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司法書士試験|分野別 問題インデックス

最終更新:2026年8月11日

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憲法全43問中 8問を掲載

問1
表現の自由に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • 1憲法21条2項前段が禁止する検閲とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として網羅的一般的に発表前に審査する行為をいい、絶対的に禁止される。
  • 2税関検査は、既に国外で発表済みの表現物を対象とし、発表の機会が全面的に奪われるものではないから、検閲には当たらない。
  • 3教科書検定は、一般図書としての発行を何ら妨げるものではないから、検閲には当たらない。
  • ✔報道機関の取材の自由は、憲法21条の精神に照らし十分尊重に値するが、公正な刑事裁判の実現という要請がある場合には制約を受けることがある。
  • 5名誉毀損的表現であっても、公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的でされ、摘示事実が真実であることが証明されれば処罰されない。
解説:誤っているのは「取材の自由が絶対的に保障される」旨の記述である。博多駅テレビフィルム提出命令事件(最大決昭44.11.26)は、報道の自由は21条の保障の下にあり、取材の自由も「憲法21条の精神に照らし十分尊重に値する」としつつ、公正な刑事裁判の実現という憲法上の要請との比較衡量により制約を受けうるとした。検閲の定義と絶対的禁止は税関検査事件(最大判昭59.12.12)、教科書検定は第一次家永訴訟(最判平5.3.16)による。
参照:憲法21条、最大決昭44.11.26、最大判昭59.12.12、最判平5.3.16、刑法230条の2
問2
国会に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1予算は、先に衆議院に提出しなければならない。
  • 2条約の締結に必要な国会の承認については、予算と同様の衆議院の優越が認められている。
  • 3法律案について参議院が衆議院と異なった議決をした場合、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは法律となる。
  • ✔内閣総理大臣の指名について両議院の議決が一致しないときは、両院協議会を開くことなく直ちに衆議院の議決が国会の議決となる。
  • 5衆議院が解散されたときは参議院も同時に閉会となるが、内閣は、国に緊急の必要があるときは参議院の緊急集会を求めることができる。
解説:誤っているのは内閣総理大臣の指名に関する記述である。指名の議決が一致しないときは、両院協議会を開いてもなお意見が一致しないとき、又は参議院が10日以内に指名の議決をしないときに、衆議院の議決が国会の議決となる(憲法67条2項)。ここでの両院協議会は必要的であり、開催を省略できない。予算・条約についても同様に必要的両院協議会である点に注意。
参照:憲法54条2項、60条1項、61条、59条2項、67条2項
問3
法の下の平等に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • 1国籍法が、日本国民である父と外国人母との間に出生した子について、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したことを届出による国籍取得の要件としていた部分は、違憲とされた。
  • ✔女性についてのみ6か月の再婚禁止期間を定めていた民法の規定は、その全体が合理的な立法裁量の範囲内にあり合憲であるとされた。
  • 3憲法14条1項後段に列挙された事由は、差別が禁止される事由の例示であって、限定列挙ではない。
  • 4尊属殺人罪について普通殺人罪より著しく重い法定刑を定めていた規定は、立法目的達成の手段として著しく不合理であり違憲であるとされた。
  • 5嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定は、遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたとされた。
解説:誤っているのは再婚禁止期間に関する記述である。最大判平27.12.16は、父性の推定の重複を回避するという立法目的には合理性があるとしつつ、100日を超える部分については合理性を欠き、遅くとも平成20年当時において憲法14条1項及び24条2項に違反していたとした。他は尊属殺違憲判決(最大判昭48.4.4)、非嫡出子相続分違憲決定(最大決平25.9.4)、国籍法違憲判決(最大判平20.6.4)である。
参照:憲法14条、最大判昭48.4.4、最大判平20.6.4、最大決平25.9.4、最大判平27.12.16
問4
人身の自由に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • ✔憲法31条の定める法定手続の保障は刑事手続についてのものであり、行政手続については、それが刑事手続でない以上、およそ同条による保障が及ぶことはない。
  • 2何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ逮捕されない。
  • 3何人も、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されない。
  • 4何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
  • 5実行の時に適法であった行為については、刑事上の責任を問われない。
解説:誤っているのは行政手続への適用に関する記述である。成田新法事件判決(最大判平4.7.1)は、憲法31条の定める法定手続の保障は直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続でないとの理由のみで当然に同条による保障の枠外にあると判断すべきではないとした。ただし常に事前告知・弁解・防御の機会を与えることを必要とするものではないとしている。
参照:憲法31条、33条、34条、38条1項、39条、最大判平4.7.1
問5
信教の自由及び政教分離に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • 1県が靖國神社等に対し玉串料等を公金から支出した行為は、憲法20条3項及び89条に違反するとされた。
  • ✔市が神社施設の敷地として市有地を長年無償で提供していた行為は、宗教団体に対する特権の付与に当たらず、政教分離原則に反しないとされた。
  • 3信教の自由には、信仰の自由、宗教的行為の自由及び宗教的結社の自由が含まれる。
  • 4判例は、国家と宗教とのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものかどうかによって、政教分離原則違反の有無を判断してきた。
  • 5市が主催して神式の地鎮祭を行い公金を支出した行為は、その目的が世俗的で効果も特定の宗教を援助等するものではないとして、憲法20条3項の宗教的活動に当たらないとされた。
解説:誤っているのは市有地の無償提供に関する記述である。空知太神社事件(最大判平22.1.20)は、市が町内会に対し神社施設の敷地として市有地を無償で使用させていた行為について、一般人の目から見て市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し援助していると評価されてもやむを得ないとして、憲法89条及び20条1項後段に違反するとした。津地鎮祭事件は最大判昭52.7.13、愛媛玉串料事件は最大判平9.4.2。
参照:憲法20条、89条、最大判昭52.7.13、最大判平9.4.2、最大判平22.1.20
問6
内閣及び司法権に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • ✔衆議院の解散のように直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為についても、法律上の争訟である限り、裁判所の審査権が及ぶ。
  • 2内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。
  • 3内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名される。
  • 4国務大臣は、その過半数を国会議員の中から選ばなければならない。
  • 5最高裁判所の裁判官は、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付される。
解説:誤っているのは統治行為に関する記述である。苫米地事件(最大判昭35.6.8)は、直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為については、たとえそれが法律上の争訟となり有効無効の判断が法律上可能である場合であっても、裁判所の審査権の外にあるとした(統治行為論)。砂川事件(最大判昭34.12.16)も同様の判断枠組みを示している。
参照:憲法66条3項、67条1項、68条1項、79条2項、81条、最大判昭35.6.8
問7
経済的自由権に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • 1財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。
  • ✔いったん法律によって定められた財産権の内容を事後の法律で変更することは、いかなる場合であっても許されない。
  • 3職業選択の自由には、自己の選択した職業を遂行する自由、すなわち営業の自由も含まれる。
  • 4薬局開設の距離制限を定めた薬事法の規定について、判例は、主として国民の生命及び健康に対する危険の防止という消極目的の規制であるとして、より緩やかな規制手段によって目的を達成できるかどうかを審査し、違憲と判断した。
  • 5小売市場の開設許可に係る距離制限について、判例は、経済的基盤の弱い小売商の保護という積極目的の規制であるとして、著しく不合理であることが明白である場合に限り違憲となるとした。
解説:誤っているのは財産権の事後的変更に関する記述である。国有農地売払特措法事件(最大判昭53.7.12)は、財産権の内容を事後の法律で変更することも、その変更が公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるときは憲法29条に違反しないとした。薬事法判決は最大判昭50.4.30、小売市場判決は最大判昭47.11.22であり、規制目的二分論の対比として頻出である。
参照:憲法22条1項、29条、最大判昭47.11.22、最大判昭50.4.30、最大判昭53.7.12
問8
幸福追求権及びプライバシーに関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • ✔警察官が犯罪捜査の必要上、本人の同意なく、また令状によることなくその容ぼう等を撮影することは、いかなる場合であっても許されない。
  • 2憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しており、これには何人もその承諾なしにみだりに容ぼう等を撮影されない自由が含まれる。
  • 3前科等にかかわる事実をみだりに公表されない利益は、法的保護に値する。
  • 4何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有し、この自由の保障は我が国に在留する外国人にも及ぶ。
  • 5住民基本台帳ネットワークシステムによる本人確認情報の管理・利用等は、憲法13条により保障される個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではない。
解説:誤っているのは写真撮影に関する記述である。京都府学連事件(最大判昭44.12.24)は、現に犯罪が行われ若しくは行われた後間がないと認められる場合であって、証拠保全の必要性及び緊急性があり、その撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法をもって行われるときは、令状がなくても許容されるとした。前科照会事件は最判昭56.4.14、指紋押なつは最判平7.12.15、住基ネットは最判平20.3.6。
参照:憲法13条、最大判昭44.12.24、最判昭56.4.14、最判平7.12.15、最判平20.3.6

民法全286問中 8問を掲載

問9
成年被後見人に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 1成年被後見人がした法律行為は成年後見人のみが取り消すことができ、成年被後見人自身は取り消すことができない。
  • 2成年後見人が成年被後見人に代わってその居住の用に供する建物を売却するには、成年被後見人本人の同意を得れば足りる。
  • 3成年被後見人は、成年後見人の同意を得れば、単独で不動産を売却することができる。
  • 4成年被後見人が成年後見人の同意を得てした法律行為は、取り消すことができない。
  • ✔成年被後見人が日用品の購入その他日常生活に関する行為をしたときは、その行為を取り消すことができない。
解説:正しいのは日用品の購入等に関する記述である(民法9条ただし書)。成年後見人には同意権がなく、同意を得てした行為であっても取り消すことができるため、同意に関する記述はいずれも誤り。取消権者には制限行為能力者本人も含まれる(120条1項)。居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要であり、本人の同意では足りない(859条の3)。
参照:民法9条、120条1項、859条の3
問10
錯誤に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1錯誤による取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
  • 2錯誤による取消しが認められるには、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであることを要する。
  • 3錯誤による意思表示は無効ではなく、取り消すことができるものとされている。
  • 4表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、取消しをすることができる。
  • ✔表意者に重大な過失があった場合には、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときであっても、取消しをすることができない。
解説:誤っているのは重過失に関する記述である。表意者に重大な過失があった場合でも、①相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき、②相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき(共通錯誤)は、取消しをすることができる(民法95条3項)。平成29年改正により錯誤の効果は無効から取消しに改められ、第三者保護規定(95条4項)が新設された。
参照:民法95条1項〜4項
問11
無権代理に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。
  • 1無権代理人の責任を追及するには、相手方が無権代理人に代理権がないことを知らなかったことで足り、知らなかったことにつき過失がなかったことを要しない。
  • 2無権代理人が本人を単独で相続した場合、本人が生前に追認を拒絶していたときであっても、当該無権代理行為は当然に有効となる。
  • ✔本人が無権代理人を単独で相続した場合であっても、本人は無権代理行為の追認を拒絶することができる。
  • 4無権代理人が本人を他の相続人とともに共同相続した場合、無権代理人の相続分に相当する部分については当然に有効となる。
  • 5無権代理行為の相手方は、本人が追認をしない間は、代理権がないことを知っていたときであっても契約を取り消すことができる。
解説:正しいのは本人が無権代理人を相続した場合の記述である。判例(最判昭37.4.20)は、本人が無権代理人を相続しても本人が自ら法律行為をしたのと同じ地位に立つものではなく、追認拒絶をしても信義則に反しないとする。本人が生前に追認を拒絶していれば無権代理人が相続しても有効とならず(最判平10.7.17)、共同相続の場合は共同相続人全員が共同して追認しない限り有効とならない(最判平5.1.21)。相手方の取消権は善意の場合に限られ(115条ただし書)、無権代理人の責任追及には原則として善意無過失を要する(117条2項)。
参照:民法113条〜117条、最判昭37.4.20、最判平5.1.21、最判平10.7.17
問12
時効に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 120年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
  • 2占有の開始の時に善意かつ無過失であれば、その後に悪意となっても、10年の経過により所有権を時効取得することができる。
  • 3賃借人は、賃貸借契約に基づく占有を長期間継続しても、その目的物の所有権を時効により取得することはできない。
  • ✔時効の利益は、あらかじめ放棄することができる。
  • 5占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
解説:誤っているのは時効利益の事前放棄に関する記述である。時効の利益は、あらかじめ放棄することができない(民法146条)。債務者が時効完成前に放棄を強いられることを防ぐ趣旨であり、時効完成後の放棄は可能である。取得時効の成立には自主占有が必要であり、賃借人の占有は他主占有であるから所有権の時効取得は認められない(占有の性質が変わる185条の場合を除く)。
参照:民法144条〜146条、162条、185条、187条
問13
不動産の物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • 1実体上の権利を有しない登記簿上の名義人は、民法177条にいう第三者に当たらない。
  • 2背信的悪意者は民法177条にいう第三者に当たらないが、単に登記の欠缺を知っているにすぎない悪意者は第三者に当たる。
  • ✔取得時効の完成後に原所有者から当該不動産を譲り受けて登記を備えた者に対しては、時効取得者は登記がなくても時効取得を対抗することができる。
  • 4相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分を超える部分については登記がなければ第三者に対抗することができない。
  • 5不動産を不法に占有する者は、民法177条にいう第三者に当たらない。
解説:誤っているのは時効完成後の第三者に関する記述である。判例は、時効完成前に権利を取得した第三者に対しては登記なくして対抗できるが、時効完成後に権利を取得し登記を備えた第三者に対しては、時効取得者は登記がなければ対抗できないとする(最判昭33.8.28ほか)。両者は対抗関係に立つと構成される。なお法定相続分を超える承継については民法899条の2により対抗要件が必要である。
参照:民法177条、899条の2、最判昭33.8.28、最判昭43.8.2
問14
動産の即時取得に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1占有改定による引渡しを受けたにとどまる場合には、即時取得は成立しない。
  • ✔即時取得が成立するためには、取得者が平穏・公然・善意であれば足り、無過失であることを要しない。
  • 3占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
  • 4即時取得は動産についての制度であり、不動産には適用されない。
  • 5道路運送車両法により登録を受けている自動車は、即時取得の対象とならない。
解説:誤っているのは無過失に関する記述である。即時取得の成立には、取得者が平穏・公然・善意であることに加え、無過失であることを要する(民法192条)。平穏・公然・善意は186条1項により推定され、無過失も前主の占有に対する188条の権利適法推定を介して推定されるのが判例(最判昭41.6.9)。占有改定では即時取得は成立しない(最判昭35.2.11)。
参照:民法192条、193条、186条、188条、最判昭35.2.11、最判昭41.6.9
問15
共有に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴うもの)を加えるには、他の共有者全員の同意を得なければならない。
  • ✔共有者は、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることができるが、この契約を更新することはできない。
  • 3各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
  • 4共有物の保存行為は、各共有者が単独ですることができる。
  • 5共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
解説:誤っているのは不分割契約の更新に関する記述である。分割をしない旨の契約は更新することができるが、更新の時から5年を超えることができない(民法256条2項)。令和3年改正により、軽微変更(形状又は効用の著しい変更を伴わないもの)は持分価格の過半数で決することができるとされた点も併せて押さえておきたい(251条1項、252条1項)。
参照:民法249条、251条、252条、256条
問16
抵当権の物上代位に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • ✔抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記後に取得した賃貸人に対する債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、物上代位権を行使した抵当権者に対抗することができる。
  • 2抵当権者は、抵当不動産の賃料債権に対しても物上代位権を行使することができる。
  • 3物上代位権を行使するには、払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
  • 4抵当権設定登記後に賃料債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた場合であっても、抵当権者は当該賃料債権に対して物上代位権を行使することができる。
  • 5抵当不動産が売却された場合の売買代金債権に対しても、物上代位権を行使することができる。
解説:誤っているのは相殺の対抗に関する記述である。判例(最判平13.3.13)は、抵当権設定登記後に賃借人が取得した賃貸人に対する債権を自働債権とする相殺をもって、物上代位権を行使した抵当権者に対抗することはできないとした。抵当権の効力が及ぶ賃料債権を、後発的な相殺により失わせることは許されないという趣旨である。賃料債権の譲渡と物上代位の優劣については最判平10.1.30が抵当権者の優先を認めている。
参照:民法304条、372条、最判平10.1.30、最判平13.3.13

商法・会社法全128問中 8問を掲載

問17
株式会社の設立に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1現物出資について定款に記載された価額の総額が500万円を超えない場合には、検査役の調査を要しない。
  • ✔発起設立においては、設立時取締役は創立総会の決議によって選任される。
  • 3発起人は、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない。
  • 4株式会社の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。
  • 5金銭以外の財産を出資することができるのは発起人に限られる。
解説:誤っているのは設立時取締役の選任に関する記述である。発起設立においては設立時取締役は発起人が議決権の過半数をもって選任する(会社法38条、40条)。創立総会は募集設立の場合に開催されるものである(65条以下)。定款に設立時取締役として定めた場合はその者が出資履行完了時に選任されたものとみなされる(38条4項)。
参照:会社法25条2項、30条1項、33条10項、34条、38条、40条、65条
問18
株主総会に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • ✔株主総会の特別決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
  • 2定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
  • 3取締役会設置会社においては、株主総会は、会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議をすることができる。
  • 4公開会社でない取締役会設置会社においては、株主総会の招集通知は、原則として会日の1週間前までに発すれば足りる。
  • 5議決権の代理行使について、代理人を株主に限る旨を定款で定めることは、判例上有効とされている。
解説:誤っているのは特別決議の要件に関する記述である。特別決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う(会社法309条2項)。定足数は定款で3分の1まで軽減できるが、決議要件は加重できても軽減はできない。設問の記述は普通決議の要件である(309条1項)。
参照:会社法296条、295条2項、299条、310条、309条1項2項、最判昭43.11.1
問19
取締役の義務及び責任に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
  • 2取締役会設置会社において、取締役が競業取引をするには、取締役会において重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
  • 3利益相反取引によって株式会社に損害が生じたときは、承認を受けていた場合であっても、当該取引をした取締役等は任務を怠ったものと推定される。
  • 4自己のために直接取引をした取締役は、任務を怠ったことが自己の責めに帰することができない事由によるものであることをもって責任を免れることができない。
  • ✔取締役の株式会社に対する損害賠償責任は、総株主の議決権の過半数を有する株主の同意があれば、免除することができる。
解説:誤っているのは責任免除の要件に関する記述である。取締役の会社に対する任務懈怠責任(423条1項)を全部免除するには、総株主の同意を要する(会社法424条)。議決権の過半数では足りない。一部免除については株主総会の特別決議による方法(425条)、定款の定めに基づく取締役会決議による方法(426条)、非業務執行取締役等との責任限定契約(427条)がある。
参照:会社法355条、356条、365条、423条、424条〜428条
問20
監査役に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1監査役の任期は、原則として選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである。
  • 2公開会社でない株式会社においては、定款によって監査役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができる。
  • 3公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)は、定款で監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定することができる。
  • ✔監査役は、株主総会の普通決議によって、いつでも解任することができる。
  • 5監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人を兼ねることができない。
解説:誤っているのは監査役の解任に関する記述である。監査役の解任は株主総会の特別決議による(会社法339条1項、309条2項7号)。取締役の解任が普通決議であるのと対比して覚える。監査役の独立性を確保する趣旨であり、監査役は株主総会で意見を述べることもできる(345条4項)。
参照:会社法335条2項、336条、339条、309条2項7号、389条
問21
募集株式の発行に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1公開会社でない株式会社においては、募集事項の決定は、原則として株主総会の特別決議による。
  • 2募集株式の引受人は、払込期日又は払込期間内に、払込取扱場所において払込金額の全額を払い込まなければならない。
  • ✔現物出資財産がある場合には、いかなる場合であっても、裁判所に対し検査役の選任を申し立てなければならない。
  • 4公開会社においては、募集事項の決定は、原則として取締役会の決議による。
  • 5公開会社が募集株式を引き受ける者に特に有利な払込金額で発行する場合には、株主総会の特別決議を要する。
解説:誤っているのは検査役調査に関する記述である。現物出資財産の価額の総額が500万円を超えない場合、市場価格のある有価証券について定款の価額が市場価格以下である場合、弁護士等の証明を受けた場合、現物出資財産が会社に対する金銭債権(弁済期到来済み・帳簿価額以下)である場合(いわゆるDES)には、検査役の調査を要しない(会社法207条9項)。
参照:会社法199条、200条、201条、207条、208条、309条2項5号
問22
吸収合併に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1吸収合併は、吸収合併契約で定めた効力発生日にその効力を生ずる。
  • ✔吸収合併による存続会社の変更の登記と消滅会社の解散の登記は、それぞれ別個に管轄登記所に申請すれば足り、同時に申請することを要しない。
  • 3吸収合併消滅会社は、清算手続を経ることなく解散し、その権利義務は存続会社に包括承継される。
  • 4吸収合併契約は、原則として各当事会社の株主総会の特別決議による承認を受けなければならない。
  • 5債権者保護手続として、1か月を下らない一定の期間内に異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告しなければならない。
解説:誤っているのは登記申請に関する記述である。吸収合併による存続会社の変更の登記と消滅会社の解散の登記は同時に申請しなければならず、本店所在地の管轄が異なる場合には存続会社の本店所在地を管轄する登記所を経由して申請する(商業登記法82条2項3項)。なお官報公告に加えて定款所定の日刊新聞紙又は電子公告による公告をしたときは、各別の催告を省略できる(会社法789条3項)。
参照:会社法748条〜750条、783条、789条、795条、商業登記法82条
問23
商法総則及び商行為に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • ✔商行為によって生じた債権は、他の法令に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときに時効によって消滅する旨の規定が、現在も商法に置かれている。
  • 2支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
  • 3支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
  • 4商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでした行為であっても、原則として本人に対してその効力を生ずる。
  • 5商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
解説:誤っているのは商事消滅時効に関する記述である。平成29年民法改正に伴い、商事消滅時効を定めていた商法522条は削除され、消滅時効は民法166条1項(主観的起算点から5年、客観的起算点から10年)に一本化された。支配人の包括的代理権(商法21条、会社法11条)、非顕名主義(商法504条)、商人の報酬請求権(商法512条)は現行法どおりである。
参照:商法21条、504条、512条、民法166条
問24
株式に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • ✔株式会社は、自己株式を消却することができず、必ずこれを処分しなければならない。
  • 2株式会社は、その発行する全部又は一部の株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨を定款で定めることができる。
  • 3譲渡等承認請求に対して株式会社が承認をしない旨の決定をした場合には、当該株式会社又は指定買取人が当該株式を買い取らなければならない。
  • 4株券発行会社でない株式会社の株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名等を株主名簿に記載しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。
  • 5株式会社は、その有する自己株式については、議決権を有しない。
解説:誤っているのは自己株式の消却に関する記述である。株式会社は、自己株式を消却することができ、この場合には消却する自己株式の数を定めなければならない(会社法178条)。取締役会設置会社では取締役会の決議による。自己株式については議決権がなく(308条2項)、剰余金の配当も受けられない(453条)。
参照:会社法107条、108条、130条、140条、178条、308条2項

民事訴訟法全71問中 8問を掲載

問25
民事訴訟の管轄に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1財産権上の訴えは、義務履行地を管轄する裁判所に提起することができる。
  • 2不法行為に関する訴えは、不法行為があった地を管轄する裁判所に提起することができる。
  • 3不動産に関する訴えは、不動産の所在地を管轄する裁判所に提起することができる。
  • 4訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求に係る第一審訴訟は、簡易裁判所の管轄に属する。
  • ✔法定の専属管轄が定められている訴えについても、当事者は合意により第一審の管轄裁判所を定めることができる。
解説:誤っているのは専属管轄に関する記述である。専属管轄が法定されている場合には、合意管轄・応訴管轄の規定は適用されず、当事者の合意によって管轄を変更することはできない(民事訴訟法13条1項)。また専属管轄の場合は遅滞を避ける等のための移送(17条)や必要的移送(19条)も原則として認められない。
参照:民事訴訟法4条、5条、11条、13条、裁判所法33条1項1号
問26
訴訟能力に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1未成年者が独立して法律行為をすることができる場合には、自ら訴訟行為をすることができる。
  • 2訴訟能力を欠く者がした訴訟行為は、能力を有するに至った当事者又は法定代理人の追認により、行為の時にさかのぼって効力を生ずる。
  • 3裁判所は、訴訟能力を欠く場合には、期間を定めてその補正を命じなければならない。
  • ✔成年被後見人は、成年後見人の同意を得れば、自ら訴訟行為をすることができる。
  • 5未成年者は、法定代理人によらなければ訴訟行為をすることができないのが原則である。
解説:誤っているのは成年被後見人に関する記述である。成年被後見人は訴訟無能力者であり、成年後見人の同意を得ても自ら訴訟行為をすることはできず、法定代理人である成年後見人によらなければならない(民事訴訟法28条、31条)。実体法上、成年後見人に同意権がないこととも整合する。被保佐人・被補助人は保佐人等の同意を得て訴訟行為をする(32条)。
参照:民事訴訟法28条、31条、32条、34条
問27
既判力に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1既判力の基準時は、事実審の口頭弁論終結時である。
  • 2確定判決は、原則として当事者に対してのみその効力を有する。
  • ✔口頭弁論終結後の承継人に対しては、確定判決の効力は及ばない。
  • 4確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。
  • 5相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する。
解説:誤っているのは口頭弁論終結後の承継人に関する記述である。確定判決の効力は、当事者のほか、口頭弁論終結後の承継人及びこれらの者のために請求の目的物を所持する者にも及ぶ(民事訴訟法115条1項2号3号4号)。基準時後に紛争の主体たる地位を承継した者を既判力で拘束しなければ、紛争解決の実効性が失われるためである。
参照:民事訴訟法114条、115条
問28
上訴に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1控訴審は、第一審判決を不服申立ての限度においてのみ取り消し又は変更することができる。
  • ✔上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実認定の誤りがあることを理由としてすることができる。
  • 3控訴は、判決書又はこれに代わる調書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければならない。
  • 4控訴審は続審制を採用しており、第一審の訴訟資料は控訴審の資料となる。
  • 5附帯控訴は、控訴期間が経過した後であっても、控訴審の口頭弁論終結に至るまですることができる。
解説:誤っているのは上告理由に関する記述である。上告は、判決に憲法の解釈の誤りその他憲法違反があること、又は絶対的上告理由(民事訴訟法312条2項各号)があることを理由とする場合に限られ、事実認定の誤りは上告理由とならない(上告審は法律審)。高等裁判所が上告審の場合には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反も理由となる(312条3項)。上告受理申立ての制度(318条)も併せて確認したい。
参照:民事訴訟法285条、293条、304条、312条、318条
問29
訴えの提起に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。
  • 2二重起訴の禁止に触れる訴えは、不適法として却下される。
  • 3別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として相殺の抗弁を主張することは、二重起訴の禁止の趣旨に照らして問題となる。
  • ✔訴えの提起によって生じた時効の完成猶予の効力は、その訴えが不適法として却下された場合には、当初にさかのぼって生じなかったものとなる。
  • 5訴えの提起は、原則として訴状を裁判所に提出してしなければならない。
解説:誤っているのは時効の完成猶予に関する記述である。裁判上の請求は、確定判決等によらずに訴訟が終了した場合(却下・取下げ等)であっても、その終了の時から6か月を経過するまでは時効の完成が猶予される(民法147条1項かっこ書)。完成猶予の効力が当初から生じなかったことになるわけではない。ただし時効の更新の効力は生じない。
参照:民事訴訟法133条、142条、民法147条
問30
弁論主義及び自白に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1裁判上の自白が成立した場合には、当事者は原則としてこれを撤回することができない。
  • 2自白が真実に反し、かつ錯誤に基づくものであることが証明されたときは、自白を撤回することができる。
  • ✔権利又は法律関係についての自白(いわゆる権利自白)も、事実についての自白と同様に、常に裁判所を拘束する。
  • 4裁判所は、当事者が主張しない事実を判決の基礎とすることができない。
  • 5当事者間に争いのない事実は、証拠によることなく判決の基礎としなければならない。
解説:誤っているのは権利自白に関する記述である。弁論主義が妥当するのは主要事実についてであり、権利又は法律関係についての自白は、法適用に関する事項であるから裁判所を拘束しないと解するのが通説・判例である。もっとも所有権のような日常的な法概念については、自白の拘束力を認める見解も有力である。
参照:民事訴訟法179条、最判昭41.9.22
問31
証拠に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定される。
  • ✔当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持する場合であっても、その当事者は当該文書の提出義務を負わない。
  • 3証人尋問は、原則として公開の法廷において行われる。
  • 4裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができる。
  • 5文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
解説:誤っているのは文書提出義務に関する記述である。当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するときは、その所持者は文書提出義務を負う(民事訴訟法220条1号)。同条2号(引渡・閲覧請求権のある文書)、3号(利益文書・法律関係文書)、4号(一般義務)も併せて整理する。私文書の二段の推定(228条4項)は頻出論点である。
参照:民事訴訟法207条、219条、220条、228条
問32
訴訟の終了に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • ✔裁判所は、口頭弁論を終結した後は、和解を試みることができない。
  • 2訴えは、判決が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。
  • 3相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、訴えの取下げは相手方の同意を得なければ効力を生じない。
  • 4本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない。
  • 5和解を調書に記載したときは、その記載は確定判決と同一の効力を有する。
解説:誤っているのは和解を試みる時期に関する記述である。裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる(民事訴訟法89条1項)。口頭弁論終結後、判決言渡し前であっても和解を試みることができ、その場合は弁論を再開することになる。
参照:民事訴訟法89条、261条、262条、267条

民事執行法・民事保全法全29問中 8問を掲載

問33
仮差押えに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • ✔仮差押命令の申立ては、本案の訴えを提起した後でなければすることができない。
  • 2仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき等に発することができる。
  • 3仮差押命令の申立てにおいては、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を疎明しなければならない。
  • 4裁判所は、担保を立てさせて仮差押命令を発することができる。
  • 5不動産に対する仮差押えの執行は、仮差押えの登記をする方法又は強制管理の方法により行う。
解説:誤っているのは本案の訴えの提起に関する記述である。保全命令は本案の訴え提起前でも申し立てることができ、これがむしろ通常である。保全命令が発せられた後、債務者の申立てにより裁判所が起訴命令を発し、定められた期間内に本案の訴えを提起しないときに保全命令が取り消される(民事保全法37条)。
参照:民事保全法13条、14条、20条、37条、47条
問34
不動産に対する強制執行に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1不動産に対する強制執行は、強制競売又は強制管理の方法により行う。
  • 2強制競売の開始決定においては、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言しなければならない。
  • 3差押えの効力は開始決定が債務者に送達された時に生ずるが、差押えの登記がその送達前にされたときは、登記がされた時に生ずる。
  • 4不動産の上に存する先取特権、使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は、売却により消滅する。
  • ✔買受人は、売却許可決定が確定した時に、代金を納付しなくても不動産の所有権を取得する。
解説:誤っているのは所有権取得の時期に関する記述である。買受人は、代金を納付した時に不動産を取得する(民事執行法79条)。売却許可決定の確定だけでは所有権は移転しない。代金が納付されないときは売却許可決定は効力を失い、買受申出の保証は返還されない(80条)。売却による担保権の消滅(消除主義。59条1項)も重要である。
参照:民事執行法43条、45条、46条、59条、79条、80条
問35
債権執行に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1金銭債権に対する強制執行は、執行裁判所の差押命令により開始する。
  • 2差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する。
  • 3差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる。
  • 4金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間(給料等の債権については4週間)を経過したときは、その債権を取り立てることができる。
  • ✔転付命令は、確定しなくてもその効力を生ずる。
解説:誤っているのは転付命令に関する記述である。転付命令は確定しなければその効力を生じない(民事執行法159条5項)。転付命令が効力を生ずると、差押債権者の債権及び執行費用は券面額で弁済されたものとみなされ(160条)、第三債務者の無資力の危険を差押債権者が負担することとなる。
参照:民事執行法143条、145条、155条、159条、160条
問36
仮処分に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1係争物に関する仮処分には、占有移転禁止の仮処分及び処分禁止の仮処分がある。
  • 2仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
  • 3仮の地位を定める仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ発することができないのが原則である。
  • 4占有移転禁止の仮処分命令の執行後に係争物を占有した者に対しては、本案の債務名義に基づき、目的物の引渡し又は明渡しの強制執行をすることができる。
  • ✔不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、常に処分禁止の登記とともに保全仮登記をする方法によりしなければならない。
解説:誤っているのは保全仮登記に関する記述である。処分禁止の仮処分の執行は処分禁止の登記をする方法によるのが原則であり(民事保全法53条1項)、保全仮登記を併用するのは、保全すべき登記請求権が所有権以外の権利の保存・設定・変更についての登記請求権である場合に限られる(同条2項)。所有権移転登記請求権の保全では処分禁止の登記のみである。
参照:民事保全法23条、53条、58条、62条
問37
債務名義及び執行文に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1確定判決、仮執行の宣言を付した判決、和解調書及び調停調書は、債務名義となる。
  • 2金銭の一定の額の支払を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものは、債務名義となる。
  • 3強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施するのが原則である。
  • 4債務名義に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、請求異議の訴えを提起することができる。
  • ✔強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、請求異議の訴えを提起することができる。
解説:誤っているのは第三者の救済手段に関する記述である。第三者が自己の権利を主張して強制執行の排除を求める場合には、第三者異議の訴えを提起する(民事執行法38条1項)。請求異議の訴え(35条)は債務者が請求権の存在・内容を争う場合の手続であり、両者は区別される。少額訴訟の確定判決等、執行文を要しない債務名義もある(25条ただし書)。
参照:民事執行法22条、25条、26条、35条、38条
問38
動産執行及び債務者の財産状況の調査に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1動産に対する強制執行は、執行官の目的物に対する差押えにより開始する。
  • 2債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具等は、差し押さえてはならない。
  • 3標準的な世帯の2か月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭は、差し押さえてはならない。
  • 4執行裁判所は、一定の要件の下で、債務者に対し財産開示手続の実施を決定することができる。
  • ✔第三者からの情報取得手続は、給与債権に関する情報については、いかなる債権者も申し立てることができる。
解説:誤っているのは第三者からの情報取得手続に関する記述である。給与債権(勤務先)に関する情報の取得を申し立てることができるのは、養育費等の扶養義務等に係る請求権又は人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権について執行力ある債務名義の正本を有する債権者に限られる(民事執行法206条1項)。令和2年4月1日施行の制度である。
参照:民事執行法122条、131条、196条、197条、205条、206条
問39
担保権の実行に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1不動産担保権の実行は、担保権の存在を証する確定判決若しくは家事事件手続法の審判の謄本又は担保権の登記に関する登記事項証明書等が提出されたときに開始する。
  • 2担保権の実行としての競売の申立てには、債務名義を要しない。
  • 3不動産担保権の実行は、担保不動産競売のほか、担保不動産収益執行の方法によることもできる。
  • 4債務者又は不動産の所有者は、担保権の不存在又は消滅を理由として、執行異議を申し立てることができる。
  • ✔担保権に基づく物上代位による差押えについては、債権執行に関する規定は準用されない。
解説:誤っているのは物上代位に関する記述である。担保権に基づく物上代位による差押えについては、債権執行に関する規定が準用される(民事執行法193条2項)。物上代位の実行は担保権の存在を証する文書の提出により開始し(同条1項)、その後の手続は債権執行と同様に進行する。
参照:民事執行法180条、181条、182条、193条
問40
不動産執行における配当等の手続に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1執行力のある債務名義の正本を有する債権者は、配当要求をすることができる。
  • 2強制競売の開始決定に係る差押えの登記前に登記された仮差押債権者は、配当を受けることができる。
  • 3文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者は、配当要求をすることができる。
  • 4配当要求の終期は、執行裁判所が定める。
  • ✔配当表に対して不服のある債権者は、配当異議の申出をすることができないため、直ちに不当利得返還請求の訴えを提起しなければならない。
解説:誤っているのは配当異議に関する記述である。配当表に記載された各債権者の債権又は配当の額について不服のある債権者及び債務者は、配当期日において配当異議の申出をすることができ(民事執行法89条1項)、これを前提として配当異議の訴えを提起することとなる(90条)。配当要求権者は51条に限定列挙されている。
参照:民事執行法49条、51条、87条、89条、90条

供託法全43問中 8問を掲載

問41
弁済供託に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだときは、弁済者は供託をすることができる。
  • 2債権者が弁済を受領することができないときは、弁済者は供託をすることができる。
  • 3弁済者が過失なく債権者を確知することができないときは、弁済者は供託をすることができる。
  • 4弁済供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。
  • ✔弁済供託をした者は、いかなる場合であっても、供託物を取り戻すことができる。
解説:誤っているのは取戻請求に関する記述である。①債権者が供託を受諾したとき、②供託を有効と宣告した判決が確定したとき、③供託によって質権又は抵当権が消滅したときは、供託者は供託物を取り戻すことができない(民法496条)。取戻権を行使すると供託をしなかったものとみなされる。なお債務の履行地に供託所がないときは、裁判所が供託所の指定・供託物保管者の選任をする(495条2項)。
参照:民法494条〜496条、供託法1条
問42
供託物の払渡しに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1供託物払渡請求権は、原則として、権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときに時効によって消滅する。
  • 2供託物の還付を受けようとする者は、還付を受ける権利を有することを証する書面を添付しなければならない。
  • 3供託物払渡請求権を第三者に譲渡することができる。
  • ✔供託物の払渡請求は、供託をした供託所以外の供託所に対してもすることができる。
  • 5供託物の払渡請求には、還付請求と取戻請求とがある。
解説:誤っているのは請求先に関する記述である。供託物の払渡請求は、当該供託がされた供託所に対してしなければならない。還付請求権を証する書面の添付(供託規則24条)、供託物払渡請求権の譲渡が可能であること(債権譲渡の対抗要件を要する)を併せて押さえること。消滅時効については民法166条1項の原則による。
参照:供託法8条、供託規則22条、24条、民法166条
問43
執行供託に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1金銭債権について差押えが競合した場合には、第三債務者は差し押さえられた金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない。
  • 2供託をした第三債務者は、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。
  • 3仮差押えの執行のみがされた金銭債権については、第三債務者はその債権の全額に相当する金銭を供託することができる。
  • ✔執行供託の供託所は、債務の履行地ではなく、常に差押債権者の住所地を管轄する供託所である。
  • 5金銭債権の一部が差し押さえられた場合、第三債務者はその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。
解説:誤っているのは管轄供託所に関する記述である。執行供託も債務の履行地の供託所にするものであり(民事執行法156条1項が民法495条の趣旨を前提とする)、差押債権者の住所地の供託所ではない。一部差押えの場合の権利供託(156条1項)と競合時の義務供託(156条2項)の区別、事情届(156条4項)は頻出である。
参照:民事執行法156条、民事保全法50条5項、民法495条
問44
供託に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1債務の全額に足りない一部供託は、債務の本旨に従った弁済の提供とはいえず、原則として供託として有効とならない。
  • 2供託をしようとする者は、供託書に供託の原因たる事実を記載しなければならない。
  • ✔供託者は、供託後においても、供託の原因たる事実をいつでも自由に変更することができる。
  • 4還付を受ける権利を有する者が供託を受諾する旨を記載した書面を供託所に提出したときは、供託者は供託物を取り戻すことができない。
  • 5供託者が供託物を取り戻したときは、供託をしなかったものとみなされる。
解説:誤っているのは供託原因の変更に関する記述である。供託は供託書に記載された供託の原因たる事実を前提として成立するものであり、供託者が供託後に一方的にこれを変更することはできない。誤った供託をした場合には、供託が無効であることを理由に取戻請求をするなどの方法によることになる。供託受諾による取戻請求権の消滅は民法496条1項による。
参照:民法496条、供託法8条、供託規則13条
問45
供託の種類に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1営業保証供託は、営業者が営業に関して負担することとなる債務の履行を担保するためにされるものである。
  • 2裁判上の保証供託には、仮差押命令や仮処分命令を発する際に立てる担保としてされるものがある。
  • 3保管供託は、目的物そのものの保管を目的とし、その現状を維持するためにされるものである。
  • ✔没取供託は、供託物が国庫に帰属することはないという点で、他の類型と区別される。
  • 5供託は、その目的により、弁済供託、担保(保証)供託、執行供託、保管供託及び没取供託に分類される。
解説:誤っているのは没取供託に関する記述である。没取供託は、一定の要件を満たさなかった場合に供託物が国庫に帰属(没取)することを予定した供託であり、公職選挙法上の供託金がその典型である。得票数が法定得票数に達しない場合等に供託物は没取される。むしろ国庫帰属こそが没取供託の本質的特徴である。
参照:供託法1条、公職選挙法92条、93条
問46
供託官の処分に対する不服申立てに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1供託官は、審査請求を理由があると認めるときは、相当の処分をしなければならない。
  • 2供託官は、審査請求を理由がないと認めるときは、意見を付して事件を監督法務局又は地方法務局の長に送付しなければならない。
  • ✔審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内にしなければならない。
  • 4供託官の処分に不服がある者は、監督法務局又は地方法務局の長に対し、審査請求をすることができる。
  • 5審査請求は、供託官を経由してしなければならない。
解説:誤っているのは審査請求期間に関する記述である。供託官の処分に対する審査請求については、行政不服審査法の審査請求期間に関する規定は適用されず、期間の制限はない(供託法1条の6第3項参照)。不動産登記法上の審査請求に期間制限がないのと同様である。
参照:供託法1条の4、1条の5、1条の6
問47
賃料に係る弁済供託に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • 1受領拒否を理由とする弁済供託をするには、原則として弁済の提供をしたことを要する。
  • 2債権者があらかじめ受領を拒んでいる場合には、賃借人は口頭の提供をすれば足りる。
  • 3債権者が契約そのものの存在を否定するなど受領しない意思が明確である場合には、弁済の提供をしないで供託をすることができる。
  • ✔弁済期がまだ到来していない将来の数か月分の賃料についても、あらかじめまとめて弁済供託をすることができる。
  • 5賃貸人が賃料の受領をあらかじめ拒んでいる場合には、賃借人は弁済供託をすることができる。
解説:誤っているのは将来分の供託に関する記述である。弁済供託は現に弁済期が到来した債務についてするものであり、弁済期未到来の将来の賃料についてあらかじめ供託することはできない(受理されない)。受領拒否の意思が明確な場合に口頭の提供すら不要とする点は最大判昭32.6.5による。
参照:民法492条、493条、494条、最大判昭32.6.5
問48
供託の手続に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1供託書には、供託者の氏名及び住所、供託の原因たる事実等を記載しなければならない。
  • 2供託官が供託を受理したときは、供託者に対して供託書正本が交付される。
  • ✔金銭の供託においては、供託官が供託を受理する決定をした時点で、供託金を納入していなくても供託の効力が生ずる。
  • 4供託所は、法務局若しくは地方法務局又はその支局若しくは法務大臣の指定する出張所である。
  • 5金銭の供託については、供託金に利息が付される。
解説:誤っているのは供託の効力発生時期に関する記述である。金銭供託においては、供託官の受理決定後、供託者が日本銀行等の供託金取扱店に供託金を納入することによって供託が成立する。納入がなければ供託の効力は生じず、一定期間内に納入がないときは受理決定は効力を失う(供託規則18条参照)。
参照:供託法1条、3条、供託規則13条、18条、20条

不動産登記法全229問中 8問を掲載

問49
登記の申請に関する次の記述のうち、登記権利者が単独で申請することができるものはどれか。
  • ✔相続を原因とする所有権の移転の登記
  • 2抵当権の設定の登記
  • 3地上権の設定の登記
  • 4売買を原因とする所有権の移転の登記
  • 5贈与を原因とする所有権の移転の登記
解説:権利に関する登記の申請は登記権利者と登記義務者が共同してするのが原則であるが(不動産登記法60条)、相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる(63条2項)。他の単独申請の例として、判決による登記(63条1項)、所有権の保存の登記(74条)、登記名義人の氏名等の変更の登記(64条1項)、仮登記(107条)などがある。
参照:不動産登記法60条、63条
問50
登記識別情報に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1登記名義人は、登記識別情報について失効の申出をすることができる。
  • ✔相続を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合には、被相続人に係る登記識別情報を提供しなければならない。
  • 3登記識別情報は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、登記完了後に当該申請人に対して通知される。
  • 4登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由があるときは、登記官は登記義務者に対し事前通知をする方法によることができる。
  • 5資格者代理人が作成した本人確認情報の提供があり、登記官がその内容を相当と認めるときは、事前通知を要しない。
解説:誤っているのは相続登記における登記識別情報に関する記述である。登記識別情報の提供が必要となるのは、共同申請により登記権利者及び登記義務者が申請する場合等であり(不動産登記法22条)、相続による所有権移転登記は登記権利者の単独申請であるから登記識別情報の提供を要しない。判決による登記も同様に不要である。
参照:不動産登記法21条、22条、23条、不動産登記規則65条、68条
問51
所有権の保存の登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • ✔区分建物以外の建物について、表題部所有者から売買により所有権を取得した者は、直接自己名義で所有権の保存の登記を申請することができる。
  • 2表題部所有者は、所有権の保存の登記を申請することができる。
  • 3表題部所有者の相続人その他の一般承継人は、所有権の保存の登記を申請することができる。
  • 4所有権を有することが確定判決によって確認された者は、所有権の保存の登記を申請することができる。
  • 5収用によって所有権を取得した者は、所有権の保存の登記を申請することができる。
解説:誤っているのは表題部所有者からの譲受人に関する記述である。区分建物以外の不動産については、表題部所有者からの譲受人は所有権保存登記の申請適格を有しないため、まず表題部所有者名義で保存登記をした上で所有権移転登記をする必要がある。区分建物については、表題部所有者から所有権を取得した者が直接保存登記を申請できる特則がある(不動産登記法74条2項)。
参照:不動産登記法74条
問52
相続登記の申請義務に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
  • 2令和6年4月1日の施行日前に相続が開始していた場合であっても申請義務の対象となり、原則として施行日から3年以内に申請しなければならない。
  • 3正当な理由がないのに申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処せられることがある。
  • 4登記官に対して相続人である旨の申出(相続人申告登記)をした者は、申請義務を履行したものとみなされる。
  • ✔遺産の分割によって所有権を取得した場合には、当初の相続登記の申請義務を果たしていれば、遺産の分割の日から改めて登記を申請することを要しない。
解説:誤っているのは遺産分割後の登記に関する記述である。遺産の分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者は、遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(不動産登記法76条の2第2項)。相続人申告登記をした者も、その後に遺産分割で所有権を取得したときは同様に3年以内の申請義務を負う(76条の3第4項)。令和6年4月1日施行。
参照:不動産登記法76条の2、76条の3、164条1項
問53
抵当権の設定の登記の登記事項に関する次の記述のうち、必ず登記されるものはどれか。
  • 1損害金に関する定め
  • ✔債権額
  • 3債権の弁済期
  • 4抵当権の効力の及ぶ範囲に関する特約
  • 5利息に関する定め
解説:抵当権の設定の登記においては、債権額及び債務者が必要的登記事項である(不動産登記法83条1項1号2号、88条1項)。利息、損害金(債務不履行により生じた損害の賠償額)、弁済期、元本又は利息の不払により損害が生じた場合の賠償額の定めなどは、定めがあるときに登記される任意的登記事項である。
参照:不動産登記法83条、88条
問54
仮登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1仮登記権利者は、仮登記義務者の承諾があるときは、単独で仮登記を申請することができる。
  • 2所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、その者の承諾があるときに限りすることができる。
  • ✔仮登記には対抗力があり、仮登記のままで第三者に対して権利を主張することができる。
  • 4登記をすべき物権変動は生じているが、登記識別情報を提供することができないときは、いわゆる1号仮登記をすることができる。
  • 5権利の設定、移転、変更又は消滅に関する請求権を保全しようとするときは、いわゆる2号仮登記をすることができる。
解説:誤っているのは仮登記の効力に関する記述である。仮登記には対抗力はなく、本登記をすることによって初めて対抗力が生じ、その順位は仮登記の順位による(順位保全効。不動産登記法106条)。仮登記の申請は、仮登記義務者の承諾があるとき又は仮登記を命ずる処分があるときに仮登記権利者が単独ですることができる(107条1項)。
参照:不動産登記法105条、106条、107条、109条
問55
更正の登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1所有権の一部移転の登記を所有権の移転の登記に更正することができる。
  • ✔登記官は、いかなる場合であっても職権で更正の登記をすることができない。
  • 3更正の登記は、登記事項に錯誤又は遺漏があった場合に、その登記事項を訂正するためにするものである。
  • 4更正の登記が認められるためには、更正の前後を通じて登記の同一性が失われないことを要する。
  • 5所有権の登記名義人をAからBに全部改めるような更正の登記をすることはできない。
解説:誤っているのは職権更正に関する記述である。登記に錯誤又は遺漏があることが登記官の過誤によるものであるときは、登記官は、登記上の利害関係を有する第三者がない場合又はその承諾がある場合に限り、監督法務局又は地方法務局の長の許可を得て、職権で更正の登記をすることができる(不動産登記法67条2項)。同一性を欠く更正(いわゆる名義人の全部更正)は認められない。
参照:不動産登記法67条、更正登記に関する登記実務
問56
判決による登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • ✔判決が確定した日から10年を経過したときは、当該判決による登記を申請することができなくなる。
  • 2登記手続をすべきことを命ずる確定判決を得た登記権利者は、単独で登記を申請することができる。
  • 3ここでいう確定判決には、和解調書、認諾調書及び調停調書が含まれる。
  • 4登記手続を命ずる給付判決であることを要し、単に権利関係を確認するにとどまる確認判決では足りない。
  • 5判決による登記の申請には、登記義務者の登記識別情報を提供することを要しない。
解説:誤っているのは期間制限に関する記述である。判決による登記の申請について、判決確定後の期間制限はなく、確定判決に基づく登記請求権が時効消滅しない限り申請できる(登記実務)。判決による登記は登記権利者又は登記義務者の単独申請であり(不動産登記法63条1項)、登記識別情報や登記義務者の印鑑証明書の提供は不要である。
参照:不動産登記法63条1項、民事執行法177条

商業登記法全114問中 8問を掲載

問57
商業登記の申請人に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • ✔清算中の株式会社に関する登記は、清算人ではなく、解散前の代表取締役が申請する。
  • 2会社に関する登記は、原則として当該会社の代表者が申請する。
  • 3会社が支配人を選任した場合の支配人の登記は、当該会社が申請する。
  • 4外国会社の登記は、日本における代表者が申請する。
  • 5登記の申請は、書面によるほか、電子情報処理組織を使用する方法によってもすることができる。
解説:誤っているのは清算中の会社の申請人に関する記述である。会社が解散すると取締役はその地位を失い、清算人(代表清算人)が清算株式会社を代表する(会社法483条)。したがって清算中の会社に関する登記は代表清算人が申請する。解散の登記は、解散時の代表取締役が代表清算人となる場合を含め、清算人が申請するのが原則である。
参照:商業登記法17条、47条、71条、会社法478条、483条
問58
株式会社の役員の変更の登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1取締役の就任による変更の登記の申請書には、就任を承諾したことを証する書面を添付しなければならない。
  • 2取締役会設置会社における代表取締役の就任による変更の登記の申請書には、原則として取締役会議事録に押印された印鑑につき市区町村長作成の証明書を添付しなければならない。
  • 3取締役の辞任による変更の登記の申請書には、辞任を証する書面を添付しなければならない。
  • 4代表取締役が辞任する場合、辞任を証する書面に押された印鑑につき市区町村長作成の証明書の添付を要することがある。
  • ✔役員の変更の登記は変更が生じた日から2週間以内に申請しなければならないが、この期間を経過して申請しても過料に処せられることはない。
解説:誤っているのは過料に関する記述である。登記すべき事項につき登記を怠ったときは、会社法976条1号により100万円以下の過料に処せられる。代表取締役の辞任届については、登記所届出印を押しているか、実印を押して印鑑証明書を添付することを要する(商業登記規則61条8項)。就任承諾書に関する本人確認証明書(規則61条7項)も併せて確認したい。
参照:商業登記法54条、商業登記規則61条、会社法915条、976条
問59
本店移転の登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1他の登記所の管轄区域内に本店を移転した場合には、旧所在地を管轄する登記所を経由して申請する。
  • 2他管轄への本店移転の場合、旧所在地宛ての申請と新所在地宛ての申請は同時にしなければならない。
  • 3定款に本店の所在地として最小行政区画までしか定めていない場合には、同一の最小行政区画内での本店移転には定款の変更を要しない。
  • ✔他管轄への本店移転において、新所在地宛ての申請書にも、株主総会議事録及び取締役会議事録を添付しなければならない。
  • 5同一の登記所の管轄区域内で本店を移転した場合には、その登記所に本店移転の登記を申請する。
解説:誤っているのは新所在地宛ての申請書の添付書面に関する記述である。他管轄への本店移転の登記は旧所在地を管轄する登記所を経由して同時に申請するが、新所在地宛ての申請書には他の書面の添付を要しない(商業登記法51条、52条)。旧所在地宛ての申請書に添付された書面により審査されるためである。定款所定の本店所在地を変更する必要がある場合には株主総会の特別決議による定款変更を要する。
参照:商業登記法51条、52条、会社法911条3項3号
問60
株式会社の商号の変更の登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1商号の変更の登記の申請書には、株主総会議事録を添付しなければならない。
  • 2他人が既に登記した商号と同一の商号であって、その営業所の所在場所が当該他人の営業所の所在場所と同一であるときは、その登記をすることができない。
  • ✔商号を変更した場合には、必ず改めて印鑑の提出をし直さなければならない。
  • 4商号を変更するには定款の変更が必要であり、株主総会の特別決議を要する。
  • 5商号の変更の登記は、変更が生じた日から2週間以内に本店の所在地において申請しなければならない。
解説:誤っているのは印鑑の提出に関する記述である。商号を変更しても、既に提出している印鑑を改印する必要はなく、改めて印鑑届書を提出することは要しない(改印したい場合に改印届をするのは任意)。商号変更の登記には株主総会議事録に加え、株主リスト(商業登記規則61条3項)の添付も必要である。同一所在場所・同一商号の登記の禁止は商業登記法27条による。
参照:商業登記法27条、商業登記規則61条3項、会社法466条、915条
問61
支配人に関する登記についての次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1支配人の氏名及び住所は、登記事項である。
  • ✔支配人の選任による登記の申請書には、支配人の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。
  • 3取締役会設置会社が支配人を選任するには、取締役会の決議によらなければならない。
  • 4支配人を置いた営業所は、登記事項である。
  • 5支配人の代理権の消滅は、登記事項である。
解説:誤っているのは印鑑証明書に関する記述である。支配人の選任の登記の申請書に添付するのは、支配人の選任を証する書面(取締役会議事録等)であり、支配人の印鑑証明書の添付は要しない。なお支配人が登記所に印鑑を提出する場合には、会社代表者の保証書等が必要となる(商業登記規則9条5項参照)。支配人の選任・解任は取締役会の専決事項である(会社法362条4項3号)。
参照:商業登記法44条、45条、会社法362条4項3号、918条
問62
株主リストに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • ✔登記すべき事項につき総株主の同意を要する場合には、株主リストの添付を要しない。
  • 2登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合には、原則として株主リストを添付しなければならない。
  • 3株主リストには、議決権数上位10名の株主又は議決権割合が3分の2に達するまでの株主のいずれか少ない方の株主について記載する。
  • 4登記すべき事項につき種類株主総会の決議を要する場合にも、株主リストを添付しなければならない。
  • 5株主リストには、代表者が証明した旨の記載をし、代表者が記名押印しなければならない。
解説:誤っているのは総株主の同意の場合に関する記述である。登記すべき事項につき株主全員(又は種類株主全員)の同意を要する場合にも、株主全員についての株主リストを添付しなければならない(商業登記規則61条2項)。株主総会・種類株主総会の決議を要する場合は同条3項による。平成28年10月1日から導入された添付書面である。
参照:商業登記規則61条2項3項
問63
商業登記の申請の却下に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • ✔登記すべき事項につき登記期間を経過しているときは、登記官は申請を却下しなければならない。
  • 2申請に係る登記が既に登記されているときは、登記官は申請を却下しなければならない。
  • 3登記すべき事項につき無効又は取消しの原因があるときは、登記官は申請を却下しなければならない。
  • 4申請書に必要な書面を添付しないときは、登記官は申請を却下しなければならない。
  • 5事件が登記所の管轄に属しないときは、登記官は申請を却下しなければならない。
解説:誤っているのは登記期間の経過に関する記述である。登記期間を経過した後の申請であっても、登記官は申請を受理して登記しなければならず、却下事由には当たらない(商業登記法24条に列挙されていない)。ただし登記を怠った代表者等は過料の制裁を受けることがある(会社法976条1号)。却下事由は同法24条各号に限定列挙されている。
参照:商業登記法24条、会社法915条、976条
問64
株式会社の設立の登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1設立の登記は、会社を代表すべき者が申請する。
  • 2株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。
  • 3設立の登記の申請書には、定款を添付しなければならない。
  • 4発起設立の場合には、設立時取締役が就任を承諾したことを証する書面を添付しなければならない。
  • ✔発起設立の場合には、払込みがあったことを証する書面として、必ず払込みの取扱いをした銀行等の作成に係る払込金の保管に関する証明書を添付しなければならない。
解説:誤っているのは払込みを証する書面に関する記述である。払込金保管証明書の添付が必要とされるのは募集設立の場合であり(商業登記法47条2項5号)、発起設立の場合には、払込取扱機関の預金通帳の写しや取引明細表等と代表者の作成に係る証明書を合わせたもので足りる。実務上の負担軽減のための取扱いである。
参照:商業登記法47条、会社法49条、64条

刑法全43問中 8問を掲載

問65
共犯に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
  • 2正犯を幇助した者は従犯とし、従犯の刑は正犯の刑を減軽する。
  • 3判例は、共謀共同正犯を認めている。
  • 4犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
  • ✔従犯については、正犯が実行に着手しなかった場合であっても、その未遂を処罰することができる。
解説:誤っているのは従犯の未遂に関する記述である。従犯(幇助犯)は正犯の実行行為を前提とする共犯従属性説に立つのが判例・通説であり、正犯が実行に着手しなかった場合には従犯は成立せず、幇助の未遂は処罰されない。教唆についても同様である。共謀共同正犯は練馬事件(最大判昭33.5.28)により認められている。
参照:刑法61条、62条、63条、65条、最大判昭33.5.28
問66
財産犯に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、他人の財物とみなされる。
  • 2他人の不動産を侵奪する行為については、窃盗罪とは別に不動産侵奪罪が規定されている。
  • 3配偶者、直系血族又は同居の親族との間で窃盗罪を犯した者は、その刑を免除される。
  • ✔電気は財物に当たらないため、これを窃取しても窃盗罪は成立しない。
  • 5判例は、窃盗罪の保護法益について、他人の事実上の占有そのものを保護するという立場に立っている。
解説:誤っているのは電気に関する記述である。刑法245条は、窃盗及び強盗の罪について電気を財物とみなすと規定しており、電気の窃取は窃盗罪となる。親族相盗例(244条1項)は刑の必要的免除であり、同居の親族でない親族との間では告訴がなければ公訴を提起できない(同条2項)。なお同条は親族でない共犯には適用されない(同条3項)。
参照:刑法235条、235条の2、242条、244条、245条
問67
正当防衛及び緊急避難に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • 1急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は罰しない。
  • 2防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
  • 3自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。
  • 4自ら不正の行為により侵害を招いた場合には、その反撃行為について正当防衛の成立が否定されることがある。
  • ✔緊急避難における「やむを得ずにした行為」は、正当防衛の場合と同様に、他に取るべき方法があったときであっても認められる。
解説:誤っているのは緊急避難の補充性に関する記述である。緊急避難は正対正の関係にあるため、当該行為をするほかに危難を避ける方法がなかったこと(補充性)が要求される。これに対し正当防衛は不正対正の関係にあるため、退避可能であっても防衛行為が許される(補充性不要)。自招侵害については最決平20.5.20がある。
参照:刑法36条、37条、最決平20.5.20
問68
文書偽造の罪に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • 1公文書偽造罪は、私文書偽造罪よりも重い法定刑が定められている。
  • 2私文書偽造罪の客体となる文書は、権利、義務又は事実証明に関する文書に限られる。
  • 3交通事件原票中の供述書について、他人の氏名を冒用して作成した場合には、他人の承諾があったときであっても私文書偽造罪が成立する。
  • ✔名義人の承諾があるときは、いかなる場合であっても私文書偽造罪は成立しない。
  • 5文書偽造の罪における偽造とは、作成権限のない者が他人名義の文書を作成することをいう。
解説:誤っているのは名義人の承諾に関する記述である。判例(最決昭56.4.8)は、交通事件原票中の供述書のように文書の性質上作成名義人以外の者が作成することが法令上許されない文書については、名義人の承諾があっても私文書偽造罪が成立するとした。原則として承諾があれば偽造とならないが、性質上一身専属的な文書には例外がある。
参照:刑法155条、159条、最決昭56.4.8
問69
未遂及び中止犯に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • 1犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。
  • 2自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
  • 3未遂を罰する場合は、各本条で定めなければならない。
  • 4判例は、予備罪について中止犯の規定を準用することを認めていない。
  • ✔中止犯が成立する場合には、その刑は必ず免除される。
解説:誤っているのは中止犯の効果に関する記述である。中止未遂の場合、刑は必要的に減軽又は免除される(刑法43条ただし書)。必ず免除されるわけではなく、減軽にとどまることもある。障害未遂の場合は任意的減軽(同条本文)である点との対比が重要である。予備の中止については最大判昭29.1.20が準用を否定している。
参照:刑法43条、44条、最大判昭29.1.20
問70
横領の罪及び背任罪に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • 1業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、業務上横領罪となる。
  • 2遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、遺失物等横領罪となる。
  • 3背任罪は、他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときに成立する。
  • ✔不動産を二重に譲渡し、第二の買主に所有権の移転の登記を了させた売主には、いかなる場合も横領罪は成立しない。
  • 5自己の占有する他人の物を横領した者は、横領罪となる。
解説:誤っているのは不動産の二重譲渡に関する記述である。判例(最判昭30.12.26等)は、第一の売買により所有権が買主に移転した後は、売主は他人の物を占有する者に当たるとして、第二の買主に登記を移転した売主に横領罪の成立を認めている。登記名義を有する者が不動産を占有すると解される点が前提となる。
参照:刑法247条、252条、253条、254条、最判昭30.12.26
問71
罪数に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • 1一個の行為が二個以上の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
  • 2犯罪の手段又は結果である行為が他の罪名に触れるときも、その最も重い刑により処断する。
  • 3確定裁判を経ていない二個以上の罪は、併合罪とする。
  • 4併合罪のうち二個以上の罪について有期の拘禁刑に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。
  • ✔常習性の発現として行われた同種の数個の行為は、常に併合罪として処断される。
解説:誤っているのは常習犯に関する記述である。常習性の発現として行われた同種の数個の行為について常習犯の規定がある場合には、包括して一罪(常習一罪)として処断されるのであって、併合罪とはならない。なお令和4年改正刑法(令和7年6月1日施行)により、懲役及び禁錮は拘禁刑に一本化された。
参照:刑法45条、47条、54条、令和4年法律第67号
問72
詐欺罪及び恐喝罪に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
  • 1人を欺いて財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、詐欺罪となる。
  • 2人を恐喝して財物を交付させた者は、恐喝罪となる。
  • 3詐欺罪が成立するためには、欺罔行為、相手方の錯誤、錯誤に基づく処分行為及び財物又は財産上の利益の移転があり、これらの間に因果関係があることを要する。
  • ✔人ではなく機械に対して虚偽の情報を与えて財産上の利益を得た場合にも、詐欺罪が成立する。
  • 5人を欺いて財物を交付させた者は、詐欺罪となる。
解説:誤っているのは機械に対する行為に関する記述である。詐欺罪は人を欺いて錯誤に陥らせることを要するから、機械を相手とする場合には成立せず、電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)の成否が問題となる。同罪は昭和62年に新設され、コンピュータに虚偽の情報等を与えて不実の電磁的記録を作り財産上の利益を得る行為を処罰する。
参照:刑法246条、246条の2、249条

司法書士法全14問中 8問を掲載

問73
司法書士の業務に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1簡裁訴訟代理等関係業務の対象となるのは、訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求に係るものに限られる。
  • 2司法書士は、正当な事由がある場合でなければ、依頼を拒むことができない。
  • ✔司法書士となる資格を有する者は、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に登録を受けなくても、司法書士の業務を行うことができる。
  • 4司法書士は、登記又は供託に関する手続について代理することを業とする。
  • 5法務大臣の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所における一定の民事事件について訴訟代理等の業務を行うことができる。
解説:誤っているのは登録に関する記述である。司法書士となる資格を有する者が司法書士となるには、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に、氏名、生年月日、事務所の所在地その他の事項の登録を受けなければならない(司法書士法8条1項)。登録を受けずに業務を行うことはできない。認定司法書士の簡裁訴訟代理等関係業務は3条1項6号〜8号、2項による。
参照:司法書士法3条、8条、21条、法務省令
問74
司法書士及び司法書士法人に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1司法書士に対する懲戒の種類には、戒告、2年以内の業務の停止及び業務の禁止がある。
  • 2司法書士は、その業務の範囲を超えて他人間の訴訟その他の事件に関与することができない。
  • ✔司法書士は、業務上取り扱った事件について知り得た秘密を、司法書士でなくなった後においては自由に他に漏らすことができる。
  • 4司法書士法人の社員は、司法書士でなければならない。
  • 5司法書士に対する懲戒処分は、法務大臣が行う。
解説:誤っているのは守秘義務に関する記述である。司法書士は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱った事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならず、この義務は司法書士でなくなった後においても同様である(司法書士法24条)。懲戒権者は令和2年改正により法務局長から法務大臣に変更された(47条)。
参照:司法書士法22条、24条、47条、法人に関する規定
問75
司法書士の義務等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1司法書士は、補助者を置いたときは、遅滞なくその旨を所属の司法書士会に届け出なければならない。
  • 2司法書士は、公務員として職務上取り扱った事件については、その業務を行うことができない。
  • ✔司法書士は、相手方の依頼を受けて代理人として手続の代理等をした事件についても、依頼者の同意があれば業務を行うことができる。
  • 4司法書士は、事務所を設けなければならない。
  • 5司法書士は、二以上の事務所を設けることができない。
解説:誤っているのは業務を行い得ない事件に関する記述である。司法書士法22条2項各号に掲げる事件(相手方の依頼を受けて代理人として手続の代理等をした事件など)については、依頼者の同意があっても業務を行うことができない。簡裁訴訟代理等関係業務に関する同条3項では、一定の事件について受任中の依頼者の同意による例外が認められているが、2項の制限は絶対的である。
参照:司法書士法20条、22条、司法書士法施行規則19条、25条
問76
司法書士会及び日本司法書士会連合会等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1司法書士名簿の登録は、日本司法書士会連合会が行う。
  • 2司法書士となる資格は、司法書士試験に合格した者のほか、裁判所事務官、法務事務官等として一定期間登記等の事務に従事し、法務大臣が能力を有すると認めた者にも認められる。
  • ✔司法書士会は、所属する会員に対して注意を促し、又は必要な措置を講ずべきことを勧告することができない。
  • 4司法書士は、当然に、その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会の会員となる。
  • 5日本司法書士会連合会は、全国の司法書士会をもって組織される。
解説:誤っているのは注意勧告に関する記述である。司法書士会は、所属の会員が司法書士法又は同法に基づく命令に違反するおそれがあると認めるときは、会則の定めるところにより、当該会員に対して注意を促し、又は必要な措置を講ずべきことを勧告することができる(司法書士法61条)。自治的な監督権限として設けられているものである。
参照:司法書士法4条、8条、57条、61条、62条
問77
簡裁訴訟代理等関係業務に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1認定司法書士は、簡易裁判所における民事訴訟手続のほか、民事調停手続や少額訴訟債権執行の手続についても代理することができる。
  • 2認定司法書士は、裁判外の和解について代理することができる。
  • ✔認定司法書士は、簡易裁判所の判決に対する控訴事件についても、訴訟代理人となることができる。
  • 4簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができるのは、法務大臣の認定を受けた司法書士に限られる。
  • 5簡裁訴訟代理等関係業務の対象は、訴訟の目的の価額が裁判所法33条1項1号に定める額を超えない請求に係るものに限られる。
解説:誤っているのは控訴審の代理に関する記述である。認定司法書士が代理できるのは簡易裁判所における手続等に限られ、地方裁判所が管轄する控訴審における訴訟代理をすることはできない(司法書士法3条1項6号参照)。ただし簡易裁判所の判決に対する上訴の提起そのものは代理できるとされる。上告についても同様に代理権は及ばない。
参照:司法書士法3条1項6号〜8号、2項、裁判所法33条1項1号
問78
司法書士法人に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1司法書士法人の社員は、すべて司法書士でなければならない。
  • 2司法書士法人の財産をもってその債務を完済することができないときは、各社員は、連帯してその弁済の責任を負う。
  • ✔司法書士法人は、社員が一人であっても設立することができるが、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことはできない。
  • 4司法書士法人を設立するには、その社員になろうとする司法書士が、定款を定めなければならない。
  • 5司法書士法人は、その名称中に司法書士法人という文字を使用しなければならない。
解説:誤っているのは簡裁訴訟代理等関係業務に関する記述である。司法書士法人は、社員のうちに簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる司法書士(認定司法書士)がある場合に限り、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる(司法書士法29条2項)。社員が一人でもその者が認定司法書士であれば当該業務を行うことができる。
参照:司法書士法26条、27条、28条、29条、38条
問79
非司法書士等の取締り等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1司法書士又は司法書士法人でない者は、司法書士又は司法書士法人であると誤認させるような名称を用いてはならない。
  • 2非司法書士の業務制限に違反した者は、刑罰に処せられることがある。
  • ✔司法書士は、その業務の対象となる事件について、依頼者の本人確認等の措置をとる必要はない。
  • 4司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者は、他の法律に別段の定めがある場合を除き、司法書士法3条1項1号から5号までに規定する業務を行ってはならない。
  • 5協同組合等が他の法律に基づきその業務として登記手続の代理等を行う場合には、非司法書士の業務制限に抵触しない。
解説:誤っているのは本人確認に関する記述である。司法書士は、業務を行うに当たり、依頼の内容や依頼者の本人確認を行うべき職責を負い、司法書士法施行規則や日本司法書士会連合会の規則等により本人確認等の措置が求められている。なりすましによる不正登記の防止という観点からも重要である。非司法書士の取締りは司法書士法73条、罰則は78条による。
参照:司法書士法73条、78条、司法書士法施行規則
問80
司法書士の業務に関する記録及び報酬等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1司法書士は、依頼者から報酬を受けたときは、領収証を作成して依頼者に交付しなければならない。
  • 2司法書士の報酬の額は、法令によって一律に定められているものではなく、各司法書士が定めることができる。
  • ✔司法書士は、業務に関する帳簿及び関係書類を、業務を廃止した後は直ちに廃棄しなければならない。
  • 4司法書士は、その業務に関する帳簿及び関係書類を、事務所に備え付けなければならない。
  • 5司法書士は、事件簿を作成し、これを保存しなければならない。
解説:誤っているのは帳簿等の廃棄に関する記述である。司法書士は、業務に関する帳簿及び関係書類を作成の時から一定期間(事件簿は事件の完結後7年間等)保存しなければならず、業務を廃止した場合であっても直ちに廃棄することは認められない。報酬は平成15年の改正により自由化されている。
参照:司法書士法施行規則29条、30条、31条