑えられる(滑りによる発熱が減る)
【作動条件】常に直結すると弊害があるため、条件が設定されている。
・一定以上の車速
・変速機油温が適正範囲
・スロットル開度が安定している
・急加速や急減速をしていない
【なぜ常時ではないか】直結すると、エンジンのトルク変動が直接駆動系へ伝わる。振動と騒音が増え、低速では不快になる。またエンストの危険もある。
【フレックス・ロックアップ(スリップ制御)】完全な直結と解放の中間として、わずかに滑らせながら締結する制御もある。振動を吸収しつつ効率を高められるため、作動範囲を広げられる。
【故障の症状】
・ロックアップしない → 燃費の悪化、高速走行時の回転が高い
・ロックアップの締結が滑る → ジャダ(振動)、油温上昇
・解除されない → 停止時にエンスト
【診断】データ・ストリームでロックアップの作動状態とスリップ量を確認できる車種が多い。
問52プラネタリ・ギヤ・ユニットにおいて、リング・ギヤを固定しサン・ギヤを入力、プラネタリ・キャリヤを出力とした場合の作動として適切なものは次のうちどれか。
- 1動力は伝わらない
- 2直結となる
- 3増速する
- 4逆転する
- ✔減速する
解説:【正解】5「減速する」
【構成要素】
・サン・ギヤ:中心の歯車
・プラネタリ(ピニオン)・ギヤ:サンの周囲を回る歯車
・プラネタリ・キャリヤ:ピニオンを支持する部材
・リング・ギヤ:外周の内歯歯車
【3要素の使い分け】どれを入力、出力、固定にするかで、変速比と回転方向が変わる。1組のギヤで複数の変速段が得られるのがプラネタリ・ギヤの特徴である。
【本問の組合せ】リング固定、サン入力、キャリヤ出力
・サンが回ると、ピニオンが自転しながらリングに沿って公転する
・キャリヤはピニオンの公転とともに回る
・キャリヤの回転はサンより遅くなる → 減速
・回転方向は同じ
【減速比の計算】減速比=(サン歯数+リング歯数)÷サン歯数
例:サン30、リング70なら (30+70)÷30=約3.33
【他の代表的な組合せ】
・サン固定、リング入力、キャリヤ出力 → 減速(減速比は小さめ)
・キャリヤ固定、サン入力、リング出力 → 逆転(後退段に使う)
・3要素のうち2つを一体化 → 直結(変速比1.0)
【なぜ後退が得られるか】キャリヤを固定するとピニオンは自転のみとなり、サンとリングは逆方向に回る。これが後退段の原理である。
【ATでの利用】複数のプラネタリ・ギヤ・セットを組み合わせ、クラッチとブレーキで各要素の固定・連結を切り替えることで多段変速を実現する。
法令全28問中 4問を掲載
問53道路運送車両法において、自家用乗用自動車(初度登録から2回目以降)の自動車検査証の有効期間として適切なものは次のうちどれか。
解説:【正解】4「2年」
【有効期間】
・初回:3年
・2回目以降:2年
【なぜ初回が長いか】新車は状態が良く、故障のリスクが低いためである。
【他の車種の例】
・自家用の軽乗用自動車:初回3年、以降2年
・事業用乗用自動車(タクシーなど):1年
・自家用貨物自動車(車両総重量8トン未満):初回2年、以降1年
・大型の貨物自動車:1年
稼働率が高く社会的影響が大きいほど、期間が短く設定されている。
【重要な認識:車検と点検整備は別の制度】
・車検:特定の時点で保安基準に適合しているかを確認する検査
・点検整備:使用者に課された継続的な義務
車検に合格しても、点検整備の義務は免除されない。
【なぜ両方が必要か】保安基準への適合は「運行時に常に」求められる。灯火の球切れやタイヤの摩耗など、日々変化する項目があるため、定期的な点検が必要である。
【自家用乗用車の定期点検】1年ごとと2年ごとに実施する。
【日常点検】使用者が行う。自家用乗用車では「走行距離や運行時の状態などから判断した適切な時期」に行うこととされている。
【法令は改正される】数値や区分は変更されることがある。試験前や実務では、必ず最新の条文で確認する必要がある。
【顧客への説明】「車検を通せば2年間安心」ではないことを伝える価値がある。
問54自家用乗用自動車の定期点検整備の実施時期として適切なものは次のうちどれか。
- 16か月ごと
- 23か月ごと
- ✔1年ごとおよび2年ごと
- 43年ごとのみ
- 52年ごとのみ
解説:【正解】3「1年ごとおよび2年ごと」
【実施時期】1年ごとと2年ごとである。
【点検項目の違い】
・1年点検:主要な装置の点検
・2年点検:1年点検の項目に加え、より詳細な点検項目が追加される
2年点検は車検の時期と重なることが多い。
【車検との関係】
・車検:検査場(または指定工場)で保安基準への適合を確認する行為
・定期点検整備:使用者の義務として実施する点検と整備
両者は別の制度である。ただし実務上、2年点検と車検を同時に行うことが多い。
【重要な区別】
・車検に合格した ≠ 点検整備を実施した
・点検整備をせずに車検だけ受けることも制度上は可能である(ユーザー車検)
・しかし点検整備の義務は残る
【事業用自動車との比較】
・事業用自動車:3か月ごとと12か月ごと
・車両総重量8トン以上の自家用貨物自動車:3か月ごとと12か月ごと
稼働率と社会的影響を考慮した設定である。
【日常点検】定期点検とは別に、使用者が行う点検である。自家用乗用車では適切な時期に、事業用などでは1日1回運行開始前に行う。
【記録の保存】点検整備記録簿に記載し、所定期間保存する。
【法令の改正】点検項目や周期は改正されることがある。最新の内容を確認する必要がある。
【顧客への説明の価値】点検整備は法的義務であると同時に、故障の予防と安全確保の手段である。この意義を伝えることが重要である。
問55自動車の分解整備(特定整備)に該当するものとして適切なものは次のうちどれか。
- 1エンジン・オイルの交換
- 2バッテリの交換
- 3エア・クリーナ・エレメントの交換
- ✔制動装置のホイール・シリンダの分解
- 5タイヤのローテーション
解説:【正解】4「制動装置のホイール・シリンダの分解」
【特定整備とは】かつての「分解整備」に、電子制御装置整備が加わって名称が変更された制度である。
【従来の分解整備に該当する作業】次の装置を取り外して行う整備または改造。
・原動機
・動力伝達装置(クラッチ、変速機、プロペラ・シャフト、デファレンシャル)
・走行装置(フロント・アクスル、リヤ・アクスル・シャフト)
・操縦装置(ステアリング・ギヤ・ボックス、リンク装置)
・制動装置(マスタ・シリンダ、ホイール・シリンダ、キャリパ、ブレーキ・ドラム、配管)
・緩衝装置(シャシばね)
・連結装置
【拡大された電子制御装置整備】
・自動運行装置の整備
・運転支援装置に関わるカメラ、レーダの脱着や調整(エーミング)
【なぜ拡大されたか】これらの装置の取付け精度が、車両の安全性に直結するようになったためである。わずかなずれで衝突被害軽減ブレーキが正常に機能しなくなる。
【該当しない作業の例】
・エンジン・オイルの交換
・タイヤの交換、ローテーション
・バッテリの交換
・ブレーキ・パッドの交換(キャリパを分解しない場合)
・エア・クリーナ、プラグの交換
【事業として行うために必要なもの】
・事業場ごとの認証
・整備主任者の選任
・所定の設備と要員
・記録の作成と保存
【エーミングの要件】平坦な床面、十分な広さ、適切な照度など、作業環境の要件が定められている。
【最新情報の確認】制度は改正されることがあるため、最新の法令を確認する。
問56走行用前照灯(ハイビーム)に関する保安基準の考え方として適切なものは次のうちどれか。
- 1すれ違い用と同時点灯は禁止されている
- ✔白色で、前方の一定距離にある障害物を確認できる性能が必要である
- 3色は橙色でもよい
- 4取付け個数の定めはない
- 5光度に上限も下限もない
解説:【正解】2「白色で、前方の一定距離にある障害物を確認できる性能が必要である」
【前照灯の2種類】
・走行用前照灯(ハイビーム):遠方を照らす。前方100mの障害物を確認できる性能が求められる
・すれ違い用前照灯(ロービーム):対向車を幻惑しないよう配光が制限される。前方40mの障害物を確認できる性能
【基本の使い分け】夜間の走行では、原則としてハイビームを使う。対向車や先行車がいるとき、市街地などではロービームに切り替える。
【なぜハイビームが原則か】ロービームでは遠方の視認距離が短く、高速では停止距離に対して不足する。歩行者や障害物の発見が遅れる。
【光度の基準】ハイビームには上限が定められている。過度に明るいと対向車を幻惑するためである。
【灯火の色】白色である。
【個数と取付け位置】左右対称に取り付け、個数や高さにも基準がある。
【光軸の測定】現在はロービームでの測定が原則である。カットオフ・ライン(明暗の境界)とエルボー点を基準位置に合わせる。ただし車両の年式により基準が異なる場合がある。
【測定の前提条件】
・平坦な床面
・規定の空気圧
・規定の積載状態
車両の姿勢が変われば光軸も変わる。
【バルブ交換時の注意】光源の位置がわずかに変わるだけで配光が崩れる。指定された形式のものを使い、交換後は必ず光軸を確認する。
【HIDやLEDへの変更】灯体との適合が確認できる製品を用いる。明るさだけでなく配光が適切でなければ、対向車を幻惑し基準にも適合しない。
故障診断全144問中 4問を掲載
問57OBDシステムのDTC(故障コード)に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1DTCは1つしか記憶できない
- 2DTCが記憶されていれば必ず部品交換が必要である
- 3DTCは電源を切ると必ず消去される
- 4DTCの読み取りには電圧計のみで足りる
- ✔DTCは故障箇所を示すのではなく異常の内容を示すものである
解説:【正解】5「DTCは故障箇所を示すのではなく異常の内容を示すものである」
【DTCの本質】DTCが示すのは「どの系統で、どのような異常が検出されたか」であって、「どの部品が壊れているか」ではない。ここを取り違えると、部品を交換しても直らない、あるいは正常な部品を捨てるという結果になる。
【なぜ部品を特定できないのか】ECUはセンサからの信号が「あり得ない値」または「あり得ない変化」をしたときに異常と判定する。しかしその原因は
① センサ本体の故障
② 配線の断線・短絡・接触不良
③ 電源電圧の異常やアース不良
④ センサが正常に働いた結果、実際に異常な状態を検出している
⑤ 他システムの異常が波及している
のいずれもあり得る。ECUには区別できない。
【④の具体例】「エア・フロー・メータ系の異常」というDTCでも、センサは正常で、実際に吸気系から二次空気が入って空気量が合わないだけ、ということがある。
【正しい使い方】DTCは「調べる範囲を絞る手がかり」として使う。そこから配線図とデータ・ストリーム、実測で原因を追い込む。
【付随情報の活用】フリーズ・フレーム・データには異常検出時の運転条件(回転速度、水温、車速、負荷など)が記録されている。これを見れば、どんな条件で起きたのかが分かり再現の助けになる。DTCを先に消去すると、この情報も失われることが多い。
問58パワー・バランス試験の目的として適切なものは次のうちどれか。
- ✔各気筒の発生出力の均一性を調べる
- 2バルブ・クリアランスを調べる
- 3各気筒の圧縮圧力を測定する
- 4空燃比を測定する
- 5点火時期を測定する
解説:【正解】1「各気筒の発生出力の均一性を調べる」
【目的】各気筒が出力にどれだけ寄与しているかを比較し、不調な気筒を特定する。
【方法】1気筒ずつ点火または噴射を止め、そのときの回転速度の落ち込みを比較する。
【判定の考え方】
・落ち込みが大きい → その気筒はしっかり仕事をしていた(正常)
・落ち込みが小さい/ほとんどない → その気筒はもともと出力に寄与していない(不調)
【数値例】6気筒で各気筒の落ち込みが 120/115/30/118/122/116min⁻¹ なら、3番だけ極端に小さい。3番がほとんど燃焼していないと判断できる。
【特定後の絞り込み】不調気筒が分かったら、その気筒固有の要素を確認する。
・点火(プラグ、コイル、配線)
・燃料(インジェクタの作動・噴射量・詰まり)
・圧縮(圧縮圧力、バルブ、リング)
部品を隣の気筒と入れ替えてDTCや症状が移動するかを見る方法が、確実で費用もかからない。
【実施時の注意】休止させた気筒の未燃焼混合気が触媒に流れ込むため、試験は短時間で行う。長引かせると触媒の過熱・溶損を招く。
【近年の車両】診断機のアクティブ・テストで気筒を休止させる機能を持つものが多く、手動で高圧コードを外す必要はない(外すこと自体がイグナイタの損傷を招く場合もある)。
問59バキューム・ゲージによる診断で、アイドリング時に指針が規定値より低く安定している場合に考えられる原因は次のうちどれか。
- ✔点火時期の遅れや吸気系からの空気漏れ
- 2バルブ・ガイドの摩耗
- 3排気管の詰まり(回転上昇時のみ)
- 4バルブ・スプリングの折損
- 51気筒のバルブ密着不良
解説:【正解】1「点火時期の遅れや吸気系からの空気漏れ」
【バキューム・ゲージの原理】吸気管内の負圧を測ることで、エンジンの吸排気とシリンダの気密状態を推定する。針の「高さ」と「動き方」の両方に意味がある。
【低く安定している場合】どの気筒も一様に負圧が弱い=全気筒に共通する原因を疑う。
・点火時期の遅れすぎ
・バルブ・タイミングの全体的なずれ(タイミング・ベルト/チェーンの歯飛び)
・吸気系からの一様な二次空気の吸い込み
・排気系の詰まり(背圧上昇)
【針の動き方による読み分け】
・規則的に大きく振れる → 特定気筒のバルブ密着不良や圧縮漏れ
・不規則に振れる → 断続的な失火
・徐々に下がっていく → 排気系の詰まり(回転を上げると顕著になる)
・低く不安定 → 吸気漏れ(ガスケットやホースからの局所的な吸い込み)
【なぜ全気筒共通と判断できるか】1気筒だけの不良なら、その気筒の吸気行程で針が周期的に振れる。一様に低いということは、全気筒が同じ条件で吸えていないことを示す。
【現代の位置づけ】診断機のデータ(吸気管圧力センサの値)でも同様の情報が得られるが、ゲージの針の動きは視覚的で分かりやすく、電子制御に頼らない診断手段として今も有効である。
問60エンジンが始動しない車両で、燃圧は正常だがプラグに火花が飛ばない。点検の優先度が最も低いものは次のうちどれか。
- 1点火系のアース回路
- 2クランク角センサの信号
- 3イグニッション・スイッチおよび関連ヒューズ
- 4点火コイルの一次側電源と制御信号
- ✔燃料インジェクタの噴射量
解説:【正解】5「燃料インジェクタの噴射量」
【状況の整理】燃料は来ている、火花が飛ばない。つまり原因は点火系または点火の指令側にある。
【点火が成立する条件】
① 電源(イグニッション電源、ヒューズ、リレー)
② 基準信号(クランク角センサ、カム角センサ)
③ 点火指令(ECU、イグナイタ/パワー・トランジスタ)
④ 高電圧の発生と伝達(コイル、プラグ・コード、プラグ)
このいずれかが欠けると火花は飛ばない。
【最初に見るべきはクランク角センサ】基準信号がないとECUは点火も噴射も行わない。「クランキングはするが火花も噴射もない」場合、真っ先に疑うべき箇所である。
【なぜ燃料フィルタや圧縮を後回しにするか】
・燃料フィルタ → 燃圧が正常な時点で燃料供給は成立している
・圧縮圧力 → 圧縮が低くても火花自体は飛ぶ。火花が飛ばない原因にはならない
・エア・クリーナ → 空気の量の問題であり、火花とは無関係
これらは「症状と因果関係がない」ため優先度が低い。
【診断の型】症状が「何が起きていないか」を示している場合、その現象を成立させる条件を列挙し、上流から順に確認する。始動不良は「圧縮・点火・燃料・クランキング速度」の4要素で切り分けるのが基本である。
整備作業全94問中 4問を掲載
問61インジェクタの点検としてコイル抵抗を測定した結果、規定値より著しく大きかった場合に考えられる原因は次のうちどれか。
- ✔コイルの断線または接触不良
- 2噴口の詰まり
- 3コイルの層間短絡
- 4燃圧の低下
- 5ECUの故障
解説:【正解】1「コイルの断線または接触不良」
【抵抗値が示すもの】インジェクタは電磁ソレノイドで弁を開く構造である。コイルの抵抗値は巻線の状態を直接反映する。
【判定】
・規定より著しく大きい/無限大 → 巻線の断線、または接続部の接触不良
・規定より著しく小さい → 巻線の層間短絡(絶縁が破れて一部が短絡し、有効な巻数が減っている)
・規定内 → 電気的には正常。ただし機械的な詰まりや固着は判定できない
【なぜ断線すると噴射しないか】電流が流れなければ電磁力が発生せず、弁が開かない。その気筒は燃料が供給されず失火する。
【層間短絡の危険】抵抗が下がると過大な電流が流れる。ECUの駆動回路(トランジスタ)に負担がかかり、最悪ではECU側を損傷させる。
【抵抗値が正常でも安心できない理由】
・噴口のデポジット堆積による噴霧不良
・ニードルの固着(開かない、閉じない)
・シート部の摩耗による漏れ
これらは抵抗では分からない。作動音の確認、噴射量測定、噴霧パターンの観察が必要である。
【インジェクタの種類による違い】高抵抗型(12〜16Ω程度)と低抵抗型(2Ω前後)がある。低抵抗型は電流制御方式で駆動されるため、規定値は車種ごとに確認する。
【実務での順序】まず抵抗で電気的な良否を判定し、正常なら作動音や噴射量で機械的な状態を確認する。
問62圧縮圧力の測定に関する記述として不適切なものは次のうちどれか。
- 1スロットル・バルブを全開にして行う
- 2燃料噴射と点火を停止させて行う
- 3全気筒のプラグを外して行う
- ✔バッテリの充電状態は測定値に影響しない
- 5エンジンを暖機してから行う
解説:【正解】4「バッテリの充電状態は測定値に影響しない」
【正しい測定手順と、その理由】
① 暖機する:冷間では熱膨張前でクリアランスが大きく、実際より低い値が出る。
② 全気筒のプラグを外す:1本だけ外して測ると、他気筒の圧縮抵抗でクランキング速度が落ち、値が低く出る。
③ 燃料と点火をカットする:生ガスの排出による火災の危険と、触媒の損傷を防ぐ。
④ スロットルを全開にする:吸気の抵抗をなくし、十分な空気を吸い込ませる。閉じたままだと空気が入らず低い値になる。
⑤ バッテリを十分充電しておく:クランキング速度が低いと圧縮も上がらない。
⑥ ゲージの指示が上がりきるまで数回クランキングする。
【判定の2つの観点】
・規定値との比較
・気筒間のばらつき(一般に最低値が最高値の75%程度を下回ると異常とされる)
【ウェット・テスト】低い気筒にオイルを5〜10cc注入して再測定する。
・上昇 → リング/シリンダ側
・変化なし → バルブ側、ヘッド・ガスケット
【隣接2気筒が同程度に低い】気筒間のガスケットの吹き抜けを疑う。
【条件をそろえることの意味】圧縮圧力は測定条件に大きく左右される。条件が違えば比較にならないため、全気筒を同一条件で測ることが判定の前提となる。
問63エンジンの異音診断において、サウンド・スコープを用いる目的として適切なものは次のうちどれか。
- 1振動を電気信号に変換するため
- 2異音の周波数を数値で記録するため
- ✔発生箇所を絞り込み、部位ごとの音を聞き分けるため
- 4回転速度を測定するため
- 5異音の大きさを法規に照らして判定するため
解説:【正解】3「発生箇所を絞り込み、部位ごとの音を聞き分けるため」
【サウンド・スコープとは】聴診器のように、特定箇所の音を選択的に拾う工具である。プローブを部品に当て、その部品が発する音を増幅して聞く。
【なぜ必要か】エンジン・ルームは多くの音が混在している。耳で聞くだけでは、どこから出ている音か判断できない。プローブを各部に当てて音の大きさを比較することで、発生源を特定できる。
【当てるべき箇所】
・シリンダ・ブロックの各気筒位置(ピストン・スラップ、コンロッド系)
・ヘッド・カバー(動弁系)
・オイル・パン付近(クランク軸受)
・各補機のケース(オルタネータ、ポンプ、コンプレッサ)
・タイミング・ケース(チェーンやテンショナ)
【音の周期による切り分けと併用する】
・エンジン回転と同周期 → クランク系、ピストン系
・回転の1/2周期 → 動弁系(カムシャフトはクランクの1/2速で回転するため)
【使用時の注意】回転部やベルト、高温部に巻き込まれないようプローブの取り回しに注意する。長いプローブは危険な位置にも届くため、かえって注意が必要である。
【代替手段】プローブがない場合、長いドライバの柄を耳に当てて先端を部品に当てる方法もある。ただし安全性と精度では専用工具に劣る。
【診断の型】異音診断は「発生位置」「周期」「発生条件」の3点で絞り込む。サウンド・スコープは1つ目を担う道具である。
問64エンジンからの異音のうち、エンジン回転速度の1/2の周期で発生する異音の発生部位として最も考えられるものは次のうちどれか。
- 1クランクシャフト軸受
- 2ドライブ・ベルト
- 3ピストンとシリンダ
- ✔動弁機構(カムシャフト・バルブ回り)
- 5デファレンシャル
解説:【正解】4「動弁機構(カムシャフト・バルブ回り)」
【なぜ1/2周期が動弁系を示すか】4サイクル・エンジンでは、カムシャフトはクランクシャフトの1/2の速度で回転する。クランク2回転で1サイクル、その間にバルブは1回だけ開閉するためである。
【したがって】カムやバルブ、ロッカ・アーム、ラッシュ・アジャスタなど動弁系の部品に起因する音は、クランク回転の1/2の周期で現れる。
【周期による切り分け(体系)】
・クランク回転と同周期 → ピストン系(ピストン・スラップ)、コンロッド系、クランク軸受
・クランク回転の1/2周期 → 動弁系(タペット音、カムの摩耗、ラッシュ・アジャスタ)
・車速に比例 → 駆動系、ホイール・ベアリング、タイヤ
・エンジン回転に比例するが負荷で変わらない → 補機のベアリング
【周期の確認方法】オシロスコープでクランク角センサの信号と音を同時に記録すると正確に判別できる。実務では、回転を変えて音の周期がどう変化するかで判断することが多い。
【代表的な動弁系の異音】
・バルブ・クリアランスの過大 → 規則的なタペット音(カチカチ)
・ラッシュ・アジャスタのエア噛み → 始動直後のみのカタカタ音
・カムやロッカ・アームの摩耗 → 連続的な打音
・タイミング・チェーンの伸び、テンショナの不良 → ジャラジャラという連続音
【診断の型】音の周期は発生部位を示す物理的な手がかりである。感覚ではなく理屈で絞り込める。
操縦装置全15問中 4問を掲載
問65電動式パワー・ステアリング(EPS)が油圧式と比較して優れている点として適切なものは次のうちどれか。
- 1常にポンプを駆動するため応答が良い
- 2構造上、車速感応制御ができない
- 3作動油の交換が必要である
- 4低温時の粘性抵抗が大きい
- ✔必要時のみモータが作動するため燃費への影響が小さい
解説:【正解】5「必要時のみモータが作動するため燃費への影響が小さい」
【油圧式の仕組み】エンジンでポンプを駆動し、油圧でアシストする。
【EPSの仕組み】モータでアシストする。ECUが車速や操舵トルクに応じてアシスト量を決める。
【EPSの利点】
① 燃費が良い:油圧式はエンジンが回っている間ずっとポンプを駆動する。EPSは操舵時のみモータが作動するため、無駄なエネルギ消費がない
② 制御の自由度が高い:車速に応じたアシスト量の変更、レーン・キープなど運転支援との連携が容易
③ 構造が簡単:ポンプ、ホース、作動油、リザーバが不要
④ 作動油の管理が不要:漏れの心配がなく、定期的な点検や交換も不要
⑤ エンジン停止中も作動できる:アイドリング・ストップ車や電動車で必須
⑥ レイアウトの自由度が高い
【油圧式の利点】
・大きなアシスト力を得やすい(大型車や重量車に適する)
・操舵感が自然と評価されることがある
【EPSの注意点】
・電源電圧が低いとアシストが制限される、または停止する
・大電流を流すため、バッテリと配線の状態が影響する
・故障時はアシストが失われ、ステアリングが極めて重くなる(操舵はできる)
【アシストが効かない場合の点検順序】
① バッテリ電圧、ヒューズ
② DTCの読み取り
③ トルク・センサ、車速信号
④ モータと配線
【整備上の注意】部品交換後にトルク・センサの初期化や、ステアリング中立位置の学習が必要な車種がある。
問66ラック・アンド・ピニオン式ステアリング・ギヤの特徴として不適切なものは次のうちどれか。
- 1小型・軽量でスペースを取らない
- 2伝達効率が高く操舵感が直接的である
- ✔ギヤ比を大きくとりやすく大型車に適する
- 4路面からの逆入力が伝わりやすい
- 5構造が簡単で部品点数が少ない
解説:【正解】3「ギヤ比を大きくとりやすく大型車に適する」
【構造】ステアリング・シャフト先端のピニオン(小歯車)が、ラック(歯を刻んだ棒)と噛み合う。ピニオンの回転がラックの直線運動に変換される。
【利点】
① 構造が簡単で部品点数が少ない
② 軽量でコンパクト
③ 遊びが少なく、操舵の応答が直接的
④ 路面の情報が伝わりやすい(フィードバックが良い)
⑤ 前輪駆動車のレイアウトに適する
【欠点】
・路面からの衝撃も伝わりやすい(キックバック)
・大きな力を扱う大型車には向かない
・減速比を大きく取りにくい
【ボール・ナット式との比較】
・ボール・ナット式:ウォーム軸とナットの間にボールを介する。摩擦が小さく、大きな力を伝えられる。減速比も大きく取れるため、重量車に適する。ただし構造が複雑で遊びが生じやすい。
【誤りやすい記述】「大きな減速比が得やすく、大型車に適する」はボール・ナット式の特徴である。ラック・アンド・ピニオンは小型軽量が持ち味である。
【現在の主流】乗用車ではラック・アンド・ピニオンがほぼ標準である。EPSとの組合せでは、ラックに直接モータを配置する方式(ラック・アシスト式)もある。
【点検項目】
・ラック・ブーツの破れ(水と砂の侵入を防ぐ)
・ラック・エンドとタイロッド・エンドのがた
・ステアリングの遊び
・ラックのストローク端での異音
【ブーツ破れの重大性】内部に水や砂が入ると、ラックとピニオンが急速に摩耗する。破れを見つけたら速やかに交換する。
問67ステアリング・ギヤ比が16:1の車両で、ステアリング・ホイールを720°回した場合のピットマン・アーム(出力側)の回転角度として適切なものは次のうちどれか。
解説:【正解】5「45°」
【ギヤ比の意味】入力(ステアリング・ホイール)の回転角と、出力(ピットマン・アームまたはラック)の変位の比である。16:1なら、ホイールを16°回すと出力側が1°動く。
【計算】720°÷16=45°
【ギヤ比が大きいと(例:20:1)】
・出力側の動きが小さい → 操舵力が軽くなる
・その代わり、同じ切れ角を得るのに多く回す必要がある
・大型車や重量車に適する
【ギヤ比が小さいと(例:12:1)】
・少ない操作で大きく切れる → 応答が鋭い
・その代わり操舵力が重くなる
・スポーツ car やパワー・ステアリング装備車で採用される
【パワー・ステアリングの影響】アシストがあるため、小さいギヤ比(鋭い応答)でも操舵力を軽く保てる。これがギヤ比の設計自由度を広げた。
【可変ギヤ比】ラックの歯のピッチを場所によって変え、
・中央付近(直進):ギヤ比を大きくして安定性を確保
・切り込んだ位置:ギヤ比を小さくして小回りを効かせる
という特性を持たせる方式もある。
【ロック・トゥ・ロック】ステアリングを左端から右端まで回す回転数である。ギヤ比が大きいほど多くなる。乗用車で2.5〜3.5回転程度が一般的である。
【関連する計算】この種の問題は単純な割り算だが、比の意味を正しく理解していないと逆に計算してしまう。「入力÷ギヤ比=出力」である。
問68油圧式パワー・ステアリングの構成部品として不適切なものは次のうちどれか。
- ✔レギュレータ・レクチファイヤ
- 2パワー・シリンダ
- 3オイル・ポンプ(ベーン式など)
- 4コントロール・バルブ
- 5リザーバ・タンク
解説:【正解】1「レギュレータ・レクチファイヤ」
【油圧式PSの構成】
① オイル・ポンプ:エンジンでベルト駆動される。作動油に圧力を与える
② リザーバ・タンク:作動油を貯蔵する
③ コントロール・バルブ:操舵トルクに応じて油の流れを切り替える
④ パワー・シリンダ:油圧を推力に変換し、ラックを動かす
⑤ 高圧ホースと低圧(戻り)ホース
⑥ 作動油(パワー・ステアリング・フルード)
⑦ オイル・クーラ(装備される車種)
【誤りやすい選択肢】「電動モータ」は電動式(EPS)の構成部品である。油圧式には含まれない。ただし、油圧ポンプを電動モータで駆動する電動油圧式(EHPS)という中間的な方式もある。
【作動の流れ】
・直進時:コントロール・バルブが中立で、油はポンプからリザーバへ循環するだけ
・操舵時:トーション・バーのねじれを検出してバルブが切り替わり、パワー・シリンダの片側へ油を送る
【点検項目】
・作動油の量、色、におい(泡立ちはエア混入を示す)
・漏れの有無(ホース、ポンプのシール、ギヤ・ボックス)
・ベルトの張り(滑るとアシスト不足になる)
・異音(ポンプの摩耗、エア混入)
【据え切りの注意】ステアリングを端まで切って保持し続けると、リリーフ状態になり油温が急上昇する。シールやポンプを損傷させるため、長時間の据え切りは避ける。
【顧客への助言】停車状態での据え切りを繰り返すと、油温上昇と部品の摩耗を招く。動きながら操舵する方が装置に優しい。
懸架装置全22問中 4問を掲載
問69ショック・アブソーバの役割として適切なものは次のうちどれか。
- 1車輪の向きを決める
- 2車重を支える
- 3衝撃を蓄えるばねの役割を果たす
- 4車高を調整することのみを目的とする
- ✔スプリングの振動を速やかに減衰させる
解説:【正解】5「スプリングの振動を速やかに減衰させる」
【役割】スプリングの振動を減衰させる。
【スプリングだけではどうなるか】路面の凹凸で縮んだスプリングは、その後何度も伸縮を繰り返す。車体は上下に揺れ続け、タイヤも路面から浮いたり接地したりを繰り返す。
【減衰の仕組み】ピストンがオイルの中を動く。オイルがオリフィス(小さな穴)やバルブを通過する際の抵抗が、運動エネルギを熱に変換する。
【2つの減衰】
・伸び側(リバウンド):スプリングが伸びる方向。一般にこちらの減衰力が大きい
・縮み側(バンプ):スプリングが縮む方向。路面からの入力を伝えすぎないよう、比較的小さい
【減衰力が低下すると】
・車体の上下動が長く続く(ふわふわする)
・タイヤの接地性が悪化する → 制動距離が延びる、操縦安定性が低下する
・まだら摩耗(斑状の偏摩耗)が生じる
・段差での突き上げ感が増す(底付きしやすい)
【重要な区別】車高を支えているのはスプリングである。ショック・アブソーバは支えていない。したがって減衰力が低下しても車高は下がらない。車高が下がるのはスプリングのへたりである。
【点検方法】
・バウンス・テスト:車体を押し下げて離し、1〜2回で収まるか確認する。何度も揺れれば減衰力不足
・オイル漏れの目視
・取り外して手で伸縮させ、抵抗が均一か確認する
・ロッドの曲がりや傷
【交換時の注意】左右同時に交換する。片側だけ新品にすると左右の特性が異なり、挙動が不安定になる。
問70スタビライザ(トーション・バー・スプリング)の役割として適切なものは次のうちどれか。
- 1車高を上げる
- 2左右輪が同時に上下するとき作用しロールを抑える
- 3タイヤの偏摩耗を防ぐ
- 4上下振動を減衰させる
- ✔左右輪の上下量に差があるとき作用しロールを抑える
解説:【正解】5「左右輪の上下量に差があるとき作用しロールを抑える」
【役割】旋回時の車体のロール(横傾き)を抑える。
【構造】コの字型のバーで、両端を左右のサスペンションに、中央部を車体に固定する。
【作動原理】
・左右輪が同じ方向に同じ量だけ動く(両輪が同時に段差を越える)→ バーはねじれない → 作用しない
・左右輪の動きに差がある(旋回でロールする)→ バーがねじれる → その反力がロールを抑える
【この特性が重要】乗り心地を損なわずにロールだけを抑えられる。両輪同時の上下動には影響しないため、直進時の乗り心地は変わらない。
【スプリングを硬くする場合との違い】スプリングを硬くすればロールは減るが、乗り心地も硬くなる。スタビライザなら乗り心地を保ったままロールを抑えられる。
【効果】
・旋回時の姿勢が安定する
・ロールによる荷重移動が減り、タイヤの接地性が保たれる
・操縦安定性の向上
【前後のバランス】前後のスタビライザの強さの比を変えることで、車両の操縦特性(アンダステア/オーバステア傾向)を調整できる。
【故障・劣化】
・スタビライザ・リンク(連結ロッド)のボール・ジョイントの摩耗 → 段差でのコトコト音、ロールの増大
・ブシュの劣化 → 異音、効果の低下
・バーの折損(まれ)
【点検】リンクを手で揺すってがたを確認する。ブシュのひび割れや偏りも見る。
【異音の特徴】低速で片輪だけ段差を通過したときの「コトコト」という音は、リンクのがたが典型である。
問71独立懸架式サスペンションが車軸懸架式と比較して優れている点として不適切なものは次のうちどれか。
- 1左右輪が独立して動くため乗り心地が良い
- ✔ホイール・アライメントの変化が少なく構造が単純である
- 3車高を低くしやすい
- 4ばね下重量が小さく接地性が良い
- 5操縦安定性に優れる
解説:【正解】2「ホイール・アライメントの変化が少なく構造が単純である」
【独立懸架式】左右の車輪が独立して上下できる方式である。
【車軸懸架式(リジッド・アクスル)】左右の車輪が1本の車軸で結ばれている方式である。
【独立懸架の利点】
① ばね下重量が軽い:車軸がないため、路面追従性に優れる
② 片輪が段差を越えても、もう一方に影響しない
③ 乗り心地が良い
④ 車輪ごとにアライメントを最適化できる
⑤ 車室やラゲッジの空間を確保しやすい(車軸が通らない)
【車軸懸架の利点】
・構造が簡単で頑丈、コストが低い
・大荷重に耐える(トラックやバスで多用される)
・アライメントが荷重で変化しにくい
・悪路での接地性に優れる場合がある
【誤りやすい記述】「構造が簡単で部品点数が少ない」は車軸懸架の特徴である。独立懸架はリンクやブシュが多く、構造は複雑になる。
【ばね下重量の重要性】軽いほど路面の凹凸に素早く追従できる。
・接地性が向上し、グリップと乗り心地が改善する
・車軸懸架では、片輪が跳ねるともう一方も影響を受ける
【整備上の違い】独立懸架は点検箇所が多い。ボール・ジョイント、ブシュ、リンクのがたを個別に確認する必要がある。
【代表的な形式】マクファーソン・ストラット、ダブル・ウィッシュボーン、マルチリンク。
問72マクファーソン・ストラット式サスペンションの特徴として適切なものは次のうちどれか。
- 1ばね下重量が特に大きい
- 2板ばねを使用する
- 3アッパ・アームを備える
- 4車軸懸架式の一種である
- ✔ショック・アブソーバがサスペンション部材を兼ねる
解説:【正解】5「ショック・アブソーバがサスペンション部材を兼ねる」
【構造】ショック・アブソーバとスプリングを一体化したストラット(支柱)が、そのままサスペンションの構成部材となる。下部をロア・アームで支持し、上部を車体(ストラット・タワー)で支える。
【最大の特徴】ストラット自体が構造部材を兼ねる。上側のアームが不要になる。
【利点】
・部品点数が少なく、構造が簡単
・軽量でコストが低い
・横方向の占有スペースが小さい → エンジン・ルームを広く取れる
・前輪駆動車に適する(横置きエンジンとの相性が良い)
【欠点】
・ストラットが上下動と操舵の両方を担うため、アライメント変化の設計自由度が低い
・ストローク時のキャンバ変化が大きい
・上方向にスペースが必要(ストラット・タワーが高くなる)
【アッパ・マウント(ストラット・マウント)】上端の取付け部である。
・ゴムで振動を絶縁する
・操舵時にストラットが回転するため、ベアリングを内蔵する
【アッパ・マウント劣化の症状】
・操舵時の「ゴリゴリ」「コトコト」という異音
・ステアリングの戻りが悪い
・段差での突き上げ音
・ステアリングに振動が伝わる
【点検】ボンネットを開けてマウント部を目視し、ゴムのひび割れや偏りを確認する。ステアリングを操作しながら、異音や引っ掛かりを確かめる。
【ダブル・ウィッシュボーンとの比較】上下2本のアームで支持する方式は、アライメント変化を細かく設計できるが、部品点数が多く場所を取る。
計算全140問中 4問を掲載
問73シリンダの内径80mm、行程75mm、4気筒のエンジンの総排気量として最も近い値は次のうちどれか。
- 1約2,408cm3
- ✔約1,508cm3
- 3約1,208cm3
- 4約1,808cm3
- 5約2,108cm3
解説:【正解】2「約1,508cm3」
【公式】総排気量=0.785×D²×L×気筒数(D=内径、L=行程、単位はcm)
【計算】0.785×8.0²×7.5=0.785×64×7.5=376.8cm3(1気筒)→ ×4=1,507cm3
【要点】0.785はπ/4のこと。断面積(πD²/4)に行程を掛けると円柱の体積になる。単位をmmのままにすると答えが1000倍ずれるので、必ずcmに直してから計算する。
【間違えやすい点】気筒数を掛け忘れると376.8cm3となり、選択肢の中に紛らわしい値があれば引っかかる。「総」排気量と1気筒の行程容積は別物であることを常に意識する。
【実務では】排気量は車検証の記載事項であり、ボーリングなどで変化すると構造等変更の手続きが必要になる場合がある。
問74行程容積が450cm3、燃焼室容積が50cm3のエンジンの圧縮比として適切なものは次のうちどれか。
解説:【正解】1「10.0」
【公式】圧縮比ε=(行程容積Vs+燃焼室容積Vc)÷Vc=シリンダ全容積÷燃焼室容積
【計算】(450+50)÷50=500÷50=10
【要点】分子は「シリンダ全容積」であり、行程容積だけではない。ピストンが下死点にあるときの容積を、上死点にあるときの容積で割った比率が圧縮比である。
【間違えやすい点】450÷50=9としてしまう誤りが最も多い。燃焼室容積を分子にも加えることを忘れない。
【関連】ガソリンの圧縮比は概ね9〜13。高いほど熱効率は上がるが、圧縮端の温度・圧力が上がるためノッキングしやすくなる。この相反をどう解決するかが技術の要点となる。
問75図示出力80kW、軸出力(正味出力)68kWのエンジンの機械効率として適切なものは次のうちどれか。
解説:【正解】5「85%」
【公式】機械効率=軸出力(正味出力)÷図示出力×100
【計算】68÷80×100=85%
【要点】図示出力はシリンダ内で発生した仕事、軸出力は実際にクランクシャフトから取り出せる仕事である。その差15%が機械損失で、内訳はピストンや軸受の摩擦、オイル・ポンプやウォータ・ポンプなど補機の駆動に費やされる。
【間違えやすい点】80÷68として1を超える値にしないこと。効率は必ず100%以下になるので、大きい方で割るのが常に分母である。
【実務では】機械損失は低温時に増える。冷間時に燃費が悪化する一因であり、指定粘度のオイルを使う理由でもある。
問76軸トルクが200N・m、エンジン回転速度が3,000min-1のときの軸出力として最も近い値は次のうちどれか。
- 1約42kW
- ✔約63kW
- 3約75kW
- 4約52kW
- 5約31kW
解説:【正解】2「約63kW」
【公式】P〔kW〕=2π×N×T÷60,000(N=回転速度min⁻¹、T=トルクN・m)
【計算】2×3.14×3,000×200÷60,000=3,768,000÷60,000=約62.8kW
【要点】この式は「1回転あたりの仕事=2πT」を毎秒あたりに直したもの。60で割って毎秒に、1000で割ってkWにするので合わせて60,000で割る。
【要点2】出力はトルクと回転速度の積である。同じトルクでも回転が2倍なら出力も2倍になる。二輪が小排気量でも高出力を出せるのは、高回転を使えるためである。
【関連】トルクは「力の強さ」、出力は「単位時間あたりの仕事量」。登坂力に効くのはトルク、最高速に効くのは出力と覚えると理解しやすい。
安全装置全9問中 4問を掲載
問77SRSエアバッグの整備に関する記述として不適切なものは次のうちどれか。
- 1配線コネクタは黄色などで識別されていることが多い
- 2作業前にバッテリのマイナス端子を外し、規定時間放置する
- 3取外したエアバッグ・モジュールはパッド面を上にして保管する
- ✔テスタでインフレータの導通を直接測定して点検する
- 5インフレータは衝撃や熱を与えないよう取り扱う
解説:【正解】4「テスタでインフレータの導通を直接測定して点検する」
【SRSとは】Supplemental Restraint System(補助拘束装置)の略である。シートベルトを「補助」するものであり、単独で乗員を保護するものではない。
【作業前の必須手順】
① イグニッションをOFFにする
② バッテリのマイナス端子を外す
③ 規定時間放置する(一般に数分〜十数分)
【③が必須である理由】SRSシステムにはバックアップ電源(コンデンサ)がある。衝突でバッテリの配線が切れても展開できるようにするためである。この電荷が残っている間は、作業中に展開する危険がある。
【絶対にしてはならないこと】インフレータの導通をテスタで直接測定することである。
・テスタが流す微小な電流でも、インフレータが展開する危険がある
・展開すれば重篤な傷害を負う
・点検は専用の故障診断機で行う
【その他の注意】
・インフレータに衝撃や熱を加えない
・保管する場合は指定の向きと場所で
・作動済みの部品は再使用できない
・廃棄にも規定がある
【カーテン・エアバッグ、サイド・エアバッグの注意】ピラーやシートの内装を脱着する際
・インフレータや配線を損傷させない
・展開経路に部品を追加しない
・配線を展開範囲に通さない
これらは正常な展開を妨げる。
【警告灯が点灯している場合】衝突時に正常に展開しないおそれがある。速やかな点検が必要である。走行はできるが、乗員保護の機能が失われている可能性を顧客に伝える。
【診断】専用の診断機でDTCを読み取る。SRSは専用の診断ラインを持つ車種もある。
問78ハイブリッド車・電気自動車の高電圧系統を扱う際の注意事項として不適切なものは次のうちどれか。
- ✔低電圧系と同様に素手で扱ってよい
- 2作業区域を表示し関係者以外の立入りを制限する
- 3高電圧ケーブル(橙色等)を不用意に切断・接続しない
- 4絶縁保護具(高電圧用手袋等)を使用する
- 5作業前にサービス・プラグ等を抜き、規定時間放置して残留電圧を放電させる
解説:【正解】1「低電圧系と同様に素手で扱ってよい」
【必須の手順】
① 作業区域を表示し、関係者以外の立入りを制限する
② イグニッションをOFFにし、キーを管理する
③ 絶縁用保護具を着用する
④ サービス・プラグを抜いて電源を遮断する
⑤ 抜いたプラグは自分で保管する(他者が誤って戻さないため)
⑥ 規定時間放置する
⑦ 電圧計で残留電圧がないことを確認する
【⑥規定時間の待機が必須である理由】インバータ内部の平滑コンデンサに電荷が残る。
・容量が大きく、危険な電圧を保持する
・自然放電に数分から十数分かかる
・待たずに触れれば感電する
【不適切な記述】「電源遮断後は直ちに高電圧端子に触れてよい」である。これは最も危険な誤りである。
【⑦の確認が最終的な保証】待機時間は目安である。実際に電圧がないことを測定して確認する。この確認を省略してはならない。
【資格と教育】所定の教育を受けた者が作業する。事業場としての体制整備も求められる。
【絶対にしてはならないこと】
・高電圧ケーブルの切断による電源遮断
・資格のない者による作業
・充電中の整備
・濡れた手や環境での作業
【識別】高電圧ケーブルはオレンジ色である。この色のケーブルには不用意に触れない。
【事故車の取扱い】絶縁が破れている可能性がある。より慎重な手順が必要である。損傷したバッテリは遅発性の発火リスクもある。
【12V系との違い】12Vの感覚で扱うと致命的である。数百Vの直流は人体に流れれば命に関わる。
問79シートベルトのプリテンショナに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1走行中に常時作動する装置である
- 2整備時に特別な注意は不要である
- ✔衝突時に瞬時にベルトを巻き取り、乗員の拘束を早める装置である
- 4ベルトを緩める装置である
- 5エアバッグとは無関係である
解説:【正解】3「衝突時に瞬時にベルトを巻き取り、乗員の拘束を早める装置である」
【役割】衝突の瞬間、シートベルトを瞬時に巻き取り、乗員を座席に密着させる。
【なぜ必要か】通常の状態では、ベルトと身体の間にわずかな余裕(スラック)がある。衝突時にこの余裕があると
・乗員の移動量が増える
・エアバッグとの位置関係が最適でなくなる
・拘束が遅れる
プリテンショナがこの余裕を瞬時に取り除く。
【作動の仕組み】多くは火薬(ガス発生剤)を用いる。点火するとガスが発生し、ピストンやワイヤを介してリトラクタを急速に巻き取る。
【フォース・リミッタとの組合せ】プリテンショナで締めた後、一定以上の力がかかるとベルトを少しずつ繰り出す機構である。
・胸部への荷重を制限する
・エアバッグと協調して、拘束と衝撃緩和を両立する
【作動済み部品の扱い】火薬式は一度作動すると機能が失われる。
・再使用できない
・必ず交換する
・巻き直せば使えるというものではない
【SRSシステムの一部】エアバッグと同じ制御ユニットで管理される。
・作業前の電源遮断と規定時間の待機が必要
・導通をテスタで測定してはならない
・診断機でDTCを確認する
【点検項目】
・警告灯の状態
・ウェビングの損傷、ほつれ
・巻取りとロックの作動
・バックルの確実な結合と解除
・取付けボルトの緩み
【事故歴のある車両】作動済みかどうかを確認する。作動していれば交換が必要である。
問80事故で損傷したハイブリッド車・電気自動車を取り扱う際の注意事項として適切なものは次のうちどれか。
- 1高電圧ケーブルを切断して電源を切る
- ✔高電圧系の損傷や漏電のおそれがあるため、所定の教育を受けた者が手順に従って対応する
- 3水をかけて冷却すればよい
- 4損傷部を素手で確認する
- 5通常の車両と同様に扱ってよい
解説:【正解】2「高電圧系の損傷や漏電のおそれがあるため、所定の教育を受けた者が手順に従って対応する」
【最大のリスク】高電圧系の絶縁が損なわれている可能性である。
【損傷車で起こりうること】
・高電圧ケーブルの被覆の破れ
・駆動用バッテリの変形、損傷
・インバータの損傷
・車体への漏電
【取扱いの基本】
① 触れる前に、感電のリスクを前提とする
② 絶縁用保護具を着用する
③ 車両を移動する前に、可能なら電源を遮断する
④ メーカ指定の緊急時対応手順に従う
【駆動用バッテリの危険】損傷したリチウムイオン電池は
・内部短絡により発熱する
・時間をおいてから発火することがある(遅発性)
・一度消火しても再発火する可能性がある
・特有の消火方法が必要な場合がある
【したがって】
・損傷車は隔離した場所に保管する
・可燃物から離す
・一定期間、監視する
・水濡れにも注意する
【浸水した車両】絶縁が低下している可能性が高い。乾燥させても内部に水分が残ることがある。安易に通電してはならない。
【レスキュー・シート】多くのメーカが、緊急時の対応手順を示す資料を公開している。高電圧系の遮断位置、切断してはならない箇所などが示されている。
【誤りやすい記述】「外観に損傷がなければ通常どおり扱ってよい」は不適切である。内部の損傷は外観では判断できない。
【搬送】積載車で運ぶ。牽引は駆動系への影響があるため、車種の指示を確認する。
【判断に迷う場合】メーカや専門部署に確認する。自己判断で作業を進めない。
空調全17問中 4問を掲載
問81カー・エアコンの冷凍サイクルにおける冷媒の流れの順序として適切なものは次のうちどれか。
- 1膨張弁 → コンプレッサ → エバポレータ → コンデンサ
- ✔コンプレッサ → コンデンサ → 膨張弁(エキスパンション・バルブ) → エバポレータ
- 3コンデンサ → コンプレッサ → エバポレータ → 膨張弁
- 4エバポレータ → 膨張弁 → コンデンサ → コンプレッサ
- 5コンプレッサ → エバポレータ → コンデンサ → 膨張弁
解説:【正解】2「コンプレッサ → コンデンサ → 膨張弁(エキスパンション・バルブ) → エバポレータ」
【流れの順序】コンプレッサ → コンデンサ → レシーバ(またはリキッド・タンク) → 膨張弁 → エバポレータ → コンプレッサ(に戻る)
【各部での状態変化】
① コンプレッサ:低温低圧の気体を圧縮し、高温高圧の気体にする
② コンデンサ:走行風とファンで冷却し、放熱させる。気体が液体に変わる(凝縮)
③ レシーバ:液体を貯め、水分と異物を除去する。気泡を分離する
④ 膨張弁:細い通路を通して急激に減圧する。低温低圧の霧状になる
⑤ エバポレータ:周囲の空気から熱を奪って気化する。ここで空気が冷える
⑥ コンプレッサへ戻る
【冷える仕組み】液体が気体に変わるとき、周囲から熱を奪う(気化潜熱)。エバポレータでこの現象を起こし、通過する空気を冷やしている。
【なぜ圧縮するのか】気体のままでは液化しない。圧縮して高圧にすることで、常温の外気でも凝縮(液化)できるようになる。
【圧力の分布】
・高圧側:コンプレッサ出口 → コンデンサ → レシーバ → 膨張弁の入口まで
・低圧側:膨張弁の出口 → エバポレータ → コンプレッサの入口まで
膨張弁が高圧と低圧の境界である。
【除湿の効果】エバポレータで空気が冷えると、含まれる水分が結露する。これにより除湿されるため、窓の曇り取りにも有効である。
【ドレン】結露した水は車外へ排出される。夏場に車の下に水たまりができるのはこのためで、正常である。
【診断への応用】各部の温度を触って確認すると、詰まりや不良の箇所を推定できる。
問82エアコンの効きが悪く、サイト・グラスに気泡が多く見られる場合に最も考えられる原因は次のうちどれか。
- 1コンプレッサの回転過大
- ✔冷媒量の不足または漏れ
- 3エバポレータの凍結
- 4冷媒の入れすぎ
- 5ブロワ・モータの不良
解説:【正解】2「冷媒量の不足または漏れ」
【サイト・グラスとは】高圧側の配管に設けられた覗き窓である。冷媒の状態を目視で確認できる。
【正常な状態】適正量なら、液体が満たされて透明に見える。わずかな気泡は許容される。
【気泡が多い場合】冷媒が不足している。
【なぜ気泡になるか】冷媒が足りないと、コンデンサで凝縮しきれず、気体と液体が混ざった状態で流れる。これが気泡として見える。
【冷えない理由】膨張弁へ気体が混ざって送られると
・エバポレータへ送られる液体の量が減る
・気化できる量が減り、奪える熱も減る
・結果として冷えない
【他の状態と圧力の関係】
・冷媒不足 → 高圧側も低圧側も低い
・過充填 → 高圧側も低圧側も高い
・詰まり → 高圧が高く、低圧が異常に低い(真空側)
・コンプレッサ不良 → 高圧が低く、低圧が高い
サイト・グラスと圧力の両方で判断する。
【冷媒が減る理由】配管は完全な密閉ではない。継手やホースから、年数とともに微量ずつ漏れる。数年で補充が必要になることもある。
【対応】単に補充するのではなく、漏れ箇所を特定する。
・蛍光剤を入れてブラックライトで確認する
・電子式のガス・リーク・テスタを使う
・石けん水で泡立ちを見る
【重要な注意】冷媒の大気放出は法令で禁止されている。回収装置を用い、回収量と充填量を記録して管理する。
【近年の車両】サイト・グラスがない車種も多い。その場合は圧力と温度で判断する。
問83エアコン用コンプレッサのマグネット・クラッチの役割として適切なものは次のうちどれか。
- 1冷媒の流量を検出する
- 2車室内の空気を送る
- 3冷媒を圧縮する
- ✔必要時のみエンジンの動力をコンプレッサへ断続して伝える
- 5冷媒を膨張させる
解説:【正解】4「必要時のみエンジンの動力をコンプレッサへ断続して伝える」
【役割】エンジンの動力とコンプレッサの間で、動力を断続する。
【なぜ断続が必要か】
・エアコンが不要なとき、コンプレッサを回すのは動力の無駄である
・室温が設定に達したら止める
・保護のため止める必要がある場合がある
【構造】
・プーリ:ベルトで常に回っている
・アーマチュア(可動板):コンプレッサの軸に取り付けられている
・コイル:通電すると電磁石になる
【動作】コイルに通電すると、電磁力でアーマチュアがプーリに吸着される。両者が一体となって回転し、動力が伝わる。通電を切れば離れ、プーリだけが空転する。
【断続する条件】
・エアコンのスイッチ操作
・室温が設定に達したとき(サーモスタット制御)
・エバポレータの温度が低すぎるとき(凍結防止)
・冷媒圧力が異常なとき(高圧・低圧スイッチによる保護)
・エンジンの高負荷時(一時的に切る制御)
・アイドリング時のエンスト防止
【故障の症状】
・コイルの断線 → 吸着せず、コンプレッサが回らない
・クリアランスの過大 → 吸着不良、滑り、異音
・摩擦面の摩耗 → 滑って動力が伝わらない
・ベアリングの摩耗 → 異音(エアコンOFFでも音がする。プーリは常に回っているため)
【診断の手がかり】
・エアコンONで異音が出る → クラッチ接続後に回る部分(コンプレッサ内部、クラッチ)
・OFFでも異音 → プーリのベアリング
【点検】端子への電圧、コイルの抵抗、クリアランス、吸着の作動音を確認する。
問84レシーバ(リキッド・タンク)の役割として適切なものは次のうちどれか。
- 1冷媒を圧縮する
- 2車室内の空気を送る
- ✔液冷媒を一時的に蓄え、水分と異物を除去して安定した供給を行う
- 4冷媒を膨張させる
- 5冷媒を蒸発させる
解説:【正解】3「液冷媒を一時的に蓄え、水分と異物を除去して安定した供給を行う」
【配置】コンデンサと膨張弁の間、高圧側にある。
【3つの役割】
① 液体の貯蔵:負荷変動に応じて必要な冷媒量が変わる。余剰分を貯めて調整する
② 水分の除去:内部の乾燥剤(デシカント)が水分を吸着する
③ 異物の除去:フィルタで金属粉などを捕らえる
【②水分除去がなぜ重要か】系統内に水分があると
・膨張弁の細い通路で氷結し、流路を塞ぐ(冷えたり冷えなかったりを繰り返す)
・冷媒や冷凍機油と反応して酸を生じ、内部を腐食させる
・コンプレッサの損傷につながる
【気液分離の役割】コンデンサで凝縮しきれなかった気体を分離し、液体だけを膨張弁へ送る。膨張弁は液体を減圧する前提で設計されているため、気体が混ざると性能が落ちる。
【交換のタイミング】
・系統を開放する修理を行ったとき
・冷媒が漏れて空気が侵入したとき
・コンプレッサを交換したとき
乾燥剤は開放した時点で大気中の水分を吸ってしまうため、その効果が失われる。
【なぜ交換が必要か】乾燥剤の吸着能力には限界がある。飽和した状態では水分を取り除けない。
【アキュムレータとの違い】膨張弁式ではレシーバ(高圧側)、オリフィス・チューブ式ではアキュムレータ(低圧側)が使われる。役割は似ているが配置が異なる。
【真空引きの意義】修理後は必ず真空引きを行う。系統内の空気と水分を除去するためである。時間をかけることで水分が気化して排出される。
環境全17問中 4問を掲載
問85廃エンジン・オイルの処理に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1下水に流してよい
- 2一般ごみとして廃棄してよい
- 3土に埋めてよい
- ✔産業廃棄物として法令に従い適正に処理・委託する
- 5蒸発させて処理する
解説:【正解】4「産業廃棄物として法令に従い適正に処理・委託する」
【法的な位置づけ】廃油は産業廃棄物である。適正な処理が義務付けられている。
【排出事業者の責任】整備工場は排出事業者にあたる。処理を委託しても、責任がなくなるわけではない。
【必要な手続き】
① 許可を受けた処理業者に委託する
② 委託契約を書面で結ぶ
③ マニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付する
④ 処理の完了を確認する(マニフェストの返送を確認する)
⑤ 記録を保存する
【マニフェストの意義】廃棄物が最終処分まで適正に処理されたことを追跡する仕組みである。返送されない場合は、処理が確認できていないことを意味する。
【絶対にしてはならないこと】
・排水口や側溝へ流す
・地面に撒く、埋める
・一般ごみとして出す
・焼却する
【なぜ厳しいか】
・わずかな量でも大量の水を汚染する
・土壌に浸透すれば長期にわたって残留する
・地下水の汚染につながる
【保管時の注意】
・指定された容器に入れる
・雨水がかからないようにする
・流出防止の措置を講じる
・他の廃棄物と混合しない
【リサイクル】廃油は再生重油や潤滑油の原料として利用される。適正なルートに乗せることで資源として活用される。
【他の廃棄物】不凍液、洗浄液、廃バッテリ、廃タイヤ、フロン類も、それぞれ適正な処理が必要である。
問86カー・エアコンの冷媒(フロン類)の取扱いに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1大気に放出してよい
- 2水で希釈して排出してよい
- 3一般ごみとして廃棄してよい
- 4少量なら放出してもよい
- ✔回収装置を用いて回収し、大気への放出は認められない
解説:【正解】5「回収装置を用いて回収し、大気への放出は認められない」
【法的規制】フロン類の大気放出は法令で禁止されている。回収が義務付けられている。
【なぜ規制されるか】
・オゾン層の破壊(旧冷媒のCFC、HCFC)
・地球温暖化への影響(HFCも温室効果が非常に大きい)
【冷媒の種類の変遷】
・R-12(CFC):オゾン層破壊のため全廃
・R-134a(HFC):オゾン層は破壊しないが、温室効果が大きい
・R-1234yf(HFO):温室効果が小さい。近年の新型車で採用が進む
【混用の禁止】種類が異なる冷媒は混用できない。
・冷凍機油の種類も異なる
・圧力特性が異なる
・充填口の形状も異なる(誤充填防止のため)
【回収の手順】
① 専用の回収装置を接続する
② 冷媒を回収する
③ 回収量を記録する
④ 修理後、真空引きを行う
⑤ 規定量を充填し、充填量を記録する
【回収量と充填量の記録の意義】
・法令上の記録義務
・次回との比較で漏れの有無を推定できる
・過充填、充填不足の防止
【真空引きの重要性】系統内の空気と水分を除去する。水分が残ると
・膨張弁で氷結して流路を塞ぐ
・冷媒や油と反応して酸を生じ、内部を腐食させる
時間をかけて行うことで、水分が気化して排出される。
【電動車の注意】電動コンプレッサには絶縁性の高い専用油が必要である。回収充填機も専用のものを使い、一般車用と分ける。
問87整備工場から排出される廃液(不凍液・洗浄液等)の取扱いとして適切なものは次のうちどれか。
- 1蒸発させる
- 2下水に流す
- 3土壌に散布する
- ✔種類ごとに分別・保管し、許可業者に委託して適正に処理する
- 5一般ごみとして廃棄する
解説:【正解】4「種類ごとに分別・保管し、許可業者に委託して適正に処理する」
【法的な位置づけ】産業廃棄物である。適正な処理が義務付けられている。
【排出事業者の責任】整備工場が排出事業者にあたる。処理を委託しても責任は残る。
【必要な手続き】
① 許可を受けた処理業者に委託する
② 委託契約を書面で結ぶ
③ マニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付する
④ 処理の完了を確認する(返送されたマニフェストを確認する)
⑤ 記録を保存する
【種類ごとの分別】性状が異なるため、混合してはならない。
・廃油(エンジン・オイル、ギヤ・オイル)
・不凍液(エチレン・グリコール)
・ブレーキ液
・洗浄液、有機溶剤
・バッテリ液(希硫酸)
混合すると処理が困難になり、危険な反応を起こすこともある。
【絶対にしてはならないこと】
・排水口や側溝へ流す
・地面に撒く、埋める
・一般ごみとして出す
【なぜ厳しいか】
・エチレン・グリコールは有毒である
・わずかな量でも大量の水を汚染する
・土壌に浸透すれば長期にわたり残留する
・地下水の汚染につながる
【保管時の注意】
・指定された容器に入れ、種類を表示する
・雨水がかからないようにする
・流出防止の措置を講じる
【意識の問題】「少量だから」という判断が環境汚染につながる。日常的な意識が重要である。
問88省資源・省エネルギの観点から整備士が顧客に助言できる内容として不適切なものは次のうちどれか。
- ✔エンジンを常に高回転で使用する
- 2急加速・急減速を避ける
- 3定期的な点検整備による性能維持
- 4適正なタイヤ空気圧の維持
- 5不要な荷物を積んだままにしない
解説:【正解】1「エンジンを常に高回転で使用する」
【適切な助言】
① 適正な空気圧の維持:転がり抵抗が減り、燃費が改善する
② 不要な荷物を降ろす:重量が減れば燃費が改善する
③ 不要なアイドリングを避ける
④ 急発進・急加速を控える
⑤ 適切な整備の実施(エア・クリーナ、プラグ、O2センサ、ブレーキの引きずり)
⑥ 計画的な部品交換による長寿命化
⑦ ルーフ・キャリアなど不要な装着物を外す
【①の効果】空気圧が不足すると転がり抵抗が増え、燃費が悪化する。同時にタイヤの寿命も縮む。月1回程度の点検を勧める。
【⑤整備の効果】
・エア・クリーナの詰まり → 出力低下、燃費悪化
・O2センサの応答低下 → 燃調が最適でなくなる
・サーモスタットの開固着 → 暖機補正が続き燃費が悪化
・ブレーキの引きずり → 走行抵抗の増大
【不適切な助言】「常に高いギヤで低速走行する」ことである。
【なぜ不適切か】
・エンジンに過大な負荷がかかる
・ノッキングが発生しやすくなる
・駆動系(クラッチ、変速機)への負担が増える
・かえって燃費が悪化することもある
適切なギヤ選択が前提である。
【他の不適切な例】
・タイヤの空気圧を規定以上に高くする(乗り心地と接地性の悪化、偏摩耗)
・エンジン・オイルを規定より柔らかいものにする(油膜の保持が不十分になる)
【顧客への伝え方】具体的な数値を示すと理解が得られやすい。「1km/L改善すれば年間○円」といった換算が有効である。
測定全18問中 4問を掲載
問89外側マイクロメータに関する記述として不適切なものは次のうちどれか。
- 1ラチェット・ストップを用いて一定の測定力で測る
- 2スピンドルとアンビルの汚れを除去してから測定する
- 3使用前に基準器やゼロ点で校正する
- ✔測定力は強いほど正確に測れる
- 5最小読取値は一般に0.01mmである
解説:【正解】4「測定力は強いほど正確に測れる」
【基本仕様】最小読取値は一般に0.01mmである。0.001mmが読めるデジタル式もある。
【正しい取扱い】
① 使用前にゼロ点を確認する:測定面を合わせ、目盛がゼロを示すか確認する。ずれていれば調整する
② 測定面と被測定物を清掃する:異物があれば誤差になる
③ ラチェット・ストップを使う:一定の測定力を保つため。強く締めすぎると誤差が生じ、フレームも変形する
④ 温度をなじませる:金属は温度で膨張する。手で長く握ると体温で変化する
【保管】
・測定面を軽く離して保管する(密着させると錆で固着することがある)
・清掃し、防錆処置をする
・落下や衝撃を避ける
【誤りやすい記述】「強く締め付けるほど正確に測れる」は誤りである。過大な測定力は
・被測定物を変形させる
・フレームをたわませる
・測定面を摩耗させる
いずれも誤差の原因になる。
【定期校正】使用や経年により精度が変化する。基準ゲージ(ゲージ・ブロック)で確認し、必要なら調整する。落下させた場合は定期に関わらず確認する。
【測定範囲】0〜25mm、25〜50mmといった範囲ごとに製品が分かれている。範囲外は測定できない。
【使い分け】
・マイクロメータ:0.01mm単位の高精度。外径測定
・ノギス:0.05または0.02mm単位。多用途(外径、内径、深さ、段差)
用途に応じて選ぶ。
問90シリンダ・ゲージ(ボア・ゲージ)による内径測定に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1測定力は不要である
- 21か所だけ測定すればよい
- 3測定子を最も傾けた位置の値を読む
- 4そのまま絶対値を読み取れる
- ✔外側マイクロメータで基準寸法にゼロ点を合わせてから測定する
解説:【正解】5「外側マイクロメータで基準寸法にゼロ点を合わせてから測定する」
【最も重要な性質】シリンダ・ゲージは「比較測定器」である。絶対値を直接読むことはできない。
【使用手順】
① 外側マイクロメータを、測定する内径の基準寸法に合わせる
② シリンダ・ゲージの測定子をマイクロメータの間に挟み、ダイヤルをゼロに合わせる
③ この状態でシリンダ内に挿入し、基準寸法との差を読む
【なぜゼロ合わせが必要か】ゲージ自体は「基準からのずれ」しか示さない。基準を与えなければ絶対値にならない。
【測定時の重要な操作】ゲージを前後に振り、指針が反転する点を読む。
【なぜ最小値を読むか】測定子が直径の位置にあるとき、測定子間の距離が最も短くなる。斜めになっていれば実際より長く測れる。したがって振ったときの「最小値」が正しい内径である。
【最大値を読むと】斜めの状態を測ることになり、実際より大きい値が出る。誤判定につながる。
【測定箇所】上・中・下の3か所で、それぞれ直交2方向を測定する(計6点)。
・上下の差 → テーパ摩耗
・同一断面の直交差 → 真円度
【上部が最も摩耗する理由】
① 燃焼圧力が最大で、リングが最も強く押し付けられる
② ピストン速度がゼロで、油膜が最も薄い
③ 温度が最も高い
【判定】最大摩耗量、テーパ、真円度をそれぞれ規定値・使用限度と比較する。
【温度の影響】測定は温度が安定した状態で行う。ゲージと被測定物の温度差は誤差になる。
問91シリンダ内径を測定したところ、上部で86.10mm、下部で86.00mmであった。このテーパ摩耗量として適切なものは次のうちどれか。
- 10.05mm
- ✔0.10mm
- 30.86mm
- 40.15mm
- 50.20mm
解説:【正解】2「0.10mm」
【テーパ摩耗の定義】シリンダの上部と下部における内径の差である。
【計算】86.10−86.00=0.10mm
【なぜ上部が大きいか】上死点付近の摩耗が最も進むためである。3つの悪条件が重なる。
① 燃焼圧力が最大:ピストン・リングがシリンダ壁に最も強く押し付けられる
② ピストン速度がゼロ:油膜は速度によって形成されるため、この瞬間が最も薄い
③ 温度が最も高い:燃焼室に近く、油膜が保持しにくい
「圧力が最大なのに油膜が最も薄い」という最悪の組合せである。
【正確には】最も摩耗するのは「トップ・リングが上死点にある位置」である。シリンダ最上部ではない。リングが到達しない部分は摩耗しないため、そこに段差(リッジ)ができる。
【リッジの処理】段差が残ったままピストンを抜くと、リングが引っ掛かって損傷する。リッジ・リーマで除去してから作業する。
【真円度との違い】
・テーパ摩耗:上下の差(縦方向の偏り)
・真円度:同一断面の直交2方向の差(断面の楕円度)
測定は上・中・下×直交2方向の計6点で行う。
【なぜ楕円になるか】燃焼圧力を受けてピストンが押し付けられる方向(スラスト方向)が集中的に摩耗する。
【判定】使用限度と比較する。超えていればボーリングまたは交換となる。
【ボーリング後】ホーニングでクロスハッチを付ける。この溝が油膜を保持する。オーバサイズ・ピストンを組み、クリアランスを規定値に合わせる。
問92ピストン外径が85.94mm、シリンダ内径が86.00mmであった場合のピストン・クリアランスとして適切なものは次のうちどれか。
- 10.12mm
- 21.06mm
- ✔0.06mm
- 40.03mm
- 50.60mm
解説:【正解】3「0.06mm」
【計算】シリンダ内径−ピストン外径=86.00−85.94=0.06mm
【クリアランスの必要性】ピストンはアルミ合金で熱膨張が大きい。冷間時にすき間がないと、暖機後に膨張して焼付く。
【測定位置の指定】ピストン外径は、スカート部の指定された高さで、ピン穴と直角の方向を測る。
・ピストンは真円ではなく、わずかに楕円(オーバル)に作られている
・熱膨張後に真円になる設計である
・したがって測定位置と方向が指定されている
【クリアランス過大の症状】
・冷間時のピストン・スラップ(打音):暖機で軽減する
・圧縮漏れ、ブローバイの増加
・オイル消費の増加
【クリアランス過小の症状】
・熱膨張ですき間がなくなり、油膜が保持できない
・かじり、焼付き
・暖機後に顕著になる
【症状が正反対】過大は冷間時、過小は暖機後に問題が出る。この違いが診断の手がかりになる。
【スカートの形状】
・バレル形状:中央が膨らんでいる。傾いたときの当たりを分散させる
・オーバル:ピン穴方向を小さくし、熱膨張後に真円にする
・テーパ:上部を小さくし、熱膨張の大きい部分に余裕を持たせる
【組付け時の注意】ピストンには向きがある。フロント・マークを確認する。オフセットやスカート形状が非対称のため、逆に組むと打音や偏摩耗を招く。
材料全9問中 4問を掲載
問93エンジンのシリンダ・ブロックにアルミニウム合金が用いられる理由として適切なものは次のうちどれか。
- 1強度が鋳鉄より高いため
- 2安価であるため
- 3熱膨張が小さいため
- ✔軽量で熱伝導率が高いため
- 5鋳鉄より耐摩耗性に優れるため
解説:【正解】4「軽量で熱伝導率が高いため」
【主な理由】
① 軽量である:鋳鉄の約1/3の密度。車両重量の削減に大きく寄与する
② 熱伝導性が良い:燃焼熱を効率よく冷却水へ伝えられる
③ 加工性が良い
【軽量化の効果】
・燃費の改善
・運動性能の向上
・前後の重量配分の改善(エンジンは車両の重い部品の一つ)
【熱伝導性の利点】
・局部的な過熱が起きにくい
・冷却が均一になり、熱歪みが小さい
・ノッキングしにくくなる
【弱点と対策】
・耐摩耗性が不足する → シリンダ内面に鋳鉄ライナを鋳込む、またはメッキ処理を施す
・強度が鋳鉄より低い → 肉厚を増やす、補強構造を採る
・熱膨張が大きい → クリアランス設計に配慮する
・軟らかく、ねじ山を損傷しやすい → 締付けトルクの管理が重要
【ライナの種類】
・ドライ・ライナ:冷却水に触れない。圧入される
・ウェット・ライナ:外周が直接冷却水に接する。冷却性能が高いが、シールと突出し量の管理が必要
【メッキ処理】ニカジルなどのメッキをシリンダ内面に施す方式もある。ライナが不要で軽量、冷却性能も高い。ただし損傷すると再メッキまたは交換となり、ボーリングでの修復ができない。
【整備上の注意】
・アルミ部品は締めすぎでねじ山を潰しやすい。必ずトルク・レンチを使う
・異種金属との接触で電食が起こりうる。冷却水の添加剤管理が重要
・熱歪みが生じたら平面度を確認する
問94ボルトの強度区分「8.8」が示す内容として適切なものは次のうちどれか。
- 1締付けトルクが8.8N・mであること
- 2ピッチが0.8mmであること
- ✔引張強さが約800N/mm2で、降伏点が引張強さの約80%であること
- 4ねじ径が8mmであること
- 5材質が炭素鋼であること
解説:【正解】3「引張強さが約800N/mm2で、降伏点が引張強さの約80%であること」
【表示の意味】
・前の数字「8」×100 = 引張強さ(最小値)約800N/mm²
・前後を掛けた「8×8」=80 → 降伏点が引張強さの80%
つまり、引張強さ約800N/mm²、降伏点約640N/mm²である。
【引張強さと降伏点】
・引張強さ:破断する応力
・降伏点:塑性変形が始まる応力。これを超えると元に戻らない
【なぜ両方が重要か】ボルトは通常、降伏点以下の弾性域で使う。締め付けたボルトが伸びて元に戻ろうとする力(軸力)で部品を締結している。
【主な強度区分】
・4.8、5.8:一般用
・8.8、10.9、12.9:高強度用
数字が大きいほど強い。
【重要な注意:混用の禁止】
・強度の低いボルトを高強度が必要な箇所に使うと、破断や緩みを招く
・見た目が同じでも強度が異なることがある。頭部の刻印を確認する
・特に足回り、制動装置、エンジン懸架部では致命的である
【塑性域締付けボルト】あえて降伏点を超えて締め付ける方式である。
・軸力のばらつきが小さくなる
・より高い軸力が安定して得られる
・締めるたびに伸びるため、再使用回数に制限がある。原則新品交換
【締付けトルクとの関係】規定トルクは、そのボルトの強度と用途に応じて定められている。トルクが同じでも、ねじ部の潤滑状態で軸力は変わる。指定された条件(乾燥、オイル塗布など)を守る。
【識別】頭部に「8.8」などの刻印がある。ステンレス製は別の表示体系である。
問95ボルトに座金(ワッシャ)を用いる主な目的として適切なものは次のうちどれか。
- 1締付け順序を決める
- ✔座面の面圧を分散し、被締結物の陥没や損傷を防ぐ
- 3締付けトルクを増やす
- 4ねじの強度区分を上げる
- 5ボルトを長くする
解説:【正解】2「座面の面圧を分散し、被締結物の陥没や損傷を防ぐ」
【主な目的】
① 座面の面圧を分散させる:被締結物の陥没や変形を防ぐ
② 座面を保護する:ボルト頭やナットの回転による傷を防ぐ
③ 座面を平滑にする:粗い面や穴が大きい場合に、確実な着座を得る
【①が最も重要】軟らかい材料(アルミ、樹脂)や、穴が大きい場合、ボルト頭の小さな面積で締め付けると
・座面が陥没する
・軸力が失われて緩む
・被締結物が損傷する
座金で面積を広げることで、面圧を下げられる。
【ばね座金(スプリング・ワッシャ)】
・ばね力により、軸力の低下を補う
・切り口が食い込むことで回り止めにもなる
・一度使うとばね性が低下するため、原則新品を使用する
【平座金との使い分け】
・平座金:面圧の分散が主目的
・ばね座金:緩み止めが主目的
両方を重ねて使う場合もある(順序に指定があることもある)。
【使ってはいけない場合】
・設計上、座金を使わない前提の箇所(フランジ・ボルトなど)
・座金を追加すると、ねじの掛かり量が減る場合
・軸力の管理に影響する箇所
勝手に追加してはならない。
【重要な前提】座金は「規定トルクで締めたうえでの補助」である。座金があるから締付けが甘くてよい、ということにはならない。適正な軸力の確保が第一である。
【組付け時の注意】元の構成を記録し、同じ順序と枚数で組む。省略や追加は軸力を変える。
問96転がり軸受(ボール・ベアリング)がすべり軸受(メタル)と比較して優れている点として適切なものは次のうちどれか。
- 1製造が容易で安価である
- 2衝撃荷重に強い
- ✔始動時の摩擦が小さく、潤滑が簡単である
- 4分割構造にしやすい
- 5高荷重に対して単位面積あたりの負担が小さい
解説:【正解】3「始動時の摩擦が小さく、潤滑が簡単である」
【転がり軸受の利点】
① 起動時の摩擦が小さい:転がり接触のため、静止状態からの回転が軽い
② 潤滑が容易:グリース封入式なら給油不要のものもある
③ 低速から高速まで安定して使える
④ 軸受すきまの管理が比較的容易
⑤ 交換が容易(ユニットとして交換できる)
【①がなぜ重要か】すべり軸受は、油膜が形成されて初めて低摩擦になる。回転が始まる瞬間は油膜がなく、金属接触に近い状態である。転がり軸受にはこの問題がない。
【すべり軸受の利点】
・大きな荷重に耐える(接触面積が広い)
・衝撃荷重に強い
・振動と騒音が小さい
・軸径を大きくできる(クランクシャフトなど)
・二分割できるため、組付けが容易な箇所がある
【使い分け】
・クランクシャフト、コンロッド:すべり軸受。大きな衝撃荷重を受けるため
・ホイール・ハブ、補機類、変速機:転がり軸受
【すべり軸受の潤滑】油圧で強制的に油を送り、流体潤滑を成立させる。油圧が失われれば即座に焼付く。
【転がり軸受の損傷】
・フレーキング(表面の剥離):疲労による
・圧痕(ブリネル):圧入時に転動体を介して力をかけると生じる
・グリース切れ、水の侵入
【圧入時の注意】力をかける側を間違えると圧痕が残る。内輪を圧入するなら内輪に、外輪なら外輪に力をかける。
燃焼全7問中 4問を掲載
問97燃焼室内のタンブル流(縦渦)を強める目的として適切なものは次のうちどれか。
- 1圧縮比を下げる
- 2冷却損失を増やす
- ✔混合気の均質化と燃焼速度の向上を図る
- 4排気温度を下げる
- 5吸気抵抗を増やす
解説:【正解】3「混合気の均質化と燃焼速度の向上を図る」
【タンブル流とは】燃焼室内で縦方向(シリンダ軸に垂直な軸まわり)に回転する渦である。吸気ポートの形状で作り出す。
【スワール流との違い】
・タンブル:縦渦。シリンダ軸に垂直な軸のまわりに回転する
・スワール:横渦。シリンダ軸のまわりに回転する
ガソリン・エンジンではタンブル、ディーゼルではスワールが用いられることが多い。
【目的】
① 混合気の均質化:燃料と空気を素早く均一に混ぜる
② 火炎伝播の促進:乱れがあると火炎が広がりやすく、燃焼期間が短縮される
③ 希薄燃焼や大量EGRへの対応:燃えにくい条件でも安定して燃焼させる
【なぜ燃焼期間の短縮が重要か】
・燃焼が速いほど、上死点付近でまとまって燃える(等容度が高まる)→ 熱効率が向上する
・末端ガスが圧縮される時間が短くなる → ノッキングが起こりにくい
・冷却損失も減る(熱が壁面へ逃げる時間が短い)
【圧縮行程での挙動】タンブル流はピストンが上昇するにつれて押しつぶされ、崩壊して細かい乱れ(乱流)に変わる。この乱れが点火時に最大になるよう設計されている。
【生成方法】
・吸気ポートの形状(ストレート・ポート)
・タンブル制御弁(低負荷時に吸気を絞って流速を高める)
・ピストン頂部の形状
【整備との接点】吸気ポートやバルブへのデポジット堆積は、この流れを乱して燃焼を悪化させる。直噴エンジンで吸気バルブの汚れが問題になるのは、この理由もある。
問98スキッシュ・エリアの役割として適切なものは次のうちどれか。
- 1燃焼室容積を増やす
- 2排気を導く
- 3バルブを冷却する
- 4オイルを保持する
- ✔圧縮末期にすき間から混合気を押し出して乱れを発生させ、燃焼を促進する
解説:【正解】5「圧縮末期にすき間から混合気を押し出して乱れを発生させ、燃焼を促進する」
【スキッシュ・エリアとは】ピストン頂部とシリンダ・ヘッドが、上死点付近でごく接近する平坦な部分である。
【何が起きるか】ピストンが上死点に近づくと、この狭い隙間にあった混合気が押し出される。squish(押し出す)という語のとおり、勢いよく燃焼室の中央へ流れ込む。
【効果】
① 乱れの生成:押し出された流れが燃焼室内に強い乱れを作る
② 混合の促進:燃料と空気がさらに均一に混ざる
③ 火炎伝播の促進:乱れにより燃焼速度が上がり、燃焼期間が短縮される
④ 末端ガスの冷却:狭い隙間の混合気は壁面に近く冷えやすい。ノッキングの起点になりにくい
【なぜ燃焼期間の短縮が効くか】
・上死点付近でまとまって燃えるほど熱効率が高い
・末端ガスが圧縮される時間が短くなり、ノッキングが抑えられる
・冷却損失も減る
【設計上の注意】隙間が狭すぎるとピストンとヘッドが干渉する。面研やガスケット厚の変更はこの隙間を変えるため、注意が必要である。
【デポジットの影響】スキッシュ・エリアにカーボンが堆積すると
・隙間が狭まり、極端な場合は接触する
・堆積物が蓄熱して過早着火の起点になる
・本来の流れが乱れ、効果が損なわれる
【タンブルやスワールとの関係】これらはいずれも「燃焼室内の乱れを作る」手段である。目的は共通しており、燃焼を速く安定させることにある。
問99正常燃焼における火炎伝播に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1燃焼は圧縮行程で完了する
- 2燃焼室全体が同時に燃える
- ✔点火プラグ付近から燃焼が始まり、火炎が周囲へ広がっていく
- 4端末部から中心へ向かって燃える
- 5火炎は伝播せず自己着火する
解説:【正解】3「点火プラグ付近から燃焼が始まり、火炎が周囲へ広がっていく」
【正常燃焼の過程】
① 点火プラグの電極間で火花が飛ぶ
② その周辺の混合気が着火し、小さな火炎核ができる
③ 火炎核が成長し、球状に広がっていく(火炎伝播)
④ 燃焼室全体に火炎が行き渡り、燃焼が完了する
【火炎伝播の速度】層流燃焼速度は数十cm/s程度だが、燃焼室内の乱れ(タンブル、スワール、スキッシュ)により実効的な伝播速度は大幅に高まる。だからこそ乱れを作る設計が重要になる。
【燃焼期間】一般に、クランク角で数十度の範囲で燃焼が進む。点火は上死点前に行い、最大圧力が上死点後10〜15°付近に来るよう調整する。
【なぜ上死点後10〜15°か】
・上死点前に最大圧力が来ると、ピストンを押し戻す力になり損失となる
・遅すぎると、膨張が始まってから燃えるため仕事に変換されにくい
この範囲が最も効率的とされる。
【異常燃焼との対比】
・ノッキング:点火「後」に、火炎が届く前の末端ガスが自己着火する
・過早着火:点火「前」に、高温部が混合気を着火させる
どちらも急激な圧力上昇を伴い、部品を損傷させる。
【燃焼を速くすることの利点】
・上死点付近でまとまって燃える(等容度が高い)→ 熱効率が向上
・末端ガスが圧縮される時間が短い → ノッキングしにくい
・冷却損失も減る
【整備との接点】デポジットの堆積、混合気の乱れ、点火エネルギの不足は、いずれも燃焼を不安定にする。
問100過早着火(プレイグニッション)に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- ✔点火前に高温部により混合気が着火してしまう現象である
- 2排気が逆流する現象である
- 3点火後に末端ガスが自己着火する現象である
- 4燃料が気化しない現象である
- 5燃焼が遅れる現象である
解説:【正解】1「点火前に高温部により混合気が着火してしまう現象である」
【定義】点火プラグが火花を飛ばす「前」に、燃焼室内の高温部が混合気を着火させてしまう現象である。
【ノッキングとの違い】
・過早着火:点火の「前」に着火する。点火時期の制御が効かない
・ノッキング:点火の「後」、火炎が届く前に末端ガスが自己着火する
発生のタイミングが異なる。ただし両者は相互に誘発し合うことがある。
【着火源になるもの】
・燃焼室に堆積したデポジット(赤熱する)
・熱価の合わない点火プラグ(焼け型すぎて電極が高温になる)
・過熱した排気バルブ
・シャープなエッジ部(面研やカット加工で生じた角)
・カーボンの剥離片
【なぜ危険か】
・点火時期より早く燃焼が始まるため、圧縮行程の途中で圧力が急上昇する
・ピストンを押し戻す力になり、極めて大きな負荷がかかる
・制御できない(点火時期を遅らせても止まらない)
・進行するとピストンの溶損に至る
【ノッキングより危険とされる理由】ノック・センサによる遅角制御が効かないためである。一度始まると悪循環に陥り、短時間で重大な損傷を招くことがある。
【対策】
・デポジットの除去
・適切な熱価のプラグを使用する
・冷却系の正常化
・混合気を薄くしすぎない
【診断】ノッキングと似た音がするが、点火時期を変えても改善しない場合は過早着火を疑う。プラグの状態(電極の溶け、碍子の異常)も手がかりになる。
総合全75問中 4問を掲載
問101整備士としての心構えとして最も適切なものは次のうちどれか。
- ✔安全と品質を最優先し、根拠に基づいて判断し、分からないことは確認する
- 2作業速度を最優先する
- 3不明点は推測で処理する
- 4経験を最優先し手順書は参考程度とする
- 5顧客の要望には常に無条件で従う
解説:【正解】1「安全と品質を最優先し、根拠に基づいて判断し、分からないことは確認する」
【基本にあるもの】整備の結果が人命に直結するという自覚である。
【なぜそう言えるか】
・制動装置の不具合は、止まれないという事態に直結する
・走行装置の不具合は、車輪の脱落や操縦不能を招く
・整備した車両は公道を走り、多くの人と共存する
・整備士の判断の誤りが、第三者の生命に及ぶ
【具体的な行動として現れること】
① 手順書と規定値を確認してから作業する
② 測定値という根拠に基づいて判断する
③ 不明な点は推測せず確認する
④ 安全に関わる不具合は、率直に顧客へ伝える
⑤ 作業後の確認を省略しない
⑥ 記録に残す
【避けるべき姿勢】
・経験と勘だけで判断する
・作業速度を安全と品質より優先する
・「たぶん大丈夫」で済ませる
・分からないまま進める
【なぜ「経験だけ」では不十分か】経験は貴重だが、
・車種ごとに構造も規定値も異なる
・技術は絶えず変化している
・経験の範囲外の事象は必ず起こる
経験は判断を助けるが、確認の代わりにはならない。
【顧客との関係】顧客は専門知識を持たない。整備士の説明を信頼して判断する。この信頼に応えるには、正確な情報を分かりやすく伝えることが必要である。
【継続的な学習】電動化、先進安全装置、車載ネットワークなど、従来の知識だけでは対応できない領域が広がっている。学び続けることも心構えの一部である。
問102次のうち、点検の結果、直ちに整備が必要と判断すべき最も緊急性の高い項目はどれか。
- 1洗車の汚れが残っている
- 2ワイパ・ゴムに軽微なすじが出る
- 3室内の消臭剤が切れている
- ✔ブレーキ・パッドの残量が使用限度を下回っている
- 5タイヤの製造年が2年前である
解説:【正解】4「ブレーキ・パッドの残量が使用限度を下回っている」
【緊急性を判断する基準】不具合が生じたときの結果の重大さと、その切迫度である。
【最も緊急性が高いもの】
① 制動装置:止まれなければ即座に事故になる
・ブレーキ液の漏れ、ペダルが床まで届く
・パッドやライニングの限度超過
・ホースの膨らみ、亀裂
② 走行装置:脱落や操縦不能に直結する
・タイヤの著しい損傷、コード露出
・ホイール・ナットの緩み
・ボール・ジョイントの大きながた
③ 操縦装置:操舵不能は致命的である
・ステアリングの著しい遊び
・リンケージのがた
【次に優先されるもの】
・灯火装置(視認性と被視認性に関わる)
・懸架装置の損傷
・排気系の漏れ(一酸化炭素の車室内侵入)
【当面様子を見られるもの】
・軽度のオイルにじみ
・外観に関わる項目
・次回点検までに限度に達しない消耗品
【判断の考え方】「そのまま走行して、何が起こりうるか」を具体的に想定する。
・直ちに事故につながるか
・時間の余裕があるか
・進行の速さはどうか
【顧客への伝え方】緊急性を3段階程度に分けて説明する。すべてを同じ重要度で伝えると、顧客は判断できない。
【記録】危険な状態を発見し、顧客が整備を断った場合、その旨を記録に残す。
問103顧客から「予算の都合で今回はすべての整備はできない」と言われた場合の対応として最も適切なものは次のうちどれか。
- ✔安全に直結する項目を優先し、緊急性と理由を説明したうえで判断を仰ぐ
- 2安価な項目から実施する
- 3顧客の言うとおりに何も整備しない
- 4説明せずに一部だけ実施する
- 5すべて実施しないと引き渡さない
解説:【正解】1「安全に直結する項目を優先し、緊急性と理由を説明したうえで判断を仰ぐ」
【最も適切な対応】優先順位と理由を示し、顧客が判断できる情報を提供する。
【具体的な進め方】
① 発見した不具合を、緊急性で分類する
・直ちに整備しないと危険なもの
・今回実施が望ましいもの
・次回まで様子を見られるもの
② それぞれについて、放置した場合に何が起こるかを説明する
③ 測定値を示し、あとどれくらいの余裕があるかを伝える
④ 費用と併せて提示し、顧客に選んでもらう
【安全に関わる項目の扱い】制動、走行、操縦に関わるものは、予算の都合で見送るべきではない。
・その理由を具体的に説明する
・それでも見送る場合、運行しないよう伝える
・記録に残す
【避けるべき対応】
・「すべてやらないなら何もしない」と断る
・説明せずに一部だけ勝手に実施する
・費用の安い順、作業しやすい順に実施する
・危険性を伝えずに引き渡す
【次回への橋渡し】今回見送った項目について
・次回までにどこまで進むかの見通しを伝える
・記録に残し、次回の入庫時に確認する
これにより計画的な整備につながる。
【顧客の立場】予算の制約は現実によくある。頭ごなしに否定するのではなく、限られた予算で最大の安全を確保する提案をすることが専門職の役割である。
【信頼につながる】誠実な説明と提案は、長期的な信頼関係を築く。必要性の乏しい整備を勧めることの逆である。
問104次の記述のうち、日常点検の項目として適切なものはどれか。
- 1バルブ・シートの当たり幅測定
- 2シリンダの内径測定
- 3クランクシャフトの曲がり測定
- 4噴射ノズルの開弁圧測定
- ✔ブレーキ液量、冷却水量、エンジン・オイル量、タイヤの状態、灯火の点灯
解説:【正解】5「ブレーキ液量、冷却水量、エンジン・オイル量、タイヤの状態、灯火の点灯」
【日常点検とは】使用者が行う点検である。外観と作動で確認できる項目に限られる。
【主な項目】
① ブレーキ液の量、ブレーキ・ペダルの踏みしろと効き
② タイヤの空気圧、亀裂や損傷、異常な摩耗、溝の深さ
③ 灯火装置と方向指示器の点灯、汚れ、損傷
④ エンジンのかかり具合、異音
⑤ エンジン・オイルの量
⑥ 冷却水の量
⑦ ウインド・ウォッシャ液の量
⑧ ワイパの拭き取り状態
⑨ バッテリ液の量(開放型の場合)
⑩ 原動機のかかり具合と異音
【共通する特徴】いずれも
・工具や測定器を必要としない
・分解を伴わない
・使用者が短時間で確認できる
【日常点検に該当しないもの】
・シリンダ内径の測定
・バルブ・クリアランスの調整
・圧縮圧力の測定
・ホイール・ベアリングの分解点検
これらは分解や専用測定器を要するため、定期点検や分解整備の範囲である。
【実施時期】
・自家用乗用車:走行距離や運行状態から判断した適切な時期
・事業用自動車など:1日1回、運行開始前
【義務者】自動車の使用者である。整備工場ではない。
【整備士の役割】顧客に点検方法を具体的に伝える。「点検してください」だけでは実行されない。どこを、どう見るかを説明することが有益である。
【意義】灯火の球切れ、空気圧の低下、液量の減少など、日々変化する項目を早期に発見できる。
電動化全15問中 4問を掲載
問105ハイブリッド車の方式に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1いずれの方式もエンジンは発電に使わない
- 2パラレル方式はモータのみで駆動する
- 3シリーズ方式はエンジンのみで駆動する
- 4スプリット方式はモータを持たない
- ✔シリーズ方式はエンジンで発電しモータのみで駆動する
解説:【正解】5「シリーズ方式はエンジンで発電しモータのみで駆動する」
【3つの基本方式】
① シリーズ方式:エンジンは発電専用。駆動はモータのみが行う
② パラレル方式:エンジンとモータの両方で駆動する
③ シリーズ・パラレル(スプリット)方式:遊星歯車で動力を分割し、両方式の特性を組み合わせる
【シリーズ方式】
・エンジンを最も効率の良い回転域だけで運転できる
・変速機が不要または簡素
・駆動用モータに大きな出力が必要
・高速巡航では、発電と駆動の変換損失が不利になる
【パラレル方式】
・既存の駆動系を活かせる。構造の変更が比較的小さい
・高速巡航ではエンジンで直接駆動できるため効率が良い
・モータは補助的な役割になることが多い
【スプリット方式】
・遊星歯車でエンジン出力を「駆動」と「発電」に分ける
・走行条件に応じて最適な配分を選べる
・制御は複雑になる
【共通する利点】
・回生ブレーキによるエネルギ回収
・エンジンを効率の良い領域で使える
・アイドリング・ストップとの組合せ
【マイルド・ハイブリッド】モータ単独では走行できないが、発進補助と回生を行う。48V系が代表例で、構造が簡素でコストが低い。
【整備上の注意】いずれの方式でも高電圧系を持つ。感電の危険があるため、所定の教育を受けた者がメーカ指定の手順で作業する。電源遮断、規定時間の待機、残留電圧の確認、絶縁保護具の使用が必須である。
問106モータ・ジェネレータに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- ✔駆動時はモータ、減速時は発電機として作用し運動エネルギを回収する
- 2駆動専用の装置である
- 3変速機の一部である
- 4エンジンの冷却を行う
- 5発電専用の装置である
解説:【正解】1「駆動時はモータ、減速時は発電機として作用し運動エネルギを回収する」
【1つの装置が2つの役割を持つ】
・駆動時:電気エネルギを運動エネルギに変換する(モータとして動作)
・減速時:運動エネルギを電気エネルギに変換する(発電機として動作)
【なぜ両方できるか】モータと発電機は原理的に同じ装置である。電流を流せば回転し、回転させれば発電する。制御によって切り替える。
【回生の仕組み】減速時にモータを発電機として作用させる。
・発電するには回転を止めようとする力(反トルク)が必要
・これがブレーキとして働く
・同時に、車両の運動エネルギを電力として回収する
【従来の摩擦ブレーキとの違い】
・摩擦ブレーキ:運動エネルギを熱に変えて捨てる
・回生ブレーキ:電力として回収し、再利用する
都市部の走行では大幅な燃費改善につながる。
【回生量が変化する要因】
・バッテリの充電状態(満充電に近いと回収できない)
・車速(低速では発電量が少ない)
・バッテリの温度(低温では受入性が落ちる)
【回生協調ブレーキが必要な理由】回生量が変化しても、運転者が感じる減速度を一定に保つ必要がある。摩擦ブレーキの液圧を調整して差分を補う。
【その他の役割】
・エンジンの始動(従来のスタータを兼ねる)
・エンジンのトルク・アシスト
・発電(従来のオルタネータを兼ねる)
【整備上の注意】高電圧系である。三相交流で駆動されるため、インバータを介して制御されている。作業には所定の手順が必要である。
問107回生協調ブレーキに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1回生ブレーキのみで停止する
- 2高速域でのみ作動する
- ✔回生量の変化に応じて摩擦ブレーキの液圧を調整し、総制動力を一定に保つ
- 4制動力は運転者が調整する
- 5摩擦ブレーキを使用しない
解説:【正解】3「回生量の変化に応じて摩擦ブレーキの液圧を調整し、総制動力を一定に保つ」
【解決すべき課題】回生ブレーキの制動力は、状況によって大きく変化する。
・バッテリが満充電に近い → 回生できない
・低速 → 発電量が少なく、制動力が小さい
・バッテリが低温 → 受入性が落ちる
そのままでは、運転者が同じ踏力でも減速度が変わってしまう。
【協調制御の内容】回生量の変化に応じて、摩擦ブレーキの液圧を調整する。
・回生が多いとき → 液圧を減らす
・回生が少ないとき → 液圧を増やす
合計の制動力を一定に保つことで、自然な減速感を実現する。
【運転者が感じること】ペダルの踏力と減速度の関係が、常に一定に保たれる。回生の効き具合を意識せずに運転できる。
【構造上の特徴】ペダルの操作と液圧が直結していない。ペダル・ストローク・センサで踏力を検出し、電子制御で液圧を作る。ペダルの反力はストローク・シミュレータで作り出す。
【整備上の重要な注意】
① エア抜きに専用手順が必要な車種が多い。診断機でモードを切り替え、内部の流路を作動させながら行う
② 通常のエア抜き手順では、内部にエアが残る可能性がある
③ 作業後は必ず制動力と警告灯を確認する
【もう一つの注意】摩擦ブレーキの使用頻度が低いため、ロータやパッドに錆が発生しやすい。
・摩耗が少ないからといって点検を省略してはならない
・固着や錆の進行を確認する
【顧客への説明】回生の効きが状況で変わるのは正常である。満充電時や冷えているときは、回生が弱く感じられる。
問108インバータの役割として適切なものは次のうちどれか。
- ✔直流を交流に変換してモータを駆動し、回生時は交流を直流に変換する
- 2交流を整流するだけの装置である
- 3直流の電圧のみを変える
- 4冷却水を循環させる
- 5燃料を圧送する
解説:【正解】1「直流を交流に変換してモータを駆動し、回生時は交流を直流に変換する」
【役割】直流と交流を相互に変換する。
・駆動時:駆動用バッテリの直流を三相交流に変換し、モータを回す
・回生時:モータが発電した交流を直流に変換し、バッテリを充電する
【なぜ交流が必要か】駆動用モータには三相交流モータが用いられる。
・構造が簡単で高効率
・ブラシがなく保守性に優れる
・回転速度とトルクを精密に制御できる
バッテリは直流なので、変換が必要になる。
【制御の内容】単に変換するだけでなく、周波数と電圧を制御することでモータの回転速度とトルクを自在に操る。半導体素子(IGBTなど)を高速でスイッチングして波形を作り出す。
【発熱と冷却】大電力を扱うため発熱が大きい。専用の冷却系統(水冷)を持つことが多い。冷却系の点検も整備項目に含まれる。
【平滑コンデンサ:最重要の安全事項】インバータ内部には大容量のコンデンサがある。電源を遮断しても電荷が残る。
・サービス・プラグを抜いた後、規定時間の待機が必要
・待機後に電圧計で残留電圧がないことを確認してから作業する
・これを怠ると感電の危険がある
【昇圧コンバータ】車種によっては、バッテリ電圧をさらに昇圧してからインバータへ送る。高い電圧で駆動することで、同じ出力を小さい電流で得られ、損失を減らせる。
【故障の症状】DTCの記憶、出力制限、システムの起動不能。冷却系の異常でも保護制御が働く。
【整備上の注意】高電圧部であり、資格と手順が必要である。分解は想定されていない。
安全作業全10問中 4問を掲載
問109高電圧系の作業手順に関する記述として不適切なものは次のうちどれか。
- 1作業区域を表示し関係者以外の立入りを制限する
- 2規定時間放置して平滑コンデンサの残留電圧を放電させる
- 3絶縁用保護具を着用する
- ✔電源遮断後は直ちに高電圧端子に触れてよい
- 5サービス・プラグを抜いて電源を遮断する
解説:【正解】4「電源遮断後は直ちに高電圧端子に触れてよい」
【正しい手順】
① 作業区域を表示し、関係者以外の立入りを制限する
② イグニッションをOFFにし、キーを管理する
③ 絶縁用保護具(絶縁手袋など)を着用する
④ サービス・プラグを抜き、電源を遮断する
⑤ 抜いたプラグは自分で保管する(他者が誤って戻さないため)
⑥ 規定時間放置する
⑦ 電圧計で残留電圧がないことを確認する
⑧ 作業を行う
【⑥規定時間の待機が必須である理由】インバータ内部の平滑コンデンサには、電源を遮断しても電荷が残っている。
・容量が大きく、危険な電圧を保持する
・自然放電するまでに数分から十数分かかる
・待たずに触れれば感電する
【誤りやすい記述】「電源遮断後は直ちに高電圧端子に触れてよい」は明確に誤りである。
【⑦の確認が最終的な保証】待機時間は目安である。実際に電圧がないことを測定して確認する。この確認を省略してはならない。
【資格と教育】所定の教育を受けた者が作業する。事業場としての体制整備も求められる。
【絶対にしてはならないこと】
・高電圧ケーブルの切断による電源遮断
・資格のない者による高電圧部の作業
・充電中の整備作業
・濡れた手や環境での作業
【識別】高電圧ケーブルはオレンジ色で識別される。この色のケーブルには不用意に触れない。
【事故車の取扱い】損傷している場合、絶縁が破れている可能性がある。より慎重な手順が必要である。
問110高電圧系の絶縁点検に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- ✔絶縁抵抗計(メガー)で規定電圧を印加し、車体との絶縁抵抗を測定する
- 2目視のみで判断する
- 3電圧レンジで測定する
- 4測定は不要である
- 5回路計の抵抗レンジで測定する
解説:【正解】1「絶縁抵抗計(メガー)で規定電圧を印加し、車体との絶縁抵抗を測定する」
【何を確認するか】高電圧回路と車体(アース)の間の絶縁抵抗である。
【使用する測定器】絶縁抵抗計(メガー)である。
【なぜ通常の回路計では測れないか】
・通常の抵抗レンジは低い電圧で測定する
・微小な絶縁低下は、低電圧では検出できない
・絶縁抵抗計は高い測定電圧(数百V)を印加し、実使用に近い条件で絶縁の状態を評価する
【絶縁が低下する原因】
・被覆の損傷、劣化
・水分の侵入
・汚れの付着
・部品内部の絶縁劣化
【絶縁低下の危険】車体に電圧が漏れる。触れた人が感電する危険がある。
【車両の保護機能】多くの電動車は絶縁抵抗を常時監視している。低下を検出するとDTCを記憶し、警告を出す。場合によっては高電圧系を遮断する。
【測定上の注意】
・指定された測定箇所と判定値に従う
・電子部品に高電圧を印加すると損傷させることがある。測定範囲を守る
・作業は所定の教育を受けた者が行う
・測定前に電源が遮断され、残留電圧がないことを確認する
【誤りやすい記述】「通常の回路計の抵抗レンジで測定する」「目視だけで判断する」はいずれも不適切である。
【定期的な確認】事故歴のある車両、浸水した車両、高電圧部品を交換した車両では特に重要である。
【記録】測定値を記録し、経過を追えるようにする。
問111リフトを使用する際の点検事項として適切でないものは次のうちどれか。
- ✔リフトの製造年のみを重視すること
- 2アームやパッドの損傷と摩耗
- 3定格荷重の確認
- 4油漏れや異音の有無
- 5安全装置(ロック)の作動
解説:【正解】1「リフトの製造年のみを重視すること」
【点検すべき事項】
① アームとパッドの損傷、摩耗、変形
② 安全装置(ロック機構)の確実な作動
③ 油漏れ、異音の有無
④ 定格荷重と車両重量の関係
⑤ 支持点の適合(車両の指定位置に合うか)
⑥ 各部の緩み、ボルトの脱落
⑦ 電気配線の損傷
【②ロック機構が最重要】リフトは油圧または機械で持ち上げるが、保持はロック機構が担う。
・油圧だけでは、シールの劣化で徐々に降下する
・ロックが作動しなければ、落下の危険がある
・上昇後、必ずロックがかかったことを確認する
【④定格荷重】超えると
・アームの変形、破損
・油圧系の損傷
・落下事故
車両総重量を把握してから使用する。
【⑤支持点】車両ごとに指定されたリフト・ポイントがある。
・指定外では、フロアやサイド・シルを変形させる
・パッドがずれて落下する危険もある
・樹脂カバーの下に指定位置がある車種もある
【定期自主検査】リフトは定期的な自主検査が求められる。実施と記録が必要である。
【適切でない点検事項】「リフトの製造年」だけを重視することである。
・年数だけでは状態は判断できない
・適切に整備された古い機器より、放置された新しい機器の方が危険なこともある
・実際の状態を確認することが重要である
【作業中の注意】部品を取り外すと重量配分が変わる。エンジンや変速機を降ろす場合は特に、支持のバランスに注意する。
【車両を揺すって確認】上昇後、軽く揺すって安定を確かめる。
問112作業服や保護具に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1装身具は問題ない
- 2手袋は常に不要である
- 3服装は自由でよい
- ✔回転部に巻き込まれないよう袖口を締め、装身具を外す
- 5ゆったりした服が安全である
解説:【正解】4「回転部に巻き込まれないよう袖口を締め、装身具を外す」
【基本の考え方】危険の種類に応じた保護具を選択し、確実に着用する。
【作業服の要件】
・袖口を締める:回転部への巻き込みを防ぐ
・裾がだぶつかない
・ボタンやファスナーを確実に留める
・油や燃料が染みたままにしない(引火の危険)
【外すべきもの】
・指輪、腕時計、ネックレス:回転部への巻き込み、短絡(バッテリ端子に触れると大電流が流れ、重度のやけどを負う)
・首にかけたタオル:極めて危険である。回転部に巻き込まれれば首が絞まる
【保護具の選択】
・保護めがね:飛散のおそれがある作業(研削、切断、洗浄、バッテリ作業)
・耐熱手袋:高温部の作業
・耐薬品手袋:燃料、洗浄剤、バッテリ液
・安全靴:落下物からの保護
・耳栓:騒音作業
・呼吸用保護具:粉じん、有機溶剤
・絶縁用保護具:高電圧系の作業
【手袋の使い分け】
・回転部の近くでは、巻き込まれる危険があるため手袋を避ける場合もある
・作業内容により判断する
【誤りやすい記述】「ゆったりした服が動きやすく安全」は誤りである。だぶついた服は巻き込まれる。
【なぜ守られにくいか】「短時間だから」「面倒だから」という理由で省略されがちである。しかし事故は省略した一瞬に起きる。
【組織としての取組み】保護具を作業手順に組み込み、習慣化する。個人の意識だけに頼らない。
ADAS全10問中 4問を掲載
問113ミリ波レーダとカメラの特性に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- 1両者の特性は同じである
- 2いずれも距離を検出できない
- 3レーダは標識の文字を読み取れる
- 4カメラは霧や豪雨の影響を受けない
- ✔レーダは悪天候に比較的強く距離・相対速度の検出に優れ、カメラは形状や標識の識別に優れる
解説:【正解】5「レーダは悪天候に比較的強く距離・相対速度の検出に優れ、カメラは形状や標識の識別に優れる」
【ミリ波レーダの特性】
・電波を照射し、反射波から距離と相対速度を検出する
・悪天候(雨、霧、雪)に比較的強い
・距離と相対速度の測定精度が高い
・遠距離まで検出できる
・一方で、対象物の形状や種類の識別は苦手である。標識の文字は読めない
【カメラの特性】
・画像から対象物を認識する
・形状、色、標識、車線、歩行者の識別ができる
・一方で、悪天候や逆光、夜間に弱い
・距離の測定精度はレーダに劣る(ステレオ・カメラなら改善する)
【両者の併用】互いの弱点を補うため、両方を搭載する車両が多い。
・レーダで距離と速度を正確に捉える
・カメラで対象が何であるかを判別する
【センサ・フュージョン】複数のセンサ情報を統合して、より確実な判断を行う。
【検知を妨げる要因】
・レーダ:前面への金属製エンブレム、厚い塗装、積雪、泥の付着、バンパの変形
・カメラ:ガラスの汚れ、ステッカー、油膜、ワイパの拭き取り不良、レンズの曇り
【整備上の重要事項】
・脱着や交換の後は、必ずエーミング(照準調整)を行う
・バンパの塗り直しは、レーダの検知に影響しうる
・フロント・ガラスの交換後は、カメラのエーミングが必要
【顧客への説明】いずれのセンサにも作動限界がある。過信は重大事故につながる。日常の清掃と定期点検の重要性を伝える。
問114エーミング(照準調整)に関する記述として不適切なものは次のうちどれか。
- 1専用ターゲットと規定の環境条件が必要である
- 2フロント・ガラスの交換後にも必要となる
- ✔走行すれば自動的に完了するため作業は不要である
- 4カメラやレーダの脱着後に必要となる
- 5アライメント調整や車高の変更後にも必要となる
解説:【正解】3「走行すれば自動的に完了するため作業は不要である」
【エーミングとは】カメラやレーダの照準(向き)を、車両の基準軸に対して正しく合わせる作業である。
【なぜ必要か】これらのセンサは、自車に対する取付け角度を基準に対象物の位置を認識している。角度がわずかにずれると
・前方車を実際とは違う位置に認識する
・車線の位置を誤って判断する
・作動すべき場面で作動しない、または不要な場面で作動する
遠方ほど誤差が拡大する。数度のずれでも重大な影響がある。
【必要になる作業】
・カメラ、レーダの脱着や交換
・フロント・ガラスの交換(カメラのブラケット位置が変わる)
・バンパの脱着や交換(レーダが取り付けられている場合)
・ホイール・アライメントの調整(車両の直進基準が変わる)
・車高の変更(サスペンションの交換)
・事故修理による車体の修正
【2つの方式】
・静的エーミング:専用ターゲットを規定位置に設置して行う。床面の平坦さ、周囲の明るさ、ターゲットまでの距離が規定される
・動的エーミング:指定された条件(速度、路面、車線の明瞭さ)で走行して行う
車種により、どちらか、または両方が必要である。
【誤りやすい記述】「走行すれば自動的に完了するため作業は不要」は明確に誤りである。動的エーミングも、診断機で開始操作を行ったうえで指定条件を満たす走行が必要である。
【前提条件】タイヤの空気圧、積載状態、燃料量、車高を規定に整える。これが狂っていると、正しく調整しても実走行でずれる。
【制度上の位置づけ】電子制御装置整備として特定整備の対象になる。認証と設備、要員の要件がある。
問115衝突被害軽減ブレーキに関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- ✔作動条件には速度域や対象物の種類などの制限があり、万能ではないことを説明する必要がある
- 2あらゆる状況で必ず衝突を回避できる
- 3雨天でも性能は変わらない
- 4整備後の確認は不要である
- 5運転者の注意は不要になる
解説:【正解】1「作動条件には速度域や対象物の種類などの制限があり、万能ではないことを説明する必要がある」
【機能】前方の車両や歩行者などを検知し、衝突のおそれがあるときに警報を発し、必要に応じて自動的に制動する。
【名称の意味】「被害軽減」であり「衝突回避」ではない。作動しても衝突を完全に防げるとは限らない。速度を落として被害を軽減することが目的である。
【作動条件と限界】
・作動する速度域に上限と下限がある
・検知できる対象に制限がある(歩行者、自転車、二輪車など、車種により対応が異なる)
・悪天候、逆光、夜間では検知能力が落ちる
・急に飛び出した対象には対応できない
・カーブや坂道では検知が難しい場合がある
【運転者の責任は変わらない】システムは補助であり、運転者の注意義務がなくなるわけではない。過信は重大事故につながる。
【整備上の確認事項】
・センサ面の汚れ、付着物(雪、泥、虫)
・フロント・ガラスの汚れ、ステッカー、油膜
・センサやカメラの取付け状態
・エーミングの実施状況
・警告灯の消灯とDTCの確認
【誤作動の可能性】
・路面の反射物、マンホール、看板などを誤検知することがある
・システムを一時的に解除できる車種もある
【顧客への説明の重要性】
・機能と限界を正しく伝える
・「自動ブレーキがあるから安全」ではないこと
・センサ面の清掃を日常的に行うこと
・警告灯が点いたら速やかに点検を受けること
【整備後の確認】脱着や調整の後は、作動確認と警告灯の消灯を必ず確かめる。
問116車線維持支援システムの点検に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- ✔カメラの視界(ガラスの汚れ・ステッカー等)とエーミングの状態を確認する
- 2タイヤの銘柄を確認する
- 3確認は不要である
- 4燃料の残量を確認する
- 5冷却水の濃度を確認する
解説:【正解】1「カメラの視界(ガラスの汚れ・ステッカー等)とエーミングの状態を確認する」
【システムの仕組み】カメラで車線(白線)を認識し、車線内を維持するようステアリングを制御する、または警報を発する。
【点検すべき事項】
① カメラの視界:フロント・ガラスの汚れ、油膜、ステッカー、ひび
② カメラの取付け状態と角度
③ ワイパの拭き取り状態(視界に直結する)
④ 警告灯の状態とDTC
⑤ 作動確認(安全な場所で、指定された方法により)
【エーミングが必要になる場面】
・カメラの脱着、交換
・フロント・ガラスの交換(ブラケットの位置が変わる)
・ホイール・アライメントの調整(直進基準が変わる)
・車高の変更
・事故修理による車体の修正
【なぜアライメントが影響するか】システムは「車両が真っすぐ走っている状態」を基準に制御する。アライメントが変われば、この基準がずれる。
【作動の限界】顧客に伝えるべき事項である。
・車線が薄い、消えている、雪で覆われている場合は作動しない
・急カーブ、分岐、工事区間では認識できないことがある
・逆光、夜間、悪天候で能力が落ちる
・作動する速度域に制限がある
【運転者の責任】システムは補助であり、ステアリング操作の代替ではない。手を離しての走行は想定されていない。
【確認時の注意】公道での作動確認は、他の交通に配慮し、安全な条件で行う。メーカ指定の方法に従う。
【誤作動の可能性】路面の継ぎ目、わだち、影を車線と誤認することがある。これも限界の一部である。
ネットワーク全9問中 4問を掲載
問117CAN通信の線間抵抗を測定したところ約120Ωであった。この結果から考えられることとして適切なものは次のうちどれか。
- 1終端抵抗が3つある
- ✔終端抵抗の一方が断線しているか、その区間の配線が断線している
- 3短絡している
- 4測定方法が誤っている
- 5正常である
解説:【正解】2「終端抵抗の一方が断線しているか、その区間の配線が断線している」
【正常値は約60Ω】CAN通信線の両端には、それぞれ120Ωの終端抵抗が接続されている。この2つが並列になるため、線間で測定すると約60Ωになる。
【計算】(120×120)÷(120+120)=60Ω
【約120Ωが意味すること】終端抵抗が1つしか有効になっていない。
・一方の終端抵抗が断線している
・またはその終端抵抗までの配線が断線している
【なぜ終端抵抗が必要か】通信線を伝わる信号は、線の端で反射する。反射波が元の信号と干渉すると波形が乱れ、通信エラーになる。終端抵抗はこの反射を吸収する。
【終端抵抗が1つ失われるとどうなるか】
・反射が生じ、波形が乱れる
・通信エラーが増える
・完全に通信できなくなるとは限らないが、断続的な異常が生じる
・複数のECUで通信異常のDTCが記録される
【他の測定値からの判断】
・約60Ω → 正常
・約120Ω → 終端抵抗の一方が失われている
・無限大 → 通信線の断線
・極端に低い(0Ωに近い) → 短絡
【測定時の注意】イグニッションをOFFにし、通信が停止した状態で測定する。通電中は正しい値が読めない。
【終端抵抗の位置】多くの場合、ECU内部に組み込まれている。したがって「終端抵抗の断線」は、そのECUの不良か、そこまでの配線の断線を意味する。
【診断の進め方】線間抵抗の測定は、通信異常の切り分けにおいて最初に行うべき簡単で有効な手段である。
問118LIN通信に関する記述として適切なものは次のうちどれか。
- ✔1本の信号線を用いる低速・低コストの通信で、スイッチやモータなどの補機に用いられる
- 22本の差動線を用いる
- 3駆動系の制御に用いられる
- 4終端抵抗が2つ必要である
- 5CANより高速である
解説:【正解】1「1本の信号線を用いる低速・低コストの通信で、スイッチやモータなどの補機に用いられる」
【LINとは】Local Interconnect Network の略。1本の信号線を用いる低速・低コストの車載ネットワークである。
【CANとの違い】
・CAN:2本の差動線。高速(最大1Mbps程度)。ノイズに強い。駆動系や制御系に使う
・LIN:1本の信号線。低速(最大20kbps程度)。安価。補機系に使う
【なぜ2種類あるか】すべてをCANにするとコストが高い。応答速度をあまり要しない部分にはLINで十分である。用途に応じて使い分ける。
【LINの用途】
・パワー・ウィンドウ、ドア・ミラー
・シート・ポジション
・ワイパ、雨滴センサ
・エアコンのダンパ・モータ
・オルタネータの発電制御
・各種スイッチ
いずれも高速な応答を必要としない。
【マスタ・スレーブ方式】1つのマスタ(親)が通信を管理し、スレーブ(子)が応答する。CANのように各ノードが自由に送信するのではない。
【CANとの接続】ゲートウェイECU、またはLINマスタとなるECUを介して接続される。
【診断上の注意】
・LINは診断機で直接見られない場合がある
・マスタECU経由で状態を確認する
・故障の症状が「特定の補機だけ動かない」という形で現れる
【点検】
・信号線の断線、短絡
・電源とアース
・マスタECUの状態
1本の線なので、CANのような線間抵抗の測定はできない。
【他の通信方式】FlexRay、CAN-FD、車載イーサネットなど、より高速な方式も採用が進んでいる。
問119車載ネットワークの通信異常を示すDTCが記憶された場合の点検として適切なものは次のうちどれか。
- 1直ちに全ECUを交換する
- ✔線間抵抗、配線の断線・短絡、コネクタ、各ECUの電源とアースを点検する
- 3タイヤを交換する
- 4バッテリを交換する
- 5DTCを消去して様子を見る
解説:【正解】2「線間抵抗、配線の断線・短絡、コネクタ、各ECUの電源とアースを点検する」
【通信異常のDTCが示すこと】あるECUが、他のECUからの応答を受け取れなかったことを示す。原因は多岐にわたる。
【点検すべき箇所】
① 通信線の断線、短絡:線間抵抗の測定(CANなら約60Ωが正常)
② 終端抵抗:約120Ωなら一方が失われている
③ コネクタの接触不良、腐食、浸水
④ 各ECUの電源とアース
⑤ ゲートウェイECUの状態
【④が見落とされやすい】あるECUの電源が失われると、そのECUは通信できなくなる。他のECUから見れば「応答がない」=通信異常となる。
・原因は1つのECUの電源喪失
・症状は複数のECUでの通信異常DTC
【この構造を理解することが重要】DTCの数と原因の数は一致しない。1か所の問題が広範囲に波及する。
【診断の順序】
① 全システムをスキャンし、どのECUがどのDTCを持つか把握する
② 共通する要素を探す(同じ電源、同じアース、同じ通信区間)
③ 線間抵抗を測定する
④ 各ECUの電源とアースを確認する
⑤ 配線図で経路を追い、断線や短絡の可能性を絞る
【全システムと通信できない場合】診断コネクタの電源とアース、ゲートウェイECU、通信線の根元を疑う。
【一部だけ通信できない場合】該当ECUとその区間の配線を疑う。
【誤りやすい対応】「直ちに全ECUを交換する」は不適切である。ECU自体の故障より、配線や電源の問題である方がはるかに多い。
【補修時の注意】通信線はツイスト・ペアである。撚りとルートを復元しないとノイズ耐性が落ちる。
問120ゲートウェイECUの役割として適切なものは次のうちどれか。
- 1バッテリを充電する
- 2変速機を制御する
- ✔速度や用途の異なる複数のネットワーク間で情報を中継する
- 4冷却水を循環させる
- 5エンジンを制御する
解説:【正解】3「速度や用途の異なる複数のネットワーク間で情報を中継する」
【役割】速度や規格の異なる複数のネットワーク間で、情報を中継する。
【なぜ必要か】車内には複数のネットワークが並存している。
・高速CAN:エンジン、AT、ABS、エアバッグなど制御系
・低速CAN:ボデー系、メータ、エアコンなど
・LIN:補機系
・車載イーサネット:カメラ、ADAS、通信系
速度も規格も異なるため、そのままでは相互に通信できない。
【中継の内容】
・必要な情報だけを、適切な形式に変換して転送する
・例:エンジン系の車速情報を、ボデー系のメータへ渡す
【もう一つの重要な役割:セキュリティ】外部(診断コネクタ、通信機器)から車内ネットワークへの不正なアクセスを防ぐ。近年、車両のサイバー・セキュリティが重視されており、ゲートウェイがその要になっている。
【診断機との関係】診断機からの通信も、多くの場合ゲートウェイを経由する。
・ゲートウェイが正常でなければ、診断機がどのシステムとも通信できない
・「全システムと通信できない」場合、ゲートウェイを疑う理由がここにある
【故障の影響】
・広範囲に及ぶ:複数のシステムが情報を受け取れなくなる
・多数のDTCが同時に記憶される
・原因は1か所でも、症状は車両全体に現れる
【診断の考え方】多数のDTCが出た場合、それぞれを個別に追うのではなく、共通する上流(ゲートウェイ、電源、アース)を先に確認する。
【交換時の注意】車種によっては登録やコーディングが必要である。手順を確認してから作業する。