法務3級全250問中 8問を掲載
問1意思能力および行為能力に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1意思能力を欠く状態でした法律行為は、取り消すことができるにとどまり、当然に無効となるものではない。
- ✔未成年者が法定代理人の同意を得ずにした法律行為は、原則として取り消すことができる。
- 3成年被後見人が日用品の購入その他日常生活に関する行為をした場合、成年後見人はこれを取り消すことができる。
- 4被保佐人が借財または保証をするには、保佐人の同意は不要である。
- 5制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いた場合でも、その行為を取り消すことができる。
解説:民法5条2項により、未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は取り消すことができる(選択肢2が正しい)。1は誤り。意思能力を欠く状態でした法律行為は「無効」である(民法3条の2)。取消しではない点に注意。3は誤り。日用品の購入その他日常生活に関する行為は取消しの対象から除かれる(民法9条ただし書)。4は誤り。借財または保証は保佐人の同意を要する行為として明文で列挙されている(民法13条1項2号)。5は誤り。制限行為能力者が詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない(民法21条)。銀行実務では、取引の相手方が制限行為能力者である場合、後日の取消しリスクを避けるため、法定代理人・後見人等の同意書または代理権限を示す登記事項証明書を徴求する。(参照:民法3条の2、5条2項、9条、13条1項2号、21条)
問2消滅時効に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、令和2年4月1日施行の改正民法によるものとする。
- 1債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から10年間行使しないときに時効消滅する。
- 2債権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときに時効消滅する。
- ✔債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、または権利を行使することができる時から10年間のいずれか早く経過した時に時効消滅する。
- 4商行為によって生じた債権の消滅時効期間は、改正後も商法により5年とされている。
- 5裁判上の請求があっても、時効の完成が猶予されるにとどまり、確定判決によって権利が確定しても時効は更新されない。
解説:改正民法166条1項は、債権は「①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」「②権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」のいずれか早い方の経過により時効消滅すると定める(選択肢3が正しい)。1・2は期間の当てはめが逆または誤り。4は誤り。旧商法522条(商事消滅時効5年)は改正に伴い削除され、商事・民事の区別はなくなった。5は誤り。裁判上の請求は時効の完成猶予事由であり(民法147条1項1号)、確定判決等によって権利が確定したときは、その事由の終了時から新たに時効が進行する=更新される(同条2項)。なお確定判決で確定した権利の時効期間は10年となる(民法169条1項)。(参照:民法166条1項、147条、169条1項、旧商法522条(削除))
問3代理に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、原則として代理人自身のためにしたものとみなされる。
- 2代理人が自己または第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合、相手方がその目的を知り、または知ることができたときは、無権代理行為とみなされる。
- 3代理人は行為能力者であることを要しないため、未成年者を任意代理人とすることも可能である。
- ✔代理権が消滅した後に元代理人がした行為について、相手方が代理権の消滅を過失なく知らなかった場合でも、本人は常に責任を免れる。
- 5同一の法律行為について、相手方の代理人としてした行為は、原則として無権代理行為とみなされる。
解説:最も不適切なのは4。代理権消滅後の表見代理(民法112条1項)により、第三者が代理権消滅の事実を過失なく知らなかったときは、本人はその責任を負う。したがって「常に責任を免れる」は誤り。1は正しい(民法100条本文、顕名主義)。2は正しい。代理権の濫用に関する民法107条の規定。3は正しい(民法102条本文)。任意代理では本人が自らリスクを引き受けて選任している以上、行為能力は要件でない。5は正しい。双方代理は原則として無権代理とみなされる(民法108条1項)。ただし本人があらかじめ許諾した行為および債務の履行は除かれる。銀行実務では、代理人取引の受付時に委任状・印鑑証明書により代理権の存在と範囲を確認し、あわせて本人への意思確認を行うことが重要である。(参照:民法100条、102条、107条、108条、112条)
問4預金契約の法的性質に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1普通預金契約は使用貸借契約であり、銀行は預入金そのものを保管する義務を負う。
- ✔預金契約は消費寄託契約と解され、銀行は預かった金銭の所有権を取得し、同種・同額の金銭を返還する義務を負う。
- 3定期預金は期限の定めがあるため、預金者はいかなる場合も満期日前に解約を請求できない。
- 4当座預金契約は消費寄託契約のみで構成され、支払委託の要素は含まない。
- 5預金債権は指名債権ではないため、譲渡に際して銀行への通知は不要である。
解説:預金契約は消費寄託契約(民法666条)と解されるのが判例・通説であり、銀行は受け入れた金銭の所有権を取得して自由に運用でき、同種・同等・同量の金銭を返還する義務を負う(選択肢2が正しい)。1は誤り。使用貸借ではなく、預入金そのものを保管する義務はない。3は誤り。定期預金でも銀行が任意に応じる形での期限前解約は実務上広く行われており、当事者の合意で可能である。4は誤り。当座預金契約は消費寄託契約と手形・小切手の支払委託契約(委任契約)の混合契約と解されている。5は誤り。預金債権は指名債権であり、譲渡には債務者である銀行への通知または承諾が対抗要件となる(民法467条)。もっとも預金規定に譲渡禁止特約があるため、銀行の承諾なき譲渡は原則として効力を主張できない。(参照:民法666条、467条、預金規定(譲渡・質入禁止条項))
問5誤振込に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。判例の立場によるものとする。
- 1振込依頼人と受取人との間に振込の原因となる法律関係が存在しない場合、受取人は預金債権を取得しない。
- ✔誤振込であっても受取人は預金債権を取得し、振込依頼人は受取人に対して不当利得返還請求権を有するにとどまる。
- 3銀行は誤振込であることを知った場合、受取人の同意なく当該入金を取り消して振込依頼人に返還しなければならない。
- 4誤振込された預金について受取人の債権者が差押えをした場合、振込依頼人は第三者異議の訴えにより差押えを排除できる。
- 5誤振込であることを知りながら受取人が払戻しを受けても、預金債権を有する以上、詐欺罪は成立し得ない。
解説:最判平成8年4月26日は、振込依頼人と受取人との間に振込の原因となる法律関係が存在しない場合であっても、受取人は銀行に対して当該金額相当の預金債権を取得すると判示した(選択肢2が正しく、1は誤り)。この場合、振込依頼人は受取人に対して不当利得返還請求権(民法703条・704条)を有するにとどまる。3は誤り。受取人が預金債権を取得している以上、銀行が一方的に入金を取り消すことはできず、受取人の承諾(組戻しへの同意)が必要である。4は誤り。最決平成8年4月26日の枠組みでは受取人が預金債権者である以上、振込依頼人による第三者異議の訴えは認められない。5は誤り。最決平成15年3月12日は、誤振込であることを知りながらその情を秘して払戻しを受ける行為につき詐欺罪の成立を認めている。(参照:最判平成8年4月26日、最決平成15年3月12日、民法703条・704条)
問6預金者が死亡した場合の相続預金の取扱いに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- ✔普通預金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、遺産分割の対象とならない。
- 2共同相続人の一人は、遺産分割前であっても、一定の計算式による上限の範囲内で単独で預貯金の払戻しを受けることができる。
- 3銀行は預金者の死亡を知ったときは、原則として当該口座を支払停止とする取扱いを行う。
- 4遺言執行者が指定されている場合、遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
- 5相続人の範囲を確認するため、銀行は被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等の提出を求めるのが一般的である。
解説:最も不適切なのは1。最大決平成28年12月19日は、従来の判例を変更し、普通預金債権・通常貯金債権・定期貯金債権はいずれも相続開始と同時に当然分割されることはなく、遺産分割の対象となると判示した。したがって「当然に分割される」は誤りである。2は正しい。民法909条の2により、各共同相続人は「相続開始時の預貯金債権額×3分の1×当該相続人の法定相続分」(1金融機関あたり150万円が上限、民法909条の2に規定する法務省令)の範囲で単独払戻しが可能である。3は正しい実務対応。4は正しい(民法1012条1項)。5は正しい。相続人の確定には被相続人の出生から死亡に至る連続した戸籍が必要となる。なお法定相続情報一覧図の写しで代替することもできる。(参照:最大決平成28年12月19日、民法909条の2、1012条1項)
問7預金債権に対する差押えに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- ✔差押命令は、第三債務者である銀行に送達された時に効力が生じる。
- 2差押えの効力が生じた後も、銀行は預金者からの払戻請求に応じることができる。
- 3銀行が差押債務者に対して有する貸出金債権と被差押預金債権との相殺は、差押え後に取得した債権であっても常に許される。
- 4預金債権が差し押さえられた場合、銀行は当然に供託義務を負い、権利供託は認められない。
- 5差押命令の送達を受けた銀行は、陳述の催告があっても回答義務はない。
解説:民事執行法145条5項により、差押えの効力は差押命令が第三債務者に送達された時に生じる(選択肢1が正しい)。2は誤り。差押えの効力発生後、銀行は差押債務者(預金者)への支払を禁止される(同法145条1項)。3は誤り。最大判昭和45年6月24日(無制限説)および民法511条1項により、差押え前に取得した債権による相殺は差押え後でも対抗できるが、差押え「後」に取得した債権による相殺は原則として対抗できない(民法511条1項後段)。4は誤り。単一の差押えの場合は権利供託(民事執行法156条1項)が可能であり、義務供託となるのは競合が生じた場合等である(同条2項)。5は誤り。陳述の催告を受けた第三債務者は、送達日から2週間以内に陳述をする義務があり、故意・過失により陳述しなかったときは損害賠償責任を負う(同法147条)。(参照:民事執行法145条1項・5項、147条、156条、民法511条1項、最大判昭和45年6月24日)
問8銀行が貸出金債権と預金債務を相殺する場合に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によって行い、その効力は相殺適状を生じた時にさかのぼる。
- 2銀行取引約定書には、期限の利益喪失条項および相殺の予約に関する条項が定められているのが一般的である。
- 3相殺の意思表示には条件または期限を付すことができない。
- ✔貸出金債権が時効により消滅した場合、時効完成以前に相殺適状にあったとしても相殺することは一切できない。
- 5銀行は相殺にあたり、預金の期限の利益を放棄して満期前の定期預金と相殺することができる。
解説:最も不適切なのは4。民法508条により、時効によって消滅した債権であっても、その消滅以前に相殺適状にあった場合には、債権者はこれを自働債権として相殺することができる。1は正しい(民法506条1項前段・2項)。相殺の遡及効により、相殺適状時以降の遅延損害金は発生しない扱いとなる。2は正しい。銀行取引約定書5条(期限の利益の喪失)、7条(相殺)等に規定されるのが一般的である。3は正しい(民法506条1項後段)。相殺は形成権であり、条件を付すと相手方の地位を不安定にするためである。5は正しい。期限の利益は債務者である銀行のために存するため、銀行はこれを放棄して満期前の定期預金と相殺できる(民法136条2項)。(参照:民法136条2項、506条、508条、銀行取引約定書5条・7条)
財務3級全250問中 8問を掲載
問1財務諸表に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1貸借対照表は、一定時点における企業の財政状態を表す。
- 2損益計算書は、一定期間における企業の経営成績を表す。
- 3キャッシュ・フロー計算書は、一定期間における資金の増減とその要因を表す。
- ✔株主資本等変動計算書は、一定時点における純資産の内訳を表す。
- 5貸借対照表の借方合計と貸方合計は必ず一致する。
解説:最も不適切なのは4。株主資本等変動計算書は「一定期間」における純資産の各項目の変動額とその事由を表す計算書であり、一定時点の内訳を示すものではない(一定時点の純資産の内訳は貸借対照表の純資産の部が示す)。1は正しい。貸借対照表はストック(財政状態)を表すストック計算書である。2は正しい。損益計算書はフロー(経営成績)を表す。3は正しい。キャッシュ・フロー計算書は営業活動・投資活動・財務活動の3区分で資金の増減要因を表示する。5は正しい。複式簿記の原理により、資産=負債+純資産の等式が成立するため、借方合計と貸方合計は必ず一致する(貸借平均の原理)。(参照:会社法435条2項、会社計算規則59条、財務諸表等規則、企業会計原則)
問2流動資産と固定資産の区分に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- ✔受取手形・売掛金などの営業循環過程にある債権は、回収期間が1年を超えても流動資産に区分される。
- 2現金及び預金は、定期預金の満期が1年を超える場合でもすべて流動資産に区分される。
- 3貸付金は、金額の多寡によって流動資産と固定資産に区分される。
- 4棚卸資産は、販売までの期間が1年を超える場合には必ず固定資産に区分される。
- 5前払費用は、支払時期にかかわらずすべて固定資産(投資その他の資産)に区分される。
解説:流動・固定の区分は「正常営業循環基準」を第一次基準とし、これに該当しないものについて「1年基準(ワン・イヤー・ルール)」を適用する(選択肢1が正しい)。受取手形・売掛金・棚卸資産などは営業循環過程にあるため、回収・販売までの期間が1年を超えても流動資産に区分される。2は誤り。満期が決算日の翌日から1年を超えて到来する定期預金は、1年基準により投資その他の資産(長期性預金)に区分される。3は誤り。貸付金は金額ではなく回収期限までの期間(1年基準)で区分する。4は誤り。棚卸資産は正常営業循環基準により流動資産である。5は誤り。前払費用は1年基準により、1年以内に費用となるものは流動資産(前払費用)、1年超のものは投資その他の資産(長期前払費用)に区分される。(参照:企業会計原則 貸借対照表原則四(二)、財務諸表等規則15条・16条)
問3純資産の部に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1純資産の部は、株主資本と株主資本以外の各項目に大別される。
- 2資本剰余金は、資本準備金とその他資本剰余金に区分される。
- 3利益剰余金は、利益準備金とその他利益剰余金に区分される。
- 4自己株式は、純資産の部の株主資本の区分に控除項目として表示される。
- ✔その他有価証券評価差額金は、当期純利益を構成する項目として損益計算書に計上される。
解説:最も不適切なのは5。その他有価証券評価差額金は、原則として全部純資産直入法により純資産の部の「評価・換算差額等」(連結では「その他の包括利益累計額」)に直接計上され、損益計算書の当期純利益は構成しない。1は正しい。純資産の部は株主資本、評価・換算差額等、株式引受権、新株予約権、(連結では非支配株主持分)で構成される。2・3は正しい(会社計算規則76条)。4は正しい。自己株式は資産ではなく、株主資本から控除する形式で表示される(自己株式は資本の払戻しと解される)。5に関連して、その他有価証券を売却した場合には売却損益が損益計算書に計上される点も押さえておきたい。(参照:会社計算規則76条、「金融商品に関する会計基準」18項、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」)
問4次の資料に基づき算出される営業利益として、正しいものはどれか。
【資料】売上高 5,000/売上原価 3,200/販売費及び一般管理費 1,200/受取利息 40/支払利息 90/固定資産売却益 150/法人税等 200(単位:百万円)
- 1500百万円
- ✔600百万円
- 3550百万円
- 4660百万円
- 5450百万円
解説:営業利益=売上高-売上原価-販売費及び一般管理費。まず売上総利益=5,000-3,200=1,800百万円。次に営業利益=1,800-1,200=600百万円(選択肢2が正解)。受取利息40と支払利息90は営業外収益・営業外費用であり、営業利益の計算には含めない。これらを加減すると経常利益=600+40-90=550百万円となる。固定資産売却益150は特別利益であるため、税引前当期純利益=550+150=700百万円。当期純利益=700-200=500百万円。段階利益の並びは「売上総利益→営業利益→経常利益→税引前当期純利益→当期純利益」であり、どの項目がどの段階に入るかを正確に区別することが重要である。(参照:企業会計原則 損益計算書原則、財務諸表等規則第2章)
問5営業外損益および特別損益に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1受取配当金は営業外収益に計上される。
- 2為替差損益は、原則として営業外損益に計上される。
- 3貸倒引当金繰入額は、営業債権に係るものであれば販売費及び一般管理費に計上される。
- 4災害による損失は特別損失に計上される。
- ✔有価証券売却益は、保有目的にかかわらずすべて特別利益に計上される。
解説:最も不適切なのは5。売買目的有価証券の売却損益は営業外損益に計上され、投資有価証券(その他有価証券)の売却損益は特別損益に計上されるのが一般的である。したがって「保有目的にかかわらずすべて特別利益」は誤り。1は正しい。金融収益として営業外収益に計上される(ただし証券業等では営業収益となる)。2は正しい。為替差損益は原則として営業外損益に計上する。3は正しい。営業債権(売掛金・受取手形)に係る貸倒引当金繰入額は販売費及び一般管理費、営業外債権(貸付金等)に係るものは営業外費用に計上する。4は正しい。臨時・巨額であるため特別損失に該当する。(参照:企業会計原則 損益計算書原則六、「金融商品に関する会計基準」、財務諸表等規則95条の2〜95条の3)
問6次の資料に基づき算出される総資本経常利益率(ROA)として、正しいものはどれか。
【資料】売上高 8,000/経常利益 320/期首総資本 3,800/期末総資本 4,200(単位:百万円)
- 14.0%
- 27.6%
- ✔8.0%
- 43.8%
- 56.4%
解説:総資本経常利益率=経常利益÷総資本×100。総資本はストック項目であるためフローの利益と対応させるべく平均値を用いるのが原則である。平均総資本=(3,800+4,200)÷2=4,000百万円。総資本経常利益率=320÷4,000×100=8.0%(選択肢3が正解)。なお、この指標は「売上高経常利益率×総資本回転率」に分解できる。売上高経常利益率=320÷8,000×100=4.0%、総資本回転率=8,000÷4,000=2.0回。4.0%×2.0回=8.0%となり一致する。この分解により、収益性の改善が「マージンの改善」によるものか「資産効率の改善」によるものかを判別できる(デュポン分解の考え方)。(参照:経営分析の基本算式(総資本経常利益率=売上高経常利益率×総資本回転率))
問7次の資料に基づき算出される自己資本当期純利益率(ROE)として、正しいものはどれか。なお、自己資本は期首・期末の平均を用いること。
【資料】当期純利益 150/期首自己資本 1,400/期末自己資本 1,600(単位:百万円)
- 19.4%
- ✔10.0%
- 310.7%
- 45.0%
- 512.5%
解説:平均自己資本=(1,400+1,600)÷2=1,500百万円。ROE=当期純利益÷自己資本×100=150÷1,500×100=10.0%(選択肢2が正解)。ROEは株主が拠出した資本に対する収益性を示す指標であり、株主重視の経営指標として重視される。ROEは以下の3要素に分解できる(デュポン分解):ROE=売上高当期純利益率×総資本回転率×財務レバレッジ(総資本÷自己資本)。したがってROEは、収益性の改善だけでなく、負債を増やして財務レバレッジを高めることでも上昇する。ROEが高くても財務レバレッジ依存であれば財務安全性が低下している可能性があるため、自己資本比率とあわせて評価する必要がある。(参照:経営分析の基本算式、デュポン・システム)
問8次の資料に基づき算出される当座比率として、最も近いものはどれか。
【資料】現金預金 300/受取手形 200/売掛金 400/棚卸資産 350/前払費用 50/流動負債 800(単位:百万円)
- ✔112.5%
- 2118.8%
- 3156.3%
- 4162.5%
- 5106.3%
解説:当座比率=当座資産÷流動負債×100。当座資産とは、流動資産のうち換金性の高いもの(現金預金、受取手形、売掛金、有価証券〈売買目的〉など)をいい、棚卸資産や前払費用は含めない。当座資産=300+200+400=900百万円。当座比率=900÷800×100=112.5%(選択肢1が正解)。参考までに流動比率=流動資産÷流動負債×100=(300+200+400+350+50)÷800×100=1,300÷800×100=162.5%となる(選択肢4)。当座比率は流動比率よりも厳格な短期支払能力の指標であり「酸性試験比率(アシッド・テスト・レシオ)」とも呼ばれる。一般に100%以上が望ましいとされる。(参照:経営分析の基本算式(当座比率=当座資産/流動負債×100))
税務3級全250問中 8問を掲載
問1所得税法上の所得区分に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1所得税法上、所得は10種類に区分される。
- 2預貯金の利子は利子所得に区分され、原則として源泉分離課税とされる。
- 3上場株式の配当金は配当所得に区分され、総合課税、申告分離課税、確定申告不要のいずれかを選択できる。
- ✔個人が所有する土地を譲渡した場合の所得は、事業所得に区分される。
- 5生命保険の満期保険金を一時金で受け取った場合の所得は、原則として一時所得に区分される。
解説:最も不適切なのは4。個人が所有する土地・建物等を譲渡した場合の所得は「譲渡所得」に区分され、他の所得と分離して課税される(分離課税、租税特別措置法31条・32条)。所有期間が譲渡した年の1月1日において5年を超えるものが長期譲渡所得(税率20.315%=所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)、5年以下が短期譲渡所得(39.63%)となる。1は正しい。利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時・雑の10種類である。2は正しい。国内の預貯金利子は20.315%の源泉分離課税で課税関係が完結する。3は正しい。ただし総合課税を選択すると配当控除の適用があり、申告分離課税を選択すると上場株式等の譲渡損失との損益通算が可能となるなど、選択により有利不利が異なる。5は正しい。契約者と受取人が同一の場合、一時所得となる(受取保険金-払込保険料-特別控除50万円)÷2が課税対象。(参照:所得税法23条〜35条、租税特別措置法8条の4、31条、32条、37条の11)
問2給与所得に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1給与所得の金額は、収入金額から必要経費の実額を控除して計算する。
- 2給与所得控除額には上限がなく、収入金額に比例して増加する。
- ✔給与等の収入金額が2,000万円を超える給与所得者は、年末調整の対象とならない。
- 4給与所得者が特定支出をした場合であっても、給与所得控除額に代えて特定支出額を控除することは認められない。
- 5給与所得者が2か所以上から給与を受けている場合でも、確定申告は不要である。
解説:給与等の収入金額が2,000万円を超える者は年末調整の対象外であり、確定申告が必要である(所得税法190条、121条1項1号)。したがって選択肢3が正しい。1は誤り。給与所得の金額は「収入金額-給与所得控除額」で計算し、実額の必要経費控除は原則として認められない(所得税法28条2項)。2は誤り。給与所得控除額には上限があり、収入金額850万円超の場合は195万円で頭打ちとなる(所得税法28条3項5号)。4は誤り。特定支出控除の制度があり、特定支出の額の合計額が給与所得控除額の2分の1を超える場合、その超える部分を追加控除できる(所得税法57条の2)。対象は通勤費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費(65万円上限)である。5は誤り。2か所以上から給与を受け、従たる給与の収入金額と給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合は確定申告が必要である。(参照:所得税法28条、57条の2、121条1項、190条)
問3扶養控除および配偶者控除に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、2025年(令和7年)分の所得税について解答すること。
- 1控除対象扶養親族とは、扶養親族のうちその年12月31日現在の年齢が16歳以上の者をいう。
- 2特定扶養親族(19歳以上23歳未満)に係る扶養控除額は63万円である。
- 3同居老親等に該当する老人扶養親族に係る扶養控除額は58万円である。
- 4配偶者控除は、控除を受ける居住者の合計所得金額が1,000万円を超える場合には適用を受けられない。
- ✔配偶者特別控除は、配偶者の合計所得金額が48万円以下である場合に適用される。
解説:最も不適切なのは5。配偶者特別控除は、配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下である場合に適用される(所得税法83条の2)。48万円以下の場合に適用されるのは「配偶者控除」であり、両者は適用範囲が重ならない関係にある。1は正しい(所得税法2条1項34号の2)。年少扶養親族(16歳未満)は児童手当との調整により扶養控除の対象外である。2は正しい(所得税法84条1項)。3は正しい。老人扶養親族の控除額は同居老親等が58万円、それ以外が48万円である。4は正しい。配偶者控除は本人の合計所得金額900万円以下=38万円、900万円超950万円以下=26万円、950万円超1,000万円以下=13万円と逓減し、1,000万円超では適用がない。なお2025年度税制改正により、いわゆる「103万円の壁」に関する基礎控除・給与所得控除の見直しが行われているため、適用年分の最新の取扱いを確認する必要がある。(参照:所得税法2条1項34号の2、83条、83条の2、84条)
問4損益通算に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1雑所得の金額の計算上生じた損失は、他の所得と損益通算できる。
- 2一時所得の金額の計算上生じた損失は、他の所得と損益通算できる。
- ✔不動産所得の金額の計算上生じた損失のうち、土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分は、損益通算の対象とならない。
- 4生活に通常必要でない資産(別荘等)の譲渡により生じた損失は、他の所得と損益通算できる。
- 5上場株式等の譲渡損失は、給与所得と損益通算できる。
解説:租税特別措置法41条の4により、不動産所得の損失のうち土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額は、損益通算の対象から除外される(選択肢3が正しい)。これは節税目的の不動産投資を抑制するための規定である。損益通算できるのは「不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得」の4つ(覚え方:富士山上=ふ・じ・さん・じょう)であり、1の雑所得、2の一時所得の損失はいずれも損益通算できない(所得税法69条1項)。4は誤り。生活に通常必要でない資産(別荘、ゴルフ会員権、貴金属で30万円超のもの等)の譲渡損失は損益通算できない(所得税法69条2項)。5は誤り。上場株式等の譲渡損失は申告分離課税である上場株式等の配当所得等とのみ損益通算でき、給与所得等の総合課税の所得とは通算できない。翌年以降3年間の繰越控除は可能である(措法37条の12の2)。(参照:所得税法69条、租税特別措置法37条の12の2、41条の4)
問5住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1住宅ローン控除は、所得税額から直接控除される税額控除である。
- 2控除の対象となる借入金は、償還期間が10年以上のものに限られる。
- 3取得した家屋の床面積は、原則として50平方メートル以上である必要がある。
- 4適用を受けるためには、その年分の合計所得金額が2,000万円以下でなければならない。
- ✔給与所得者は、初年度から年末調整のみで住宅ローン控除の適用を受けることができる。
解説:最も不適切なのは5。給与所得者であっても、住宅ローン控除の適用初年度は必ず確定申告が必要である。2年目以降は、税務署から交付される「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」と金融機関発行の「residual 借入金の年末残高等証明書」を勤務先に提出することで年末調整により適用を受けられる。1は正しい。所得控除ではなく税額控除であり、控除しきれない場合は一定額を限度に住民税から控除される。2は正しい(租税特別措置法41条1項)。繰上返済により償還期間が10年未満となった場合、以後の適用は受けられない。3は正しい。原則50平方メートル以上(登記簿上の床面積)。ただし合計所得金額1,000万円以下の者については40平方メートル以上に緩和される特例がある。4は正しい。合計所得金額2,000万円以下が要件である。(参照:租税特別措置法41条、41条の2の2)
問6所得税の確定申告に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1確定申告書の提出期限は、原則として翌年の3月31日である。
- 2確定申告により納付すべき所得税の納期限は、原則として翌年の2月16日である。
- ✔給与所得者であっても、医療費控除の適用を受けるためには確定申告が必要である。
- 4青色申告の承認を受けるためには、その年の12月31日までに申請書を提出すればよい。
- 5確定申告書を提出した後に税額が過大であることが判明した場合、修正申告により是正する。
解説:医療費控除、雑損控除、寄附金控除(ふるさと納税ワンストップ特例を利用しない場合)は年末調整では適用できないため、確定申告が必要である(選択肢3が正しい)。1は誤り。確定申告書の提出期間は原則として翌年2月16日から3月15日までである(所得税法120条1項)。2は誤り。納期限は申告期限と同じく3月15日である(延納制度あり)。4は誤り。青色申告の承認申請書は、原則としてその年の3月15日まで(その年1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内)に提出しなければならない(所得税法144条)。5は誤り。税額が「過大」であった場合の是正は更正の請求(法定申告期限から5年以内、国税通則法23条1項)であり、修正申告は税額が「過少」であった場合に行うものである(同法19条)。この区別は頻出である。(参照:所得税法120条、144条、国税通則法19条、23条1項)
問7勤続年数28年3か月で退職し、退職金2,500万円を受け取った者(役員等ではない、障害による退職でない)の退職所得の金額として、正しいものはどれか。
- ✔535万円
- 2760万円
- 31,070万円
- 4500万円
- 5465万円
解説:退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×2分の1で計算する(所得税法30条2項)。手順は次の3ステップ。①勤続年数の確定:1年未満の端数は切り上げるため、28年3か月→29年となる(所得税法施行令69条1項)。②退職所得控除額の計算:勤続年数20年超の場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」であるから、800万円+70万円×(29年-20年)=800万円+630万円=1,430万円。なお勤続20年以下の場合は「40万円×勤続年数」(最低80万円)である。③退職所得の計算:(2,500万円-1,430万円)×1/2=1,070万円×1/2=535万円(選択肢1が正解)。選択肢3の1,070万円は2分の1を乗じ忘れた誤り。退職所得は分離課税とされ、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば適正な源泉徴収により課税関係が完結する。提出がない場合は収入金額に一律20.42%が源泉徴収される。また勤続5年以下の役員等の退職金には2分の1課税の適用がない(所得税法30条5項)。(参照:所得税法30条、所得税法施行令69条)
問8被相続人Aには配偶者B、実子C・Dがおり、実子Dは相続開始前に死亡している。Dには子E・F(Aの孫)がいる。またAは養子G・H・Iの3人と養子縁組をしている(Aに実子がいる)。この場合の相続税の遺産に係る基礎控除額として、正しいものはどれか。
- 15,400万円
- ✔6,000万円
- 36,600万円
- 44,800万円
- 55,000万円
解説:相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数(相続税法15条1項)。法定相続人の数を数える。まず配偶者B=1人。実子C=1人。実子Dは死亡しているが、その子E・Fが代襲相続人となるため2人としてカウントする(代襲相続人は人数制限を受けない)。ここまでで4人。次に養子G・H・Iについては、相続税法上、被相続人に実子がいる場合は養子は1人までしか法定相続人の数に算入できない(相続税法15条2項1号)。したがって養子は1人のみカウント。合計=配偶者1+実子C1+代襲相続人E・F2+養子1=5人。基礎控除額=3,000万円+600万円×5人=3,000万円+3,000万円=6,000万円(選択肢2が正解)。養子の数の制限(実子あり=1人、実子なし=2人)と、代襲相続人は制限を受けない点が本問の核心である。(参照:相続税法15条1項・2項、相続税法基本通達15-4)
年金アドバイザー3級全250問中 8問を掲載
問1わが国の公的年金制度に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1公的年金制度は、国民年金(基礎年金)を1階部分、厚生年金保険を2階部分とする体系となっている。
- 2平成27年10月に共済年金は厚生年金保険に統合された。
- 3国民年金の第2号被保険者は、厚生年金保険の被保険者である。
- 4国民年金の第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者である。
- ✔公的年金は完全な積立方式により運営されており、現役世代の保険料は自らの将来の給付のためにのみ積み立てられている。
解説:最も不適切なのは5。わが国の公的年金は「賦課方式」を基本としており、現役世代が納める保険料がその時々の高齢者への年金給付に充てられる世代間扶養の仕組みである(一定の積立金も保有しているため、修正賦課方式ともいわれる)。完全積立方式ではない。1は正しい。国民年金が全国民共通の基礎年金を給付し、厚生年金保険が報酬比例の上乗せを行う2階建て構造である。2は正しい。被用者年金一元化法により平成27年10月1日に共済年金は厚生年金保険に統合された。3は正しい(国民年金法7条1項2号)。4は正しい(同項3号)。第3号被保険者は保険料を自ら負担する必要がなく、その分は厚生年金保険の被保険者全体で負担している。年収要件は原則130万円未満かつ被保険者の年収の2分の1未満である。(参照:国民年金法7条1項、被用者年金一元化法)
問2国民年金の被保険者に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- ✔第1号被保険者は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者で、第2号・第3号被保険者以外の者である。
- 2第2号被保険者は、65歳以上であっても老齢年金の受給権の有無にかかわらず第2号被保険者である。
- 3日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の者は、すべて任意加入被保険者となる。
- 4外国籍の者は、日本国内に住所を有していても第1号被保険者となることはできない。
- 5第3号被保険者の届出は、本人が直接市区町村の窓口に行わなければならない。
解説:国民年金法7条1項1号のとおり、第1号被保険者は日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって第2号・第3号被保険者でない者である(選択肢1が正しい)。学生、自営業者、無職の者、農林漁業者などが該当する。2は誤り。65歳以上の厚生年金保険の被保険者のうち、老齢基礎年金・老齢厚生年金等の受給権を有する者は国民年金の第2号被保険者とならない(国民年金法附則3条)。3は誤り。60歳以上65歳未満の者は「任意加入」できるにとどまり、当然に被保険者となるわけではない。老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていない場合や満額に近づけたい場合に申し出により加入する。4は誤り。国籍要件はなく、日本国内に住所を有していれば外国籍でも第1号被保険者となる。5は誤り。第3号被保険者の届出は、配偶者である第2号被保険者の勤務先(事業主)を経由して行う。(参照:国民年金法7条1項、附則3条、同法12条5項)
問3国民年金の保険料に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- ✔第1号被保険者の保険料は前年所得に応じた所得比例であり、所得が高いほど保険料も高くなる。
- 2保険料は、前納することにより割引を受けることができる。
- 3保険料の法定免除は、障害基礎年金の受給権者や生活保護法による生活扶助を受けている者について適用される。
- 4申請免除には、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4段階がある。
- 5保険料の追納は、追納が承認された月の前10年以内の免除期間等について行うことができるが、免除等を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納する場合は加算額が上乗せされる。
解説:最も不適切なのは1。国民年金の第1号被保険者の保険料は所得にかかわらず「定額」であり、令和7年度(2025年度)は月額17,510円である(国民年金法87条3項の保険料改定率による)。所得比例なのは厚生年金保険料(標準報酬月額×保険料率18.3%を労使折半)である。この定額制ゆえに低所得者には負担が重くなるため、免除・猶予制度が用意されている。2は正しい。前納には6か月・1年・2年前納があり、口座振替2年前納が最も割引額が大きい(令和7年度で約16,000円台の割引)。3は正しい(同法89条)。障害基礎年金の受給権者(2級以上)、生活保護の生活扶助受給者等は届出により法定免除となり、原則として該当した月の前月から適用される。4は正しい(同法90条、90条の2)。前年所得により4段階で判定され、全額免除期間は年金額に2分の1が反映される(平成21年3月以前は3分の1)。5は正しい(同法94条)。追納可能期間は10年、免除等を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降の追納には加算額が上乗せされる。(参照:国民年金法87条、89条、90条、90条の2、94条)
問4老齢基礎年金に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1受給資格期間は、原則として保険料納付済期間と保険料免除期間等を合算して25年以上必要である。
- ✔受給資格期間は、原則として保険料納付済期間と保険料免除期間等を合算して10年以上必要である。
- 3老齢基礎年金は、原則として60歳から支給される。
- 420歳前の厚生年金保険の被保険者期間は、老齢基礎年金の額に反映される。
- 5合算対象期間(カラ期間)は、受給資格期間にも年金額にも反映される。
解説:平成29年8月1日より、老齢基礎年金の受給資格期間は25年から10年に短縮された(国民年金法26条、選択肢2が正しく、1は誤り)。無年金者対策として実施された重要な改正である。3は誤り。老齢基礎年金の支給開始年齢は原則65歳である(同法26条)。60歳から64歳までの間に繰上げ請求することは可能だが、減額される。4は誤り。20歳前および60歳以後の厚生年金保険の被保険者期間は、老齢厚生年金の額には反映されるが、老齢基礎年金の額には反映されない(老齢基礎年金は20歳以上60歳未満の40年間=480月が算定の基礎となる)。ただしこれらの期間は受給資格期間には算入される。5は誤り。合算対象期間(カラ期間)は受給資格期間には算入されるが、年金額には一切反映されない。昭和61年3月以前のサラリーマンの配偶者の任意加入未加入期間、海外在住期間、学生の任意加入未加入期間などが該当する。(参照:国民年金法26条、27条、附則7条・8条)
問5次の保険料納付状況の者が65歳から受給する老齢基礎年金の額として、最も近いものはどれか。なお、令和7年度の老齢基礎年金の満額は831,700円(新規裁定者)とし、免除期間はすべて平成21年4月以後のものとする。
【納付状況】保険料納付済期間 420月/全額免除期間 60月/合計480月
- 1831,700円
- ✔779,719円
- 3727,738円
- 4805,709円
- 5675,756円
解説:老齢基礎年金額=満額×(保険料納付済月数+全額免除月数×1/2+…)÷480。平成21年4月以後の全額免除期間は国庫負担割合が2分の1に引き上げられたため、年金額に2分の1が反映される(平成21年3月以前は3分の1)。分子=420月+60月×1/2=420+30=450月。年金額=831,700円×450÷480=831,700円×0.9375=779,718.75円≒779,719円(選択肢2が正解)。選択肢3の727,738円は420÷480で計算した(免除期間を全く反映しなかった)誤り。選択肢1は480月すべて納付済とみなした誤り。反映割合の整理:全額免除=1/2、4分の3免除=5/8、半額免除=3/4、4分の1免除=7/8(いずれも平成21年4月以後)。なお学生納付特例期間・納付猶予期間は受給資格期間には算入されるが、年金額には反映されない(追納すれば反映される)点が重要である。(参照:国民年金法27条、平成16年改正法附則)
問6老齢基礎年金の繰上げ支給および繰下げ支給に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、昭和37年4月2日以後生まれの者について解答すること。
- 1繰上げ支給を請求した場合、1か月あたり0.4%の割合で年金額が減額される。
- 2繰下げ支給を申し出た場合、1か月あたり0.7%の割合で年金額が増額される。
- 3繰下げは最長75歳まで可能であり、最大84%の増額となる。
- 4繰上げ支給の請求をした場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰り上げなければならない。
- ✔いったん繰上げ支給を請求しても、65歳到達までであれば請求を撤回して減額のない年金を受給できる。
解説:最も不適切なのは5。繰上げ支給の請求は撤回できず、減額率は生涯にわたって適用される。これが繰上げの最大のデメリットである。1は正しい。昭和37年4月2日以後生まれの者は1か月あたり0.4%減額(昭和37年4月1日以前生まれは0.5%)。60歳0か月まで繰り上げると60月×0.4%=24%減額となる。2は正しい。1か月あたり0.7%増額。3は正しい。令和4年4月より上限が70歳から75歳に引き上げられ、120月×0.7%=84%増額となる。4は正しい。繰上げは基礎年金と厚生年金の同時請求が必要である(一方のみの繰上げは不可)。これに対し繰下げは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に(一方のみ)行うことができる点が重要な相違点である。また繰上げの他のデメリットとして、寡婦年金の失権、事後重症による障害基礎年金の請求ができなくなる、国民年金の任意加入ができなくなる等がある。(参照:国民年金法附則9条の2、28条、厚生年金保険法附則7条の3、44条の3)
問7老齢厚生年金に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1老齢厚生年金の受給には、厚生年金保険の被保険者期間が10年以上必要である。
- ✔報酬比例部分の年金額は、平均標準報酬額に給付乗率と被保険者期間の月数を乗じて算出する。
- 3特別支給の老齢厚生年金は、男女とも同じ生年月日により支給開始年齢が引き上げられている。
- 4経過的加算は、老齢基礎年金の額が定額部分の額を上回る場合にその差額を支給するものである。
- 5老齢厚生年金には、繰下げ支給の制度は設けられていない。
解説:報酬比例部分の年金額は、平成15年3月以前の期間は「平均標準報酬月額×7.125/1000×被保険者期間の月数」(総報酬制導入前)、平成15年4月以後の期間は「平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間の月数」(総報酬制導入後、賞与も算入)で計算し、両者を合算する(選択肢2が正しい。給付乗率は新規裁定者の本来水準の値)。1は誤り。老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を満たしたうえで、厚生年金保険の被保険者期間が1か月以上あれば支給される(特別支給の老齢厚生年金は1年以上必要)。3は誤り。第1号厚生年金被保険者(会社員)については女性の引上げスケジュールが男性より5年遅れとなっている。4は誤り。経過的加算は「定額部分の額-厚生年金加入期間に係る老齢基礎年金相当額」の差額を補うものであり、記述は逆である。5は誤り。老齢厚生年金にも繰下げ制度がある(最長75歳、1か月0.7%増額)。(参照:厚生年金保険法42条、43条、44条の3、附則8条・9条、平成6年改正法附則)
問8加給年金額に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。令和7年度の価額により解答すること。
- 1加給年金額が加算されるためには、老齢厚生年金の受給権者の厚生年金保険の被保険者期間が原則20年以上であることが必要である。
- 2対象となる配偶者は65歳未満であり、生計を維持されていることが必要である。
- 3対象となる子は、18歳到達年度の末日までの子または20歳未満で障害等級1級・2級に該当する子である。
- 4受給権者の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額には特別加算が行われる。
- ✔配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間20年以上)を受給できる場合であっても、加給年金額は支給停止されない。
解説:最も不適切なのは5。配偶者が厚生年金保険の被保険者期間20年以上(中高齢の資格期間の特例を含む)の老齢厚生年金、または障害年金を受給できる場合、加給年金額は支給停止される(厚生年金保険法46条6項)。「支給停止されない」は誤りである。1は正しい(同法44条1項)。2は正しい。生計維持関係は、生計同一かつ年収850万円未満(または所得655.5万円未満)で判定する。3は正しい。4は正しい。昭和18年4月2日以後生まれの場合、配偶者加給年金額234,800円に特別加算173,300円が加算され、合計408,100円となる(令和7年度)。子の加給年金額は第1子・第2子が各234,800円、第3子以降が各78,300円である。なお配偶者が65歳に達すると加給年金は終了し、代わって配偶者自身の老齢基礎年金に振替加算が行われる(昭和41年4月1日以前生まれの配偶者に限る)。(参照:厚生年金保険法44条、46条6項、昭和60年改正法附則14条)