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行政書士試験|分野別 問題インデックス

最終更新:2026年8月11日

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基礎法学全50問中 8問を掲載

問1
法の分類に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • ✔特別法は一般法に優先して適用され、特別法に定めのない事項については一般法が適用される。
  • 2一般法と特別法が矛盾する場合には、一般法が特別法に優先して適用される。
  • 3民法は商法の特別法にあたり、商取引についてはまず民法が適用される。
  • 4手続法とは、権利義務の発生・変更・消滅という法律関係の内容そのものを定める法をいう。
  • 5強行法規は、当事者の合意によってその適用を排除することができる。
解説:【正解】1[妥当なもの]
【結論】同一事項について一般法と特別法が競合するときは特別法が優先して適用され、特別法に定めのない事項については一般法が補充的に適用される(特別法優先の原理)。
【肢別】
1○ 上記のとおり。商事について商法→商慣習→民法の順に適用される商法1条2項が典型例。
2× 優先関係が逆。一般法が特別法を破ることはない。
3× 一般法・特別法の関係が逆。民法が一般法、商法が特別法であり、商取引にはまず商法が適用される。
4× これは実体法の定義。手続法は権利義務を実現する手続(民事訴訟法・行政不服審査法など)を定める法をいう。
5× これは任意法規の説明。強行法規は公序に関わるため当事者の合意では排除できない。
【横断整理】法の対概念を一巡させる。①一般法⇔特別法=適用範囲の広狭。②実体法⇔手続法=権利義務の内容か、その実現手続か。③強行法規⇔任意法規=当事者の合意で排除できるか。④公法⇔私法=国家対私人か、私人相互か。
【発展:三つの優先原理】「後法は前法を破る」「特別法は一般法を破る」「上位法は下位法を破る」。ただし後法優位は同位・同一適用範囲の法令間の原則にとどまり、新しい一般法は古い特別法を破らない。法源の序列は No.5 参照。
【根拠】特別法優先の原理、商法1条2項、法の適用に関する通則法
問2
法令用語に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • 1「みなす」は、本来異なる事柄を法律上同一に扱う擬制であり、反証によって覆すことができる。
  • 2「者」は自然人のみを指し、法人を含むことはない。
  • 3「善意」とは、道徳的に善良な意図をもって行為することをいう。
  • 4「又は」と「若しくは」を併用する場合、大きい接続に「若しくは」を用いる。
  • ✔「推定する」は、反対の事実の証明があれば、その効果を覆すことができる。
解説:【正解】5[妥当なもの]
【結論】「推定する」は一応そのように取り扱うにとどまる規定であり、反対事実の証明(反証)があればその効果は覆る。
【肢別】
1× 「みなす」は本来異なるものを法律上同一に扱う擬制であり、反証によって覆すことはできない。
2× 「者」は自然人と法人の双方を指す。
3× 法律上の「善意」は、ある事実を知らないことをいい、倫理的な善悪とは関係がない。
4× 逆である。大きい接続に「又は」、小さい接続に「若しくは」を用いる。
5○ 上記のとおり。占有の態様を推定する民法186条1項などが例。
【横断整理】用語の対比を一巡させる。①みなす/推定する=反証の可否。②又は/若しくは=大きい接続が「又は」。③及び/並びに=小さい接続が「及び」(又はと逆になる点が要注意)。④者/物/もの=自然人・法人/有体物/それ以外。⑤善意/悪意=知らない/知っている。
【発展:例示か並列か】「その他の」は前が後ろの一部(例示と包括の関係)、「その他」は前後が対等な並列。条文を読むときは、この一字の有無で列挙の意味が変わる。
【根拠】法令用語の一般原則、民法186条1項
問3
法の解釈に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1文理解釈とは、条文の文言を通常の言葉の意味に従って解釈する方法である。
  • 2拡張解釈とは、条文の文言を通常の意味よりも広げて解釈する方法である。
  • 3反対解釈とは、条文が規定していない事項について、規定と反対の効果を認める解釈方法である。
  • ✔類推解釈は、刑罰法規において被告人に不利益な方向で用いることも罪刑法定主義上当然に許される。
  • 5勿論解釈とは、明文の規定がない事項について、規定の趣旨から当然に同様の結論が導かれるとする解釈方法である。
解説:【正解】4[妥当でないもの]
【結論】罪刑法定主義(憲法31条)から派生する原則として、刑罰法規について被告人に不利益な類推解釈は禁止される。
【肢別】
1○ 文理解釈は条文の文言を通常の語義に従って読む方法で、解釈の出発点となる。
2○ 拡張解釈は文言を通常の意味より広げて読む方法。文言の枠内にとどまる点で類推解釈と区別される。
3○ 反対解釈は、規定のない事項に規定と反対の効果を認めるもの。「20歳以上に権利を認める」から20歳未満には認めないと読むのが例。
4× 被告人に不利益な類推解釈は罪刑法定主義に反し禁止される。もっとも被告人に有利な類推は許されうる。
5○ 勿論解釈は、規定の趣旨から当然に同じ結論が導かれるとする方法。「馬の通行禁止」から牛も当然禁止と読む例で説明される。
【横断整理】拡張解釈と類推解釈の境界が最頻出。文言の可能な語義の範囲内なら拡張解釈(許される)、その枠を超えて似た事案に及ぼすなら類推解釈(刑罰法規では不利益方向は禁止)。民事では類推解釈は広く用いられ、94条2項類推適用がその代表例。
【発展:罪刑法定主義の派生原則】①法律主義(慣習刑法の禁止)、②事後法の禁止(No.5 参照)、③類推解釈の禁止、④絶対的不定期刑の禁止、⑤明確性の原則。
【根拠】憲法31条、罪刑法定主義
問4
わが国の裁判制度に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • 1三審制が採用されているため、すべての事件について必ず三回の審理を受けることができる。
  • ✔最高裁判所は、最高裁判所長官およびその他の裁判官14人の計15人で構成される。
  • 3特別裁判所として、行政事件を専門に扱う行政裁判所を設置することができる。
  • 4簡易裁判所の民事判決に対する控訴審は、高等裁判所が管轄する。
  • 5最高裁判所の裁判官は、国会の弾劾によらなければ罷免されることはない。
解説:【正解】2[妥当なもの]
【結論】裁判所法5条により、最高裁判所は最高裁判所長官1人とその他の裁判官(最高裁判所判事)14人の計15人で構成される。
【肢別】
1× 三審制は制度の建前にすぎず、上告理由が憲法違反・判例違反等に限られるため(民事訴訟法312条等)、常に三回の実質審理が保障されるわけではない。
2○ 上記のとおり。大法廷は15人全員、小法廷は3人以上(実際は5人)で構成される。
3× 憲法76条2項前段が特別裁判所の設置を禁止しているため、行政裁判所を置くことはできない。明治憲法下と対比される。
4× 簡易裁判所の民事事件の控訴審は地方裁判所が管轄する(裁判所法24条3号)。刑事事件では高等裁判所が控訴審となる点と区別する。
5× 最高裁判所裁判官は、弾劾のほか国民審査(憲法79条2項・3項)によっても罷免される。
【横断整理】裁判官の身分保障の例外は、①心身の故障による執行不能の裁判、②公の弾劾、③(最高裁のみ)国民審査、の三つ。行政機関は終審として裁判を行えない(76条2項後段)。
【発展:簡裁ルートのねじれ】民事は簡裁→地裁→高裁、刑事は簡裁→高裁→最高裁。民事だけ四審級になりうる構造で、上告審が高裁になる場合がある。
【根拠】憲法76条2項・79条、裁判所法5条・24条
問5
法源および法の効力に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • 1慣習法は、いかなる場合にも成文法に優先して適用される。
  • 2条約は、国内で効力を有するために常に法律への変形が必要であり、そのままでは国内法としての効力をもたない。
  • ✔刑罰法規について、実行の時に適法であった行為を事後の法律で処罰することは憲法上禁止されている。
  • 4政令には、法律の委任がなくても罰則を設けることができる。
  • 5条例は、法律の委任がなければ住民に義務を課し、または権利を制限することができない。
解説:【正解】3[妥当なもの]
【結論】憲法39条前段は、実行の時に適法であった行為について事後の法律で刑事責任を問うことを禁止する(事後法・遡及処罰の禁止)。
【肢別】
1× 慣習が法律と同一の効力をもつのは、法令に規定のない事項に関するもの、または法令が慣習によることを認めた事項に限られる(法の適用に関する通則法3条)。常に成文法に優先するわけではない。
2× 条約は公布により、変形手続を経ることなく国内法としての効力をもちうる(憲法98条2項の国際協調主義)。
3○ 上記のとおり。刑罰の不遡及であり、民事法規の遡及適用まで一律に禁じるものではない。
4× 政令に罰則を設けるには法律の委任が必要である(憲法73条6号ただし書)。
5× 条例は憲法94条・地方自治法14条2項に基づき、個別の法律の委任がなくても義務を課し権利を制限できる。条例は住民代表機関である議会が定めるため、法律に準じた民主的正当性が認められる。
【横断整理】法源の序列は憲法>条約>法律>政令・府省令>条例・規則。ただし条例と法律の関係は上下ではなく「法律の範囲内」という抵触の問題として処理される(徳島市公安条例事件・最大判昭50.9.10)。
【発展:委任の限界】白紙委任は許されず、委任は個別具体的でなければならない。委任命令が委任の範囲を超えたとして無効とされた例に、猿払事件とは別に、農地法施行令の売払対価に関する最大判昭46.1.20がある。
【根拠】憲法39条・73条6号・94条・98条2項、地方自治法14条2項、法の適用に関する通則法3条
問6
法令の効力関係に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1憲法は国の最高法規であり、その条規に反する法律・命令は効力を有しない。
  • 2同一形式の法令の間では、後に制定された法令が前に制定された法令に優先する。
  • 3政令は法律の下位にあり、法律に違反する政令は効力を有しない。
  • ✔省令は各省大臣が発する命令であり、政令と同順位の効力を有する。
  • 5法令は、原則として公布された後、施行期日の到来により効力を生じる。
解説:【正解】4[妥当でないもの]
【結論】法令の形式的効力の序列は、憲法>条約>法律>政令>内閣府令・省令>外局規則であり、省令は政令の下位にある。同順位ではない。
【肢別】
1○ 憲法は国の最高法規であり、その条規に反する法律・命令等は効力を有しない(憲法98条1項)。
2○ 同一形式の法令の間では、後法が前法に優先する(後法は前法を破る)。ただし後法が一般法、前法が特別法である場合は特別法優先が働く(No.1 参照)。
3○ 政令は法律の下位にあり、法律に違反する政令は効力を有しない。罰則を設けるには法律の委任が必要である(憲法73条6号ただし書)。
4× 上記のとおり。
5○ 法令は原則として公布された後、施行期日の到来により効力を生じる。公布の日から起算して20日を経過した日から施行するのが原則である(法の適用に関する通則法2条)。
【横断整理】三つの優先原理の適用順序。①上位法は下位法を破る(形式的効力)→②特別法は一般法を破る→③後法は前法を破る。①は序列の問題、②③は同順位の法令間の問題であり、②が③に優先する(新一般法は旧特別法を破らない)。
【発展:公布の方法と時期】公布は官報に掲載して行われ、その効力発生時期について最大判昭32.12.28は、一般国民が官報を閲覧しまたは購読しようとすれば可能な最初の時点とした(官報が最初に発売された時点)。施行は公布とは別の概念である点に注意。
【根拠】憲法73条6号・98条1項、法の適用に関する通則法2条、最大判昭32.12.28
問7
法令用語に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1「以上」「以下」は基準となる数値を含み、「超える」「未満」は含まない。
  • 2時間的即時性の強い順に並べると、「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」の順となる。
  • 3「遅滞なく」に違反した場合、直ちに違法となるわけではなく、正当な理由があれば許容される余地がある。
  • 4「その他の」は前後が例示と包括の関係にあり、「その他」は前後が並列の関係にある。
  • ✔「適用する」と「準用する」は同義であり、区別する実益はない。
解説:【正解】5[妥当でないもの]
【結論】「適用」はある事項に法令をそのまま当てはめることをいい、「準用」は本来対象でない事柄について必要な読替えを加えて当てはめることをいう。両者は明確に区別される。
【肢別】
1○ 「以上」「以下」は基準となる数値を含み、「超える」「未満」は含まない。「以前」「以後」も基準時点を含み、「前」「後」は含まない。
2○ 時間的即時性は「直ちに」>「速やかに」>「遅滞なく」の順に強い。
3○ 「遅滞なく」は正当な理由があれば許容される余地があり、訓示的な意味合いをもつ。「直ちに」は一切の遅延を許さない。
4○ 「その他の」は前後が例示と包括の関係(前が後の一部)、「その他」は並列の関係にある(No.2 参照)。
5× 上記のとおり。
【横断整理】混同しやすい対概念をもう一組。「みなす」と「推定する」(No.2 参照)、「科する」と「課する」(刑罰は科する・租税は課する)、「時」と「とき」(「時」は時点、「とき」は仮定条件)、「場合」と「とき」(重ねて使う場合は大きい条件が「場合」)。
【発展:準用の実務上の意味】準用は条文の重複を避けるための立法技術で、行政不服審査法が再調査の請求・再審査請求に審査請求の規定を準用し(61条・66条)、行政事件訴訟法が無効等確認訴訟に取消訴訟の規定を準用する(38条、No.48 参照)のが典型例。どの条文が準用されていないかが出題の急所になる。
【根拠】法令用語の一般原則、行政不服審査法61条・66条、行政事件訴訟法38条
問8
法の基本概念に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1実定法とは、人為的に定立され、または慣習として成立している現に効力を有する法をいう。
  • 2自然法とは、時代や場所を超えて妥当する普遍的な法をいうとされる。
  • 3公法とは国家と私人の関係を規律する法をいい、私法とは私人相互の関係を規律する法をいうとされる。
  • ✔手続法の規定と実体法の規定が矛盾する場合には、常に手続法が優先する。
  • 5社会法は、労働法や社会保障法のように、公法と私法の中間領域に位置づけられる法分野である。
解説:【正解】4[妥当でないもの]
【結論】手続法と実体法の間に一般的な優先劣後の関係はない。両者は規律対象を異にし、矛盾があるときは特別法優先・後法優先といった一般原則で解決される。
【肢別】
1○ 実定法とは、人為的に定立され、または慣習として成立している現に効力を有する法をいう。制定法・慣習法・判例法がこれにあたる。
2○ 自然法とは、時代や場所を超えて妥当する普遍的な法をいうとされる。実定法の内容を批判する基準として機能する。
3○ 公法は国家と私人の関係を、私法は私人相互の関係を規律する法とされる。ただしこの区別は絶対的なものではない(No.119 参照)。
4× 上記のとおり。
5○ 社会法は、労働法や社会保障法のように、私的自治の修正を通じて実質的平等を図る公法と私法の中間領域の法分野である。
【横断整理】実体法と手続法の対応関係を具体例で。民法⇔民事訴訟法・民事執行法、刑法⇔刑事訴訟法、行政実体法⇔行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法。行政法では実体法の一般法が存在せず、手続法の側から一般法が整備されてきた点が特徴的である。
【発展:法源としての判例】わが国は制定法主義を採り、判例に法的拘束力を認める明文はない。もっとも裁判所法4条は上級審の裁判の拘束力を当該事件に限って認め、10条3号は判例変更に大法廷を要求する。事実上の拘束力は極めて強い。
【根拠】法学の基本概念、裁判所法4条・10条

憲法全130問中 8問を掲載

問9
外国人の人権に関する最高裁判所の判例の趣旨として、妥当なものはどれか。
  • 1永住外国人に対し、法律で地方公共団体の選挙権を付与することは憲法上禁止されている。
  • 2外国人の政治活動の自由は、在留制度の枠を離れて保障されるから、在留期間更新の際に消極的な事情として考慮することは許されない。
  • 3憲法は、外国人に対しわが国に入国する自由を保障している。
  • ✔憲法第3章の人権規定は、権利の性質上日本国民のみを対象とすると解されるものを除き、わが国に在留する外国人にも等しく及ぶ。
  • 5社会保障上の施策において、自国民を在留外国人より優先的に扱うことは、憲法14条に違反する。
解説:【正解】4[妥当なもの]
【結論】マクリーン事件(最大判昭53.10.4)は、憲法第3章の人権規定は権利の性質上日本国民のみを対象とすると解されるものを除き、在留外国人にも等しく及ぶとした(性質説)。
【肢別】
1× 最判平7.2.28は、永住外国人等に法律で地方公共団体の選挙権を付与することは憲法上禁止されていないとした(許容説)。禁止説ではない。
2× 同じマクリーン事件が、外国人の政治活動の自由は在留制度の枠内で保障されるにとどまり、在留期間更新の際に消極的な事情として考慮しても違法ではないとした。
3× 国際慣習法上、国家は外国人の入国を許可する義務を負わず、入国の自由は保障されない。再入国の自由も否定されている(森川キャサリーン事件・最判平4.11.16)。
4○ 上記のとおり。判例の出発点となる一般論である。
5× 塩見訴訟(最判平元.3.2)は、社会保障上の施策で自国民を優先させることは立法府の裁量に属し、14条に違反しないとした。
【横断整理】外国人に及ばないとされる主な権利は、①国政選挙権、②公務就任権のうち公権力行使等地方公務員(東京都管理職選考事件・最大判平17.1.26)、③入国・再入国の自由。及ぶものは政治活動の自由(枠内)、生存権(立法裁量)、指紋押なつを強制されない自由(No.8 参照)。
【発展:許容説の位置】地方選挙権については禁止説・要請説・許容説が対立し、判例は許容説。憲法93条2項の「住民」は日本国民を指すとしつつ、立法政策としての付与は妨げないという二段構えである。
【根拠】最大判昭53.10.4、最判平7.2.28、最判平元.3.2、最判平4.11.16
問10
法人および私人間効力に関する最高裁判所の判例の趣旨として、妥当なものはどれか。
  • 1強制加入団体である司法書士会が、他会への復興支援拠出金を寄附することは目的の範囲外である。
  • 2税理士会が政治献金のために特別会費を徴収する旨の決議は、目的の範囲内の行為として有効である。
  • 3憲法の人権規定は私人間にも直接適用され、私人間の契約を直接無効とする効力をもつ。
  • 4企業が特定の思想・信条を理由に雇入れを拒むことは、当然に違法である。
  • ✔会社は、自然人と等しく政治的行為の自由を有し、政党への政治資金の寄附も認められる。
解説:【正解】5[妥当なもの]
【結論】八幡製鉄事件(最大判昭45.6.24)は、会社も自然人と同様に政治的行為の自由を有し、政党への政治資金の寄附も定款所定の目的の範囲内の行為として許されるとした。
【肢別】
1× 群馬司法書士会事件(最判平14.4.25)は、阪神淡路大震災の被災司法書士会への復興支援拠出金を目的の範囲内とし、会員への負担金賦課決議も有効とした。
2× 南九州税理士会事件(最判平8.3.19)は、強制加入団体である税理士会が政治献金のために特別会費を徴収する決議を目的の範囲外として無効とした。
3× 判例は間接適用説に立ち、私法の一般条項(民法90条・709条)を通じて憲法の趣旨を及ぼす。直接適用説は採らない。
4× 三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12)は、企業には契約締結の自由があり、特定の思想・信条を理由に雇入れを拒んでも当然に違法とはならないとした。
5○ 上記のとおり。
【横断整理】団体の目的の範囲は、①寄附の性質(一般的な公益支援か政治献金か)と②団体の性質(任意加入か強制加入か)の組合せで結論が分かれる。八幡製鉄=任意加入+政治献金→範囲内、群馬司法書士会=強制加入+公益支援→範囲内、南九州税理士会=強制加入+政治献金→範囲外。
【発展:協力義務の限界】国労広島地本事件(最判昭50.11.28)は、労組の臨時組合費について、安保闘争費用は納入義務を否定し、他組合支援や組合員の生活防衛費は肯定した。強制加入団体では構成員の思想・良心との緊張が問題となる点で共通する。
【根拠】最大判昭45.6.24、最判平8.3.19、最判平14.4.25、最大判昭48.12.12
問11
憲法13条に関する最高裁判所の判例の趣旨として、妥当でないものはどれか。
  • 1何人も、その承諾なしにみだりに容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する。
  • 2現行犯的な状況において証拠保全の必要性・緊急性があり、方法が相当な場合には、令状がなくても警察官による写真撮影は許される。
  • ✔指紋の押なつを強制されない自由は、外国人には及ばない。
  • 4前科等をみだりに公開されないという利益は、法的保護に値する。
  • 5個人の氏名・住所等の情報も、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となる。
解説:【正解】3[妥当でないもの]
【結論】指紋押なつ拒否事件(最判平7.12.15)は、みだりに指紋の押なつを強制されない自由は13条により外国人にも保障が及ぶとしたうえで、当時の外国人登録法の制度自体は合憲とした。
【肢別】
1○ 京都府学連事件(最大判昭44.12.24)は、承諾なしにみだりに容ぼう・姿態を撮影されない自由を13条の趣旨から導いた。
2○ 同判決は、現行犯的状況・証拠保全の必要性と緊急性・方法の相当性が認められれば、令状がなくても撮影は許されるとした。
3× 保障が及ばないとする点が誤り。外国人にも及ぶことを認めたうえで制度を合憲とした判決である(No.6 の性質説の具体的な適用例)。
4○ 前科照会事件(最判昭56.4.14)は、前科等をみだりに公開されない利益を法的保護に値するとし、弁護士会照会に漫然と応じた区の責任を認めた。
5○ 早稲田大学江沢民講演会名簿事件(最判平15.9.12)は、学籍番号・氏名・住所・電話番号もプライバシーに係る情報として法的保護の対象になるとした。
【横断整理】13条から導かれた具体的権利は、肖像権的自由、前科等をみだりに公開されない利益、指紋押なつを強制されない自由、自己情報のコントロール。一方で「喫煙の自由」(最大判昭45.9.16)のように、あるとしても在監関係の下で制約されるとされたものもある。
【発展:撮影の適法要件】京都府学連の三要件(必要性・緊急性・相当性)は、令状主義の例外を画する枠組みとして、後の自動速度監視装置の合憲判断(最判昭61.2.14)にも受け継がれている。
【根拠】最大判昭44.12.24、最判昭56.4.14、最判平7.12.15、最判平15.9.12
問12
憲法14条に関する最高裁判所の判例の趣旨として、妥当なものはどれか。
  • 1尊属殺人に重罰を科す旧刑法200条は、尊属に対する尊重報恩という立法目的自体が不合理であるとして違憲とされた。
  • 2日本国民である父と外国人母との間の子について、父母の婚姻を国籍取得の要件とする国籍法の規定は合憲とされた。
  • ✔嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定は、遅くとも平成13年7月当時において違憲であったとされた。
  • 4女性についてのみ6か月の再婚禁止期間を定める民法の規定は、その全部が違憲とされた。
  • 5議員定数不均衡について、最高裁は違憲と判断した場合には常に選挙自体を無効としてきた。
解説:【正解】3[妥当なもの]
【結論】最大決平25.9.4は、嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条4号ただし書前段について、遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたとした。
【肢別】
1× 尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭48.4.4)は、尊属に対する尊重報恩という立法目的自体は合理的としつつ、死刑または無期懲役という刑の加重の程度が極端で、目的達成の手段として著しく不合理であるとして違憲とした。目的を否定したのではない。
2× 国籍法違憲判決(最大判平20.6.4)は、父母の婚姻(準正)を国籍取得の要件とする部分を違憲とした。合憲ではない。
3○ 上記のとおり。違憲判断の効力を既に確定した法律関係に及ぼさない旨を判示した点も重要。
4× 最大判平27.12.16は、再婚禁止期間のうち100日を超える部分についてのみ違憲とした。全部ではない。
5× 議員定数不均衡について、最高裁は事情判決の法理を援用し、違憲としつつ選挙自体は無効としない手法をとってきた(最大判昭51.4.14等)。
【横断整理】法令違憲とされた主な規定は、尊属殺重罰規定、薬事法距離制限(No.12 参照)、森林法共有林分割制限(No.13 参照)、衆議院議員定数配分規定、在外国民選挙権制限、国籍法3条1項、非嫡出子相続分、再婚禁止期間(一部)、在外国民審査権制限(最大判令4.5.25)。
【発展:違憲判断の遡及】平成25年決定は、判断が既に確定的となった法律関係には影響を及ぼさないと明示した。違憲判断の個別的効力(No.17 参照)と法的安定性の調整である。
【根拠】最大判昭48.4.4、最大決平25.9.4、最大判平20.6.4、最大判平27.12.16
問13
信教の自由および政教分離に関する最高裁判所の判例の趣旨として、妥当なものはどれか。
  • 1市が体育館の起工に際して行った神式地鎮祭への公金支出は、憲法20条3項の宗教的活動にあたり違憲とされた。
  • 2宗教法人に対する解散命令は、信者の信教の自由を直接制約するものであり、憲法20条1項に違反する。
  • 3政教分離規定は、国家と宗教との完全な分離を要求し、いかなるかかわり合いも許されない。
  • 4市が神社の敷地として市有地を無償で提供し続けた行為は、宗教とのかかわり合いが希薄であるとして合憲とされた。
  • ✔県が靖國神社等に対し玉串料等を公金から支出した行為は、憲法20条3項に違反するとされた。
解説:【正解】5[妥当なもの]
【結論】愛媛玉串料訴訟(最大判平9.4.2)は、県が靖國神社等に玉串料等を公金から支出した行為について、目的効果基準を適用して憲法20条3項・89条に違反するとした。
【肢別】
1× 津地鎮祭事件(最大判昭52.7.13)は、神式地鎮祭の目的は世俗的で効果も宗教を援助・助長するものではないとして合憲とした。目的効果基準を最初に定立した判決である。
2× オウム真理教解散命令事件(最決平8.1.30)は、解散命令は専ら世俗的目的によるもので、信者の宗教上の行為に対する支障は間接的・事実上のものにとどまるとして合憲とした。
3× 判例は完全分離を要求せず、かかわり合いが相当とされる限度を超える場合に許されないとする(津地鎮祭事件)。
4× 空知太神社事件(最大判平22.1.20)は、市有地を神社敷地として無償提供し続けた行為を89条・20条1項後段違反とした。ただし解決方法として直ちに撤去を命じず、差戻しにより他の手段の検討を求めた。
5○ 上記のとおり。最高裁が政教分離違反を認めた最初の事例である。
【横断整理】政教分離の判断枠組みは二系統。①目的効果基準(津地鎮祭・愛媛玉串料)と、②総合考慮による判断(空知太神社・孔子廟訴訟=最大判令3.2.24)。近年の財産の便益供与型では②が用いられる。
【発展:信教の自由の側の判例】剣道実技拒否事件(最判平8.3.8)は、代替措置を検討せずに退学処分とした校長の判断を裁量権の逸脱とした。日曜日授業参観事件(東京地判昭61.3.20)と結論が分かれる理由は、不利益の重大性の差にある。
【根拠】最大判昭52.7.13、最大判平9.4.2、最大判平22.1.20、最決平8.1.30
問14
表現の自由に関する最高裁判所の判例の趣旨として、妥当でないものはどれか。
  • 1憲法21条2項にいう「検閲」とは、行政権が主体となり、思想内容等の表現物を対象として、発表前にその内容を網羅的一般的に審査し、不適当と認めるものの発表を禁止することをいう。
  • ✔名誉毀損を理由とする出版物の事前差止めは、いかなる場合であっても許されない。
  • 3教科書検定は、一般図書としての発行を妨げるものではないから、検閲にはあたらない。
  • 4税関検査は、輸入禁止される表現物が国外ですでに発表済みであること等から、検閲にはあたらない。
  • 5公務員の政治的行為の禁止について、最高裁は管理職的地位になく、職務内容・権限に裁量の余地のない者が職務と無関係に行った行為には罰則規定は適用されないとした。
解説:【正解】2[妥当でないもの]
【結論】北方ジャーナル事件(最大判昭61.6.11)は、名誉毀損を理由とする出版物の事前差止めは原則として許されないが、表現内容が真実でなくまたは専ら公益を図る目的でないことが明白で、かつ被害者が重大で著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときは例外的に許されるとした。
【肢別】
1○ 税関検査事件(最大判昭59.12.12)の定立した検閲の定義そのもの。主体・対象・時期・態様・目的の五要素で絞られている。
2× 「いかなる場合であっても許されない」が誤り。上記の厳格な要件の下で例外が認められる。
3○ 家永教科書訴訟第一次上告審(最判平5.3.16)は、教科書検定は一般図書としての発行を妨げないため検閲にあたらないとした。
4○ 税関検査事件は、輸入禁止の対象が国外で既に発表済みであること等を理由に検閲該当性を否定した。
5○ 堀越事件(最判平24.12.7)は、管理職的地位になく職務内容・権限に裁量の余地のない者が職務と無関係に行った政治的行為には国家公務員法の罰則規定は適用されないとした。
【横断整理】事前抑制の三類型を区別する。①検閲=21条2項により絶対的禁止、②裁判所による事前差止め=厳格な要件の下で可、③行政による事前規制で検閲にあたらないもの=21条1項の一般的な違憲審査。判例が検閲にあたるとしたものは一つもない。
【発展:公務員の政治的行為】堀越事件と同日の宇治橋事件(最判平24.12.7)は、管理職的地位にあった被告人について有罪とした。猿払事件(最大判昭49.11.6)の一般論を維持しつつ、構成要件の限定解釈で処理した点に特徴がある。
【根拠】最大判昭59.12.12、最大判昭61.6.11、最判平5.3.16、最判平24.12.7
問15
職業選択の自由に関する最高裁判所の判例の趣旨として、妥当なものはどれか。
  • 1公衆浴場の距離制限は、判例上一貫して違憲とされてきた。
  • 2小売市場の距離制限は、消極目的規制として厳格な合理性の基準により審査され、違憲とされた。
  • ✔薬局開設の距離制限は、国民の生命・健康に対する危険の防止という消極目的の規制であり、規制目的達成のために必要かつ合理的とはいえず違憲とされた。
  • 4職業選択の自由には、選択した職業を遂行する自由(営業の自由)は含まれない。
  • 5酒類販売業の免許制は、職業選択の自由の重大な制約であるとして違憲とされた。
解説:【正解】3[妥当なもの]
【結論】薬事法距離制限違憲判決(最大判昭50.4.30)は、薬局の適正配置規制を国民の生命・健康に対する危険の防止という消極目的の規制と位置づけ、厳格な合理性の基準により、必要かつ合理的な措置とはいえないとして違憲とした。
【肢別】
1× 公衆浴場の距離制限については合憲判断が積み重ねられている(最大判昭30.1.26、最判平元.1.20、最判平元.3.7)。一貫して違憲とされてきたのではない。
2× 小売市場事件(最大判昭47.11.22)は、中小企業保護という積極目的の規制として明白性の原則を用い、合憲とした。厳格な合理性の基準ではない。
3○ 上記のとおり。
4× 職業選択の自由には、選択した職業を遂行する自由(営業の自由)も含まれると解されている。
5× 酒類販売業免許制事件(最判平4.12.15)は、租税の適正確実な賦課徴収という目的との関連で著しく不合理とはいえないとして合憲とした。
【横断整理】規制目的二分論の当てはめ。消極(警察)目的→厳格な合理性の基準→薬事法違憲。積極(政策)目的→明白性の原則→小売市場合憲。ただし酒類販売免許制のように財政目的の規制はこの二分論に収まらず、判例も二分論を一般理論として固定してはいない。
【発展:許可制と届出制】薬事法判決が違憲としたのは距離制限という許可要件であって、薬局開設の許可制そのものではない。規制手段の強弱(許可制>届出制>事後届出)と規制の対象(開業要件か営業活動か)を分けて考えると、審査密度の議論が整理される。
【根拠】最大判昭50.4.30、最大判昭47.11.22、最判平4.12.15、最判平元.1.20
問16
財産権に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨として妥当なものはどれか。
  • 1財産権の内容を事後の法律で変更することは、いかなる場合も憲法29条に違反する。
  • ✔森林の共有者に持分価額2分の1以下の分割請求を認めない森林法の規定は、立法目的達成の手段として合理性を欠くとして違憲とされた。
  • 3条例によって財産権を規制することは、憲法29条2項の「法律」に反するため許されない。
  • 4憲法29条3項にいう「正当な補償」について、判例は常に完全な補償を要すると解している。
  • 5法令に損失補償に関する規定がない場合には、憲法29条3項を直接の根拠として補償を請求することはできない。
解説:【正解】2[妥当なもの]
【結論】森林法共有林事件(最大判昭62.4.22)は、持分価額2分の1以下の共有者に分割請求を認めない森林法186条について、森林の細分化防止という立法目的との関係で手段の合理性・必要性を欠くとして違憲とした。
【肢別】
1× 財産権の内容を事後の法律で変更することは、その変更が公共の福祉に適合するかを、変更の程度や保護される公益の性質等を総合勘案して判断する(国有農地売払特措法事件・最大判昭53.7.12)。当然に違憲ではない。
2○ 上記のとおり。
3× 奈良県ため池条例事件(最大判昭38.6.26)は、条例による財産権規制を認めた。29条2項の「法律」には条例も含まれると解される(No.5 参照)。
4× 農地改革事件(最大判昭28.12.23)は、正当な補償とは合理的に算出された相当な額をいい、必ずしも市価と完全に一致することを要しないとした(相当補償説)。もっとも土地収用法の事案では完全な補償を要するとされている(最判昭48.10.18)。
5× 河川附近地制限令事件(最大判昭43.11.27)は、法令に補償規定がなくても29条3項を直接の根拠として補償請求をする余地があるとした。
【横断整理】損失補償の三段階。①特別の犠牲にあたるか(形式的基準=対象の特定性、実質的基準=制約の強度)、②補償は完全か相当か、③根拠規定を欠く場合に29条3項を直接根拠にできるか。行政法の損失補償と共通の体系である。
【発展:内在的制約】ため池条例事件は、災害防止のための堤とう使用禁止を財産権に内在する制約とし補償を不要とした。危険除去型の規制は特別の犠牲にあたりにくい。
【根拠】最大判昭62.4.22、最大判昭38.6.26、最大判昭28.12.23、最大判昭43.11.27

行政法全400問中 8問を掲載

問17
法律による行政の原理に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1法律の法規創造力の原則とは、国民の権利義務に関する法規を創造できるのは原則として法律のみであるとする原則をいう。
  • 2法律の優位の原則とは、行政活動は既存の法律に違反してはならないとする原則をいう。
  • ✔法律の優位の原則は侵害的な行政活動にのみ妥当し、給付行政には及ばない。
  • 4侵害留保説によれば、国民の権利を制限し義務を課す行為には法律の根拠が必要である。
  • 5法律の留保の原則とは、行政活動を行うには法律の根拠が必要であるとする原則をいう。
解説:【正解】3[妥当でないもの]
【結論】法律の優位の原則は、行政活動が既存の法律に違反してはならないという原則であり、侵害的か給付的かを問わずすべての行政活動に例外なく妥当する。
【肢別】
1○ 法律の法規創造力の原則。国民の権利義務に関する一般的規範(法規)を創造できるのは原則として法律に限られる。
2○ 法律の優位の原則の定義として正しい。
3× 給付行政に及ばないとする点が誤り。適用範囲が争われるのは「法律の留保」であって「法律の優位」ではない。両者を入れ替えた典型的なひっかけである。
4○ 侵害留保説は、国民の権利を制限し義務を課す行為にのみ法律の根拠を要求する。実務の前提となっている立場である。
5○ 法律の留保の原則の定義として正しい。
【横断整理】法律による行政の原理は三つの柱からなる。①法規創造力(誰が法規を作れるか)、②法律の優位(法律に反してはならない・全活動に及ぶ)、③法律の留保(法律の根拠が要る範囲・争いがある)。争いがあるのは③だけ、という一点を覚えれば本問型は落とせない。
【発展:留保に関する諸説】侵害留保説(通説・実務)、全部留保説(あらゆる行政活動に必要)、社会留保説(給付行政にも必要)、権力留保説(権力的行為すべてに必要)、重要事項留保説(本質的事項は法律で=ドイツの本質性理論)。補助金交付が争点になると各説の差が現れる。
【根拠】法律による行政の原理、憲法41条・65条・73条1号
問18
行政行為の分類に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • 1自動車運転免許は、国民が本来有していない権利を新たに設定する特許にあたる。
  • 2特許は、法令による一般的禁止を特定の場合に解除する行為である。
  • 3公務員の任命は、事実を公に証明する公証にあたる。
  • 4下命は、法律行為的行政行為のうち準法律行為的行政行為に分類される。
  • ✔農地の権利移転についての農業委員会の許可は、第三者の法律行為の効力を補充して完成させる認可にあたる。
解説:【正解】5[妥当なもの]
【結論】農地の権利移転についての農業委員会(都道府県知事)の許可は、講学上は「認可」であり、当事者間の法律行為の効力を補充して完成させるものである。許可がなければ所有権移転の効力は生じない。
【肢別】
1× 自動車運転免許は、一般的禁止を特定の場合に解除するもので、講学上の「許可」にあたる。特許ではない。
2× これは許可の説明。特許は、国民が本来有していない権利や法的地位を新たに設定する行為(公有水面埋立免許、鉱業権設定、公務員の任命など)をいう。
3× 公務員の任命は、特定人に法的地位を設定する形成的行為(特許)にあたる。公証は選挙人名簿への登録や不動産登記のように、事実・法律関係の存在を公に証明する行為である。
4× 下命は法律行為的行政行為のうち命令的行為に分類される。準法律行為的行政行為は確認・公証・通知・受理の四つである。
5○ 上記のとおり。
【横断整理】行政行為の分類。法律行為的=①命令的行為(下命・禁止・許可・免除)と②形成的行為(特許・認可・代理)。準法律行為的=確認・公証・通知・受理。許可は「本来の自由の回復」、特許は「新たな権利の設定」、認可は「私人の行為の効力の補充」と、対象と効果で切り分ける。
【発展:無許可行為の効力】許可を要する行為を無許可で行った場合、行為自体は私法上有効で行政上の制裁の対象となるにとどまる(無免許運転でも売買契約は有効)。これに対し認可を要する行為を無認可で行うと、その行為自体が無効になる。この違いが認可の識別に使える。
【根拠】農地法3条、行政行為の分類(講学上の概念)
問19
行政行為の効力に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1公定力とは、たとえ違法な行政行為であっても、権限ある機関により取り消されるまでは有効なものとして扱われる効力をいう。
  • 2行政行為が無効である場合には、公定力は生じない。
  • 3違法な課税処分について国家賠償を請求する場合、あらかじめ当該処分の取消判決を得ておく必要はない。
  • ✔不可変更力は、すべての行政行為に一般的に認められる効力である。
  • 5自力執行力は、行政行為に当然に伴うものではなく、別途法律の根拠を必要とする。
解説:【正解】4[妥当でないもの]
【結論】不可変更力は、審査請求に対する裁決など争訟裁断的性質をもつ行政行為について、処分庁自身が自由に取消し・変更できなくなる効力であり、すべての行政行為に一般的に認められるものではない。
【肢別】
1○ 公定力の定義として正しい。実定法上の根拠は、取消訴訟という排他的な争訟手続を設けた点(取消訴訟の排他的管轄)に求められる。
2○ 重大かつ明白な瑕疵により無効な行政行為には公定力が生じない。だからこそ出訴期間の制限なく無効等確認訴訟を提起できる(No.48 参照)。
3○ 最判昭36.4.21等により、国家賠償請求は処分の効力を否定するものではないため、あらかじめ取消判決を得る必要はない。過納金相当額の損害賠償を求める場合も同様である(最判平22.6.3)。
4× 一般的に認められるとする点が誤り。
5○ 自力執行力は行政行為に当然に伴うものではなく、行政代執行法などの別途の法律の根拠を要する(No.24 参照)。
【横断整理】行政行為の効力を五つに整理する。①公定力(取り消されるまで有効)、②不可争力(争訟期間経過後は私人から争えない)、③不可変更力(行政庁側から変更できない・争訟裁断的行為のみ)、④執行力(別途根拠が必要)、⑤拘束力。②と③は「誰が争えなくなるか」が逆である点で対になる。
【発展:公定力の限界】公定力が及ばない場面は、①無効な行為、②国家賠償請求、③刑事訴訟における先決問題(最判昭53.6.16は、違法な処分に従わなかった者を処罰できないとした)。取消訴訟を経なくても争える例外として押さえる。
【根拠】行政事件訴訟法3条2項、最判昭36.4.21、最判平22.6.3
問20
行政裁量に関する最高裁判所の判例の趣旨として、妥当でないものはどれか。
  • 1裁判所は、裁量権の範囲を超え、またはその濫用があった場合に限り、当該処分を取り消すことができる。
  • ✔公務員に対する懲戒処分については、裁判所が処分の適否を裁量権の行使としてどの処分を選ぶべきかまで自ら判断すべきである。
  • 3原子炉設置許可処分については、専門技術的裁量が認められ、司法審査は現在の科学技術水準に照らして調査審議に看過し難い過誤・欠落があるかによる。
  • 4在留期間更新の許否は法務大臣の広範な裁量に委ねられている。
  • 5個人タクシー事業の免許について、公正な手続により事実を認定して判断する手続的な適正さが求められる。
解説:【正解】2[妥当でないもの]
【結論】神戸税関事件(最判昭52.12.20)は、懲戒処分について裁判所は懲戒権者と同一の立場に立ってどの処分を選ぶべきかを判断するのではなく、社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法と判断すべきとした(社会観念審査)。
【肢別】
1○ 行政事件訴訟法30条は、裁量処分について裁量権の範囲を超えまたはその濫用があった場合に限り取り消すことができると定める。
2× 裁判所が自ら処分を選び直すという点が誤り。判断代置は原則として行われない。
3○ 伊方原発訴訟(最判平4.10.29)は、原子炉設置許可の審査には専門技術的裁量が認められるとし、現在の科学技術水準に照らして調査審議・判断の過程に看過し難い過誤・欠落があるかを審査するとした(判断過程統制)。
4○ マクリーン事件(No.6 参照)は、在留期間更新の許否を法務大臣の広範な裁量に委ねられているとした。
5○ 個人タクシー事件(最判昭46.10.28)は、聴聞等により公正な手続で事実を認定して判断すべきとし、手続的瑕疵を理由に処分を違法とした。
【横断整理】裁量統制の手法は三段階。①社会観念審査(神戸税関・マクリーン=最も緩やか)、②判断過程統制(伊方原発・日光太郎杉事件=考慮事項の適否を審査)、③手続的統制(個人タクシー・群馬中央バス=判断の過程の公正さを審査)。近年は②③が実効性をもつ。
【発展:他事考慮の裁判例】呉市学校施設使用不許可事件(最判平18.2.7)は、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮した点をとらえて裁量権の逸脱・濫用とした。②の典型例である。
【根拠】行政事件訴訟法30条、最判昭52.12.20、最判平4.10.29、最判昭46.10.28
問21
行政上の強制執行に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • 1行政代執行は、他人が代わってなすことのできない非代替的作為義務についても行うことができる。
  • 2執行罰は、現行法上、広く各種の行政法規において一般的に用いられている。
  • ✔代執行の費用は、国税滞納処分の例により徴収することができる。
  • 4直接強制については、行政代執行法が一般法として手続を定めている。
  • 5即時強制は、義務の存在を前提として、その履行を強制する手段である。
解説:【正解】3[妥当なもの]
【結論】行政代執行法6条1項は、代執行に要した費用について国税滞納処分の例により徴収することができると定める。
【肢別】
1× 代執行の対象は、他人が代わってなすことのできる代替的作為義務に限られる(行政代執行法2条)。非代替的作為義務や不作為義務は対象外である。
2× 執行罰の例は砂防法36条がほぼ唯一とされ、一般的に用いられてはいない。義務の履行があるまで反復して科すことができる点で、一回限りの行政刑罰と異なる。
3○ 上記のとおり。費用は義務者から徴収し、先取特権の順位は国税・地方税に次ぐ(6条2項)。
4× 直接強制は個別法に根拠がある場合に限られ、一般法は存在しない。行政代執行法が一般法として機能するのは代執行についてだけである。
5× 即時強制は義務の存在を前提とせず、目前急迫の障害を除くために直接身体・財産に実力を加えるもの(消防法29条の破壊消防、警察官職務執行法3条の保護など)。
【横断整理】行政上の強制手段を二系統で捉える。①強制執行系=代執行・執行罰・直接強制・強制徴収(いずれも義務の存在が前提)、②制裁系=行政刑罰・秩序罰・課徴金・公表。即時強制はどちらにも属さず、義務を前提としない実力行使である。
【発展:義務の種類と手段の対応】代替的作為義務→代執行が可能。非代替的作為義務(健康診断の受診など)→執行罰か直接強制。不作為義務(建築禁止など)→直接強制。一般法があるのは代執行だけなので、実務では条例違反への対応が課題となる。
【根拠】行政代執行法1条・2条・6条、砂防法36条
問22
行政指導・附款に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1行政指導は、相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであり、法律の個別の根拠がなくても行うことができる。
  • 2違法な附款のみを分離して取消訴訟の対象とすることは、附款が行政行為の重要な要素でない場合には認められうる。
  • 3附款とは、行政行為の効果を制限し、または特別の義務を課すために付加される従たる意思表示をいう。
  • 4附款を付すことができるのは、法律が認めている場合、または行政庁に裁量が認められている場合である。
  • ✔建築確認申請に対し、行政指導に応じないことを理由に確認処分を留保することは、いかなる場合も違法である。
解説:【正解】5[妥当でないもの]
【結論】品川マンション事件(最判昭60.7.16)は、建築主が建築確認処分の留保に任意に応じているとみられる場合には留保は直ちに違法とならないが、真摯かつ明確に不協力の意思を表明した以後もなお留保を続けることは、特段の事情がない限り違法になるとした。
【肢別】
1○ 行政指導は相手方の任意の協力によってのみ実現される事実行為であり、組織法上の所掌事務の範囲内であれば作用法上の個別の根拠は不要である。
2○ 附款が行政行為の重要な要素でなく可分である場合には、附款のみを分離して取消訴訟の対象とすることが認められうる。重要な要素であれば行政行為全体を争うことになる。
3○ 附款の定義として正しい。条件・期限・負担・撤回権の留保・法律効果の一部除外の五類型がある。
4○ 附款を付しうるのは、法律が明文で認めている場合または行政庁に裁量が認められている場合に限られる。
5× 「いかなる場合も違法」が誤り。任意の協力があるとみられる間は適法である。
【横断整理】行政指導の限界を示す判例三つ。①品川マンション事件=留保の許容限度、②武蔵野市教育施設負担金事件(最判平5.2.18)=給水拒否等を背景とした事実上の強制は違法、③武蔵野市長給水拒否事件(最決平元.11.8)=水道法違反で刑事責任。任意性の限界を超えたかどうかが共通の分水嶺である。
【発展:附款の限界】負担は行政行為の目的と関連しなければならず、無関係な義務を課す附款は違法(不当結合の禁止)。また附款のみが違法な場合、可分なら附款だけを取り消し、不可分なら行政行為全体が違法となる。
【根拠】最判昭60.7.16、最判平5.2.18、行政手続法32条・33条
問23
行政手続法の適用範囲に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • 1行政指導については、地方公共団体の機関がするものにも行政手続法の規定が適用される。
  • 2地方公共団体の機関がする処分は、その根拠が法律に置かれているものも含め、すべて行政手続法の適用除外である。
  • ✔行政手続法は、処分、行政指導、届出、命令等制定の各手続について定めている。
  • 4審査請求に対する裁決は、行政手続法の不利益処分に関する規定が適用される。
  • 5行政手続法には、行政計画の策定手続に関する規定が置かれている。
解説:【正解】3[妥当なもの]
【結論】行政手続法1条1項は、処分、行政指導および届出に関する手続ならびに命令等を定める手続について共通する事項を定めるものとしており、この四つが同法の守備範囲である。
【肢別】
1× 地方公共団体の機関がする行政指導は、根拠が法律にあるかどうかを問わず適用除外である(3条3項)。
2× 地方公共団体の機関がする処分でも、その根拠規定が法律に置かれているものには同法が適用される(3条3項の反対解釈)。すべて適用除外ではない。
3○ 上記のとおり。
4× 審査請求その他の不服申立てに対する行政庁の裁決・決定等は適用除外である(3条1項15号)。
5× 行政計画の策定手続に関する規定は置かれていない。行政指導指針や命令等の意見公募手続はあるが、計画策定手続の一般法はない。
【横断整理】地方公共団体への適用の切り分けが最頻出。処分=根拠が法律なら適用・条例規則なら適用除外。届出=同じ。行政指導と命令等制定=根拠を問わず一律に適用除外。「指導と命令等は丸ごと外れる」と覚える(No.932 参照)。
【発展:適用除外の主な例】国会・裁判所・会計検査院の処分、刑事事件に関する処分、学校・刑事施設等における被収容者に対する処分、外国人の出入国・帰化に関する処分(3条1項)。これらは手続の性質上、同法の一般的な手続になじまない類型である。
【根拠】行政手続法1条・3条
問24
申請に対する処分に関する行政手続法の規定として、妥当なものはどれか。
  • 1行政庁は、審査基準を定めるよう努めなければならない。
  • 2行政庁は、標準処理期間を定めなければならず、これを公にしなければならない。
  • 3行政庁は、申請書の提出を受けても、行政指導との関係で必要があれば受理を拒むことができる。
  • 4申請を拒否する場合、理由は常に書面で示さなければならない。
  • ✔行政庁は、申請が形式上の要件に適合しない場合、申請者に補正を求めるか、申請を拒否しなければならない。
解説:【正解】5[妥当なもの]
【結論】行政手続法7条は、申請が形式上の要件に適合しないときは、行政庁は速やかに相当の期間を定めて補正を求めるか、または申請により求められた許認可等を拒否しなければならないと定める。放置は許されない。
【肢別】
1× 審査基準の設定は「定めるものとする」(5条1項)とされ、法的義務である。努力義務ではない。公にすることも原則として義務(同3項)。
2× 標準処理期間は「定めるよう努める」(6条)ものであり、設定は努力義務。ただし定めた場合の公表は義務である。1と2で義務・努力義務が入れ替えられている点に注意。
3× いわゆる「受理」概念は否定されており、申請が事務所に到達したときに審査開始義務が生じる(7条)。受理を拒むことはできない。
4× 理由の提示を書面でしなければならないのは、拒否処分を書面でするときに限られる(8条2項)。
5○ 上記のとおり。
【横断整理】申請に対する処分の五つの規定。審査基準=設定義務・公表義務(5条)、標準処理期間=設定は努力義務・公表は義務(6条)、審査開始=到達主義(7条)、理由の提示=原則義務(8条)、情報の提供=努力義務(9条)、公聴会=努力義務(10条)。義務と努力義務の色分けが得点源になる。
【発展:理由提示の程度】一級建築士免許取消事件(最判平23.6.7)は、処分基準の適用関係が示されておらず、いかなる理由でその処分が選択されたかを知りえない理由提示を違法とした。理由の付記は、行政庁の恣意抑制と相手方の争訟便宜の両方を目的とする。
【根拠】行政手続法5条・6条・7条・8条、最判平23.6.7

民法全220問中 8問を掲載

問25
制限行為能力者に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • ✔成年被後見人が日用品の購入その他日常生活に関する行為をした場合、その行為を取り消すことはできない。
  • 2未成年者が法定代理人の同意を得ずにした法律行為は、単に権利を得または義務を免れる行為であっても取り消すことができる。
  • 3被保佐人が保佐人の同意を得ずにした行為は、その内容にかかわらずすべて取り消すことができる。
  • 4被補助人については、家庭裁判所の審判により補助人に同意権を付与することはできない。
  • 5制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いた場合でも、その行為を取り消すことができる。
解説:【正解】1[妥当なもの]
【結論】民法9条ただし書により、成年被後見人がした日用品の購入その他日常生活に関する行為は、取り消すことができない。本人の自己決定の尊重と残存能力の活用の表れである。
【肢別】
1○ 上記のとおり。成年被後見人はこれ以外の行為については、同意を得ていても取り消すことができる点が他の類型と異なる。
2× 単に権利を得または義務を免れる行為は、法定代理人の同意なくすることができ、取り消せない(5条1項ただし書)。負担のない贈与を受ける行為などが例。
3× 被保佐人の行為で取消しの対象となるのは、13条1項所定の重要な財産行為等に限られる。それ以外は単独で有効にできる。
4× 家庭裁判所は、補助人に同意権を付与する審判をすることができる(17条1項)。ただし本人以外の請求による場合は本人の同意が必要(同2項)。
5× 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、取り消すことができない(21条)。
【横断整理】三類型の同意権・代理権・取消権。成年後見=同意権なし(同意しても取り消せる)・包括的代理権・広い取消権。保佐=13条1項の行為に同意権・代理権は審判で個別付与。補助=同意権も代理権も審判で個別付与、かつ本人の同意が必要。保護の厚さが逆に自己決定の制約の強さと対応する。
【発展:詐術の程度】単に制限行為能力者であることを黙秘しただけでは詐術にあたらないが、他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたときは詐術にあたる(最判昭44.2.13)。
【根拠】民法5条・9条・13条・17条・21条、最判昭44.2.13
問26
意思表示に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1心裡留保による意思表示は原則として有効であるが、相手方が表意者の真意でないことを知り、または知ることができたときは無効となる。
  • 2相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効であるが、その無効は善意の第三者に対抗することができない。
  • ✔表意者に重大な過失があった場合、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときであっても、錯誤による取消しは一切認められない。
  • 4動機の錯誤については、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、取消しが認められる。
  • 5錯誤による意思表示は、その錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
解説:【正解】3[妥当でないもの]
【結論】民法95条3項は、表意者に重大な過失があっても、①相手方が表意者に錯誤があることを知りまたは重大な過失によって知らなかったとき、②相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときは、取消しを認める。
【肢別】
1○ 心裡留保による意思表示は原則として有効だが、相手方が表意者の真意でないことを知りまたは知ることができたときは無効となる(93条1項)。
2○ 通謀虚偽表示は無効だが、その無効を善意の第三者に対抗することはできない(94条2項)。無過失は要求されない。
3× 「一切認められない」が誤り。共通錯誤の場合には取消しが認められる。
4○ 動機の錯誤(基礎事情の錯誤)は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り取消しの対象となる(95条2項)。
5○ 錯誤取消しには、錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであることを要する(95条1項)。
【横断整理】意思表示の瑕疵と第三者保護。心裡留保・通謀虚偽表示=善意の第三者(無過失不要)。錯誤・詐欺=善意でかつ過失がない第三者(95条4項・96条3項)。強迫=第三者保護規定なし。表意者の帰責性が大きいほど第三者が広く保護される、という一本の軸で並ぶ(No.62 参照)。
【発展:94条2項の類推適用】権利者が虚偽の外観の作出に関与し、または存続を承認していた場合には、通謀がなくても94条2項を類推して善意の第三者を保護する(最判昭45.9.22等)。類推解釈が民事で広く用いられる代表例である(No.3 参照)。
【根拠】民法93条・94条・95条、最判昭45.9.22
問27
詐欺および強迫に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • 1強迫による意思表示の取消しは、善意無過失の第三者に対抗することができない。
  • 2詐欺による意思表示の取消しは、善意無過失の第三者にも対抗することができる。
  • 3第三者が強迫を行った場合、相手方が善意無過失であれば意思表示を取り消すことができない。
  • ✔第三者が詐欺を行った場合、相手方がその事実を知り、または知ることができたときに限り、意思表示を取り消すことができる。
  • 5詐欺による意思表示は無効であり、取消しを要しない。
解説:【正解】4[妥当なもの]
【結論】民法96条2項は、相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合、相手方がその事実を知りまたは知ることができたときに限り取消しができると定める。
【肢別】
1× 強迫については96条3項のような第三者保護規定がなく、取消しは善意無過失の第三者にも対抗できる。
2× 詐欺による取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない(96条3項)。
3× 第三者が強迫をした場合は、相手方の善意悪意を問わず取り消すことができる。96条2項は詐欺についてのみの規定である。
4○ 上記のとおり。
5× 詐欺の効果は取消しであって無効ではない(96条1項)。取消権は追認できる時から5年、行為の時から20年で消滅する(126条)。
【横断整理】詐欺と強迫の違いを三点で押さえる。①第三者が行った場合=詐欺は相手方の悪意・有過失が必要、強迫は不要。②第三者保護=詐欺はあり、強迫はなし。③取消し前後を問わず、強迫の被害者は厚く保護される。強迫は表意者の帰責性が乏しいためである(No.61 参照)。
【発展:取消し後の第三者】判例は、取消しにより所有権が遡って復帰するが、取消し後に登場した第三者との関係は177条の対抗問題として処理する(大判昭17.9.30)。取消し前の第三者は96条3項、取消し後の第三者は177条、という切り分けが定着している(No.66 参照)。
【根拠】民法96条・126条、大判昭17.9.30
問28
代理に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • ✔復代理人を選任した場合、代理人の代理権は消滅する。
  • 2自己契約および双方代理は、本人があらかじめ許諾した場合や債務の履行にあたる場合を除き、無権代理行為とみなされる。
  • 3代理人は行為能力者であることを要しないが、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は、原則として取り消すことができる。
  • 4任意代理人は、本人の許諾を得たときまたはやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任できない。
  • 5代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、原則として代理人自身のためにしたものとみなされる。
解説:【正解】1[妥当でないもの]
【結論】復代理人を選任しても代理人の代理権は消滅せず、代理人と復代理人の代理権は併存する。復代理人は本人を代理する者であり、代理人の代理人ではない。
【肢別】
1× 上記のとおり。
2○ 自己契約および双方代理は、本人があらかじめ許諾した場合や債務の履行にあたる場合を除き、代理権を有しない者がした行為とみなされる(108条1項)。効果は無権代理であり、本人の追認の余地が残る。
3○ 代理人は行為能力者であることを要しない(102条本文)が、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は取り消すことができる(同ただし書)。
4○ 任意代理人は、本人の許諾を得たときまたはやむを得ない事由があるときでなければ復代理人を選任できない(104条)。法定代理人は自己の責任でいつでも選任できる(105条)。
5○ 顕名をしないでした意思表示は、代理人自身のためにしたものとみなされる(100条本文)。ただし相手方が代理であることを知りまたは知ることができたときは代理行為として扱われる(同ただし書)。
【横断整理】任意代理と法定代理の差。復任=任意は制限あり・法定は自由。消滅事由=本人の死亡・代理人の死亡等は共通だが、任意代理は本人の破産手続開始でも消滅する(111条・653条)。責任の重さと選任経緯の違いに由来する。
【発展:利益相反行為】108条2項は、代理人と本人の利益が相反する行為も無権代理とみなす。親権者が子の財産を自己の債務の担保に供する場合が典型で、判断は行為の外形から客観的に行う(最判昭42.4.18)。
【根拠】民法100条・102条・104条・105条・108条・111条
問29
無権代理および表見代理に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1無権代理行為の相手方は、本人に対し相当の期間を定めて追認するかどうかを確答すべき旨を催告でき、期間内に確答がないときは追認を拒絶したものとみなされる。
  • ✔無権代理人が本人を相続した場合、本人が生前に追認を拒絶していたときであっても、無権代理行為は当然に有効となる。
  • 3無権代理行為の相手方は、契約時に無権代理であることを知らなかった場合、本人が追認しない間は契約を取り消すことができる。
  • 4本人が無権代理人を相続した場合、本人は無権代理行為の追認を拒絶することができるが、無権代理人の責任は承継する。
  • 5代理権授与の表示による表見代理、権限外の行為の表見代理、代理権消滅後の表見代理の3類型がある。
解説:【正解】2[妥当でないもの]
【結論】最判平10.7.17は、本人が生前に追認を拒絶した後に無権代理人が本人を相続した場合、無権代理行為が有効になるものではないとした。追認拒絶により無効が確定しているためである。
【肢別】
1○ 相手方は本人に対し相当の期間を定めて追認するかどうかの確答を催告でき、期間内に確答がないときは追認を拒絶したものとみなされる(114条)。
2× 「当然に有効となる」が誤り。追認拒絶前に相続した場合であれば、信義則上、追認を拒絶できないとされる(最判昭40.6.18)。
3○ 相手方は、契約時に無権代理であることを知らなかった場合、本人が追認しない間は契約を取り消すことができる(115条)。
4○ 本人が無権代理人を相続した場合、本人は追認を拒絶できるが、無権代理人の117条の責任は承継する(最判昭48.7.3)。
5○ 表見代理は、代理権授与の表示(109条)、権限外の行為(110条)、代理権消滅後(112条)の3類型である。
【横断整理】無権代理と相続を四場面で整理する。①無権代理人が本人を相続(拒絶前)=追認拒絶は信義則違反、②同(拒絶後)=無効のまま、③本人が無権代理人を相続=追認拒絶可・117条責任は承継、④双方を順次相続=①に準じる(最判昭63.3.1)。
【発展:117条の責任】無権代理人は、相手方の選択に従い履行または損害賠償の責任を負う。要件は、追認がないこと、相手方が善意無過失であること(ただし無権代理人が悪意なら相手方に過失があっても責任を負う)、無権代理人が行為能力者であることである。
【根拠】民法109条〜117条、最判昭40.6.18、最判昭48.7.3、最判平10.7.17
問30
時効に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • 1所有権も、20年間行使しないときは時効によって消滅する。
  • ✔債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、または権利を行使することができる時から10年間行使しないときに時効消滅する。
  • 3所有の意思をもって平穏かつ公然と他人の物を10年間占有した者は、善意無過失であるか否かを問わず所有権を取得する。
  • 4時効の利益は、時効の完成前にあらかじめ放棄することができる。
  • 5裁判上の請求があった場合、時効は当然に更新され、完成猶予の効果は生じない。
解説:【正解】2[妥当なもの]
【結論】民法166条1項は、債権について、権利を行使することができることを知った時から5年(主観的起算点)、または権利を行使することができる時から10年(客観的起算点)の二重の期間を定める。
【肢別】
1× 所有権は消滅時効にかからない。他人が取得時効で取得した反射として失われることはあるが、不行使による消滅はない。
2○ 上記のとおり。人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権は、客観的起算点からの期間が20年に伸長される(167条)。
3× 10年の短期取得時効には、占有開始時の善意かつ無過失が必要である(162条2項)。悪意または有過失なら20年(同1項)。
4× 時効の利益をあらかじめ放棄することはできない(146条)。債権者が優越的地位を利用して放棄させることを防ぐ趣旨である。
5× 裁判上の請求はまず完成猶予事由となり、確定判決等によって権利が確定した時から新たに時効が進行する(更新、147条)。
【横断整理】完成猶予と更新の区別。完成猶予のみ=催告(6か月・150条)、協議の合意(151条)、天災等(161条)。猶予+更新=裁判上の請求、強制執行(147条・148条)。更新のみ=承認(152条)。承認は債務者の行為だけで直ちに更新が生じる点で特殊である。
【発展:時効利益の放棄と援用】完成後の放棄は自由であり、また時効完成を知らずに債務を承認した場合には、信義則上、時効を援用できない(最大判昭41.4.20)。援用権者には保証人・物上保証人・第三取得者など、正当な利益を有する者が含まれる(145条)。
【根拠】民法145条・146条・147条・152条・162条・166条・167条
問31
民法177条の「第三者」に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし妥当でないものはどれか。
  • 1177条の第三者とは、当事者もしくはその包括承継人以外の者で、不動産に関する物権の得喪・変更の登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいう。
  • 2不法占拠者は、177条の第三者にあたらない。
  • ✔単に登記がないことを知っているにすぎない悪意者は、177条の第三者にあたらない。
  • 4背信的悪意者は、177条の第三者にあたらない。
  • 5実質的に無権利者である者は、177条の第三者にあたらない。
解説:【正解】3[妥当でないもの]
【結論】判例は、単に登記がないことを知っているにすぎない単純悪意者も177条の第三者にあたるとし、第三者から除外されるのは信義則に反する背信的悪意者に限られるとする(最判昭43.8.2)。
【肢別】
1○ 大連判明41.12.15の定式。第三者とは、当事者もしくはその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいう。
2○ 不法占拠者は登記の欠缺を主張する正当な利益をもたず、第三者にあたらない(最判昭25.12.19)。登記がなくても明渡しを請求できる。
3× 上記のとおり。単純悪意者は第三者にあたる。
4○ 背信的悪意者は第三者から除外される。自由競争の範囲を逸脱するためである。
5○ 実質的無権利者(虚偽の登記名義人など)も第三者にあたらない。
【横断整理】177条の第三者から除外される者は四つ。①不法占拠者等の無権利者、②詐欺・強迫により登記を妨げた者(不動産登記法5条1項)、③他人のために登記を申請する義務のある者(同2項)、④背信的悪意者。逆に、賃借人・差押債権者・二重譲受人は第三者にあたる。
【発展:背信的悪意者からの転得者】最判平8.10.29は、背信的悪意者からの転得者について、その者自身が背信的悪意者と評価されない限り、登記の欠缺を主張できるとした(相対的構成)。背信性は人ごとに判断される。
【根拠】民法177条、大連判明41.12.15、最判昭43.8.2、最判平8.10.29
問32
即時取得(民法192条)に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • ✔占有取得の態様として、占有改定によっても即時取得は成立する。
  • 2即時取得は、不動産については適用されない。
  • 3即時取得が成立するためには、取引行為によって平穏かつ公然と動産の占有を始めたことが必要である。
  • 4盗品または遺失物については、被害者または遺失主は盗難・遺失の時から2年間、占有者に対しその物の回復を請求できる。
  • 5即時取得者は、善意かつ無過失であることを要するが、占有者の善意・平穏・公然は推定される。
解説:【正解】1[妥当でないもの]
【結論】最判昭35.2.11は、占有改定による占有取得では即時取得は成立しないとした。外観上の占有状態に変更がなく、公示としての実質を欠くためである。
【肢別】
1× 上記のとおり。現実の引渡し・簡易の引渡し・指図による占有移転では成立の余地がある。
2○ 即時取得は動産に関する制度であり、不動産には適用されない。不動産取引の安全は登記制度と94条2項類推によって図られる(No.61・No.66 参照)。
3○ 取引行為によって、平穏かつ公然と動産の占有を始めたことが要件である(192条)。相続のような包括承継は取引行為にあたらない。
4○ 盗品・遺失物については、被害者または遺失主は盗難・遺失の時から2年間、占有者に対し回復を請求できる(193条)。
5○ 占有者は所有の意思をもって善意・平穏・公然に占有するものと推定され(186条1項)、無過失は188条の権利適法の推定から導かれる(最判昭41.6.9)。
【横断整理】即時取得の要件は五つ。①動産であること、②前主が無権利であること、③有効な取引行為、④平穏・公然・善意・無過失、⑤占有の取得(占有改定を除く)。②を欠く場合には即時取得ではなく単なる有効な取得であり、制度の出番がない。
【発展:193条の無償回復】盗品等が競売や公の市場、同種の物を販売する商人から善意で買い受けられたときは、代価を弁償しなければ回復できない(194条)。最判平12.6.27は、代価弁償があるまで占有者は使用収益を継続できるとした。
【根拠】民法186条・188条・192条〜194条、最判昭35.2.11、最判平12.6.27

商法・会社法全100問中 8問を掲載

問33
商人および商行為に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • ✔会社がその事業としてする行為および事業のためにする行為は、商行為とはならない。
  • 2店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者は、商行為を行うことを業としない者であっても商人とみなされる。
  • 3絶対的商行為は、営業としてするかどうかにかかわらず商行為となる。
  • 4商人がその営業のためにする行為は商行為であり、商人の行為はその営業のためにするものと推定される。
  • 5自己の名をもって商行為をすることを業とする者を商人という。
解説:【正解】1[妥当でないもの]
【結論】会社法5条により、会社がその事業としてする行為および事業のためにする行為は商行為とされる。商行為とならないとする点が誤り。
【肢別】
1× 上記のとおり。会社は事業を行うために設立される営利社団法人であるから、その行為は当然に商行為となる。
2○ 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者は、商行為を行うことを業としない者であっても商人とみなされる(商法4条2項、擬制商人)。鉱業を営む者も同様である。
3○ 絶対的商行為は、営業としてするかどうかにかかわらず商行為となる(501条)。投機購買、投機売却、取引所の取引、手形その他の商業証券に関する行為の四つ。
4○ 商人がその営業のためにする行為は商行為であり(503条1項、附属的商行為)、商人の行為はその営業のためにするものと推定される(同2項)。
5○ 自己の名をもって商行為をすることを業とする者を商人という(4条1項、固有の商人)。
【横断整理】商行為の三分類。①絶対的商行為(501条)=誰がしても商行為。②営業的商行為(502条)=営業として反復継続する場合に商行為(賃貸、運送、請負、出版、両替など13号)。③附属的商行為(503条)=商人が営業のためにする行為。①②から商人が導かれ、商人から③が導かれる循環構造になっている。
【発展:商事法定利率の廃止】かつて商法514条は商事法定利率を年6分としていたが、平成29年民法改正に伴い削除され、法定利率は民法404条の変動制に一本化された。商行為による債務の連帯性(511条)などは維持されている。
【根拠】商法4条・501条・502条・503条・511条、会社法5条
問34
商号および商業登記に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1商人は、その氏、氏名その他の名称をもって商号とすることができる。
  • ✔商号は、営業とともにする場合を除き、譲渡することができない。
  • 3自己の商号を使用して営業または事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が営業を行うものと誤認して取引をした者に対し、連帯して弁済する責任を負う。
  • 4登記すべき事項は、登記の後でなければ善意の第三者に対抗することができない。
  • 5何人も、不正の目的をもって他の商人であると誤認されるおそれのある名称または商号を使用してはならない。
解説:【正解】2[妥当でないもの]
【結論】商法15条1項により、商号は営業とともにする場合または営業を廃止する場合に限り譲渡できる。営業を廃止する場合の譲渡も可能である以上、「営業とともにする場合を除き譲渡できない」は誤り。
【肢別】
1○ 商人はその氏、氏名その他の名称をもって商号とすることができる(11条1項、商号自由主義)。ただし会社は種類に応じた文字を用いる必要がある(会社法6条2項)。
2× 上記のとおり。
3○ 自己の商号を使用して営業または事業を行うことを他人に許諾した商人は、誤認して取引をした者に対し、当該他人と連帯して弁済する責任を負う(14条、名板貸責任)。
4○ 登記すべき事項は、登記の後でなければ善意の第三者に対抗できない(9条1項前段、消極的公示力)。登記後は正当な事由がある場合を除き善意の第三者にも対抗できる(同後段、積極的公示力)。
5○ 何人も、不正の目的をもって他の商人であると誤認されるおそれのある名称・商号を使用してはならない(12条1項)。
【横断整理】商号譲渡の対抗要件は登記である(15条2項)。営業譲渡に伴い商号を続用した譲受人は、譲渡人の営業によって生じた債務について弁済責任を負う(17条1項)。ただし遅滞なく免責の登記または通知をすれば免れる(同2項)。外観への信頼保護という点で名板貸責任と共通する。
【発展:不実登記の効力】故意または過失により不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることを善意の第三者に対抗できない(商法9条2項、会社法908条2項)。登記の公示力は、正しい登記だけでなく誤った登記についても外観信頼保護の方向で働く。
【根拠】商法9条・11条・12条・14条・15条・17条
問35
株式会社の設立に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • ✔設立時取締役は、発起設立の場合、必ず創立総会で選任しなければならない。
  • 2定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じない。
  • 3現物出資、財産引受け、発起人の報酬その他の特別の利益、設立費用は変態設立事項として定款に記載しなければならない。
  • 4変態設立事項については、原則として裁判所が選任した検査役の調査が必要である。
  • 5発起設立とは、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法をいう。
解説:【正解】1[妥当でないもの]
【結論】創立総会は募集設立の場合に開催されるものであり(会社法65条)、発起設立では発起人が設立時取締役を選任する(38条1項)。
【肢別】
1× 上記のとおり。発起設立で創立総会は開かれない。
2○ 定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じない(30条1項)。持分会社の定款には認証が不要である点と対比する。
3○ 現物出資、財産引受け、発起人の報酬その他の特別の利益、設立費用は変態設立事項として定款に記載しなければ効力を生じない(28条)。
4○ 変態設立事項については、原則として裁判所が選任した検査役の調査を要する(33条1項)。ただし500万円以下の現物出資、市場価格のある有価証券、弁護士等の証明がある場合は例外となる(同10項)。
5○ 発起設立とは、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法をいう(25条1項1号)。
【横断整理】発起設立と募集設立の対比。設立時発行株式=発起人が全部引受け/一部は募集。設立時役員の選任=発起人の議決権の過半数/創立総会。払込みの保管証明=不要/原則必要(64条)。募集設立は外部投資家が関与するため手続が重い。
【発展:財産引受けと事後設立】財産引受けは定款に記載しなければ無効で、成立後に会社が追認することもできない(最判昭28.12.3)。これに対し事後設立(成立後2年内に純資産額の5分の1を超える財産を取得する契約)は、株主総会の特別決議を要するにとどまる(467条1項5号)。潜脱防止の程度に差がある。
【根拠】会社法25条・28条・30条・33条・38条・65条・467条
問36
株式に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • ✔株式会社は、自己株式を取得することが一切禁止されている。
  • 2株式会社は、定款で定めることにより、株式の譲渡について会社の承認を要する旨を定めることができる。
  • 3株主の権利のうち、剰余金配当請求権および残余財産分配請求権の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。
  • 4株主は、その有する株式の内容および数に応じて平等に取り扱われる。
  • 5株式会社は、単元株式数を定款で定めることができる。
解説:【正解】1[妥当でないもの]
【結論】会社法155条以下は、株主総会決議に基づく取得や取得請求権付株式の請求など、一定の場合に自己株式の取得を認めている。「一切禁止」ではない。
【肢別】
1× 上記のとおり。ただし取得の対価は分配可能額を超えてはならないという財源規制がある(461条1項)。
2○ 定款で定めることにより、株式の譲渡について会社の承認を要する旨を定めることができる(107条1項1号・108条1項4号、譲渡制限株式)。
3○ 剰余金配当請求権および残余財産分配請求権の全部を株主に与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない(105条2項)。株主の経済的権利の核心だからである。
4○ 株主は、その有する株式の内容および数に応じて平等に取り扱われる(109条1項、株主平等原則)。非公開会社では属人的定めが可能(同2項)。
5○ 株式会社は単元株式数を定款で定めることができる(188条1項)。1単元は1000および発行済株式総数の200分の1を超えられない(施行規則34条)。
【横断整理】自己株式取得の規制は三層。①手続規制(株主総会決議・売主追加請求権など)、②財源規制(461条の分配可能額)、③保有中の扱い(議決権なし=308条2項、剰余金配当請求権なし=453条かっこ書)。取得は実質的に出資の払戻しであるため、配当と同じ財源規制に服する(No.90 参照)。
【発展:株主平等原則の限界】最判平18.2.15は、買収防衛策としての新株予約権の無償割当てについて、特定株主を差別的に扱っても、株主総会の判断を経ており相当性を欠かない限り株主平等原則の趣旨に反しないとした(ブルドックソース事件)。
【根拠】会社法105条・107条・109条・155条・188条・308条・461条
問37
株主総会に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1取締役会設置会社においては、株主総会は会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限り決議することができる。
  • 2定款の変更、事業の全部の譲渡、資本金の額の減少などは特別決議事項である。
  • 3株主総会の招集通知は、公開会社では原則として会日の2週間前までに発しなければならない。
  • ✔株主総会決議の不存在確認の訴えには、決議の日から3か月という提訴期間の制限がある。
  • 5株主総会の決議の取消しの訴えは、決議の日から3か月以内に提起しなければならない。
解説:【正解】4[妥当でないもの]
【結論】会社法830条の定める決議不存在確認の訴えおよび決議無効確認の訴えには、提訴期間の制限がない。3か月の制限があるのは決議取消しの訴えである(831条1項)。
【肢別】
1○ 取締役会設置会社では、株主総会は会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限り決議できる(295条2項)。非設置会社では万能の機関である(同1項)。
2○ 定款の変更(466条)、事業の全部の譲渡(467条)、資本金の額の減少(447条)はいずれも特別決議事項である(309条2項)。
3○ 公開会社では、株主総会の招集通知は会日の2週間前までに発しなければならない(299条1項)。非公開会社では原則1週間前、取締役会非設置会社ではさらに定款で短縮可能。
4× 上記のとおり。
5○ 決議取消しの訴えは決議の日から3か月以内に提起しなければならない(831条1項)。
【横断整理】三つの訴えの対比。取消し=招集手続・決議方法の法令定款違反や著しい不公正、特別利害関係人による著しく不当な決議(831条1項各号)・3か月・形成訴訟。無効確認=決議内容の法令違反・期間制限なし。不存在確認=決議の物理的不存在や著しい手続の瑕疵・期間制限なし。瑕疵が重いほど期間制限が外れる。
【発展:裁量棄却】決議取消しの訴えについて、招集手続または決議方法の法令定款違反が重大でなく、かつ決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、裁判所は請求を棄却できる(831条2項)。事情判決に似た発想だが、瑕疵が軽微であることが前提である点が異なる(No.46 参照)。
【根拠】会社法295条・299条・309条・447条・466条・467条・830条・831条
問38
取締役および取締役会に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1取締役会設置会社では、取締役は3人以上でなければならない。
  • 2取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである。
  • ✔取締役の解任は、株主総会の特別決議によらなければならない。
  • 4取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
  • 5取締役会は、重要な財産の処分および譲受け、多額の借財などの重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
解説:【正解】3[妥当でないもの]
【結論】取締役の解任は原則として株主総会の普通決議で足りる(会社法339条1項、341条)。ただし定足数は議決権の3分の1未満に下げられない。
【肢別】
1○ 取締役会設置会社では取締役は3人以上でなければならない(331条5項)。
2○ 取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである(332条1項)。非公開会社では定款で10年まで伸長できる(同2項)。
3× 上記のとおり。特別決議が必要なのは、累積投票により選任された取締役および監査等委員である取締役の解任である(309条2項7号、344条の2第3項)。
4○ 取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができない(369条2項)。株主総会と異なり、決議前に排除される。
5○ 重要な財産の処分および譲受け、多額の借財、支配人その他の重要な使用人の選任・解任などの重要な業務執行の決定は、取締役に委任できない(362条4項)。
【横断整理】解任決議は平成17年会社法で特別決議から普通決議に緩和された一方、正当な理由なく解任された取締役は損害賠償を請求できる(339条2項)。解任権を保障しつつ地位の安定は金銭で調整する設計である。
【発展:特別利害関係の扱いの差】株主総会では、特別利害関係人も議決権を行使でき、著しく不当な決議がされた場合に取消事由となるにとどまる(831条1項3号)。取締役会では議決から排除される。取締役が善管注意義務を負う受託者であるのに対し、株主は自己の利益のために議決権を行使できるという地位の違いによる。
【根拠】会社法331条・332条・339条・341条・362条・369条
問39
取締役の義務と責任に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1取締役は、会社に対し善良な管理者の注意をもって職務を行う義務を負う。
  • ✔利益相反取引について承認を受けた場合には、その取引によって会社に損害が生じても取締役は任務懈怠責任を負わない。
  • 3取締役が自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引をしようとするときは、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認を受けなければならない。
  • 4取締役の会社に対する責任は、総株主の同意がなければ免除することができないのが原則である。
  • 5取締役がその職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
解説:【正解】2[妥当でないもの]
【結論】会社法423条3項は、利益相反取引により会社に損害が生じた場合、承認の有無にかかわらず一定の取締役について任務懈怠を推定する。承認を受けても責任を免れるわけではない。
【肢別】
1○ 取締役は会社に対し善管注意義務を負う(330条、民法644条)。忠実義務(355条)はこれを敷衍したものとするのが判例(最大判昭45.6.24)。
2× 上記のとおり。しかも自己のためにした直接取引の場合は、任務を怠ったことが自己の責めに帰することができない事由によることを証明しても責任を免れない無過失責任となる(428条1項)。
3○ 競業取引をしようとするときは、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認を受けなければならない(356条1項1号)。
4○ 取締役の会社に対する責任は、総株主の同意がなければ免除できないのが原則である(424条)。一部免除の制度として425条〜427条がある。
5○ 取締役がその職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う(429条1項)。
【横断整理】356条1項の三類型は、①競業取引、②直接取引(自己または第三者のために会社と取引)、③間接取引(会社が取締役の債務を保証するなど)。②③が利益相反取引で、承認を受けても423条3項の推定が働く点が競業と異なる。
【発展:429条の性質】最大判昭44.11.26は、429条を第三者保護のため法が特に認めた法定責任と解し、間接損害・直接損害のいずれについても悪意重過失があれば責任を負うとした。
【根拠】会社法330条・355条・356条・423条・424条・428条・429条
問40
会社の機関に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1公開会社は、取締役会を置かなければならない。
  • 2監査役会設置会社では、監査役は3人以上で、そのうち半数以上は社外監査役でなければならない。
  • 3指名委員会等設置会社には、指名委員会、監査委員会、報酬委員会が置かれ、各委員会の委員の過半数は社外取締役でなければならない。
  • 4指名委員会等設置会社には、監査役を置くことができない。
  • ✔監査等委員会設置会社では、監査等委員である取締役は3人以上で、その全員が社外取締役でなければならない。
解説:【正解】5[妥当でないもの]
【結論】会社法331条6項により、監査等委員である取締役は3人以上で、その過半数が社外取締役でなければならない。全員である必要はない。
【肢別】
1○ 公開会社は取締役会を置かなければならない(327条1項1号)。監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社も同様である。
2○ 監査役会設置会社では、監査役は3人以上で、そのうち半数以上は社外監査役でなければならない(335条3項)。「過半数」ではなく「半数以上」である点が頻出。
3○ 指名委員会等設置会社には指名・監査・報酬の三委員会が置かれ、各委員会の委員の過半数は社外取締役でなければならない(400条1項・3項)。
4○ 指名委員会等設置会社および監査等委員会設置会社には監査役を置くことができない(327条4項)。監査委員会・監査等委員会が監査を担うためである。
5× 上記のとおり。
【横断整理】社外要件の数値を並べる。監査役会=監査役3人以上・半数以上が社外。指名委員会等=各委員会3人以上・過半数が社外。監査等委員会=3人以上・過半数が社外。「半数以上」は監査役会だけ、と押さえると取り違えが防げる。
【発展:社外取締役の設置義務】令和元年改正により、監査役会設置会社であって公開会社かつ大会社であるもののうち、有価証券報告書提出会社は社外取締役を置かなければならない(327条の2)。それ以外の会社では、置かない場合に理由の説明を求める旧規律ではなく、義務化された点が変更点である。
【根拠】会社法327条・327条の2・331条・335条・400条

基礎知識全100問中 8問を掲載

問41
行政書士法に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務または事実証明に関する書類を作成することを業とする。
  • 2他の法律において制限されている業務については、行政書士は行うことができない。
  • 3行政書士となる資格を有する者が業務を行うには、日本行政書士会連合会に備える行政書士名簿に登録を受けなければならない。
  • ✔行政書士は、業務上取り扱った事項について知り得た秘密を、行政書士でなくなった後は自由に漏らすことができる。
  • 5行政書士は、正当な事由がある場合でなければ、依頼を拒むことができない。
解説:【正解】4[妥当でないもの]
【結論】行政書士法12条は、行政書士は正当な理由がなく業務上取り扱った事項について知り得た秘密を漏らしてはならず、行政書士でなくなった後も同様であると定める。
【肢別】
1○ 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務または事実証明に関する書類を作成することを業とする(1条の2第1項)。
2○ 他の法律において制限されている業務は行うことができない(1条の2第2項)。弁護士法72条、司法書士法73条、税理士法52条などとの調整規定である。
3○ 業務を行うには、日本行政書士会連合会に備える行政書士名簿に登録を受けなければならない(6条1項)。登録と同時に都道府県の行政書士会に入会する(16条の5)。
4× 上記のとおり。守秘義務は資格喪失後も存続する。違反には1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されうる(22条1項)。
5○ 行政書士は、正当な事由がある場合でなければ依頼を拒むことができない(11条)。
【横断整理】行政書士の義務を並べる。①依頼に応ずる義務(11条)、②帳簿の備付け・2年保存(9条)、③守秘義務(12条・資格喪失後も存続)、④会則遵守義務(13条)、⑤報酬額の掲示(10条の2)、⑥業務の誠実な遂行(10条)。②の2年という数値は出題されやすい(No.93 参照)。
【発展:特定行政書士】平成26年改正により、日行連の研修課程を修了した特定行政書士は、行政書士が作成した官公署提出書類に係る許認可等の不服申立て手続について代理できる(1条の3第1項2号・同2項)。
【根拠】行政書士法1条の2・1条の3・6条・9条・11条・12条・22条
問42
行政書士および行政書士会に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1行政書士は、その業務に関する帳簿を備え、これを関係書類とともに帳簿閉鎖の時から2年間保存しなければならない。
  • 2都道府県知事は、行政書士に対し懲戒処分として戒告、2年以内の業務の停止、業務の禁止をすることができる。
  • 3行政書士は、業務に関する書類に記名し職印を押さなければならない。
  • ✔行政書士は、事務所を2以上設けることができる。
  • 5行政書士法人は、社員が1人であっても設立することができる。
解説:【正解】4[妥当でないもの]
【結論】行政書士法8条3項により、行政書士は事務所を2以上設けることができない(一人一事務所の原則)。責任の所在を明確にし、名義貸しを防ぐ趣旨である。
【肢別】
1○ 行政書士は業務に関する帳簿を備え、関係書類とともに帳簿閉鎖の時から2年間保存しなければならない(9条)。
2○ 都道府県知事は、行政書士に対する懲戒処分として戒告、2年以内の業務の停止、業務の禁止をすることができる(14条)。行政書士法人に対する処分は解散命令まである(14条の2)。
3○ 業務に関して作成した書類には記名し、職印を押さなければならない(施行規則9条2項)。
4× 上記のとおり。
5○ 行政書士法人は社員が1人でも設立できる(13条の3)。平成28年改正で一人法人が認められた。
【横断整理】数値を集める。帳簿保存=2年、業務停止=2年以内、登録拒否等に対する審査請求=総務大臣に対して行う(6条の3第3項)、行政書士会への入会=登録と同時。「2年」が二か所に出てくる点を意識して混同を防ぐ(No.92 参照)。
【発展:懲戒手続と行政手続法】業務の禁止は資格・地位を直接はく奪する不利益処分にあたるため、聴聞が必要となる(行政手続法13条1項1号ロ、No.28 参照)。何人も、行政書士に法定の事由があると認めるときは知事に対し適当な措置をとるべきことを求めることができる(行政書士法14条の3)。
【根拠】行政書士法8条・9条・13条の3・14条・14条の3、同施行規則9条
問43
戸籍および住民基本台帳に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦およびこれと氏を同じくする子ごとに編製する。
  • 2出生の届出は、出生の日から14日以内(国外で出生した場合は3か月以内)にしなければならない。
  • ✔戸籍謄本等は、何人も理由を問わず自由に請求することができる。
  • 4転入をした者は、転入した日から14日以内に市町村長に届け出なければならない。
  • 5住民票は、市町村がその住民につき、氏名、生年月日、男女の別、住所などを記載して作成する。
解説:【正解】3[妥当でないもの]
【結論】戸籍法10条・10条の2により、戸籍謄本等の交付請求ができるのは原則として戸籍に記載されている者、その配偶者、直系尊属・直系卑属であり、第三者が請求するには利用目的等の明示が必要である。
【肢別】
1○ 戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦およびこれと氏を同じくする子ごとに編製する(戸籍法6条、夫婦同一戸籍・親子同一戸籍の原則)。
2○ 出生の届出は出生の日から14日以内、国外で出生した場合は3か月以内にしなければならない(49条1項)。
3× 上記のとおり。「何人も理由を問わず自由に」が誤り。
4○ 転入をした者は、転入した日から14日以内に市町村長に届け出なければならない(住民基本台帳法22条1項)。
5○ 住民票は、市町村がその住民につき、氏名、生年月日、男女の別、住所などを記載して作成する(同法7条)。
【横断整理】期間を並べる。出生届=14日以内(国外は3か月)、死亡届=死亡の事実を知った日から7日以内(国外は3か月)、婚姻・離婚=届出により効力発生(期間制限なし)、転入・転居・転出後の届出=14日以内。届出が効力要件か報告的届出かで性格が分かれる。
【発展:本人通知制度と職務上請求】行政書士等の資格者は、受任事件について職務上請求用紙により戸籍・住民票を請求できる(戸籍法10条の2第3項等)。濫用防止のため、多くの自治体が本人通知制度を設けている。守秘義務(No.92 参照)と表裏の関係にある権限である。
【根拠】戸籍法6条・10条・10条の2・49条・86条、住民基本台帳法7条・22条・24条
問44
個人情報の保護に関する法律に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものをいう。
  • 2個人識別符号が含まれる情報は、それ自体で個人情報にあたる。
  • 3要配慮個人情報には、人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴などが含まれる。
  • ✔個人情報取扱事業者は、取り扱う個人情報の数が5000人分以下である場合には、同法の適用を受けない。
  • 5要配慮個人情報の取得には、原則としてあらかじめ本人の同意が必要である。
解説:【正解】4[妥当でないもの]
【結論】平成27年改正により、取り扱う個人情報が5000人分以下の事業者を適用除外とする、いわゆる5000件要件は撤廃された。事業に個人情報データベース等を利用する者は原則として個人情報取扱事業者となる(16条2項)。
【肢別】
1○ 個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できるものをいう(2条1項1号)。死者の情報は含まれない。
2○ 個人識別符号が含まれる情報は、それ自体で個人情報にあたる(2条1項2号)。指紋・虹彩等の身体的特徴を変換した符号や、旅券番号・マイナンバー等が該当する。
3○ 要配慮個人情報には、人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実等が含まれる(2条3項)。
4× 上記のとおり。
5○ 要配慮個人情報の取得には、原則としてあらかじめ本人の同意が必要である(20条2項)。通常の個人情報が利用目的の通知・公表で足りるのと異なる。
【横断整理】情報の類型を四つ。①個人情報、②個人データ(データベース等を構成するもの)、③保有個人データ(開示・訂正等の権限を有するもの)、④要配慮個人情報。義務の重さは①→②→③の順に加わり、④は取得段階で同意が要求される。
【発展:令和2年・3年改正】仮名加工情報の新設、個人関連情報の第三者提供規制、漏えい等が生じた場合の個人情報保護委員会への報告と本人通知の義務化(26条)、外国にある第三者への提供時の情報提供義務。あわせて、国の行政機関・独立行政法人・地方公共団体の規律が同法に一本化された。
【根拠】個人情報保護法2条・16条・20条・26条
問45
個人情報取扱事業者の義務に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • ✔本人は、保有個人データの開示を請求できるが、その利用停止や消去を請求することはできない。
  • 2あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならない。
  • 3個人データを第三者に提供する場合、原則としてあらかじめ本人の同意を得なければならない。
  • 4法令に基づく場合や、人の生命・身体・財産の保護のために必要がある場合で本人の同意を得ることが困難であるときは、本人の同意なく第三者提供ができる。
  • 5個人情報を取り扱うにあたっては、利用目的をできる限り特定しなければならない。
解説:【正解】1[妥当でないもの]
【結論】個人情報保護法35条により、本人は一定の要件の下で、保有個人データの利用停止・消去および第三者への提供の停止を請求できる。開示請求(33条)だけではない。
【肢別】
1× 上記のとおり。令和2年改正により、権利利益が害されるおそれがある場合にも利用停止等を請求できるよう要件が拡大された。
2○ あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならない(18条1項)。
3○ 個人データを第三者に提供する場合、原則としてあらかじめ本人の同意を得なければならない(27条1項)。
4○ 法令に基づく場合、人の生命・身体・財産の保護のために必要がある場合で本人の同意を得ることが困難であるときなどは、本人の同意なく第三者提供ができる(27条1項各号)。
5○ 個人情報を取り扱うにあたっては、利用目的をできる限り特定しなければならない(17条1項)。
【横断整理】本人の関与に関する権利は四つ。①利用目的の通知(32条2項)、②開示(33条)、③訂正・追加・削除(34条)、④利用停止・消去・第三者提供の停止(35条)。いずれも保有個人データが対象であり、単なる個人情報では請求できない(No.95 参照)。
【発展:オプトアウトによる第三者提供】あらかじめ本人に通知等をし、個人情報保護委員会に届け出ることで、本人の同意なく第三者提供ができる(27条2項)。ただし要配慮個人情報、不正取得した個人データ、オプトアウトで取得した個人データはこの方法によることができない。名簿業者対策として順次強化されてきた。
【根拠】個人情報保護法17条・18条・27条・32条〜35条
問46
情報通信に関する用語の説明として、妥当でないものはどれか。
  • 1デジタル・ディバイドとは、情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差をいう。
  • 2フィッシングとは、実在する企業等を装った電子メールやウェブサイトにより、ID・パスワード等をだまし取る行為をいう。
  • 3ランサムウェアとは、感染した端末のデータを暗号化するなどして使用不能にし、復旧と引き換えに金銭を要求する不正プログラムをいう。
  • ✔eシールとは、電子文書の作成者が自然人であることを証明し、その本人性を担保する仕組みをいう。
  • 5オプトインとは、あらかじめ受信者の同意を得た者に対してのみ広告メール等の送信を認める方式をいう。
解説:【正解】4[妥当でないもの]
【結論】eシールは、電子文書の発行元が法人・組織であることを示す仕組みであり、自然人の本人性を証明する電子署名とは区別される。
【肢別】
1○ デジタル・ディバイドとは、情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差をいう。地理的・世代的・所得的要因により生じる。
2○ フィッシングは、実在する企業等を装った電子メールやウェブサイトによりID・パスワード等をだまし取る行為をいう。
3○ ランサムウェアは、感染した端末のデータを暗号化するなどして使用不能にし、復旧と引き換えに金銭を要求する不正プログラムである。
4× 上記のとおり。「自然人であることを証明」が誤り。
5○ オプトインは、あらかじめ受信者の同意を得た者に対してのみ広告メール等の送信を認める方式で、特定電子メール法が採用している。
【横断整理】トラストサービスを三層で整理する。①電子署名=自然人の本人性、②eシール=法人・組織の発行元、③タイムスタンプ=ある時刻にその電子データが存在し、以後改ざんされていないこと。誰の何を証明するかで区別する。
【発展:電子署名法3条の推定効】電子署名法3条は、本人だけが行うことができる電子署名が行われた電磁的記録は真正に成立したものと推定すると定める。令和2年の総務省等のQ&Aにより、事業者署名型(立会人型)のクラウド型サービスも、適切な認証がされていれば3条の要件を満たしうると整理された。
【根拠】特定電子メール法3条、電子署名法2条・3条、総務省・経済産業省のトラストサービスに関する指針
問47
わが国の選挙制度に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • 1衆議院議員選挙は、小選挙区比例代表並立制により行われる。
  • 2参議院議員選挙は、選挙区選出議員と比例代表選出議員により構成され、3年ごとに半数が改選される。
  • 3参議院比例代表選挙では、非拘束名簿式が採用されているが、特定枠を用いることもできる。
  • 4衆議院議員選挙では、小選挙区と比例代表への重複立候補が認められている。
  • ✔公職選挙法上、インターネットを利用した選挙運動は候補者・政党に限られ、一般の有権者には一切認められていない。
解説:【正解】5[妥当でないもの]
【結論】平成25年の公職選挙法改正により、一般の有権者もウェブサイト等(SNS・ブログ・動画共有サービス等)を利用した選挙運動ができるようになった。「一切認められていない」は誤り。
【肢別】
1○ 衆議院議員選挙は小選挙区比例代表並立制により行われる。小選挙区289、比例代表176の計465議席である。
2○ 参議院議員選挙は選挙区選出議員と比例代表選出議員により構成され、3年ごとに半数が改選される(憲法46条)。総定数248。
3○ 参議院比例代表選挙では非拘束名簿式が採用されているが、平成30年改正により、あらかじめ順位を定める特定枠を設けることもできる。
4○ 衆議院議員選挙では小選挙区と比例代表への重複立候補が認められ、小選挙区で落選しても惜敗率により比例で復活当選しうる。
5× 上記のとおり。ただし電子メールによる選挙運動は候補者・政党等に限られる点は維持されている。
【横断整理】選挙の四原則は、普通選挙・平等選挙・秘密選挙・直接選挙。憲法15条3項が普通選挙を、44条ただし書が平等を保障する。投票価値の平等も14条・44条から導かれ、議員定数不均衡訴訟の根拠となる(No.9 参照)。
【発展:一票の較差の判断枠組み】最高裁は、①較差が違憲状態といえるか、②合理的期間内に是正されなかったかの二段階で審査し、違憲と判断しても事情判決の法理により選挙自体は無効としない。衆議院ではおおむね2倍、参議院では5倍程度が一応の目安とされてきた。
【根拠】憲法15条・44条・46条、公職選挙法(平成25年改正・平成30年改正)
問48
わが国の財政・税制に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  • ✔国債の発行は財政法上、赤字国債(特例国債)については恒久的な根拠規定が置かれており、特例法の制定を要しない。
  • 2所得税は累進税率が採用されており、垂直的公平の実現に資するとされる。
  • 3消費税は逆進性が指摘される一方、税収が景気変動の影響を受けにくいとされる。
  • 4直接税と間接税の比率を直間比率といい、わが国では戦後シャウプ勧告以降、直接税中心の体系が形成された。
  • 5国の会計には一般会計と特別会計があり、財政投融資は財政政策の一手段として位置づけられる。
解説:【正解】1[妥当でないもの]
【結論】財政法4条1項は、国の歳出は原則として公債または借入金以外の歳入をもって賄うべきものとし、ただし書で公共事業費等に充てる建設国債を例外的に認めるにとどまる。赤字国債(特例国債)の発行には別途特例法の制定を要する。
【肢別】
1× 上記のとおり。恒久的な根拠規定は存在しない。近年は複数年度分をまとめて授権する特例法が制定されている。
2○ 所得税は累進税率を採用しており、担税力の大きい者により重い負担を求める垂直的公平の実現に資するとされる。
3○ 消費税は低所得者ほど負担割合が高くなる逆進性が指摘される一方、消費が景気の変動を受けにくいため税収が安定するとされる。
4○ 直接税と間接税の比率を直間比率といい、わが国では戦後のシャウプ勧告以降、直接税中心の体系が形成された。
5○ 国の会計には一般会計と特別会計があり、財政投融資は財政政策の一手段として位置づけられる。
【横断整理】財政の憲法上の統制は、租税法律主義(84条)、財政国会中心主義(83条)、予算の議決(86条)、決算検査(90条)(No.18 参照)。財政法はこれを具体化し、4条で公債発行を、5条で日本銀行による国債引受けを原則禁止する。
【発展:公平の二つの軸】水平的公平=同じ担税力の者は同じ負担を、垂直的公平=担税力の異なる者は異なる負担を。消費税は水平的公平に優れ垂直的公平に劣り、所得税はその逆という関係にあり、税体系はこの二つの組合せで論じられる。
【根拠】財政法4条・5条、憲法83条・84条・86条・90条