法令・諸規則全115問中 8問を掲載
問1金融商品取引法の目的に関する記述として、正しいものはどれか。
- 1上場会社の株価を一定水準に安定させることを目的とする。
- 2投資者が被った損失をすべて補塡することにより、投資者を保護することを目的とする。
- ✔有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする。
- 4金融商品取引所の独占的な地位を法律上保護することを目的とする。
- 5金融商品取引業者の収益機会を最大化することを目的とする。
解説:【正解】3
【結論】金商法1条の目的規定。最終的な目的は「国民経済の健全な発展」と「投資者の保護」の2つ。
【肢別】
1 × 株価を一定水準に安定させることは目的ではない。むしろ人為的な価格形成は相場操縦として禁止される(159条)。金商法が目指すのは「価格の安定」ではなく【公正な価格形成】。
2 × 投資者保護=損失の補塡ではない。損失補塡はむしろ39条で禁止されている。ここでいう投資者保護とは、判断に必要な情報が適時適切に開示され、公正な取引が確保されること。
3 ○
4 × 取引所の独占的地位の保護は目的でない。PTS等との競争が制度上認められている。
5 × 業者の収益のための法律ではない。
【土台となる考え方:自己責任原則】金商法の根底には「正しい情報が与えられた上での投資判断の結果は、投資者自身が負う」という自己責任原則がある。開示規制(第2章)、業者の行為規制(第3章)、不公正取引の禁止(第6章)は、いずれもこの前提条件を整えるための仕組み。目的規定の問題は、この構造を理解していれば消去法で確実に解ける。
【根拠】金商法1条、39条、159条
問2二種外務員が行うことのできない業務として、正しいものはどれか。
- 1国債証券の売買
- ✔信用取引に係る顧客への勧誘及び受注
- 3上場株式の売買の媒介
- 4公募株式投資信託の販売
- 5上場REIT(不動産投資信託)の売買の媒介
解説:【正解】2
【結論】二種外務員が取り扱えるのは原則として【現物有価証券】に限られ、信用取引の勧誘・受注はできない。
【肢別】1 ○ 国債証券は現物。2 × 信用取引は一種外務員の範囲。3 ○ 上場株式の売買の媒介は現物。4 ○ 公募株式投資信託の販売は可。5 ○ 上場REITやETFは取引所に上場された現物有価証券なので二種でも可。
【一種でなければ取り扱えないもの(=二種の禁止範囲)】
・信用取引 ・発行日取引 ・有価証券関連デリバティブ取引(先物・オプション)・特定店頭デリバティブ取引 ・新株予約権証券 ・カバードワラント ・店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組債、仕組投資信託
【外務員制度そのものの知識】
・外務員は日本証券業協会に備える登録原簿への登録が必要(金商法64条)。登録を受けない者に外務行為をさせてはならない。
・外務員の行為の効果は所属する金融商品取引業者に帰属し、業者は原則として責任を負う(64条の3。ただし相手方に悪意があるときは除く)。
・種類は、一種/二種/特別会員一種・二種(登録金融機関=銀行等の役職員)/信用取引外務員。
【根拠】金商法64条、64条の3、日証協「協会員の外務員の資格、登録等に関する規則」
問3金融商品取引業者等の禁止行為等に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1金融商品取引業者は、その名義を他人に貸して金融商品取引業を行わせてはならない。
- ✔金融商品取引業者は、顧客から預託を受けた有価証券を自己の固有財産と一体で管理することができる。
- 3金融商品取引業者は、顧客の注文について最良の取引の条件で執行するための方針(最良執行方針等)を定め、公表しなければならない。
- 4金融商品取引業者は、営業所又は事務所ごとに、標識を公衆の見やすい場所に掲示しなければならない。
- 5金融商品取引業者は、あらかじめ顧客の同意を得ることなく、顧客の計算により有価証券の売買等を行ってはならない。
解説:【正解】2(誤っているもの)
【結論】顧客から預かった資産は、業者の固有財産と明確に区分して管理する【分別管理】が義務(金商法43条の2、43条の3)。一体で管理することはできない。
【肢別】
1 ○ 名義貸しの禁止(36条の3)。
2 ×
3 ○ 最良執行方針等の策定・公表義務(40条の2)。
4 ○ 標識の掲示義務(36条の2)。
5 ○ 無断売買の禁止(38条、業府令117条)。
【分別管理の中身】
・顧客有価証券 → 業者の自己保有分と分別して保管
・顧客から預かった金銭 → 「顧客分別金」として信託銀行等に信託
これにより、業者が破綻しても顧客資産は倒産財団に組み込まれず返還される。
【最後の受け皿:投資者保護基金】万一分別管理が破られて資産が返還されない場合に備え、投資者保護基金が1顧客あたり【1,000万円】まで補償する(79条の20)。第一種金融商品取引業者は加入が義務。
※銀行の預金保険(1金融機関1預金者あたり元本1,000万円+利息)と金額が同じなので混同しやすいが、まったく別制度。適格機関投資家や国・地方公共団体は補償の対象外。
【根拠】金商法36条の2、36条の3、38条、40条の2、43条の2、43条の3、79条の20
問4次のうち、金融商品取引法第2条第1項に規定する有価証券に該当しないものはどれか。
- 1社債券
- ✔譲渡性預金証書(CD)
- 3国債証券
- 4投資信託の受益証券
- 5新株予約権証券
解説:【正解】2
【結論】譲渡性預金証書(CD)は、金商法上の有価証券から明文で除外されている(2条1項15号、施行令1条)。CDは預金の一種として銀行法の規律に服し、有価証券としての開示規制等の対象にならない。
【肢別】1 ○ 社債券(2条1項5号)。2 × 上記。3 ○ 国債証券(1号)。4 ○ 投資信託の受益証券(10号)。5 ○ 新株予約権証券(9号)。
【紛らわしい3点セット(ここだけは丸暗記)】
・CP(コマーシャル・ペーパー)→ 有価証券に【該当する】
・抵当証券 → 【該当する】
・CD(譲渡性預金証書)→ 【該当しない】
【あわせて注意】約束手形・小切手も原則として金商法上の有価証券ではない(CPを除く)。「手形だから有価証券」と考えると誤る。金商法は2条1項で有価証券を限定列挙しており、そこに載っているかどうかがすべて。
【根拠】金商法2条1項、金商法施行令1条
問5金融商品取引業の区分に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 1有価証券の価値等について助言を行う業務は、投資助言・代理業に該当する。
- 2投資一任契約に基づき投資判断を行い、財産の運用を行う業務は、投資運用業に該当する。
- 3有価証券の売買、市場デリバティブ取引及びこれらの媒介・取次ぎ・代理を行う業務は、第一種金融商品取引業に該当する。
- 4みなし有価証券(第2項有価証券)の募集・私募の取扱いは、第二種金融商品取引業に該当する。
- ✔第一種金融商品取引業は、内閣総理大臣への届出のみで営むことができる。
解説:【正解】5(誤っているもの)
【結論】金融商品取引業は4区分いずれも内閣総理大臣の【登録】が必要(金商法29条)。届出では営めない。
【肢別】1 ○ 投資助言・代理業。2 ○ 投資運用業。3 ○ 第一種。4 ○ 第二種(みなし有価証券の募集・私募の取扱い、ファンドの自己募集)。5 ×
【4区分の見分け方】
・第一種=券面のある有価証券(1項有価証券)の売買・媒介・引受け/市場デリバティブ/PTS運営。最も規制が厳しく、株式会社であること・最低資本金5,000万円・自己資本規制比率120%以上の維持が必要。
・第二種=みなし有価証券(2項有価証券。信託受益権、集団投資スキーム持分等)の販売、ファンドの自己募集。
・投資助言・代理業=助言のみ。顧客資産を預からない。
・投資運用業=投資一任契約、ファンド運用。
【参入規制の強さの順(最頻出)】届出 < 登録 < 認可 < 免許
金商業=登録/PTS運営=認可(登録への上乗せ)/取引所の開設=免許/適格機関投資家等特例業務=届出。この対応関係を表で覚えること。
【根拠】金商法28条、29条、30条、80条
問6外務員に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔外務員が職務停止処分を受けた場合であっても、所属する金融商品取引業者等の判断により、その期間中に外務員の職務を行わせることができる。
- 2外務員の登録を受けていない者は、いかなる名称を用いるかを問わず、外務員の職務を行うことができない。
- 3外務員の登録事務は、内閣総理大臣から日本証券業協会に委任されている。
- 4外務員は、所属する金融商品取引業者等に代わって、有価証券の売買等に関し一切の裁判外の行為を行う権限を有するものとみなされる。
- 5外務員の権限に加えられた制限は、善意の相手方に対抗することができない。
解説:【正解】1(誤っているもの)
【結論】職務停止処分を受けた外務員は、その期間中いかなる理由があっても外務員の職務を行うことはできない。業者の判断で行わせることはできず、行わせれば業者自身も処分の対象になる。
【肢別】
2 ○ 登録を受けない者に外務行為をさせてはならず、肩書き・名称を問わない(金商法64条)。
3 ○ 登録事務は内閣総理大臣から日本証券業協会に委任されている(64条の7)。
4 ○ 外務員のみなし代理権(64条の3第1項)。
5 ○ 権限の制限は善意の相手方に対抗できない(同条2項)。
【外務員のみなし代理権のポイント】
・外務員は所属業者に代わって「一切の【裁判外】の行為」を行う権限を有するものとみなされる。裁判上の行為(訴訟行為)は含まれない。
・社内で「この商品は扱わせない」等と権限を制限しても、それを知らない顧客には主張できず、外務員の行為の効果は業者に帰属する。
・ただし顧客に悪意(重過失を含む)がある場合は対抗できる。
【外務員に対する処分】登録の取消し/2年以内の職務停止(金商法64条の5)。ほかに協会による過怠金等の処分もある。
【根拠】金商法64条、64条の3、64条の5、64条の7
問7金融商品取引業者等の行為規制に関する記述のうち、正しいものはどれか。
- 1断定的判断の提供の禁止は、法人顧客に対する勧誘には適用されない。
- 2断定的判断の提供の禁止は、勧誘時ではなく契約締結時にのみ適用される。
- ✔有価証券の価格が騰貴することが確実であると誤解させるおそれのある断定的判断を提供して勧誘する行為は、顧客の損失の有無にかかわらず禁止されている。
- 4顧客が確実に利益を得られると信じている場合には、断定的判断を提供して勧誘することができる。
- 5断定的判断を提供した場合でも、結果として顧客に利益が生じたときは違反とならない。
解説:【正解】3
【結論】断定的判断の提供の禁止(金商法38条2号)は、「そう言って勧誘した」という【行為そのもの】を禁じる規定。損失の発生・顧客の属性・結果の当否を一切問わない。
【肢別】
1 × 法人顧客にも適用される。適用が外れるのは特定投資家(プロ)に対する一部規制であり、一般の法人顧客は対象。
2 × 「勧誘」に際しての行為を禁じる規定であり、契約締結時に限られない。
3 ○
4 × 顧客が信じているかどうかは無関係。
5 × 結果的に利益が出ても違反。
【押さえどころ】断定的判断とは「必ず上がります」「元本は保証されています」など、不確実な事項について確実であると誤解させるおそれのある判断の提供。「私の見立てでは上昇すると思います」という意見表明との線引きが実務では問題になるが、試験では「絶対」「確実」「必ず」といった断定表現が出たらアウトと判断してよい。
【私法上の効果】金融サービス提供法により、断定的判断の提供があった場合は説明義務違反と同様に業者が損害賠償責任を負い、元本欠損額が損害額と推定される(立証責任が業者側に転換される)。
【根拠】金商法38条2号、金融サービス提供法4条〜7条
問8適合性の原則に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1顧客の財産の状況のみを確認すれば、適合性の原則を満たしたことになる。
- ✔顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして、不適当な勧誘を行い投資者保護に欠けることのないようにしなければならない。
- 3顧客が希望する限り、いかなる商品であっても勧誘して差し支えない。
- 4適合性の原則は、金融商品取引業者の努力目標であり、法令上の義務ではない。
- 5適合性の原則は、購入金額が一定額以上の取引にのみ適用される。
解説:【正解】2
【結論】適合性の原則(金商法40条1号)。顧客の①知識 ②経験 ③財産の状況 ④金融商品取引契約を締結する目的、の4要素に照らして不適当な勧誘をしてはならない。
【肢別】
1 × 財産の状況だけでは足りず、4要素すべてを考慮する。
2 ○
3 × 顧客が希望しても、その顧客に不適当な商品の勧誘は許されない(狭義の適合性原則)。
4 × 努力目標ではなく法令上の義務。違反は行政処分の対象。
5 × 金額による下限はない。
【狭義と広義】
・狭義の適合性原則=ある顧客に対しては、どれだけ説明を尽くしてもその商品を勧誘してはならない。
・広義の適合性原則=顧客の属性に応じた方法・程度で説明・勧誘を行う(説明義務と結びつく)。
【説明義務との関係】説明義務と適合性原則は【別個】の義務。「十分説明したから適合性は問題ない」とはならない点が繰り返し問われる。
【関連】高齢顧客への勧誘は、日証協規則により社内規則の制定、勧誘可能商品の限定、役席者の事前承認、勧誘後の状況確認等が別途求められる。
【根拠】金商法40条1号、日証協「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」
商品業務全549問中 8問を掲載
問9株式に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1株主の権利には、議決権や株主総会招集請求権などの共益権がある。
- 2株主は、会社の債務について、その引受価額を限度とする有限責任を負うにとどまる。
- 3株主の権利には、剰余金配当請求権や残余財産分配請求権などの自益権がある。
- ✔株主は、会社に対していつでも出資の払戻しを請求することができる。
- 5株主は、原則としてその有する株式の数に応じて平等に取り扱われる(株主平等の原則)。
解説:【正解】4(誤っているもの)
【結論】株主は会社に対して出資の払戻しを請求できない(資本維持の原則)。投下資本を回収するには、市場等で株式を【譲渡】する方法による。
【肢別】1 ○ 共益権。2 ○ 株主有限責任の原則。3 ○ 自益権。4 × 5 ○ 株主平等の原則。
【株式と債券の決定的な違い(この対比が全分野の土台)】
| |株式|債券|
|法的性質|出資(自己資本)|貸付け(他人資本)|
|払戻し|【できない】|満期に額面で償還|
|回収方法|市場で譲渡する|償還を待つ/売却する|
|リターン|配当(業績次第・不確定)|利子(原則確定)|
|清算時の順位|最劣後(残余財産)|株主に優先|
【なぜ払戻しを認めないのか】株主にいつでも払い戻すと、会社財産が流出して債権者の引き当てが失われる。株主が有限責任しか負わない以上、会社財産だけが債権者の頼りであり、これを維持する必要がある(資本維持の原則)。
【自益権と共益権】自益権=剰余金配当請求権、残余財産分配請求権、株式買取請求権など経済的利益を受ける権利。共益権=議決権、株主総会招集請求権、代表訴訟提起権など経営に参与する権利。
【根拠】会社法104条、105条、109条
問10A社の株価が2,400円、当期純利益が60億円、発行済株式総数が5,000万株であるとき、A社のPER(株価収益率)として正しいものはどれか。
解説:【正解】2
【計算】
①EPS(1株当たり当期純利益)=当期純利益 ÷ 発行済株式総数
=60億円 ÷ 5,000万株 = 6,000,000,000 ÷ 50,000,000 =【120円】
②PER=株価 ÷ EPS = 2,400円 ÷ 120円 =【20倍】
【桁の合わせ方(ここでミスが出る)】60億=6,000,000,000、5,000万=50,000,000。ゼロを数えるより「60億÷5,000万=6,000万÷50=120」のように、両方を1万で割ってから計算すると速く確実。
【PERの意味】株価が1株当たり利益の何倍か。言い換えると、今の利益水準が続くとして投資額を回収するのに何年かかるか。一般に低いほど割安と判断されるが、低PERは成長期待の低さの裏返しでもある(No.132)。
【株式益回りとの関係】株式益回り=EPS÷株価×100=PERの【逆数】。本問なら1÷20=5.0%(No.145と同じ論点)。
【関連指標の分母・分子】
・PER=株価÷EPS(利益との比較)
・PBR=株価÷BPS(純資産との比較)
・ROE=当期純利益÷自己資本(資本の効率)
【根拠】株式投資指標の基本
問11B社の株価が1,800円、純資産(自己資本)が300億円、発行済株式総数が2,000万株であるとき、B社のPBR(株価純資産倍率)として正しいものはどれか。
- 16.00倍
- 20.83倍
- 31.50倍
- 41.00倍
- ✔1.20倍
解説:【正解】5
【計算】
①BPS(1株当たり純資産)=純資産 ÷ 発行済株式総数
=300億円 ÷ 2,000万株 = 30,000,000,000 ÷ 20,000,000 =【1,500円】
②PBR=株価 ÷ BPS = 1,800円 ÷ 1,500円 =【1.2倍】
【PBRの意味】株価が1株当たり純資産(帳簿上の解散価値)の何倍か。PBR1倍とは、株価と1株当たり純資産が等しい状態。
【PBRが1倍を下回るとは】市場が「この会社は資産を持っているだけで、事業を続けても価値を生まない」と評価している状態。理論上は、会社を解散して純資産を分配した方が株主の取り分が多いことを意味する。東証がプライム上場企業に資本コストを意識した経営を要請した背景も、PBR1倍割れ企業の多さにあった。
【3指標の関係式(覚えておくと便利)】
PBR = PER × ROE
本問で確認すると、ROE=当期純利益÷純資産、PER=株価÷EPS なので、PER×ROE=(株価÷EPS)×(当期純利益÷純資産)=株価÷BPS=PBR となる。
【根拠】株式投資指標の基本
問12C社の当期純利益が24億円、自己資本が300億円であるとき、C社のROE(自己資本利益率)として正しいものはどれか。
- 180.0%
- 24.0%
- 36.0%
- ✔8.0%
- 512.5%
解説:【正解】4
【計算】ROE=当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 = 24億円 ÷ 300億円 × 100 =【8.0%】
【ROEの意味】株主が出資した資本を使って、どれだけ効率的に利益を生んだか。株主にとって最も重視される収益性指標であり、日本では8%が一つの目安とされる(資本コストを上回る水準の目安)。
【ROAとの違い(分母で区別する)】
・ROE(自己資本利益率)=当期純利益 ÷【自己資本】×100 … 株主の視点
・ROA(総資本利益率)=利益 ÷【総資本(総資産)】×100 … 会社全体の視点
分子は同じでも分母が違う。「E=Equity(自己資本)」「A=Asset(総資産)」と頭文字で覚える。
【デュポン分解(ROEの中身)】
ROE = 売上高純利益率 × 総資本回転率 × 財務レバレッジ
=(純利益÷売上高)×(売上高÷総資本)×(総資本÷自己資本)
つまりROEは、①利幅を上げる ②資産を効率よく回す ③借入れを増やす、のいずれでも上がる。③で上げたROEは財務リスクの増大を伴うため、高ROEが常に良いとは限らない点に注意。
【根拠】株式投資指標の基本
問13D社の株価が2,000円、1株当たり年間配当金が50円、当期純利益が50億円、配当金総額が15億円であるとき、配当利回りと配当性向の組合せとして正しいものはどれか。
- 1配当利回り4.0%・配当性向25%
- ✔配当利回り2.5%・配当性向30%
- 3配当利回り2.0%・配当性向30%
- 4配当利回り2.5%・配当性向40%
- 5配当利回り4.0%・配当性向30%
解説:【正解】2
【計算】
①配当利回り=1株当たり年間配当金 ÷ 株価 × 100 = 50円 ÷ 2,000円 × 100 =【2.5%】
②配当性向=配当金総額 ÷ 当期純利益 × 100 = 15億円 ÷ 50億円 × 100 =【30%】
【分母がまったく違う点が最大のポイント】
・配当利回り … 分母は【株価】。投資家目線で「投資額に対して何%の配当が得られるか」
・配当性向 … 分母は【当期純利益】。会社目線で「稼いだ利益のうち何%を株主に還元したか」
名前が似ているため、問題文の数値をどちらの式に入れるかで迷いやすい。「利回り=利率だから株価が分母」「性向=利益の使い道だから利益が分母」と意味から導く。
【配当性向で計算する別解】1株当たり配当50円、配当金総額15億円 → 発行済株式総数=15億÷50=3,000万株。EPS=50億÷3,000万=約167円。配当性向=50÷167=約30%。どちらの式でも一致する。
【内部留保率】100%-配当性向。本問なら70%が社内に留保され、再投資に回る。
【総還元性向】(配当金総額+自己株式取得額)÷当期純利益。自社株買いを含めた株主還元の指標。
【根拠】株式投資指標の基本
問14配当金や株主優待等の権利を得るための取引に関する記述として、正しいものはどれか。
- 1権利確定日の翌営業日までに買い付ければ権利を得ることができる。
- 2配当の権利は、買付けの時期にかかわらず、決算期末に株式を保有していれば得られる。
- 3権利確定日の5営業日前までに買い付ける必要がある。
- 4権利確定日の当日までに株式を買い付ければ、権利を得ることができる。
- ✔権利確定日(株主確定日)に株主名簿に記載されるためには、権利付最終日(権利確定日の2営業日前)までに買い付ける必要がある。
解説:【正解】5
【結論】株式の受渡しがT+2(約定日から起算して3営業日目)であるため、権利確定日に株主名簿に記載されるには、その【2営業日前】(権利付最終日)までに買い付ける必要がある。
【肢別】1 × 翌営業日では間に合わない。2 × 買付けの時期が決定的に重要。3 × 5営業日前ではない。4 × 当日買っても受渡しは3営業日目になり間に合わない。5 ○
【なぜ2営業日前なのか(ここを理屈で押さえる)】株主名簿に載るのは、株式の【受渡しが完了】した時点。受渡しは約定日から起算して3営業日目(T+2)なので、
権利確定日に受渡しを終えるには → その2営業日前に約定していなければならない
例:権利確定日が3月31日(木)なら、権利付最終日は3月29日(火)、権利落ち日は3月30日(水)
【権利落ち日】権利付最終日の翌営業日。この日に買っても権利は得られない。理論上は配当金相当額だけ株価が下落する(No.131)。
【売り側の帰結】権利付最終日に【売却】した場合、受渡しは権利確定日以降になるため名簿上は株主となり、権利を得られる。買いと売りで結論が逆になる点に注意(No.131の肢1)。
【根拠】東京証券取引所業務規程、会社法124条
問15株式の発行市場に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1第三者割当てとは、特定の第三者に対して新株を割り当てる方法である。
- 2公募とは、不特定かつ多数の投資者に対して新株の取得の申込みを勧誘する方法である。
- ✔株主割当ての場合、既存株主の持株比率は必ず低下する。
- 4ブックビルディング方式とは、投資家の需要を積み上げて公開価格を決定する方式である。
- 5株主割当てとは、既存株主に対してその持株数に応じて新株を割り当てる方法である。
解説:【正解】3(誤っているもの)
【結論】株主割当ては持株数に比例して新株を割り当てるため、全株主が権利を行使すれば持株比率は【変わらない】。
【肢別】1 ○ 第三者割当て。2 ○ 公募。3 × 4 ○ ブックビルディング方式。5 ○ 株主割当て。
【3つの発行方法と持株比率への影響】
・公募 … 不特定多数へ。既存株主の持株比率は【低下】する(希薄化・ダイリューション)
・第三者割当て … 特定の第三者へ。既存株主の持株比率は【低下】する。特定の者に支配権が移りうる
・株主割当て … 既存株主に持株数に応じて。全員が権利行使すれば比率は【不変】
【第三者割当ての有利発行】払込金額が特に有利な金額である場合、既存株主の利益を害するため、株主総会の【特別決議】が必要(会社法199条3項、201条1項)。取締役はその必要性と相当性を説明しなければならない。
【希薄化(ダイリューション)の意味】発行済株式数が増えることで、1株当たり利益(EPS)や1株当たり純資産(BPS)、議決権比率が薄まること。増資の発表で株価が下落するのはこの効果を織り込むため。
【根拠】会社法199条〜202条、金商法
問16新規公開株式(IPO)とブックビルディング方式に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1ブックビルディング方式では、まず主幹事証券会社等が仮条件(価格帯)を提示する。
- 2需要状況等を勘案して公開価格が決定される。
- 3投資家は仮条件の範囲内で購入希望価格と株数を申告し、その需要状況を集計する。
- ✔公開価格は、必ず仮条件の上限価格に決定される。
- 5公開価格の決定後、抽選等により配分が行われる。
解説:【正解】4(誤っているもの)
【結論】公開価格は需要状況を踏まえて仮条件の【範囲内】で決定され、必ずしも上限になるとは限らない。需要が弱ければ下限や中間値に決まる。
【肢別】1 ○ 仮条件(価格帯)の提示。2 ○ 需要状況等を勘案して決定。3 ○ 投資家が購入希望価格と株数を申告。4 × 5 ○ 抽選等による配分。
【ブックビルディング方式の流れ】
①主幹事証券が機関投資家へのヒアリング等を踏まえ、【想定発行価格】を算出
②【仮条件】(例:1,800円〜2,000円)を提示
③投資家が仮条件の範囲内で希望価格と株数を申告(ブックビルディング=需要の積み上げ)
④需要状況を勘案して【公開価格】を決定
⑤抽選等の公平な方法で配分(No.82)
【もう一つの方式:入札方式】投資家の入札により価格を決める方式。かつての主流だったが、価格が乱高下しやすく安定株主の形成が難しいため、現在はブックビルディング方式が中心。
【配分の公正性】公開価格は初値を下回る水準に設定される傾向があるため、配分自体が利益となる。恣意的な優先配分は特別の利益の提供に当たる(No.82)。
【根拠】日証協「有価証券の引受け等に関する規則」
関連科目全336問中 8問を掲載
問17直接金融と間接金融に関する記述のうち、正しいものはどれか。
- 1直接金融と間接金融の区別は、調達額の大小によって決まる。
- 2直接金融とは、銀行が預金者から集めた資金を企業に貸し付ける仕組みをいう。
- 3間接金融とは、企業が株式や社債を発行し、投資家から直接資金を調達する仕組みをいう。
- ✔直接金融では、資金の出し手である投資家が投資リスクを直接負担する。
- 5間接金融では、預金者が企業の倒産リスクを直接負担する。
解説:【正解】4
【結論】直接金融では、資金の出し手である投資家が【投資リスクを直接負担】する。企業が倒産すれば投資家が損失を被る。
【肢別】
1 × 調達額の大小は区別の基準ではない。
2 × これは【間接金融】の説明。
3 × これは【直接金融】の説明。定義が入れ替わっている。
5 × 間接金融では、貸出先の信用リスクを負うのは【金融機関】であり、預金者ではない。
【区別の基準は「誰がリスクを負うか」】
・直接金融 … 企業が株式・社債を発行し、投資家から【直接】資金を調達する。企業が倒産すれば【投資家】が損失を被る
・間接金融 … 銀行が預金者から集めた資金を企業に貸し付ける。貸出先が倒産しても【銀行】が損失を負い、預金者の預金は守られる(預金保険もある)
【なぜこの違いが生じるのか】直接金融では、投資家と企業の間に「保証する人」がいない。だから投資家は自らリスクを引き受ける代わりに、成功したときのリターンも直接受け取る。間接金融では銀行がリスクを引き受ける代わりに、預金者のリターンは低い利息に限られる。リスクとリターンは一体である。
【市場型間接金融】投資信託のように、投資家が金融機関を通じて市場に投資する中間的な形態もある(No.674)。金融機関が仲介するが、リスクは最終的に投資家が負う。
【根拠】証券市場の基礎
問18証券市場の機能に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔流通市場が存在しなくても、発行市場は円滑に機能する。
- 2発行市場は新たに発行される有価証券が投資家に取得される市場であり、流通市場は既発行の有価証券が売買される市場である。
- 3公正な価格形成を通じて、経済全体の資源配分を効率化する機能を有する。
- 4投資家に対して資産運用の場を提供する機能を有する。
- 5企業に対して長期の産業資金を供給する機能を有する。
解説:【正解】1(誤っているもの)
【結論】流通市場がなければ発行市場も機能しない。買った有価証券をいつでも売れるという保証があるからこそ、投資家は安心して新規発行に応じられる。両者は不可分である。
【肢別】2 ○ 発行市場と流通市場の定義。3 ○ 公正な価格形成による資源配分の効率化。4 ○ 資産運用の場の提供。5 ○ 長期の産業資金の供給。
【なぜ流通市場が発行市場を支えるのか】もし一度買った株式を二度と売れないとしたら、誰も新規発行に応じない。換金できる場(流通市場)があるからこそ、投資家は長期資金を出せる。企業から見れば、投資家が個別には短期で入れ替わっても、資金は企業に留まり続ける。この【資金の長期化】こそ証券市場の本質的な機能である。
【証券市場の3つの機能】
①資金調達機能 … 企業に長期の産業資金を供給する
②資産運用機能 … 投資家に運用の場を提供する
③価格形成機能 … 需給を通じて公正な価格を形成し、資源を効率的に配分する
③が特に重要で、成長性の高い企業に高い評価がつけば資金が集まり、そうでない企業からは資金が引き揚げられる。市場が「どこに資金を回すか」を決める仕組みになっている。
【押さえどころ】「流通市場がなくても発行市場は機能する」「発行市場と流通市場は無関係」という趣旨の記述は誤り。
【根拠】証券市場の基礎
問19証券市場に関わる機関に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔投資者保護基金は、有価証券の値下がりによる投資家の損失を補償する機関である。
- 2証券金融会社は、信用取引に必要な資金や株券を証券会社に貸し付ける。
- 3日本証券業協会は、金融商品取引法上の認可金融商品取引業協会である。
- 4証券保管振替機構は、株式等の振替制度を運営する振替機関である。
- 5証券取引等監視委員会は、市場の公正性を確保するため、取引の調査・検査等を行う。
解説:【正解】1(誤っているもの)
【結論】投資者保護基金が補償するのは、証券会社の破綻に伴い【分別管理されているはずの顧客資産が返還されない】場合である。値下がりによる損失は自己責任の範囲であり、補償の対象ではない。
【肢別】2 ○ 証券金融会社は信用取引に必要な資金・株券を貸し付ける。3 ○ 日証協は認可金融商品取引業協会。4 ○ ほふりは振替機関。5 ○ 監視委員会は調査・検査等を行う。
【No.51と同一論点】制度の趣旨は「返ってこない場合の備え」であって、「損しない保証」ではない。一般顧客1人当たり【1,000万円】まで。適格機関投資家や国・地方公共団体は対象外。
【証券市場を支える機関(役割で整理)】
・投資者保護基金 … 分別管理が破られた場合の最後の受け皿
・証券金融会社 … 信用取引の資金・株券を証券会社に貸し付ける(貸借取引)
・証券保管振替機構(ほふり)… 株式等の振替制度を運営。国債は【日本銀行】(No.99)
・日本証券業協会 … 認可金融商品取引業協会。自主規制、外務員登録、資格試験
・証券取引等監視委員会 … 検査・調査・告発・勧告。【処分権限は持たない】(No.19・88・115)
【押さえどころ】「値下がり損を補償する」という記述は、投資の自己責任原則(No.1)に反するため常に誤り。損失補塡の禁止(No.35)とも通じる。
【根拠】金商法79条の20以下
問20わが国の証券市場の歴史・制度に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
- 11998年の金融システム改革(日本版ビッグバン)により、株式売買委託手数料の自由化などが進められた。
- ✔現在も、有価証券の取引はすべて金融商品取引所を通じて行わなければならない。
- 32007年に証券取引法が改正され、金融商品取引法として施行された。
- 42022年4月に東京証券取引所の市場区分が再編された。
- 52009年1月に上場会社の株券が電子化された。
解説:【正解】2(誤っているもの)
【結論】取引所集中義務は【1998年に撤廃】されている。現在は取引所外(PTS、店頭)でも有価証券の売買ができる。
【肢別】1 ○ 1998年の金融システム改革により委託手数料の自由化等が進んだ。3 ○ 2007年に金融商品取引法として施行。4 ○ 2022年4月に東証の市場区分が再編。5 ○ 2009年1月に株券が電子化。
【年表で押さえる】
・1998年 … 金融システム改革(日本版ビッグバン)。取引所集中義務の撤廃、委託手数料の段階的自由化開始
・1999年10月 … 株式売買委託手数料の【完全自由化】(No.126)
・2007年9月 … 証券取引法を改正した【金融商品取引法】が施行
・2009年1月 … 上場会社の【株券電子化】(No.99)
・2019年7月 … 株式の受渡しがT+3から【T+2】へ短縮(No.133)
・2022年4月 … 東証の市場区分をプライム・スタンダード・グロースに再編(No.94)
【取引所集中義務の撤廃が生んだもの】売買の場が複数になったため、
・どこで執行するかの方針を定めさせる【最良執行義務】が必要になった(No.30)
・取引所を通らない取引の価格を見えるようにする【報告・公表義務】が課された(No.135)
制度は単独で存在せず、一つの改革が次の制度を呼ぶ。この因果で覚えると年表が意味を持つ。
【根拠】金融システム改革法、金商法
問21機関投資家に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔機関投資家は、個人投資家に比べて情報収集・分析能力が劣るため、投資者保護規制がより厳格に適用される。
- 2生命保険会社、損害保険会社、年金基金、投資信託委託会社などが機関投資家に該当する。
- 3機関投資家の投資行動は、市場の価格形成に大きな影響を与える。
- 4機関投資家は、多額の資金を長期的視点で運用する傾向がある。
- 5スチュワードシップ・コードは、機関投資家が投資先企業との建設的な対話を通じて企業価値の向上を促すための原則である。
解説:【正解】1(誤っているもの)
【結論】機関投資家は個人投資家より情報収集・分析能力が【高い】。したがって投資者保護規制はむしろ【緩和】される(特定投資家として一部の行為規制が適用除外となる)。
【肢別】2 ○ 生保・損保・年金基金・投信委託会社などが該当。3 ○ 市場の価格形成に大きな影響を与える。4 ○ 多額の資金を長期的視点で運用する。5 ○ スチュワードシップ・コードの説明。
【No.31・38と同一論点】プロには手厚い保護が不要なので、契約締結前交付書面の交付義務、適合性の原則、広告規制などが適用除外となる。ただし損失補塡の禁止や不公正取引規制は【適用される】。「その顧客を守るルール」は外れ、「市場を守るルール」は外れない。
【スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの関係】
・スチュワードシップ・コード … 【機関投資家】が守るべき原則。投資先企業との建設的な対話を通じて企業価値の向上を促す
・コーポレートガバナンス・コード … 【上場会社】が守るべき原則(No.670)
両者は「車の両輪」と呼ばれ、投資家側と企業側の双方から企業価値向上を促す設計になっている。
【機関投資家の影響力】多額の資金を長期で運用するため、その売買や議決権行使が市場と企業経営に大きな影響を与える。だからこそ、単に運用するだけでなく企業と対話する責任(スチュワードシップ責任)が求められる。
【根拠】金商法2条31項、日本版スチュワードシップ・コード
問22コーポレート・ガバナンスに関する記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1コーポレートガバナンス・コードは、上場会社が守るべき行動規範を原則として示したものである。
- ✔コーポレートガバナンス・コードは法律であり、違反した場合には刑事罰が科される。
- 3コーポレートガバナンス・コードは、プリンシプルベース・アプローチ及びコンプライ・オア・エクスプレインの手法を採用している。
- 4社外取締役の選任は、経営の監督機能を高める手段の一つである。
- 5コーポレート・ガバナンスとは、会社が株主をはじめとする利害関係者の立場を踏まえ、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みをいう。
解説:【正解】2(誤っているもの)
【結論】コーポレートガバナンス・コードは【法律ではない】。取引所の上場規程に基づく規範であり、違反しても刑事罰は科されない。
【肢別】1 ○ 上場会社が守るべき行動規範を原則として示したもの。3 ○ プリンシプルベース・アプローチとコンプライ・オア・エクスプレインを採用。4 ○ 社外取締役の選任は監督機能を高める手段。5 ○ コーポレート・ガバナンスの定義。
【2つの手法(この2語がそのまま出題される)】
・【プリンシプルベース・アプローチ】(原則主義)… 細かいルールを列挙せず、原則を示して各社が自らの状況に照らして適切に解釈・適用する
・【コンプライ・オア・エクスプレイン】… 原則を実施するか、実施しない場合はその【理由を説明】する。実施しないこと自体は違反ではない
【なぜこの手法なのか】企業の規模・業種・成長段階はさまざまで、一律のルールを当てはめれば形式的な対応に終わる。原則を示して各社に考えさせ、実施しないなら説明させることで、実質的なガバナンス向上を促す。
【法令との違い】
・法令(会社法・金商法)… 違反すれば行政処分・刑事罰
・コード … 上場規程に基づく。説明義務を果たさなければ取引所の措置の対象となりうるが、刑事罰はない
【スチュワードシップ・コードとの関係】投資家側の原則がスチュワードシップ・コード(No.669)、企業側の原則がコーポレートガバナンス・コード。
【根拠】東京証券取引所有価証券上場規程、コーポレートガバナンス・コード
問23証券市場の参加者に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
- ✔証券会社は、常に顧客の相手方となって自己の利益を優先しなければならない。
- 2投資家は、余剰資金を有価証券に投資する。
- 3格付機関は、債券等の信用力を評価する。
- 4発行体は、資金調達のために有価証券を発行する。
- 5証券会社は、発行市場と流通市場の双方で仲介機能を担う。
解説:【正解】1(誤っているもの)
【結論】証券会社は顧客に対して【誠実公正義務】を負う(金商法36条)。自己の利益を優先することは許されず、常に相手方となる立場でもない。
【肢別】2 ○ 投資家は余剰資金を有価証券に投資する。3 ○ 格付機関は債券等の信用力を評価。4 ○ 発行体は資金調達のために有価証券を発行。5 ○ 証券会社は発行市場と流通市場の双方で仲介機能を担う。
【誠実公正義務(36条)が根っこにある】金商法第3章の行為規制の冒頭に置かれた総則的な規定で、これ以降の禁止行為はすべてこの義務の具体化である。
・フロントランニングの禁止(No.41)… 顧客の注文情報を自己の利益に流用しない
・注文の執行順序の公正(No.93)… 収益貢献度で顧客を差別しない
・適合性の原則(No.8)… 顧客に不適当な勧誘をしない
・利益相反管理体制の整備
【証券会社の立場は場面で変わる】
・ブローカー業務 … 顧客の【代理人・媒介者】として注文を取り次ぐ
・ディーラー業務 … 自己の計算で売買する。この場面では顧客の相手方となることもある
どちらの場面でも、顧客の利益を犠牲にして自己の利益を図ることは許されない。
【市場参加者の役割】発行体(資金調達)/投資家(運用)/証券会社(仲介)/格付機関(信用評価)/取引所・協会(市場運営・自主規制)。それぞれが機能を分担して市場が成り立っている。
【根拠】金商法36条、38条
問24証券市場の国際化に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
- 1外国企業が日本の取引所に上場することがある。
- 2日本企業が海外市場で資金調達を行うことがある。
- ✔わが国の株式市場は海外投資家に開放されておらず、外国人は売買できない。
- 4国際的な資本移動の活発化により、各国市場の連動性が高まっている。
- 5海外投資家の売買シェアは、わが国の株式市場において高い水準にある。
解説:【正解】3(誤っているもの)
【結論】わが国の株式市場は海外投資家に開放されており、外国人も自由に売買できる。むしろ海外投資家の売買シェアは【非常に高い】水準にある。
【肢別】1 ○ 外国企業が日本の取引所に上場することがある。2 ○ 日本企業が海外市場で資金調達を行うことがある。4 ○ 国際的な資本移動の活発化により各国市場の連動性が高まっている。5 ○ 海外投資家の売買シェアは高い水準にある。
【肢3と肢5の矛盾】肢5が「海外投資家の売買シェアは高い」と述べているのに、肢3は「外国人は売買できない」としている。両立しないので一方が誤り。選択肢どうしの整合を見るだけで答えが出る(No.661と同じ解法)。
【市場の国際化が意味すること】
・海外投資家の売買シェアが高い → 海外の金利動向や地政学リスクが日本株に直接波及する
・各国市場の連動性が高まる → 分散投資の効果が薄れる局面がある(システマティック・リスク。No.22・587)
・企業側も海外市場での資金調達が可能 → ユーロ円債、ADR(米国預託証券)など
【外国証券の取扱い】外国株式は、国内委託取引・国内店頭取引・外国取引の3形態で取り扱われる(No.142)。為替変動リスクとカントリーリスクが上乗せされる点は必ず説明する必要がある。
【根拠】証券市場の基礎