分野別問題(解説つき)

証券アナリスト(CMA)|分野別 問題インデックス

最終更新:2026年8月11日

証券アナリスト試験は計算と理論が混在します。4科目に分けて代表問題を掲載しています。全1000問をまとめて解くならトレーナーへ進んでください。

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証券分析とポートフォリオ・マネジメント全566問中 8問を掲載

問1
インプライド・ボラティリティに関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1市場のオプション価格から逆算されるボラティリティである
  • 2ヒストリカル・ボラティリティは過去の実績から算出される
  • 3権利行使価格ごとにインプライド・ボラティリティが異なる現象をボラティリティ・スマイルという
  • 4株式市場では、下方の行使価格ほど高くなるスキューが観測されることが多い
  • ✔ブラック・ショールズ・モデルが完全に成立していれば、行使価格ごとに異なる値が観測されるはずである
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
BSモデルは満期・行使価格によらず一定のボラティリティを前提とするため、モデルが厳密に成立していればスマイルやスキューは観測されないはずである。実際に観測されることは、収益率分布がファットテールを持つなどモデルの前提と現実の乖離を示す。

【学習ポイント】
IVは市場が織り込む将来の変動予想であり、過去実績から求めるヒストリカル・ボラティリティとは別物である。IVがHVを大きく上回る局面はオプションが割高であることを示唆する。株式で下方の行使価格ほどIVが高いスキューが生じるのは、暴落への保険需要が強くプットが買われるためであり、収益率分布が左に歪んだファットテールを持つという市場の認識を反映している。
★ポイント:オプションの価値=本質的価値+時間価値。時間価値はATMで最大、満期接近で減衰(セータ)。売り手の損失は無限定になり得る点が買い手との非対称。
問2
オプションのグリークスに関する説明として、最も適切なものはどれか。
  • ✔デルタは原資産価格の変化に対するプレミアムの変化率で、コールでは0から1の値をとる
  • 2ガンマはボラティリティ変化に対するプレミアムの感応度である
  • 3ベガは時間の経過に対するプレミアムの減少を示す
  • 4セータは金利変化に対する感応度である
  • 5デルタはアット・ザ・マネーで最も小さくなる
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
デルタは∂プレミアム/∂原資産価格で、コールは0〜1、プットは-1〜0の値をとり、アット・ザ・マネー付近で約0.5となる。ガンマはデルタの変化率、ベガはボラティリティ感応度、セータは時間価値の減少(タイムディケイ)、ローが金利感応度である。

【学習ポイント】
デルタ=原資産価格への感応度、ガンマ=デルタの変化率、ベガ=ボラティリティ感応度、セータ=時間経過による価値減少、ロー=金利感応度。この5つは必ずセットで暗記すること。ガンマとセータは符号が逆になる関係にあり、オプションの買い手はガンマを得る代わりにセータ(時間価値の減少)を支払う、という対価関係を理解しておくと応用が利く。
★ポイント:デルタ=∂V/∂S(コール0〜1・プット−1〜0、ATMで約±0.5)。ガンマ=デルタの変化率でATM・満期近くで最大。ベガ=ボラティリティ感応度。セータ=時間価値の減少。ガンマとセータは通常逆符号。
問3
オプションのプレミアムに影響を与える要因に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1原資産価格のボラティリティが上昇すると、コール・プットともにプレミアムは上昇する
  • 2残存期間が長いほど、一般にアメリカン・オプションのプレミアムは高くなる
  • 3金利が上昇すると、一般にコール・オプションのプレミアムは上昇する
  • ✔原資産価格が上昇すると、プット・オプションのプレミアムは上昇する
  • 5権利行使価格が高いほど、コール・オプションのプレミアムは低くなる
解説:【正解】肢4(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
プットは原資産価格が下落するほど価値が高まるため、原資産価格の上昇はプレミアムの下落要因である。ボラティリティ上昇はコール・プット双方の価値を高め、金利上昇は行使価格の現在価値を下げるためコールに有利・プットに不利に働く。

【学習ポイント】
オプション価格の決定要因は6つ(原資産価格、行使価格、残存期間、ボラティリティ、金利、配当)。ボラティリティ上昇はコール・プット双方の価値を高める(唯一、両方に同方向に効く要因)点が重要。金利上昇はコールに有利・プットに不利、配当はその逆に働く。残存期間はアメリカン型では常にプラスだが、ヨーロピアン型のプットでは例外が生じ得る。
★ポイント:オプションの価値=本質的価値+時間価値。時間価値はATMで最大、満期接近で減衰(セータ)。売り手の損失は無限定になり得る点が買い手との非対称。
問4
オプションの本源的価値と時間価値に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1イン・ザ・マネーのオプションは正の本源的価値を持つ
  • 2アウト・オブ・ザ・マネーのオプションの本源的価値はゼロである
  • 3時間価値は、満期に近づくにつれて減少する
  • 4時間価値はアット・ザ・マネー付近で最大となる傾向がある
  • ✔満期時点でも時間価値は正の値として残る
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
満期時点では不確実性が消滅するため時間価値はゼロとなり、オプション価格は本源的価値に一致する。時間価値の逓減はタイムディケイ(セータ)と呼ばれ、満期直前に加速する。

【学習ポイント】
オプション価格=本源的価値+時間価値。本源的価値は今すぐ行使した場合の価値(マイナスにはならない)、時間価値は将来さらに有利になる可能性の対価である。時間価値はアット・ザ・マネー付近で最大、満期に近づくほど加速的に減少する(タイムディケイ)。ディープ・イン/アウトでは時間価値が小さくなるため、ガンマも小さくなる。
★ポイント:オプションの価値=本質的価値+時間価値。時間価値はATMで最大、満期接近で減衰(セータ)。売り手の損失は無限定になり得る点が買い手との非対称。
問5
オプション価格の下限に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔配当のないヨーロピアン・コールの価格は、S-K/(1+r)^T を下回らない
  • 2コールの価格は本源的価値を下回ることがある
  • 3ヨーロピアン・プットの価格は、原資産価格を上回り得る
  • 4アメリカン・コールの価格は、同条件のヨーロピアン・コールを下回る
  • 5オプション価格に理論上の下限は存在しない
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
無裁定条件より、配当のないヨーロピアン・コールの価格はmax(S-K/(1+r)^T, 0)以上となる。アメリカン・オプションは早期行使の権利がある分、同条件のヨーロピアン・オプション以上の価値を持つ(配当がなければコールは早期行使が最適とならず両者は一致する)。

【学習ポイント】
無裁定条件から導かれる価格の下限は、モデルに依存しない強い制約である。配当がない場合、アメリカン・コールは早期行使が最適とならないためヨーロピアン・コールと価格が一致する(早期行使すると時間価値を捨てることになる)。一方プットは深いイン・ザ・マネーで早期行使が最適になり得るため、アメリカン・プット>ヨーロピアン・プットとなる。
★ポイント:オプションの価値=本質的価値+時間価値。時間価値はATMで最大、満期接近で減衰(セータ)。売り手の損失は無限定になり得る点が買い手との非対称。
問6
オプション戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔カバード・コールは、現物株の保有とコールの売りを組み合わせ、上値の利益を限定する代わりにプレミアム収入を得る
  • 2プロテクティブ・プットは、現物株の保有とプットの売りを組み合わせる
  • 3ストラドルの買いは、原資産価格が動かないことを期待する戦略である
  • 4ブル・スプレッドは、原資産価格の下落から利益を得る戦略である
  • 5コールの売り単独(ネイキッド・コール)は、損失が限定される戦略である
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
カバード・コールは現物保有+コール売りで、上昇益を放棄する代わりにプレミアムを得る。プロテクティブ・プットはプットの買いによる下値保険。ストラドル買いは大きな変動を期待する戦略で、ブル・スプレッドは上昇期待。ネイキッド・コール売りは理論上損失無限大である。

【学習ポイント】
主要戦略は損益図で覚えるのが最も効率的である。カバード・コール(上値限定+プレミアム収入)、プロテクティブ・プット(下値保険)、ストラドル/ストラングルの買い(大変動に賭ける)、ブル/ベア・スプレッド(方向性に賭けつつコストと利益を限定)。オプションの売りは受取プレミアムが利益の上限である一方、損失が大きく広がり得る非対称性が本質である。
★ポイント:オプションの価値=本質的価値+時間価値。時間価値はATMで最大、満期接近で減衰(セータ)。売り手の損失は無限定になり得る点が買い手との非対称。
問7
スワップションに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔将来の一定時点にスワップを開始する権利を売買する取引である
  • 2スワップの元本を交換する取引である
  • 3ペイヤーズ・スワップションは、固定金利を受け取る権利である
  • 4スワップションは金利オプションではない
  • 5スワップションのプレミアムは金利ボラティリティと無関係である
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
スワップションは将来のスワップ開始権のオプション。ペイヤーズ・スワップションは固定金利を支払う(変動を受け取る)権利で、金利上昇時に価値が高まる。プレミアムは金利ボラティリティに強く依存する。

【学習ポイント】
ペイヤーズ(固定支払)=金利上昇で価値上昇、レシーバーズ(固定受取)=金利低下で価値上昇。コーラブル債の発行体は、実質的にレシーバーズ・スワップションを保有しているのと同等の経済効果を持つ。このように仕組債はオプションに分解して評価するのが基本発想であり、OAS分析の考え方にもつながる。
★ポイント:金利スワップ:固定と変動の交換で元本交換なし。スワップレートは変動側と現在価値が等しくなる固定金利。通貨スワップは元本交換あり。デュレーション調整・負債ヘッジに利用。
問8
スワップ取引に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1金利スワップでは、通常、想定元本の交換は行われない
  • 2固定金利支払・変動金利受取のスワップは、金利上昇局面で価値が上昇する
  • 3通貨スワップでは、元本の交換を伴うのが一般的である
  • 4スワップは相対取引が中心であるため、カウンターパーティ・リスクを伴う
  • ✔金利スワップの契約時点における価値は、通常、固定金利支払側にとって大きくプラスとなるよう設定される
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
金利スワップは契約時点で固定・変動両サイドの現在価値が等しくなるようスワップレートが設定されるため、開始時の価値はゼロ(手数料等を除く)である。その後の金利上昇は固定支払側に有利に働く。

【学習ポイント】
金利スワップの開始時価値がゼロになるようスワップレートが決まる点が最重要。その後、金利上昇は固定支払側に有利(受取変動が増える)に働く。スワップは想定元本を交換しない一方、通貨スワップは元本交換を伴う。近年は中央清算機関(CCP)を通じた清算が義務化され、カウンターパーティ・リスクの軽減が図られている。
★ポイント:金利スワップ:固定と変動の交換で元本交換なし。スワップレートは変動側と現在価値が等しくなる固定金利。通貨スワップは元本交換あり。デュレーション調整・負債ヘッジに利用。

財務分析全205問中 8問を掲載

問1
キャッシュ・フローのパターン分析に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスは、成熟企業に典型的なパターンである
  • 2営業CFがマイナスでも、財務CFがプラスであれば経営は必ず健全である
  • 3フリー・キャッシュフローは、営業CFに投資CFを加算して求めることはできない
  • 4投資CFがプラスであることは、常に積極的な成長投資を示す
  • 5営業CFは、当期純利益と常に一致する
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
営業CFで稼ぎ、設備投資を行いつつ借入返済・配当を行う「+--」は成熟企業の典型である。簡便的にFCF=営業CF+投資CFで把握される。投資CFのプラスは資産売却を示すことが多く、成長投資の縮小を示唆する場合もある。

【学習ポイント】
3区分の符号パターンで企業のステージを読むのが定石。成長期は「+-+」(営業で稼ぎ、投資し、調達する)、成熟期は「+--」(稼ぎで投資と返済・還元を賄う)、衰退・危機は「-++」(本業で稼げず資産売却と借入で凌ぐ)。営業CFの符号と、投資CFとの大小関係(FCFの符号)をまず確認する習慣をつけること。
★ポイント:営業CF(間接法:純利益+減価償却±運転資本増減)・投資CF・財務CF。優良企業の典型は営業+/投資−/財務−。FCF=営業CF−投資CF(簡便)。利益とCFの乖離(アクルーアル)は利益の質の指標。
問2
フリー・キャッシュフローの使途に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1FCFは、有利子負債の返済、配当、自己株式取得の原資となる
  • 2FCFが継続的にマイナスの企業は、外部資金への依存度が高まる
  • 3成長投資期の企業では、FCFがマイナスになることがある
  • 4FCFの水準は、資本効率や株主還元余力の判断材料となる
  • ✔FCFがマイナスであれば、常に経営が破綻に向かっていると判断できる
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
高成長期の企業は、将来の収益源となる投資のためにFCFがマイナスになることが多い。重要なのは投下資本利益率が資本コストを上回るかどうかであり、FCFの符号のみで良否は判断できない。

【学習ポイント】
FCF=営業CF-投資CF(簡便法)は、負債返済・配当・自己株式取得の原資となる。FCFの符号だけでは良否は判断できず、ROIC>WACCの投資でマイナスなら価値創造、低採算投資の垂れ流しなら価値毀損である。成熟企業で潤沢なFCFが低採算投資や過剰な現金保有に向かうことは、エージェンシー問題として議論される。
★ポイント:FCF=NOPAT+減価償却−設備投資−運転資本増加。企業価値=FCFをWACCで割引いた現在価値、株主価値=企業価値−純有利子負債。継続価値=FCF×(1+g)/(WACC−g)。
問3
営業キャッシュフローの分析に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1営業CFがマイナスの状態が続くと、資金繰りが逼迫する
  • 2営業CFマージン(営業CF÷売上高)は、収益の現金化能力を示す
  • 3設備投資額と営業CFの比較により、投資の自己資金充足度が把握できる
  • 4利息や法人税の支払は営業CFの区分に含めることができる
  • ✔営業CFがプラスであれば、必ず利益も黒字である
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
減価償却費が大きい企業では、当期純損失でも営業CFがプラスになることがある。逆に黒字でも運転資本の急増により営業CFがマイナスになる場合があり、両者は一致しない。

【学習ポイント】
営業CFと当期純利益の乖離(アクルーアル)は利益の質の指標である。黒字でも売上債権・在庫の急増で営業CFがマイナスになれば黒字倒産のリスクがあり、逆に赤字でも減価償却費が大きければ営業CFはプラスになり得る。利益とCFの両方を時系列で追い、乖離の原因を運転資本の内訳から特定するのが分析の基本動作である。
★ポイント:営業CF(間接法:純利益+減価償却±運転資本増減)・投資CF・財務CF。優良企業の典型は営業+/投資−/財務−。FCF=営業CF−投資CF(簡便)。利益とCFの乖離(アクルーアル)は利益の質の指標。
問4
営業利益1000百万円、実効税率35%、減価償却費100百万円、設備投資400百万円、運転資本の増加120百万円のとき、フリー・キャッシュフロー(FCF)に最も近いものはどれか。
  • 1580百万円
  • 230百万円
  • 3470百万円
  • 4320百万円
  • ✔230百万円
解説:【正解】肢5(他の4肢は誤り)
【解法】
FCF=営業利益×(1-税率)+減価償却費-設備投資-運転資本増加額=1000×(1-0.35)+100-400-120=230百万円。減価償却費は非現金支出のため加算し、支払利息の節税効果はWACC側で調整するため控除しない。

【誤答の分析】
非資金費用である減価償却費を減算したもの、税引前の営業利益をそのまま使ったもの、運転資本増加の符号を誤ったものが典型的な誤答である。

【学習ポイント】
FCFF=営業利益×(1-t)+減価償却費-設備投資-運転資本増加額。減価償却費は現金支出を伴わないため加算し、支払利息は控除しない(節税効果はWACC側で調整するため二重計算を避ける)。算出したFCFFをWACCで割り引き、そこから純有利子負債を控除すると株式価値が求まる。成長企業では投資が先行してFCFがマイナスになることが多く、符号だけで良否を判断できない点も重要である。
★ポイント:FCF=NOPAT+減価償却−設備投資−運転資本増加。企業価値=FCFをWACCで割引いた現在価値、株主価値=企業価値−純有利子負債。継続価値=FCF×(1+g)/(WACC−g)。
問5
営業利益1000百万円、実効税率35%、減価償却費150百万円、設備投資150百万円、運転資本の増加50百万円のとき、フリー・キャッシュフロー(FCF)に最も近いものはどれか。
  • 1690百万円
  • 2950百万円
  • 3700百万円
  • ✔600百万円
  • 5300百万円
解説:【正解】肢4(他の4肢は誤り)
【解法】
FCF=営業利益×(1-税率)+減価償却費-設備投資-運転資本増加額=1000×(1-0.35)+150-150-50=600百万円。減価償却費は非現金支出のため加算し、支払利息の節税効果はWACC側で調整するため控除しない。

【誤答の分析】
非資金費用である減価償却費を減算したもの、税引前の営業利益をそのまま使ったもの、運転資本増加の符号を誤ったものが典型的な誤答である。

【学習ポイント】
FCFF=営業利益×(1-t)+減価償却費-設備投資-運転資本増加額。減価償却費は現金支出を伴わないため加算し、支払利息は控除しない(節税効果はWACC側で調整するため二重計算を避ける)。算出したFCFFをWACCで割り引き、そこから純有利子負債を控除すると株式価値が求まる。成長企業では投資が先行してFCFがマイナスになることが多く、符号だけで良否を判断できない点も重要である。
★ポイント:FCF=NOPAT+減価償却−設備投資−運転資本増加。企業価値=FCFをWACCで割引いた現在価値、株主価値=企業価値−純有利子負債。継続価値=FCF×(1+g)/(WACC−g)。
問6
営業利益1000百万円、実効税率35%、減価償却費150百万円、設備投資350百万円、運転資本の減少50百万円のとき、フリー・キャッシュフロー(FCF)に最も近いものはどれか。
  • ✔500百万円
  • 2200百万円
  • 3850百万円
  • 4400百万円
  • 5590百万円
解説:【正解】肢1(他の4肢は誤り)
【解法】
FCF=営業利益×(1-税率)+減価償却費-設備投資-運転資本増加額=1000×(1-0.35)+150-350-(-50)=500百万円。減価償却費は非現金支出のため加算し、支払利息の節税効果はWACC側で調整するため控除しない。

【誤答の分析】
非資金費用である減価償却費を減算したもの、税引前の営業利益をそのまま使ったもの、運転資本増加の符号を誤ったものが典型的な誤答である。

【学習ポイント】
FCFF=営業利益×(1-t)+減価償却費-設備投資-運転資本増加額。減価償却費は現金支出を伴わないため加算し、支払利息は控除しない(節税効果はWACC側で調整するため二重計算を避ける)。算出したFCFFをWACCで割り引き、そこから純有利子負債を控除すると株式価値が求まる。成長企業では投資が先行してFCFがマイナスになることが多く、符号だけで良否を判断できない点も重要である。
★ポイント:FCF=NOPAT+減価償却−設備投資−運転資本増加。企業価値=FCFをWACCで割引いた現在価値、株主価値=企業価値−純有利子負債。継続価値=FCF×(1+g)/(WACC−g)。
問7
営業利益1200百万円、実効税率30%、減価償却費100百万円、設備投資350百万円、運転資本の増加80百万円のとき、フリー・キャッシュフロー(FCF)に最も近いものはどれか。
  • 1600百万円
  • 2310百万円
  • 3870百万円
  • ✔510百万円
  • 5670百万円
解説:【正解】肢4(他の4肢は誤り)
【解法】
FCF=営業利益×(1-税率)+減価償却費-設備投資-運転資本増加額=1200×(1-0.3)+100-350-80=510百万円。減価償却費は非現金支出のため加算し、支払利息の節税効果はWACC側で調整するため控除しない。

【誤答の分析】
非資金費用である減価償却費を減算したもの、税引前の営業利益をそのまま使ったもの、運転資本増加の符号を誤ったものが典型的な誤答である。

【学習ポイント】
FCFF=営業利益×(1-t)+減価償却費-設備投資-運転資本増加額。減価償却費は現金支出を伴わないため加算し、支払利息は控除しない(節税効果はWACC側で調整するため二重計算を避ける)。算出したFCFFをWACCで割り引き、そこから純有利子負債を控除すると株式価値が求まる。成長企業では投資が先行してFCFがマイナスになることが多く、符号だけで良否を判断できない点も重要である。
★ポイント:FCF=NOPAT+減価償却−設備投資−運転資本増加。企業価値=FCFをWACCで割引いた現在価値、株主価値=企業価値−純有利子負債。継続価値=FCF×(1+g)/(WACC−g)。
問8
営業利益1200百万円、実効税率30%、減価償却費150百万円、設備投資400百万円、運転資本の増加120百万円のとき、フリー・キャッシュフロー(FCF)に最も近いものはどれか。
  • 1170百万円
  • 2830百万円
  • 3710百万円
  • ✔470百万円
  • 5560百万円
解説:【正解】肢4(他の4肢は誤り)
【解法】
FCF=営業利益×(1-税率)+減価償却費-設備投資-運転資本増加額=1200×(1-0.3)+150-400-120=470百万円。減価償却費は非現金支出のため加算し、支払利息の節税効果はWACC側で調整するため控除しない。

【誤答の分析】
非資金費用である減価償却費を減算したもの、税引前の営業利益をそのまま使ったもの、運転資本増加の符号を誤ったものが典型的な誤答である。

【学習ポイント】
FCFF=営業利益×(1-t)+減価償却費-設備投資-運転資本増加額。減価償却費は現金支出を伴わないため加算し、支払利息は控除しない(節税効果はWACC側で調整するため二重計算を避ける)。算出したFCFFをWACCで割り引き、そこから純有利子負債を控除すると株式価値が求まる。成長企業では投資が先行してFCFがマイナスになることが多く、符号だけで良否を判断できない点も重要である。
★ポイント:FCF=NOPAT+減価償却−設備投資−運転資本増加。企業価値=FCFをWACCで割引いた現在価値、株主価値=企業価値−純有利子負債。継続価値=FCF×(1+g)/(WACC−g)。

経済全191問中 8問を掲載

問1
GDPと関連指標に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔GNI(国民総所得)は、GDPに海外からの純所得受取を加えたものである
  • 2GNIは常にGDPを下回る
  • 3NDP(国内純生産)は、GDPに固定資本減耗を加えたものである
  • 4国民所得(NI)はGDPと同義である
  • 5GDPには海外での自国民の生産活動が含まれる
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
GNI=GDP+海外からの所得の純受取。対外純資産が大きい国ではGNI>GDPとなる。NDP=GDP-固定資本減耗。GDPは属地主義であり、国内での生産活動を対象とする。

【学習ポイント】
GDP(属地主義)とGNI(属人主義)の違いは頻出。GNI=GDP+海外からの所得の純受取。対外純資産が大きい日本は第一次所得収支の黒字が大きく、GNI>GDPの状態が続いている。NDP=GDP-固定資本減耗、NI=NDP-間接税+補助金という控除の連鎖も整理しておくこと。
★ポイント:三面等価:生産=分配=支出。GDP=民間消費+投資+政府支出+純輸出。帰属家賃・農家の自家消費は計上、中古品売買・キャピタルゲイン・家事労働は不算入。GNI=GDP+海外からの純所得。
問2
GDPに関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1GDPは一定期間に国内で生み出された付加価値の合計である
  • 2中間投入額はGDPに二重計上されないよう控除される
  • 3国内総生産、国内総所得、国内総支出は事後的に一致する(三面等価)
  • 4帰属家賃は、実際の取引がなくてもGDPに計上される
  • ✔土地や株式などの資産の売買代金は、その全額がGDPに計上される
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
既存の土地や株式の売買は付加価値を生む生産活動ではないため、売買代金そのものはGDPに計上されない(仲介手数料などのサービス部分のみ計上される)。持ち家の帰属家賃は例外的に計上される。

【学習ポイント】
GDPは「国内で」「一定期間に」生み出された「付加価値」の合計。中古品や土地・株式の売買代金は対象外(仲介手数料は対象)、帰属家賃と農家の自家消費は例外的に計上、家事労働は非計上という線引きを正確に。三面等価(生産=分配=支出)は事後的な恒等式であり、事前の均衡を意味しない点も重要。
★ポイント:三面等価:生産=分配=支出。GDP=民間消費+投資+政府支出+純輸出。帰属家賃・農家の自家消費は計上、中古品売買・キャピタルゲイン・家事労働は不算入。GNI=GDP+海外からの純所得。
問3
IS-LM分析に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔IS曲線は財市場の均衡、LM曲線は貨幣市場の均衡を表す
  • 2IS曲線は右上がり、LM曲線は右下がりである
  • 3拡張的財政政策はLM曲線を右方シフトさせる
  • 4金融緩和はIS曲線を右方シフトさせる
  • 5流動性の罠の下では、財政政策は完全に無効となる
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
IS曲線は財市場(貯蓄=投資)の均衡を表し、利子率上昇が投資を減らすため右下がり。LM曲線は貨幣市場の均衡を表し右上がり。財政政策はIS曲線を、金融政策はLM曲線をシフトさせる。流動性の罠ではLM曲線が水平となりクラウディングアウトが生じないため、むしろ財政政策の効果が最大化する。

【学習ポイント】
IS曲線(財市場、右下がり)とLM曲線(貨幣市場、右上がり)の交点で利子率と所得が同時決定される。財政拡張→IS右方シフト→所得増・利子率上昇→クラウディングアウト、金融緩和→LM右方シフト→利子率低下・所得増、という比較静学を確実に。流動性の罠(LM水平)では金融政策が無効化し財政政策の効果が最大になるという対比が最頻出。
★ポイント:IS曲線=財市場均衡(r低下→投資増→Y増で右下がり)、LM=貨幣市場均衡(右上がり)。財政拡張はIS右シフト(金利上昇でクラウディング・アウト)、金融緩和はLM右シフト。流動性の罠ではLM水平で金融政策無効。
問4
オークンの法則に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔実質GDP成長率と失業率の変化の間に負の関係があるとする経験則である
  • 2インフレ率と失業率の関係を示す法則である
  • 3貨幣供給量と物価の関係を示す法則である
  • 4貯蓄率と成長率の関係を示す法則である
  • 5為替レートと物価の関係を示す法則である
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
オークンの法則は、経済成長が高まると失業率が低下するという経験的関係を示す。インフレ率と失業率の関係はフィリップス曲線である。

【学習ポイント】
オークンの法則は成長率と失業率変化の負の経験則で、「失業率を下げるには潜在成長率を上回る成長が必要」という含意を持つ。フィリップス曲線(インフレと失業)と混同しないこと。両者を組み合わせると、需要管理政策が「成長→失業→賃金・物価」と波及する経路を描ける。
問5
デフレーションに関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1デフレ下では実質債務負担が増加する
  • 2デフレ期待は、実質金利を高める要因となる
  • 3デットデフレーションは、債務返済のための資産売却が価格下落を招く悪循環を指す
  • 4名目金利のゼロ制約は、デフレ下での金融緩和を難しくする
  • ✔デフレは名目賃金が下方硬直的であっても、実質賃金には影響しない
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
名目賃金が下方硬直的な状況で物価が下落すると実質賃金は上昇し、雇用調整圧力が高まる。これがデフレ下で失業が増えやすい一因とされる。

【学習ポイント】
デフレの弊害:実質債務負担の増加(フィッシャーのデットデフレーション)、実質金利の高止まり、支出の先送り、名目賃金の下方硬直性による実質賃金上昇と雇用調整。ゼロ金利制約下では通常の利下げで対抗できないため、期待インフレ率への働きかけ(インフレ目標、量的緩和)が政策の中心となった。
問6
フィリップス曲線に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1当初のフィリップス曲線は、失業率と賃金上昇率の間の負の関係を示した
  • 2期待で修正されたフィリップス曲線では、長期的には自然失業率の水準で垂直になる
  • 3自然失業率仮説によれば、長期的な失業率の低下は金融政策では達成できない
  • 4スタグフレーションは、当初のフィリップス曲線では説明が困難であった
  • ✔長期フィリップス曲線が垂直であれば、金融政策はインフレ率と失業率のトレードオフを永続的に活用できる
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
長期フィリップス曲線が垂直であれば、金融緩和は長期的には物価上昇のみをもたらし失業率を自然失業率から乖離させ続けることはできない。トレードオフは短期に限られる。

【学習ポイント】
短期フィリップス曲線はインフレと失業のトレードオフを示すが、期待インフレ率の上昇で上方シフトし、長期には自然失業率で垂直になる。1970年代のスタグフレーションが当初の理論の限界を露呈し、フリードマンらの自然失業率仮説と期待の導入につながった、という理論史の流れで覚えると定着しやすい。
★ポイント:フィリップス曲線:インフレ率と失業率の短期的トレードオフ。期待インフレの上昇で上方シフトし、長期には自然失業率で垂直(自然失業率仮説)。オークンの法則はGDPギャップと失業率の関係。
問7
主要な経済統計に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1日銀短観は、企業の業況判断を調査するアンケート統計である
  • 2鉱工業生産指数は、生産活動の動向を示す指標である
  • 3機械受注統計は、設備投資の先行指標とされる
  • 4消費者物価指数は、家計が購入する財・サービスの価格変動を示す
  • ✔有効求人倍率は、景気の先行指標として分類される
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
有効求人倍率は景気動向指数において一致系列に分類される。先行系列には新規求人数(除学卒)が含まれる。両者の区別は頻出論点である。

【学習ポイント】
統計の性格を区別する:日銀短観はアンケート(ソフトデータ)、鉱工業生産・機械受注は実績(ハードデータ)。機械受注(船舶・電力除く民需)は設備投資の、新設住宅着工は住宅投資の先行指標。有効求人倍率は一致系列、完全失業率は遅行系列という景気動向指数上の分類は直感に反するため特に狙われやすい。
問8
人口動態と経済に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1生産年齢人口の減少は、潜在成長率の下押し要因となり得る
  • 2高齢化は社会保障給付の増加を通じて財政を圧迫し得る
  • 3労働参加率の上昇は、人口減少の影響を一部相殺し得る
  • 41人当たり所得の成長には、TFPの向上や資本蓄積が寄与する
  • ✔人口減少下では、1人当たりGDPも必ず減少する
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
総人口が減少しても、資本装備率の上昇や生産性向上により1人当たりGDPは増加し得る。潜在成長率は労働・資本・TFPの寄与に分解して考える必要がある。

【学習ポイント】
成長会計では、成長率=労働投入の寄与+資本投入の寄与+TFPの寄与。人口減少は労働投入を通じて潜在成長率を押し下げるが、労働参加率の上昇、資本深化、TFP向上で1人当たり所得は成長し得る。高齢化は貯蓄率の低下、社会保障費の増加、財政の持続可能性を通じて金利・成長に影響する。

職業倫理・行為基準全38問中 8問を掲載

問1
GIPS基準における検証(ベリフィケーション)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔検証は運用会社全体を対象として第三者が行うものである
  • 2検証は個別のコンポジットについてのみ行われる
  • 3検証を受ければ、将来の運用成績が保証される
  • 4検証はGIPS準拠を表明するための必須要件である
  • 5検証は運用会社の自己申告で足りる
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
検証は独立した第三者が運用会社全体を対象に、コンポジットの構築とデータ・方針が基準に準拠しているかを確認する手続である。準拠表明の必須要件ではないが、信頼性を高める手段として推奨されている。

【学習ポイント】
検証(ベリフィケーション)は会社全体を対象とする第三者の手続で、準拠表明の必須要件ではないが信頼性を高めるベスト・プラクティスとされる。個別コンポジットの詳細検査(パフォーマンス・エグザミネーション)とは区別される。「検証=将来の成績の保証」ではない点も引っかけとして問われやすい。
★ポイント:証券アナリスト職業行為基準:投資家の利益優先・利益相反の開示・未公開重要情報に基づく売買の禁止・合理的根拠のある投資判断・守秘義務(法令に基づく開示は例外)・事実と意見の区別。違反が疑われる場合も基準は個人の責任で遵守。
問2
GIPS(グローバル投資パフォーマンス基準)に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1すべての実在する報酬支払口座をコンポジットに含める必要がある
  • 2コンポジットは、類似の投資戦略・目的を持つポートフォリオの集合である
  • 3サバイバーシップ・バイアスを排除することが目的の一つである
  • 4パフォーマンスは時間加重収益率を基本として算出する
  • ✔運用成績が良好なポートフォリオのみを選択して開示することが認められている
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
GIPSは、良好な実績のみを抽出する選択的開示(チェリーピッキング)を排除し、公正かつ比較可能なパフォーマンス表示を実現することを目的とする。全ての実在報酬支払口座のコンポジット包含、時間加重収益率の使用、廃止コンポジットの一定期間の開示などが求められる。

【学習ポイント】
GIPSの狙いは公正表示と比較可能性の確保であり、チェリーピッキングと生存者バイアスの排除が核心。全ての実在する報酬支払裁量口座をいずれかのコンポジットに含める、時間加重収益率を原則とする、規定された期間の実績を提示する、といった基本要件を押さえる。運用会社単位で準拠を表明する(ファンド単位ではない)点も重要。
★ポイント:証券アナリスト職業行為基準:投資家の利益優先・利益相反の開示・未公開重要情報に基づく売買の禁止・合理的根拠のある投資判断・守秘義務(法令に基づく開示は例外)・事実と意見の区別。違反が疑われる場合も基準は個人の責任で遵守。
問3
アナリストによる企業への取材に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1取材で得た情報の重要性を、自ら慎重に評価する
  • 2未公表の重要事実の提供を求めない
  • 3取材源の秘匿を約した場合でも、法令に基づく開示は行い得る
  • 4取材内容は、レポートで引用する場合は正確に記述する
  • ✔未公表の業績数値を聞き出すことは、アナリストの職務として推奨される
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
未公表の重要事実の取得は、インサイダー取引規制および公平な情報開示(フェア・ディスクロージャー)ルールの観点から重大な問題を生じる。分析は公表情報とモザイク理論の範囲で行うべきである。

【学習ポイント】
取材はモザイク理論の範囲(公表情報+重要でない非公開情報の積上げ)で行うのが原則。未公表の重要事実を得てしまった場合は、売買停止・情報管理部門への連絡という手順になる。フェア・ディスクロージャー・ルールにより、企業側にも選択的開示の同時公表義務が課されており、取材で「重要情報を聞き出す」行為自体が両者にとってリスクとなる。
★ポイント:証券アナリスト職業行為基準:投資家の利益優先・利益相反の開示・未公開重要情報に基づく売買の禁止・合理的根拠のある投資判断・守秘義務(法令に基づく開示は例外)・事実と意見の区別。違反が疑われる場合も基準は個人の責任で遵守。
問4
アナリストの独立性を損なうおそれのある行為として、最も適切なものはどれか。
  • ✔担当セクターの企業の株式を、事前承認を得ずに継続保有する
  • 2決算説明会に出席して質問する
  • 3公表資料に基づき業績予想を修正する
  • 4同業他社のレポートを参照し、自らの分析と比較する
  • 5取材内容を社内で共有する
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
担当企業の株式保有は利益相反の典型であり、多くの組織で事前承認、保有制限、売買制限、開示が義務づけられている。取材や比較分析は通常の業務であり問題とならない。

【学習ポイント】
担当銘柄の保有は独立性・客観性への典型的脅威であり、事前承認・保有報告・売買制限(レポート公表前後のブラックアウト期間)・レポート上の開示で管理される。「開示すれば足りる」のではなく、そもそも判断を歪めるおそれのある利害は避けるのが第一原則で、開示は次善の管理手段という優先順位を理解すること。
★ポイント:証券アナリスト職業行為基準:投資家の利益優先・利益相反の開示・未公開重要情報に基づく売買の禁止・合理的根拠のある投資判断・守秘義務(法令に基づく開示は例外)・事実と意見の区別。違反が疑われる場合も基準は個人の責任で遵守。
問5
アナリスト・レポートのレーティング変更に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1変更の理由と根拠を明示する
  • 2レーティング体系の定義を開示する
  • 3重要な前提の変化があった場合には速やかに見直す
  • 4特定の顧客にのみ先行して変更内容を伝達しない
  • ✔株価が目標株価に到達した場合でも、レーティングを見直す必要はない
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
株価が目標株価に到達すれば期待収益率が変化するため、レーティングと目標株価の妥当性を再検討する必要がある。また変更内容の特定顧客への先行伝達は公平性を損なう重大な問題である。

【学習ポイント】
レーティングは体系の定義(対TOPIX相対か絶対リターンか、期間)を開示し、変更時は理由と根拠を明示、全顧客に公平に同時伝達するのが原則。目標株価到達や前提の変化を放置することは「合理的根拠に基づく助言」の要請に反する。特定顧客への先行伝達はフロントランニングや選択的開示と同種の公平性違反となる。
★ポイント:証券アナリスト職業行為基準:投資家の利益優先・利益相反の開示・未公開重要情報に基づく売買の禁止・合理的根拠のある投資判断・守秘義務(法令に基づく開示は例外)・事実と意見の区別。違反が疑われる場合も基準は個人の責任で遵守。
問6
インサイダー取引規制に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1会社関係者が職務に関して知った重要事実は、公表されるまで売買してはならない
  • 2情報受領者(第一次情報受領者)も規制の対象となる
  • 3重要事実には、決定事実、発生事実、決算情報、バスケット条項が含まれる
  • 4公表とは、法令に定める手続を経て一般に周知された状態をいう
  • ✔取引によって損失が生じた場合には、インサイダー取引規制は適用されない
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
インサイダー取引規制は、損益の結果にかかわらず、重要事実を知りながら公表前に売買した行為自体を禁止するものである。損失が出たことは免責事由にならない。

【学習ポイント】
インサイダー規制の構造:①会社関係者・情報受領者が、②重要事実を知りながら、③公表前に売買、で成立。損益は要件でない。重要事実は決定事実・発生事実・決算情報・バスケット条項の4類型。公表の要件(TDnet等での開示、または2以上の報道機関へ公開後12時間経過)も正確に。未公表情報の伝達・取引推奨自体も規制対象である点が近年の強化点。
★ポイント:証券アナリスト職業行為基準:投資家の利益優先・利益相反の開示・未公開重要情報に基づく売買の禁止・合理的根拠のある投資判断・守秘義務(法令に基づく開示は例外)・事実と意見の区別。違反が疑われる場合も基準は個人の責任で遵守。
問7
コーポレートガバナンス・コードに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ✔上場会社が持続的成長と中長期的な企業価値向上を図るための行動原則である
  • 2機関投資家の行動原則を定めたものである
  • 3すべての原則を必ず実施しなければならない法令である
  • 4株主以外のステークホルダーへの配慮は対象外である
  • 5取締役会の独立性に関する事項は含まれていない
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
コーポレートガバナンス・コードは上場会社向けの原則で、株主の権利、ステークホルダーとの協働、情報開示、取締役会の責務、株主との対話を柱とする。機関投資家側の原則がスチュワードシップ・コードであり、両者は車の両輪と位置づけられる。

【学習ポイント】
ガバナンス・コードの5章立て(株主の権利・平等性、ステークホルダーとの協働、適切な情報開示、取締役会等の責務、株主との対話)を大枠で押さえる。法令ではなくコンプライ・オア・エクスプレイン。スチュワードシップ・コード(投資家側)と対をなし、資本コストを意識した経営や政策保有株式の縮減はこの文脈で進んでいる。
★ポイント:証券アナリスト職業行為基準:投資家の利益優先・利益相反の開示・未公開重要情報に基づく売買の禁止・合理的根拠のある投資判断・守秘義務(法令に基づく開示は例外)・事実と意見の区別。違反が疑われる場合も基準は個人の責任で遵守。
問8
パフォーマンスの表示に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 1実績の算出期間と算出方法を明示する
  • 2シミュレーション結果である場合は、その旨を明示する
  • 3手数料控除前後の別を明示する
  • 4ベンチマークを併記する場合は、その定義を明示する
  • ✔運用成績の良好な特定顧客の口座のみを抽出して提示してよい
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
良好な口座のみを抽出した表示は代表性を欠く誤認表示であり、GIPS基準の理念にも反する。コンポジット単位での公正な表示が求められる。

【学習ポイント】
パフォーマンス表示の原則:期間・算出方法・手数料控除の別・シミュレーションの別・ベンチマークの定義を明示し、代表性のある実績を示す。良好な口座や期間のみの抽出、複利効果を誇張する表示、市況要因をスキルと誤認させる表示はいずれも不当表示。GIPSのコンポジット思想は、この「選べない形で全部見せる」ことの制度化である。
★ポイント:証券アナリスト職業行為基準:投資家の利益優先・利益相反の開示・未公開重要情報に基づく売買の禁止・合理的根拠のある投資判断・守秘義務(法令に基づく開示は例外)・事実と意見の区別。違反が疑われる場合も基準は個人の責任で遵守。