金融商品取引法全50問中 8問を掲載
問1金融商品取引業の参入規制に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1投資助言・代理業を行うには、内閣総理大臣の「免許」を受けなければならない。
- 2投資運用業は、登録・届出のいずれも不要である。
- 3第二種金融商品取引業は、内閣総理大臣への「届出」のみで開業できる。
- 4第一種金融商品取引業を行うには、内閣総理大臣の「認可」を受けなければならない。
- ✔第一種金融商品取引業を行うには、内閣総理大臣の「登録」を受けなければならない。
解説:【正解】5(正しいものはどれか)
【結論】金融商品取引業は第一種・第二種・投資助言代理業・投資運用業の4区分からなり、いずれも内閣総理大臣の「登録」を受けなければならない(金商法29条)。第一種も例外ではない。
【肢別】
1 × 投資助言・代理業も「登録」。免許制がとられているのは金融商品取引所の開設(80条)であって、業者側に免許制はない。
2 × 投資運用業も29条の登録対象。4区分のうち登録も届出も不要な業は存在しない。
3 × 第二種も「登録」。届出で足りるのは適格機関投資家等特例業務(63条)だけであり、業の区分そのものが届出制になることはない。
4 × 第一種に必要なのは登録。「認可」が要るのはPTS(私設取引システム)運営業務(30条)で、これは登録に上乗せされる規制である。
5 ○ 第一種金融商品取引業=内閣総理大臣の登録。本肢が正しい。
【横断整理】参入規制は 届出<登録<認可<免許 の順に厳しい。届出=適格機関投資家等特例業務/登録=金商業4区分/認可=PTS運営・金融商品取引業協会/免許=金融商品取引所の開設。
【発展:矛盾肢からの絞り込み】肢4と肢5は「第一種=認可」「第一種=登録」で正面から衝突している。両立しない以上どちらか一方は必ず誤りで、かつ本問は正しいものを1つ選ぶ形式だから、正解はこの2肢のどちらかに絞れる。残り3肢を読む前に確率を1/5から1/2に上げられる。
【根拠】金商法29条(登録)、30条(PTS認可)、63条(適格機関投資家等特例業務の届出)、80条(金融商品取引所の免許)。
【相互参照】No.301(取引所は免許)、No.101(業の区分)、No.305(業者に対する監督)。
問2金融商品取引法上の有価証券に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1抵当証券は有価証券に該当する。
- 2国債証券は有価証券に該当する。
- 3投資信託の受益証券は有価証券に該当する。
- ✔約束手形および小切手は、金融商品取引法上の有価証券に該当する。
- 5コマーシャル・ペーパー(CP)は有価証券に該当する。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】約束手形・小切手は手形法・小切手法上の有価証券ではあるが、金商法2条1項の限定列挙に入っていないため、金商法上の有価証券には該当しない。支払・決済の手段であって投資対象ではない、という整理である。
【肢別】
1 ○ 抵当証券は2条1項16号で有価証券に列挙されている。
2 ○ 国債証券は2条1項1号。最も基本的な有価証券である。
3 ○ 投資信託の受益証券は2条1項10号。
4 × 手形・小切手は限定列挙になく、金商法上の有価証券ではない。本肢が誤り。
5 ○ コマーシャル・ペーパー(CP)は2条1項15号の約束手形のうち内閣府令で定めるもの。同じ「約束手形」でもCPは有価証券、通常の商取引の手形は非有価証券という切り分けになる。
【発展:1項と2項の帰結の違い】2条1項=券面のある第一項有価証券(国債・社債・株券・投信受益証券・CP等)、2条2項=券面のないみなし有価証券(信託受益権、合名・合資・合同会社の社員権、集団投資スキーム持分等)。この区分は募集の人数基準に効いてくる。第一項有価証券の募集は勧誘の相手方50名以上だが、流動性の低い第二項有価証券は500名以上が基準となる。分類の暗記だけで終わらせず、「区分が変わると何が変わるか」まで押さえておきたい。
【根拠】金商法2条1項各号(第一項有価証券の限定列挙)、2条2項(みなし有価証券)、2条3項・金商法施行令1条の5(募集の人数基準)。手形法・小切手法上の有価証券性とは別概念。
【相互参照】No.401(有価証券の区分)、No.46(公募と私募の人数基準)。
問3適合性の原則に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1適合性の原則は日本証券業協会の自主規制ルールであり、法令上の根拠規定はない。
- 2適合性の原則は投資信託の販売についてのみ適用される。
- 3顧客の投資目的のみを考慮すれば足り、財産の状況までは考慮する必要はない。
- 4顧客本人が同意している場合には、適合性を考慮する必要はない。
- ✔顧客の知識、経験、財産の状況および金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行ってはならない。
解説:【正解】5(正しいものはどれか)
【結論】適合性の原則は金商法40条1号に定められた法令上の義務であり、①知識②経験③財産の状況④金融商品取引契約を締結する目的、の4要素に照らして不適当と認められる勧誘を禁じる。
【肢別】
1 × 協会の自主規制ではなく金商法40条1号という法令上の根拠がある。協会規則にも重ねて定めがあるが、「法令上の根拠がない」は誤り。
2 × 対象商品の限定はない。株式・債券・デリバティブ・仕組債など金融商品取引契約全般に及ぶ。
3 × 投資目的だけでは足りない。財産の状況を含む4要素すべてを考慮する。
4 × 顧客が同意していても免れない。適合性を欠く顧客に対しては、同意があっても勧誘してはならない。
5 ○ 40条1号の文言どおり。本肢が正しい。
【横断整理】適合性の原則と説明義務は段階が違う。適合性=「そもそも勧誘してよい相手か」という入口の規律。説明義務=「勧誘するとして、どこまで説明するか」という中身の規律。入口を通れない顧客には、どれだけ丁寧に説明しても勧誘は許されない。
【発展:狭義と広義】狭義の適合性原則=ある顧客に絶対に勧誘してはならない商品がある、という考え方。広義の適合性原則=顧客の属性に応じて説明の内容・方法を変えるべきだ、という考え方。40条1号は狭義を定めたものと理解されている。
【根拠】金商法40条1号(適合性の原則)、金商業等府令117条1項1号。判例として最判平成17年7月14日(適合性原則違反が不法行為を構成しうるとした事例)。
【相互参照】No.87(顧客への説明)、No.18(高齢顧客への勧誘)、No.488(顧客の理解の確認)。
問4金融商品取引業者等の禁止行為に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔顧客の書面による同意があれば、事後の損失補塡を行うことができる。
- 2事故(違法・不当行為)による損失について、内閣総理大臣の確認を受けた場合の賠償は損失補塡に当たらない。
- 3不確実な事項について断定的判断を提供して勧誘することは禁止されている。
- 4顧客に対し、あらかじめ損失を補塡する旨を約束して勧誘することは禁止されている。
- 5顧客の請求を受けて損失を補塡する行為も禁止されている。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】損失補塡は「事前の約束」「事後の補塡」「顧客の要求に応じた補塡」のいずれも禁止される(金商法39条)。顧客の同意や書面の有無は関係がない。
【肢別】
1 × 書面による同意があっても事後の損失補塡はできない。39条は顧客側にも罰則を用意しており、同意によって適法化される構造になっていない。本肢が誤り。
2 ○ 事故(業者側の違法・不当な行為)に起因する損失の賠償は、内閣総理大臣の確認等の要件を満たせば39条の適用除外となる。
3 ○ 断定的判断の提供による勧誘は38条2号で禁止。
4 ○ 事前の約束による勧誘は39条1項1号の典型例。
5 ○ 顧客からの請求に応じた補塡も39条1項3号で禁止。顧客が言い出したのだから、という理屈は通らない。
【発展:なぜ同意で治らないのか】損失補塡が禁じられるのは、個々の顧客が損をするからではない。補塡が横行すると、証券投資は自己責任で価格変動リスクを負うという市場の前提そのものが壊れ、資源配分の機能が失われるからである。守られているのが市場秩序という公益である以上、当事者の合意で処分することはできない。この発想は仮装売買や相場操縦の禁止(No.8)とも共通する。
【根拠】金商法39条1項各号(損失補塡等の禁止)、39条3項・金商業等府令119条(事故確認の手続)、38条2号(断定的判断の提供の禁止)。
【相互参照】No.8(相場操縦・不公正取引)、No.110(業者の禁止行為)、No.11(金融サービス提供法の断定的判断)。
問5インサイダー取引規制に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1上場会社の子会社に関する重要事実は、規制の対象外である。
- 2重要事実を知る前に締結された契約に基づく売買であっても、一律に規制対象となる。
- 3重要事実は、公表されてから12時間を経過すれば公表済みとして扱われる。
- ✔重要事実の伝達を受けた者(情報受領者)も規制の対象となる。
- 5会社関係者でなくなった後1年以内の者は、規制の対象とならない。
解説:【正解】4(正しいものはどれか)
【結論】会社関係者から重要事実の伝達を受けた第一次情報受領者も、規制の対象となる(金商法166条3項)。
【肢別】
1 × 子会社に係る重要事実も規制対象である(166条2項5号〜8号)。親会社の株価に影響する以上、当然に取り込まれている。
2 × 重要事実を知る前に締結された契約の履行としての売買等には、適用除外が定められている(166条6項)。「一律に規制対象」は誤り。
3 × 12時間ルールは公表方法の一つにすぎない。2つ以上の報道機関への公開から12時間の経過のほか、TDnet等での公衆縦覧、有価証券報告書等への記載によっても公表となる。「12時間を経過すれば」と限定する点が誤り。
4 ○ 第一次情報受領者も規制対象。本肢が正しい。
5 × 会社関係者でなくなった後1年以内の者は、引き続き規制対象となる(166条1項後段)。退職すれば自由、ではない。
【発展:どこまでが「重要事実」か】決定事実・発生事実・決算情報という3類型に、それぞれ数値による軽微基準が置かれ、基準未満なら重要事実にならない。ただしこれらに当たらなくても「運営、業務または財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」というバスケット条項(166条2項4号)が受け皿として機能する。軽微基準を下回ったから安全、とは言い切れない構造になっている。
【根拠】金商法166条1項(会社関係者・退職後1年)、166条2項(重要事実の類型とバスケット条項)、166条3項(情報受領者)、166条4項(公表の方法)、166条6項(適用除外)、167条(公開買付け等に関する規制)。
【相互参照】No.17(内部者登録カード)、No.201(課徴金制度)。
問6契約締結前交付書面に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1金融商品取引契約を締結しようとするときは、あらかじめ顧客に交付しなければならない。
- 2顧客に対し虚偽の記載をした書面を交付する行為は禁止されている。
- 3手数料、報酬その他の対価に関する事項を記載しなければならない。
- ✔顧客から交付を要しない旨の申出があれば、いかなる場合も交付を省略できる。
- 5元本欠損が生じるおそれがある場合は、その旨および理由を記載しなければならない。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】契約締結前交付書面は原則として必ず交付しなければならず、顧客が要らないと言えば省略できる、という性質のものではない。
【肢別】
1 ○ 金商法37条の3第1項の原則どおり。「あらかじめ」の交付が求められる。
2 ○ 虚偽記載書面の交付は38条8号等で禁止される。
3 ○ 手数料・報酬その他の対価に関する事項は法定記載事項(37条の3第1項4号)。
4 × 顧客の申出のみで一律に省略できるわけではない。省略が認められるのは、直近1年以内に同種の内容の書面を交付済みである等、内閣府令が定める限定的な場合に限られる。本肢が誤り。
5 ○ 元本欠損のおそれがあるときはその旨と理由を記載する(37条の3第1項5号)。
【横断整理】特定投資家に対しては、契約締結前交付書面の交付義務が適用除外となる(45条)。「顧客が要らないと言った」では省略できないが、「顧客が特定投資家である」なら省略できる。省略の可否を分けているのは顧客の意向ではなく顧客の属性だ、という点が本問の核心である。
【発展:書面の電子化】現在は顧客の承諾を得れば電磁的方法による提供が可能で、実務上は電子交付が主流になっている。ただし承諾は書面等による必要があり、「黙っていたから承諾」とは扱えない。
【根拠】金商法37条の3(契約締結前の書面交付義務)、45条(特定投資家に対する適用除外)、34条の2以下(特定投資家への移行手続)、金商業等府令80条(交付を要しない場合)。
【相互参照】No.7(特定投資家と一般投資家)、No.49(目論見書との関係)、No.87(説明義務)。
問7特定投資家(プロ)と一般投資家(アマ)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1個人は、いかなる場合も特定投資家となることができない。
- 2特定投資家に対しても、契約締結前交付書面の交付義務は適用される。
- ✔適格機関投資家および国は、一般投資家へ移行することができない。
- 4上場会社は、常に一般投資家として取り扱われる。
- 5地方公共団体は、一般投資家へ移行することができない。
解説:【正解】3(正しいものはどれか)
【結論】適格機関投資家・国・日本銀行は「常に特定投資家」であり、一般投資家へ移行することができない。
【肢別】
1 × 一定の要件を満たす個人は、申出により特定投資家へ移行できる。「いかなる場合も不可」は誤り。
2 × 特定投資家に対しては契約締結前交付書面の交付義務が適用除外となる(45条)。
3 ○ 適格機関投資家・国・日本銀行は移行不可の最上位グループ。本肢が正しい。
4 × 上場会社は原則として特定投資家であり、申出により一般投資家へ移行できる。「常に一般投資家」は逆である。
5 × 地方公共団体は特定投資家だが、一般投資家へ移行することができる。
【横断整理】投資家は4層に分かれる。
・移行不可の特定投資家:適格機関投資家、国、日本銀行
・一般投資家へ移行可の特定投資家:投資者保護基金、上場会社、資本金5億円以上の株式会社、地方公共団体等
・特定投資家へ移行可の一般投資家:一定の要件を満たす法人・個人
・移行不可の一般投資家:上記以外の個人等
【発展:移行手続】移行には申出と業者の承諾、書面の交付が必要で、特定投資家へ移行した一般投資家の期限は原則1年。更新しなければ自動的に一般投資家へ戻る。プロ扱いは放置で継続しない設計になっている。
【根拠】金商法2条31項(特定投資家の定義)、34条〜34条の5(移行手続)、45条(特定投資家に対する適用除外)、定義府令23条。
【相互参照】No.6(契約締結前交付書面)、No.3(適合性の原則)。
問8相場操縦・不公正取引に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1取引が繁盛であると誤解させる目的をもって行う売買は禁止されている。
- 2権利の移転を目的としない仮装の売買を行うことは禁止されている。
- 3他人と通謀して、同時期に同価格で売買を行う馴合売買は禁止されている。
- ✔安定操作取引は、いかなる場合も認められていない。
- 5風説を流布して相場の変動を図る行為は禁止されている。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】安定操作取引は原則禁止だが、募集・売出しを円滑にするため、政令が定める要件を満たす場合に限り例外的に認められている。「いかなる場合も認められていない」は言い過ぎである。
【肢別】
1 ○ 取引が繁盛であると誤解させる目的での売買は159条2項1号で禁止。
2 ○ 権利移転を目的としない仮装売買は159条1項で禁止。
3 ○ 他人と通謀して同時期・同価格で行う馴合売買も159条1項で禁止。
4 × 法定の要件を満たす安定操作は適法に行える。本肢が誤り。
5 ○ 風説の流布は158条で禁止。
【横断整理】安定操作が例外的に許される主な要件は、①募集・売出しに際して行うこと②安定操作期間内であること③届出書に安定操作を行う旨を記載していること④安定操作を行う旨を公表すること⑤値段の上限規制を守ること。手続と価格の両面から縛りをかけたうえで解禁している。
【発展:規制の狙いの違い】仮装売買・馴合売買は「実体のない取引で出来高や値段を偽装する」類型、風説の流布は「情報を偽装する」類型。安定操作だけが例外を持つのは、これが投資家をだます行為ではなく、公募を成功させるために価格の急落を一時的に抑える行為であり、透明性を確保すれば市場の害が小さいと判断されているからである。
【根拠】金商法158条(風説の流布・偽計)、159条1項(仮装・馴合売買)、159条2項(現実売買による相場操縦)、159条3項ただし書・金商法施行令20条以下(安定操作の例外要件)。
【相互参照】No.4(損失補塡の禁止)、No.202(空売り規制)、No.201(課徴金制度)。
金融商品の勧誘・販売に関係する法律全20問中 8問を掲載
問9金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律(金融サービス提供法)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1損害額は、元本欠損額がその額と推定される。
- ✔顧客は、業者の故意または過失を立証しなければ損害賠償を請求できない。
- 3重要事項の説明を怠り顧客に損害が生じた場合、業者は損害賠償責任を負う。
- 4金融商品販売業者等は、重要事項について顧客に説明しなければならない。
- 5断定的判断の提供等を行った場合も、損害賠償責任の対象となる。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】金融サービス提供法(旧・金融商品販売法)の説明義務違反に基づく損害賠償責任は無過失責任であり、顧客は業者の故意・過失を立証する必要がない。
【肢別】
1 ○ 損害額は元本欠損額と推定される(法7条)。顧客側の立証負担を軽くする規定。
2 × 故意・過失の立証は不要。本肢が誤り。
3 ○ 重要事項の説明を怠り顧客に損害が生じれば賠償責任を負う(法6条)。
4 ○ 重要事項の説明義務は法4条。
5 ○ 断定的判断の提供等も賠償責任の対象(法5条・6条)。
【横断整理】民法の不法行為(709条)では、顧客が①故意・過失②違法性③損害額④因果関係のすべてを立証しなければならない。金融サービス提供法はこのうち①を不要とし、③に推定を働かせた。つまり顧客が示すのは「説明義務違反があったこと」と「元本欠損が生じたこと」で足りる。
【発展:3層で捉える】同じ勧誘場面に、性質の異なる3つの規律が重なっている。金商法=行政上の業務規制(違反すれば業務停止等の行政処分)。金融サービス提供法=民事上の損害賠償(顧客がお金を取り戻す)。民法=一般法としての受け皿。どの法律が何を与えてくれるのかを分けて理解しておくと、条文の混同が起きにくい。
【根拠】金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律4条(説明義務)、5条(断定的判断の提供等の禁止)、6条(損害賠償責任・無過失責任)、7条(元本欠損額の損害額推定)。対比として民法709条。
【相互参照】No.3(適合性の原則)、No.12(消費者契約法)、No.87(顧客への説明)。
問10消費者契約法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- ✔不実告知等により誤認して契約した場合、消費者は契約を取り消すことができる。
- 2事業者間の契約にも適用される。
- 3契約締結時から20年を経過しても取消権は消滅しない。
- 4事業者の損害賠償責任を全部免除する条項も有効である。
- 5取消権は、追認できる時から5年で時効消滅する。
解説:【正解】1(正しいものはどれか)
【結論】不実告知等により誤認して契約した消費者は、その契約を取り消すことができる(消費者契約法4条)。
【肢別】
1 ○ 不実告知・断定的判断の提供・不利益事実の不告知による誤認、不退去・退去妨害による困惑があれば取消しが可能。本肢が正しい。
2 × 適用対象は事業者と消費者(個人)との契約。事業者間の契約には適用されない。
3 × 取消権は契約締結時から5年を経過すると消滅する。「20年経過しても消滅しない」は誤り。
4 × 事業者の損害賠償責任を全部免除する条項は無効(法8条)。
5 × 追認できる時からの期間は「1年」であって5年ではない。
【横断整理】期間の数字を取り違えやすいので方向で覚える。追認できる時から1年(短い方=気づいてから)、契約締結時から5年(長い方=契約から)。肢3と肢5はこの2つの数字を入れ替えた作りになっている。
【発展:取消しと無効の違い】4条は「取消し」=消費者が主張して初めて効力が失われる。8条〜10条の不当条項は「無効」=主張を待たず当然に効力がない。誤認・困惑という勧誘過程の問題は取消し、条項の内容そのものが不当な場合は無効、という切り分けである。金融サービス提供法(No.11)が損害賠償で救うのに対し、消費者契約法は契約の効力を否定して救う点で救済の方向が異なる。
【根拠】消費者契約法2条(定義・事業者間契約への不適用)、4条(誤認・困惑による取消し)、7条1項(取消権の期間制限)、8条(責任の全部免除条項の無効)、10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)。
【相互参照】No.11(金融サービス提供法)、No.13(個人情報保護法)。
問11個人情報の保護に関する法律に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔法令に基づく場合であっても、本人の同意なく第三者に提供することは一切できない。
- 2個人情報を取り扱うにあたっては、利用目的をできる限り特定しなければならない。
- 3個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。
- 4あらかじめ本人の同意を得ずに、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱ってはならない。
- 5個人データを第三者に提供する場合、原則としてあらかじめ本人の同意が必要である。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】個人データの第三者提供には原則として本人の同意が必要だが、法令に基づく場合など一定の場合には同意なく提供できる。「一切できない」は誤り。
【肢別】
1 × 例外規定が存在する。本肢が誤り。
2 ○ 利用目的はできる限り特定しなければならない(法17条)。
3 ○ 安全管理措置義務(法23条)。
4 ○ 特定された利用目的の達成に必要な範囲を超える取扱いには、あらかじめ本人の同意が必要(法18条)。
5 ○ 第三者提供の原則同意(法27条1項)。
【横断整理】本人の同意なく第三者提供できる主な場合は次の4類型。①法令に基づく場合(捜査関係事項照会、税務調査等)②人の生命・身体・財産の保護に必要で本人の同意を得ることが困難なとき③公衆衛生の向上・児童の健全育成に特に必要で同意を得ることが困難なとき④国や地方公共団体の事務に協力する必要があり、同意を得ることでその事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。共通するのは「同意を求めること自体が目的を損なう」場面である点。
【発展:委託・共同利用は第三者提供ではない】業務委託先への提供、事業承継に伴う提供、あらかじめ通知した共同利用は、そもそも第三者提供に当たらない(法27条5項)。同意が要らない理由が「例外だから」なのか「そもそも該当しないから」なのかは、区別して覚えたい。
【根拠】個人情報の保護に関する法律17条(利用目的の特定)、18条(目的外利用の制限)、23条(安全管理措置)、27条1項各号(第三者提供の制限と例外)、27条5項(委託・事業承継・共同利用)。
【相互参照】No.113(要配慮個人情報)、No.14(犯罪収益移転防止法の取引時確認)。
問12犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)に基づく取引時確認に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1取引を行う目的および職業を確認する必要がある。
- 2法人の場合、実質的支配者の本人特定事項も確認しなければならない。
- 3自然人の場合、本人特定事項として氏名・住居・生年月日を確認する。
- ✔既に取引時確認を行った顧客であっても、取引のたびに毎回、同一の確認を行わなければならない。
- 5取引時確認を行った場合、確認記録を作成し取引終了日等から7年間保存しなければならない。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】既に取引時確認を行い、その確認記録を保存している顧客との取引については、原則として再度の確認は不要である。取引のたびに毎回行う必要はない。
【肢別】
1 ○ 取引を行う目的および職業(法人は事業内容)は確認事項(法4条1項3号・4号)。
2 ○ 法人の場合は実質的支配者の本人特定事項も確認する(法4条1項4号)。
3 ○ 自然人の本人特定事項は氏名・住居・生年月日の3点(法4条1項1号)。
4 × 確認済み顧客との取引では原則として再確認は不要。本肢が誤り。
5 ○ 確認記録は取引終了日等から7年間保存(法6条2項)。取引記録も7年間(法7条3項)。
【横断整理】確認事項は顧客の種類で変わる。自然人=本人特定事項(氏名・住居・生年月日)+取引目的+職業。法人=本人特定事項(名称・所在地)+取引目的+事業内容+実質的支配者の本人特定事項+来店者(代表者等)の本人特定事項。法人のほうが「その法人を実際に動かしているのは誰か」まで踏み込む点が特徴である。
【発展:ハイリスク取引】なりすましの疑いがある取引、確認事項を偽っていた疑いがある顧客との取引、特定国等に居住する者との取引などは「厳格な取引時確認」の対象となり、通常より厳格な方法で確認しなければならない。さらに200万円を超える財産の移転を伴う場合は、資産・収入の状況の確認も必要になる。確認済みだから再確認不要、という原則が崩れるのはこの場面である。
【根拠】犯罪による収益の移転防止に関する法律4条1項(取引時確認事項)、4条2項(厳格な取引時確認・ハイリスク取引)、4条3項(確認済み顧客の再確認不要)、6条2項(確認記録の7年保存)、7条3項(取引記録の7年保存)、8条(疑わしい取引の届出)。
【相互参照】No.13(個人情報保護法)、No.16(顧客カード)。
問13金融サービス提供法上の「重要事項」に該当しないものは、次のうちどれか。
- 1権利行使期間の制限または解約期間の制限がある旨
- ✔当該金融商品の過去5年間の運用実績の平均値
- 3取引の相手方の業務・財産の状況の変化により元本欠損が生じるおそれがある旨
- 4金利・通貨の価格・相場の変動により元本欠損が生じるおそれがある旨およびその指標
- 5当初元本を上回る損失が生じるおそれがある旨およびその要因
解説:【正解】2(該当しないものはどれか)
【結論】過去の運用実績は、金融サービス提供法上の「重要事項」として法定されていない。説明すること自体は差し支えないが、法が説明を義務づけている事項ではない。
【肢別】(○=重要事項に該当する/×=該当しない)
1 ○ 権利行使期間・解約期間の制限は重要事項(法4条1項4号・5号)。
2 × 過去5年間の運用実績の平均値は重要事項に含まれない。本肢が正解。
3 ○ 取引の相手方の業務・財産の状況の変化により元本欠損が生じるおそれがある旨は重要事項(信用リスク)。
4 ○ 金利・通貨の価格・相場の変動により元本欠損が生じるおそれがある旨およびその指標は重要事項(市場リスク)。
5 ○ 当初元本を上回る損失が生じるおそれがある旨およびその要因は重要事項。
【横断整理】重要事項は4類型に整理できる。①市場リスク=金利・通貨・相場の変動による元本欠損のおそれとその指標。②信用リスク=取引の相手方の業務・財産の状況の変化による元本欠損のおそれ。③その他業者が定める事由によるリスク。④権利行使期間・解約期間の制限。①〜③がリスクの発生原因、④が権利の制約であり、いずれも「損をするかもしれない」「思ったときに換金できないかもしれない」という不利益に関わる事項で共通している。
【発展:なぜ運用実績が入らないのか】重要事項として法定されているのは、顧客が負う不利益に関する事項である。過去の運用実績は不利益の説明ではなく、むしろ販売を後押しする材料になりうる。良好な実績だけを切り出せば誇大広告に当たり(No.20参照)、将来を保証しない旨の付記も求められる。
【根拠】金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律4条1項各号(重要事項=市場リスク、信用リスク、その他の事由によるリスク、権利行使期間・解約期間の制限)。6条(説明義務違反による損害賠償責任)。
【相互参照】No.11(金融サービス提供法の全体像)、No.87(顧客への説明)、No.20(広告等の表示)、No.6(契約締結前交付書面)。
問14消費者契約法により無効となる契約条項として、誤っているものは次のうちどれか。
- 1消費者の解除権をあらかじめ放棄させる条項
- 2消費者が支払う損害賠償額の予定で、平均的な損害額を超える部分
- 3事業者の故意または重大な過失による損害賠償責任の一部を免除する条項
- ✔契約の目的物の品質を明示する条項
- 5事業者の債務不履行により生じた損害賠償責任の全部を免除する条項
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】契約の目的物の品質を明示する条項は、消費者にとって有益な情報開示であり、無効事由には当たらない。
【肢別】
1 ○ 消費者の解除権をあらかじめ放棄させる条項は無効(消費者契約法8条の2)。
2 ○ 損害賠償額の予定で平均的な損害額を超える部分は無効(9条1号)。
3 ○ 事業者の故意または重大な過失による損害賠償責任の一部を免除する条項は無効(8条1項2号)。
4 × 品質を明示する条項が無効となるとしている点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 債務不履行により生じた損害賠償責任の全部を免除する条項は無効(8条1項1号)。
【横断整理】無効となる条項は3層に整理される。①8条=事業者の損害賠償責任を免除する条項。全部免除は常に無効、一部免除は故意・重過失の場合に無効。②9条=消費者が支払う損害賠償額・違約金の予定のうち、平均的な損害額や年14.6%を超える部分。③10条=任意規定の適用による場合に比べ消費者の権利を制限し義務を加重する条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するもの(包括的な受け皿規定)。
【発展】債務不履行による賠償責任を全部免除する条項は、事業者が何をしても責任を負わないことを意味し、契約の拘束力そのものを空洞化させる。だから過失の程度を問わず無効とされる。一部免除は、軽過失の損害まで全額負担させると事業が成り立たない場面もあるため、軽過失なら有効の余地を残し、故意・重過失に限り無効とする。「悪質さの程度に応じて無効の範囲を変える」という調整が、8条の条文構造に埋め込まれている。
【根拠】消費者契約法8条1項(損害賠償責任の免除条項の無効)、8条の2(解除権放棄条項の無効)、9条1号(平均的な損害額を超える損害賠償額の予定の無効)、9条2号(年14.6%を超える遅延損害金の無効)、10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)。
【相互参照】No.12(消費者契約法の取消し)、No.11(金融サービス提供法)、No.111(重要事項)。
問15個人情報保護法における「要配慮個人情報」に該当しないものは、次のうちどれか。
解説:【正解】3(該当しないものはどれか)
【結論】要配慮個人情報とは、人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実など、不当な差別・偏見が生じないよう特に配慮を要する情報をいう。年収はこれに含まれない。
【肢別】(○=要配慮個人情報に該当する/×=該当しない)
1 ○ 病歴は要配慮個人情報。
2 ○ 信条は要配慮個人情報。
3 × 年収は要配慮個人情報に含まれない。本肢が正解。
4 ○ 犯罪の経歴は要配慮個人情報。
5 ○ 人種は要配慮個人情報。
【横断整理】要配慮個人情報に該当すると、通常の個人情報より二つ重い扱いになる。①取得には原則として本人の同意が必要(通常の個人情報は利用目的の通知・公表で足りる)。②オプトアウトによる第三者提供が認められない(通常の個人情報は一定の届出等を前提にオプトアウトが可能)。入口と出口の両方で規制が上乗せされる。
【発展:センシティブかどうかの基準】年収や資産の状況は、本人にとって知られたくない情報ではあるが、要配慮個人情報には当たらない。区別の基準は「秘匿したいかどうか」ではなく、「その情報によって不当な差別や偏見が生じるおそれがあるかどうか」である。人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪歴といった列挙事項は、いずれも歴史的に差別の理由とされてきた属性である。顧客カードには資産の状況や投資目的を記載するが(No.16参照)、これらが要配慮個人情報に当たらないからこそ、通常の管理体制のもとで扱うことができる。もし顧客の病歴を営業上のメモとして記録すれば、取得の時点で本人同意が必要になる。
【根拠】個人情報の保護に関する法律2条3項(要配慮個人情報の定義)、20条2項(取得の制限・原則として本人同意が必要)、27条2項ただし書(オプトアウトによる第三者提供の対象外)。
【相互参照】No.13(個人情報保護法の第三者提供)、No.16(顧客カード)、No.14(取引時確認)。
問16金融サービス仲介業に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1内閣総理大臣の登録が必要である。
- 2預金媒介業務、保険媒介業務、有価証券等仲介業務、貸金業貸付媒介業務をワンストップで行える。
- 3特定の金融機関への所属は不要である。
- ✔取り扱える商品に制限はなく、高度な説明を要する仕組債等も自由に扱える。
- 5顧客財産の預託を受けることは禁止されている。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】金融サービス仲介業は、特定の金融機関に所属しない代わりに、取り扱える商品が高度な説明を要しない構造の簡単なものに限定されている。仕組債やデリバティブ取引は扱えない。
【肢別】
1 ○ 内閣総理大臣の登録が必要である。
2 ○ 預金媒介業務、保険媒介業務、有価証券等仲介業務、貸金業貸付媒介業務をワンストップで行える。
3 ○ 特定の金融機関への所属は不要である。
4 × 取り扱える商品に制限がないとする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 顧客財産の預託を受けることは禁止されている。
【横断整理】金融商品仲介業(No.119参照)と金融サービス仲介業を対比する。
・金融商品仲介業:特定の金融商品取引業者等に所属する。所属業者が仲介業者の行為について損害賠償責任を負う。取扱商品に類型的な制限はない。
・金融サービス仲介業:所属制をとらない。銀行・証券・保険・貸金の4分野を横断してワンストップで仲介できる。その代わり取扱商品は簡単な構造のものに限られ、保証金の供託義務がある。
【発展:所属制と商品制限はトレードオフ】所属制のもとでは、仲介業者が問題を起こしても所属業者が責任を負うため、顧客の救済が確保される。所属制を外せばこの後ろ盾が消えるので、代わりに二つの手当てが必要になる。一つが取扱商品を単純なものに絞ること、もう一つが保証金の供託によって賠償原資をあらかじめ確保することである。「所属しない自由」と「扱える商品の広さ」は同時には得られない、という設計になっている。肢3と肢4を並べて読むと、この交換関係が見えてくる。
【根拠】金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律11条以下(金融サービス仲介業の登録)、同法の定める4業務(預金等媒介、保険媒介、有価証券等仲介、貸金業貸付媒介)、顧客財産の預託の受入れ禁止、保証金の供託義務。取扱商品は高度な説明を要しないものに限定される。
【相互参照】No.119(金融商品仲介業者)、No.11(金融サービス提供法)、No.102(名義貸しの禁止)。
協会定款・諸規則全30問中 8問を掲載
問17外務員の登録に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1登録を受けていない者に外務員の職務を行わせてはならない。
- 2外務員の行為については、所属する金融商品取引業者が原則として責任を負う。
- 3外務員は、日本証券業協会に備える外務員登録原簿に登録を受けなければならない。
- 4一種外務員は、有価証券関連デリバティブ取引や信用取引を取り扱うことができる。
- ✔二種外務員は、選択権付債券売買取引を含むすべての有価証券取引を取り扱うことができる。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】二種外務員が取り扱えるのは原則として現物有価証券に限られ、選択権付債券売買取引は取り扱えない。これを扱えるのが一種外務員である。
【肢別】
1 ○ 未登録者に外務員の職務を行わせることは禁止(金商法64条1項)。
2 ○ 外務員の行為については所属する金融商品取引業者が原則として責任を負う(64条の3)。使用者責任より重い、いわゆる無過失に近い責任である。
3 ○ 外務員は日本証券業協会に備える外務員登録原簿に登録を受ける(64条)。
4 ○ 一種外務員は有価証券関連デリバティブ取引・信用取引を取り扱える。
5 × 選択権付債券売買取引を含む「すべての」有価証券取引を扱えるとする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】外務員の資格と職務範囲。
・一種外務員:有価証券に係る業務すべて。信用取引、有価証券関連デリバティブ取引、選択権付債券売買取引、新株予約権証券、カバードワラント等を含む。
・二種外務員:現物取引が中心。上記のレバレッジ性・複雑性の高い取引は不可。ただし国債等の一部先物取引に係る限定的な例外がある。
・特別会員一種/二種:登録金融機関(銀行等)の役職員向けで、取り扱える有価証券の範囲自体が公共債・投資信託等に限定される。
【発展:所属業者の責任の重さ】外務員が権限外の行為で顧客に損害を与えても、業者は原則として責任を免れない。免れるのは顧客に悪意があった場合に限られる。外務員登録という公示制度と引き換えに、業者に重い責任を課すという設計である。
【根拠】金商法64条(外務員の登録)、64条1項(無登録者による職務の禁止)、64条の3(所属金融商品取引業者等の責任)、日本証券業協会「協会員の外務員の資格、登録等に関する規則」。
【相互参照】No.120(外務員の資格および研修)、No.415(外務員の種類と職務範囲)。
問18顧客カードに記載すべき事項として、次のうち誤っているものはどれか。
- 1生年月日(自然人の場合)
- 2投資目的および資産の状況
- 3氏名または名称
- 4住所または所在地および連絡先
- ✔顧客の親族の勤務先および年収
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】顧客カードは顧客本人の属性を把握するための帳票であり、顧客の親族の勤務先や年収は記載事項に含まれない。
【肢別】
1 ○ 自然人の場合の生年月日は記載事項。
2 ○ 投資目的および資産の状況は記載事項。適合性の原則を実行に移すための情報である。
3 ○ 氏名または名称は記載事項。
4 ○ 住所または所在地および連絡先は記載事項。
5 × 顧客本人以外の親族の勤務先・年収は含まれない。本肢が誤り。
【横断整理】顧客カードの記載事項は、①氏名または名称②住所または所在地および連絡先③生年月日(自然人)④職業⑤投資目的⑥資産の状況⑦投資経験の有無⑧取引の種類⑨その他各協会員が必要と認める事項。
【発展:3つの帳票の役割の違い】顧客カード=適合性判断のため、顧客の投資属性を把握する(協会規則)。取引時確認記録=マネー・ローンダリング防止のため、本人が本人であることを確認する(犯収法)。内部者登録カード=インサイダー取引防止のため、上場会社等との関係を把握する(協会規則)。同じ「顧客情報を集める」でも、守ろうとしている法益がそれぞれ違う。だから記載事項も重ならない。親族の年収が顧客カードに入らないのは、それが適合性判断に必要な本人の属性ではないからである。
【根拠】日本証券業協会「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」5条(顧客カードの整備)。関連して金商法40条1号(適合性の原則)。
【相互参照】No.17(内部者登録カード)、No.14(取引時確認)、No.3(適合性の原則)、No.220(協会員の顧客管理)。
問19内部者登録カードに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1上場会社等の役員等から有価証券の売買の注文を受ける場合に整備する。
- 2本人が該当する上場会社等の名称および銘柄コードを記載する。
- 3会社名、役職名、所属部署を記載する。
- 4上場会社等との関係を記載する。
- ✔生年月日を記載する必要はない。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】内部者登録カードには生年月日も記載しなければならない。記載不要とする本肢が誤りである。
【肢別】
1 ○ 上場会社等の役員等から有価証券の売買注文を受ける場合に整備する。
2 ○ 本人が該当する上場会社等の名称および銘柄コードを記載する。
3 ○ 会社名、役職名、所属部署を記載する。
4 ○ 上場会社等との関係を記載する。
5 × 生年月日は必須記載事項。本肢が誤り。
【横断整理】内部者登録カードの記載事項は、①氏名②住所または所在地および連絡先③生年月日④会社名、役職名および所属部署⑤上場会社等の名称および銘柄コード⑥上場会社等との関係。同姓同名の別人を取り違えないために、氏名・住所・生年月日という本人特定事項が揃って必要になる。
【発展:誰が対象になるか】対象は役員本人だけではない。上場会社等の役員、主要株主、これらの配偶者および同居者など、インサイダー情報に接する可能性のある者が広く含まれる。整備のタイミングは注文を受ける前であり、注文後に慌てて作るのでは意味がない。カードを作ること自体が目的ではなく、その顧客の注文が重要事実の公表前後のどこに位置するかを社内で監視できる状態にしておくことが目的である。
【根拠】日本証券業協会「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」6条(内部者登録カードの整備)。実体法上の根拠は金商法166条(会社関係者等の禁止行為)。
【相互参照】No.5(インサイダー取引規制)、No.16(顧客カード)、No.220(協会員の顧客管理)。
問20高齢顧客に対する勧誘に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1役席者による事前承認を求めるなどの手続きが求められる。
- 2協会員は、高齢顧客への勧誘による販売について、社内規則を定め適正な取扱いを行わなければならない。
- 3勧誘可能商品、説明方法、受注方法等について社内規則に定める必要がある。
- 4高齢顧客の定義(年齢の目安)は各協会員が定める。
- ✔高齢顧客であっても、当日中に約定させることが常に望ましい。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】高齢顧客への勧誘では、勧誘日と受注日を別日にするなど時間的な余裕を確保する慎重な手続きが求められる。当日中の約定を常に望ましいとする本肢は、この趣旨に真っ向から反する。
【肢別】
1 ○ 役席者による事前承認は求められる手続の一つ。
2 ○ 協会員は社内規則を定め、適正な取扱いを行う義務がある。
3 ○ 勧誘可能商品、説明方法、受注方法等を社内規則に定める必要がある。
4 ○ 高齢顧客の定義(年齢の目安)は各協会員が定める。協会規則が一律の年齢を定めているわけではない。
5 × 当日約定を常に望ましいとする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】高齢顧客に対して求められる主な配慮は、①役席者による事前承認②勧誘日と受注日を別日とする、または勧誘後一定期間をおいて受注する③受注後に役席者等が顧客へ確認の連絡を行う④勧誘可能商品の限定。いずれも「その場で決めさせない」という一点に収れんしている。
【発展:年齢の目安と商品の性質】実務上は75歳以上を目安とし、80歳以上にはさらに慎重な取扱いを求める例が多い。ただし年齢は形式的な入口にすぎず、実際の判断は理解力・健康状態・家族の関与といった個別事情による。仕組債やレバレッジ型商品など、損失の発生機序が直感に反する商品ほど慎重さが要求される。適合性の原則(No.3)を高齢者という属性に即して具体化したものと理解しておきたい。
【根拠】日本証券業協会「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」5条の3(高齢顧客に対する勧誘による販売)および同ガイドライン。上位規範として金商法40条1号(適合性の原則)。
【相互参照】No.3(適合性の原則)、No.88(投資勧誘)、No.288(投資勧誘の記録)、No.487付近(顧客の理解の確認)。
問21協会員の従業員の禁止行為に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1顧客から売買注文の一任を受けて売買を行うことは原則として禁止されている。
- 2顧客と金銭、有価証券の貸借を行うことは禁止されている。
- 3顧客の債務の立替えを行うことは禁止されている。
- 4自己の有価証券を、顧客の名義を使用して売買することは禁止されている。
- ✔顧客から有価証券の名義書換等の手続きの依頼を受けることは禁止されている。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】有価証券の名義書換等の手続の取次ぎは、金融商品取引業者の付随業務として正当に認められた業務であり、禁止行為ではない。
【肢別】
1 ○ 顧客から売買注文の一任を受けて売買を行うことは原則として禁止。
2 ○ 顧客との間で金銭・有価証券の貸借を行うことは禁止。
3 ○ 顧客の債務の立替えは禁止。
4 ○ 自己の有価証券を顧客名義で売買することは禁止(借名取引)。
5 × 名義書換等の手続の依頼を受けることは禁止されていない。本肢が誤り。
【横断整理】禁止される4つに共通するのは、業者・従業員と顧客との間に、本来の委託関係を超えた金銭的なつながりや利益相反を生む点である。貸借や立替えは顧客を業者に従属させ、一任は顧客の自己決定を空洞化させ、借名取引は取引の帰属を偽装する。一方、名義書換の取次ぎは顧客の事務を代行するだけで、この構造を作らない。禁止か否かの線引きは、行為の名称ではなく利益相反を生むかどうかで判断すると迷いにくい。
【発展:一任の例外】売買の一任は原則禁止だが、投資運用業者が投資一任契約に基づいて行う運用は適法である。禁止されているのは、契約の裏付けなく従業員が実質的に顧客の口座を動かす状態であって、法定の枠組みに乗せた一任まで否定されているわけではない。
【根拠】日本証券業協会「協会員の従業員に関する規則」7条(従業員の禁止行為)。付随業務としての名義書換等の取次ぎは金商法35条1項各号。投資一任契約は金商法2条8項12号ロ・28条4項。
【相互参照】No.217(従業員の禁止行為)、No.54(付随業務に該当しないもの)、No.10(注文内容の確認)、No.115(従業員の自己売買)。
問22広告等の表示および景品類の提供に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1取引に伴うリスクについて、顧客に誤解を生じさせる表示をしてはならない。
- 2広告等の表示を行う場合、社内の審査担当者の審査を受けなければならない。
- 3有価証券の性質等について、著しく事実に相違する表示をしてはならない。
- 4顧客に対し、社会通念上妥当と認められる範囲を超えて景品類を提供してはならない。
- ✔投資信託の運用実績を示す場合、最も成績の良い期間のみを取り出して表示してよい。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】運用実績の表示にあたり、最も成績の良い期間だけを取り出して示すことは、顧客に誤解を生じさせる表示として禁止される。
【肢別】
1 ○ 取引に伴うリスクについて誤解を生じさせる表示は禁止。
2 ○ 広告等の表示は社内の審査担当者の審査を受けなければならない。
3 ○ 有価証券の性質等について著しく事実に相違する表示は禁止。
4 ○ 社会通念上妥当と認められる範囲を超える景品類の提供は禁止。
5 × 良好な期間のみの恣意的な切り出しは禁止される。本肢が誤り。
【横断整理】広告等に必ず表示しなければならない主な事項は、①商号・名称②金融商品取引業者である旨および登録番号③手数料等④元本欠損・元本超過損が生じるおそれがある旨とその原因⑤重要な事項について顧客の不利益となる事実。加えて、利益の見込み等について著しく事実に相違する表示、著しく人を誤認させる表示が禁止される(金商法37条)。
【発展:誇大広告の3つの型】数字は嘘ではないが誤解を招く、という広告には型がある。①期間の切り出し(good cherry picking)=最良期間だけを示す。②比較対象のすり替え=異なるリスクの商品と並べる。③表示の大小差=利益は大きく、リスクは小さく書く。いずれも「個々の記載は真実」であるため虚偽表示には当たりにくく、だからこそ「誤解を生じさせる表示」という受け皿の規制が必要になる。
【根拠】金商法37条(広告等の規制)、金商業等府令72条〜76条(表示事項・誇大広告の禁止)。日本証券業協会「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」(広告等の表示および景品類の提供に関する指針)。
【相互参照】No.410(広告規制)、No.320(協会員の広告等)、No.253(販売用資料)。
問23協会員の従業員による自己の計算での有価証券売買に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1あらかじめ所属する協会員に届け出なければならない。
- 2信用取引やデリバティブ取引については、社内規則で制限される場合がある。
- ✔従業員が自己の計算で行う売買は、届出も社内管理も一切不要である。
- 4原則として、所属する協会員を通じて行わなければならない。
- 5協会員は、従業員の取引を把握・管理する体制を整備しなければならない。
解説:【正解】3(誤っているものはどれか)
【結論】協会員の従業員が自己の計算で行う有価証券売買には、事前の届出と社内の管理体制が求められる。届出も社内管理も一切不要とする本肢が誤りである。
【肢別】
1 ○ あらかじめ所属する協会員に届け出なければならない。
2 ○ 信用取引やデリバティブ取引については社内規則で制限される場合がある。
3 × 届出も社内管理も一切不要とする点が誤り。本肢が誤り。
4 ○ 原則として、所属する協会員を通じて行わなければならない。
5 ○ 協会員は従業員の取引を把握・管理する体制を整備しなければならない。
【横断整理】従業員の自己売買が規制される理由は二つある。一つはインサイダー取引の防止で、従業員は顧客の大口注文や引受案件など未公表の情報に触れやすい。もう一つは顧客との利益相反の防止で、自分の建玉に有利になるよう顧客に勧誘する、いわゆるフロントランニングのような行為を封じる必要がある。
【発展】所属する協会員を通じて行わせるのは、取引の内容を協会員が漏れなく把握できるようにするためである。他社に口座を作られると、社内で照合できず監視が働かない。事前届出と自社経由という二つの要求は、どちらも「監視可能性の確保」という一点に収れんしている。信用取引やデリバティブが制限されやすいのは、レバレッジで従業員自身の経済状態が不安定になり、顧客資産の流用など別種の不祥事につながる懸念があるためでもある。規則には他に顧客との金銭・有価証券の貸借や名義貸しの禁止があり(No.19参照)、従業員と顧客の間に不適切な経済関係を作らせない発想で通底する。
【根拠】日本証券業協会「協会員の従業員に関する規則」(従業員の自己の計算による有価証券の売買等に係る届出、所属協会員を通じた売買の原則、協会員による管理体制の整備)。実体法上の背景として金商法166条(インサイダー取引規制)。
【相互参照】No.19(従業員の禁止行為)、No.217(従業員の禁止行為)、No.5(インサイダー取引規制)、No.116(内部管理態勢)。
問24協会員の内部管理態勢に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1内部管理責任者は、内部管理責任者資格試験に合格した者から任命される。
- 2内部管理責任者は、営業単位における投資勧誘等の営業活動を管理する。
- 3営業単位ごとに営業責任者を配置しなければならない。
- 4内部管理統括責任者を任命しなければならない。
- ✔内部管理統括責任者は、営業部門の統括責任者が兼務することが望ましい。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】内部管理統括責任者は、営業部門から独立した立場で法令等遵守の統括を行う必要がある。営業推進の責任者が兼務すれば牽制機能が働かなくなるため、適切でない。
【肢別】
1 ○ 内部管理責任者は内部管理責任者資格試験に合格した者から任命される。
2 ○ 内部管理責任者は営業単位における投資勧誘等の営業活動を管理する。
3 ○ 営業単位ごとに営業責任者を配置しなければならない。
4 ○ 内部管理統括責任者を任命しなければならない。
5 × 営業部門の統括責任者による兼務が望ましいとする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】協会規則が求める管理者は3層になっている。①営業責任者=営業単位ごとに置かれ日常の営業活動を指揮する。②内部管理責任者=営業単位ごとに法令等遵守状況を管理する。③内部管理統括責任者=全社の内部管理を統括する。②と③は資格試験の合格が要件とされ、①とは別の役割を担う。
【発展】営業推進と法令等遵守は、しばしば正面から衝突する。売上目標を負う者が同時に「その勧誘は適合性の原則に反する」と判断する役割も担えば、判断は推進側に傾く。実行者と検証者を兼ねれば検証は形骸化する。これは三線防御と呼ばれる考え方に対応しており、第一線が営業部門、第二線がコンプライアンス・リスク管理部門、第三線が内部監査部門と、独立性を段階的に高めながら三重にチェックをかける。監査等委員会設置会社で監査役を置けない理由(No.62参照)や、分別管理に外部監査が入る理由(No.104参照)も、同じ「実行者と検証者を分ける」という発想に立っている。
【根拠】日本証券業協会「協会員の内部管理責任者等に関する規則」(内部管理統括責任者、内部管理責任者、営業責任者の設置義務および資格要件)。金商法35条の3・40条2号(業務管理体制の整備義務)。
【相互参照】No.115(従業員の自己売買)、No.62(機関設計と監査の独立性)、No.104(分別管理の外部監査)、No.220(協会員の顧客管理)。
取引所定款・諸規則全25問中 8問を掲載
問25東京証券取引所の市場区分に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔現在も市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQの4区分が用いられている。
- 2グロース市場は、高い成長可能性を有する企業向けの市場である。
- 3プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3区分である。
- 4プライム市場は、グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場である。
- 5各市場区分にはそれぞれ上場基準および上場維持基準が定められている。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】東京証券取引所は2022年4月4日に市場区分を再編し、市場第一部・第二部・マザーズ・JASDAQの体系からプライム・スタンダード・グロースの3市場へ移行した。旧4区分が現在も用いられているとする本肢が誤りである。
【肢別】
1 × 旧区分は既に廃止済み。本肢が誤り。
2 ○ グロース市場は高い成長可能性を有する企業向け。
3 ○ 現在はプライム・スタンダード・グロースの3区分。
4 ○ プライム市場はグローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向け。
5 ○ 各市場区分に上場基準と上場維持基準が定められている。
【横断整理】3市場のコンセプト。プライム=多くの機関投資家の投資対象になりうる規模と、高いガバナンス水準を備えた企業。スタンダード=公開市場における投資対象として十分な流動性とガバナンス水準を備えた企業。グロース=高い成長可能性を有する一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業。
【発展:上場維持基準という発想】再編の眼目は入口の基準(上場審査基準)ではなく、出口の基準(上場維持基準)を各市場に置いた点にある。かつては一度上場すれば実質的に区分が固定されたが、現在は流通株式時価総額・流通株式比率・売買代金等の維持基準を継続的に満たす必要があり、満たせなければ改善期間を経て市場区分の変更や上場廃止に至る。基準を「入るための条件」ではなく「居続けるための条件」として読み替えるのが、この制度の理解の要である。
【根拠】東京証券取引所「有価証券上場規程」(市場区分、上場審査基準、上場維持基準)。市場区分再編の実施日は2022年4月4日。制度は変更されうるため、受験時点の最新情報を確認すること。
【相互参照】No.122(上場審査基準)、No.123(上場廃止基準)、No.324(上場管理)。
問26売買立会による価格決定の原則に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1同一価格の注文については、先に発注された注文が優先する(時間優先の原則)。
- ✔ザラ場では板寄せ方式により価格が決定される。
- 3板寄せ方式では、時間優先の原則は適用されない。
- 4成行注文は指値注文に優先する(成行優先の原則)。
- 5買い注文は高い価格の指値が、売り注文は低い価格の指値が優先する(価格優先の原則)。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】ザラ場で用いられるのはザラ場方式(オークション方式)であって、板寄せ方式ではない。板寄せ方式が使われるのは、始値・終値の決定時や売買中断後の再開時などである。
【肢別】
1 ○ 同一価格の注文は先に発注されたものが優先する(時間優先の原則)。
2 × ザラ場=板寄せ、とする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 板寄せ方式では時間優先の原則は適用されない。一定時点までの注文をまとめて一つの価格で対当させるため、注文の先後を問う余地がない。
4 ○ 成行注文は指値注文に優先する(成行優先の原則)。
5 ○ 買いは高い指値、売りは低い指値が優先する(価格優先の原則)。
【横断整理】3つの優先原則の適用場面。
・価格優先:ザラ場・板寄せの双方で機能
・成行優先:ザラ場・板寄せの双方で機能
・時間優先:ザラ場でのみ機能。板寄せでは適用されない
肢3が正しい記述であることは、この一覧から確認できる。
【発展:板寄せの手順】板寄せは①成行注文をすべて約定させ②約定価格より高い買い指値と低い売り指値をすべて約定させ③その価格において売りまたは買いの一方が全量約定する、という条件を満たす価格を単一の約定値段として決定する。全員が同じ価格で成立するため「誰が先に出したか」は意味を持たない。これが時間優先の原則が働かない理由である。
【根拠】東京証券取引所「業務規程」(売買立会による売買、呼値の優先順位、板寄せ方式・ザラ場方式)。
【相互参照】No.23(値幅制限・特別気配)、No.32(成行注文と指値注文)、No.121(売買立会時間)、No.227(板情報)。
問27呼値の値幅制限(制限値幅)および特別気配に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1直前の約定値段から一定以上乖離した注文が出た場合、特別気配が表示される。
- ✔制限値幅を超える価格での注文であっても、取引所は必ず受け付ける。
- 3制限値幅は、前日の終値等(基準値段)を基準として銘柄の価格水準ごとに定められている。
- 4制限値幅の上限まで上昇することをストップ高という。
- 5特別気配は、一定時間ごとに気配値を更新して対当する注文を待つ仕組みである。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】制限値幅を超える価格の指値注文は取引所において受け付けられない。「必ず受け付ける」とする本肢が誤りである。
【肢別】
1 ○ 直前の約定値段から一定以上乖離した注文が出た場合、特別気配が表示される。
2 × 制限値幅超の注文は不受理または失効となる。本肢が誤り。
3 ○ 制限値幅は前日終値等(基準値段)を基準とし、銘柄の価格水準ごとに定められている。
4 ○ 制限値幅の上限まで上昇することをストップ高という。下限まで下落すればストップ安。
5 ○ 特別気配は一定時間ごとに気配値を更新し、対当する注文を待つ仕組み。
【横断整理】値幅制限と特別気配は、目的は近いが働くタイミングが違う。値幅制限=1日の値動きの外枠を事前に固定する(注文段階の規制)。特別気配=枠内であっても直前値から急に飛ぶ場合に、いったん止めて反対注文を呼び込む(約定段階の緩衝)。前者が壁、後者がブレーキである。
【発展:更新値幅と連続約定気配】特別気配は表示後、一定時間ごとに更新値幅の範囲で気配値を切り上げ・切り下げしながら対当を探す。放置されるのではなく、段階的に価格を動かして約定に導く設計である。これとは別に、短時間に連続して約定が進む場合には連続約定気配が表示される。いずれも「価格が不連続に飛ぶことを避け、投資家に注文を出し直す時間を与える」という同じ発想に立っている。
【根拠】東京証券取引所「業務規程」および同施行規則(制限値幅、特別気配、連続約定気配、更新値幅)。基準値段は原則として前日の終値等。
【相互参照】No.134(気配表示)、No.227(板情報)、No.22(価格決定の原則)。
問28普通取引の決済(受渡し)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1約定日の翌営業日(T+1)に決済される。
- 2約定日当日(T+0)に決済される。
- 3約定日から起算して5営業日目に決済される。
- 4約定日から起算して4営業日目(T+3)に決済される。
- ✔約定日から起算して3営業日目(T+2)に決済される。
解説:【正解】5(正しいものはどれか)
【結論】株式等の普通取引の決済は、約定日から起算して3営業日目(T+2)に行われる。2019年7月16日約定分からこの取扱いとなっている。
【肢別】
1 × T+1は国債の決済(2018年5月から)。株式ではない。
2 × T+0(即日決済)は普通取引では採用されていない。
3 × 5営業日目は該当しない。かつての制度でもこの日数ではない。
4 × T+3は2019年7月15日約定分までの旧制度。「4営業日目」という数え方自体は起算日を含む正しい表現だが、現在の日数ではない。
5 ○ 3営業日目(T+2)。本肢が正しい。
【横断整理】起算日の数え方に注意する。「約定日から起算して3営業日目」は約定日を1日目と数えるので、実際に経過する日数は2営業日であり、これがT+2という表記に対応する。日本語の「○営業日目」と英語表記の「T+○」は常に1ずれる。肢4が「4営業日目(T+3)」と書かれているのは、この対応関係自体は正しく作られている。
【発展:なぜT+2なのか、そして何に効くか】決済期間の短縮は、約定から決済までの間に相手方が破綻するリスク(決済リスク)を減らすために進められてきた。そしてこの日数は権利確定日の計算に直結する。T+2だから、権利確定日の2営業日前が権利付最終日になる。決済ルールを覚えるだけでなく、配当や株主優待をいつまでに買えば取れるかという実務に接続していることを押さえておきたい。米国等ではさらにT+1へ移行しており、日本でも議論がある。制度変更の可能性があるため受験時点の最新情報を確認すること。
【根拠】東京証券取引所「業務規程」(普通取引の決済日)。株式のT+2化は2019年7月16日約定分から、国債のT+1化は2018年5月から。
【相互参照】No.31(権利確定日と権利付最終日)、No.430(受渡日の計算)、No.90(委託保証金の差入期限)、No.243(債券の受渡代金)。
問29立会外取引(ToSTNeT取引)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1単一銘柄取引やバスケット取引などがある。
- ✔取引所の市場外で行われる取引であり、取引所取引には該当しない。
- 3立会時間外に行われる取引である。
- 4自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)に利用される。
- 5大口取引を市場価格への影響を抑えて執行する目的で利用される。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】立会外取引(ToSTNeT取引)は、立会時間外に取引所のシステムを用いて行われる取引所取引である。市場外で行われる取引ではない。
【肢別】
1 ○ 単一銘柄取引やバスケット取引などの類型がある。
2 × 取引所取引に該当しないとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 立会時間外に行われる取引である。
4 ○ 自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)に利用される。
5 ○ 大口取引を市場価格への影響を抑えて執行する目的で利用される。
【横断整理】「立会外」と「市場外」は別概念である。立会外取引=取引所のシステム上で、立会時間の外に行う。取引所取引なので取引所の規制・監視が及ぶ。市場外取引=PTS(私設取引システム)や相対取引など、取引所を通さない。ToSTNeTは前者に属する。名称に「外」が付くのは立会にかからないという意味であって、取引所から出るという意味ではない。
【発展:3つのToSTNeTの使い分け】ToSTNeT-1=単一銘柄取引・バスケット取引。当事者間で合意した価格・数量を付け合わせる。ToSTNeT-2=終値取引。当日の終値等を用いて執行する。ToSTNeT-3=自己株式立会外買付取引。上場会社が自己株式を買い付ける専用の枠組みで、朝の立会開始前に前日終値で執行される。いずれも大口注文が板を直撃して価格を歪めることを避けるための仕組みである。
【根拠】東京証券取引所「業務規程」(立会外取引、ToSTNeT-1・2・3)。市場外取引としてのPTSは金商法2条8項10号(私設取引システム運営業務)で、運営には登録に加え認可が必要(30条)。
【相互参照】No.1(PTSは登録+認可)、No.22(売買立会の価格決定)、No.121(売買立会時間)。
問30東京証券取引所の売買立会時間に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1前場は8時30分から11時30分まで、後場は12時00分から15時00分までである。
- 2立会時間の区分はなく、9時00分から15時00分まで連続している。
- ✔前場は9時00分から11時30分まで、後場は12時30分から15時30分までである。
- 4前場は9時00分から11時00分まで、後場は12時30分から15時00分までである。
- 5前場は9時00分から11時30分まで、後場は13時00分から15時00分までである。
解説:【正解】3(正しいものはどれか)
【結論】東京証券取引所は2024年11月5日より取引時間を30分延長し、前場9時00分〜11時30分、後場12時30分〜15時30分となった。
【肢別】
1 × 前場の開始は9時00分であり8時30分ではない。後場の開始も12時30分、終了も15時30分。
2 × 立会時間には前場・後場の区分がある。昼休みが存在する。
3 ○ 前場9:00〜11:30、後場12:30〜15:30。本肢が正しい。
4 × 前場の終了は11時30分であり11時00分ではない。後場の終了も15時30分。
5 × 後場の開始は12時30分であり13時00分ではない。後場の終了も15時30分。
【横断整理】延長の目的は三つある。①決算発表等への対応時間を確保する②システム障害が起きた場合に再開する余地を作る③海外市場と重なる時間帯を広げる。2020年に発生した終日売買停止を受け、障害時の復旧余地が重視された経緯がある。
【発展】延長にあわせて、終値の決定に15時25分から15時30分までの注文受付時間を設けるクロージング・オークションが導入された。従来は15時00分ちょうどの板寄せで終値が決まり、直前の大口注文が終値を大きく動かしうる問題があった。時間をかけて注文を集め、終値の形成を透明で操作されにくくする趣旨である。板寄せ方式では時間優先の原則が働かない(No.22参照)という性質が、ここでも生きている。同じ時間帯に出された注文はすべて同じ価格で処理されるため、直前に滑り込ませることに意味がなくなる。制度変更の可能性があるため、受験時点の最新情報を確認すること。
【根拠】東京証券取引所「業務規程」(売買立会時間。2024年11月5日より前場9:00〜11:30、後場12:30〜15:30に変更、あわせてクロージング・オークションを導入)。
【相互参照】No.22(板寄せ方式と時間優先の原則)、No.25(立会外取引)、No.23(特別気配)、No.24(決済期間)。
問31上場審査基準に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔形式要件を満たしていれば、実質審査を経ることなく上場が承認される。
- 2企業内容等の開示の適正性が審査される。
- 3形式要件(株主数、流通株式数、時価総額等)と実質審査基準がある。
- 4コーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制の有効性が審査される。
- 5実質審査基準では、企業の継続性・収益性、経営の健全性等が審査される。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】形式要件を満たすことは上場申請の前提にすぎず、それだけで上場が承認されるわけではない。さらに実質審査基準に適合すると認められて初めて承認される。
【肢別】
1 × 実質審査を経ずに承認されるとする点が誤り。本肢が誤り。
2 ○ 企業内容等の開示の適正性が審査される。
3 ○ 形式要件(株主数、流通株式数、時価総額等)と実質審査基準がある。
4 ○ コーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制の有効性が審査される。
5 ○ 実質審査基準では企業の継続性・収益性、経営の健全性等が審査される。
【横断整理】上場審査は二段構えである。第一段が形式要件で、株主数、流通株式数、流通株式時価総額、事業継続年数、純資産の額、利益の額または売上高など、数値で機械的に判定できる項目からなる。第二段が実質審査基準で、①企業の継続性および収益性②企業経営の健全性③企業のコーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制の有効性④企業内容等の開示の適正性⑤その他公益または投資者保護の観点から必要と認める事項の5項目を、個別に審査する。
【発展】形式要件は客観的だが、売上の先食い、関係会社取引による利益の水増し、上場直前の株主数の調整など、数字は作れる。実質審査は、その数字が持続可能な事業構造から生まれたか、支配株主との取引が公正か、開示体制が機能しているかを人が判断する工程である。同じ二段構えは上場「維持」の場面にも表れる。維持基準は数値で判定されるが、虚偽記載など開示の信頼性を損なう事由は別途、実質的な判断として上場廃止事由に位置づけられている(No.123参照)。
【根拠】東京証券取引所「有価証券上場規程」(形式要件および上場審査基準)。実質審査基準は、企業の継続性及び収益性、企業経営の健全性、企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性、企業内容等の開示の適正性、その他公益又は投資者保護の観点から当取引所が必要と認める事項の5項目。
【相互参照】No.21(市場区分と上場維持基準)、No.123(上場廃止基準)、No.324(上場管理)、No.130(新規公開)。
問32上場廃止基準に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1銀行取引の停止や破産・再生手続開始等の場合は上場廃止となる。
- 2虚偽記載等により有価証券報告書の信頼性が著しく損なわれた場合は上場廃止となる。
- ✔株価が一定水準を下回った場合、直ちに上場廃止となる。
- 4有価証券報告書等の提出遅延が一定期間続いた場合は上場廃止となる。
- 5上場維持基準(株主数、流通株式時価総額等)に抵触し、改善期間内に改善されない場合は上場廃止となる。
解説:【正解】3(誤っているものはどれか)
【結論】株価水準そのものを理由とする上場廃止基準は設けられていない。株価が一定水準を下回っただけで直ちに上場廃止となることはない。
【肢別】
1 ○ 銀行取引の停止や破産・再生手続開始等の場合は上場廃止となる。
2 ○ 虚偽記載等により有価証券報告書の信頼性が著しく損なわれた場合は上場廃止となる。
3 × 株価が一定水準を下回れば直ちに上場廃止とする点が誤り。本肢が誤り。
4 ○ 有価証券報告書等の提出遅延が一定期間続いた場合は上場廃止となる。
5 ○ 上場維持基準に抵触し、改善期間内に改善されない場合は上場廃止となる。
【横断整理】上場廃止事由は性格の異なる3群に分かれる。①財務・信用の破綻=銀行取引停止、破産・再生・更生手続の開始、債務超過の継続。②開示の信頼性の喪失=有価証券報告書等の虚偽記載、監査意見の不表明、提出遅延。③市場としての適格性の喪失=上場維持基準(株主数、流通株式数、流通株式時価総額、売買代金等)への抵触。②が含まれているのは、市場の前提が正確な情報開示にあるからである。
【発展】株価そのものは基準にならないが、株価が下がれば流通株式時価総額が減り、③の維持基準に抵触しうる。株価は入口ではなく、時価総額という指標を経由して間接的に効く。また上場廃止は突然ではなく、おそれが生じた段階で監理銘柄に指定して注意喚起し、決定すると整理銘柄として原則1か月の売買機会を確保したうえで廃止となる。売却機会を奪わない段階的手順であり、維持基準の抵触に改善期間があるのも同じ配慮による(No.21参照)。
【根拠】東京証券取引所「有価証券上場規程」(上場廃止基準、上場維持基準、監理銘柄・整理銘柄の指定)。整理銘柄の指定期間は原則1か月間。
【相互参照】No.21(市場区分と上場維持基準)、No.122(上場審査基準)、No.324(上場管理)、No.409(上場廃止後の開示義務)。
株式業務全50問中 8問を掲載
問33株式の売買単位に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1銘柄ごとに1株、10株、100株、1,000株と異なっている。
- 2全銘柄1,000株に統一されている。
- 3売買単位は各証券会社が自由に定めることができる。
- 4全銘柄1株に統一されている。
- ✔国内上場株式の売買単位は、2018年10月から全銘柄100株に統一されている。
解説:【正解】5(正しいものはどれか)
【結論】国内上場株式の売買単位(単元株式数)は、全国証券取引所の取組みにより2018年10月1日をもって全銘柄100株に統一された。
【肢別】
1 × かつては1株・10株・100株・1,000株などが混在していたが、2018年10月に解消済み。過去の記述である。
2 × 1,000株への統一は行われていない。統一の目標値は100株。
3 × 売買単位は取引所規則および発行会社の定款で定まるもので、証券会社が自由に決められるものではない。
4 × 1株への統一もされていない。単元株制度そのものは維持されている。
5 ○ 2018年10月から全銘柄100株。本肢が正しい。
【横断整理】単元株式数は定款で定める事項であり、上限は1,000株かつ発行済株式総数の200分の1を超えない範囲とされる(会社法188条2項、会社法施行規則34条)。取引所ルールで100株に揃えられているのは、この会社法の枠内での運用である。
【発展:なぜ統一したのか】単位がばらばらだと、同じ株価水準の銘柄でも最低投資金額が10倍違うことになり、投資家が銘柄を比較しにくく、システムの誤発注も起きやすい。あわせて取引所は投資単位を5万円以上50万円未満とするよう上場会社に要請しており、株価が上がりすぎた銘柄には株式分割(No.33)で単位を下げる対応を促している。統一は入口を揃える施策、投資単位の要請は水準を保つ施策で、二つで一組になっている。
【根拠】全国証券取引所「売買単位の集約に係る要請」(2018年10月1日完了)。会社法188条(単元株式数)、会社法施行規則34条(単元株式数の上限)。東京証券取引所「投資単位の引下げに関する要請」。
【相互参照】No.126(単元未満株式)、No.233(単元株制度)、No.432(買増請求)、No.33(株式分割)。
問34株価1,800円、1株当たり当期純利益(EPS)が120円、1株当たり純資産(BPS)が1,200円である銘柄について、PERとPBRの組合せとして正しいものはどれか。
- 1PER 12.0倍、PBR 1.5倍
- 2PER 18.0倍、PBR 1.5倍
- 3PER 15.0倍、PBR 1.2倍
- 4PER 12.0倍、PBR 1.2倍
- ✔PER 15.0倍、PBR 1.5倍
解説:【正解】5(正しいものはどれか)
【方向の確認】計算前に桁を押さえる。PERは株価を1株当たり利益で割るので「倍」の単位で二桁程度、PBRは株価を1株当たり純資産で割るので1倍前後になるのが普通である。株価1,800円に対しBPSが1,200円なのだから、PBRが1.5倍付近になることは割り算をする前に見当がつく。
【結論】PER=株価÷EPS=1,800円÷120円=15.0倍。PBR=株価÷BPS=1,800円÷1,200円=1.5倍。よって肢5。
【肢別】組合せ型なので、2つの指標を独立に計算し、両方一致する肢だけを残す。
1 × PER12.0倍が誤り(PBR1.5倍のみ正しい)。片方だけ合っている肢に飛びつかせるための作り。
2 × PER18.0倍が誤り(PBR1.5倍のみ正しい)。
3 × PBR1.2倍が誤り(PER15.0倍のみ正しい)。
4 × PER12.0倍・PBR1.2倍とも誤り。
5 ○ PER15.0倍・PBR1.5倍。両方正しい。
【検算】割り算の答えを掛け戻す。15.0倍×EPS120円=1,800円、1.5倍×BPS1,200円=1,800円。どちらも株価に戻れば正しい。
【単位の注意】PER・PBRは「倍」であって「%」ではない。1.5倍を150%と書いた肢が並ぶ問題もあるので、単位まで含めて選択肢を読むこと。
【発展:最大の誤りは分母の取り違え】PERの分母はEPS(利益)、PBRの分母はBPS(純資産)。これを入れ替えると1,800÷1,200=1.5をPER、1,800÷120=15.0をPBRとしてしまう。値そのものは正しく求まっているのに名前が逆になるため、検算では見つからない。分母が損益計算書由来か貸借対照表由来かで区別すると取り違えにくい。
【根拠】PER=株価÷1株当たり当期純利益、PBR=株価÷1株当たり純資産。両者はPBR=PER×ROEの関係で結ばれる(株価÷BPS=株価÷EPS×EPS÷BPS)。
【相互参照】No.334(PBR=PER×ROEを使う問題)、No.174(EPS・BPSの算出)、No.28(配当利回り・配当性向)。
問35株価2,500円、1株当たり年間配当金が50円、1株当たり当期純利益が200円である銘柄の配当利回りと配当性向の組合せとして正しいものはどれか。
- 1配当利回り4.0%、配当性向25.0%
- 2配当利回り2.5%、配当性向40.0%
- 3配当利回り2.5%、配当性向25.0%
- ✔配当利回り2.0%、配当性向25.0%
- 5配当利回り2.0%、配当性向20.0%
解説:【正解】4(正しいものはどれか)
【方向の確認】分母が何かを先に決める。配当利回りは株価に対する配当の割合なので分母は株価2,500円、配当性向は利益に対する配当の割合なので分母はEPS200円。分母が10倍以上違うのだから、二つの数値が近い値になるはずがない。
【結論】配当利回り=50円÷2,500円×100=2.0%。配当性向=50円÷200円×100=25.0%。よって肢4。
【肢別】
1 × 配当利回り4.0%が誤り。この4.0という数字は200円÷50円=4、すなわち配当性向の逆数を%と読んだ値と一致する。分子分母を逆に置いた典型的な誤りの受け皿である。
2 × 両方とも誤り。2.5%と40.0%は互いに逆数の関係(1÷0.025=40)にあり、利回りと性向の分子分母をまとめて取り違えた場合の値を並べた肢。
3 × 配当利回り2.5%が誤り(配当性向25.0%のみ正しい)。2.5は株価2,500円の数字に引きずられた値。
4 ○ 2.0%と25.0%。両方正しい。
5 × 配当性向20.0%が誤り(配当利回り2.0%のみ正しい)。利回り2.0%に桁を合わせただけの撹乱値。
【検算】掛け戻す。2.0%×株価2,500円=50円=1株配当。25.0%×EPS200円=50円=1株配当。どちらも配当金50円に戻れば正しい。
【単位の注意】いずれも%。×100を落とすと0.02、0.25という小数になり、選択肢のどれにも当てはまらないので気づけるが、逆に×100を二重に掛けると200%、2,500%となる。
【発展:配当性向と内部留保率】配当性向+内部留保率=100%である。配当性向25.0%なら75.0%を社内に残している計算になる。配当性向が高いほど株主への還元は厚いが、再投資に回す原資は薄くなる。成長段階の企業で配当性向が低いことは、それ自体が悪い兆候とは限らない。
【根拠】配当利回り=1株当たり年間配当金÷株価×100。配当性向=1株当たり配当金÷1株当たり当期純利益×100(=配当総額÷当期純利益×100)。内部留保率=100%−配当性向。
【相互参照】No.27(PER・PBR)、No.232(配当政策)、No.429(配当落ち)、No.334(PBR=PER×ROE)。
問36株式ミニ投資および株式累積投資(るいとう)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1株式ミニ投資では、顧客が価格を指定すること(指値注文)はできない。
- ✔株式ミニ投資および株式累積投資で買い付けた株式は、単元未満であっても議決権を行使できる。
- 3株式累積投資では、ドル・コスト平均法の効果が期待できる。
- 4株式累積投資は、毎月一定額ずつ継続的に買い付ける方法である。
- 5株式ミニ投資は、売買単位の10分の1単位で売買を行うものである。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】株式ミニ投資・株式累積投資で保有する持分は単元未満であり、単元未満株には議決権がない。単元株数に達し顧客名義に移管して初めて議決権を行使できる。
【肢別】
1 ○ 株式ミニ投資では顧客が値段を指定することはできない。約定価格は取次日の始値等によって決まる。
2 × 単元未満のまま議決権を行使できるとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 毎月一定額を買い付ける累積投資はドル・コスト平均法の効果が期待できる。
4 ○ 株式累積投資は毎月一定額ずつ継続的に買い付ける方法。
5 ○ 株式ミニ投資は売買単位の10分の1単位で売買する。売買単位100株なら10株単位。
【横断整理】単元未満株主に認められる権利と認められない権利を分けて覚える。認められる=剰余金配当請求権、残余財産分配請求権、株式分割による割当てを受ける権利、買取請求権・買増請求権。認められない=議決権、株主総会での議案提案権など共益権の中核部分。「お金に関する権利は残り、会社運営に口を出す権利は失う」と整理すると迷いにくい。
【発展:ミニ投資と累積投資の性格の違い】ミニ投資は「単位を小さくして買う」制度で、注文の都度、投資家が数量を決める。累積投資は「時間を分けて買う」制度で、金額を固定して継続的に買い付ける。前者が数量の細分化、後者が時間の分散であり、ドル・コスト平均法の効果が語られるのは後者である。値段を指定できない点は両者に共通し、これは証券会社が多数の顧客分をまとめて執行する仕組み上の帰結である。
【根拠】会社法189条(単元未満株式についての権利の制限)、308条1項(議決権は単元ごと)。日本証券業協会「株式ミニ投資に関する規則」「累積投資に関する規則」。累積投資契約の締結は金商法35条1項7号の付随業務。
【相互参照】No.126(単元未満株式)、No.432(買増請求)、No.433(株式ミニ投資)、No.55(累積投資契約)、No.54(付随業務)。
問37ある投資家が上場株式を1株950円で3,000株買い付けた。委託手数料が9,000円(消費税10%別途)である場合、受渡代金として正しいものはどれか。
- 12,840,100円
- 22,841,000円
- 32,850,000円
- 42,859,000円
- ✔2,859,900円
解説:【正解】5(正しいものはどれか)
【方向の確認】買付けなのだから、投資家が支払う金額は約定代金より必ず「多い」。約定代金950円×3,000株=2,850,000円を下回る肢1・肢2は、この一点だけで消去できる。等しい肢3も手数料を払っていないことになるので消える。計算を始める前に候補は肢4と肢5の2つに絞れる。
【結論】買付けの受渡代金=約定代金+委託手数料(税込)。約定代金=950円×3,000株=2,850,000円。委託手数料(税込)=9,000円×1.1=9,900円。受渡代金=2,850,000+9,900=2,859,900円。よって肢5。
【肢別】
1 × 2,840,100円=2,850,000−9,900。売付けの式(手数料を差し引く)で計算した値。加減の向きを逆にした誤り。
2 × 2,841,000円=2,850,000−9,000。向きを逆にしたうえ、消費税も落とした値。誤りが二つ重なっている。
3 × 2,850,000円=約定代金そのもの。手数料を加え忘れた値。
4 × 2,859,000円=2,850,000+9,000。向きは正しいが消費税を落とした値。本問で最も引っかかりやすい肢。
5 ○ 2,859,900円。
【検算】差額で確かめる。2,859,900−2,850,000=9,900円で、これが税込手数料9,000×1.1と一致する。逆に9,900÷1.1=9,000と割り戻せば税抜手数料に戻る。
【単位の注意】消費税は「10%別途」と書かれている。別途=手数料に上乗せするという意味であり、9,000円の中に税が含まれているわけではない。「税込」と「税別」のどちらで与えられているかを毎回読み取ること。
【発展:向きを間違えない考え方】手数料は証券会社の取り分だから、投資家の手元からは必ず出ていく。買うときは支払額が増え、売るときは受取額が減る。どちらも「投資家にとって不利な方向に動く」と覚えておけば、式を暗記しなくても符号を誤らない。
【根拠】受渡代金=約定代金+委託手数料(税込)〔買付け〕、=約定代金−委託手数料(税込)〔売付け〕。約定代金=約定単価×株数。消費税率10%。
【相互参照】No.132(売付けの受渡代金)、No.234(往復手数料を伴う損益計算)、No.24(受渡日はT+2)、No.243(債券の受渡代金)。
問38株式の権利確定に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1権利確定日と権利付最終日は常に同一日である。
- ✔権利落ち日に買い付けても、その期の配当を受け取る権利は得られない。
- 3権利確定日の当日に買い付ければ、配当を受け取る権利が得られる。
- 4権利落ち日は権利確定日の2営業日後である。
- 5権利付最終日は、権利確定日の翌営業日である。
解説:【正解】2(正しいものはどれか)
【結論】権利落ち日に買い付けても、その期の配当を受け取る権利は得られない。決済がT+2であるため、権利確定日(基準日)に株主名簿に載るには、その2営業日前である権利付最終日までに買い付けている必要がある。
【肢別】
1 × 権利確定日と権利付最終日は同一日ではない。権利付最終日は権利確定日の2営業日前。
2 ○ 権利落ち日以降の買付けでは当期の権利は得られない。本肢が正しい。
3 × 権利確定日当日に買っても受渡しが2営業日後になるため、株主名簿に載らない。
4 × 権利落ち日は権利確定日の1営業日前であり、「2営業日後」は誤り。前後の向きが逆になっている。
5 × 権利付最終日は権利確定日の2営業日前であり、「翌営業日」は誤り。これも前後が逆。
【横断整理】並び順を時系列で固定する。権利付最終日(確定日の2営業日前)→ 権利落ち日(確定日の1営業日前)→ 権利確定日。3つとも確定日以前に並び、確定日より後に来るものはない。肢4と肢5がいずれも「後」「翌」と書いているのは、この向きを取り違えさせるための作りである。
【発展:カレンダーで数える】権利確定日が水曜だとすると、火曜が権利落ち日、月曜が権利付最終日になる。ただし数えるのは営業日であって暦日ではないため、土日祝を挟むと日付は大きくずれる。月末が権利確定日となる銘柄が多く、月末が金曜なら権利付最終日は同じ週の水曜である。実務では取引所の営業日カレンダーで確認する。決済期間が変われば権利付最終日の位置も動くため、T+2という前提が変わっていないかも併せて確認したい。
【根拠】会社法124条(基準日)。権利付最終日・権利落ち日の位置は東京証券取引所「業務規程」に基づく普通取引の決済期間(T+2)から導かれる。
【相互参照】No.24(普通取引の決済はT+2)、No.430(受渡日の計算)、No.429(配当落ち)、No.133(株主優待制度)。
問39成行注文と指値注文に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔指値注文は、指定した値段より不利な値段で約定することがある。
- 2成行注文は、必ず約定するとは限らない。
- 3成行注文は、値段を指定せずに売買する注文である。
- 4指値注文は、売買する値段を指定する注文である。
- 5成行注文は指値注文に優先して執行される。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】指値注文は、買いなら指値以下、売りなら指値以上でしか約定しない。指定した値段より不利な値段で約定することはない。
【肢別】
1 × 不利な値段で約定することがあるとする点が誤り。本肢が誤り。
2 ○ 成行注文でも対当する注文がなければ約定しない。値幅制限やストップ配分の状況によっては未約定のまま引けることがある。
3 ○ 成行注文は値段を指定しない注文。
4 ○ 指値注文は値段を指定する注文。
5 ○ 成行注文は指値注文に優先して執行される(成行優先の原則)。
【横断整理】両者の長所と短所は裏返しの関係にある。成行=約定しやすいが価格が読めない。指値=価格は守れるが約定しないことがある。「約定の確実性」と「価格の確実性」は同時には手に入らず、投資家はどちらを優先するかを選んでいる。
【発展:成行注文の危うさ】板が薄い銘柄に大きな成行注文を出すと、板を食い上げて想定外の価格で約定することがある。指値注文なら不利な約定はないが、その代わり相場が離れていけば置いていかれる。実務ではこの中間として、寄付きの価格で執行する寄成、引けの価格で執行する引成、指値が約定しなければ引けで成行に変わる不成(ふなり)といった条件付注文が用意されている。いずれも「価格と約定確実性のどちらをどこまで譲るか」を細かく指定する仕組みである。
【根拠】東京証券取引所「業務規程」(呼値の優先順位、成行優先の原則、価格優先の原則、時間優先の原則)。注文受託時の確認事項は金商業等府令の注文伝票記載事項による。
【相互参照】No.22(3つの優先原則)、No.23(値幅制限・特別気配)、No.10(注文内容の確認義務)。
問40株式の発行形態に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1第三者割当ては、既存株主の持分が希薄化するおそれがある。
- ✔株式分割は、会社に新たな資金が払い込まれる資金調達手段である。
- 3公募(時価発行増資)は、広く一般の投資家から資金を調達する方法である。
- 4第三者割当ては、特定の第三者に新株を割り当てる方法である。
- 5株主割当ては、既存株主に持株数に応じて新株を割り当てる方法である。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】株式分割は既存の株式を細分化して株式数を増やすだけであり、会社に新たな払込みは生じない。資金調達手段ではない。
【肢別】
1 ○ 第三者割当ては既存株主の持分比率を薄める(希薄化)おそれがある。
2 × 株式分割を資金調達手段とする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 公募(時価発行増資)は広く一般の投資家から資金を調達する方法。
4 ○ 第三者割当ては特定の第三者に新株を割り当てる方法。
5 ○ 株主割当ては既存株主に持株数に応じて新株を割り当てる方法。
【横断整理】株式数が増える場面を、会社にお金が入るかどうかで二分する。お金が入る=公募、株主割当て、第三者割当て(有償増資)。お金が入らない=株式分割、株式無償割当て。前者は資本の増加を伴い、後者は資本の中身が動かないまま株数だけが増える。株式分割で1株当たりの価値が半分になっても、株数が2倍になるため株主の保有価値の総額は理論上変わらない。
【発展:分割と無償割当ての違い】どちらも無償で株数が増えるが、法的な扱いが違う。株式分割では自己株式も分割の対象になるが、株式無償割当てでは会社が保有する自己株式に対して割当てを行うことはできない(会社法186条2項)。また無償割当てでは、ある種類株式の株主に別の種類の株式を交付することもできる。似た結果をもたらす二つの制度が併存しているのは、この使い分けの余地を残すためである。
【根拠】会社法183条・184条(株式の分割)、185条〜187条(株式無償割当て)、186条2項(自己株式への割当て不可)、199条以下(募集株式の発行等)。
【相互参照】No.235(株式分割と無償割当ての比較)、No.359(募集株式の発行)、No.362(支配株主の異動を伴う発行)、No.26(投資単位の引下げ)。
債券業務全50問中 8問を掲載
問41債券価格と利回りの関係に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1残存期間が短いほど、金利変動に対する価格変動率は大きい。
- 2市場金利が上昇すると、既発債の価格は上昇する。
- 3市場金利と債券価格は無関係である。
- 4表面利率が高いほど、金利変動に対する価格変動率は大きい。
- ✔市場金利が上昇すると、既発債の価格は下落する。
解説:【正解】5(正しいものはどれか)
【結論】債券価格と市場金利は逆相関の関係にある。市場金利が上昇すると、相対的に低い利率で発行された既発債の魅力が下がり、その価格は下落する。
【肢別】
1 × 逆である。残存期間が「長い」ほど金利変動に対する価格変動率は大きい。
2 × 逆である。市場金利が上昇すれば既発債の価格は下落する。
3 × 無関係ではない。債券価格は将来キャッシュフローを市場金利で割り引いた現在価値であり、両者は直結している。
4 × 逆である。表面利率が「低い」ほど価格変動率は大きい。
5 ○ 市場金利の上昇→既発債価格の下落。本肢が正しい。
【横断整理】価格変動率が大きくなる条件は3つ揃えて覚える。①残存期間が長い ②表面利率が低い ③最終利回りが低い。いずれも「投資額の回収が将来に偏っている」ことを意味し、それだけ割引率の変化に敏感になる。この3条件を一つの指標に集約したものがデュレーションである。
【発展:肢2と肢5は正面から矛盾する】「金利上昇→価格上昇」と「金利上昇→価格下落」は両立しない。したがってどちらか一方は必ず誤りであり、正しいものを1つ選ぶ本問では正解がこの2肢のどちらかに含まれる可能性が高い。同様に肢1と肢4も「残存期間が短いほど」「表面利率が高いほど」と、変動率を大きくする条件を逆向きに述べている。選択肢が対になっている問題では、対の中身を先に検討すると効率がよい。
【根拠】債券価格=将来の利子と償還金を最終利回りで割り引いた現在価値の合計。したがって割引率(市場金利)と価格は逆方向に動く。価格感応度の指標としてデュレーション・修正デュレーション。
【相互参照】No.45(デュレーション)、No.440(イールドカーブの変化とパラレルシフト)、No.336(債券投資のリスク)、No.37(単利最終利回りの計算)。
問42表面利率年2.0%、残存期間5年の債券を額面100円につき98円で購入した場合の単利最終利回りとして、最も近いものはどれか(小数点第3位以下四捨五入)。
- 12.04%
- 22.24%
- ✔2.45%
- 42.55%
- 52.86%
解説:【正解】3(最も近いものはどれか)
【方向の確認】購入価格98円は額面100円を下回るアンダーパーだから、償還時に2円の差益が出る。したがって最終利回りは必ず表面利率2.0%より大きくなる。2.0%以下の肢があれば即座に消せる。さらに差益2円を5年で割った年0.4円を利子2.0円に上乗せするのだから、上乗せは2割程度、答えは2.4%前後と当たりがつく。
【結論】単利最終利回り={表面利率+(償還価格−購入価格)÷残存年数}÷購入価格×100={2.0+(100−98)÷5}÷98×100=2.4÷98×100=2.4489…≒2.45%。よって肢3。
【肢別】
1 × 2.04%=2.0÷98×100。償還差益を加え忘れた値で、これは直接利回り(利含み利回り)そのもの。最終利回りと直接利回りの混同を突く肢。
2 × 2.24%=(2.0+0.2)÷98×100。償還差益2円を割る年数を取り違え、5年ではなく10年で割った場合の値。
3 ○ 2.45%。
4 × 2.55%=(2.0+0.5)÷98×100。同じく年数の取り違えで、2円を4年で割った場合の値。肢2と肢4は年数を上下に振った対の誤答である。
5 × 2.86%=(2.0+0.8)÷98×100。年割りした0.4円を二重に加えた(0.4×2=0.8)場合の値。
【検算】答えを逆に回す。2.45%×98円÷100=2.401円となり、これが分子の「利子2.0円+年当たり償還差益0.4円」にほぼ一致する。割り算の結果を分母に掛け戻して分子に戻るかを見るのが最も速い。
【単位の注意】答えは%。分母に置くのは額面100円ではなく購入価格98円である。分母を100円にすると2.40%となり、選択肢のどれとも一致しないので気づける。
【発展:3つの利回りの分子の違い】直接利回り=利子のみ。最終利回り=利子+年当たり償還差損益。所有期間利回り=利子+年当たり売却差損益。分母はいずれも購入価格で共通し、分子に何を足すかだけが違う。この一点を押さえれば、公式を3本暗記する必要はない。
【根拠】単利最終利回り(%)={表面利率+(償還価格−購入価格)÷残存年数}÷購入価格×100。直接利回り(%)=表面利率÷購入価格×100。
【相互参照】No.38(オーバーパーの最終利回り)、No.444(アンダーパーの最終利回り)、No.137(応募者利回り)、No.138(所有期間利回り)、No.143(利率と利回りの関係)。
問43表面利率年1.5%、残存期間4年の債券を額面100円につき102円で購入した場合の単利最終利回りとして、最も近いものはどれか(小数点第3位以下四捨五入)。
- 10.49%
- ✔0.98%
- 31.00%
- 41.47%
- 51.96%
解説:【正解】2(最も近いものはどれか)
【方向の確認】購入価格102円は額面100円を上回るオーバーパーだから、償還時に2円の差損が出る。したがって最終利回りは必ず表面利率1.5%より小さくなる。1.5%以上の肢4(1.47%は下回るので残る)と肢5(1.96%)のうち、1.96%はこの一点だけで消去できる。答えは1.5%より小さい範囲にある。
【結論】単利最終利回り={1.5+(100−102)÷4}÷102×100=(1.5−0.5)÷102×100=1.0÷102×100=0.9803…≒0.98%。よって肢2。
【肢別】
1 × 0.49%=(1.5−1.0)÷102×100。償還差損2円を割る年数を4年ではなく2年とした場合の値。
2 ○ 0.98%。
3 × 1.00%は分子の1.0をそのまま%として答えた値。最後の「÷購入価格×100」の工程を丸ごと落としている。数字がきりよく見えるだけに選びやすい肢。
4 × 1.47%=1.5÷102×100。償還差損を差し引き忘れた値で、これは直接利回りそのもの。
5 × 1.96%=(1.5+0.5)÷102×100。償還差損の符号を取り違え、差益として加算した場合の値。オーバーパーなのに表面利率を上回っており、方向の確認だけで排除できる。
【検算】掛け戻す。0.98%×102円÷100=0.9996円で、分子の1.0円にほぼ一致する。
【単位の注意】分子は「1.5−0.5」であって「1.5+0.5」ではない。100−102がマイナスになることを機械的に処理し、途中でマイナス符号を落とさないこと。
【発展:パー・アンダー・オーバーの三分法】アンダーパーで買えば償還差益が出るので最終利回り>表面利率。パー(100円ちょうど)で買って償還まで持てば最終利回り=表面利率。オーバーパーで買えば償還差損が出るので最終利回り<表面利率。計算する前にこの三分法で答えの位置を決めておけば、符号の取り違えは必ず表に出る。
【根拠】単利最終利回り(%)={表面利率+(償還価格−購入価格)÷残存年数}÷購入価格×100。オーバーパー購入時は(償還価格−購入価格)が負となり、分子が表面利率を下回る。
【相互参照】No.37(アンダーパーの最終利回り)、No.143(利率と利回りの関係)、No.342(単利と複利の大小関係)、No.444(アンダーパーの最終利回り)。
問44経過利子(経過利息)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1利付債の売買において、直前の利払日の翌日から受渡日までの利子相当額をいう。
- 2買い手が売り手に対して支払う。
- ✔割引債の売買においても経過利子が発生する。
- 4経過利子は、直前利払日から受渡日までの経過日数に応じて日割計算される。
- 5利付債の受渡代金は、約定代金に経過利子を加減して算出する。
解説:【正解】3(誤っているものはどれか)
【結論】割引債は利子の支払いがなく、額面から利子相当分をあらかじめ割り引いて発行される。したがって経過利子は発生しない。
【肢別】
1 ○ 利付債の売買における、直前利払日の翌日から受渡日までの利子相当額である。
2 ○ 買い手が売り手に対して支払う。
3 × 割引債にも経過利子が発生するとする点が誤り。本肢が誤り。
4 ○ 経過日数に応じて日割計算される。
5 ○ 利付債の受渡代金は約定代金に経過利子を加減して算出する。
【横断整理】経過利子が買い手から売り手へ渡る理由。次の利払日には、その期間の利子が丸ごと買い手に支払われる。しかしその期間のうち前半は売り手が保有していたのだから、売り手が保有していた日数分は売り手に帰属すべきである。そこで受渡しの時点で、買い手が売り手にその分を立て替えて渡しておく。次回の利払いで買い手が全額を受け取ることで帳尻が合う仕組みである。
【発展:日数の数え方】経過利子の対象日数は、直前利払日の「翌日」から受渡日「当日」まで(片端入れ)。始点を利払日当日から数えると1日多くなる。経過利子=額面金額×表面利率×経過日数÷365 で算出し、うるう年でも365日で計算するのが通常の取扱いである。日数の起点と分母の365という二つの約束事を、計算に入る前に確認しておきたい。
【根拠】経過利子=額面金額×表面利率×経過日数÷365。日数は直前利払日の翌日から受渡日までの片端入れ。受渡代金=約定代金+経過利子(買い手)。割引債は利子の支払いがないため経過利子は生じない。
【相互参照】No.345(経過利子の計算)、No.243(債券の受渡代金)、No.343(利付債の利払い)、No.136(債券の発行形態)。
問45転換社債型新株予約権付社債(CB)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1パリティ価格は、株価÷転換価額×100で算出される。
- 2CB価格がパリティ価格を上回っている状態を「乖離率がプラス」という。
- 3株価が低迷している局面では、社債としての価値(債券価値)が下支えとなる。
- 4株価が転換価額を上回ると、株式への転換価値が高まる。
- ✔CBは株価がどれだけ下落しても、必ず額面金額で償還される。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】CBは社債であるから満期まで保有すれば額面で償還されるのが原則だが、発行会社が債務不履行に陥れば元本は毀損する。「どれだけ下落しても必ず額面で償還される」とは言えない。
【肢別】
1 ○ パリティ価格=株価÷転換価額×100。
2 ○ CB価格がパリティを上回る状態を乖離率プラスという。
3 ○ 株価低迷局面では社債としての価値(債券価値)が下支えとなる。
4 ○ 株価が転換価額を上回れば株式への転換価値が高まる。
5 × 「必ず」償還されるとする点が誤り。信用リスクを無視している。本肢が誤り。
【横断整理】CBの価格は3つの床と天井で理解する。①債券価値(投資価値)=転換権がないただの社債とみたときの価値。株価がどれだけ下がってもここが下値のめどになる。②パリティ価格=いま転換したら得られる株式の価値。株価が上がればここが実質的な下限になる。③実際のCB価格=通常は①と②のいずれか高いほうを上回り、その超過分が転換権のオプション価値にあたる。
【発展:下支えは信用力が前提】株価が下がっても債券価値が支えてくれる、というCBの利点は、発行会社が償還できることを前提にしている。株価の下落が業績悪化に起因する場合、同時に信用リスクも高まっているので、債券価値そのものが下がる。株価下落と信用悪化が同時に進む局面では、想定していた下値の床が抜けることがある。「ダウンサイドが限定される」という説明は、信用リスクが顕在化しない範囲での話だと押さえておきたい。
【根拠】会社法2条22号・236条以下(新株予約権付社債)。パリティ価格=株価÷転換価額×100。乖離率=(CB価格−パリティ価格)÷パリティ価格×100。
【相互参照】No.41(パリティ価格の計算)、No.238(乖離率の計算)、No.244(債券の信用リスク)、No.43(債券の格付け)。
問46株価1,320円、転換価額1,100円の転換社債型新株予約権付社債について、パリティ価格として正しいものはどれか。
- 183.3円
- 2100.0円
- 3112.0円
- ✔120.0円
- 5132.0円
解説:【正解】4(正しいものはどれか)
【方向の確認】株価1,320円が転換価額1,100円を上回っているのだから、いま転換すれば得をする。パリティは額面100円換算の値なので、必ず100円より大きくなる。この一点で肢1(83.3円)と肢2(100.0円)は計算せずに消える。さらに1,320÷1,100は1.2倍なので、答えは120円前後と当たりがつく。
【結論】パリティ価格=株価÷転換価額×100=1,320円÷1,100円×100=120.0円。よって肢4。
【肢別】
1 × 83.3円=1,100÷1,320×100。分子と分母を取り違えた逆数の値。株価が転換価額を上回っているのにパリティが100円を割るという矛盾が出るので、方向の確認で排除できる。
2 × 100.0円は株価と転換価額が等しい場合の値。両者に差があるのに比を取らず、額面をそのまま答えた形。
3 × 112.0円は120.0円と132.0円の間に置かれた撹乱値で、特定の計算式には対応しない。値の近さだけで選ばないこと。
4 ○ 120.0円。
5 × 132.0円=1,320÷10。転換価額を使わず、株価を単純に10で割って額面100円換算にした値。転換価額1,100円を1,000円と読み違えた場合も同じ値になる。
【検算】掛け戻す。120.0円×転換価額1,100円÷100=1,320円で株価に戻る。あるいは、額面100万円のCBを転換すると100万円÷1,100円=909株となり、909株×1,320円=約120万円。額面100円当たりに直せば120円で一致する。
【単位の注意】パリティは「円」(額面100円当たり)であって「%」でも「倍」でもない。1.2倍と答えたくなるが、×100を落とすと単位が変わってしまう。
【発展:パリティは株価に連動する】転換価額は発行時に固定されるので、パリティは株価に正比例して動く。株価が10%上がればパリティも10%上がる。CBが「株式的な値動きをする局面」とは、株価がパリティを押し上げてCB価格を引っ張っている状態のことである。
【根拠】パリティ価格=株価÷転換価額×100(額面100円当たり)。乖離率=(CB価格−パリティ価格)÷パリティ価格×100。
【相互参照】No.40(CBの商品性)、No.238(乖離率の計算)、No.27(PER・PBRの分母の取り違え)。
問47国債に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1物価連動国債は、消費者物価指数の動きに応じて元金額が増減する。
- 2個人向け国債には、変動10年、固定5年、固定3年の3種類がある。
- 3利付国債には、2年、5年、10年、20年、30年、40年などの年限がある。
- 4個人向け国債は、発行後1年経過すれば中途換金が可能である。
- ✔個人向け国債の最低金利保証は年0.5%である。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】個人向け国債の最低金利保証は年0.05%(税引前)である。0.5%ではない。
【肢別】
1 ○ 物価連動国債は消費者物価指数の動きに応じて元金額が増減する。
2 ○ 個人向け国債は変動10年、固定5年、固定3年の3種類。
3 ○ 利付国債には2年、5年、10年、20年、30年、40年などの年限がある。
4 ○ 個人向け国債は発行後1年経過すれば中途換金が可能。
5 × 最低金利保証は0.05%。桁が10倍ずれている。本肢が誤り。
【横断整理】個人向け国債3種類の比較。
・変動10年:金利は基準金利×0.66、半年ごとに見直し。金利上昇に追随できる。
・固定5年:金利は基準金利−0.05%、発行時に固定。
・固定3年:金利は基準金利−0.03%、発行時に固定。
3種類に共通するのは、最低金利年0.05%の保証、額面1万円からの購入、発行後1年経過後の中途換金、そして中途換金時に直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれる点である。
【発展:0.05%という数字の位置づけ】最低金利保証は、市場金利がゼロやマイナスまで低下しても個人の受取利子がマイナスにならないようにするための下限である。したがって金利水準が極端に低い局面では、変動10年・固定5年・固定3年のいずれもこの0.05%に貼り付き、3種類の差がなくなる。逆に金利が上昇する局面では変動10年だけが追随して差が開く。制度の数字は変更されうるため、受験時点の最新情報を確認すること。
【根拠】財務省「個人向け国債」の商品概要(最低金利年0.05%、発行後1年経過後の中途換金、中途換金調整額=直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685)。物価連動国債は消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)に連動して想定元金額が増減する。
【相互参照】No.237(公共債)、No.438(物価連動国債)、No.145・No.436(国債の入札)、No.240(変動利付債)。
問48債券の格付けに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1一般にBBB(トリプルB)格以上が投資適格債とされる。
- 2BB格以下は投機的格付け(ハイ・イールド債)とされる。
- 3格付けが低いほど、一般に利回りは高くなる。
- ✔格付けは一度付与されると、償還まで変更されることはない。
- 5格付けは、債券の元利金支払いの確実性を記号で表したものである。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】格付けは発行体の財務状況や事業環境の変化に応じて随時見直される。付与後、償還まで変更されないということはない。
【肢別】
1 ○ 一般にBBB(トリプルB)格以上が投資適格債とされる。
2 ○ BB格以下は投機的格付け(ハイ・イールド債、いわゆるジャンク債)とされる。
3 ○ 格付けが低いほど信用リスクが高く、その見返りとして一般に利回りは高くなる。
4 × 変更されないとする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 格付けは元利金支払いの確実性を記号で表したもの。
【横断整理】格下げが起きると何が動くか。信用リスクの上昇→要求利回りの上昇→債券価格の下落、という順に波及する。加えて、投資適格(BBB格以上)と投機的格付け(BB格以下)の境界をまたぐ格下げは影響が非連続に大きい。多くの機関投資家が運用規程で投資適格債に限定しているため、境界を割った瞬間に売却圧力が集中するからである。この境界をまたぐ格下げを「フォーリン・エンジェル」と呼ぶ。
【発展:格付けは意見であって保証ではない】格付会社が示すのは元利金支払いの確実性についての意見であり、元本を保証するものでも、価格の妥当性を示すものでもない。同じ発行体でも格付会社によって記号が異なることがあり、これを格付けの分かれ(スプリット・レーティング)という。格付けが同じ債券どうしでも利回りに差が出るのは、市場が格付け以外の情報も織り込んでいるからである。
【根拠】信用格付業者は金商法66条の27に基づく登録制。投資適格はBBB格(またはBaa格)以上、投機的格付けはBB格(Ba格)以下が一般的な区分。信用スプレッド=当該債券の利回り−同年限の国債利回り。
【相互参照】No.244(債券の信用リスク)、No.336(債券投資のリスク)、No.40(CBと信用リスク)、No.439(一般担保付社債)。
投資信託・投資法人に関する業務全40問中 8問を掲載
問49投資信託の分類に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1単位型(ユニット型)は、当初募集期間にのみ購入できる。
- 2契約型投資信託は、委託者・受託者・受益者の三者関係で成り立つ。
- ✔公募投資信託とは、適格機関投資家のみを相手方として募集するものをいう。
- 4会社型投資信託の代表例が投資法人(J-REIT等)である。
- 5追加型(オープン型)は、原則としていつでも購入・換金できる。
解説:【正解】3(誤っているものはどれか)
【結論】公募投資信託は50名以上の多数の投資家を相手方として募集するものをいう。適格機関投資家のみを相手方とするのは適格機関投資家私募(プロ私募)であり、私募に分類される。
【肢別】
1 ○ 単位型(ユニット型)は当初募集期間にのみ購入できる。
2 ○ 契約型投資信託は委託者(運用会社)・受託者(信託銀行)・受益者(投資家)の三者関係で成り立つ。
3 × 公募の定義を適格機関投資家限定としている点が誤り。本肢が誤り。
4 ○ 会社型投資信託の代表例が投資法人(J-REIT等)。
5 ○ 追加型(オープン型)は原則としていつでも購入・換金できる。
【横断整理】募集の3類型。①公募=勧誘の相手方が50名以上。②一般投資家私募(少人数私募)=相手方が49名以下。③適格機関投資家私募(プロ私募)=適格機関投資家のみが相手方で、一般投資家への転売制限が付される。人数で切るのが①と②、相手方の属性で切るのが③という構造になっている。
【発展:50名と500名】投信の受益証券は第一項有価証券なので、募集の基準は50名以上である。これに対し、集団投資スキーム持分などの第二項有価証券(みなし有価証券)では、基準が500名以上と大幅に緩い。流動性が低く転々流通しにくいものは、多数の投資家に行き渡るおそれが小さいため、開示規制を及ぼす閾値を高く設定しているからである。No.2で見た有価証券の1項・2項の区分は、ここで具体的な数字の差として表れる。
【根拠】金商法2条3項(募集の定義)、金商法施行令1条の5(第一項有価証券の50名基準)、1条の7の2(第二項有価証券の500名基準)、2条3項2号イ(適格機関投資家私募)。投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)2条(契約型・会社型)。
【相互参照】No.2(第一項・第二項有価証券)、No.251(私募投資信託)、No.146(契約型投資信託の関係者)、No.7(適格機関投資家)。
問50投資信託の基準価額に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1収益分配金を支払うと、その分だけ基準価額は下落する。
- 2組入資産の時価評価に基づき原則として毎営業日算出される。
- 3通常、1万口当たりで表示される。
- ✔信託報酬は基準価額とは別に、投資家から直接徴収される。
- 5純資産総額を受益権総口数で除して算出する。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】信託報酬(運用管理費用)は信託財産の中から日々差し引かれ、既に基準価額に反映されている。投資家から別途直接徴収されるものではない。
【肢別】
1 ○ 収益分配金を支払うと、その分だけ純資産が減り基準価額は下落する。
2 ○ 組入資産の時価評価に基づき原則として毎営業日算出される。
3 ○ 通常、1万口当たりで表示される。
4 × 信託報酬が別途直接徴収されるとする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 基準価額=純資産総額÷受益権総口数。
【横断整理】投資信託の主なコストを、誰にいつ払うかで整理する。
・購入時手数料:購入時に、販売会社へ、投資家が直接支払う。基準価額の外側で発生する。
・信託報酬:保有期間中、毎日、信託財産から差し引かれる。委託会社・販売会社・受託会社で分け合う。基準価額に織り込み済み。
・信託財産留保額:換金時に、換金する投資家の手取りから差し引かれ、信託財産に残される。誰かの収入になるのではなく、残る受益者のために信託財産にとどまる点が他の二つと違う。
【発展:基準価額の下落を読み分ける】基準価額が下がったとき、原因は3つに分かれる。①組入資産の値下がり②収益分配金の支払い③信託報酬等のコスト控除。②は投資家の財産が外に出ただけで損失ではなく、③は日々わずかずつ効く。運用が失敗したのかどうかを見るには、分配金を再投資したと仮定したトータルリターンで比較する必要がある。
【根拠】投信法上の運用報告書等における費用の表示。基準価額=純資産総額÷受益権総口数(通常1万口当たり表示)。信託報酬は信託財産中から日々計上され、基準価額算出時に控除される。
【相互参照】No.152(投資信託のコスト)、No.48(MRF)、No.148(普通分配金と元本払戻金)、No.446(スイッチング)。
問51MRF(マネー・リザーブ・ファンド)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔解約時には、必ず信託財産留保額が差し引かれる。
- 2購入時手数料は徴収されない。
- 3証券総合口座用のファンドとして利用される。
- 4収益分配金は毎日計上され、毎月末にまとめて再投資される。
- 5主として短期公社債等で運用される追加型公社債投資信託である。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】MRFは購入時手数料も信託財産留保額も徴収されず、いつでもペナルティなく解約できる。解約時に必ず信託財産留保額が差し引かれるとする本肢が誤りである。
【肢別】
1 × 信託財産留保額は徴収されない。本肢が誤り。
2 ○ 購入時手数料は徴収されない。
3 ○ 証券総合口座用のファンドとして利用される。
4 ○ 収益分配金は毎日計上され、毎月末にまとめて再投資される。
5 ○ 主として短期公社債等で運用される追加型公社債投資信託である。
【横断整理】MRFの設計思想は「証券口座の中の普通預金」である。待機資金の受け皿として、いつでも出し入れでき、出入りにコストがかからないことが求められる。だから手数料も留保額も取らず、運用対象も短期公社債等に限って元本の変動を最小化している。株式を一切組み入れられない公社債投資信託である点も、この性格から導かれる。
【発展:公社債投資信託の3兄弟】MRF=証券総合口座用。申込単位は1円以上1円単位で、即日引出しに対応する。MMF=かつて存在した公社債投信で、30日未満の解約に信託財産留保額が課された。低金利下で運用難となり、現在は国内で新規設定・販売されていない。長期公社債投信=より長い年限の公社債で運用する。留保額の有無を問う設問では、MRFとMMFの違いが狙われやすい。なお公社債投資信託は株式を一切組み入れられず、1株でも組み入れると税制上も株式投資信託として扱われる点は、証券税制(No.451等)にも接続する。
【根拠】投信法および約款上、MRFは追加型公社債投資信託で、主として短期公社債・コマーシャルペーパー等で運用される。購入時手数料・信託財産留保額はいずれも徴収されない。収益分配は日々計上・月末再投資。
【相互参照】No.451(公社債投資信託)、No.47(基準価額とコスト)、No.152(投資信託のコスト)。
問52投資信託の目論見書に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1交付目論見書には、ファンドの目的・特色、投資リスク、運用実績、手続・手数料等が記載される。
- ✔交付目論見書は、取得申込みの受付後、遅滞なく交付すれば足りる。
- 3交付目論見書は、取得の申込みを行う投資家にあらかじめ交付しなければならない。
- 4請求目論見書は、投資家から請求があった場合に交付する。
- 5請求目論見書には、ファンドの沿革や経理状況等の詳細情報が記載される。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】交付目論見書は、取得の申込みを行おうとする投資家に対し「あらかじめ、または同時に」交付しなければならない。受付後に遅滞なく交付すれば足りる、という取扱いは認められない。
【肢別】
1 ○ 交付目論見書にはファンドの目的・特色、投資リスク、運用実績、手続・手数料等が記載される。
2 × 事後交付で足りるとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ あらかじめ交付しなければならない。
4 ○ 請求目論見書は投資家から請求があった場合に交付する。
5 ○ 請求目論見書にはファンドの沿革や経理状況等の詳細情報が記載される。
【横断整理】交付のタイミングで書面を分類する。あらかじめ交付が必要=交付目論見書、契約締結前交付書面。請求があったときに交付=請求目論見書。取引の都度または定期に交付=取引報告書、取引残高報告書、運用報告書。「投資判断の前に渡すもの」と「投資判断の後に渡すもの」を分けて覚えると、事後交付でよいかどうかを問う設問に強くなる。
【発展:目論見書と契約締結前交付書面の関係】投資信託の販売では、交付目論見書に契約締結前交付書面の記載事項を盛り込むことで、両方を兼ねる取扱いが認められている。二重に書面を渡すのは投資家にとってかえって読みにくいという実務上の要請による。ただし兼ねられるのは記載事項が充足されている場合に限られ、目論見書を渡したから書面交付義務が当然に消えるわけではない。根拠の異なる二つの義務が、一枚の書面で同時に果たされているという構造である。
【根拠】金商法13条(目論見書の作成)、15条2項(交付目論見書のあらかじめまたは同時の交付)、15条3項(請求目論見書は請求時に直ちに交付)、37条の3(契約締結前交付書面)。
【相互参照】No.6(契約締結前交付書面)、No.9(開示制度)、No.149(運用報告書)、No.253(販売用資料)。
問53ETF(上場投資信託)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1指値注文や成行注文ができる。
- 2一般に、非上場のインデックス型投資信託より信託報酬は低い傾向がある。
- 3取引所に上場され、株式と同様に売買できる。
- 4信用取引の対象とすることができる。
- ✔取引価格は1日1回算出される基準価額のみで決まり、市場価格は存在しない。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】ETFは取引所に上場され、リアルタイムの需給によって市場価格が形成される。1日1回算出される基準価額のみで取引価格が決まり市場価格が存在しない、というのは誤りである。
【肢別】
1 ○ 株式と同じく指値注文・成行注文ができる。
2 ○ 一般に非上場のインデックス型投資信託より信託報酬は低い傾向がある。
3 ○ 取引所に上場され、株式と同様に売買できる。
4 ○ 信用取引の対象とすることができる。
5 × 市場価格が存在しないとする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】ETFには基準価額と市場価格の二つの価格がある。基準価額=純資産に基づき1日1回算出される理論値。市場価格=取引所の需給で決まる実際の売買値。両者のずれをプレミアム(市場価格が高い)/ディスカウント(市場価格が安い)という。指定参加者(AP)が現物株バスケット等と引換えにETFを設定・交換する裁定取引が働くため、乖離は縮小する方向に向かうが、海外資産を対象とするETFでは時差により、流動性の低い銘柄では板の薄さにより、乖離が残りやすい。
【発展:ETFとETNの違い】ETF(上場投資信託)は実際に現物資産を保有する投資信託なので、運用会社が破綻しても信託財産は分別管理され保全される。ETN(上場投資証券)は金融機関が指数連動のリターンを約束する債券であり、現物の裏付けを持たない。したがってETNには発行体の信用リスクがある一方、現物を持たなくてよいので指数への連動性は高く、現物の保有が難しい指数にも対応できる。似た値動きをする商品でも、リスクの所在がまったく違う。
【根拠】投信法上、ETFは受益証券が金融商品取引所に上場された投資信託。市場価格と基準価額は別個に存在し、裁定取引(指定参加者による設定・交換)により乖離が調整される。ETNは指数連動の債券であり発行体の信用リスクを負う。
【相互参照】No.47(基準価額)、No.152(投資信託のコスト)、No.450(投資信託のリスク指標)、No.453(追加設定)。
問54J-REIT(不動産投資法人)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1主たる収益源は不動産の賃貸収入や売却益である。
- ✔投資法人は、自ら従業員を雇用して不動産を直接運営する。
- 3金利上昇は、一般にJ-REITの価格にマイナス要因となる。
- 4配当可能利益の90%超を分配する等の要件を満たすと、分配金を損金算入できる。
- 5会社型投資信託の一形態であり、投資証券が取引所に上場されている。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】投資法人は資産を保有する器(導管体)にすぎず、資産運用は資産運用会社、資産保管は資産保管会社、一般事務は一般事務受託者にそれぞれ外部委託しなければならない。自ら従業員を雇用して不動産を運営することは認められていない。
【肢別】
1 ○ 主たる収益源は不動産の賃貸収入や売却益。
2 × 自ら従業員を雇用して直接運営するとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 金利上昇は借入コストの増加と利回り妙味の低下を招き、一般にJ-REIT価格のマイナス要因となる。
4 ○ 配当可能利益の90%超を分配する等の要件を満たすと、分配金を損金算入できる。
5 ○ 会社型投資信託の一形態で、投資証券が取引所に上場されている。
【横断整理】投資法人には役員(執行役員・監督役員)は置かれるが、使用人(従業員)を雇用することはできない。三つの機能をすべて外部に出すこの構造を「外部運用型」といい、投資法人自身は法人格を持つ空の器として振る舞う。
【発展:90%超という要件の意味】通常の株式会社では、利益にまず法人税がかかり、税引後の利益から配当が支払われ、株主段階でさらに課税される(二重課税)。J-REITは配当可能利益の90%超を分配することを条件に、その分配金を損金算入できるため法人段階の課税が実質的に生じない。分配金利回りが高いのは運用が優れているからではなく、利益をほぼ全額吐き出す仕組みだからである。裏返せば、内部留保をほとんど持てないので、物件取得の資金は増資か借入れに頼らざるをえない。だから金利上昇と増資による希薄化の両方に敏感になる。
【根拠】投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)63条(使用人の雇用禁止)、198条(資産運用の委託)、208条(資産保管の委託)、117条(一般事務の委託)。租税特別措置法67条の15(投資法人に係る課税の特例・配当可能利益の90%超の分配要件)。
【相互参照】No.46(会社型と契約型)、No.350(投資法人の資金調達)、No.45(金利感応度の考え方)。
問55投資信託の運用手法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1アクティブ運用は、ベンチマークを上回る運用成果を目指す。
- ✔グロース株運用は、株価が本来の企業価値より割安な銘柄に投資する手法である。
- 3ボトムアップ・アプローチは、個別企業の調査・分析を積み上げてポートフォリオを構築する。
- 4パッシブ運用は、ベンチマークに連動する運用成果を目指す。
- 5トップダウン・アプローチは、マクロ経済分析から資産配分や業種配分を決定する。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】株価が本来の企業価値より割安な銘柄に投資するのはバリュー株運用である。グロース株運用は、将来の売上・利益の高い成長が期待される銘柄に投資する手法で、PERやPBRが高くても成長性を重視する。
【肢別】
1 ○ アクティブ運用はベンチマークを上回る成果を目指す。
2 × グロース株運用の説明にバリュー株運用の内容を当てている。本肢が誤り。
3 ○ ボトムアップ・アプローチは個別企業の調査・分析を積み上げる。
4 ○ パッシブ運用はベンチマークに連動する成果を目指す。
5 ○ トップダウン・アプローチはマクロ経済分析から資産配分・業種配分を決める。
【横断整理】運用手法は二つの軸で整理する。第一の軸はベンチマークとの関係(アクティブ/パッシブ)。第二の軸は銘柄選択の入口(トップダウン/ボトムアップ)で、これはアクティブ運用の中での分かれ方である。バリュー/グロースは第三の軸で、何を割安と考えるかというスタイルの違いにあたる。三つの軸は独立しているので、「トップダウン型のグロース運用」もありうる。
【発展:指標で見分ける】バリュー株はPER・PBRが低く配当利回りが高い傾向、グロース株はPER・PBRが高く配当利回りが低い(利益を再投資に回すため)傾向がある。同じ「割安に見える」株でも、成長が止まったから安いのか、市場に見落とされているから安いのかは区別が必要で、前者を掴んでしまうことをバリュー・トラップという。なおパッシブ運用の巧拙は、ベンチマークとの乖離の小ささ(トラッキングエラー)で測る。
【根拠】投資信託の運用手法の分類(アクティブ/パッシブ、トップダウン/ボトムアップ、バリュー/グロース)。パッシブ運用の評価指標はトラッキングエラー、アクティブ運用の評価指標は超過収益率・情報比率等。
【相互参照】No.348(投資信託の運用評価)、No.450(リスク指標)、No.50(ETFとインデックス運用)、No.27(PER・PBR)。
問56投資信託の換金方法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1買取請求は、受益権を販売会社に売却する方法である。
- 2解約請求・買取請求のいずれも、上場株式等の譲渡所得として課税される。
- 3クローズド期間中は、原則として解約請求ができない。
- 4解約請求は、信託契約の一部を解約して信託財産から代金を受け取る方法である。
- ✔単位型投資信託には、クローズド期間が設けられることはない。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】単位型投資信託には、安定的な運用を確保するためクローズド期間(解約できない期間)が設けられることが多い。設けられることはないとする本肢が誤りである。
【肢別】
1 ○ 買取請求は受益権を販売会社に売却する方法。
2 ○ 現行税制では解約請求・買取請求のいずれも上場株式等の譲渡所得等として申告分離課税の対象。
3 ○ クローズド期間中は原則として解約請求ができない。
4 ○ 解約請求は信託契約の一部を解約して信託財産から代金を受け取る方法。
5 × 単位型にクローズド期間が設けられることはないとする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】解約請求と買取請求は、法的な経路がまったく違う。解約請求=投資家が委託会社に対し信託契約の一部解約を求め、信託財産から資金が出ていく。買取請求=投資家が販売会社に受益権そのものを売る。信託財産は動かない。クローズド期間中に解約請求ができなくても、買取請求なら可能な場合があるのは、この経路の違いによる。
【発展:税制上は同じになった】かつては解約請求が配当所得、買取請求が譲渡所得と扱いが分かれ、どちらを選ぶかで税負担が変わった。現在はいずれも上場株式等の譲渡所得等として一本化され、税制上の有利不利はない。制度としては別物なのに結果が揃っているという状態なので、「法的な仕組みの違い」と「税務上の扱い」を切り離して覚える必要がある。クローズド期間が設けられる理由も同じ発想で理解できる。設定直後の大量解約は組入資産の投げ売りを招き残る受益者が損をするため、期間を区切って流出を止めている。
【根拠】投信法上の一部解約請求と、受益権の買取請求。租税特別措置法37条の11(上場株式等に係る譲渡所得等)。解約・買取のいずれも譲渡所得等として申告分離課税。
【相互参照】No.47(基準価額)、No.446(スイッチング)、No.152(コスト・信託財産留保額)、No.179(譲渡所得の計算)。
付随業務全15問中 8問を掲載
問57金融商品取引業者の付随業務に該当しないものは、次のうちどれか。
- 1有価証券の貸借またはその媒介・代理
- ✔投資信託の設定および運用の指図
- 3累積投資契約の締結
- 4有価証券に関する顧客の代理
- 5有価証券の保護預り
解説:【正解】2(該当しないものはどれか)
【結論】投資信託の設定および運用の指図は「投資運用業」に該当し、付随業務ではない。
【肢別】(○=付随業務に該当する/×=該当しない)
1 ○ 有価証券の貸借またはその媒介・代理は付随業務(金商法35条1項2号)。
2 × 投資信託の設定・運用の指図は投資運用業。付随業務に該当しない。本肢が正解。
3 ○ 累積投資契約の締結は付随業務(同項7号)。
4 ○ 有価証券に関する顧客の代理は付随業務(同項6号)。
5 ○ 有価証券の保護預りは付随業務(同項5号)。
【横断整理】付随業務の主なものは、有価証券の貸借とその媒介・代理、信用取引に付随する金銭の貸付け、保護預り、有価証券に関する顧客の代理、累積投資契約の締結、投資助言業務、他社株転換可能債の売買等。いずれも「有価証券関連業を行ううえで自然に付いてくる業務」であり、届出や承認なしに行える。
【発展:業務範囲の3階層】第一種金融商品取引業者が行える業務は3層に分かれる。①付随業務(35条1項)=当然に行える。②届出業務(35条2項・3項)=商品先物取引、貸金業、宅地建物取引業など、内閣総理大臣に届け出れば行える。③承認業務(35条4項)=上記以外の業務で、内閣総理大臣の承認を受けて行える。本業から遠ざかるほど手続が重くなる構造である。設問で問われているのがどの層かを見極めれば、「登録が別途必要か」「届出で足りるか」を混同せずに済む。
【根拠】金商法35条1項各号(付随業務)、35条2項・3項(届出業務)、35条4項(承認業務)。投資運用業は2条8項12号〜15号、28条4項。
【相互参照】No.55(累積投資契約)、No.56(保護預り)、No.19(名義書換の取次ぎ)、No.210(業務範囲)、No.1(業の4区分)。
問58累積投資契約に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1毎月一定額を購入するため、価格が安いときには多くの口数を購入することになる。
- ✔累積投資契約は投資運用業に該当するため、別途登録が必要である。
- 3顧客から継続的に金銭の預託を受け、有価証券を買い付ける契約である。
- 4定額購入により、ドル・コスト平均法の効果が期待できる。
- 5株式累積投資(るいとう)や投信積立に用いられる。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】累積投資契約の締結は金融商品取引業者の付随業務であり、投資運用業の登録を別途受ける必要はない。
【肢別】
1 ○ 定額購入なので、価格が安いときには多くの口数を購入することになる。
2 × 投資運用業に該当し別途登録が必要とする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 顧客から継続的に金銭の預託を受け、有価証券を買い付ける契約である。
4 ○ 定額購入によりドル・コスト平均法の効果が期待できる。
5 ○ 株式累積投資(るいとう)や投信積立に用いられる。
【横断整理】なぜ投資運用業に当たらないのか。投資運用業は、業者が顧客の財産について投資判断(何をいつ売買するか)を行う業務である。累積投資契約では買付対象の銘柄・ファンドを決めるのは顧客であり、業者は決められた金額で決められたものを機械的に買い付けているにすぎない。判断を誰がしているかで線が引かれている。
【発展:ドル・コスト平均法の効果と限界】定額購入では、価格が高いときは少ない口数、安いときは多い口数を買うため、平均取得単価は各時点の価格の単純平均より必ず低くなる(調和平均が算術平均以下になるため)。これは数学的に保証された効果である。ただし保証されるのはここまでで、最終的な損益は売却時の価格に左右される。右肩下がりの相場で買い続ければ平均単価は下がるが損失は膨らむ。「リスクを減らす手法」ではなく「買付タイミングの分散手法」だと理解しておきたい。
【根拠】金商法35条1項7号(累積投資契約の締結は付随業務)。投資運用業の定義は2条8項12号〜15号。日本証券業協会「累積投資に関する規則」。
【相互参照】No.54(付随業務の範囲)、No.29(株式累積投資・株式ミニ投資)、No.433(株式ミニ投資)。
問59有価証券の保護預りに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔分別管理義務は投資者保護基金への加入により免除される。
- 2顧客の有価証券と自己の有価証券は分別して管理しなければならない。
- 3顧客から有価証券を預かる場合、保護預り契約を締結しなければならない。
- 4分別管理が適切に行われていれば、業者が破綻しても顧客資産は保全される。
- 5保護預り証を交付する必要がある。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】分別管理義務と投資者保護基金への加入は別個の制度であり、一方の履行によって他方が免除されることはない。
【肢別】
1 × 基金加入で分別管理義務が免除されるとする点が誤り。本肢が誤り。
2 ○ 顧客の有価証券と自己の有価証券は分別して管理しなければならない。
3 ○ 顧客から有価証券を預かる場合は保護預り契約を締結する。
4 ○ 分別管理が適切に行われていれば、業者が破綻しても顧客資産は保全される。
5 ○ 保護預り証を交付する必要がある。
【横断整理】顧客資産の保護は二段構えになっている。第一段が分別管理(金商法43条の2)。顧客の資産を業者自身の資産と分けて管理させ、業者が破綻しても顧客資産が破産財団に取り込まれないようにする。第二段が投資者保護基金(79条の20)。分別管理が適切に行われていなかった等の理由で顧客資産が返還されない場合に、一般顧客1人当たり1,000万円を上限として補償する。
【発展:基金は「二段目」であることに意味がある】分別管理が完全に機能していれば、業者が破綻しても顧客資産は全額戻るはずで、基金の出番はない。基金が必要になるのは分別管理が守られなかった場合、つまり第一段が破れたときである。だからこそ両者は代替関係になく、基金があるから分別管理を緩めてよいという理屈は成り立たない。補償上限1,000万円という数字も、あくまで例外的な事故に備えた最後の受け皿という位置づけを示している。なお適格機関投資家等のプロは「一般顧客」に含まれず、基金の補償対象外である。
【根拠】金商法43条の2(分別管理義務)、43条の3、79条の20(投資者保護基金による補償・一般顧客1人当たり1,000万円が上限)、79条の27(一般顧客の範囲)。日本証券業協会「証券保管に関する規則」。
【相互参照】No.456(保護預り契約)、No.54(付随業務)、No.305(業者に対する監督)。
問60投資助言業務に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1投資助言・代理業の登録が必要である。
- ✔投資助言業者は、顧客と損失補塡の合意をすることができる。
- 3助言に基づく投資判断および結果責任は顧客に帰属する。
- 4投資顧問契約に基づき、有価証券の価値等に関する助言を行う業務である。
- 5顧客の資産を預かって運用することはできない。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】投資助言業者にも損失補塡の禁止規定が適用される。顧客と損失補塡の合意をすることはできない。
【肢別】
1 ○ 投資助言・代理業の登録が必要である。
2 × 顧客と損失補塡の合意ができるとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 助言に基づく投資判断および結果責任は顧客に帰属する。
4 ○ 投資顧問契約に基づき有価証券の価値等に関する助言を行う業務である。
5 ○ 顧客の資産を預かって運用することはできない。
【横断整理】投資助言業務と投資運用業を対比する。投資助言業務=助言を提供するだけで、売買するかどうかを決めるのは顧客。顧客の資産を預かることも運用することもできない。投資運用業=投資一任契約等に基づき、業者が投資判断を行い、顧客の資産を実際に運用する。判断の主体が顧客にあるか業者にあるかで分かれ、業者側に判断が移るほど登録要件も規制も重くなる。
【発展】投資助言業者が提供するのは情報と分析であって、結果の保証ではない。助言に従うかどうかは顧客が決めるのだから、損失が出ても業者が補塡する筋合いはない。逆にいえば、損失補塡を約束できてしまうと、助言の質ではなく補塡の有無で契約が選ばれるようになり、業として成り立たなくなる。損失補塡の禁止が守っているのが個々の顧客ではなく市場秩序である(No.4参照)という点は、助言業でも変わらない。あわせて、自己が当事者となる取引(自己取引)も原則禁止されている。助言した銘柄を自分が売り抜けるといった利益相反を封じる趣旨で、これは誠実公正義務(No.86参照)の具体化にあたる。
【根拠】金商法28条3項(投資助言・代理業)、29条(登録)、41条(誠実義務)、41条の2(禁止行為。自己取引等)、42条の2、39条(損失補塡等の禁止は投資助言業者にも適用)。顧客資産の預託の受入れは禁止。
【相互参照】No.4(損失補塡の禁止)、No.101(業の区分)、No.54(付随業務としての投資助言業務)、No.86(誠実公正義務)。
問61有価証券の貸借(貸株取引)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1貸株中は、株主としての権利が証券会社に移転する。
- ✔貸株中に受け取る配当金相当額は、配当所得として課税される。
- 3顧客が保有する株式を証券会社に貸し出し、貸株料を受け取る仕組みがある。
- 4金融商品取引業者の付随業務に含まれる。
- 5貸株中に配当が支払われた場合、配当金相当額が顧客に支払われる。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】貸株中は株主名義が移転しているため、顧客が受け取るのは配当そのものではなく配当金相当額である。税務上は雑所得として総合課税の対象となり、配当所得ではない。
【肢別】
1 ○ 貸株中は株主としての権利が証券会社に移転する。
2 × 配当所得として課税されるとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 顧客が保有株式を証券会社に貸し出し、貸株料を受け取る仕組みがある。
4 ○ 金融商品取引業者の付随業務に含まれる(金商法35条1項2号)。
5 ○ 貸株中に配当が支払われた場合、配当金相当額が顧客に支払われる。
【横断整理】名義が移転することの帰結を並べる。①株主としての権利(議決権、株主優待)は失われる。②配当は証券会社に支払われ、顧客には同額の「配当金相当額」が支払われる。③配当金相当額は配当所得ではなく雑所得として総合課税となり、配当控除も適用されない。④貸株料も雑所得。名義が動くという一点から、権利・受取形式・課税区分のすべてが連動して変わる。
【発展】受け取る金額が同じでも、「配当」と「配当金相当額」では課税区分が違う。配当所得なら20.315%の源泉徴収で申告不要も選べ、総合課税なら配当控除も使える(No.81参照)。雑所得は総合課税一本で超過累進税率が適用され、配当控除もない。貸株料という上乗せ収入を得る代わりに、税務上は不利になりうる。同じ構造は信用取引の配当落調整額(No.94参照)にも見られる。NISA口座の株式を貸株に出すと非課税の恩恵を失う点も同じ延長線上にある。
【根拠】金商法35条1項2号(有価証券の貸借は付随業務)。貸株中は株式の所有権が移転するため、顧客が受け取る配当金相当額および貸株料は配当所得ではなく雑所得(総合課税)として扱われ、配当控除の適用もない。
【相互参照】No.94(配当落調整額)、No.81(配当課税の3方式)、No.54(付随業務)、No.85(所得の10区分)。
問62登録金融機関業務に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1国債・地方債・政府保証債の売買(ディーリング)を行うことができる。
- ✔登録金融機関は、上場株式の売買の取次ぎを自由に行うことができる。
- 3投資信託の窓口販売を行うことができる。
- 4登録金融機関にも金融商品取引法の行為規制が適用される。
- 5銀行等の金融機関は、内閣総理大臣の登録を受けて有価証券関連業の一部を行うことができる。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】銀行等の登録金融機関は、原則として株式等の有価証券関連業を営むことができない(銀証分離)。上場株式の売買の取次ぎを自由に行うことはできない。
【肢別】
1 ○ 国債・地方債・政府保証債の売買(ディーリング)を行うことができる。
2 × 上場株式の売買の取次ぎを自由に行えるとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 投資信託の窓口販売を行うことができる。
4 ○ 登録金融機関にも金融商品取引法の行為規制が適用される。
5 ○ 銀行等は内閣総理大臣の登録を受けて有価証券関連業の一部を行うことができる。
【横断整理】登録金融機関に認められる主な業務は三つある。①公共債(国債・地方債・政府保証債)の売買・引受け等のいわゆるディーリング・アンダーライティング。②投資信託の窓口販売。③金融商品仲介業務(証券会社への取次ぎ)。株式の売買の取次ぎを自ら行うことはできないが、③により証券会社に取り次ぐことは可能である。「自ら行う」のと「取り次ぐ」のとで扱いが分かれる。
【発展:銀証分離が守ろうとしているもの】銀行が証券業務を自由に行えると、二つの弊害が想定される。一つは利益相反で、融資先の企業が発行する社債や株式を、融資の回収に充てる目的で顧客に売りつけるおそれがある。もう一つは銀行の健全性で、価格変動の大きい株式業務のリスクが預金者の資金を脅かしかねない。そこで原則として分離しつつ、価格変動リスクの小さい公共債や、投資家が自ら選ぶ投資信託の販売は例外として認めている。何が認められ何が認められないかは、この二つの弊害が生じにくいかどうかで説明できる。
【根拠】金商法33条(金融機関の有価証券関連業の禁止=銀証分離の原則)、33条の2(登録金融機関の登録)、33条2項(書面取次ぎ行為、公共債等に係る例外)。登録金融機関にも金商法第三章第二節の行為規制が適用される。
【相互参照】No.101(業の区分)、No.119(金融商品仲介業者)、No.1(参入規制)、No.3(適合性の原則)。
問63外国証券取引口座に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1外国株式の配当については、現地で源泉徴収されることがある。
- ✔国内の上場株式と同様、外国証券取引口座を設定せずに取引できる。
- 3外国証券の取引には、為替変動リスクやカントリーリスクが伴う。
- 4約款には、有価証券の保管や権利の処理等について定められている。
- 5外国証券の取引を行うには、外国証券取引口座に関する約款に基づく口座設定が必要である。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】外国証券の取引にあたっては、あらかじめ外国証券取引口座に関する約款を顧客に交付し、口座設定に関する申込みを受ける必要がある。口座を設定せずに取引することはできない。
【肢別】
1 ○ 外国株式の配当については現地で源泉徴収されることがある。
2 × 口座を設定せずに取引できるとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 外国証券の取引には為替変動リスクやカントリーリスクが伴う。
4 ○ 約款には有価証券の保管や権利の処理等について定められている。
5 ○ 外国証券取引口座に関する約款に基づく口座設定が必要である。
【横断整理】約款が必要になるのは、国内取引にはない処理が多数生じるためである。①保管=現地の保管機関を経由する多層構造になる。②権利処理=配当、株式分割、公開買付けへの応募などを誰がどう取り次ぐか。③通知=現地からの情報をどの範囲で顧客に伝えるか。④費用=現地の保管料や為替手数料の負担。これらを一括して定めておく必要がある。
【発展:投資家が負うリスクの層】外国証券には、発行体の信用リスクや価格変動リスクに加え、為替変動リスクとカントリーリスク(政変、送金規制、税制変更等)が重なる。さらに現地で源泉徴収された税を日本で調整するには確定申告が必要になる(No.181参照)。国内証券と同じ感覚で扱えないからこそ、取引の入口で約款による合意を求める仕組みになっている。
【根拠】日本証券業協会「外国証券の取引に関する規則」(外国証券取引口座に関する約款の交付および口座設定に関する申込書の受入れ)。約款には有価証券の保管、権利の処理、通知、費用等が定められる。
【相互参照】No.181(外国税額控除)、No.140(外国債券)、No.255(外貨建MMF)、No.56(保護預り)。
問64外貨建MMFに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1外貨ベースでは安定した運用が目指されるが、元本保証ではない。
- 2為替変動により、円換算では元本割れとなることがある。
- 3外国の法令に基づいて設定された公社債投資信託である。
- ✔購入時の申込手数料が必ず徴収される。
- 5譲渡益・為替差益は、上場株式等と同様に申告分離課税の対象となる。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】外貨建MMFは購入時手数料が無料であることが一般的である。必ず徴収されるということはない。
【肢別】
1 ○ 外貨ベースでは安定した運用が目指されるが、元本保証ではない。
2 ○ 為替変動により円換算では元本割れとなることがある。
3 ○ 外国の法令に基づいて設定された公社債投資信託である。
4 × 購入時の申込手数料が必ず徴収されるとする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 譲渡益・為替差益は上場株式等と同様に申告分離課税の対象となる。
【横断整理】国内のMRFと外貨建MMFは、待機資金の受け皿という役割が共通する。いずれも短期の公社債等で運用し、購入時手数料を徴収せず、いつでも換金できる(No.48参照)。違いは通貨で、外貨建MMFには為替変動リスクが加わる。外貨ベースで安定していても、円に戻すときの為替次第で円換算の元本を割り込む。
【発展:手数料が無料でもコストはある】購入時手数料がかからない代わりに、円貨から外貨へ、外貨から円貨へ両替する際に為替手数料(為替スプレッド)が生じる。往復で負担するため、短期間の売買を繰り返せばこの負担が収益を上回りうる。「手数料無料」という表示が意味するのは申込手数料のことであって、取引に伴うコストがゼロという意味ではない。ノーロード・ファンドでも信託報酬はかかる(No.152参照)のと同じ読み方が必要である。
【根拠】外貨建MMFは外国の法令に基づいて設定された公社債投資信託で、購入時手数料は徴収されないのが一般的(為替手数料は別途負担)。譲渡益・為替差益は上場株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税(20.315%)の対象。
【相互参照】No.48(MRF)、No.152(投資信託のコスト)、No.254(外国証券取引口座)、No.84(特定公社債等の課税)。
株式会社法概論全35問中 8問を掲載
問65株主総会の決議に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1普通決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上で成立する。
- 2定款変更は普通決議事項である。
- ✔特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上で成立する。
- 4特別決議は、議決権の3分の2を有する株主が出席し、その全員の賛成で成立する。
- 5取締役の選任は特別決議事項である。
解説:【正解】3(正しいものはどれか)
【結論】特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立する(会社法309条2項)。
【肢別】
1 × 普通決議は出席株主の議決権の「過半数」で成立する。3分の2以上は特別決議の要件。
2 × 定款変更は特別決議事項である(309条2項11号)。
3 ○ 特別決議の要件を正しく述べている。本肢が正しい。
4 × 定足数は「議決権の過半数を有する株主の出席」であり、3分の2ではない。また「その全員の賛成」も誤り。
5 × 取締役の選任は普通決議事項である。ただし定足数は定款によっても3分の1未満に引き下げられない(341条)。
【横断整理】決議要件は3段階で覚える。
・普通決議:定足数=議決権の過半数(定款で排除可)、可決=出席議決権の過半数。役員の選任・解任、剰余金の配当、計算書類の承認など。
・特別決議:定足数=議決権の過半数(定款で3分の1まで引下げ可)、可決=出席議決権の3分の2以上。定款変更、監査役の解任、事業譲渡、合併・会社分割、資本金の額の減少、解散、募集株式の有利発行など。
・特殊決議:さらに重い。全株式に譲渡制限を付す定款変更は、議決権を行使できる株主の半数以上かつ議決権の3分の2以上(309条3項)。
【発展:肢1と肢3は文言が完全に同一で主語だけが違う】「普通決議」と「特別決議」の入れ替えだけで作られた対の肢である。どちらか一方は必ず誤りなので、正しいものを選ぶ本問では、この2肢を先に検討すれば効率がよい。
【根拠】会社法309条1項(普通決議)、309条2項(特別決議)、309条3項・4項(特殊決議)、341条(役員の選任・解任決議の定足数は3分の1未満に引下げ不可)、466条(定款変更)。
【相互参照】No.163(株主総会の招集手続)、No.360(決議の瑕疵)、No.58(役員の任期)、No.457(株主提案権)。
問66取締役および監査役の任期に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1非公開会社では、定款により取締役・監査役の任期を10年まで伸長できる。
- ✔監査役の任期は、定款により1年まで短縮することができる。
- 3取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである。
- 4監査役の任期は、原則として選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである。
- 5指名委員会等設置会社の取締役の任期は1年である。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】監査役の任期は原則4年であり、その独立性を確保するため定款によって短縮することはできない。
【肢別】
1 ○ 非公開会社(全株式譲渡制限会社)では、定款により取締役・監査役の任期を10年まで伸長できる(会社法332条2項、336条2項)。
2 × 監査役の任期を定款により1年まで短縮できるとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 取締役の任期は原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで。
4 ○ 監査役の任期は原則として選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで。
5 ○ 指名委員会等設置会社の取締役の任期は1年(332条6項)。
【横断整理】任期の伸縮の可否が取締役と監査役で逆になる。取締役は原則2年で、定款・株主総会決議による短縮が可能。監査役は原則4年で、短縮は不可、伸長も非公開会社での10年までに限られる。取締役は株主のコントロール下に置くべき存在なので任期を短くできる余地を残し、監査役は取締役を監視する立場なので任期を守って身分を安定させる、という発想の違いである。
【発展:監査役の独立性を支える3点セット】①任期4年の法定と短縮の禁止②解任には株主総会の特別決議が必要(343条・309条2項7号。取締役の解任は普通決議)③報酬は取締役とは別枠で定款または株主総会決議により定める(387条)。任期・解任・報酬の三方向から取締役会の影響を遮断している。任期の論点を単独で暗記するのではなく、この3点セットの一角として位置づけると忘れにくい。
【根拠】会社法332条1項・2項(取締役の任期)、332条6項(指名委員会等設置会社は1年)、336条1項・2項(監査役の任期4年・非公開会社の伸長)、343条(監査役の解任は特別決議)、387条(監査役の報酬)。
【相互参照】No.259(監査役)、No.257(取締役の義務)、No.458(取締役の報酬)、No.62(機関設計)。
問67自己株式(金庫株)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1取得財源は分配可能額の範囲内に限られる。
- 2自己株式には議決権がない。
- 3貸借対照表上、純資産の部の控除項目として表示される。
- 4自己株式には剰余金の配当請求権がない。
- ✔取得した自己株式は、期限内に必ず消却しなければならない。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】取得した自己株式は期間の制限なく保有し続けることができる(いわゆる金庫株)。期限内に必ず消却しなければならないとする本肢が誤りである。
【肢別】
1 ○ 取得財源は分配可能額の範囲内に限られる(会社法461条)。
2 ○ 自己株式に議決権はない(308条2項)。
3 ○ 貸借対照表上、純資産の部の控除項目として表示される。
4 ○ 自己株式に剰余金の配当請求権はない(453条)。
5 × 必ず消却しなければならないとする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】自己株式が失う権利をまとめると、議決権、剰余金配当請求権、残余財産分配請求権、募集株式の割当てを受ける権利など、ほぼすべてに及ぶ。会社が自分自身の株主になっても意味がないからである。他方で保有・処分・消却の選択は会社の自由に委ねられ、処分すれば新株発行と同じ効果を持つ。「使い道を残したまま塩漬けにできる」ことに金庫株という呼称の由来がある。
【発展:財源規制がかかる理由】自己株式の取得は、株主に会社財産を払い戻す行為であり、経済的には配当と変わらない。だから配当と同じく分配可能額という枠がはめられる(461条)。株主は有限責任しか負わないので、債権者が頼れるのは会社財産だけである。出資の払戻しが原則として認められないこと、剰余金の配当が分配可能額の範囲内に限られること、準備金の積立てが義務づけられていることは、すべてこの一点から出ている(No.61参照)。自己株式の財源規制もその一つに数えられる。
【根拠】会社法155条以下(自己株式の取得事由)、156条(株主総会決議)、461条1項(分配可能額による財源規制)、308条2項(議決権なし)、453条(配当請求権なし)、178条(消却)。
【相互参照】No.61(剰余金の配当と分配可能額)、No.235(自己株式と株式分割・無償割当て)、No.33(株式の発行形態)。
問68株主の権利に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1議決権は共益権に分類される。
- 2株主総会の議決権は、1株につき1個が原則である。
- 3株主代表訴訟提起権は、6か月前から引き続き株式を有する株主に認められる(公開会社の場合)。
- 4剰余金配当請求権は自益権に分類される。
- ✔単元未満株主には、剰余金配当請求権も認められない。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】単元未満株主には議決権はないが、剰余金配当請求権や残余財産分配請求権といった自益権は認められる。配当請求権も認められないとする本肢が誤りである。
【肢別】
1 ○ 議決権は会社の運営に参加する権利なので共益権。
2 ○ 議決権は1株につき1個が原則(一株一議決権の原則、会社法308条1項)。
3 ○ 公開会社では、株主代表訴訟提起権は6か月前から引き続き株式を有する株主に認められる(847条1項)。
4 ○ 剰余金配当請求権は自益権。
5 × 単元未満株主に配当請求権が認められないとする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】株主権は二つの軸で分類する。第一の軸は自益権(会社から経済的利益を受ける権利。剰余金配当請求権、残余財産分配請求権)と共益権(会社の運営に関与する権利。議決権、代表訴訟提起権、帳簿閲覧請求権)。第二の軸は単独株主権(1株でも行使できる)と少数株主権(一定の持株数・議決権割合を要する)。単元未満株主が失うのは共益権のほうであり、自益権は残る。
【発展:少数株主権の閾値】議決権の1%以上または300個以上で株主提案権(公開会社は6か月保有要件)、3%以上で会計帳簿閲覧請求権・株主総会招集請求権、10%以上で解散請求権。持株比率が上がるほど会社経営に踏み込める権利が開いていく。株主代表訴訟提起権は単独株主権であり、持株数の要件はなく保有期間の要件だけがかかる。「1株でも会社を訴えられる」という設計は、少数株主による経営監視を機能させるためのものである。
【根拠】会社法105条(株主の権利)、308条1項(一株一議決権)、189条(単元未満株式の権利制限)、847条1項(株主代表訴訟・6か月保有要件)、303条(株主提案権)、433条(会計帳簿閲覧請求権)。
【相互参照】No.29(単元未満株式と議決権)、No.126(単元未満株式)、No.258(株主代表訴訟)、No.457(株主提案権)。
問69剰余金の配当に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1一定の要件を満たす会社では、取締役会決議により剰余金の配当を行うことができる。
- 2剰余金の配当は、分配可能額の範囲内で行わなければならない。
- 3原則として株主総会の決議により行う。
- 4配当は金銭以外の財産で行うこともできる(現物配当)。
- ✔分配可能額を超えて配当を行っても、株主・取締役は何ら責任を負わない。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】分配可能額を超える違法配当が行われた場合、配当を受けた株主および業務執行者は、会社に対して連帯して支払義務を負う(会社法462条)。何ら責任を負わないとする本肢が誤りである。
【肢別】
1 ○ 会計監査人設置会社で監査役会等を置き取締役の任期が1年である等の要件を満たせば、定款の定めにより取締役会決議で剰余金の配当ができる(459条)。
2 ○ 剰余金の配当は分配可能額の範囲内で行わなければならない(461条)。
3 ○ 原則として株主総会の決議による(454条)。
4 ○ 金銭以外の財産による配当(現物配当)も可能(454条4項)。
5 × 責任を負わないとする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】剰余金配当の規律は3層になっている。①手続の層=誰が決めるか(原則は株主総会、要件を満たせば取締役会)。②金額の層=いくらまで出せるか(分配可能額)。③責任の層=超えたらどうなるか(株主・業務執行者の連帯支払義務)。肢1が①、肢2が②、肢5が③に対応しており、本問は3層すべてを一度に問うている。
【発展:分配可能額という縛りの根っこ】株主が有限責任しか負わない以上、会社債権者が頼れるのは会社財産だけである。だから会社財産が株主へ無制限に流出することを止める仕組みが要る。出資の払戻しが原則として認められないこと、剰余金の配当が分配可能額の範囲内に限られること、自己株式の取得に財源規制がかかること(No.59参照)、準備金の積立てが義務づけられていること(No.261の計算書類の規律とも接続する)は、すべて同じ趣旨から出ている。
【根拠】会社法453条・454条(剰余金の配当)、454条4項(現物配当)、459条(取締役会による配当の定款の定め)、461条(分配可能額)、462条(違法配当に係る株主・業務執行者の連帯支払義務)、445条(準備金の積立て)。
【相互参照】No.59(自己株式の財源規制)、No.261(計算書類)、No.232(配当政策)、No.57(決議要件)。
問70株式会社の機関に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1指名委員会等設置会社には、指名委員会・監査委員会・報酬委員会が置かれる。
- ✔監査等委員会設置会社には、必ず監査役を置かなければならない。
- 3取締役会設置会社の取締役は3名以上必要である。
- 4公開会社は取締役会を設置しなければならない。
- 5すべての株式会社に株主総会と取締役は必ず置かれる。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社では、監査役を置くことができない。監査等委員会・監査委員会が監査機能を担うためである。
【肢別】
1 ○ 指名委員会等設置会社には指名委員会・監査委員会・報酬委員会が置かれる。
2 × 監査等委員会設置会社に監査役を必ず置くとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 取締役会設置会社の取締役は3名以上必要(会社法331条5項)。
4 ○ 公開会社は取締役会を設置しなければならない(327条1項1号)。
5 ○ すべての株式会社に株主総会と取締役は必ず置かれる(295条、326条1項)。
【横断整理】上場会社が選べる機関設計は3つある。
・監査役会設置会社:監査役3名以上(うち半数以上は社外監査役)。監査役は取締役会で議決権を持たない。
・監査等委員会設置会社:監査等委員である取締役3名以上(過半数は社外取締役)。監査役は置けない。監査等委員は取締役なので取締役会で議決権を持つ。
・指名委員会等設置会社:3委員会を設置し、各委員会は取締役3名以上(過半数は社外取締役)。業務執行は執行役が担う。監査役は置けない。
【発展】監査等委員も監査委員も「取締役」である。取締役会の構成員として議決権を持ちながら監査を行う設計であり、取締役会の外から監視する監査役とは監査の位置取りが根本的に違う。二つの仕組みを併存させると監査権限が重複し責任の所在が曖昧になるため、法は択一を求めている。監査役の任期4年・解任は特別決議という独立性の保障(No.58参照)も、外から監視する立場ゆえに必要とされる。
【根拠】会社法295条(株主総会)、326条1項(取締役)、327条1項1号(公開会社は取締役会設置)、327条4項(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社は監査役を置けない)、331条5項(取締役3名以上)、331条6項・400条3項(委員の過半数は社外取締役)。
【相互参照】No.58(役員の任期)、No.259(監査役)、No.262(社外取締役)、No.357(取締役会の決議)。
問71新株予約権に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1新株予約権の発行は、有利発行に該当する場合、株主総会の特別決議が必要である。
- 2新株予約権者が権利行使すると、会社は株式を交付しなければならない。
- ✔新株予約権者は、権利行使前から株主としての議決権を有する。
- 4ストック・オプションとして役職員へのインセンティブ報酬に利用される。
- 5新株予約権付社債は、社債と新株予約権が一体となったものである。
解説:【正解】3(誤っているものはどれか)
【結論】新株予約権者は、権利を行使して株式の交付を受けるまでは株主ではない。権利行使前から議決権を有することはない。
【肢別】
1 ○ 有利発行に該当する場合は株主総会の特別決議が必要(会社法238条2項・240条1項、309条2項6号)。
2 ○ 権利行使があれば会社は株式を交付しなければならない。
3 × 権利行使前から議決権を有するとする点が誤り。本肢が誤り。
4 ○ ストック・オプションとして役職員へのインセンティブ報酬に利用される。
5 ○ 新株予約権付社債は社債と新株予約権が一体となったもの。
【横断整理】権利行使の前後で地位が切り替わる。行使前=新株予約権者。株式を取得する権利を持つだけで、議決権も配当請求権もない。行使後=株主。ここで初めて共益権と自益権が発生する。転換社債型新株予約権付社債(CB)の保有者も同様で、転換するまでは社債権者であって株主ではない。
【発展:有利発行規制が守っているもの】新株予約権を著しく有利な条件で発行すると、行使時に安い価格で株式が交付され、既存株主の持分価値が薄まる。だから公正な払込金額を下回る発行には特別決議を求め、取締役に理由の説明義務を課している。もっとも、ストック・オプションのように無償で発行する場合でも、それが職務執行の対価として合理的な範囲にあれば「有利発行」には当たらないと解されている。無償だから常に有利発行、という理解は正しくない。判断されているのは払込金額の多寡ではなく、対価とのバランスである。
【根拠】会社法236条以下(新株予約権の内容)、238条2項・3項(募集事項の決定と有利発行)、240条1項、309条2項6号(特別決議)、282条(権利行使による株主資格の取得)。
【相互参照】No.40(転換社債型新株予約権付社債)、No.359(募集株式の発行)、No.60(株主の権利)、No.57(特別決議事項)。
問72株式会社の設立に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1募集設立とは、発起人以外の者からも株主を募集する方法である。
- 2会社は、本店所在地において設立の登記をすることにより成立する。
- 3発起設立とは、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法である。
- ✔株式会社の設立には、最低1,000万円の資本金が必要である。
- 5定款には、公証人の認証を受ける必要がある。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】2006年施行の会社法により最低資本金制度は撤廃された。資本金1円でも株式会社を設立できる。
【肢別】
1 ○ 募集設立とは発起人以外の者からも株主を募集する方法である。
2 ○ 会社は本店所在地において設立の登記をすることにより成立する(会社法49条)。
3 ○ 発起設立とは発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法である。
4 × 最低1,000万円の資本金が必要とする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 定款には公証人の認証を受ける必要がある(30条1項)。
【横断整理】発起設立と募集設立を対比する。発起設立=発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける。手続が簡素で、実務ではほとんどがこちら。募集設立=発起人以外からも株主を募集する。創立総会の開催が必要になるなど手続が重い。いずれの場合も、定款の作成と公証人の認証、出資の履行、設立時役員の選任を経て、本店所在地における設立登記により会社が成立する。
【発展:最低資本金の撤廃と債権者保護】旧商法は株式会社に1,000万円の最低資本金を要求していた。会社財産だけが債権者の引当てとなる以上(No.61参照)、一定の財産的基礎を入口で確保させる趣旨である。しかし現実には、資本金の額は設立時の一時点の数字にすぎず、その後に費消されてしまえば債権者保護の役には立たない。実効性が乏しい割に起業の障壁となっていたため撤廃された。代わりに債権者保護は、分配可能額による配当規制、準備金の積立て義務、減資の際の債権者異議手続(No.162参照)といった、会社の存続中に継続して働く規律へ重点が移っている。
【根拠】会社法25条(設立の方法。発起設立と募集設立)、30条1項(定款の公証人認証)、49条(設立の登記による会社の成立)。2006年5月施行の会社法により最低資本金制度は撤廃された。
【相互参照】No.61(分配可能額と債権者保護)、No.162(資本金の額の減少と債権者異議手続)、No.62(機関設計)、No.363(解散および清算)。
経済・金融・財政の常識全35問中 8問を掲載
問73GDP(国内総生産)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1一定期間内に国内で生産された財・サービスの付加価値の合計である。
- ✔GDPには、海外からの純所得受取が含まれる。
- 3名目GDPを実質GDPで除したものがGDPデフレーターである。
- 4三面等価の原則により、生産・分配・支出の各面から見た額は等しくなる。
- 5国内で外国人が生み出した付加価値もGDPに含まれる。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】海外からの純所得受取を含むのはGNI(国民総所得)である。GDPは「国内」で生み出された付加価値の合計であり、海外からの所得は含まない。
【肢別】
1 ○ 一定期間内に国内で生産された財・サービスの付加価値の合計。
2 × GDPに海外からの純所得受取が含まれるとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 名目GDP÷実質GDPがGDPデフレーター。
4 ○ 三面等価の原則により、生産・分配・支出の各面から見た額は等しい。
5 ○ 国内で外国人が生み出した付加価値もGDPに含まれる。
【横断整理】GNI=GDP+海外からの純所得受取。「国内(Domestic)」は場所で区切り、「国民(National)」は帰属で区切る。日本企業の海外子会社が現地で上げた利益は、日本のGDPには入らないがGNIには入る。逆に外資系企業が日本国内で上げた付加価値は、日本のGDPに入る。肢5が正しいのはこの理屈による。
【発展:名目と実質、そしてデフレーター】名目GDPは実際の取引価格で測った金額、実質GDPは基準年の価格で測り直した数量ベースの金額である。両者の比がGDPデフレーターで、国内で生産されたすべての財・サービスの価格変動を映す。消費者物価指数が消費者の購入するものだけを対象とし輸入品を含むのに対し、GDPデフレーターは国内生産物だけを対象とし輸入品を含まない。したがって原油高のような輸入価格の上昇局面では、CPIが上がる一方でGDPデフレーターは下がることがある。二つの物価指標が逆に動くのは、測っている対象が違うからである。
【根拠】内閣府「国民経済計算(SNA)」。GNI=GDP+海外からの純所得受取。GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP×100。三面等価の原則(生産=分配=支出)。
【相互参照】No.68(物価指数)、No.164(経済成長率)、No.366(潜在成長率)、No.470(GDP統計の公表)。
問74景気動向指数に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1CI(コンポジット・インデックス)は景気変動の大きさやテンポを測定する。
- 2先行系列、一致系列、遅行系列に分類される。
- 3完全失業率は遅行系列に含まれる。
- 4DI(ディフュージョン・インデックス)は景気の各経済部門への波及度合いを測定する。
- ✔有効求人倍率は先行系列に含まれる。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】有効求人倍率(除学卒)は「一致系列」に含まれる。先行系列とする本肢が誤りである。
【肢別】
1 ○ CIは景気変動の大きさやテンポ(量感)を測定する。
2 ○ 先行系列・一致系列・遅行系列に分類される。
3 ○ 完全失業率は遅行系列に含まれる。
4 ○ DIは景気の各経済部門への波及度合いを測定する。
5 × 有効求人倍率を先行系列とする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】雇用関連の指標が3系列に散らばっている点が本問の急所である。
・先行系列:新規求人数(除学卒)。企業がまず募集を出す。
・一致系列:有効求人倍率(除学卒)。実際に求人と求職が動く。
・遅行系列:完全失業率、常用雇用指数。雇用の結果が最後に表れる。
この順序は雇用調整の実際の流れそのものである。企業は景気の変化を感じるとまず新規募集を増減させ、次に採用の現場が動き、失業率が変わるのは最後になる。系列を丸暗記するのではなく、時間の流れで並べると取り違えにくい。ほかに先行系列には東証株価指数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、実質機械受注などが、遅行系列には家計消費支出、法人税収入などが含まれる。
【発展:CIとDIの使い分け】CIは構成指標の変化率を合成したもので、景気の「勢い」を測る。現在はCI中心の公表となっている。DIは改善している指標の割合を示すもので、50%を上回れば拡張局面と判断する。景気の山と谷を確定するヒストリカルDIは、この考え方に基づく。量を見るならCI、広がりを見るならDIである。
【根拠】内閣府「景気動向指数」。CI(コンポジット・インデックス)は変化の大きさ・テンポ、DI(ディフュージョン・インデックス)は波及度合いを測定。景気基準日付の設定にはヒストリカルDIを用いる。
【相互参照】No.264(景気循環)、No.169(雇用統計)、No.269(主要な経済統計)、No.164(経済成長率)。
問75日本銀行の金融政策に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1金融政策決定会合において金融政策の運営方針が決定される。
- 2売りオペレーション(売りオペ)は、市場から資金を吸収する。
- ✔預金準備率を引き上げると、市場に供給される資金量は増加する。
- 4日本銀行は「発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」の3つの機能を有する。
- 5買いオペレーション(買いオペ)は、市場に資金を供給する。
解説:【正解】3(誤っているものはどれか)
【結論】預金準備率を引き上げると、金融機関は日本銀行に預ける準備預金を増やす必要が生じ、貸出等に回せる資金が減る。市場に供給される資金量は「減少」する(金融引締め)。
【肢別】
1 ○ 金融政策の運営方針は金融政策決定会合で決定される。
2 ○ 売りオペは日銀が保有資産を売って資金を吸収する。
3 × 準備率引上げで資金量が増加するとする点が誤り。本肢が誤り。
4 ○ 日本銀行は発券銀行・銀行の銀行・政府の銀行の3機能を有する。
5 ○ 買いオペは日銀が資産を買って資金を供給する。
【横断整理】緩和と引締めの向きを一枚で揃える。金融緩和=買いオペ、準備率引下げ、政策金利の引下げ。いずれも市場の資金量を増やす。金融引締め=売りオペ、準備率引上げ、政策金利の引上げ。いずれも資金量を減らす。「日銀が買えばお金が出ていき、売ればお金が戻ってくる」と、日銀の側から見た資金の出入りで考えると符号を間違えない。
【発展:準備預金制度の現在の位置づけ】預金準備率操作は理論上の政策手段として教科書に残っているが、日本では1991年を最後に変更されておらず、実際の金融調節は公開市場操作が中心である。さらに現在は日銀当座預金に多額の超過準備が積み上がっているため、準備率を動かしても資金量に与える影響は限定的になっている。試験では「引上げ=引締め」という原理を問われるが、実務上の主役ではないという位置づけも押さえておきたい。金融政策決定会合は年8回開催され、その結果が公表文と議事要旨で示される。
【根拠】日本銀行法15条(金融政策決定会合の議決事項)。準備預金制度に関する法律。公開市場操作(買いオペ・売りオペ)は日本銀行法33条に基づく業務。
【相互参照】No.167(金融政策手段)、No.67(マネーストック)、No.270(金融市場)、No.364(各国の中央銀行)。
問76マネーストック統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1M3は、M1に準通貨とCD(譲渡性預金)を加えたものである。
- 2金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量を示す統計である。
- 3広義流動性は、M3に金銭の信託、投資信託、国債等を加えたものである。
- 4M1は、現金通貨と預金通貨の合計である。
- ✔マネーストックの通貨保有主体には、金融機関および中央政府が含まれる。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】マネーストックの通貨保有主体は、居住者のうち一般法人・個人・地方公共団体等であり、金融機関と中央政府は除かれる。
【肢別】
1 ○ M3=M1+準通貨+CD(譲渡性預金)。
2 ○ 金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量を示す統計。
3 ○ 広義流動性=M3+金銭の信託、投資信託、国債等。
4 ○ M1=現金通貨+預金通貨。
5 × 保有主体に金融機関・中央政府が含まれるとする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】マネーストックの範囲は入れ子になっている。M1(現金通貨+預金通貨)⊂ M3(M1+準通貨+CD)⊂ 広義流動性(M3+金銭の信託・投資信託・国債・外債等)。M2はM3と同じ内訳だが、対象金融機関がゆうちょ銀行等を含まない点で範囲が狭い。M1からM3、広義流動性へと進むにつれ、流動性の低い資産が加わっていく。
【発展:マネーストックとマネタリーベースの違い】マネタリーベースは日本銀行が供給する通貨(日銀券発行高+貨幣流通高+日銀当座預金)で、中央銀行が直接コントロールできる。マネーストックは民間非金融部門が保有する通貨の総量で、銀行の信用創造を経て決まる。両者の比が信用乗数(貨幣乗数)である。量的緩和でマネタリーベースを大きく増やしてもマネーストックが同じ比率では増えなかったのは、銀行が受け取った資金を貸出に回さず日銀当座預金に積み上げたため、信用乗数が低下したからである。中央銀行が直接動かせる量と、経済に出回る量は別物だという点が重要である。
【根拠】日本銀行「マネーストック統計」。通貨保有主体は居住者のうち一般法人・個人・地方公共団体等(金融機関・中央政府を除く)。M1=現金通貨+預金通貨、M3=M1+準通貨+CD、広義流動性=M3+金銭の信託・投資信託・国債等。マネタリーベース=日銀券発行高+貨幣流通高+日銀当座預金。
【相互参照】No.66(日本銀行の金融政策)、No.270(金融市場)、No.165(金利)。
問77物価指数に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔消費者物価指数は、企業間で取引される財の価格を対象としている。
- 2企業物価指数(CGPI)は日本銀行が作成・公表する。
- 3コアCPIは、生鮮食品を除く総合指数である。
- 4消費者物価指数(CPI)は総務省が作成・公表する。
- 5GDPデフレーターは、名目GDP÷実質GDP×100で算出される。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】企業間で取引される財の価格を対象とするのは企業物価指数(CGPI)である。消費者物価指数は、消費者が購入する財・サービスの小売段階の価格を対象とする。
【肢別】
1 × 消費者物価指数の説明に企業物価指数の内容を当てている。本肢が誤り。
2 ○ 企業物価指数は日本銀行が作成・公表する。
3 ○ コアCPIは生鮮食品を除く総合指数。
4 ○ 消費者物価指数は総務省が作成・公表する。
5 ○ GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP×100。
【横断整理】3つの物価指標を、対象・作成主体・特徴で並べる。
・消費者物価指数(CPI):消費者が買う財・サービスの小売価格。総務省。輸入品を含む。
・企業物価指数(CGPI):企業間取引の卸売段階の価格。日本銀行。原材料価格の動きを早く映すため、CPIに先行しやすい。
・GDPデフレーター:国内で生産されたすべての財・サービスの価格。内閣府。輸入品を含まない。
【発展:コア指標とラスパイレス型】日本のコアCPIは生鮮食品を除く総合、コアコアCPIは生鮮食品およびエネルギーを除く総合を指す。ただし米国のコアCPIは「食品およびエネルギーを除く」を意味し、日本のコアコアに近い。国により定義が違う点に注意したい。またCPIは基準年の消費構成を固定して計算するラスパイレス型なので、価格が上がった品目から消費者が乗り換える代替効果を捉えきれず、物価上昇率をやや高めに出す性質がある。この歪みを是正するため、5年ごとに基準改定が行われる。
【根拠】総務省「消費者物価指数」(ラスパイレス型、5年ごとの基準改定)、日本銀行「企業物価指数」、内閣府「国民経済計算」(GDPデフレーター)。コアCPI=生鮮食品を除く総合、コアコアCPI=生鮮食品及びエネルギーを除く総合。
【相互参照】No.64(GDPとデフレーター)、No.464(名目金利と実質金利)、No.269(主要な経済統計)。
問78為替相場に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1日本の経常収支黒字の拡大は、一般に円高要因となる。
- 2日本の金利が米国の金利に対して相対的に上昇すると、円高要因となりやすい。
- ✔円安は、輸入依存度の高い企業にとってコスト削減要因となる。
- 4円高は、一般に輸入物価の下落要因となる。
- 5円安は、一般に日本の輸出企業の採算にプラスに働く。
解説:【正解】3(誤っているものはどれか)
【結論】円安は輸入価格の上昇を招くため、輸入依存度の高い企業にとってはコストの「増加」要因となる。削減要因ではない。
【肢別】
1 ○ 経常収支黒字の拡大は、外貨を円に換える需要を生むため一般に円高要因。
2 ○ 日本の金利が相対的に上昇すれば、円建て資産の魅力が増し円高要因となりやすい。
3 × 円安が輸入企業のコスト削減要因になるとする点が誤り。本肢が誤り。
4 ○ 円高は輸入物価の下落要因。
5 ○ 円安は輸出企業の採算にプラスに働く。
【横断整理】円安・円高の影響を一つの表で押さえる。円安=輸出企業に有利(円換算の売上が増える)、輸入企業に不利(仕入コストが増える)、輸入物価は上昇、海外旅行は割高。円高=すべてその逆。肢3と肢4は同じ「輸入」の話を逆向きに述べており、両立しない。肢5と肢3は「円安」で企業が得をするか損をするかを、輸出側と輸入側から述べたもので、これは矛盾ではなく両立する。
【発展:Jカーブ効果】円安になれば輸出が増えて経常収支が改善するはずだが、実際には短期的にいったん悪化してから改善に転じることがある。契約が既に結ばれている分は数量がすぐには変わらず、輸入代金の円換算額だけが先に膨らむためである。時間の経過とともに数量が調整され、収支が持ち直す。この推移がアルファベットのJの字に似ていることからJカーブ効果と呼ばれる。為替の影響は「価格の効果」と「数量の効果」に分かれ、後者が現れるまでに時間差があるという点が本質である。
【根拠】為替相場の変動要因(経常収支、内外金利差、購買力平価、資本移動)。Jカーブ効果は貿易収支が為替変動に対し短期的に逆方向に動く現象。
【相互参照】No.267(為替相場の決定理論)、No.166(国際収支統計)、No.498(通貨関連デリバティブ)、No.68(物価指数)。
問79財政に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1累進課税制度や社会保障制度は、ビルト・イン・スタビライザーとして機能する。
- 2国の予算には、一般会計予算、特別会計予算、政府関係機関予算がある。
- 3財政の機能には、資源配分機能、所得再分配機能、経済安定化機能がある。
- ✔建設国債は、財政法上の原則に対する特例として毎年度特例法により発行される。
- 5プライマリー・バランスは、国債費を除く歳出と、国債発行収入を除く歳入との収支である。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】財政法4条ただし書により発行が認められているのが建設国債である。毎年度の特例法によって発行されるのは赤字国債(特例国債)のほうである。
【肢別】
1 ○ 累進課税制度や社会保障制度はビルト・イン・スタビライザーとして機能する。
2 ○ 国の予算には一般会計予算、特別会計予算、政府関係機関予算がある。
3 ○ 財政の3機能は資源配分機能、所得再分配機能、経済安定化機能。
4 × 建設国債と赤字国債の説明が入れ替わっている。本肢が誤り。
5 ○ プライマリー・バランスは、国債費を除く歳出と国債発行収入を除く歳入との収支。
【横断整理】財政法4条は原則として国債発行を禁じ、ただし書で公共事業費・出資金・貸付金の財源に限り発行を認める。これが建設国債である。将来の世代も便益を受ける資産を残すのだから、負担も将来に及ぼしてよい、という世代間の均衡が根拠になっている。これに対し人件費や社会保障費など後に資産の残らない支出は原則の禁止に触れるため、毎年度、特例公債法という別の法律を作って発行している。恒久的な根拠を与えていないことに、この区別の意味がある。
【発展】国債費(過去の借金の元利払い)を除く歳出を、新規借入れ以外の歳入で賄えているかを測る指標である。均衡していれば政策的経費は税収等で賄えており、債務残高の対GDP比は名目成長率と金利の関係次第で安定に向かう。財政再建の目標に使われるのは、自力で減らせない過去の利払いを切り離し、当年度の政策判断の巧拙だけを取り出せるからである。なお国債の償還には60年償還ルールが適用される。
【根拠】財政法4条(国債発行の原則禁止と建設国債のただし書)、特例公債法(赤字国債)。財政の3機能(資源配分・所得再分配・経済安定化)。プライマリー・バランス=(歳入−国債発行収入)−(歳出−国債費)。国債の60年償還ルール。
【相互参照】No.268(財政投融資)、No.467(国の予算)、No.468(社会保障と財政)、No.368(国債の保有構造と金利)、No.42(国債)。
問80経済成長率に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1実質経済成長率は、物価変動の影響を除いた成長率である。
- 2デフレ下では、実質成長率が名目成長率を上回ることがある。
- 3実質GDP=名目GDP÷GDPデフレーター×100 で求められる。
- ✔潜在成長率は、実際に達成された成長率のことをいう。
- 5名目経済成長率は、物価変動の影響を含んだ成長率である。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】潜在成長率とは、資本・労働・生産性を平常どおり活用した場合に達成可能な供給側からみた成長率であり、実際に達成された成長率のことではない。
【肢別】
1 ○ 実質経済成長率は物価変動の影響を除いた成長率である。
2 ○ デフレ下では実質成長率が名目成長率を上回ることがある。
3 ○ 実質GDP=名目GDP÷GDPデフレーター×100。
4 × 潜在成長率を実績値とする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 名目経済成長率は物価変動の影響を含んだ成長率である。
【横断整理】名目と実質の関係を押さえる。名目成長率≒実質成長率+物価上昇率。物価が上がっていれば名目のほうが大きく、物価が下がっている(デフレ)なら実質のほうが大きくなる。肢2はこの後者の場合を述べたもので、金額は増えていなくても数量は増えている、という状態を指す。
【発展:GDPギャップという見方】潜在成長率は供給能力の伸びを表し、実際の成長率は需要の大きさで決まる。両者の水準の差、すなわち実際のGDPと潜在GDPの乖離をGDPギャップ(需給ギャップ)という。マイナスであれば供給能力が余っており、物価には下押し圧力がかかる。プラスであれば需要が供給能力を上回り、物価上昇圧力が生じる。金融政策は主として需要側に働きかけるので、GDPギャップを埋めることはできても潜在成長率そのものを短期的に押し上げることはできない(No.366参照)。潜在成長率を高めるには、資本蓄積、労働参加率の向上、全要素生産性の改善といった構造面の変化が必要になる。
【根拠】内閣府「国民経済計算」。実質GDP=名目GDP÷GDPデフレーター×100。潜在成長率は資本・労働・全要素生産性から算出される供給側の概念であり、実績値ではない。GDPギャップ(需給ギャップ)=(実際のGDP−潜在GDP)÷潜在GDP。
【相互参照】No.64(GDPとGNI)、No.366(潜在成長率)、No.68(GDPデフレーター)、No.470(GDP統計の公表)。
財務諸表と企業分析全40問中 8問を掲載
問81貸借対照表に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔一定期間における企業の経営成績を表す。
- 2資産の部、負債の部、純資産の部から構成される。
- 3一定時点における企業の財政状態を表す。
- 4流動と固定の区分には、正常営業循環基準と1年基準が用いられる。
- 5資産合計=負債合計+純資産合計 が常に成立する。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】一定期間における経営成績を表すのは損益計算書である。貸借対照表は決算日という一定「時点」の財政状態を表す。
【肢別】
1 × 貸借対照表が一定期間の経営成績を表すとする点が誤り。本肢が誤り。
2 ○ 資産の部、負債の部、純資産の部から構成される。
3 ○ 一定時点における財政状態を表す。
4 ○ 流動・固定の区分には正常営業循環基準と1年基準が用いられる。
5 ○ 資産合計=負債合計+純資産合計が常に成立する(貸借平均の原理)。
【横断整理】財務三表を「時点か期間か」で切り分ける。貸借対照表=一定時点のストック(財政状態)。損益計算書=一定期間のフロー(経営成績)。キャッシュ・フロー計算書=一定期間のフロー(現金の増減)。肢1と肢3は同じ貸借対照表について「期間」「時点」と逆のことを述べており、両立しない。この対を見つければ、他の肢を読む前に正解の候補を2つに絞れる。
【発展:正常営業循環基準と1年基準の順序】流動・固定の分類は、まず正常営業循環基準を当て、それで判定できないものに1年基準を当てるという順序で行う。正常営業循環基準とは、仕入→製造→販売→代金回収という営業サイクルの中にある項目はすべて流動とする考え方である。したがって売掛金や棚卸資産は、回収や販売に1年以上かかっても流動資産に分類される。1年基準は、この循環の外にある貸付金や借入金などに適用され、決算日の翌日から1年以内に期限が到来するかどうかで区分する。順序を逆にすると、長期滞留の在庫を固定資産に分類してしまう誤りが生じる。
【根拠】企業会計原則(貸借対照表原則)。流動・固定分類は正常営業循環基準を優先し、次に1年基準(ワン・イヤー・ルール)を適用する。貸借平均の原理により資産=負債+純資産。
【相互参照】No.74(損益計算書の利益)、No.76(キャッシュ・フロー計算書)、No.471(資産の分類)、No.472(負債の分類)、No.171(純資産の部)。
問82流動資産1,200百万円、流動負債800百万円、棚卸資産300百万円である企業の流動比率と当座比率の組合せとして正しいものはどれか。
- 1流動比率66.7%、当座比率112.5%
- 2流動比率125.0%、当座比率112.5%
- 3流動比率150.0%、当座比率37.5%
- ✔流動比率150.0%、当座比率112.5%
- 5流動比率150.0%、当座比率100.0%
解説:【正解】4(正しいものはどれか)
【方向の確認】流動資産1,200が流動負債800を上回っているので流動比率は必ず100%を超える。66.7%の肢1はこれだけで消える。当座資産は流動資産から棚卸資産を引いた900なので、当座比率は流動比率より必ず小さく、かつ800を上回るので100%超。したがって当座比率が37.5%の肢3、100.0%の肢5も計算前に排除できる。残るのは肢2と肢4である。
【結論】流動比率=1,200÷800×100=150.0%。当座資産=1,200−300=900百万円。当座比率=900÷800×100=112.5%。よって肢4。
【肢別】
1 × 流動比率66.7%=800÷1,200×100。分子と分母を取り違えた逆数の値(当座比率112.5%のみ正しい)。
2 × 流動比率125.0%が誤り。150.0%と112.5%の間に置かれた撹乱値で、特定の計算式には対応しない。
3 × 当座比率37.5%=300÷800×100。当座資産を求めるのに引くべき棚卸資産300を、そのまま分子に置いてしまった値(流動比率150.0%のみ正しい)。
4 ○ 150.0%と112.5%。両方正しい。
5 × 当座比率100.0%は「当座比率は100%以上が望ましい」という目安の数字をそのまま答えた形(流動比率150.0%のみ正しい)。
【検算】掛け戻す。150.0%×流動負債800=1,200で流動資産に一致。112.5%×800=900で当座資産に一致。さらに流動比率と当座比率の差(150.0−112.5=37.5ポイント)が、棚卸資産300÷流動負債800×100=37.5%と一致することも確認できる。
【単位の注意】いずれも%であって倍ではない。1.5倍と112.5%を並べるような肢が出た場合、単位が揃っていない時点で候補から外せる。
【発展:当座資産の定義】当座資産=現金預金+受取手形+売掛金+有価証券など、換金が容易な資産。実務では流動資産から棚卸資産を控除して近似する。棚卸資産を除くのは、在庫は売れて初めて現金になるため、支払能力の裏付けとしては当てにならないからである。流動比率が高くても在庫が膨らんでいるだけなら安全とはいえず、当座比率を併せて見る必要がある。
【根拠】流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100。当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100。当座資産≒流動資産−棚卸資産。目安は流動比率200%以上、当座比率100%以上。
【相互参照】No.77(安全性分析)、No.71(貸借対照表)、No.471(資産の分類)、No.78(効率性分析)。
問83当期純利益240百万円、自己資本1,600百万円、総資産4,000百万円、売上高6,000百万円である企業のROEとROA(総資産当期純利益率)の組合せとして正しいものはどれか。
- 1ROE 15.0%、ROA 40.0%
- 2ROE 15.0%、ROA 4.0%
- 3ROE 6.0%、ROA 4.0%
- 4ROE 4.0%、ROA 6.0%
- ✔ROE 15.0%、ROA 6.0%
解説:【正解】5(正しいものはどれか)
【方向の確認】ROEの分母は自己資本1,600、ROAの分母は総資産4,000。同じ利益240を、小さい分母で割るROEのほうが必ず大きくなる。ROE≦ROAとなっている肢4は、この一点だけで計算前に排除できる。さらに240÷4,000は6%、240÷1,600は15%と、いずれも暗算で見当がつく。
【結論】ROE=240÷1,600×100=15.0%。ROA=240÷4,000×100=6.0%。よって肢5。
【肢別】
1 × ROA40.0%=1,600÷4,000×100。これは自己資本比率であって、ROAではない(ROE15.0%のみ正しい)。
2 × ROA4.0%=240÷6,000×100。分母に総資産ではなく売上高を使った値で、これは売上高当期純利益率(ROE15.0%のみ正しい)。
3 × ROE6.0%=240÷4,000(総資産で割った)、ROA4.0%=240÷6,000(売上高で割った)。分母を一段ずつずらした値で、両方とも誤り。
4 × ROE4.0%=240÷6,000。売上高で割った値(ROA6.0%のみ正しい)。ROEがROAを下回るという矛盾が出るので、方向の確認で排除できる。
5 ○ 15.0%と6.0%。両方正しい。
【検算】掛け戻す。15.0%×自己資本1,600=240、6.0%×総資産4,000=240。どちらも当期純利益240に戻れば正しい。
【単位の注意】いずれも%。与えられた数値の単位は百万円で揃っているので換算は不要だが、分母だけ「億円」など単位が異なる問題では必ず揃えてから割ること。
【発展:デュポン分解】ROE=売上高当期純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ、と3つに分解できる。本問の数値では、240÷6,000(4.0%)×6,000÷4,000(1.5回)×4,000÷1,600(2.5倍)=15.0%となり、確かにROEに戻る。誤答肢に並んだ4.0%も6.0%も、実はこの分解の途中に現れる値である。ROEが高い企業を見たとき、それが本業の収益力(マージン)によるのか、資産の使い方(回転率)によるのか、借入れを増やしただけ(レバレッジ)なのかを切り分けられる点に、この分解の価値がある。
【根拠】ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100。ROA(%)=当期純利益÷総資産×100。自己資本比率(%)=自己資本÷総資産×100。デュポン分解:ROE=売上高当期純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ。
【相互参照】No.173(自己資本比率とROE)、No.277(総資本経常利益率の分解)、No.334(PBR=PER×ROE)、No.172(売上高利益率)。
問84損益計算書の利益に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔当期純利益=税引前当期純利益+法人税等
- 2営業利益=売上総利益−販売費及び一般管理費
- 3売上総利益=売上高−売上原価
- 4経常利益=営業利益+営業外収益−営業外費用
- 5税引前当期純利益=経常利益+特別利益−特別損失
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】当期純利益=税引前当期純利益−法人税等である。法人税等は「加算」ではなく「控除」する。
【肢別】
1 × 法人税等を加算するとしている点が誤り。本肢が誤り。
2 ○ 営業利益=売上総利益−販売費及び一般管理費。
3 ○ 売上総利益=売上高−売上原価。
4 ○ 経常利益=営業利益+営業外収益−営業外費用。
5 ○ 税引前当期純利益=経常利益+特別利益−特別損失。
【横断整理】損益計算書は5つの利益が階段状に並ぶ。
①売上総利益=売上高−売上原価。商品・サービスそのものの儲け。
②営業利益=①−販売費及び一般管理費。本業の儲け。
③経常利益=②+営業外収益−営業外費用。財務活動を含めた通常の活動の儲け。
④税引前当期純利益=③+特別利益−特別損失。臨時的な損益を反映した儲け。
⑤当期純利益=④−法人税等。株主に帰属する最終的な儲け。
肢2から肢5までがこの階段の②③④を順に述べており、肢1だけが最後の段で符号を逆にしている。
【発展:どの段階を見るかで評価が変わる】本業の実力を見るなら営業利益、借入れの重さを含めた総合力なら経常利益、その年限りの特殊要因まで含めた結果なら当期純利益を見る。工場売却益で当期純利益が過去最高になっても、営業利益が前年割れなら本業は悪化している。指標の分子にどの利益を置くかで結論が変わりうるため、問題文が「経常利益」なのか「当期純利益」なのかを必ず確認する必要がある(No.172参照)。なお法人税等には、法人税・住民税及び事業税に加え、法人税等調整額が含まれる。
【根拠】会社計算規則および財務諸表等規則に定める損益計算書の区分表示。法人税等=法人税、住民税及び事業税+法人税等調整額。
【相互参照】No.178(損益計算書の区分)、No.172(売上高利益率の計算)、No.473(包括利益)、No.274(繰延税金資産)、No.477(売上総利益率)。
問85売上高2,000百万円、変動費1,200百万円、固定費500百万円である企業の損益分岐点売上高として正しいものはどれか。
- 1800百万円
- 21,000百万円
- ✔1,250百万円
- 41,500百万円
- 51,700百万円
解説:【正解】3(正しいものはどれか)
【方向の確認】現状は売上高2,000−変動費1,200−固定費500=300百万円の黒字である。黒字なのだから損益分岐点売上高は現在の売上高2,000より必ず小さい。また限界利益率が40%なので、固定費500を賄うには売上高が固定費の2.5倍必要になる。500×2.5=1,250と、計算前に当たりがつく。
【結論】限界利益=2,000−1,200=800百万円。限界利益率=800÷2,000=0.4(40%)。損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率=500÷0.4=1,250百万円。よって肢3。
【肢別】
1 × 800百万円は限界利益そのもの(2,000−1,200)。限界利益の「額」と損益分岐点「売上高」を取り違えた値。
2 × 1,000百万円=500÷0.5。限界利益率を0.4ではなく0.5と取り違えた場合の値。
3 ○ 1,250百万円。
4 × 1,500百万円=2,000−500。売上高から固定費を差し引いただけの値で、変動費が売上に比例して減ることを考慮していない。
5 × 1,700百万円=1,200+500。変動費と固定費を足した現在の総費用。現在の売上水準における費用の合計であって、損益分岐点ではない。式を立てずに与えられた数字を足しただけの値である。
【検算】二通りで確かめる。①損益分岐点では限界利益=固定費になるはずなので、1,250×0.4=500となり固定費に一致する。②現在の利益300を消すには、限界利益を300減らせばよい。売上を300÷0.4=750減らせば足りるので、2,000−750=1,250。どちらの経路でも同じ値に着地する。
【単位の注意】答えは百万円という金額であり、比率ではない。損益分岐点「比率」を問われれば1,250÷2,000×100=62.5%となり、まったく別の数字になる。問題文が売上高を聞いているのか比率を聞いているのかを読み分けること。
【発展:固定費と変動費の性格の違い】変動費は売上に比例して増減するので、売上が減れば自動的に減る。固定費は売上が減っても減らない。だから損益分岐点を下げるには、固定費を削るか、限界利益率を上げる(変動費率を下げる)しかない。固定費の重い装置産業は損益分岐点が高く、売上が落ちたときの利益の落ち込みが激しくなる。この売上変動に対する利益の振れやすさを営業レバレッジという。
【根拠】限界利益=売上高−変動費。限界利益率=限界利益÷売上高。損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率。損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷売上高×100。
【相互参照】No.278(損益分岐点比率と安全余裕率)、No.477(売上総利益率・営業利益率)、No.172(売上高利益率)。
問86キャッシュ・フロー計算書に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1設備投資を積極的に行っている企業では、投資活動によるCFはマイナスとなる傾向がある。
- ✔営業活動によるCFの表示方法には、直接法と間接法があり、両者で最終的な金額は異なる。
- 3営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フローに区分される。
- 4借入金の返済は財務活動によるCFのマイナス要因となる。
- 5営業活動によるCFは、本業でどれだけ現金を獲得したかを示す。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】直接法と間接法は営業活動によるキャッシュ・フローの表示方法(作成過程)の違いにすぎず、算出される金額は同額になる。
【肢別】
1 ○ 設備投資に積極的な企業では投資活動によるCFはマイナスとなる傾向がある。
2 × 両者で最終的な金額が異なるとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 営業活動・投資活動・財務活動の3区分。
4 ○ 借入金の返済は財務活動によるCFのマイナス要因。
5 ○ 営業活動によるCFは本業でどれだけ現金を獲得したかを示す。
【横断整理】直接法は営業収入・仕入支出などの主要な取引ごとに総額で表示する方法で、資金の出入りが直感的にわかる反面、作成に手間がかかる。間接法は税引前当期純利益から出発し、減価償却費などの非資金損益項目と運転資本の増減を加減して求める方法で、実務上はこちらが主流である。出発点も表示の見た目もまったく違うが、同じ期間の同じ現金の動きを測っているのだから、着地点が一致するのは当然である。
【発展:3区分の符号の組合せを読む】営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスなら、本業で稼いだ資金で投資と借入返済を賄えている健全な姿である。営業CFがマイナスなのに投資CFもマイナス、財務CFが大きくプラスなら、借入れに頼って投資を続けている状態で、成長期の企業か資金繰りに窮した企業かのどちらかになる。営業CFと投資CFの合計がフリー・キャッシュ・フロー(簡便法)であり、これが継続的にプラスであることが財務健全性の目安とされる(No.276参照)。
【根拠】連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準。営業活動によるキャッシュ・フローの表示方法として直接法と間接法が認められており、いずれによっても金額は同一。フリー・キャッシュ・フロー(簡便法)=営業活動によるCF+投資活動によるCF。
【相互参照】No.276(フリー・キャッシュ・フローの計算)、No.71(財務三表の位置づけ)、No.175(減価償却)。
問87企業の安全性分析に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1固定比率=固定資産÷自己資本×100 であり、低いほど良好とされる。
- 2負債比率=負債÷自己資本×100 であり、低いほど安全性が高い。
- 3インタレスト・カバレッジ・レシオは、金融費用の支払能力を示し、高いほど良好である。
- ✔固定長期適合率は、固定資産を流動負債でどれだけ賄えているかを示す。
- 5自己資本比率=自己資本÷総資本×100 であり、高いほど安全性が高い。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100であり、長期資金で固定資産をどれだけ賄えているかを示す。流動負債で賄えているかを示す指標ではない。
【肢別】
1 ○ 固定比率=固定資産÷自己資本×100。低いほど良好。
2 ○ 負債比率=負債÷自己資本×100。低いほど安全性が高い。
3 ○ インタレスト・カバレッジ・レシオは金融費用の支払能力を示し、高いほど良好。
4 × 分母を流動負債としている点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 自己資本比率=自己資本÷総資本×100。高いほど安全性が高い。
【横断整理】安全性の指標は「短期」と「長期」に分かれる。短期=流動比率、当座比率(分母は流動負債)。長期=固定比率、固定長期適合率、自己資本比率、負債比率。固定資産のように資金が長期間拘束される資産は、返済期限の遠い資金で賄うべきだという発想が、固定比率と固定長期適合率に共通している。
【発展:固定比率と固定長期適合率の関係】固定比率の分母は自己資本だけなので、100%以下(固定資産を返済不要の自己資本だけで賄えている)が理想だが、設備投資の重い産業では達成が難しい。そこで分母に固定負債を加えて緩めたのが固定長期適合率で、こちらは100%以下が最低限の要請となる。100%を超えれば、固定資産の一部を短期返済の流動負債で賄っていることになり資金繰りが行き詰まりやすい。固定比率がクリアできなくても固定長期適合率は守るべき最終防衛線である。なおインタレスト・カバレッジ・レシオ=(営業利益+受取利息配当金)÷支払利息割引料、単位は「倍」。
【根拠】固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100。固定長期適合率(%)=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100。負債比率(%)=負債÷自己資本×100。自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100。インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)=(営業利益+受取利息配当金)÷支払利息割引料。
【相互参照】No.72(流動比率・当座比率)、No.173(自己資本比率)、No.476(成長性分析)、No.78(効率性分析)。
問88企業の効率性(回転率)分析に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1棚卸資産回転率が高いほど、在庫の滞留が少ないと考えられる。
- 2総資本回転率=売上高÷総資本 であり、高いほど資本が効率的に活用されている。
- 3売上債権回転率が高いほど、代金回収が早いと考えられる。
- ✔総資本回転率が低いほど、資産が効率的に使われている。
- 5棚卸資産回転期間は、棚卸資産回転率の逆数に期間を乗じて求める。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】総資本回転率が低いということは、同じ売上高を上げるのに多くの資本を要していることを意味し、資本効率は悪い。高いほど効率的である。
【肢別】
1 ○ 棚卸資産回転率が高いほど在庫の滞留が少ない。
2 ○ 総資本回転率=売上高÷総資本。高いほど効率的。
3 ○ 売上債権回転率が高いほど代金回収が早い。
4 × 低いほど効率的とする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 棚卸資産回転期間は回転率の逆数に期間を乗じて求める。
【横断整理】回転率はすべて「売上高÷その資産」で計算し、いずれも高いほど良い。総資本回転率=売上高÷総資本(単位は回)。売上債権回転率=売上高÷売上債権。棚卸資産回転率=売上高÷棚卸資産。分母に置いた資産が、1年間に何回売上高に姿を変えたかを測っている。肢2と肢4は同じ総資本回転率について高い・低いを逆に述べており、両立しない対の肢である。
【発展:回転率と回転期間の換算】回転期間は回転率の逆数に期間を掛けて求める。日数なら365日、月数なら12か月を掛ける。総資本回転率1.6回なら回転期間は365÷1.6≒228日。回転率は高いほど良く、回転期間は短いほど良い。方向が逆になるので、問題文が「率」か「期間」かで良し悪しの判断が反転する点に注意したい。この関係はキャッシュ・コンバージョン・サイクル(売上債権回転日数+棚卸資産回転日数−仕入債務回転日数)にも直結する(No.377参照)。回転率が収益性指標と結びつくのは、ROA=売上高利益率×総資本回転率という分解を通じてである(No.277参照)。
【根拠】総資本回転率(回)=売上高÷総資本。売上債権回転率(回)=売上高÷売上債権。棚卸資産回転率(回)=売上高÷棚卸資産。回転期間=期間÷回転率(365日または12か月)。ROA=売上高利益率×総資本回転率。
【相互参照】No.277(総資本経常利益率の分解)、No.377(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)、No.73(デュポン分解)、No.77(安全性分析)。
証券税制全35問中 8問を掲載
問89上場株式等の譲渡益に対する課税に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- ✔申告分離課税の対象であり、税率は20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)である。
- 2非課税である。
- 3源泉分離課税の対象であり、確定申告はできない。
- 4申告分離課税の対象であり、税率は10.147%である。
- 5総合課税の対象であり、他の所得と合算して課税される。
解説:【正解】1(正しいものはどれか)
【結論】上場株式等の譲渡所得等は申告分離課税の対象で、税率は合計20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)である。
【肢別】
1 ○ 申告分離課税・20.315%。本肢が正しい。
2 × 非課税ではない。非課税となるのはNISA口座内の譲渡益等に限られる。
3 × 源泉分離課税ではない。源泉徴収選択口座を使えば申告不要とできるが、制度としては申告分離課税である。
4 × 10.147%は、かつての上場株式等に対する軽減税率(所得税7%+住民税3%、復興特別所得税込みで10.147%)。2013年末で廃止済み。
5 × 総合課税ではない。総合課税を選択できるのは上場株式等の配当所得であって、譲渡所得ではない。
【横断整理】20.315%の内訳を分解しておく。所得税15%、復興特別所得税は所得税額の2.1%なので15%×2.1%=0.315%、住民税5%。合計20.315%。復興特別所得税がかかるのは所得税に対してであり、住民税には上乗せされない。だから0.315%という半端な数字が生まれる。
【発展】上場株式等の譲渡所得等は申告分離課税の一本道で、総合課税を選ぶ余地はない。これに対し上場株式等の配当所得は、総合課税・申告分離課税・申告不要の3方式から選べる(No.81参照)。譲渡益に選択肢がないのは、そもそも損益通算や繰越控除といった仕組みが分離課税の枠内で完結するよう設計されているためである。復興特別所得税は2037年12月31日まで。税率は改正されうるため受験時点の最新情報を確認すること。
【根拠】租税特別措置法37条の11(上場株式等に係る譲渡所得等の申告分離課税、所得税15%・住民税5%)。東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(復興特別所得税=基準所得税額の2.1%、2037年12月31日まで)。
【相互参照】No.81(配当課税の3方式)、No.384(復興特別所得税)、No.82(NISA)、No.83(繰越控除)。
問90特定口座に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1源泉徴収選択口座(源泉徴収あり)では、原則として確定申告が不要となる。
- ✔源泉徴収の有無は、年の途中でその年最初の売却等の後でも自由に変更できる。
- 31金融商品取引業者につき1口座に限り開設できる。
- 4源泉徴収選択口座内では、上場株式等の譲渡損益と配当等の損益通算が可能である。
- 5源泉徴収なしの口座では、年間取引報告書を用いて簡易に確定申告ができる。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】源泉徴収の有無の変更は、その年最初の譲渡または配当等の受入れが行われる前までに行う必要がある。取引が発生した後に年の途中で変更することはできない。
【肢別】
1 ○ 源泉徴収選択口座(源泉徴収あり)では原則として確定申告が不要となる。
2 × 取引後も自由に変更できるとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ 1金融商品取引業者につき1口座に限り開設できる。
4 ○ 源泉徴収選択口座内では上場株式等の譲渡損益と配当等の損益通算が可能。
5 ○ 源泉徴収なしの口座でも、年間取引報告書を用いて簡易に確定申告ができる。
【横断整理】特定口座の3類型を比較する。源泉徴収あり=業者が源泉徴収し納税まで完結、原則申告不要。配当等を受け入れれば口座内で譲渡損失と損益通算もされる。源泉徴収なし=業者が年間取引報告書を作成するが源泉徴収はせず、投資家が自分で申告する。一般口座=年間取引報告書も作成されず、投資家が取得価額から自分で計算して申告する。手間は右にいくほど重くなる。
【発展:源泉徴収ありが常に有利とは限らない】源泉徴収ありは申告不要なので手続は楽だが、譲渡益が確定申告に反映されないぶん、扶養控除や配偶者控除、国民健康保険料の算定に影響しない。逆に、他の口座の損失と通算したい場合や繰越控除を使いたい場合は、源泉徴収ありでも確定申告が必要になる。ただし申告すればその譲渡益は合計所得金額に算入されるため、扶養から外れたり保険料が上がったりすることがある。
【根拠】租税特別措置法37条の11の3(特定口座内保管上場株式等の譲渡所得等の課税の特例)、37条の11の4(源泉徴収選択口座)。源泉徴収の選択は、その年最初の譲渡等の時までに「特定口座源泉徴収選択届出書」を提出する必要がある。
【相互参照】No.481(特定口座の開設手続)、No.182(特定口座年間取引報告書)、No.83(繰越控除)、No.480(確定申告)。
問91上場株式の配当金に対する課税に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1総合課税を選択すると、配当控除の適用を受けられる。
- 2申告分離課税を選択すると、上場株式等の譲渡損失と損益通算できる。
- 3支払時に20.315%が源泉徴収される。
- 4申告不要制度を選択することもできる。
- ✔申告分離課税を選択した場合でも、配当控除の適用を受けられる。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】配当控除の適用を受けられるのは総合課税を選択した場合のみである。申告分離課税を選択すると譲渡損失との損益通算は可能になるが、配当控除は適用されない。
【肢別】
1 ○ 総合課税を選択すれば配当控除の適用を受けられる。
2 ○ 申告分離課税を選択すれば上場株式等の譲渡損失と損益通算できる。
3 ○ 支払時に20.315%が源泉徴収される。
4 ○ 申告不要制度を選択することもできる。
5 × 申告分離課税でも配当控除を受けられるとする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】上場株式等の配当に係る3方式を、得られるものと失うものの対で押さえる。
・総合課税:配当控除が使える。ただし譲渡損失との損益通算はできず、他の所得と合算して超過累進税率が適用される。
・申告分離課税:譲渡損失との損益通算・繰越控除が使える。ただし配当控除は使えない。税率は20.315%固定。
・申告不要:手続が不要。配当控除も損益通算も使えない。
配当控除と損益通算は、どちらか一方しか取れない。ここが本問の核心である。
【発展:どれが有利かは所得水準で変わる】総合課税では配当所得に超過累進税率がかかるうえで配当控除(課税総所得金額1,000万円以下の部分で所得税10%・住民税2.8%)が差し引かれる。課税所得が低い人ほど適用税率が低いので、総合課税が有利になりやすい。所得が高くなると累進税率が20.315%を超え、配当控除を差し引いても分離課税のほうが軽くなる。加えてその年に譲渡損失があるなら、損益通算できる申告分離課税が優位に立つ。
【根拠】租税特別措置法8条の4(上場株式等に係る配当所得等の申告分離課税)、8条の5(確定申告不要制度)、所得税法92条(配当控除)。上場株式等の配当等の源泉徴収税率は20.315%。
【相互参照】No.180(配当控除)、No.482(配当に係る課税方式の選択)、No.79(譲渡益課税)、No.483(金融所得課税の一体化)。
問92NISA(少額投資非課税制度/2024年以降の制度)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔NISA口座内で生じた譲渡損失は、特定口座の譲渡益と損益通算できる。
- 2成長投資枠の年間投資枠は240万円である。
- 3つみたて投資枠と成長投資枠は併用できる。
- 4非課税保有限度額(生涯投資枠)は1,800万円で、うち成長投資枠は1,200万円が上限である。
- 5つみたて投資枠の年間投資枠は120万円である。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】NISA口座内で生じた損失は税務上ないものとされ、他の口座の譲渡益・配当等との損益通算や繰越控除はできない。
【肢別】
1 × 特定口座の譲渡益と損益通算できるとする点が誤り。本肢が誤り。
2 ○ 成長投資枠の年間投資枠は240万円。
3 ○ つみたて投資枠と成長投資枠は併用できる。
4 ○ 非課税保有限度額(生涯投資枠)は1,800万円で、うち成長投資枠は1,200万円が上限。
5 ○ つみたて投資枠の年間投資枠は120万円。
【横断整理】2024年以降のNISAの数字を整理する。年間投資枠=つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円で合計360万円。非課税保有限度額(簿価残高ベース)=1,800万円、うち成長投資枠は1,200万円まで。非課税保有期間は無期限。売却すれば翌年以降、その簿価分の枠が復活して再利用できる。口座開設は18歳以上の居住者等、1人1口座。
【発展】NISAは利益に課税しない制度である。利益に税金がかからないのだから、裏返して損失も税務上は存在しないものとして扱われる。片方だけ都合よく使うことはできないという帰結であって、制度の不備ではない。ここから実務上の含意が出る。値上がり益が大きく見込める資産ほど恩恵が大きく、逆に損失が出る可能性の高い資産をNISAに入れると、課税口座なら使えたはずの損益通算・繰越控除(No.83参照)の機会を失う。「非課税だから何を入れても得」ではなく、非課税枠には機会費用があるという理解が必要である。制度改正の可能性があるため、受験時点の最新情報を確認すること。
【根拠】租税特別措置法37条の14(非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置)。2024年以降の新制度は、つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円(年間計360万円)、非課税保有限度額1,800万円(成長投資枠は1,200万円が上限)、非課税保有期間は無期限。
【相互参照】No.183(NISA口座の要件)、No.83(繰越控除)、No.285(非居住者とNISA)、No.481(特定口座)。
問93上場株式等の譲渡損失の繰越控除に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1翌年以後5年間にわたり繰り越すことができる。
- 2繰越控除の制度は存在しない。
- 3翌年以後2年間にわたり繰り越すことができる。
- ✔翌年以後3年間にわたり繰り越すことができる。
- 5期間の制限なく繰り越すことができる。
解説:【正解】4(正しいものはどれか)
【結論】上場株式等に係る譲渡損失でその年に控除しきれない金額は、翌年以後3年間にわたって繰り越すことができる。
【肢別】
1 × 5年間ではない。5年という期間は、たとえば消費者契約法の取消権の期間制限などで出てくる数字であり、ここでは当てはまらない。
2 × 制度は存在する。
3 × 2年間ではない。
4 ○ 翌年以後3年間。本肢が正しい。
5 × 期間の制限なく繰り越せるわけではない。
【横断整理】繰越控除の対象と手続を押さえる。繰り越した損失は、翌年以後の上場株式等の譲渡所得等および申告分離課税を選択した配当所得等から控除できる。適用には、損失が生じた年に確定申告を行い、かつその後の各年について取引がなくても連続して確定申告を続ける必要がある。1年でも申告を怠ると、そこで繰越しは打ち切られる。
【発展:申告を続けなければならない理由】繰越損失は、税務署側で自動的に管理されているわけではない。納税者が申告書に付表を付けて「まだこれだけ残っている」と主張し続けることで初めて維持される。だから譲渡益がゼロの年でも申告が要る。源泉徴収ありの特定口座を使っていて普段は申告不要な人ほど、この点を見落としやすい。NISA口座の損失がそもそも繰越しの対象にならないこと(No.82参照)と併せて、損失をどの器で発生させるかが3年先まで効いてくる、という視点を持っておきたい。
【根拠】租税特別措置法37条の12の2(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除)。繰越期間は翌年以後3年間。適用には損失発生年の確定申告と、その後の各年の連続した確定申告が必要。
【相互参照】No.82(NISAでは繰越控除不可)、No.80(特定口座と申告)、No.480(確定申告)、No.84(特定公社債との損益通算)。
問94公社債等の課税に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1特定公社債の譲渡益は、申告分離課税の対象である。
- 2特定公社債の利子は、申告分離課税(20.315%)または申告不要を選択できる。
- 3特定公社債の譲渡損失は、上場株式等の譲渡益や配当等と損益通算できる。
- ✔特定公社債の償還差益は非課税である。
- 5特定公社債には、国債、地方債、公募公社債、上場公社債等が含まれる。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】特定公社債の償還差益は譲渡所得等として申告分離課税(20.315%)の対象となる。非課税ではない。
【肢別】
1 ○ 特定公社債の譲渡益は申告分離課税の対象。
2 ○ 特定公社債の利子は申告分離課税(20.315%)または申告不要を選択できる。
3 ○ 特定公社債の譲渡損失は上場株式等の譲渡益や配当等と損益通算できる。
4 × 償還差益が非課税とする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 特定公社債には国債、地方債、公募公社債、上場公社債等が含まれる。
【横断整理】2016年1月からの金融所得課税一体化により、特定公社債等は上場株式等と同じ課税グループに入った。その結果、特定公社債の利子・譲渡益・償還差益と、上場株式等の譲渡益・配当等との間で損益通算と繰越控除ができるようになった。かつて償還差益が雑所得や源泉分離扱いだった時代の知識で解くと、肢4を正しいと判断してしまう。
【発展:特定公社債と一般公社債】特定公社債=国債、地方債、外国国債、公募公社債、上場公社債、2015年12月31日以前に発行された公社債(同族会社が発行したものを除く)など。それ以外が一般公社債で、こちらは上場株式等のグループには入らず、利子は源泉分離課税、譲渡益は申告分離課税だが損益通算の相手が限られる。同じ「社債」でも公募か私募かで課税グループが変わるので、商品名だけで判断せず発行形態を確認する必要がある。なおデリバティブ取引や預貯金の利子は、この一体化の枠外にとどまっている(No.483参照)。
【根拠】租税特別措置法37条の11(特定公社債等を上場株式等に含める)、3条(利子所得の課税の特例)。2016年1月1日施行の金融所得課税の一体化により、特定公社債等の利子・譲渡益・償還差益が上場株式等と同一の課税グループとなった。
【相互参照】No.483(金融所得課税の一体化)、No.79(譲渡益課税)、No.83(繰越控除)、No.343(利付債の利払い)。
問95所得税の基本に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔上場株式の配当は、金額の多寡にかかわらず必ず確定申告しなければならない。
- 2居住者は、原則として国内外で生じたすべての所得について課税される。
- 3所得は10種類に区分される。
- 4所得税には超過累進税率が適用される(総合課税の場合)。
- 5総合課税と分離課税があり、分離課税には申告分離課税と源泉分離課税がある。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】上場株式の配当は源泉徴収されているため申告不要制度を選択でき、確定申告は義務ではない。
【肢別】
1 × 金額の多寡にかかわらず必ず申告しなければならないとする点が誤り。本肢が誤り。
2 ○ 居住者は原則として国内外で生じたすべての所得について課税される(無制限納税義務者)。
3 ○ 所得は10種類に区分される。
4 ○ 総合課税には超過累進税率が適用される。
5 ○ 分離課税には申告分離課税と源泉分離課税がある。
【横断整理】所得の10区分は、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得。このうち総合課税されるのが原則だが、利子所得(源泉分離)、上場株式等の配当所得(3方式選択)、上場株式等の譲渡所得等(申告分離)、退職所得・山林所得(分離課税)など、分離される所得が多数ある。
【発展:課税方式の3類型】総合課税=他の所得と合算し超過累進税率(5%〜45%)を適用する。申告分離課税=他の所得と分けて一定税率で計算し、確定申告する。源泉分離課税=支払時の源泉徴収だけで課税関係が完結し、申告できない(預貯金の利子など)。申告不要制度は源泉分離課税とよく似た結果をもたらすが、性質が違う。源泉分離は申告することが「できない」のに対し、申告不要は申告しないことを「選べる」制度であり、有利なら総合課税や申告分離を選ぶ余地が残っている(No.81参照)。肢3が誤りだと判断してしまうのは、この違いを見落としているときである。
【根拠】所得税法23条〜35条(所得の10種類)、7条(居住者の課税所得の範囲)、89条(超過累進税率)。租税特別措置法8条の5(上場株式等の配当等に係る申告不要制度)。
【相互参照】No.81(配当課税の3方式)、No.479(所得控除)、No.480(確定申告)、No.285(非居住者の課税)。
問96上場株式等の譲渡所得の計算に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1同一銘柄を複数回取得した場合、総平均法に準ずる方法により取得費を計算する。
- 2譲渡時に支払った委託手数料は、譲渡費用に含まれる。
- ✔取得費が不明な場合、譲渡収入金額の50%を取得費とすることができる。
- 4取得時に支払った委託手数料は、取得費に含まれる。
- 5譲渡所得=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)で計算される。
解説:【正解】3(誤っているものはどれか)
【結論】取得費が不明な場合に用いる概算取得費は、譲渡収入金額の5%である。50%ではない。
【肢別】
1 ○ 同一銘柄を複数回取得した場合、総平均法に準ずる方法により取得費を計算する。
2 ○ 譲渡時に支払った委託手数料は譲渡費用に含まれる。
3 × 譲渡収入金額の50%を取得費とできるとする点が誤り。本肢が誤り。
4 ○ 取得時に支払った委託手数料は取得費に含まれる。
5 ○ 譲渡所得=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)。
【横断整理】委託手数料は取得時と譲渡時の両方で控除できるが、入る場所が違う。取得時の手数料=取得費に含める(買った値段に上乗せする)。譲渡時の手数料=譲渡費用として控除する。いずれも課税所得を減らす方向に働く点は共通で、往復の手数料がともに考慮されるという結論は同じである(No.234の損益計算と対応する)。
【発展:概算取得費5%の重み】5%しか取得費として認められないということは、譲渡収入の95%が課税対象になるということである。相続で引き継いだ古い株式など、取得時期も価格も不明な場合には極めて不利になる。だから取引報告書や特定口座年間取引報告書(No.182参照)を保存しておく意味は大きい。なお、相続により取得した株式は被相続人の取得費と取得時期を引き継ぐ(No.184参照)ので、被相続人の購入時の資料が残っていれば概算取得費に頼る必要はない。50%という数字は、たとえば居住用財産の譲渡など別の場面で登場する率と混同させるために置かれたものと考えられる。
【根拠】租税特別措置法37条の11、所得税法33条3項、租税特別措置法通達37の10・37の11共-13(概算取得費=譲渡収入金額の5%)。所得税法48条・同法施行令118条(総平均法に準ずる方法)。譲渡所得=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)。
【相互参照】No.35(総平均法による取得単価の計算)、No.184(相続・贈与株式の取得費の引継ぎ)、No.182(特定口座年間取引報告書)、No.234(往復手数料を含む損益)。
セールス業務全15問中 8問を掲載
問97証券外務員の職業倫理に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1商品のリスクについても、メリットと同様に十分な説明を行わなければならない。
- 2法令・諸規則を遵守するとともに、社会的規範をも尊重しなければならない。
- 3顧客の利益を優先し、誠実かつ公正に業務を遂行しなければならない。
- 4顧客の知識・経験・財産の状況等を的確に把握するよう努めなければならない。
- ✔顧客の利益と自社の利益が相反する場合は、自社の利益を優先すべきである。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】顧客の利益と自社の利益が相反する場合に自社の利益を優先することは許されない。金融商品取引業者等には顧客本位の業務運営が求められ、利益相反は顧客の利益を不当に害さないよう管理しなければならない。
【肢別】
1 ○ リスクもメリットと同様に十分説明しなければならない。
2 ○ 法令・諸規則の遵守に加え、社会的規範も尊重する。
3 ○ 顧客の利益を優先し、誠実かつ公正に業務を遂行する。
4 ○ 顧客の知識・経験・財産の状況等を的確に把握するよう努める。
5 × 自社の利益を優先すべきとする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】誠実公正義務(金商法36条1項)は「顧客等に対して誠実かつ公正に業務を遂行しなければならない」と定め、利益相反管理体制の整備義務(36条2項)がこれを具体化している。さらに協会規則と顧客本位の業務運営に関する原則が実務の指針を与える。法令・自主規制・原則という三つの層が、同じ方向を向いて積み重なっている。
【発展:利益相反はなくせない、管理するもの】証券会社は顧客の注文を取り次ぐ一方で自己勘定でも売買し、引受けを行った証券を顧客に販売し、グループ会社の商品も扱う。こうした構造上、利益相反の芽は常に存在する。だから法が求めているのは相反を消滅させることではなく、識別し、記録し、情報遮断(チャイニーズ・ウォール)や取引の中止といった手段で顧客の利益が不当に害されないよう管理することである。「相反があること自体が違法」ではなく「管理していないことが違法」だという理解が、実務判断の起点になる。
【根拠】金商法36条1項(誠実公正義務)、36条2項(利益相反管理体制の整備義務)、金商業等府令70条の3・70条の4。金融庁「顧客本位の業務運営に関する原則」。
【相互参照】No.309(誠実公正義務)、No.88(投資勧誘)、No.3(適合性の原則)、No.4(損失補塡の禁止)。
問98顧客への説明に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1過去の運用実績が将来の成果を保証するものではない旨を伝える必要がある。
- 2顧客の属性に応じて、理解できるよう平易な言葉で説明する必要がある。
- 3元本割れのリスクがある商品については、その旨を明確に伝える必要がある。
- ✔顧客が説明を不要と述べれば、リスクの説明を省略してもよい。
- 5手数料等の顧客が負担する費用について説明する必要がある。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】顧客が説明を不要と述べたとしても、重要事項(特に元本欠損リスク)の説明義務は免除されない。
【肢別】
1 ○ 過去の運用実績が将来の成果を保証しない旨を伝える必要がある。
2 ○ 顧客の属性に応じて平易な言葉で説明する必要がある。
3 ○ 元本割れリスクのある商品はその旨を明確に伝える必要がある。
4 × 顧客が不要と述べれば省略してよいとする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 手数料等の顧客が負担する費用について説明する必要がある。
【横断整理】説明義務違反の効果は二方向に及ぶ。行政上は金商法の業務規制違反として処分の対象になり、民事上は金融サービス提供法6条により損害賠償責任を負う。しかも同法では業者の故意・過失を顧客が立証する必要がなく、損害額は元本欠損額と推定される(No.11参照)。顧客が「説明は要らない」と言ったという事情は、この責任を免れさせる理由にならない。
【発展】金融サービス提供法4条2項は、説明を「顧客の知識、経験、財産の状況及び当該契約を締結する目的に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度によるもの」でなければならないと定めている。つまり説明義務は、同じ台本を読み上げれば果たされる形式的な義務ではなく、その顧客が実際に理解できたかどうかで水準が決まる相対的な義務である。だから肢2の「平易な言葉で」は単なる心構えではなく法の要請そのものであり、肢4のように顧客の一言で省略できる性質のものでもない。適合性の原則(No.3)が入口の規律、説明義務が中身の規律という対比を思い出したい。
【根拠】金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律4条1項(重要事項の説明義務)、4条2項(顧客の属性に応じた説明の方法および程度)、6条(損害賠償責任)、7条(元本欠損額の推定)。金商法37条の3(契約締結前交付書面)。
【相互参照】No.11(金融サービス提供法)、No.3(適合性の原則)、No.387(顧客への情報提供)、No.488(顧客の理解の確認)。
問99投資勧誘に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1分散投資の重要性について助言することは適切である。
- 2顧客の投資目的やリスク許容度に適合した商品を提案すべきである。
- ✔顧客の意向にかかわらず、自社が販売を強化している商品を優先して勧誘すべきである。
- 4特定の銘柄について「必ず値上がりする」と述べることは断定的判断の提供に該当する。
- 5顧客の投資判断は最終的に顧客自身が行うものであることを伝えるべきである。
解説:【正解】3(誤っているものはどれか)
【結論】自社の販売方針を顧客の意向や適合性に優先させることは、適合性の原則および顧客本位の業務運営に反する。
【肢別】
1 ○ 分散投資の重要性について助言することは適切。
2 ○ 顧客の投資目的やリスク許容度に適合した商品を提案すべき。
3 × 顧客の意向にかかわらず自社の推奨商品を優先すべきとする点が誤り。本肢が誤り。
4 ○ 「必ず値上がりする」は断定的判断の提供に該当する(金商法38条2号)。
5 ○ 投資判断は最終的に顧客自身が行うものであることを伝えるべき。
【横断整理】勧誘の適否を判定する三つの問い。①その顧客に勧誘してよい商品か(適合性の原則)。②勧誘するとして、必要な説明を尽くしたか(説明義務)。③勧誘の過程で禁止行為に触れていないか(断定的判断の提供、再勧誘、損失補塡の約束など)。肢3は①に、肢4は③に抵触する。順序としては①が入口であり、ここを通れない顧客にはどれだけ丁寧に説明しても勧誘できない。
【発展:販売する側の商品管理】近年は、個々の勧誘の適否だけでなく、その商品をそもそも誰に向けて作り、どの顧客層に販売するかという段階から管理すべきだという考え方が定着してきた。商品の組成会社が想定顧客属性を明示し、販売会社がそれに沿って販売対象を絞る、いわゆるプロダクトガバナンスである。適合性の原則が「目の前の顧客にこの商品を売ってよいか」を問うのに対し、こちらは「この商品はそもそも誰のためのものか」を先に問う。仕組債などの複雑な商品をめぐる問題を受けて重みを増している視点である。
【根拠】金商法40条1号(適合性の原則)、38条2号(断定的判断の提供の禁止)、36条(誠実公正義務)。日本証券業協会「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」。金融庁「顧客本位の業務運営に関する原則」。
【相互参照】No.86(職業倫理)、No.3(適合性の原則)、No.288(投資勧誘の記録)、No.18(高齢顧客への勧誘)。
問100「顧客本位の業務運営に関する原則」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1利益相反の適切な管理が求められる。
- 2手数料等の明確化が求められる。
- ✔法令であり、違反した場合は直ちに刑事罰が科される。
- 4プリンシプルベース・アプローチが採用されている。
- 5金融庁が策定した、金融事業者が採用すべき原則である。
解説:【正解】3(誤っているものはどれか)
【結論】「顧客本位の業務運営に関する原則」は法令ではなく、金融事業者が自主的に採択・公表する原則(プリンシプル)である。違反により直ちに刑事罰が科されることはない。
【肢別】
1 ○ 利益相反の適切な管理が求められる。
2 ○ 手数料等の明確化が求められる。
3 × 法令であり違反すれば直ちに刑事罰とする点が誤り。本肢が誤り。
4 ○ プリンシプルベース・アプローチが採用されている。
5 ○ 金融庁が策定した、金融事業者が採用すべき原則である。
【横断整理】ルールベースとプリンシプルベースを対比する。ルールベース=行為を具体的に列挙して禁止・義務づけする。金商法の禁止行為(No.110参照)が典型で、違反すれば行政処分や刑事罰の対象となる。プリンシプルベース=守るべき原則だけを示し、実現方法は各社の判断に委ねる。形式的な遵守で満足させず趣旨に沿った工夫を促す狙いがある。
【発展】原則は法令ではないが、採択した事業者は取組方針を策定・公表し、定期的に見直して実施状況を公表することが求められる。金融庁はこれをモニタリングし共通KPIの公表を促すなどして市場の目に晒す。制裁ではなく開示と評判で規律する仕組みであり、採択しない自由はあるが、そのこと自体が市場から評価される。法令による強制と、原則による自主的な取組みは対立するものではなく、前者が最低限の線を引き、後者がその上の水準を引き上げるという役割分担になっている。誠実公正義務(No.86参照)が法令上の一般条項として置かれ、その中身を具体化する方向に原則が働いていると理解するとよい。
【根拠】金融庁「顧客本位の業務運営に関する原則」(2017年策定、その後改訂)。法令ではなくプリンシプルベース・アプローチによる原則で、採択した金融事業者は取組方針の策定・公表および定期的な見直し・実施状況の公表が求められる。金商法36条1項(誠実公正義務)が法令上の受け皿。
【相互参照】No.86(職業倫理と誠実公正義務)、No.88(投資勧誘)、No.151(トータルリターン通知)、No.110(禁止行為=ルールベース)。
問101顧客からの苦情・紛争の処理に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1苦情処理の状況は、再発防止に活用すべきである。
- 2苦情を受けた場合、社内規則に従って適切かつ迅速に処理しなければならない。
- 3顧客はFINMACに苦情の申立てやあっせんの申立てができる。
- 4苦情の内容や処理状況は、記録して保存する必要がある。
- ✔顧客の苦情は、担当外務員が個人の判断のみで処理することが望ましい。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】苦情は担当者個人で抱え込まず、速やかに上席者・内部管理責任者へ報告し、組織として対応することが求められる。担当外務員が個人の判断のみで処理することは望ましくない。
【肢別】
1 ○ 苦情処理の状況は再発防止に活用すべきである。
2 ○ 苦情を受けた場合、社内規則に従って適切かつ迅速に処理しなければならない。
3 ○ 顧客はFINMACに苦情の申立てやあっせんの申立てができる。
4 ○ 苦情の内容や処理状況は記録して保存する必要がある。
5 × 担当外務員が個人の判断のみで処理することが望ましいとする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】苦情処理には三つの段階がある。①社内での受付と処理=社内規則に従い、担当者個人ではなく組織として対応する。②記録と分析=内容と処理状況を記録・保存し、再発防止に活用する。③外部機関=社内で解決しない場合、顧客はFINMACに苦情やあっせんを申し立てられる(No.109参照)。段階が進むほど当事者以外の目が入る構造になっている。
【発展】苦情の多くは担当者自身の勧誘や説明に起因する。本人に処理を委ねれば、事実を矮小化したり私的に穴埋めしたりする誘因が働く。私的な補塡は損失補塡の禁止(No.4参照)に触れるうえ、問題の所在が社内で共有されないため同種の苦情が繰り返される。組織対応が求められるのは、当事者を裁く立場に当事者を置かないという、実行者と検証者を分ける発想(No.116参照)の一場面である。記録の保存が求められるのも、個々の解決だけでなく、傾向を分析して勧誘方針や社内研修に反映させるためである。
【根拠】日本証券業協会「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」(苦情等の処理)。協会員は苦情等について社内規則を定め、適切かつ迅速に処理し、記録を作成・保存しなければならない。証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)が苦情・あっせんの申立先となる。
【相互参照】No.109(金融ADR制度)、No.116(内部管理態勢)、No.4(損失補塡の禁止)、No.186(顧客本位の業務運営)。
問102マネー・ローンダリング防止に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔疑わしい取引に該当するかは、取引金額の多寡のみで判断する。
- 2疑わしい取引を検知した場合、行政庁に届け出なければならない。
- 3取引時確認を適切に実施しなければならない。
- 4疑わしい取引の届出を行った旨を、顧客に漏らしてはならない。
- 5リスクベース・アプローチにより、リスクの高い取引には厳格な確認を行う。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】疑わしい取引の判断は、金額だけでなく顧客の属性、取引の態様、取引時確認の結果、他の情報との整合性などを総合的に勘案して行う。取引金額の多寡のみで判断するものではない。
【肢別】
1 × 取引金額の多寡のみで判断するとする点が誤り。本肢が誤り。
2 ○ 疑わしい取引を検知した場合、行政庁に届け出なければならない。
3 ○ 取引時確認を適切に実施しなければならない。
4 ○ 疑わしい取引の届出を行った旨を顧客に漏らしてはならない。
5 ○ リスクベース・アプローチにより、リスクの高い取引には厳格な確認を行う。
【横断整理】マネー・ローンダリング対策は三つの柱で構成される。①取引時確認=顧客が誰であるかを確認する(No.14参照)。②記録の作成・保存=確認記録・取引記録を7年間保存する。③疑わしい取引の届出=異常を検知したら行政庁に届け出る。①が入口、②が追跡可能性の確保、③が検知した異常の外部への通報である。
【発展】届出を行った事実を顧客に知らせてはならない(肢4)。知らせれば、資金を移転させたり証拠を隠滅したりする機会を与えてしまい、届出制度が機能しなくなるからである。この禁止をタイオフィング禁止という。またリスクベース・アプローチとは、すべての取引に一律の確認を行うのではなく、リスクの高低に応じて資源を配分する考え方である。高リスクの類型(なりすましの疑い、特定国等に居住する者との取引など)には厳格な取引時確認を行い、200万円を超える財産の移転を伴う場合には資産・収入の状況まで確認する(No.14参照)。
【根拠】犯罪による収益の移転防止に関する法律4条(取引時確認)、6条・7条(確認記録・取引記録の7年保存)、8条(疑わしい取引の届出)、8条3項(届出を行おうとすることまたは行ったことを顧客等に漏らしてはならない)。判断はリスクベース・アプローチにより総合的に行う。
【相互参照】No.14(取引時確認とハイリスク取引)、No.13(個人情報保護法)、No.116(内部管理態勢)、No.187(苦情処理)。
問103高齢顧客に対する対応に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1高齢顧客の定義や勧誘手続は、社内規則で定める必要がある。
- 2必要に応じて、家族等の同席を求めることが望ましい。
- 3取引の内容を顧客が理解しているか、繰り返し確認することが望ましい。
- ✔高齢顧客であっても、理解力に問題がなければ複雑な仕組み商品を積極的に勧誘すべきである。
- 5認知判断能力の低下がうかがえる場合、より慎重な対応が必要である。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】理解力に問題がないと判断される場合でも、高齢顧客に対する複雑な仕組み商品の勧誘は、投資目的・投資経験・資産状況等に照らして慎重に判断する必要がある。積極的に勧誘すべきという姿勢は適合性の原則に反する。
【肢別】
1 ○ 高齢顧客の定義や勧誘手続は社内規則で定める必要がある。
2 ○ 必要に応じて家族等の同席を求めることが望ましい。
3 ○ 取引の内容を顧客が理解しているか繰り返し確認することが望ましい。
4 × 理解力に問題がなければ積極的に勧誘すべきとする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 認知判断能力の低下がうかがえる場合、より慎重な対応が必要である。
【横断整理】適合性の判断要素は四つある。知識、経験、財産の状況、契約締結の目的(No.3参照)。理解力は「知識」に関わる一要素にすぎず、これを満たしたからといって他の三つが不要になるわけではない。高齢顧客の場合、投資期間が短く、損失が生じても収入で回復する余地が乏しいため、財産の状況と投資目的の面で制約が大きい。
【発展:家族の同席が持つ意味】家族の同席は、理解を助けるだけでなく、後日の紛争を防ぐ機能を持つ。取引の存在を家族が知らないまま相続の場面で発覚し、無理な勧誘があったのではないかという疑いを招く事例は少なくない。認知判断能力の低下が進めば、成年後見制度の利用が必要になる場合もある。本人の意思を尊重しつつ、判断能力の変化に応じて関与する者を広げていくという考え方であり、顧客カードの定期的な更新(No.220参照)と同じく、状況の変化を捉え続けることが求められる。
【根拠】日本証券業協会「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」5条の3および同ガイドライン(高齢顧客への勧誘による販売。社内規則の制定、役席者の事前承認、勧誘日と受注日の分離、家族等の同席等)。金商法40条1号(適合性の原則)。
【相互参照】No.18(高齢顧客への勧誘)、No.3(適合性の原則)、No.219(勧誘開始基準)、No.220(顧客カードの更新)。
問104説明義務と適合性の原則の関係に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔十分な説明さえ行えば、適合性を欠く顧客に勧誘してもよい。
- 2適合性を欠く顧客には、十分な説明を行っても勧誘すべきではない。
- 3適合性の原則は、そもそも勧誘してよいかを判断する規律である。
- 4顧客の属性に応じて、説明の程度や方法を変える必要がある。
- 5説明義務は、勧誘する場合にどこまで説明すべきかを規律する。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】適合性の原則は説明義務の前段階に位置する規律であり、そもそも不適当な顧客には説明の充実によっても勧誘を正当化できない。
【肢別】
1 × 十分な説明さえ行えば適合性を欠く顧客に勧誘してもよいとする点が誤り。本肢が誤り。
2 ○ 適合性を欠く顧客には十分な説明を行っても勧誘すべきではない。
3 ○ 適合性の原則は、そもそも勧誘してよいかを判断する規律である。
4 ○ 顧客の属性に応じて説明の程度や方法を変える必要がある。
5 ○ 説明義務は、勧誘する場合にどこまで説明すべきかを規律する。
【横断整理】肢1と肢2は同じ場面について正反対の結論を述べており、両立しない。この対を見つければ、他の肢を読む前に候補を2つに絞れる。適合性の原則が入口の規律、説明義務が中身の規律であり、入口を通れない顧客にはどれだけ丁寧に説明しても勧誘は許されない。
【発展:説明を尽くしても違法になりうる】判例は、顧客の意向と実情に照らして明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘した場合、適合性の原則から著しく逸脱するものとして不法行為を構成しうるとしている。ここで問題とされているのは説明の量ではなく、そもそもその顧客にその商品を勧めたこと自体である。「リスクは説明した」「顧客も納得していた」という主張は、適合性を欠く勧誘を正当化しない。同意があっても外れない規律という点で、損失補塡の禁止(No.4参照)と共通の性格を持つ。
【根拠】金商法40条1号(適合性の原則)、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律4条(説明義務。顧客の知識・経験・財産の状況・契約締結の目的に照らして理解されるために必要な方法および程度による)。適合性原則違反が不法行為を構成しうるとした事例として最判平成17年7月14日。
【相互参照】No.3(適合性の原則)、No.87(説明義務)、No.11(金融サービス提供法)、No.286(高齢顧客への対応)。
信用取引全30問中 8問を掲載
問105制度信用取引と一般信用取引に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1制度信用取引の対象銘柄は、取引所が選定する。
- 2一般信用取引では品貸料(逆日歩)が発生することはない。
- ✔制度信用取引と一般信用取引の建玉は、途中で相互に振り替えることができる。
- 4一般信用取引の弁済期限は、顧客と証券会社の間で自由に決めることができる。
- 5制度信用取引の弁済期限は、最長6か月である。
解説:【正解】3(誤っているものはどれか)
【結論】制度信用取引と一般信用取引の建玉を、途中で相互に振り替えることはできない。取引開始時にいずれかを選択する。
【肢別】
1 ○ 制度信用取引の対象銘柄は取引所が選定する。
2 ○ 一般信用取引では品貸料(逆日歩)が発生することはない。
3 × 途中で相互に振り替えられるとする点が誤り。本肢が誤り。
4 ○ 一般信用取引の弁済期限は顧客と証券会社の間で自由に決められる。
5 ○ 制度信用取引の弁済期限は最長6か月。
【横断整理】二つの信用取引を対比する。
・制度信用取引:対象銘柄は取引所が選定(制度信用銘柄・貸借銘柄)。弁済期限は最長6か月。金利・貸株料は各社が定めるが、品貸料(逆日歩)が発生しうる。証券金融会社との貸借取引が裏側にある。
・一般信用取引:対象銘柄・弁済期限・金利等をすべて顧客と証券会社の間で自由に定める。証券会社が自ら株券・資金を手当てするため逆日歩は発生しない。無期限信用取引もこの一形態。
【発展:振替えができない理由】制度信用と一般信用は、決済の裏側にある資金・株券の調達経路が根本的に違う。制度信用は証券金融会社を介した貸借取引に乗っているため、取引所と証券金融会社の管理下にある。一般信用は証券会社が自前で調達しており、そもそも貸借取引を利用しない。建玉を途中で移すということは、この調達経路を組み替えることを意味し、実務上も制度上も想定されていない。逆日歩が一般信用で発生しないのも同じ理由による。取引開始時の選択が最後まで効くため、期限の見通しを持って選ぶ必要がある。
【根拠】東京証券取引所「信用取引及び貸借取引規程」(制度信用銘柄・貸借銘柄の選定、弁済期限6か月)。一般信用取引は顧客と金融商品取引業者の間の合意による。品貸料(逆日歩)は貸借取引において株不足が生じた場合に発生する。
【相互参照】No.193(貸借取引)、No.291(品貸料)、No.394(無期限信用取引)、No.491(信用取引の期日到来)。
問106委託保証金に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1委託保証金率は約定代金の30%以上である。
- 2上場株式を代用有価証券とする場合の代用掛目は、原則として時価の80%である。
- 3委託保証金は、有価証券をもって代用することができる。
- ✔委託保証金は、約定日の当日中に差し入れなければならない。
- 5最低委託保証金額は30万円である。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】委託保証金は、約定日から起算して3営業日目(T+2)の正午までに差し入れる必要がある。約定日の当日中ではない。
【肢別】
1 ○ 委託保証金率は約定代金の30%以上。
2 ○ 上場株式を代用有価証券とする場合の代用掛目は原則として時価の80%。
3 ○ 委託保証金は有価証券をもって代用できる。
4 × 約定日当日中とする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 最低委託保証金額は30万円。
【横断整理】委託保証金に関する数字を一括で押さえる。委託保証金率30%以上、最低委託保証金額30万円、代用掛目は上場株式で時価の80%(国債は95%等、有価証券の種類ごとに異なる)、差入期限は約定日から起算して3営業日目の正午まで、最低維持率20%。必要額は「約定代金×30%」と「30万円」のいずれか高いほうになる(No.91参照)。
【発展:代用掛目が二重のリスクを生む】保証金を現金ではなく株式で差し入れると、相場が下落したときに二つの損失が同時に発生する。建玉の評価損が膨らむ一方で、代用有価証券の時価も下がり保証金の現在額そのものが目減りする。分子が減り分母が動かないので、維持率は現金で差し入れた場合より急速に低下する。代用掛目が80%に抑えられているのは、この価格変動リスクをあらかじめ割り引いておくためである。株式で保証金を差し入れることは、実質的にレバレッジを二重にかけていることになる。差入期限がT+2の正午とされているのは、株式の受渡し(No.24参照)と歩調を合わせているためである。
【根拠】金商法161条の2および関係府令(信用取引の保証金)、東京証券取引所「信用取引及び貸借取引規程」。委託保証金率30%以上、最低委託保証金額30万円、上場株式の代用掛目は原則80%、差入期限は約定日から起算して3営業日目の正午まで。
【相互参照】No.91(必要委託保証金額の計算)、No.92(追証)、No.189(委託保証金の引出し)、No.489(委託保証金の差入れ)、No.24(T+2)。
問107約定代金300万円の信用取引を行う場合に必要な最低限の委託保証金額として正しいものはどれか(委託保証金率30%とする)。
- 130万円
- 260万円
- ✔90万円
- 4100万円
- 5150万円
解説:【正解】3(正しいものはどれか)
【方向の確認】委託保証金率は30%なのだから、必要額は約定代金300万円のおよそ3割になるはずである。300万円の3割は90万円。これを上回る肢4(100万円)と肢5(150万円)は、率が3割を超えることになり矛盾する。計算前に候補は3つに絞れる。
【結論】必要委託保証金額=約定代金×委託保証金率=300万円×30%=90万円。最低委託保証金額30万円を上回っているので、90万円がそのまま必要額となる。よって肢3。
【肢別】
1 × 30万円は最低委託保証金額そのもの。率で計算した額と比較せず、下限の数字をそのまま答えた値。本問では率で計算した90万円のほうが高いので、こちらは採用されない。
2 × 60万円=300万円×20%。20%は追証が発生する最低維持率であって、委託保証金率ではない。二つの率を取り違えた値。
3 ○ 90万円。
4 × 100万円=300万円÷3。委託保証金率30%を「3分の1」と混同した場合の値。30%と33.3%は近いが別の数字である。
5 × 150万円=300万円×50%。率を50%と取り違えた値。約定代金の半額を答えてしまう形。
【検算】割り戻す。90万円÷300万円=0.3で、委託保証金率30%に一致する。また90万円>30万円なので、最低額の縛りにはかからないことも確認できる。
【単位の注意】答えは金額(万円)であって率ではない。また問われているのは「最低限必要な額」なので、率で計算した額と最低委託保証金額の高いほうを採る、という二段階の判断が要る。
【発展:二つの下限が別々に働く】信用取引の保証金には、率による下限(約定代金×30%)と、額による下限(30万円)の二つがある。両方を同時に満たす必要があるので、必要額は常に「いずれか高いほう」になる。約定代金が100万円未満だと率で計算した額が30万円を下回るため、額の下限が効いてくる(No.389参照)。本問のように約定代金が大きい場合は率の下限が効く。どちらが効いているかを意識せずに片方だけで答えると、必ずどちらかの問題で誤る。
【根拠】金商法161条の2および関係府令。東京証券取引所「信用取引及び貸借取引規程」。委託保証金率は約定代金の30%以上、最低委託保証金額は30万円。必要額は両者のいずれか高いほう。最低維持率は20%。
【相互参照】No.389(最低委託保証金額が効く場合)、No.90(委託保証金の要件)、No.92(追証と維持率20%)、No.190(維持率の計算)。
問108追証(追加保証金)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- ✔委託保証金維持率が20%を下回った場合に発生する。
- 2委託保証金維持率が10%を下回った場合に発生する。
- 3委託保証金維持率が30%を下回った場合に発生する。
- 4追証は現金でのみ差し入れることができる。
- 5追証が発生しても、差し入れなければ建玉が強制決済されることはない。
解説:【正解】1(正しいものはどれか)
【結論】委託保証金維持率(受入保証金の現在額÷建玉金額)が最低維持率20%を下回った場合に、追証(追加保証金)が発生する。
【肢別】
1 ○ 20%を下回った場合に発生する。本肢が正しい。
2 × 10%ではない。
3 × 30%は取引開始時に必要な委託保証金率であって、追証の判定基準ではない。二つの率の混同を突く肢。
4 × 追証は現金のほか代用有価証券でも差し入れることができる。現金限定ではない。
5 × 期日までに差し入れなければ、建玉は強制決済(反対売買)される。
【横断整理】信用取引で登場する二つの率を切り分ける。委託保証金率30%=新規に建てるときに必要な保証金の水準。最低維持率20%=建てた後、維持しなければならない水準。前者は入口の基準、後者は継続の基準である。30%で建てた後、評価損によって20%を割り込むと追証が発生する。肢3はこの二つを取り違えさせるために置かれている。
【発展:維持率の分母は動かない】維持率=受入保証金の現在額÷建玉金額であり、分母の建玉金額は建てたときの約定代金で固定される。株価が下がっても分母は変わらず、評価損の分だけ分子が減っていく。だから維持率の低下は分子だけで起きる。追証を解消する方法は二つあり、①不足額を追加で差し入れて分子を増やす、②建玉の一部を決済して分母を減らす。どちらでも維持率は回復するが、②は損失を確定させることになる。なお代用有価証券で保証金を差し入れている場合は、株価下落時に分子も同時に目減りするため、維持率の低下が加速する(No.90参照)。
【根拠】東京証券取引所「信用取引及び貸借取引規程」および各社の受託契約準則。委託保証金維持率=受入保証金の現在額÷建玉金額。最低維持率20%を下回った場合に追加保証金の差入れが必要となり、期日までに差し入れないときは建玉が強制決済される。
【相互参照】No.190(維持率の計算)、No.390(追証の要否の判定)、No.91(委託保証金率30%)、No.90(代用有価証券)、No.489(差入れ)。
問109信用取引の決済方法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔制度信用取引の買建玉は、弁済期限を経過しても決済する必要はない。
- 2現引きとは、買建玉について代金全額を支払って株式を引き取ることである。
- 3売建玉は、買戻し(反対売買)または現渡しにより決済する。
- 4買建玉は、転売(反対売買)または現引きにより決済する。
- 5現渡しとは、売建玉について同一銘柄の株式を渡して決済することである。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】制度信用取引の弁済期限(最長6か月)が到来した建玉は必ず決済しなければならない。期限までに決済しない場合は証券会社により強制決済される。
【肢別】
1 × 弁済期限を経過しても決済不要とする点が誤り。本肢が誤り。
2 ○ 現引きは買建玉について代金全額を支払って株式を引き取ること。
3 ○ 売建玉は買戻し(反対売買)または現渡しにより決済する。
4 ○ 買建玉は転売(反対売買)または現引きにより決済する。
5 ○ 現渡しは売建玉について同一銘柄の株式を渡して決済すること。
【横断整理】決済方法は建玉の方向ごとに二つずつ、計四つある。
・買建玉:転売(反対売買で売る。差金決済)/現引き(代金全額を払って現物を引き取る)
・売建玉:買戻し(反対売買で買う。差金決済)/現渡し(同一銘柄の現物株を渡す)
反対売買は差額だけをやりとりするので少額の資金で済み、現引き・現渡しは全額の資金または現物株が必要になる。
【発展】現引きは、株価が下がって損失が出ているが長期保有に切り替えたい場合や、逆日歩の負担を避けたい場合に使われる。代金全額が必要になる代わり、信用取引の金利負担と期限から解放される。現渡しは、同一銘柄の現物を保有している投資家が、売建てと組み合わせて価格変動リスクを固定する場面で使われる。いわゆるつなぎ売りで、現物を売らずに下落リスクを消し、後で現渡しによって決済する。いずれも差額だけで済ませない代わりに別のコストや制約から抜ける選択である。なお現引きを行うと、拘束されていた委託保証金は返還される(No.489参照)。
【根拠】東京証券取引所「信用取引及び貸借取引規程」(制度信用取引の弁済期限は最長6か月)。決済方法は反対売買(転売・買戻し)と現物決済(現引き・現渡し)。
【相互参照】No.293(現引きに必要な資金)、No.491(期日到来)、No.89(制度信用と一般信用)、No.394(無期限信用取引)。
問110信用取引のコストに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1売建てでは、貸株料を支払う。
- 2買建て中に配当落ちがあった場合、買方は配当落調整額を受け取る。
- 3買建てでは、証券会社に対して金利(買方金利)を支払う。
- 4制度信用取引において株不足が生じた場合、売方は品貸料(逆日歩)を支払う。
- ✔売建て中に配当落ちがあった場合、売方は配当落調整額を受け取る。
解説:【正解】5(誤っているものはどれか)
【結論】売建て中に配当落ちがあった場合、売方は配当落調整額を「支払う」側である。株式を借りて売っているため、本来の株主に相当する分を負担する立場になる。
【肢別】
1 ○ 売建てでは貸株料を支払う。
2 ○ 買建て中に配当落ちがあれば、買方は配当落調整額を受け取る。
3 ○ 買建てでは証券会社に対して金利(買方金利)を支払う。
4 ○ 制度信用取引で株不足が生じた場合、売方は品貸料(逆日歩)を支払う。
5 × 売方が配当落調整額を受け取るとする点が誤り。本肢が誤り。
【横断整理】買方と売方のコストを一枚の表で対比する。
・買方:買方金利を支払う。配当落調整額を受け取る。逆日歩を受け取る。
・売方:貸株料を支払う。配当落調整額を支払う。逆日歩を支払う。
配当落調整額と逆日歩は、いずれも売方から買方へ流れる。買方が受け取り、売方が支払うという向きが揃っている点を押さえれば、個別に暗記する必要はない。金利と貸株料だけが、それぞれ自分の側から証券会社へ出ていくコストである。
【発展:なぜ売方が配当を負担するのか】信用売りは、証券会社から株を借りて市場で売る取引である。借りた株の本来の持ち主は、その間も配当を受け取る権利を持っている。しかし株は既に売られて他人の手に渡っているので、配当は買った人に支払われてしまう。そこで貸し手が受け取り損ねた分を、借り手である売方が補填する。これが配当落調整額の実質である。買方が受け取るのは、信用買いでは現物株を保有していないのに配当落ちで株価が下がる不利益を被るため、その分を埋め合わせる趣旨である。
【根拠】東京証券取引所「信用取引及び貸借取引規程」。買方金利・貸株料は証券会社と顧客の間のコスト。配当落調整額および品貸料(逆日歩)は売方が支払い買方が受け取る。
【相互参照】No.290(買方金利)、No.291(品貸料)、No.191(信用取引における権利処理)、No.393(信用取引に係る課税)。
問111委託保証金の引出しに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1建玉に評価益が生じた場合、受入保証金が増加する。
- 2評価益は、原則としてそのまま新規建玉の委託保証金に充当できる。
- 3委託保証金率30%を維持したうえで余剰が生じれば、引き出すことができる。
- ✔評価益は、その全額をいつでも現金で引き出すことができる。
- 5評価損が生じた場合、受入保証金は減少する。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】建玉の評価益(含み益)は決済して初めて現金化されるものであり、未決済のまま全額をいつでも現金で引き出すことはできない。
【肢別】
1 ○ 建玉に評価益が生じた場合、受入保証金が増加する。
2 ○ 評価益は原則としてそのまま新規建玉の委託保証金に充当できる。
3 ○ 委託保証金率30%を維持したうえで余剰が生じれば引き出すことができる。
4 × 評価益の全額をいつでも現金で引き出せるとする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 評価損が生じた場合、受入保証金は減少する。
【横断整理】評価益の扱いを三段階で区別する。①受入保証金の現在額には算入される(肢1)。②新規建玉の保証金に充当できる、すなわち建余力は増える(肢2)。③しかし現金として引き出せるのは、決済して実現させた後、または現金部分に余剰が生じている場合に限られる(肢3・肢4)。「余力が増える」ことと「現金が引き出せる」ことは別である。
【発展】含み益は相場が動けば消える。未決済の評価益を現金で払い出せば、相場が反転したときに保証金が不足し証券会社が回収できないリスクを負う。だから充当(内部での振替)までは認めるが、外部への流出は認めない。この非対称な扱いは、評価損が生じた場合に受入保証金が即座に減る(肢5)ことと表裏をなしている。損は直ちに反映し、益は実現するまで払い出さないという保守的な扱いであり、維持率の計算において分子が評価損益で動く(No.190参照)仕組みと整合している。現引きを行えば建玉は現物株になり、拘束されていた保証金は返還される(No.93参照)。
【根拠】東京証券取引所「信用取引及び貸借取引規程」および各社の受託契約準則。受入保証金の現在額は差入保証金に建玉の評価損益を加減して算出され、評価益は新規建玉の委託保証金に充当できるが、未決済のまま現金として引き出すことはできない。委託保証金率30%を維持したうえでの余剰は引出しが可能。
【相互参照】No.190(委託保証金維持率の計算)、No.92(追証)、No.90(委託保証金の要件)、No.93(決済方法)、No.489(委託保証金の差入れ)。
問112現金150万円を委託保証金として差し入れ、約定代金450万円の信用買建玉を保有している。その後、株価が下落し建玉の評価損が60万円となった場合の委託保証金維持率として正しいものはどれか。
- 113.3%
- ✔20.0%
- 326.7%
- 430.0%
- 533.3%
解説:【正解】2(正しいものはどれか)
【方向の確認】評価損が出ているのだから、受入保証金は差し入れた150万円より減る。他方、分母となる建玉金額450万円は建てたときの約定代金で固定されており動かない。したがって維持率は、損が出る前の150÷450=33.3%より必ず低くなる。33.3%の肢5はこの一点で消える。また評価損60万円は差入保証金150万円の4割にあたるので、維持率は33.3%の6割程度、すなわち20%前後と当たりがつく。
【結論】受入保証金の現在額=差入保証金150万円−評価損60万円=90万円。委託保証金維持率=90万円÷建玉金額450万円×100=20.0%。よって肢2。
【肢別】
1 × 13.3%=60万円÷450万円×100。分子に受入保証金ではなく評価損そのものを置いた値。損の割合を求めてしまっている。
2 ○ 20.0%。
3 × 26.7%は120万円÷450万円に相当する値で、特定の計算式には対応しない撹乱値。正解値と33.3%の間に機械的に配置されている。
4 × 30.0%は委託保証金率30%をそのまま答えた値。新規に建てるときに必要な率(入口の基準)と、建てた後に維持すべき率(継続の基準)を取り違えている。
5 × 33.3%=150万円÷450万円×100。評価損を差し引き忘れ、差入保証金をそのまま分子に置いた値。損が出る前の維持率にあたる。
【検算】掛け戻す。20.0%×建玉金額450万円=90万円で、受入保証金の現在額に一致する。さらに150万円−90万円=60万円が評価損と一致することも確認できる。
【単位の注意】答えは%。分母は建玉金額450万円であって、差入保証金150万円ではない。分母を150万円にすると90÷150=60%となり、まったく別の指標になってしまう。
【発展:ちょうど20.0%のときに追証は発生するか】追証が発生するのは維持率が最低維持率20%を「下回った」場合である(No.92参照)。本問は20.0%ちょうどなので、この時点では追証は発生しない。ここからさらに評価損が拡大し、20%を割り込んだ時点で追証となる。境界値の問題では「以上・以下」「超・未満」のどちらで規定されているかが結論を分けるので、条文や規則の文言に即して確認する習慣をつけたい。なお代用有価証券で保証金を差し入れている場合は、株価下落時に分子が二重に目減りする(No.90参照)ため、維持率の低下はさらに速くなる。
【根拠】委託保証金維持率=受入保証金の現在額÷建玉金額×100。受入保証金の現在額=差入保証金±建玉の評価損益。最低維持率20%を下回った場合に追加保証金の差入れが必要となる(下回った場合であり、20%ちょうどでは発生しない)。委託保証金率30%は新規建玉時の基準。
【相互参照】No.92(追証の発生要件)、No.390(追証の要否の判定)、No.91(委託保証金額の計算)、No.90(代用掛目)、No.189(評価益の扱い)。
デリバティブ取引全30問中 8問を掲載
問113先物取引に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1値洗い(毎日の値動きに応じた損益の受渡し)が行われる。
- 2将来の一定期日に、現時点で取り決めた価格で売買することを約束する取引である。
- 3取引所において取引条件が標準化されている。
- ✔先物取引は、必ず現物の受渡しにより決済しなければならない。
- 5証拠金を差し入れることにより、少額の資金で大きな取引ができる(レバレッジ効果)。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】先物取引は必ず現物の受渡しで決済しなければならないわけではない。株価指数先物などは差金決済(反対売買またはSQ値による最終決済)で決済される。
【肢別】
1 ○ 値洗い(毎日の値動きに応じた損益の受渡し)が行われる。
2 ○ 将来の一定期日に、現時点で取り決めた価格で売買することを約束する取引。
3 ○ 取引所において取引条件が標準化されている。
4 × 必ず現物受渡しとする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 証拠金を差し入れることで少額の資金で大きな取引ができる(レバレッジ効果)。
【横断整理】先物取引の三つの特徴。①取引所取引で条件が標準化されている(対象、取引単位、限月、決済方法が定型化)。②証拠金と値洗いによって信用リスクを管理する。③多くは差金決済で終わる。株価指数のように現物が存在しない対象では、そもそも受渡しが物理的に不可能なので差金決済しか選択肢がない。長期国債先物のように受渡適格銘柄が定められ現物受渡しが可能なものもあるが、実際には反対売買で手仕舞われるのが大半である。
【発展】先物では毎日の清算値段に基づいて損益が計算され、証拠金に反映される。含み損を持ち越させず日々現金で精算するため、満期時に相手方が支払えない事態が起きる前に資金不足が表面化する。証拠金が不足すれば追加差入れが求められ、応じなければ建玉は強制決済される。取引所と清算機関が介在して決済履行を保証できるのは、この値洗いと証拠金の組合せがあるからで、相対取引であるスワップや先渡取引(フォワード)との決定的な違いがここにある(No.100参照)。
【根拠】金商法2条21項(市場デリバティブ取引)。先物取引は取引所において取引条件が標準化され、証拠金の差入れと値洗い(毎日の建玉評価と損益の授受)が行われる。決済は反対売買による差金決済または最終決済(SQ値)による。
【相互参照】No.96(日経225先物)、No.195(TOPIX先物)、No.295(長期国債先物)、No.200(証拠金制度)、No.100(スワップ取引)。
問114日経225先物取引に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1最終決済は特別清算数値(SQ値)により行われる。
- ✔限月は3月・6月・9月・12月のみである。
- 3SQ算出日は、原則として各限月の第2金曜日である。
- 4日経225mini(ミニ)は日経平均株価×100倍である。
- 5取引単位(ラージ)は日経平均株価×1,000倍である。
解説:【正解】2(誤っているものはどれか)
【結論】日経225先物の限月は3月・6月・9月・12月の四半期限月のみではない。日経225mini(ミニ)には四半期以外の月の限月も設定されている。
【肢別】
1 ○ 最終決済は特別清算数値(SQ値)により行われる。
2 × 限月が3・6・9・12月のみとする点が誤り。本肢が誤り。
3 ○ SQ算出日は原則として各限月の第2金曜日。
4 ○ 日経225miniは日経平均株価×100倍。
5 ○ 取引単位(ラージ)は日経平均株価×1,000倍。
【横断整理】日経225先物のサイズを三段階で押さえる。ラージ=日経平均株価×1,000倍。ミニ=×100倍(ラージの10分の1)。マイクロ=×10倍(ミニのさらに10分の1)。同じ指数を対象としながら取引単位だけを変え、投資家の資金規模に応じて選べるようにしている。ミニやマイクロは、ラージの建玉を細かく調整するヘッジ手段としても使われる。
【発展:SQとメジャーSQ】SQ(特別清算数値)は、限月最終日の翌日、すなわちSQ算出日の各構成銘柄の始値に基づいて算出される。この値で最終決済が行われる。3月・6月・9月・12月は先物とオプションのSQが重なるためメジャーSQと呼ばれ、決済に伴う売買が集中して現物市場の出来高が膨らみやすい。それ以外の月はオプションのSQのみなのでマイナーSQという。SQ日前後に相場が荒れやすいと言われるのは、ポジションの手仕舞いとロールオーバー(期近の建玉を決済して期先に乗り換えること。No.495参照)が同時期に集中するためである。
【根拠】大阪取引所「業務規程」(日経225先物、日経225mini、日経225マイクロ先物の取引単位および限月、SQ算出日は各限月の第2金曜日)。SQ値は算出日の構成銘柄の始値に基づいて算出される。
【相互参照】No.95(先物取引の基本)、No.195(TOPIX先物)、No.395(日経225オプション)、No.495(ロールオーバー)。
問115オプション取引に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1オプションの買い手は、権利行使するかどうかを選択できる。
- 2コール・オプションは、対象資産を買う権利である。
- ✔オプションの買い手の最大損失は無限大である。
- 4オプションの売り手は、買い手が権利行使した場合に応じる義務がある。
- 5プット・オプションは、対象資産を売る権利である。
解説:【正解】3(誤っているものはどれか)
【結論】オプションの買い手の最大損失は、支払ったプレミアム(オプション料)に限定される。無限大ではない。
【肢別】
1 ○ 買い手は権利行使するかどうかを選択できる。
2 ○ コール・オプションは対象資産を買う権利。
3 × 買い手の最大損失が無限大とする点が誤り。本肢が誤り。
4 ○ 売り手は買い手が権利行使した場合に応じる義務がある。
5 ○ プット・オプションは対象資産を売る権利。
【横断整理】買い手と売り手の損益は非対称である。
・買い手:損失はプレミアムに限定、利益は(コールなら)無限大になりうる。権利であって義務ではないので、不利なら行使しなければよい。
・売り手:利益はプレミアムに限定、損失は(コールの売りなら)無限大になりうる。義務を負う側なので、行使されれば応じるしかない。
この非対称性が、証拠金が売り手にのみ必要とされる理由である。買い手はプレミアムを払い切った時点でそれ以上の債務を負わないが、売り手は将来の債務を負い続ける。
【発展:四つの基本ポジション】コールの買い(原資産上昇で利益、損失はプレミアムまで)、コールの売り(上昇で損失無限大、利益はプレミアムまで)、プットの買い(下落で利益、損失はプレミアムまで)、プットの売り(下落で損失拡大、利益はプレミアムまで)。プットの売りの損失は原資産価格がゼロになるまでなので厳密には有限だが、実務上は大きな損失になりうる。この四つの損益図を頭に描けるようにしておくと、スプレッド戦略(No.397参照)のような組合せも、四つの足し算として理解できるようになる。
【根拠】金商法2条21項3号・22項3号(オプション取引)。オプションの買い手は権利を有し義務を負わないため最大損失は支払プレミアムに限定される。売り手は義務を負うため証拠金の差入れが必要となる。
【相互参照】No.98(プレミアム)、No.99(グリークス)、No.197(マネーの状態)、No.198(満期時の損益計算)、No.397(スプレッド戦略)。
問116オプションのプレミアムに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1アウト・オブ・ザ・マネーのオプションの本質的価値はゼロである。
- 2満期までの残存期間が長いほど、時間的価値は大きい。
- 3プレミアムは、本質的価値と時間的価値の合計である。
- ✔ボラティリティが上昇すると、コール・オプションのプレミアムは低下する。
- 5本質的価値は、直ちに権利行使した場合に得られる利益に相当する。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】ボラティリティ(予想変動率)が上昇すると、コール・プットいずれのプレミアムも上昇する。低下するとする本肢が誤りである。
【肢別】
1 ○ アウト・オブ・ザ・マネーのオプションの本質的価値はゼロ。
2 ○ 残存期間が長いほど時間的価値は大きい。
3 ○ プレミアム=本質的価値+時間的価値。
4 × ボラティリティ上昇でコールのプレミアムが低下するとする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 本質的価値は直ちに権利行使した場合に得られる利益に相当する。
【横断整理】プレミアムを動かす五つの要因と向き。①原資産価格の上昇→コール上昇、プット下落。②権利行使価格が高い→コール下落、プット上昇。③残存期間が長い→コール・プットとも上昇。④ボラティリティが高い→コール・プットとも上昇。⑤金利の上昇→コール上昇、プット下落。③と④だけがコール・プット同方向に効く点が特徴である。
【発展:なぜボラティリティは両方を押し上げるのか】オプションの買い手は損失がプレミアムに限定される一方、利益には上限がない。この非対称性があるため、原資産が大きく動く可能性が高まること自体が買い手にとって有利に働く。上に大きく振れればコールの利益が膨らみ、下に大きく振れてもコールの損失はプレミアム止まりだからである。プットも同じ理屈で、下方向の振れ幅が広がるほど価値が増す。損失が限定されているからこそ「振れやすさ」に値段が付く。なお時間的価値は残存期間が短くなるにつれて減少し、満期に近づくほど減り方が加速する。この時間経過による目減りを測る指標がセータである(No.99参照)。
【根拠】プレミアム=本質的価値+時間的価値。本質的価値はイン・ザ・マネーの場合のみ正の値をとり、アウト・オブ・ザ・マネーではゼロ。プレミアムの変動要因は原資産価格、権利行使価格、残存期間、ボラティリティ、金利。
【相互参照】No.97(オプションの基本)、No.99(グリークス)、No.197(マネーの状態)、No.496(権利行使価格)。
問117オプションの感応度指標(グリークス)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔コール・オプションのデルタは、−1から0の範囲の値をとる。
- 2セータは、時間の経過に対するプレミアムの変化を示す。
- 3ベガは、ボラティリティの変化に対するプレミアムの変化を示す。
- 4デルタは、原資産価格の変化に対するプレミアムの変化率を示す。
- 5ガンマは、原資産価格の変化に対するデルタの変化率を示す。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】コール・オプションのデルタは0から+1の範囲の値をとる。−1から0の範囲をとるのはプット・オプションのデルタである。
【肢別】
1 × コールのデルタを−1から0とする点が誤り。本肢が誤り。
2 ○ セータは時間の経過に対するプレミアムの変化を示す。
3 ○ ベガはボラティリティの変化に対するプレミアムの変化を示す。
4 ○ デルタは原資産価格の変化に対するプレミアムの変化率を示す。
5 ○ ガンマは原資産価格の変化に対するデルタの変化率を示す。
【横断整理】主要なグリークスを、何に対する感応度かで並べる。デルタ=原資産価格に対するプレミアムの感応度。ガンマ=原資産価格に対するデルタの感応度(デルタの変化しやすさ)。セータ=時間経過に対する感応度。ベガ=ボラティリティに対する感応度。ロー=金利に対する感応度。デルタとガンマだけが二段構えの関係にあり、ガンマはデルタの微分にあたる。
【発展】原資産が上がるとコールの価値は上がるのでデルタは正、プットの価値は下がるので負になる。アット・ザ・マネー付近ではコールのデルタはおおむね0.5で、原資産が1円動けばプレミアムが約0.5円動くことを意味する。この性質を使って、オプションの建玉と原資産を組み合わせ、価格変動の影響を打ち消すのがデルタ・ヘッジである。ただしデルタ自体が原資産価格とともに変化する(それを測るのがガンマ)ため、一度組んだヘッジは放置できず、継続的な調整が必要になる。セータが通常マイナス、すなわち買い手には時間の経過が不利に働くこと(No.98参照)も併せて押さえたい。
【根拠】オプションの感応度指標(グリークス)。デルタ=∂プレミアム/∂原資産価格(コールは0〜+1、プットは−1〜0)。ガンマ=∂デルタ/∂原資産価格。セータ=時間経過に対する感応度。ベガ=ボラティリティに対する感応度。ロー=金利に対する感応度。
【相互参照】No.98(プレミアムの構成と変動要因)、No.97(オプションの基本)、No.197(マネーの状態)、No.397(スプレッド戦略)。
問118スワップ取引に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1スワップ取引は、主に店頭(相対)で行われる。
- 2金利スワップは、同一通貨間で異なる種類の金利を交換する取引である。
- 3通貨スワップは、異なる通貨のキャッシュ・フローを交換する取引である。
- ✔金利スワップでは、契約時に必ず元本を交換し、満期時に返還する。
- 5金利スワップでは、通常、元本の交換は行われない(想定元本のみ)。
解説:【正解】4(誤っているものはどれか)
【結論】金利スワップでは元本の交換は行われず、想定元本に基づいて計算された金利のみを交換する。元本交換を伴うのは通貨スワップである。
【肢別】
1 ○ スワップ取引は主に店頭(相対)で行われる。
2 ○ 金利スワップは同一通貨間で異なる種類の金利(固定と変動など)を交換する取引。
3 ○ 通貨スワップは異なる通貨のキャッシュ・フローを交換する取引。
4 × 金利スワップで必ず元本を交換するとする点が誤り。本肢が誤り。
5 ○ 金利スワップでは通常、元本の交換は行われない(想定元本のみ)。
【横断整理】肢4と肢5は同じ金利スワップの元本交換について、する・しないと正反対のことを述べている。両立しない以上どちらかは必ず誤りであり、誤っているものを1つ選ぶ本問では、正解がこの2肢のどちらかにある可能性が高い。この対を見つければ、他の肢を検討する前に候補を絞れる。
【発展】金利スワップは同一通貨なので、元本を交換しても同額の同じ通貨を渡し合うだけで意味がない。だから金額の計算基礎としての「想定元本」だけを取り決め、差額の金利を交換する。通貨スワップは異なる通貨なので、元本そのものを交換しなければ目的を果たせない。契約時に円とドルを交換し、期中は各通貨の金利を交換し、満期時に契約時のレートで元本を戻す。為替リスクを固定したいというニーズに応える構造である。なお金利のみ交換し元本交換のない異通貨間取引はクーポン・スワップという。相対取引ゆえ証拠金・値洗いの仕組みがなく、相手方の信用リスクを直接負う点が先物との違いである(No.95参照)。
【根拠】金商法2条21項4号・22項5号(スワップ取引)。金利スワップは同一通貨間で異なる金利を交換し、元本の交換は行わず想定元本に基づいて計算する。通貨スワップは契約時と満期時に元本を交換するのが一般的。
【相互参照】No.299(金利関連デリバティブ)、No.498(通貨関連デリバティブ)、No.95(先物取引との対比)、No.300(デリバティブ取引のリスク管理)。
問119TOPIX先物取引に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔TOPIX先物は、現物株式の受渡しにより決済される。
- 2取引単位は、TOPIX×10,000倍である。
- 3最終決済は特別清算数値(SQ)により行われる。
- 4限月は3月・6月・9月・12月である。
- 5ミニTOPIX先物の取引単位は、TOPIX×1,000倍である。
解説:【正解】1(誤っているものはどれか)
【結論】TOPIX先物は株価指数を対象とするため現物の受渡しは不可能であり、差金決済のみである。
【肢別】
1 × 現物株式の受渡しにより決済されるとする点が誤り。本肢が誤り。
2 ○ 取引単位はTOPIX×10,000倍である。
3 ○ 最終決済は特別清算数値(SQ)により行われる。
4 ○ 限月は3月・6月・9月・12月である。
5 ○ ミニTOPIX先物の取引単位はTOPIX×1,000倍である。
【横断整理】株価指数先物の決済方法は二つに限られる。①転売・買戻し(反対売買)による差金決済=満期を待たずに手仕舞う。②最終決済=SQ値による差金決済。いずれも差額の授受で終わり、現物の受渡しは行われない。指数という抽象的な数値を対象としている以上、受け渡すべき現物が存在しないからである。長期国債先物のように受渡適格銘柄が定められ現物受渡しが可能な先物もあるが、株価指数先物では選択の余地がない。
【発展】TOPIX先物は取引単位がTOPIX×10,000倍、ミニTOPIX先物は×1,000倍。日経225先物はラージが日経平均×1,000倍、ミニが×100倍、マイクロが×10倍である(No.96参照)。倍率が異なるのは指数の水準が違うためで、同程度の想定元本になるよう調整されている。またTOPIXは時価総額加重型、日経平均は株価平均型(No.129参照)なので、同じ日本株の指数でも値動きの性質が異なる。TOPIX先物は保有株式ポートフォリオ全体のヘッジに、日経225先物は値がさ株の影響を取り込みたい場合に、といった使い分けがなされる。
【根拠】大阪取引所「業務規程」(TOPIX先物の取引単位はTOPIX×10,000倍、ミニTOPIX先物は×1,000倍、限月は3月・6月・9月・12月)。株価指数先物は現物の受渡しができないため、反対売買による差金決済または最終決済(SQ値による差金決済)に限られる。
【相互参照】No.95(先物取引の基本)、No.96(日経225先物)、No.129(TOPIXと日経平均)、No.196(先物の利用方法)、No.495(ロールオーバー)。
問120先物取引の利用方法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1ヘッジ取引は、保有資産の価格変動リスクを回避する目的で行われる。
- 2裁定取引は、現物と先物の価格差から利益を得ようとする取引である。
- ✔先物価格が理論価格より割高な場合、先物を買い現物を売る裁定取引が行われる。
- 4スペキュレーション取引は、価格変動を予測して利益を狙う取引である。
- 5現物株を保有する投資家が先物を売り建てることを、売りヘッジという。
解説:【正解】3(誤っているものはどれか)
【結論】先物価格が理論価格より割高な場合は、割高な先物を売り、割安な現物を買う裁定取引が行われる。先物を買い現物を売るのは逆である。
【肢別】
1 ○ ヘッジ取引は保有資産の価格変動リスクを回避する目的で行われる。
2 ○ 裁定取引は現物と先物の価格差から利益を得ようとする取引である。
3 × 先物が割高なら先物を買い現物を売るとする点が誤り。本肢が誤り。
4 ○ スペキュレーション取引は価格変動を予測して利益を狙う取引である。
5 ○ 現物株を保有する投資家が先物を売り建てることを売りヘッジという。
【横断整理】裁定取引の向きは「高いほうを売り、安いほうを買う」で決まる。先物が割高=先物を売り現物を買う(買い裁定。裁定買い残が積み上がる)。割安=先物を買い現物を売る(売り裁定)。満期には両者が収束するので、価格差が縮まった分が利益になる。暗記せず、割高を手放し割安を持つ原則から導けばよい。
【発展】①ヘッジ=保有資産の価格変動リスクを打ち消す。現物を持っている投資家が先物を売り建てるのが売りヘッジ、将来買う予定の資産の値上がりに備えて先物を買い建てるのが買いヘッジ。②裁定=現物と先物の価格差から、価格変動リスクをほぼ負わずに利益を得る。③スペキュレーション=価格変動を予測して利益を狙う。市場にこの3者が揃っていることに意味がある。ヘッジャーが移したいリスクを、スペキュレーターが引き受け、裁定者が現物と先物の価格を理論値に引き寄せる。ETFの市場価格と基準価額の乖離を指定参加者の裁定が縮める(No.50参照)のと同じ構造である。
【根拠】先物の理論価格=現物価格×(1+短期金利×残存期間)−配当等。先物が理論価格より割高な場合は先物売り・現物買い(買い裁定)、割安な場合は先物買い・現物売り(売り裁定)が行われる。ヘッジ取引、裁定取引、スペキュレーション取引が先物の主な利用目的。
【相互参照】No.95(先物取引の基本)、No.195(TOPIX先物)、No.50(ETFの裁定取引)、No.199(オプションを用いた戦略)。