財務会計論全300問中 8問を掲載
問1討議資料「財務会計の概念フレームワーク」における資産の定義として、最も適切なものはどれか。
- ✔過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源をいう。
- 2報告主体が第三者に対して法的に請求しうる権利のうち、換金可能なものをいう。
- 3貨幣額によって合理的に測定可能な、企業が法的に所有する財産をいう。
- 4将来キャッシュ・フローを生み出す能力を有し、かつ市場価格が観察可能な項目をいう。
- 5将来の収益獲得に貢献することが確実に見込まれる財貨および権利をいう。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
概念フレームワークは資産を「過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源」と定義する。ポイントは(1)過去の事象に起因すること、(2)支配していること(法的所有権は必須でない=リース資産等)、(3)経済的資源であることの3点。5は「確実に」が誤り(不確実性があってよい)。3は法的所有権を要件としている点が誤り。4は市場価格の観察可能性を要件としている点が誤り。
★ポイント:概念フレームワーク:資産=過去の取引・事象の結果として報告主体が支配している経済的資源、負債=経済的資源を放棄・引き渡す義務。収益費用は純資産の変動(資本取引を除く)から定義。意思決定有用性が最上位、信頼性ではなく「内的整合性」「比較可能性」を下位特性に持つ点が特徴的な出題。
問2収益認識に関する会計基準における「5つのステップ」の順序として正しいものはどれか。
- 1契約の識別 → 履行義務の識別 → 取引価格の配分 → 取引価格の算定 → 履行義務充足時の収益認識
- 2取引価格の算定 → 契約の識別 → 履行義務の識別 → 取引価格の配分 → 履行義務充足時の収益認識
- 3履行義務の識別 → 契約の識別 → 取引価格の算定 → 取引価格の配分 → 履行義務充足時の収益認識
- 4契約の識別 → 取引価格の算定 → 履行義務の識別 → 取引価格の配分 → 履行義務充足時の収益認識
- ✔契約の識別 → 履行義務の識別 → 取引価格の算定 → 取引価格の配分 → 履行義務充足時の収益認識
解説:【正解】肢5(他の4肢はどこかに誤りを含む)
5ステップは(1)顧客との契約を識別、(2)契約における履行義務を識別、(3)取引価格を算定、(4)取引価格を契約における履行義務に配分、(5)履行義務を充足した時に(または充足するにつれて)収益を認識、の順。まず契約単位を確定し、その中の履行義務に分解し、次に契約全体の対価を測定してから各履行義務へ配分する、という流れを理解しておくこと。
★ポイント:収益認識基準の5ステップ:契約識別→履行義務識別(別個の財・サービスか)→取引価格算定(変動対価=期待値or最頻値・著しい減額が生じない範囲/重要な金融要素/現金以外の対価)→独立販売価格の比率で配分→充足時に認識(一定期間の3要件:①同時受領消費②顧客資産の創出増価③代替用途なし+対価収受の強制可能な権利)。本人=総額・代理人=純額。返品権付販売は返金負債+返品資産。
問3棚卸資産の期末評価に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお通常の販売目的で保有する棚卸資産とする。
- 1取得原価と再調達原価を比較し、いずれか低い方の金額をもって貸借対照表価額とする。
- 2取得原価を貸借対照表価額とし、評価損は売却時まで認識しない。
- 3収益性の低下が認められても、翌期に回復が見込まれる場合には評価損の計上を要しない。
- ✔取得原価と正味売却価額を比較し、正味売却価額が下回る場合には正味売却価額まで簿価を切り下げる。
- 5取得原価と時価を比較し、時価が著しく下落した場合に限り評価損を計上する。
解説:【正解】肢4(他の4肢はどこかに誤りを含む)
棚卸資産評価基準では、通常の販売目的で保有する棚卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とするが、期末の正味売却価額が取得原価より下落している場合には正味売却価額をもって貸借対照表価額とする(収益性の低下による簿価切下げ)。正味売却価額=売価-見積追加製造原価-見積販売直接経費。再調達原価は、製造業の主要原材料など正味売却価額の把握が困難な場合に継続適用を条件として認められる代替手段にすぎず、原則ではない。
★ポイント:棚卸資産:通常販売目的=正味売却価額まで切下げ(収益性の低下・切放し法と洗替え法の選択)、トレーディング目的=時価PL。簿価切下げは原則売上原価(臨時かつ多額なら特別損失)。棚卸減耗費との区別、売価還元法の原価率算定も頻出。
問4減価償却の目的として、最も適切なものはどれか。
- 1固定資産の期末時価を貸借対照表に反映させること。
- ✔適正な費用配分を行うことにより、毎期の損益計算を適正ならしめること。
- 3固定資産の再取得に必要な資金を社外に留保すること。
- 4固定資産の物理的な価値減少額を正確に測定して開示すること。
- 5課税所得を圧縮し、法人税等の負担を平準化すること。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
企業会計原則注解【注20】等が示すとおり、減価償却の最も重要な目的は適正な費用配分による期間損益計算の適正化にある。減価償却は評価の手続ではなく配分の手続(cost allocation)である点が最重要。3の自己金融効果や、税負担への影響は減価償却の「結果として生じる副次的効果」であって目的ではない。
★ポイント:有形固定資産:取得原価主義(付随費用込み・値引きは控除)。減価償却=定額・定率(200%定率:保証率・改定償却率)・生産高比例。資本的支出と収益的支出。圧縮記帳(直接減額と積立金方式)。資産除去債務=割引後の除去費用を負債計上し同額を資産に加算、時の経過による調整額は費用。
問5固定資産の減損会計における減損損失の認識の判定に用いる金額として、正しいものはどれか。
- 1割引後将来キャッシュ・フローの総額(使用価値)
- 2再調達原価
- ✔割引前将来キャッシュ・フローの総額
- 4正味売却価額
- 5使用価値と正味売却価額のいずれか高い方(回収可能価額)
解説:【正解】肢3(他の4肢はどこかに誤りを含む)
減損は3段階で進む。(1)減損の兆候の把握、(2)減損損失の「認識」の判定=割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較し、総額が帳簿価額を下回る場合に認識する、(3)減損損失の「測定」=帳簿価額を回収可能価額(使用価値と正味売却価額のいずれか高い方)まで減額する。認識段階であえて割引前を用いるのは、減損の戻入れを行わない制度の下で、測定の恣意性と過度な減損計上を抑制するためである。
★ポイント:有形固定資産:取得原価主義(付随費用込み・値引きは控除)。減価償却=定額・定率(200%定率:保証率・改定償却率)・生産高比例。資本的支出と収益的支出。圧縮記帳(直接減額と積立金方式)。資産除去債務=割引後の除去費用を負債計上し同額を資産に加算、時の経過による調整額は費用。
問6所有権移転外ファイナンス・リース取引について、借手が採用する減価償却方法として原則的なものはどれか。
- 1リース期間を耐用年数とし、残存価額を見積処分価額とする方法
- 2経済的耐用年数を耐用年数とし、残存価額を取得原価の10%とする方法
- 3経済的耐用年数を耐用年数とし、残存価額をゼロとする方法
- ✔リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとする方法
- 5自己所有の固定資産と同一の方法によりリース期間にわたって償却する方法
解説:【正解】肢4(他の4肢はどこかに誤りを含む)
所有権移転外ファイナンス・リースでは、リース期間終了後に資産が貸手へ返還され借手に残存価値が帰属しないため、リース期間を耐用年数とし残存価額をゼロとして償却する(償却方法自体は定額法等から企業が選択可)。これに対し所有権移転ファイナンス・リースは実質的に割賦購入であるため、自己所有の固定資産と同一の方法(経済的耐用年数・自己の残存価額)により償却する。両者の区別が頻出論点。
★ポイント:有形固定資産:取得原価主義(付随費用込み・値引きは控除)。減価償却=定額・定率(200%定率:保証率・改定償却率)・生産高比例。資本的支出と収益的支出。圧縮記帳(直接減額と積立金方式)。資産除去債務=割引後の除去費用を負債計上し同額を資産に加算、時の経過による調整額は費用。
問7退職給付会計における数理計算上の差異に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1発生した期に全額を利益剰余金に直接加減する。
- 2退職給付債務の増減にかかわらず、発生年度から10年で定額償却しなければならない。
- 3発生した期にその全額を当期の退職給付費用として処理しなければならない。
- 4個別財務諸表においては、未認識部分を負債として貸借対照表に計上しなければならない。
- ✔原則として発生した期に費用処理せず、平均残存勤務期間以内の一定の年数で按分して費用処理する。
解説:【正解】肢5(他の4肢はどこかに誤りを含む)
数理計算上の差異(年金資産の期待運用収益と実際運用成果の差異、退職給付債務の数理計算上の見積数値と実績との差異、見積数値の変更等により生じた差異)は、平均残存勤務期間以内の一定の年数で定額法等により按分して費用処理する(発生時全額処理も認められる)。連結財務諸表では未認識部分をその他の包括利益を通じて純資産の部(退職給付に係る調整累計額)に計上し負債に反映させるが、個別財務諸表では未認識部分は負債に計上されない。この連単の相違が頻出。
★ポイント:退職給付:退職給付債務(予測単位積増方式・割引率は安全性の高い債券利回り)−年金資産=退職給付引当金(個別)。費用=勤務費用+利息費用−期待運用収益±差異償却。数理計算上の差異・過去勤務費用:個別=遅延認識(平均残存勤務期間以内で規則的)、連結=即時にOCIで認識し純資産計上(組替調整あり)。
問8税効果会計における一時差異等に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 1貸倒引当金の損金算入限度超過額は、将来減算一時差異に該当する。
- 2その他有価証券評価差額金は、一時差異に該当する。
- ✔交際費等の損金不算入額は、将来減算一時差異に該当する。
- 4圧縮記帳による積立金方式に係る差異は、将来加算一時差異に該当する。
- 5税務上の繰越欠損金は、一時差異に準ずるものとして繰延税金資産の計上対象となりうる。
解説:【正解】肢3(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい内容なので、そのまま知識として整理できる)
交際費等の損金不算入額は、将来にわたって永久に損金算入されない「永久差異」であり、一時差異ではないため税効果会計の対象外である。同様に受取配当等の益金不算入額や罰科金も永久差異。一方、貸倒引当金の繰入限度超過額や減価償却超過額は、将来認容され課税所得を減額するため将来減算一時差異となる。その他有価証券評価差額金は資産負債の会計上と税務上の簿価差から生じる一時差異である。
★ポイント:税効果会計:資産負債法・一時差異に回収/支払が見込まれる期の法定実効税率。将来減算一時差異=DTA(回収可能性を分類1〜5で判断・スケジューリング)、将来加算=DTL。その他有価証券評価差額は純資産直入額に対して税効果。繰延税金資産負債はすべて固定区分(投資その他/固定負債)。
管理会計論全190問中 8問を掲載
問1当期の生産量が販売量を上回った場合、全部原価計算による営業利益と直接原価計算による営業利益の関係として正しいものはどれか。なお期首・期末の単位当たり固定製造原価は同額とする。
- ✔全部原価計算の営業利益の方が大きくなる。
- 2変動費率が50%を超える場合に限り、直接原価計算の方が大きくなる。
- 3直接原価計算の営業利益の方が大きくなる。
- 4販売単価の水準により、いずれが大きいかは決まらない。
- 5両者は必ず一致する。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
全部原価計算では固定製造原価が製品原価に含まれ、期末在庫に配分されて次期に繰り延べられる。生産量>販売量の場合は在庫が増加するため、固定製造原価の一部が当期の費用から除かれ、その分だけ全部原価計算の営業利益が大きくなる。逆に生産量<販売量なら直接原価計算の方が大きい。両者の差額=期末在庫に含まれる固定製造原価-期首在庫に含まれる固定製造原価。生産量=販売量なら一致する。
★ポイント:直接原価計算:固定製造原価を期間原価化(貢献利益=売上−変動費)。全部原価計算との営業利益差=固定製造間接費×在庫増減。CVP:損益分岐点=固定費/貢献利益率、安全余裕率、経営レバレッジ係数=貢献利益/営業利益。外部報告には固定費調整が必要。
問2直接材料費について、標準単価200円/kg、標準消費量500kg、実際単価210円/kg、実際消費量520kgであった。材料価格差異として正しいものはどれか。
- 14,000円の不利差異
- ✔5,200円の不利差異
- 36,400円の不利差異
- 45,200円の有利差異
- 51,200円の不利差異
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
材料価格差異=(標準単価-実際単価)×実際消費量=(200-210)×520=△5,200円(不利差異)。価格差異に実際消費量を乗じるのは、購買部門の責任範囲を消費量の実績に基づいて測るため。なお材料数量差異=(標準消費量-実際消費量)×標準単価=(500-520)×200=△4,000円(不利差異)。総差異は実際発生額210×520=109,200円と標準原価200×500=100,000円の差△9,200円で、5,200+4,000と一致する。
★ポイント:費目別計算:材料費=消費量×消費価格(先入先出・平均等・予定価格なら材料消費価格差異)。労務費=作業時間×賃率(直接工の直接作業時間のみ直接労務費)。間接費は製造間接費へ。棚卸減耗は経費(正常分)。
問3直接労務費について、標準賃率1,000円/時間、標準作業時間300時間、実際賃率1,050円/時間、実際作業時間290時間であった。作業時間差異(能率差異)として正しいものはどれか。
- 114,500円の不利差異
- 210,500円の有利差異
- 310,000円の不利差異
- ✔10,000円の有利差異
- 5差異は生じない
解説:【正解】肢4(他の4肢はどこかに誤りを含む)
作業時間差異=(標準作業時間-実際作業時間)×標準賃率=(300-290)×1,000=+10,000円(有利差異)。標準より10時間少なく作業できたため有利。賃率差異=(標準賃率-実際賃率)×実際作業時間=(1,000-1,050)×290=△14,500円(不利差異)。差異分析では、価格系差異(賃率・価格)には実際数量を、数量系差異(時間・数量)には標準単価を乗じるのが原則である。
★ポイント:費目別計算:材料費=消費量×消費価格(先入先出・平均等・予定価格なら材料消費価格差異)。労務費=作業時間×賃率(直接工の直接作業時間のみ直接労務費)。間接費は製造間接費へ。棚卸減耗は経費(正常分)。
問4製造間接費差異の分析における操業度差異の説明として、最も適切なものはどれか。
- ✔固定製造間接費の予定配賦額と固定費予算額との差額であり、生産設備の利用度の良否を示す。
- 2標準操業度と実際操業度の差に変動費率を乗じた金額である。
- 3予定配賦率と実際配賦率の差に標準操業度を乗じた金額である。
- 4実際発生額と実際操業度における予算許容額との差額であり、原価の浪費を示す。
- 5変動製造間接費の実際発生額と標準配賦額との差額である。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
三分法では、予算差異=実際発生額-実際操業度における予算許容額(原価の浪費・節約)、能率差異=(標準操業度-実際操業度)×標準配賦率(または変動費率のみ)、操業度差異=(実際操業度-基準操業度)×固定費率で、固定費の配賦漏れ・過剰配賦を示し、生産設備の利用度の良否を表す。操業度差異は固定費が実際操業度にかかわらず一定額発生することから生じる、能率とは無関係の差異である点が重要。
★ポイント:製造間接費:予定配賦率=予算額/基準操業度。配賦差異=予算差異+操業度差異(固定費率×(実際−基準操業度))。部門別計算:補助部門費の配賦=直接配賦法・階梯式・相互配賦法。実査法変動予算・公式法変動予算の区別。
問5売上高10,000千円、変動費6,000千円、固定費3,000千円のとき、損益分岐点売上高として正しいものはどれか。
- 18,000千円
- 29,000千円
- ✔7,500千円
- 46,000千円
- 55,000千円
解説:【正解】肢3(他の4肢はどこかに誤りを含む)
貢献利益=10,000-6,000=4,000千円。貢献利益率=4,000÷10,000=40%。損益分岐点売上高=固定費÷貢献利益率=3,000÷0.4=7,500千円。検算:売上7,500のとき変動費7,500×60%=4,500、貢献利益3,000、固定費3,000で利益0となり一致する。なお目標利益達成売上高=(固定費+目標利益)÷貢献利益率で計算する。
★ポイント:直接原価計算:固定製造原価を期間原価化(貢献利益=売上−変動費)。全部原価計算との営業利益差=固定製造間接費×在庫増減。CVP:損益分岐点=固定費/貢献利益率、安全余裕率、経営レバレッジ係数=貢献利益/営業利益。外部報告には固定費調整が必要。
問6上記と同じ条件(売上高10,000千円、損益分岐点売上高7,500千円)における安全余裕率として正しいものはどれか。
解説:【正解】肢5(他の4肢はどこかに誤りを含む)
安全余裕率=(実際売上高-損益分岐点売上高)÷実際売上高=(10,000-7,500)÷10,000=25%。これは売上高が25%減少すると損益分岐点に達することを意味し、経営の安全度を示す。損益分岐点比率(=損益分岐点売上高÷実際売上高=75%)と安全余裕率の合計は常に100%になる。安全余裕率が高いほど収益構造は安定している。
★ポイント:直接原価計算:固定製造原価を期間原価化(貢献利益=売上−変動費)。全部原価計算との営業利益差=固定製造間接費×在庫増減。CVP:損益分岐点=固定費/貢献利益率、安全余裕率、経営レバレッジ係数=貢献利益/営業利益。外部報告には固定費調整が必要。
問7平均法と先入先出法による総合原価計算の相違に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ✔先入先出法では、期首仕掛品原価は完成品原価に含められ、当期投入分のみが期末仕掛品の評価に用いられる。
- 2両者は期首仕掛品が存在する場合でも常に同一の結果となる。
- 3平均法では、期首仕掛品原価は完成品原価に全額含められる。
- 4先入先出法では、期首仕掛品原価と当期製造費用を合算して平均単価を算定する。
- 5平均法の方が、当期の原価能率をより適切に把握できる。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
先入先出法は、期首仕掛品が先に完成するとみなすため、期首仕掛品原価は全額完成品原価に算入され、期末仕掛品は当期投入分の原価のみで評価される。したがって当期の原価能率が期末仕掛品と完成品の当期投入部分に純粋に反映され、原価管理上有用である。平均法は期首仕掛品原価と当期製造費用を合算して平均単価を求めるため、前期の原価が期末仕掛品評価に混入する。4と5は平均法・先入先出法の説明が逆になっている。
★ポイント:総合原価計算:月末仕掛品の評価=平均法・先入先出法(加工費は完成品換算量)。正常仕損・減損:完成品のみ負担(検査点通過後)or完成品と月末仕掛品の両者負担(進捗度比較)。非度外視法と度外視法。工程別(累加法・非累加法)・組別・等級別(等価係数)。
問8工程の終点で正常仕損が発生した場合、度外視法による処理として最も適切なものはどれか。
- ✔仕損費を完成品のみに負担させる。
- 2仕損費を全額、製造間接費として各工程に配賦する。
- 3仕損費を完成品と期末仕掛品の両者に数量比で負担させる。
- 4仕損費を期末仕掛品のみに負担させる。
- 5仕損費を非原価項目として営業外費用に計上する。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
度外視法では、正常仕損の発生点と期末仕掛品の加工進捗度を比較して負担関係を決める。仕損が工程の終点で発生した場合、期末仕掛品はまだ仕損の発生点を通過していないため、仕損費は完成品のみが負担する。仕損が工程の始点(または期末仕掛品の進捗度より前)で発生した場合は、期末仕掛品も発生点を通過しているため完成品と期末仕掛品の両者に負担させる。異常仕損費は非原価項目として営業外費用または特別損失に計上する。
★ポイント:個別原価計算:製造指図書別に集計。仕損費:補修指図書の原価を仕損費とし、当該指図書に賦課(正常)or間接費(共通的)。作業屑=発生部門の間接費から控除等。
監査論全150問中 8問を掲載
問1財務諸表監査の目的に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1被監査会社の経営効率の改善に関する助言を行うことにある。
- ✔経営者の作成した財務諸表が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して適正に表示しているかどうかについて、監査人が自らの意見を表明することにある。
- 3財務諸表に不正や誤謬が全く存在しないことを保証することにある。
- 4被監査会社の将来の存続可能性を保証することにある。
- 5財務諸表を監査人が作成し、その正確性を担保することにある。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
監査基準は、財務諸表監査の目的を「経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明すること」と定める。監査は合理的保証であって絶対的保証ではなく、また将来の存続可能性や経営の効率性を保証するものでもない。
★ポイント:監査の目的:財務諸表の適正性(一般に公正妥当と認められる企業会計の基準への準拠・全体としての適正表示)に対する意見表明。二重責任の原則=財務諸表の作成責任は経営者、意見表明責任は監査人。合理的保証(絶対的保証ではない)・監査の固有の限界。
問2二重責任の原則に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1監査人は財務諸表の作成を支援した場合であっても、独立性を害されない。
- 2経営者と監査人が財務諸表の適正性について連帯して責任を負う。
- 3内部統制の整備・運用責任は監査人にある。
- ✔財務諸表の作成責任は経営者にあり、監査人の責任は当該財務諸表に対する意見表明にある。
- 5財務諸表の作成責任と意見表明責任の双方を監査人が負う。
解説:【正解】肢4(他の4肢はどこかに誤りを含む)
二重責任の原則とは、財務諸表の作成責任は経営者、その財務諸表に対する意見表明責任は監査人という責任の区分をいう。これは監査人の独立性を確保し、自己監査(自らが作成したものを自ら監査すること)を防ぐための基本原則である。したがって監査人が被監査会社の財務諸表作成に関与することは独立性を害する。内部統制の整備・運用責任も経営者にある。
★ポイント:監査の目的:財務諸表の適正性(一般に公正妥当と認められる企業会計の基準への準拠・全体としての適正表示)に対する意見表明。二重責任の原則=財務諸表の作成責任は経営者、意見表明責任は監査人。合理的保証(絶対的保証ではない)・監査の固有の限界。
問3監査リスク・モデルに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ✔監査リスクは、重要な虚偽表示リスクと発見リスクによって構成される。
- 2発見リスクは、監査人が直接的に管理できないリスクである。
- 3監査リスクをゼロとすることが、監査人に求められている。
- 4重要な虚偽表示リスクが高いと評価された場合、発見リスクを高く設定する。
- 5監査リスクは、固有リスクと統制リスクの積により算定される。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
監査リスク=重要な虚偽表示リスク(固有リスク×統制リスク)×発見リスク。重要な虚偽表示リスクは企業側に存在するリスクで監査人が直接管理できず、評価するのみ。発見リスクは監査人が監査手続の種類・時期・範囲を通じて制御できる唯一の要素である。重要な虚偽表示リスクを高く評価した場合、監査リスクを許容可能な低い水準に抑えるには発見リスクを低く設定し、より広範・厳格な実証手続が必要となる(4は逆)。監査は合理的保証であるため監査リスクをゼロにすることは求められない。
★ポイント:リスク・アプローチ:監査リスク=重要な虚偽表示リスク(固有×統制)×発見リスク。RMMを財務諸表全体レベルとアサーション・レベルで識別評価し、発見リスクの水準を決めて手続を設計。特別な検討を必要とするリスク(会計上の見積り・収益認識の不正リスク推定)には固有の対応。
問4監査における重要性の基準値に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1重要性は金額的側面のみによって判断され、質的側面は考慮されない。
- 2監査計画時に一度決定したら、監査の終了まで変更してはならない。
- 3手続実施上の重要性は、重要性の基準値より高い金額に設定される。
- 4重要性の基準値は、監査人ではなく経営者が決定する。
- ✔監査計画の策定時に決定し、監査の過程で新たな情報を入手した場合には改訂する。
解説:【正解】肢5(他の4肢はどこかに誤りを含む)
重要性の基準値は監査計画の策定において決定するが、当初想定と異なる状況や新たな情報を入手した場合には改訂しなければならない。重要性は監査人が職業的専門家としての判断により決定する。また金額的重要性のみならず質的重要性(法令違反、関連当事者取引、経営者不正の兆候等)も考慮する。手続実施上の重要性は、未修正の虚偽表示の集計額が重要性の基準値を超える可能性を適切に低い水準に抑えるため、重要性の基準値より「低い」金額に設定される。
★ポイント:監査計画:監査の基本的な方針+詳細な監査計画。重要性の基準値(財務諸表全体)+手続実施上の重要性を設定し、状況の変化で改訂。監査計画は監査の過程で継続的に見直す(固定的でない)。
問5リスク・アプローチに基づく監査の実施手順として、最も適切なものはどれか。
- 1実証手続 → リスク評価手続 → 運用評価手続
- 2リスク対応手続 → リスク評価手続 → 監査意見の形成
- 3分析的手続 → 実証手続 → リスク評価手続
- 4運用評価手続 → リスク評価手続 → 実証手続
- ✔リスク評価手続 → 重要な虚偽表示リスクの識別と評価 → リスク対応手続(運用評価手続・実証手続)
解説:【正解】肢5(他の4肢はどこかに誤りを含む)
リスク・アプローチでは、まず企業および企業環境の理解(内部統制を含む)を通じたリスク評価手続を実施し、財務諸表全体レベルおよびアサーション・レベルで重要な虚偽表示リスクを識別・評価する。次にその評価に対応して、内部統制の運用状況の有効性を評価する運用評価手続および実証手続(詳細テスト・分析的実証手続)を実施する。限られた監査資源をリスクの高い領域に重点配分し、監査の有効性と効率性を同時に確保する点に意義がある。
★ポイント:リスク・アプローチ:監査リスク=重要な虚偽表示リスク(固有×統制)×発見リスク。RMMを財務諸表全体レベルとアサーション・レベルで識別評価し、発見リスクの水準を決めて手続を設計。特別な検討を必要とするリスク(会計上の見積り・収益認識の不正リスク推定)には固有の対応。
問6内部統制の基本的要素として、我が国の内部統制基準が掲げるものに含まれないものはどれか。
- 1ITへの対応
- 2情報と伝達
- 3リスクの評価と対応
- ✔経営者による業績予想の開示
- 5統制環境
解説:【正解】肢4(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい内容なので、そのまま知識として整理できる)
我が国の内部統制基準が掲げる基本的要素は、(1)統制環境、(2)リスクの評価と対応、(3)統制活動、(4)情報と伝達、(5)モニタリング(監視活動)、(6)ITへの対応の6つ。COSOフレームワークの5要素に、我が国独自に「ITへの対応」を加えた点が特徴である。業績予想の開示は内部統制の基本的要素ではない。統制環境は他のすべての要素の基礎をなす最も重要な要素とされる。
★ポイント:内部統制:整備状況の理解・評価(デザインと業務への適用)は必須、運用評価手続は統制に依拠する場合に実施。内部統制の限界=経営者による無効化・共謀・想定外の取引。IT統制=全般統制(ITGC)と業務処理統制(ITAC)。
問7監査証拠の十分性および適切性に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1監査証拠の適切性が高ければ、量は一切考慮しなくてよい。
- ✔十分性は監査証拠の量的尺度であり、適切性は監査証拠の質的尺度である。
- 3企業内部で作成された証拠は、外部の情報源から入手した証拠より常に証明力が高い。
- 4十分性は監査証拠の質的尺度であり、適切性は量的尺度である。
- 5監査人が自ら実施した実査により入手した証拠は、閲覧により入手した証拠より証明力が低い。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
十分性は監査証拠の量、適切性は監査証拠の質(監査意見を裏付ける証拠の適合性と証明力)を表す。必要な監査証拠の量は重要な虚偽表示リスクの程度と証拠の質に影響を受け、質が高ければ必要な量は減るが、質が低い証拠を量で補うことはできない。証明力は一般に、企業外部から直接入手した証拠>企業内部の証拠、内部統制が有効な下での証拠>そうでない証拠、監査人が自ら直接入手した証拠(実査・立会・再計算)>間接的な証拠、原本>写しの順に高い。
★ポイント:監査証拠:十分かつ適切な証拠。手続:実査(現物)・立会(棚卸の観察)・確認(第三者への直接照会=実在性に強い)・質問・視察・閲覧・再計算・再実施・分析的手続。証拠力:外部>内部、直接入手>間接。アサーション(実在性・網羅性・権利義務・評価・期間帰属・表示)との対応が最頻出。
問8確認(confirmation)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1確認は、内部統制の運用状況の有効性を評価するための手続である。
- 2積極的確認は、回答がない場合に残高が正しいものとみなす方法である。
- 3被監査会社を通じて取引先から回答を入手する手続である。
- 4確認は棚卸資産の実在性を確かめるための最も有効な手続である。
- ✔監査人が第三者から直接、文書による回答を入手する監査手続であり、証明力の高い監査証拠が得られる。
解説:【正解】肢5(他の4肢はどこかに誤りを含む)
確認は、監査人が企業外部の第三者(取引先、金融機関、弁護士等)から文書等により直接回答を入手する手続で、外部証拠かつ監査人が直接入手するため証明力が高い。必ず監査人が発送・回収を管理し、被監査会社を経由させてはならない。積極的確認は残高の正否にかかわらず回答を求める方法(回答がなければ代替手続が必要)、消極的確認は不一致の場合のみ回答を求める方法で証明力は低い。棚卸資産の実在性には立会が有効である。
★ポイント:監査証拠:十分かつ適切な証拠。手続:実査(現物)・立会(棚卸の観察)・確認(第三者への直接照会=実在性に強い)・質問・視察・閲覧・再計算・再実施・分析的手続。証拠力:外部>内部、直接入手>間接。アサーション(実在性・網羅性・権利義務・評価・期間帰属・表示)との対応が最頻出。
企業法全150問中 8問を掲載
問1株式会社の定款の絶対的記載事項に該当しないものはどれか。
- 1発起人の氏名または名称および住所
- ✔発行可能株式総数
- 3商号
- 4目的
- 5本店の所在地
解説:【正解】肢2(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい内容なので、そのまま知識として整理できる)
会社法27条は、定款の絶対的記載事項として(1)目的、(2)商号、(3)本店の所在地、(4)設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、(5)発起人の氏名または名称および住所の5つを定める。発行可能株式総数は原始定款に記載する必要はなく、会社の成立の時までに定款を変更して定めれば足りる(37条)。ただし成立時までには必ず定めなければならない点に注意。なお現物出資・財産引受け等の変態設立事項は相対的記載事項(28条)である。
★ポイント:設立:発起設立(発起人が全株引受け)と募集設立(創立総会)。定款=公証人の認証、絶対的記載事項(目的・商号・本店・出資最低額・発起人)。変態設立事項(現物出資・財産引受け等)=原則検査役調査(500万円以下・市場価格・専門家証明の例外)。発起人の払込仮装の責任・設立無効の訴え(2年内・株主等)。
問2発起設立と募集設立の相違に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1募集設立では、払込取扱機関による払込金保管証明書は不要である。
- ✔発起設立では、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける。
- 3発起設立では、必ず創立総会を開催しなければならない。
- 4発起設立では、設立時取締役の選任を創立総会で行う。
- 5募集設立では、発起人は設立時発行株式を引き受けることができない。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
発起設立は発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法(25条1項1号)、募集設立は発起人が一部を引き受け、残部について株式引受人を募集する方法(同2号)。発起人は募集設立でも必ず1株以上引き受ける(25条2項)。創立総会は募集設立でのみ開催され、そこで設立時取締役等を選任する。払込金保管証明書は募集設立でのみ必要で、発起設立では残高証明書で足りる(64条)。募集設立は出資者保護の観点から手続が厳格である。
★ポイント:設立:発起設立(発起人が全株引受け)と募集設立(創立総会)。定款=公証人の認証、絶対的記載事項(目的・商号・本店・出資最低額・発起人)。変態設立事項(現物出資・財産引受け等)=原則検査役調査(500万円以下・市場価格・専門家証明の例外)。発起人の払込仮装の責任・設立無効の訴え(2年内・株主等)。
問3株主総会の特別決議の要件として、正しいものはどれか(定款に別段の定めがない場合)。
- 1議決権を行使できる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上の多数
- 2議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数
- 3総株主の議決権の4分の3以上の多数
- 4議決権を行使できる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数
- ✔議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数
解説:【正解】肢5(他の4肢はどこかに誤りを含む)
特別決議(309条2項)は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定款で3分の1以上まで引下げ可)、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行う。対象は定款変更、事業譲渡、合併等の組織再編、資本金の額の減少、募集株式の有利発行、監査役の解任など。1は特殊決議(309条3項:議決権を行使できる株主の半数以上かつ議決権の3分の2以上)の要件で、全部の株式に譲渡制限を設ける定款変更等に適用される。
★ポイント:株主総会:権限(取締役会設置会社では法定事項+定款事項に限定)。招集=原則取締役会決定・代表取締役が招集、株主の招集請求(3%・6か月)。議決権:1株1議決権の例外(自己株式・相互保有・単元未満)。決議:普通(過半数)・特別(2/3)・特殊決議。決議取消しの訴え(3か月・裁量棄却)・無効不存在確認。株主提案権(300個・6か月、議案要領通知請求は10まで)。
問4取締役の競業取引および利益相反取引に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1承認を受けずに競業取引を行った場合でも、取締役は会社に対し損害賠償責任を負わない。
- ✔取締役会設置会社において、取締役が自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引をしようとするときは、取締役会において重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
- 3競業取引の承認を受けた場合、取引後の報告は不要である。
- 4利益相反取引については、株主全員の同意がなければ行うことができない。
- 5会社が取締役の債務を保証する行為は、利益相反取引に該当しない。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
競業取引(356条1項1号)および利益相反取引(同2号の直接取引・3号の間接取引)は、取締役会設置会社では取締役会の承認(取締役会非設置会社では株主総会の承認)を要する。承認を受けた場合でも、取締役会設置会社では取引後遅滞なく重要な事実を取締役会に報告しなければならない(365条2項)。会社が取締役の債務を保証する行為は会社と第三者の間の取引だが取締役の利益と会社の利益が相反するため間接取引に該当する。競業の承認を得ずに取引した場合、当該取引で取締役・第三者が得た利益額が会社の損害額と推定される(423条2項)。
★ポイント:取締役:善管注意義務・忠実義務。競業取引・利益相反取引(直接・間接)=取締役会(非設置は総会)の承認+事後報告。承認があっても任務懈怠責任はあり得る(利益相反の自己のためにした直接取引は無過失責任)。報酬等=定款or株主総会決議(お手盛り防止)。解任=総会普通決議(累積投票選任等は特別)・正当な理由なき解任は損害賠償。
問5取締役の義務に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1取締役の会社に対する損害賠償責任は、いかなる場合も免除することができない。
- 2取締役は、経営判断の結果が会社に損害をもたらした場合、常に責任を負う。
- 3社外取締役は、善管注意義務を負わない。
- ✔取締役は会社に対して善良な管理者の注意義務を負い、あわせて法令・定款および株主総会の決議を遵守し会社のため忠実に職務を行う義務を負う。
- 5取締役は会社との間で雇用契約を締結しており、労働者としての義務を負う。
解説:【正解】肢4(他の4肢はどこかに誤りを含む)
取締役と会社の関係は委任に関する規定に従い(330条)、取締役は善管注意義務(民法644条)を負う。さらに会社法355条が忠実義務を定める(判例は忠実義務を善管注意義務の内容を具体化・明確化したものと解する=同質説)。任務懈怠責任(423条)は、総株主の同意による全部免除(424条)、株主総会決議等による一部免除(425条以下)、責任限定契約(427条:非業務執行取締役等)により免除・限定されうる。経営判断原則により、判断の過程・内容に著しい不合理がなければ責任を負わない。
★ポイント:取締役:善管注意義務・忠実義務。競業取引・利益相反取引(直接・間接)=取締役会(非設置は総会)の承認+事後報告。承認があっても任務懈怠責任はあり得る(利益相反の自己のためにした直接取引は無過失責任)。報酬等=定款or株主総会決議(お手盛り防止)。解任=総会普通決議(累積投票選任等は特別)・正当な理由なき解任は損害賠償。
問6取締役会の決議に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ✔決議に特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
- 2取締役は、代理人により議決権を行使することができる。
- 3取締役会の決議は、書面決議によることが一切認められない。
- 4取締役会の招集通知は、会日の2週間前までに発しなければならない。
- 5取締役会の決議要件は、議決に加わることができる取締役の3分の2以上が出席し、その3分の2以上をもって行う。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができない(369条2項)。決議要件は議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行う(定款で加重可、369条1項)。取締役は会社から個人的信頼に基づき選任されているため代理行使は認められない。招集通知は原則として会日の1週間前まで(定款で短縮可、368条1項)で、書面等による招集省略も可(全員同意、368条2項)。定款に定めがあり取締役全員が書面等で同意し監査役が異議を述べない場合は決議の省略(370条)も認められる。
★ポイント:機関設計:株主総会+取締役は必須。公開会社→取締役会必置、大会社→会計監査人必置、公開大会社→監査役会等+会計監査人。取締役会=業務執行の決定・監督、重要な業務執行(重要財産の処分・多額の借財等)は委任不可。監査役=業務監査+会計監査(非公開・非監査役会設置は会計限定可)、任期4年(短縮不可)。監査等委員会・指名委員会等設置会社の比較。
問7監査役に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1監査役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである。
- 2監査役は、取締役会に出席する義務を負わない。
- ✔公開会社である監査役設置会社の監査役の権限は、原則として会計監査のみならず業務監査にも及ぶ。
- 4監査役の解任は、株主総会の普通決議による。
- 5監査役は、取締役を兼任することができる。
解説:【正解】肢3(他の4肢はどこかに誤りを含む)
監査役の監査は原則として業務監査および会計監査に及ぶ。ただし公開会社でない株式会社(監査役会設置会社・会計監査人設置会社を除く)は、定款により監査の範囲を会計監査に限定できる(389条1項)。監査役は会社・子会社の取締役、支配人その他の使用人等を兼ねることができない(335条2項:兼任禁止)。任期は選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結時までで、取締役より長い(独立性確保のため)。解任には株主総会の特別決議を要する(309条2項7号)。取締役会への出席義務および必要時の意見陳述義務がある(383条1項)。
★ポイント:機関設計:株主総会+取締役は必須。公開会社→取締役会必置、大会社→会計監査人必置、公開大会社→監査役会等+会計監査人。取締役会=業務執行の決定・監督、重要な業務執行(重要財産の処分・多額の借財等)は委任不可。監査役=業務監査+会計監査(非公開・非監査役会設置は会計限定可)、任期4年(短縮不可)。監査等委員会・指名委員会等設置会社の比較。
問8指名委員会等設置会社に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1指名委員会等設置会社は、会計監査人を置く必要がない。
- 2報酬委員会は、取締役および執行役の個人別の報酬等の内容について株主総会に提案するにとどまる。
- ✔指名委員会、監査委員会および報酬委員会を置き、各委員会の委員の過半数は社外取締役でなければならない。
- 4指名委員会等設置会社には、監査役を置かなければならない。
- 5業務執行は取締役が行い、執行役を置くことはできない。
解説:【正解】肢3(他の4肢はどこかに誤りを含む)
指名委員会等設置会社は指名・監査・報酬の3委員会を置き、各委員会は取締役3人以上で構成され、その過半数は社外取締役でなければならない(400条)。監査委員会が監査を担うため監査役を置くことはできない(327条4項)。会計監査人の設置は義務(327条5項)。業務執行は取締役会が選任する執行役が行い、取締役は原則として業務執行できない(415条)。報酬委員会は取締役・執行役の個人別の報酬等の内容を「決定」する権限を有し(404条3項)、株主総会の決議を要しない点が最大の特徴である。
★ポイント:機関設計:株主総会+取締役は必須。公開会社→取締役会必置、大会社→会計監査人必置、公開大会社→監査役会等+会計監査人。取締役会=業務執行の決定・監督、重要な業務執行(重要財産の処分・多額の借財等)は委任不可。監査役=業務監査+会計監査(非公開・非監査役会設置は会計限定可)、任期4年(短縮不可)。監査等委員会・指名委員会等設置会社の比較。
租税法全150問中 8問を掲載
問1法人税法上の益金の額に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ✔別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償または無償による資産の譲渡もしくは役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る収益の額とされる。
- 2無償による資産の譲渡からは、益金は生じない。
- 3会計上の収益の額が、そのまま益金の額となる。
- 4資本金の払込みによる収入は、益金の額に算入される。
- 5益金の額は、現金の収入があった時点で認識される。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
法人税法22条2項は、益金の額を「別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償または無償による資産の譲渡または役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額」と定める。無償譲渡からも益金が生じる(適正な時価で譲渡し、同額を寄附金等として支出したと構成する:二段階説)点が重要。資本等取引(増資・減資・剰余金の配当等)は益金・損金のいずれにも算入されない。会計上の収益は「別段の定め」による調整を経て益金となる(確定決算主義・公正処理基準)。
★ポイント:法人税:課税所得=益金−損金(公正処理基準+別段の定め)。申告調整と決算調整(損金経理要件:減価償却・引当金等)。受取配当等の益金不算入(完全子法人100%・関連法人100%負債利子控除・その他50%・非支配20%)。役員給与(定期同額・事前確定届出・業績連動のみ損金)、交際費(中小800万or飲食費50%)、寄附金限度、貸倒損失の3類型、欠損金繰越10年(中小100%控除)。
問2交際費等の損金不算入制度に関する記述として、最も適切なものはどれか(期末資本金1億円以下の中小法人を前提とする)。
- 1定額控除限度額と接待飲食費の50%相当額の双方を、重複して損金算入できる。
- ✔定額控除限度額(年800万円)までの全額を損金算入する方法と、接待飲食費の50%相当額を損金算入する方法のいずれかを選択できる。
- 3交際費等は、金額の多寡にかかわらず全額が損金不算入となる。
- 4接待飲食費については、その100%が損金算入される。
- 5交際費等は、全額が損金算入される。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
中小法人(期末資本金1億円以下等)は、(A)定額控除限度額年800万円までの損金算入と、(B)接待飲食費の50%相当額の損金算入のいずれかを選択適用できる。資本金100億円超の法人は(B)も適用できず全額損金不算入。なお1人当たり一定金額以下の飲食費(令和6年4月1日以後に支出するものは1万円以下、それ以前は5,000円以下)は、一定の書類保存を要件として交際費等の範囲から除外される。交際費等の損金不算入は永久差異であり、税効果会計の対象とならない。
★ポイント:法人税:課税所得=益金−損金(公正処理基準+別段の定め)。申告調整と決算調整(損金経理要件:減価償却・引当金等)。受取配当等の益金不算入(完全子法人100%・関連法人100%負債利子控除・その他50%・非支配20%)。役員給与(定期同額・事前確定届出・業績連動のみ損金)、交際費(中小800万or飲食費50%)、寄附金限度、貸倒損失の3類型、欠損金繰越10年(中小100%控除)。
問3役員給与の損金算入に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1使用人兼務役員に対する使用人分給与は、いかなる場合も損金不算入となる。
- 2役員賞与は、支給額が確定していれば届出なく損金算入できる。
- 3役員退職給与は、不相当に高額であっても全額が損金算入される。
- ✔定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれにも該当しない役員給与は、原則として損金の額に算入されない。
- 5役員給与は、その全額が損金の額に算入される。
解説:【正解】肢4(他の4肢はどこかに誤りを含む)
法人税法34条により、役員給与のうち損金算入が認められるのは原則として(1)定期同額給与、(2)事前確定届出給与、(3)業績連動給与(同族会社に該当しない法人等が対象、指標の開示等の要件あり)の3類型に限られる。これは役員が自らの給与額を操作して利益調整することを防ぐ趣旨。ただしこれらに該当しても、不相当に高額な部分の金額(実質基準・形式基準)は損金不算入となる(34条2項)。役員退職給与も不相当に高額な部分は損金不算入。使用人兼務役員の使用人分給与は原則損金算入される。
★ポイント:法人税:課税所得=益金−損金(公正処理基準+別段の定め)。申告調整と決算調整(損金経理要件:減価償却・引当金等)。受取配当等の益金不算入(完全子法人100%・関連法人100%負債利子控除・その他50%・非支配20%)。役員給与(定期同額・事前確定届出・業績連動のみ損金)、交際費(中小800万or飲食費50%)、寄附金限度、貸倒損失の3類型、欠損金繰越10年(中小100%控除)。
問4受取配当等の益金不算入制度における株式等の区分と益金不算入割合の組合せとして、正しいものはどれか。
- 1完全子法人株式等100%、関連法人株式等50%、その他の株式等20%、非支配目的株式等0%
- 2完全子法人株式等50%、関連法人株式等50%、その他の株式等50%、非支配目的株式等50%
- 3すべての区分について一律50%
- 4完全子法人株式等100%、関連法人株式等80%、その他の株式等60%、非支配目的株式等40%
- ✔完全子法人株式等100%、関連法人株式等100%(負債利子控除後)、その他の株式等50%、非支配目的株式等20%
解説:【正解】肢5
区分は保有割合により、(1)完全子法人株式等(100%)→全額益金不算入、(2)関連法人株式等(3分の1超100%未満)→全額益金不算入だが負債利子(原則として配当額の4%相当額等)を控除、(3)その他の株式等(5%超3分の1以下)→50%、(4)非支配目的株式等(5%以下)→20%。この制度は法人間で配当が繰り返されることによる二重課税の排除を目的とし、支配関係が強いほど不算入割合が高くなる。益金不算入額は永久差異である。
★ポイント:株式:株式譲渡自由の原則、譲渡制限株式(承認機関・みなし承認)。自己株式取得=財源規制(分配可能額)+手続規制(株主総会決議・ミニ公開買付け等)。子会社による親会社株式取得は原則禁止。株式の併合・分割・無償割当て、単元株制度。株主平等原則と株主優待の限界。
問5減価償却資産の償却限度額に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ✔法人が損金経理した償却費のうち、償却限度額に達するまでの金額が損金の額に算入される。
- 2償却超過額は、翌事業年度において必ず損金算入される。
- 3償却限度額に達しない場合、不足額は当然に損金算入される。
- 4減価償却は、損金経理を要件とせず申告調整のみで損金算入できる。
- 5少額減価償却資産(取得価額10万円未満)は、必ず資産計上しなければならない。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
減価償却費は損金経理が要件であり(法人税法31条)、損金経理した金額のうち償却限度額に達するまでの金額が損金算入される。限度額に満たない部分(償却不足額)は損金算入されず、翌期以降に繰り越して損金算入することもできない(任意償却ではない)。償却超過額は将来減算一時差異となり、後の事業年度に償却不足額が生じたときにその範囲内で認容(損金算入)される。取得価額10万円未満の少額減価償却資産は事業供用時に全額損金算入でき、20万円未満は3年一括償却、中小企業者等は特例により30万円未満(年300万円まで)を即時償却できる。
★ポイント:有形固定資産:取得原価主義(付随費用込み・値引きは控除)。減価償却=定額・定率(200%定率:保証率・改定償却率)・生産高比例。資本的支出と収益的支出。圧縮記帳(直接減額と積立金方式)。資産除去債務=割引後の除去費用を負債計上し同額を資産に加算、時の経過による調整額は費用。
問6欠損金の繰越控除に関する記述として、最も適切なものはどれか(青色申告法人を前提とする)。
- 1中小法人等についても、所得金額の50%が控除限度額となる。
- ✔欠損金額は、原則として10年間繰り越すことができるが、資本金1億円超の法人等については各事業年度の所得金額の50%が控除限度額となる。
- 3欠損金の繰越期間は5年であり、控除限度額の制限はない。
- 4欠損金の繰戻し還付は、いかなる法人にも認められていない。
- 5欠損金の繰越控除の適用に、青色申告書の提出は要件とされない。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、10年間(平成30年4月1日以後開始事業年度発生分)繰り越して控除できる。控除限度額は各事業年度の繰越控除前所得金額の50%だが、中小法人等(期末資本金1億円以下で大法人の完全子会社等でないもの)、更生手続開始決定後一定期間の法人、新設法人の一定期間等は100%控除が可能。繰越控除には欠損事業年度に青色申告書を提出し、その後連続して確定申告書を提出していることが要件。欠損金の繰戻し還付は原則不適用だが中小企業者等については適用される。
★ポイント:法人税:課税所得=益金−損金(公正処理基準+別段の定め)。申告調整と決算調整(損金経理要件:減価償却・引当金等)。受取配当等の益金不算入(完全子法人100%・関連法人100%負債利子控除・その他50%・非支配20%)。役員給与(定期同額・事前確定届出・業績連動のみ損金)、交際費(中小800万or飲食費50%)、寄附金限度、貸倒損失の3類型、欠損金繰越10年(中小100%控除)。
問7貸倒引当金の繰入限度額に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1貸倒引当金の繰入超過額は、永久差異に該当する。
- ✔現行制度上、貸倒引当金の繰入限度額の損金算入が認められるのは、中小法人等、銀行・保険会社等、一定のリース債権を有する法人等に限られる。
- 3個別評価金銭債権については、法定繰入率により繰入限度額を算定する。
- 4すべての法人について、貸倒引当金の繰入額は損金算入される。
- 5一括評価金銭債権については、債務者ごとの回収可能性に基づき個別に算定する。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
平成23年度改正により、貸倒引当金の損金算入は中小法人等、銀行・保険会社等、リース債権等を有する一定の法人に限定された。繰入限度額は、個別評価金銭債権(更生手続開始申立て等の事由が生じた債権)については債権ごとに実質的に回収不能と見込まれる額をもとに算定し、一括評価金銭債権(それ以外の売掛金・貸付金等)については貸倒実績率、または中小法人等は法定繰入率(業種別)によることができる。説明が3と4で逆になっている。繰入超過額は翌期に洗替えで認容されるため将来減算一時差異(永久差異ではない)。
★ポイント:債権区分と引当:一般債権=貸倒実績率法、貸倒懸念債権=財務内容評価法orキャッシュ・フロー見積法(割引は当初の約定利子率)、破産更生債権等=財務内容評価法。CF見積法の時の経過による引当金減額は受取利息or引当金戻入で処理。
問8寄附金の損金算入に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1一般の寄附金は、支出額の全額が損金算入される。
- ✔国または地方公共団体に対する寄附金および指定寄附金は、その全額が損金の額に算入される。
- 3特定公益増進法人に対する寄附金は、一般の寄附金と全く同じ限度額計算による。
- 4寄附金は現実に支払っていなくても、未払計上した時点で損金算入できる。
- 5すべての寄附金は、その全額が損金不算入となる。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
寄附金は3区分で扱う。(1)国・地方公共団体に対する寄附金および財務大臣が指定した指定寄附金→全額損金算入、(2)特定公益増進法人・認定NPO法人等に対する寄附金→一般の寄附金とは別枠の特別損金算入限度額まで損金算入し、超過額は一般の寄附金に含める、(3)一般の寄附金→損金算入限度額((資本金等の額×当期の月数/12×2.5/1000+所得金額×2.5/100)×1/4)まで。寄附金は現実に支払われた時に支出があったものとされ、未払計上額は損金算入できない(現金主義)。
★ポイント:法人税:課税所得=益金−損金(公正処理基準+別段の定め)。申告調整と決算調整(損金経理要件:減価償却・引当金等)。受取配当等の益金不算入(完全子法人100%・関連法人100%負債利子控除・その他50%・非支配20%)。役員給与(定期同額・事前確定届出・業績連動のみ損金)、交際費(中小800万or飲食費50%)、寄附金限度、貸倒損失の3類型、欠損金繰越10年(中小100%控除)。
経営学全60問中 8問を掲載
問1ポーターの5つの競争要因(ファイブ・フォース)に含まれないものはどれか。
- 1代替品の脅威
- 2既存企業間の敵対関係
- 3売り手の交渉力
- 4新規参入の脅威
- ✔補完財提供者の交渉力
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい内容なので、そのまま知識として整理できる)
ポーターの5フォースは、(1)新規参入の脅威、(2)代替品(代替製品・サービス)の脅威、(3)買い手の交渉力、(4)売り手(供給業者)の交渉力、(5)既存企業間の敵対関係の5つ。これらの強さが業界の平均的収益性を規定するという業界構造分析の枠組みである。「補完財提供者」を第6の要因として加えるのはブランデンバーガーとネイルバフの価値相関図(バリューネット)の考え方であり、ポーターの原モデルには含まれない。
問2ポーターの3つの基本戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1差別化戦略は、業界の狭いセグメントのみを対象とする戦略である。
- ✔コスト・リーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略の3つであり、いずれを追求するかを明確にしないと『二兎を追う者』の状態に陥る。
- 3コスト・リーダーシップ戦略と差別化戦略は、いかなる企業も同時に達成できない。
- 4コスト・リーダーシップ戦略、多角化戦略、垂直統合戦略の3つである。
- 5集中戦略は、常に価格を引き下げることによって実現される。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
ポーターは競争優位の源泉(低コストか差別化か)と競争の範囲(広いか狭いか)の2軸から、コスト・リーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略(コスト集中・差別化集中に細分)を導いた。いずれも明確に選択せず中途半端になった状態を「スタック・イン・ザ・ミドル(二兎を追う者は一兎をも得ず)」と呼び、低収益に陥ると警告した。ただし後年の研究では、トヨタのように低コストと差別化を同時に実現する企業の存在も指摘されており、3のように「いかなる企業も不可能」と断定するのは適切でない。
問3BCGのプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)における「金のなる木(Cash Cow)」の特徴として、最も適切なものはどれか。
- 1市場成長率も相対的市場シェアも低く、撤退が検討される。
- 2市場成長率は低いが相対的市場シェアも低く、安定した資金供給源となる。
- ✔市場成長率は低いが相対的市場シェアは高く、資金の流入が流出を上回る。
- 4市場成長率が高く相対的市場シェアも高いため、資金の流入が流出を大きく上回る。
- 5市場成長率が高いが相対的市場シェアが低く、多額の資金投入を要する。
解説:【正解】肢3(他の4肢はどこかに誤りを含む)
PPMは市場成長率(資金需要)と相対的市場シェア(経験曲線効果に基づく資金創出力)の2軸で事業を4分類する。花形(高成長・高シェア:資金流入も流出も大)、金のなる木(低成長・高シェア:資金流入>流出で全社の資金源)、問題児(高成長・低シェア:多額の投資を要し花形化を狙う)、負け犬(低成長・低シェア:撤退・縮小の検討対象)。金のなる木で得た資金を問題児に投入し花形へ育てるのが基本的な資金配分の考え方である。
★ポイント:リスクとリターン:期待収益率=Σ確率×収益率、分散投資で非システマティック・リスクを低減(相関係数<1)。β=システマティック・リスクの尺度。効率的フロンティアと分離定理。
問4アンゾフの成長ベクトル(製品-市場マトリックス)において、既存市場に新製品を投入する戦略として正しいものはどれか。
- ✔新製品開発戦略
- 2市場浸透戦略
- 3垂直統合戦略
- 4多角化戦略
- 5市場開拓戦略
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
アンゾフは市場(既存/新規)と製品(既存/新規)の2軸から4つの成長ベクトルを示した。既存市場×既存製品=市場浸透戦略、新規市場×既存製品=市場開拓戦略、既存市場×新製品=新製品開発戦略、新規市場×新製品=多角化戦略。多角化はさらに水平型・垂直型・集中型・集成型(コングロマリット型)に分類される。アンゾフはまた、多角化における「シナジー(相乗効果)」の概念を販売・生産・投資・マネジメントの4類型に整理した。
★ポイント:経営戦略:アンゾフの成長ベクトル・PPM(金のなる木→問題児へ投資)・ポーターの5フォースと3基本戦略・RBV(VRIO)・コア・コンピタンス。ドメインの定義(物理的/機能的)。多角化とシナジー、規模の経済・範囲の経済・経験曲線効果の区別。
問5バーニーのVRIOフレームワークにおける4つの問いの組合せとして、正しいものはどれか。
- 1可視性、反復性、統合性、最適化
- 2検証可能性、信頼性、独自性、成果
- ✔経済的価値、希少性、模倣困難性、組織
- 4価値、リスク、投資、機会
- 5価値、多様性、革新性、機会
解説:【正解】肢3
VRIOはValue(経済的価値)、Rarity(希少性)、Inimitability(模倣困難性)、Organization(組織)の4つの問いから経営資源を評価するリソース・ベースト・ビュー(RBV)の枠組み。価値がなければ競争劣位、価値のみなら競争均衡、価値と希少性があれば一時的競争優位、模倣困難性も備えれば持続的競争優位となりうるが、それを活用できる組織が整っていなければ潜在的な優位にとどまる。模倣困難性の源泉として、独自の歴史的条件、因果関係の曖昧性、社会的複雑性、特許等が挙げられる。
問6マトリックス組織の特徴として、最も適切なものはどれか。
- 1小規模で単一事業を営む企業に最も適した組織形態である。
- 2命令の一元化が徹底されるため、指揮命令の混乱が生じにくい。
- 3各事業部が独立した利益責任単位となり、本社は資源配分に専念する。
- ✔職能別組織と事業部制組織の長所を併せもつが、命令系統の二元化によりコンフリクトが生じやすい。
- 5専門性の追求には適さないが、意思決定の迅速性に優れる。
解説:【正解】肢4(他の4肢はどこかに誤りを含む)
マトリックス組織は職能軸と製品(事業・地域・プロジェクト)軸を交差させ、両者の長所である専門性の蓄積と市場対応の迅速性を同時に追求する組織形態。しかし1人の従業員が2人の上司をもつため、ファヨールの「命令一元性の原則」に反し、権限の重複や役割の曖昧さ、コンフリクトやストレスの発生といった問題を抱える。3は事業部制組織の説明。マトリックス組織は複数の事業と機能を抱える大規模かつ環境の不確実性が高い企業に適する。
★ポイント:組織論:機能別・事業部制・マトリックス組織の長短。モチベーション理論(マズロー・ハーズバーグ2要因・期待理論・目標設定理論)。リーダーシップ(PM理論・SL理論・変革型)。組織学習(シングル/ダブルループ)・組織文化。バーナードの組織成立3要素(共通目的・貢献意欲・コミュニケーション)。
問7ハーズバーグの二要因理論(動機づけ・衛生理論)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1動機づけ要因が欠如すると、強い職務不満が生じる。
- ✔衛生要因の改善は職務不満を減少させるが、それだけでは積極的な職務満足をもたらさない。
- 3職務満足と職務不満は、同一次元の両極として捉えられる。
- 4衛生要因を極限まで改善すれば、動機づけ要因は不要となる。
- 5給与や作業条件は動機づけ要因に分類される。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
ハーズバーグは、職務満足をもたらす要因(動機づけ要因:達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進・成長)と職務不満をもたらす要因(衛生要因:会社の方針と管理、監督、給与、対人関係、作業条件)は別次元であるとした。衛生要因の改善は不満を減らすにとどまり(不満の解消≠満足)、満足を高めるには動機づけ要因の充足が必要となる。この理論は職務充実(job enrichment)の理論的基礎となった。給与は衛生要因に分類される点が頻出。
★ポイント:組織論:機能別・事業部制・マトリックス組織の長短。モチベーション理論(マズロー・ハーズバーグ2要因・期待理論・目標設定理論)。リーダーシップ(PM理論・SL理論・変革型)。組織学習(シングル/ダブルループ)・組織文化。バーナードの組織成立3要素(共通目的・貢献意欲・コミュニケーション)。
問8CAPMにおいて、リスクフリー・レート2%、市場ポートフォリオの期待収益率8%、当該株式のベータが1.5であるとき、株主資本コストとして正しいものはどれか。
解説:【正解】肢4(他の4肢はどこかに誤りを含む)
CAPM:期待収益率=リスクフリー・レート+β×(市場ポートフォリオの期待収益率-リスクフリー・レート)=2%+1.5×(8%-2%)=2%+1.5×6%=2%+9%=11%。市場リスクプレミアム(8%-2%=6%)にβを乗じる点がポイントで、8%にβを乗じて12%とするのは典型的な誤り。βは市場全体の変動に対する当該株式の感応度を表し、分散投資によって消去できないシステマティック・リスクのみが期待収益率に反映されるという考え方に基づく。
★ポイント:ファイナンス:WACC=(E/V)rE+(D/V)rD(1−t)、rEはCAPM(rf+β×市場リスクプレミアム)。MM理論:無税なら資本構成は無関連、法人税ありなら負債の節税効果で企業価値増。配当無関連命題。DCF法=FCFをWACCで割引、継続価値=FCF×(1+g)/(WACC−g)。