商品売買・棚卸資産全27問中 8問を掲載
問1通常の販売目的で保有する棚卸資産について、期末の取得原価が100,000円、正味売却価額が80,000円であった。原則的な会計処理として正しいものはどれか。
- 1評価損20,000円を特別損失に計上する
- ✔評価損20,000円を売上原価に計上し、貸借対照表価額を80,000円とする
- 3評価益を計上する
- 4取得原価100,000円のまま据え置く
- 5評価損20,000円をその他有価証券評価差額金とする
解説:◆結論
通常の販売目的で保有する棚卸資産は「取得原価と正味売却価額のいずれか低い方」で評価し、簿価切下額は原則として売上原価とする。
◆計算
正味売却価額 80,000円 < 取得原価 100,000円
評価損 20,000円 → 売上原価
貸借対照表価額 = 80,000円
◆切下額の表示区分(例外がよく問われる)
原則 … 売上原価
原材料等で製造に関連し不可避的に発生 … 製造原価
臨時の事象に起因し、かつ多額 … 特別損失
◆考え方の核心
低価法の根拠は「収益性の低下による簿価の切下げ」。取得原価を回収できないことが明らかになった以上、その分を将来に繰り越さず当期の費用とするという費用配分の考え方であり、単なる時価評価ではない。
◆ここが狙われる
・トレーディング目的の棚卸資産は例外で、時価評価して差額を当期の損益(原則として売上高)とする。
・翌期の戻入れは洗替法・切放法の選択適用(種類ごとに継続適用)。
問2売上原価対立法(販売のつど売上原価勘定に振り替える方法)の特徴として正しいものはどれか。
- ✔販売のつど商品勘定から売上原価勘定へ振り替えるため、常に売上総利益が把握できる
- 2商品勘定に売価が記入される
- 3仕入勘定を用いて記帳する
- 4期末に決算整理仕訳を行わなければ売上原価が判明しない
- 5期中は売上高のみを記録する
解説:◆結論
売上原価対立法は、販売のつど商品勘定(原価)から売上原価勘定へ振り替える方法。期中いつでも売上原価と在庫残高、したがって売上総利益が把握できる。
◆4つの記帳方法の比較
三分法 … 仕入・売上・繰越商品。決算整理(しーくりくりしー)が必要。実務で最も一般的。
売上原価対立法 … 商品・売上・売上原価。販売のつど原価を振替。決算整理不要。
分記法 … 商品・商品販売益。販売のつど利益を計算するため手数がかかる。
総記法 … 商品勘定だけで処理。借方に原価、貸方に売価が混在する特殊な方法。
◆売上原価対立法の仕訳
仕入時:(借)商品 /(貸)買掛金
販売時:(借)売掛金 /(貸)売上 +(借)売上原価 /(貸)商品
◆どの方法でも最終利益は同じ
記帳方法の違いは「いつ・どの勘定で」情報を把握するかの違いであり、期末の財務諸表数値は一致する。収益認識会計基準の適用でも記帳方法自体は制約されない。
問3総記法を採用している場合、期末の商品勘定の貸方残高が200,000円、期末商品棚卸高が300,000円であった。決算整理で計上される商品販売益はいくらか。
- 1商品販売益は生じない
- 2200,000円
- 3100,000円
- ✔500,000円
- 5300,000円
解説:◆結論
総記法では商品勘定の借方に原価、貸方に売価が記入される。決算整理で期末棚卸高を加味して商品販売益を導く。
◆計算
商品販売益 = 商品勘定の貸方残高 + 期末商品棚卸高
= 200,000 + 300,000 = 500,000円
(借)商品 500,000 /(貸)商品販売益 500,000
この仕訳の結果、商品勘定は期末在庫300,000円の借方残高となる。
◆なぜこの式になるのか
商品勘定には「借方:期首+仕入(原価)」「貸方:売上(売価)」が混在する。売価には利益が含まれるため、売り上げるほど貸方が膨らむ。貸方残高になっているのは、利益部分が原価を上回って蓄積された状態を意味する。期末在庫を加えて調整すると、その蓄積分=販売益が出てくる。
◆借方残高の場合
期中の販売が少ないと借方残高のまま。この場合、商品販売益 = 期末棚卸高 − 借方残高 で計算する。符号処理を式で丸暗記せず、「整理後に商品勘定が期末在庫の借方残高になるよう差額で利益を出す」と理解しておくと確実。
問4期首商品100個(@100円)、当期仕入200個(@130円)、当期販売150個であった。移動平均法による期末商品棚卸高はいくらか。
- 117,000円
- 216,500円
- ✔18,000円
- 419,500円
- 515,000円
解説:◆結論
移動平均法は受入のつど平均単価を計算し直す方法。本問は期中受入が1回なので総平均法と同じ結果になる。
◆計算
平均単価 =(100個×@100+200個×@130)÷300個 = @120円
期末棚卸高 = 150個 × @120 = 18,000円
(先入先出法なら期末は新しい@130の150個で19,500円)
◆認められる評価方法(後入先出法は廃止済み)
個別法 … 宝石・不動産など個別性の強い資産
先入先出法 … 古い順に払い出すと仮定。期末在庫は新しい単価
平均原価法 … 総平均法(期間の総額で一括計算)と移動平均法(受入のつど計算)
売価還元法 … 取扱品種の多い小売業等
◆物価変動時の影響(理解しておくと選択肢が切れる)
物価上昇局面では、先入先出法は売上原価が小さく利益が大きく出る(古い安い単価が原価になる)。平均法はその中間。後入先出法は保有利益を排除できる長所があったが、期間損益と期末在庫の関係が実際の物の流れと乖離しうる等の理由で廃止された。
◆継続適用
いったん採用した方法はみだりに変更できない(継続性の原則)。
問5期首商品:原価100,000円・売価150,000円、当期仕入:原価700,000円・売価1,050,000円、期末商品売価300,000円である。売価還元法による期末商品棚卸高(原価)はいくらか。
- ✔200,000円
- 2150,000円
- 3250,000円
- 4300,000円
- 5180,000円
解説:◆結論
売価還元法は、期末商品の売価合計に原価率を乗じて期末棚卸高を求める方法。取扱品種の極めて多い小売業・卸売業で用いられる。
◆計算
原価率 =(期首原価+当期仕入原価)÷(期首売価+当期仕入売価等)
= 800,000 ÷ 1,200,000 = 2/3
期末棚卸高 = 期末売価 300,000 × 2/3 = 200,000円
◆なぜ売価から逆算するのか
品種が多すぎて品目ごとの原価把握が非現実的な業種では、値札(売価)ベースで在庫を管理する方が簡単。売価合計に平均原価率を掛ければ十分な精度で原価に還元できる、という実務的要請から認められている。
◆売価還元低価法(1級の頻出論点)
原価率の分母から「値下額・値下取消額」を除外して計算する。
分母が大きいままなので原価率が低くなり、期末在庫が小さく評価される=収益性の低下が自動的に反映される仕組み。通常の原価率と低価法原価率の2本立てで出題される。
◆ここが狙われる
・分母に含める項目(原始値入額・値上額・値上取消額)と除外する項目(低価法では値下額・値下取消額)の区別。
問6委託販売において、受託者から仕切精算書が到達した日に売上を計上する方法を採用している場合の説明として正しいものはどれか。
- 1積送諸掛は必ず売上原価に含める
- 2積送品勘定は使用しない
- 3受託者が商品を販売した日に売上を計上する
- ✔仕切精算書到達日基準は継続適用を条件に認められる簡便的な方法である
- 5商品を積送した日に売上を計上する
解説:◆結論
委託販売の収益認識は原則として「受託者が委託品を販売した日」。仕切精算書が販売のつど送付される場合に限り、継続適用を条件として仕切精算書到達日基準も認められてきた。
◆勘定の流れ(手許商品区分法)
積送時:(借)積送品 /(貸)仕入(原価で振替、積送諸掛も積送品に加算)
販売時:(借)積送売掛金等 /(貸)積送品売上(受託者の手数料等を控除した手取額または総額)
同時に:(借)仕入(売上原価)/(貸)積送品(販売分の原価を戻す)
◆積送諸掛の扱い
発送費 … 積送品原価に加算し、販売分に対応する額が売上原価になる
受託者側の販売諸掛 … 販売費として処理(または売上から控除する純額処理)
◆収益認識会計基準での位置づけ
委託販売では商品を受託者に引き渡しても支配は移転していない(受託者は代理人)ため、最終顧客への販売時点で収益を認識するのが原則という整理になる。
◆受託者側の処理
受託者は自分の売上とせず、受託販売勘定(委託者との債権債務)で処理し、受取手数料のみを収益とする。
問7試用販売における収益認識時点として原則的に正しいものはどれか。
- 1商品を仕入れた日
- 2商品を試用のため発送した日
- 3代金を回収した日
- ✔得意先が買取りの意思表示をした日
- 5試用期間が開始した日
解説:◆結論
試用販売は「得意先が買取りの意思表示をした日」に収益を認識する。発送しただけでは顧客は支配を獲得していない。
◆2つの記帳方法
手許商品区分法 … 発送時に試用品勘定へ原価で振替。買取意思表示時に売上を計上し、試用品から売上原価へ振り替える。
対照勘定法 … 発送時に備忘記録として(借)試用販売契約 /(貸)試用仮売上 を売価で記入。買取時に対照勘定を取り消して売上を計上する。
◆対照勘定法のポイント
対照勘定は貸借同額の備忘記録であり、財務諸表には表示されない。期末に残っている対照勘定は「試送中でまだ意思表示のない商品」を意味し、その原価を期末棚卸高に含める必要がある(手許にないが自社の在庫)。
◆返品された場合
意思表示前の返品は売買が成立していないので、対照勘定を取り消すだけ(手許商品区分法なら試用品を仕入に戻す)。
◆ここが狙われる
・期末棚卸高に「試送中の商品の原価」を含め忘れる誤り。
・収益認識のタイミングを発送時としてしまう誤り。
問8貨物代表証券(船荷証券)を取得した未着品に関する処理として正しいものはどれか。
- 1現品到着まで一切記帳しない
- 2未着品は棚卸資産に含めない
- 3必ず仕入勘定で処理する
- ✔未着品勘定で処理し、証券のまま転売した場合は未着品売上を計上する
- 5証券のまま転売することはできない
解説:◆結論
貨物代表証券(船荷証券等)を取得した時点で商品に対する権利を得ているため、未着品勘定(資産)に計上する。証券のまま転売すれば未着品売上を計上する。
◆勘定の流れ
証券取得時:(借)未着品 /(貸)買掛金等
現品引取時:(借)仕入 /(貸)未着品(引取費用は仕入に加算)
証券のまま転売:(借)売掛金等 /(貸)未着品売上
同時に(借)仕入(売上原価)/(貸)未着品
◆なぜ資産計上できるのか
貨物代表証券は運送中の商品を支配する権利を化体した証券であり、証券の引渡しが商品の引渡しと同じ効力を持つ。だから現物が到着していなくても在庫として扱い、棚卸資産に含める。
◆期末の扱い
期末に保有する貨物代表証券は未着品として棚卸資産に含める。期末商品棚卸高の集計では、手許商品+未着品+積送品+試送品(意思表示前)を合算する問題が頻出。
◆ここが狙われる
・「現品到着まで記帳しない」は誤り。証券取得時点で記帳する。
・一括法(仕入勘定で処理)と分割法(未着品勘定)の指示の読み分け。
収益認識・工事契約全39問中 8問を掲載
問1収益認識に関する会計基準において、一定の期間にわたり充足される履行義務と判定される要件に該当しないものはどれか。
- 1企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受する
- 2企業が顧客との契約における義務を履行することにより資産が生じ、当該資産を顧客が支配する
- 3企業が履行義務を充足することにより、他に転用できない資産が生じ、かつ履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有している
- ✔契約に重要な金融要素が含まれている
- 5上記のいずれかを満たす場合、進捗度に応じて収益を認識する
解説:◆結論
一定の期間にわたり充足される履行義務の要件は次の3つで、いずれかを満たせば進捗度に応じて収益を認識する。
①履行につれて顧客が便益を享受する(清掃サービス等)
②履行により生じる資産を顧客が支配する(顧客の土地上の建設等)
③他に転用できない資産が生じ、かつ履行完了部分について対価を収受する強制力ある権利がある
重要な金融要素は「取引価格の算定(ステップ3)」の論点であり、期間帰属の判定要件ではない。
◆5ステップの全体像
①契約の識別 →②履行義務の識別 →③取引価格の算定 →④履行義務への配分 →⑤充足時に収益認識
◆一定期間か一時点かで何が変わるか
一定期間…進捗度(原価比例法等)に応じて期間配分。進捗度を見積れないが原価回収が見込まれるなら原価回収基準。
一時点…支配移転の指標(支払を受ける権利、法的所有権、物理的占有、リスクと経済価値、検収)で判定。
◆ここが狙われる
・3要件は「いずれか」で足りる。
・工期がごく短い場合は完全充足時点で認識できる代替的取扱いがある。
問2工事収益総額10,000,000円、見積工事原価総額8,000,000円の長期請負工事について、原価比例法により進捗度を見積る。当期末までの発生工事原価が2,000,000円であるとき、当期に計上される工事収益はいくらか。
- ✔2,500,000円
- 28,000,000円
- 310,000,000円
- 43,000,000円
- 52,000,000円
解説:◆結論
原価比例法では、発生原価が見積総原価に占める割合を進捗度とし、工事収益総額にその進捗度を乗じて収益を計上する。
◆計算
進捗度 = 2,000,000 ÷ 8,000,000 = 25%
工事収益 = 10,000,000 × 25% = 2,500,000円
工事原価 = 2,000,000円 → 当期の工事利益 500,000円
◆2年度目以降の解き方(必ず出る)
累計収益(=総額×累計進捗度)を出し、前期までに計上した収益を控除して当期分を求める。累計で考えるのが鉄則。
◆進捗度が見積れない場合
発生原価の回収が見込まれる → 原価回収基準(発生原価と同額の収益、利益ゼロ)
回収も見込まれない → 収益を認識しない
◆関連論点:工事損失引当金
工事全体で損失が見込まれたら、その全額を直ちに損失処理する。すでに認識済みの損失を控除した残額を工事損失引当金として計上する。
問3収益認識に関する会計基準において、財またはサービスが「別個のもの」として履行義務に識別されるための要件として正しいものはどれか。
- 1販売単価が独立して設定されていればよい
- ✔顧客が単独で便益を享受でき、かつ契約上の他の約束と区分して識別できる
- 3対価が固定額であること
- 4引渡時期が同一でないこと
- 5顧客が同時に複数を購入していないこと
解説:◆結論
「別個の財・サービス」と判定されるには次の2つを"両方"満たす必要がある。
①それ単独で(または容易に入手できる他の資源と組み合わせて)顧客が便益を享受できる
②契約に含まれる他の約束と区分して識別できる
◆満たさない場合はどうなるか
他の財と結合して単一の履行義務として扱う。たとえば建設工事における資材と施工は、単独では顧客に便益をもたらさず、結合して初めて建物という成果物になるため、まとめて1つの履行義務とする。
◆なぜ履行義務を分けるのか
履行義務ごとに充足の時期が異なるから。機械の販売(一時点)と2年間の保守サービス(一定期間)を1つの契約で結んだ場合、分けなければ保守分まで販売時に収益計上してしまう。分けたうえで独立販売価格の比で取引価格を配分する。
◆ここが狙われる
・「販売単価が独立して設定されている」だけでは要件を満たさない(価格の付け方の問題ではなく、顧客が便益を得られるかの問題)。
・ポイント、製品保証(サービス型)、追加購入オプションなども別個の履行義務になりうる。
問4原価@600円の商品1,000個を@1,000円で返品権付きで販売した。過去の実績から5%の返品が見込まれる。計上される売上高と返金負債の組合せとして正しいものはどれか。
- 1売上950,000円・返金負債30,000円
- 2売上1,000,000円・返金負債50,000円
- ✔売上950,000円・返金負債50,000円
- 4売上970,000円・返金負債30,000円
- 5売上1,000,000円・返金負債0円
解説:◆結論
返品が見込まれる部分は「企業が権利を得ると見込む対価」に含まれないため、収益に計上せず返金負債とする。
◆計算(3点セットで仕訳する)
売上高 = 1,000個 × 95% × @1,000 = 950,000円
返金負債 = 50個 × @1,000 = 50,000円
返品資産 = 50個 × @600 = 30,000円(売上原価から控除)
(借)現金等 1,000,000 /(貸)売上 950,000、返金負債 50,000
(借)売上原価 570,000、返品資産 30,000 /(貸)商品 600,000
◆変動対価の見積方法
期待値法(確率加重平均:類似取引が多数ある場合)
最頻値法(最も可能性の高い単一金額:結果が2つしかない場合など)
より適切に予測できる方法を選ぶ。
◆見積りの制限
不確実性が解消される時に、計上済み収益の重大な戻入れが生じない可能性が高い部分に限って取引価格に含める。楽観的な見積りで収益を先食いすることを防ぐ規定。
◆その他の変動対価
値引き、リベート、返金、インセンティブ、業績ボーナス、ペナルティ、売上割引など。
問5商品10,000円を現金販売し、次回以降使用できる1,000ポイント(1ポイント=1円)を付与した。ポイントの使用見込率は90%である。当期の売上として計上される金額に最も近いものはどれか。
- 110,900円
- ✔9,174円
- 39,000円
- 410,000円
- 59,100円
解説:◆結論
ポイントは顧客に「重要な権利」を与えるものなので独立した履行義務となり、独立販売価格の比で取引価格を配分する。
◆計算
独立販売価格:商品10,000円、ポイント 1,000pt×90%=900円、合計10,900円
商品への配分 = 10,000 × 10,000/10,900 ≒ 9,174円(売上)
ポイントへの配分 = 10,000 × 900/10,900 ≒ 826円(契約負債)
◆ポイント使用時
使用されたポイントの割合に応じて契約負債を取り崩し、収益に振り替える。使用見込率が変わった場合は、その時点で累積的に調整する。
◆考え方の核心
ポイント付与は「値引きの前渡し」であり、実質的には商品代金の一部を将来の取引の対価として受け取っていると見る。だから今期の売上を満額計上せず、将来分を繰り延べる。従来の引当金処理(ポイント引当金を費用計上)とは発想がまったく異なる点に注意。
◆非行使部分
権利行使されないと見込む部分(本問なら10%)は、顧客の権利行使のパターンに比例して収益を認識する。パターンを見積れない場合は、行使の可能性が極めて低くなった時点で収益とする。
問6企業が他社の商品を顧客に販売する取引において、代理人に該当すると判定された場合の収益計上方法として正しいものはどれか。
- ✔顧客から受け取る額から仕入先に支払う額を控除した純額を収益として計上する
- 2仕入先に支払う額を収益として計上する
- 3顧客から受け取る対価の総額を収益として計上する
- 4総額を売上、純額を売上原価として両建て計上する
- 5収益を計上しない
解説:◆結論
代理人と判定される場合は、受け取る対価の総額から仕入先に支払う額を控除した「純額(手数料相当額)」を収益とする。
◆根本的な判定基準
「顧客に移転される前に、企業が当該財・サービスを支配しているか」。支配していれば本人(総額表示)、していなければ代理人(純額表示)。
◆本人であることを示す指標
①財を提供する主たる責任を有している
②在庫リスクを負っている(引渡前・返品時)
③価格の設定に裁量権がある
逆に固定の手数料を受け取るだけなら代理人を示唆する。
◆なぜ重要か
利益額は同じでも売上高が大きく変わるため、企業規模の見え方や売上高利益率が全く違ってくる。EC・プラットフォーム事業では特に判定が問題となる。消化仕入(売上仕入)の百貨店取引などが典型例。
◆ここが狙われる
・「総額か純額か」の判定と、その根拠となる支配の有無。
・在庫リスクや価格裁量権がないのに総額計上している、という誤りのパターン。
問7収益を認識したが、対価に対する権利が他の条件(他の履行義務の充足など)に依存しており、まだ無条件の請求権となっていない場合に計上される勘定科目はどれか。
解説:◆結論
収益を認識したが、対価を受け取る権利が時の経過以外の条件に依存している場合は「契約資産」。無条件(時の経過だけで支払期日が到来する)になれば「顧客との契約から生じた債権(売掛金)」に振り替える。
◆3つの勘定の関係
契約資産 … 履行済みだが請求権がまだ無条件でない
債権(売掛金)… 請求権が無条件になった
契約負債 … 対価を先に受け取ったが履行義務が未充足(従来の前受金)
◆典型例
2つの履行義務があり、両方を完了して初めて請求できる契約で、1つ目だけ完了した段階 → 収益は計上するが請求できないので契約資産。
◆なぜ区別するのか
契約資産は「他の履行義務を果たせなければ請求できない」という履行リスクを伴うのに対し、債権は信用リスクだけを負う。リスクの性質が違うため、財務諸表利用者に区別して示す必要がある。
◆表示上の注意
貸倒引当金の設定は契約資産にも必要。表示科目は「工事未収入金」等の適切な名称に置き換えてもよい。
問8ストック・オプション100個(1個=1株、公正な評価単価@1,000円)を付与した。対象勤務期間は2年で、期末までに1年が経過し、失効見込数は10個である。当期の株式報酬費用はいくらか。
- 140,000円
- 2100,000円
- ✔45,000円
- 490,000円
- 550,000円
解説:◆結論
株式報酬費用 = 公正な評価単価 ×(付与数 − 失効見込数)× 期間按分
◆計算
@1,000 × 90個 × 1年/2年 = 45,000円
(借)株式報酬費用 45,000 /(貸)新株予約権 45,000
◆なぜ費用計上するのか
ストック・オプションの付与は、従業員から労働サービスという財貨を受け取り、その対価としてオプションを与える取引。無償だから費用ゼロではなく、受け取ったサービスの価値を費用として認識する。
◆公正な評価単価は付与日で固定
付与日に算定した公正な評価単価は、その後の株価変動があっても見直さない。変動するのは「失効見込数」の方であり、見積りが変われば当期にまとめて累積差額を修正する。
◆権利確定後の処理
権利行使 → 新株予約権+払込金額を資本金等へ振替
権利不行使のまま失効 → 新株予約権戻入益(特別利益)
権利確定日後に失効しても、すでに計上した株式報酬費用は戻し入れない(サービスは受領済みだから)。
◆条件変更
評価単価が増加した場合は増加分を残存期間で追加計上。下落しても費用の減額はしない。
金融商品・債権債務全52問中 8問を掲載
問1その他有価証券(取得原価1,000,000円、期末時価1,200,000円)について全部純資産直入法を採用している。法定実効税率30%のとき、期末に計上されるその他有価証券評価差額金はいくらか。
- ✔140,000円
- 21,200,000円
- 3200,000円
- 40円
- 560,000円
解説:◆結論
その他有価証券の評価差額は損益に流さず純資産へ直入する。全部純資産直入法では、評価差額に税効果を加味した後の金額が「その他有価証券評価差額金」となる。
◆計算
評価差額 = 1,200,000 − 1,000,000 = 200,000円(評価差益)
繰延税金負債 = 200,000 × 30% = 60,000円
評価差額金 = 200,000 × 70% = 140,000円
(借)投資有価証券 200,000 /(貸)繰延税金負債 60,000、その他有価証券評価差額金 140,000
◆なぜ損益にしないのか
その他有価証券は事業遂行上の必要から保有するもので、直ちに売却・換金するとは限らない。時価変動は「投資のリスクから解放されていない」ため、純利益ではなくその他の包括利益とするのが概念フレームワークの考え方。
◆ここが狙われる
・税効果の相手勘定は法人税等調整額ではなく評価差額金そのもの(純資産項目内で調整)。
・評価差損の場合は繰延税金"資産"。部分純資産直入法なら評価差損だけ損失計上。
・翌期首に洗替処理を行う(取得原価に戻す)。
問2転換社債型新株予約権付社債を区分法により処理する場合の記述として正しいものはどれか。
- 1払込金額の全額を新株予約権として処理する
- 2払込金額の全額を資本金とする
- 3払込金額の全額を社債として処理する
- 4払込金額を仮受金として処理する
- ✔払込金額を社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分して処理する
解説:◆結論
区分法では払込金額を「社債の対価部分」と「新株予約権の対価部分」に区分し、社債部分は償却原価法、新株予約権部分は純資産の部に計上する。
◆一括法との違い
一括法…払込金額全額を社債として処理。転換時は社債の帳簿価額をそのまま資本金等へ振替。
区分法…社債+新株予約権に区分。転換時は社債の帳簿価額と新株予約権の帳簿価額の合計を資本金等へ振替。
いずれの方法でも転換によって損益は生じない。
◆適用できる方法の違い(重要)
転換社債型新株予約権付社債 … 一括法・区分法の選択適用
それ以外の新株予約権付社債 … 区分法が強制
転換社債型は「社債と新株予約権が一体で、権利行使時に社債が償還され現物出資される」ため一括処理も認められる。
◆ここが狙われる
・権利行使されずに失効した新株予約権は「新株予約権戻入益」として特別利益に計上する。
問3額面10,000,000円の社債を9,500,000円で発行した(クーポン利子率年3%、実効利子率年4%、年1回利払)。利息法による第1期末の社債の帳簿価額はいくらか。
- ✔9,580,000円
- 29,600,000円
- 310,000,000円
- 49,880,000円
- 59,500,000円
解説:◆結論
利息法では「期首帳簿価額 × 実効利子率」が当期の社債利息であり、これとクーポン支払額との差額が償却額として帳簿価額に加算される。
◆計算
社債利息(利息配分額)= 9,500,000 × 4% = 380,000円
クーポン支払額 = 10,000,000 × 3% = 300,000円
償却額 = 380,000 − 300,000 = 80,000円
期末帳簿価額 = 9,500,000 + 80,000 = 9,580,000円
(借)社債利息 380,000 /(貸)現金預金 300,000、社債 80,000
◆定額法との違い
定額法は金利調整差額を期間で均等配分するだけの容認処理。利息法は毎期の帳簿価額に一定率を掛けるため、償却額が年々増加していく(複利的)。原則は利息法。
◆ここが狙われる
・2年目は「9,580,000×4%」と、前期末の帳簿価額を使う。額面に掛けない。
・買入償還では、その時点の償却原価と買入価額の差が社債償還損益になる。
問4ヘッジ会計に関する記述として正しいものはどれか。
- 1日本基準では時価ヘッジが原則的方法である
- ✔繰延ヘッジではヘッジ手段に係る損益を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで純資産の部に繰り延べる
- 3予定取引はヘッジ対象とすることができない
- 4ヘッジ手段の時価評価差額は常に当期の損益とする
- 5ヘッジ会計の適用にあたり事前・事後の有効性の判定は不要である
解説:◆結論
日本基準は繰延ヘッジが原則。ヘッジ手段(デリバティブ等)の評価差額を、税効果を調整のうえ「繰延ヘッジ損益」として純資産の部に繰り延べ、ヘッジ対象の損益が認識される時点で同時に損益とする。
◆なぜ繰り延べるのか
ヘッジは対象と手段の損益を相殺して価格変動リスクを消す取引。ところがデリバティブだけ先に時価評価すると、対象の損益がまだ出ていないため期間損益が歪む。そこで手段側の損益を対象側に合わせて繰り延べ、同一期間に対応させる。
◆時価ヘッジとの違い
時価ヘッジ … ヘッジ"対象"の相場変動を損益に反映させて、手段の損益と対応させる方法。その他有価証券をヘッジ対象とする場合等に限られる例外。
◆有効性の判定
原則としてヘッジ開始時および開始後も継続して判定し、変動額の比率が概ね80%〜125%の範囲にあれば有効とされる。実行可能性の高い予定取引もヘッジ対象にできる。
問5その他有価証券に評価差損が生じた場合の税効果会計上の取扱いとして正しいものはどれか。
- 1繰延税金負債を計上する
- 2評価差損は繰延資産とする
- ✔繰延税金資産を計上する
- 4税効果は認識しない
- 5法人税等調整額を通じて損益に計上する
解説:◆結論
その他有価証券の評価差損は将来減算一時差異なので繰延税金資産を計上する。ただし相手勘定は法人税等調整額ではなく、その他有価証券評価差額金である。
◆なぜ法人税等調整額を使わないのか
評価差額そのものが損益を経由せず純資産に直入されるから。税効果も「純資産直入項目の中で完結させる」のが原則で、これを損益に流すと税引後利益が歪んでしまう。
◆同じ扱いをする項目(純資産項目内で税効果を調整)
その他有価証券評価差額金/繰延ヘッジ損益/退職給付に係る調整累計額/土地再評価差額金
◆ここが狙われる
・「税効果=法人税等調整額」と機械的に覚えていると必ず引っかかる。損益に影響する一時差異かどうかで相手勘定が変わる。
・繰延税金資産には回収可能性の検討が必要(企業の分類1〜5に応じてスケジューリング可能な範囲で計上)。
問6額面10,000,000円の社債を9,400,000円で取得し満期保有目的債券に分類した。償還までの期間は5年、定額法による償却原価法を適用する場合、取得1年後の貸借対照表価額はいくらか。
- 110,000,000円
- ✔9,520,000円
- 39,880,000円
- 49,600,000円
- 59,400,000円
解説:◆結論
満期保有目的債券は時価評価せず、取得差額が金利調整差額と認められる場合は償却原価法により、償還までの期間にわたり帳簿価額を額面に近づけていく。
◆計算(定額法)
取得差額 = 10,000,000 − 9,400,000 = 600,000円
年間償却額 = 600,000 ÷ 5年 = 120,000円
1年後の帳簿価額 = 9,400,000 + 120,000 = 9,520,000円
(借)投資有価証券 120,000 /(貸)有価証券利息 120,000
◆原則は利息法
利息法…期首帳簿価額 × 実効利子率 で利息を配分し、クーポンとの差額を償却。理論的に正しい。
定額法…期間で均等配分する容認処理。試験では指示に従う。
◆なぜ時価評価しないのか
満期まで保有する意思と能力があるなら、途中の時価変動は実現しない。額面で償還されることが確定しているため、時価評価しても投資成果の測定に意味がないという考え方による。
◆分類変更の厳しさ
正当な理由なく売却すると、残りの満期保有目的債券をすべてその他有価証券に振り替えなければならない。分類の恣意的な使い分けを封じるための規定。
問7市場価格のない株式(取得原価5,000,000円)について、発行会社の財政状態が著しく悪化し、実質価額が1,500,000円まで低下した。会計処理として正しいものはどれか。
- 1処理不要
- ✔3,500,000円の評価損を計上し、帳簿価額を1,500,000円とする
- 3翌期に洗替処理により戻し入れる
- 4回復可能性があれば必ず処理不要となる
- 5評価損をその他有価証券評価差額金とする
解説:◆結論
市場価格のない株式は、実質価額(1株当たり純資産×株数)が取得原価に比べて著しく低下(おおむね50%以上)した場合、回復可能性が十分な証拠で裏付けられる場合を除き減損処理する。
◆計算
実質価額 1,500,000円 は取得原価 5,000,000円 の30% → 著しい低下
評価損 = 5,000,000 − 1,500,000 = 3,500,000円(特別損失)
子会社株式なら「関係会社株式評価損」等の科目を用いる。
◆時価のある有価証券との比較
時価あり … 時価が著しく下落(おおむね50%以上)し回復見込みが不明なら減損(強制評価減)
時価なし … 実質価額が著しく低下したら減損
いずれも切放法で処理し、減損後の金額が翌期の取得原価となる(洗替えしない)。
◆なぜ切放法か
減損は「投資の失敗が確定した」という判断に基づく処理だから。翌期に戻し入れると、確定させた損失を再び未確定に戻すことになり整合しない。
◆ここが狙われる
・「回復可能性があれば処理不要」と即断しない。回復可能性は十分な証拠で裏付けられる必要があり、立証責任は企業側にある。
問8貸付金10,000円(残存期間2年、当初の約定利子率年5%)について条件緩和を行い、受取利息を年200円に減額した(元本は2年後一括返済)。キャッシュ・フロー見積法による貸倒引当金の設定額に最も近いものはどれか。
- ✔約558円
- 2約1,000円
- 3約600円
- 40円
- 5約300円
解説:◆結論
貸倒懸念債権の見積方法は2つ。本問はキャッシュ・フロー見積法で、将来CFを「当初の約定利子率」で割り引いた金額と債権額の差を貸倒見積高とする。
◆計算
1年後 200 ÷ 1.05 = 190.5円
2年後(200+10,000)÷ 1.05² = 9,251.7円
現在価値合計 = 9,442.2円
貸倒引当金 = 10,000 − 9,442.2 ≒ 558円
◆債権の3区分(必ずセットで整理)
一般債権 … 貸倒実績率法(過去の実績率を債権残高に乗じる)
貸倒懸念債権 … 財務内容評価法 or キャッシュ・フロー見積法
破産更生債権等 … 財務内容評価法(担保・保証控除後の全額を貸倒見積高)
◆財務内容評価法との違い
財務内容評価法:(債権額−担保処分見込額−保証回収見込額)× 一定率
CF見積法:将来CFの現在価値との差額
条件緩和により金利減免を受けた債権は、CF見積法の方が経済的実態を表す。
◆なぜ当初の約定利子率で割り引くのか
条件緩和後の低い利率で割り引くと現在価値が高く出て損失が小さくなる。当初契約時の期待どおりに回収できないという事実を反映させるため、当初の利率を用いる。
固定資産・減損・リース全66問中 8問を掲載
問1ある資産グループの帳簿価額は1,200,000円、割引前将来キャッシュ・フロー総額は1,100,000円、正味売却価額は800,000円、使用価値は900,000円である。当期に計上すべき減損損失はいくらか。
- 11,200,000円
- 2400,000円
- ✔300,000円
- 4100,000円
- 50円(減損損失は計上しない)
解説:◆結論
減損は「①兆候 → ②認識(割引前CFで判定)→ ③測定(回収可能価額まで減額)」の3ステップ。認識では割引"前"、測定では割引"後"を使う点が最大のポイント。
◆計算
①認識:割引前将来CF 1,100,000円 < 帳簿価額 1,200,000円 → 認識する
②測定:回収可能価額=max(正味売却価額800,000、使用価値900,000)=900,000円
③減損損失=1,200,000 − 900,000 = 300,000円
◆なぜ割引前で判定するのか
毎期の時価評価ではなく、投資額の回収が見込めなくなった場合に限って帳簿価額を切り下げるという慎重な立場(減損の存在が相当程度確実な場合に限定)を取っているため、認識のハードルを割引前CFで高めに設定している。
◆ここが狙われる
・「回収可能価額=いずれか高い方」(企業は有利な方を選べるため)。低い方と混同しやすい。
・減損損失は原則として特別損失。処理後の帳簿価額を基礎に残存耐用年数で償却を続ける。
・日本基準では減損損失の戻入れは禁止(IFRSはのれん以外で戻入れあり)。
問2解約不能のリース期間が5年、リース物件の経済的耐用年数が6年、リース料総額の現在価値が見積現金購入価額の80%の場合、リース取引の分類として正しいものはどれか。
- 1現在価値基準を満たすためファイナンス・リース取引に該当する
- 2いずれの基準も満たさず判定不能である
- 3オペレーティング・リース取引に該当する
- ✔経済的耐用年数基準を満たすためファイナンス・リース取引に該当する
- 5所有権移転ファイナンス・リース取引に該当する
解説:◆結論
ファイナンス・リースの判定は「①現在価値基準(概ね90%以上)」「②経済的耐用年数基準(概ね75%以上)」のいずれかを満たすかで行う。本問は①が80%で不成立だが、②が 5年÷6年=83.3% ≧ 75% で成立するためファイナンス・リースとなる。
◆さらに所有権移転か否かの判定
次の3つのいずれかに当てはまれば「所有権移転」、どれにも当てはまらなければ「所有権移転外」。
・所有権移転条項がある ・割安購入選択権がある ・特別仕様である
本問はいずれもないので所有権移転外ファイナンス・リースとなる。
◆この区別が効いてくる場面
所有権移転…経済的耐用年数で償却、残存価額も自己所有資産と同様
所有権移転外…リース期間を耐用年数とし、残存価額ゼロで償却
判定を誤ると減価償却費が全て狂うため、判定→分類→償却の順で必ず確認する。
◆ここが狙われる
・「いずれか一方を満たせばよい」(両方ではない)。
・重要性が乏しい少額・短期リースは賃貸借処理でよいという例外。
問3資産除去債務の会計処理として正しいものはどれか。
- 1除去に要する将来キャッシュ・フローの割引前の額を負債計上する
- ✔割引価値を負債計上し、同額を関連する有形固定資産の帳簿価額に加算する
- 3割引価値を負債計上し、同額を繰延資産として計上する
- 4除去時に初めて費用処理する
- 5負債計上せず注記のみとする
解説:◆結論
発生時に割引後の金額で負債計上し、同額を関連する有形固定資産の帳簿価額に加算する(資産と負債の両建て)。
◆その後の流れ(3点セットで覚える)
①資産計上額 → 減価償却を通じて耐用年数にわたり費用配分
②時の経過による債務の増加(利息費用)= 期首の負債帳簿価額 × 当初の割引率
→ 当該資産の減価償却費と同じ区分(売上原価または販管費)に計上
③履行時の実際支出との差額 → 履行差額として、同じく減価償却費と同じ区分に計上
◆なぜ両建てにするのか
除去債務は資産を取得した時点で不可避的に生じる。除去費用も含めて初めてその資産の取得原価と捉えるべきという「資産負債の両建処理」の考え方による。
◆ここが狙われる
・利息費用に使う割引率は「当初の」割引率(変更後の率ではない)。
・見積り変更でCFが増加→変更時点の割引率、減少→負債計上時の割引率。方向で使う率が変わる。
問4市場販売目的のソフトウェアに係る制作費の会計処理として正しいものはどれか。
- 1すべて無形固定資産に計上する
- 2販売数量にかかわらず定額法のみで償却する
- 3販売開始時に一括して費用処理する
- 4すべて研究開発費として発生時に費用処理する
- ✔最初に製品化された製品マスターの完成までは研究開発費とし、それ以降の制作費は無形固定資産に計上する
解説:◆結論
市場販売目的ソフトウェアは「最初に製品化された製品マスターの完成」が研究開発の終了時点。それまでは研究開発費として費用処理、それ以降の制作費は無形固定資産に計上する。
◆3類型の比較(必ずセットで覚える)
研究開発目的 … 全額を研究開発費(発生時費用)
市場販売目的 … 製品マスター完成までは研究開発費、以後の機能改良は資産計上(著しい改良は研究開発費)
自社利用目的 … 将来の収益獲得または費用削減が確実な場合に資産計上、原則5年以内の定額法
◆市場販売目的の償却(頻出計算)
見込販売数量(または見込販売収益)に基づく方法で償却するが、残存有効期間(原則3年以内)に基づく均等配分額が下限となる。つまり両者を計算して大きい方を採る。
◆ここが狙われる
・研究開発費は資産計上が一切認められない(繰延資産の「開発費」とは別物)。
・特定の研究開発目的にのみ使用し他に転用できない機械装置は、取得時に全額研究開発費。
問5国庫補助金3,000,000円を受け取り、10,000,000円の機械を取得して直接減額方式により圧縮記帳を行った。この場合の記述として正しいものはどれか。
- 1機械の帳簿価額は10,000,000円のままである
- ✔固定資産圧縮損3,000,000円を計上し、機械の帳簿価額は7,000,000円となる
- 3国庫補助金3,000,000円は資本剰余金に計上する
- 4圧縮記帳により課税所得が永久に免除される
- 5圧縮積立金3,000,000円を計上し、機械の帳簿価額は10,000,000円となる
解説:◆結論
直接減額方式では固定資産圧縮損(特別損失)を計上して帳簿価額を直接減らす。よって機械は7,000,000円となり、以後この金額を基礎に減価償却する。
◆計算と仕訳の流れ
(借)現金預金 3,000,000 /(貸)国庫補助金受贈益 3,000,000
(借)固定資産圧縮損 3,000,000 /(貸)機械 3,000,000
受贈益と圧縮損が相殺され、当期の課税所得は増加しない。
◆圧縮記帳の本質は「課税の繰延べ」
帳簿価額が小さくなる分だけ将来の減価償却費が減り、その分だけ将来の課税所得が増える。つまり税金が免除されるのではなく、後年度に繰り延べられているだけである。
◆積立金方式との比較
直接減額方式 … 帳簿価額を減額、圧縮損を計上
積立金方式 … 帳簿価額はそのまま。剰余金の処分で圧縮積立金を計上し、税効果(将来加算一時差異→繰延税金負債)を認識。積立額は圧縮額×(1−実効税率)。
問6取得原価1,000,000円、残存価額ゼロ、耐用年数5年の機械について級数法を適用した場合、1年目の減価償却費はいくらか。
- ✔333,333円
- 2200,000円
- 3166,667円
- 4250,000円
- 5400,000円
解説:◆結論
級数法は算術級数(1+2+…+n)を用いて償却額を逓減させる加速償却法。
◆計算
総項数 = 1+2+3+4+5 = 15
1年目 = 1,000,000 × 5/15 = 333,333円
2年目 = 1,000,000 × 4/15 = 266,667円
以降 3/15、2/15、1/15 と逓減し、5年で全額償却される。
◆各償却方法の比較
定額法 … 毎期同額。時の経過に応じて減価
定率法 … 期首帳簿価額 × 償却率。初期に多く、徐々に逓減(200%定率法が主流)
級数法 … 算術級数で逓減。定率法と同じく加速償却だが、必ず耐用年数内に全額償却される
生産高比例法 … 利用度に比例。航空機・鉱業用設備など総利用可能量が確定できる資産
◆加速償却の理論的根拠
新しいうちは能率が高く収益貢献が大きい一方、年数が経つほど修繕費が増える。償却費を初期に多く配分すれば、償却費+修繕費の合計が平準化されるという考え方。
◆ここが狙われる
・定率法は理論上いつまでも残高が残るため償却保証額と改定償却率で調整するが、級数法にはその問題がない。
問7取得原価800,000円、減価償却累計額600,000円の車両を下取りに出し、下取価額150,000円として新車両1,200,000円を購入した(差額は現金支払)。計上される固定資産売却損益はいくらか。
- ✔売却損50,000円
- 2売却益50,000円
- 3売却益150,000円
- 4損益は生じない
- 5売却損200,000円
解説:◆結論
買換えでは「旧資産の売却」と「新資産の取得」を分けて考える。売却損益は旧資産の帳簿価額と下取価額の差で判定する。
◆計算
旧車両の帳簿価額 = 800,000 − 600,000 = 200,000円
下取価額 150,000円 との差 50,000円 → 固定資産売却損
新車両の取得原価 = 1,200,000円、現金支払額 = 1,200,000 − 150,000 = 1,050,000円
◆仕訳
(借)減価償却累計額 600,000、固定資産売却損 50,000、車両(新)1,200,000
(貸)車両(旧)800,000、現金預金 1,050,000
◆下取価額が時価より高い場合の注意
実質的な値引きが含まれているため、時価を超える部分は売却益ではなく新資産の取得原価から控除する。そうしないと売却益と資産の過大計上が同時に生じてしまう。
◆関連する処理
除却…処分見込価額を貯蔵品に計上し、帳簿価額との差を固定資産除却損
廃棄…処分価値なし。帳簿価額全額が固定資産廃棄損(+廃棄費用)
交換…同種・同用途なら譲渡資産の帳簿価額を引き継ぎ、損益を認識しない
問8会社法および企業会計基準上、繰延資産として計上することが認められていないものはどれか。
- 1社債発行費
- 2株式交付費
- ✔研究開発費
- 4開業費
- 5創立費
解説:◆結論
繰延資産として計上できるのは次の5つのみ。研究開発費は資産計上が明確に禁止されている。
◆5つの繰延資産と償却期間
株式交付費 … 3年以内の定額法
社債発行費 … 社債の償還までの期間にわたり利息法(継続適用を条件に定額法も可)
創立費 … 5年以内の定額法
開業費 … 5年以内の定額法
開発費 … 5年以内の定額法等(新技術・新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓)
◆繰延資産の性格
すでに代価の支払が完了し役務の提供も受けているが、その効果が将来にわたって及ぶため、費用を繰り延べたもの。換金価値のある財産ではないため、原則は支出時の費用処理で、資産計上は容認処理にすぎない。
◆「開発費」と「研究開発費」の違い(最頻出)
繰延資産の開発費 … 新市場の開拓費、新経営組織の採用費など。資産計上できる。
研究開発費(会計基準)… 新製品・新技術の研究開発。発生時費用処理が強制され、資産計上は不可。
名前が似ているが扱いは正反対なので必ず区別する。
引当金・退職給付全22問中 8問を掲載
問1連結財務諸表における未認識数理計算上の差異の取扱いとして正しいものはどれか。
- 1注記のみで貸借対照表には計上しない
- 2発生時に全額を当期の退職給付費用として処理する
- 3利益剰余金に直接加減する
- 4繰延資産として資産計上する
- ✔税効果を調整のうえ、その他の包括利益累計額(退職給付に係る調整累計額)として純資産の部に計上する
解説:◆結論
連結上は未認識数理計算上の差異・未認識過去勤務費用を、税効果を調整のうえ「退職給付に係る調整累計額」としてその他の包括利益累計額に計上する。その結果、退職給付に係る負債は積立状況(退職給付債務−年金資産)そのものを示す。
◆個別と連結の違いを整理
個別:退職給付引当金 = 退職給付債務 − 年金資産 − 未認識項目
連結:退職給付に係る負債 = 退職給付債務 − 年金資産(未認識を控除しない)
差額はその他の包括利益累計額に計上され、費用処理されるにつれて組替調整(リサイクリング)で当期純利益に含められる。
◆退職給付費用の構成(頻出)
勤務費用 + 利息費用(期首債務×割引率)− 期待運用収益(期首年金資産×長期期待運用収益率)± 数理差異・過去勤務費用の当期費用処理額
◆ここが狙われる
・利息費用は「期首」債務に割引率を乗じる(期末ではない)。
・割引率は安全性の高い長期債券の利回りを基礎とする(自社の借入利率ではない)。
問2引当金の計上要件に該当しないものはどれか。
- 1金額を合理的に見積ることができること
- 2発生の可能性が高いこと
- ✔支出が翌期中に確定していること
- 4将来の特定の費用または損失であること
- 5その発生が当期以前の事象に起因すること
解説:◆結論
引当金の計上要件は次の4つ。支出時期が確定している必要はない(確定していればそれは未払金等であって引当金ではない)。
①将来の特定の費用または損失であること
②その発生が当期以前の事象に起因すること
③発生の可能性が高いこと
④金額を合理的に見積ることができること
◆なぜこの4要件なのか
利益操作を防ぐため。恣意的な引当金の設定(=秘密積立金)を封じる一方、当期の収益に対応すべき将来の費用は当期に負担させる(費用収益対応・発生主義)というバランスを取っている。
◆分類の整理
評価性引当金 … 貸倒引当金(資産から控除)
負債性引当金
└債務性あり … 賞与引当金、退職給付引当金、製品保証引当金
└債務性なし … 修繕引当金、特別修繕引当金
◆ここが狙われる
・「発生の可能性が高い」に達しない段階の債務保証等は偶発債務として注記のみ。
・修繕引当金は流動負債、特別修繕引当金は固定負債。
問3数年ごとに行われる大規模修繕に備えて設定する特別修繕引当金の貸借対照表上の表示区分として正しいものはどれか。
- 1流動負債
- ✔固定負債
- 3固定資産の控除項目
- 4純資産
- 5流動資産の控除項目
解説:◆結論
特別修繕引当金は数年ごとの大規模修繕に備えるもので、支出まで1年を超えるため固定負債に表示する。毎期の通常修繕に備える修繕引当金は流動負債。
◆引当金の表示区分の整理
貸倒引当金 … 資産の控除項目(評価性引当金)
賞与引当金・修繕引当金・製品保証引当金 … 流動負債
退職給付引当金・特別修繕引当金・役員退職慰労引当金 … 固定負債
1年基準(ワン・イヤー・ルール)で流動・固定を分ける。
◆債務性による分類
債務性あり(条件付債務)… 賞与引当金、退職給付引当金、製品保証引当金など:相手方への支払義務がある
債務性なし … 修繕引当金、特別修繕引当金:自社の資産に対する将来の支出であり、特定の相手への義務ではない
債務でなくても、4要件を満たせば引当金として計上される点が特徴。
◆4要件の確認
①将来の特定の費用・損失 ②当期以前の事象に起因 ③発生の可能性が高い ④金額を合理的に見積れる
修繕引当金は「当期の使用によって修繕の必要性が生じた」ことが②に該当する。
問4役員賞与の会計処理として正しいものはどれか。
- 1剰余金の処分として利益剰余金から直接減額する
- 2支払時に全額を費用とする
- 3注記のみで足りる
- ✔発生した会計期間の費用として処理する
- 5資本剰余金から減額する
解説:◆結論
役員賞与は発生した会計期間の費用として処理する(役員賞与引当金を計上)。利益処分として剰余金から直接減額する処理は現行制度では認められない。
◆なぜ費用処理なのか
役員賞与は役員の職務執行の対価であり、従業員給与と経済的性格は同じ。株主総会決議を経るという手続の違いだけで費用でなくなるのはおかしい、という考え方から費用処理に統一された。
◆従業員の賞与引当金の計算(頻出)
支給対象期間のうち当期に属する月数分を引当計上する。
例:6月支給予定3,000,000円、対象期間12月〜5月、3月末決算
→ 3,000,000 × 4か月/6か月 = 2,000,000円
◆科目の使い分け
支給額が確定していない → 賞与引当金
支給額は確定しているが未払い → 未払従業員賞与(未払費用・未払金)
確定しているかどうかで引当金か確定債務かが分かれる。
◆ここが狙われる
・役員賞与を「利益剰余金から直接減額」とする記述は誤り。
・賞与引当金繰入は販管費(製造部門の従業員分は製造原価)。
問5期首の退職給付債務10,000,000円、期首の年金資産6,000,000円、勤務費用500,000円、割引率2%、長期期待運用収益率3%である。当期の退職給付費用はいくらか(未認識項目の費用処理はない)。
- 1500,000円
- 2680,000円
- ✔520,000円
- 4320,000円
- 5700,000円
解説:◆結論
退職給付費用 = 勤務費用 + 利息費用 − 期待運用収益(± 差異等の費用処理額)
◆計算
利息費用 = 期首退職給付債務 10,000,000 × 割引率2% = 200,000円
期待運用収益 = 期首年金資産 6,000,000 × 長期期待運用収益率3% = 180,000円
退職給付費用 = 500,000 + 200,000 − 180,000 = 520,000円
◆各要素の意味
勤務費用 … 当期の労働により新たに発生した退職給付の現在価値
利息費用 … 時の経過により債務の割引が1年分巻き戻る増加額
期待運用収益 … 年金資産が生むと期待される収益(債務側の負担を軽くする)
◆「期首×率」がルール
利息費用・期待運用収益はいずれも期首残高に率を乗じる。期末残高を使う誤りが最頻出。
◆差異が生じる場所
実際運用収益が期待と違う/債務の実績が見積りと違う → 数理計算上の差異
制度改定で債務が増減 → 過去勤務費用
これらの当期費用処理額を上式に加減して退職給付費用が完成する。
◆B/Sとのつながり
退職給付引当金の増加 = 退職給付費用 − 掛金拠出額(-直接支払額)という関係で貸借がつながる。
問6退職給付制度の改定により退職給付債務が増加した場合に生じる過去勤務費用の原則的な処理として正しいものはどれか。
- 1利益剰余金から直接減額する
- ✔平均残存勤務期間以内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理する
- 3発生時に全額を費用処理する
- 4注記のみで足りる
- 5資産計上して永久に償却しない
解説:◆結論
過去勤務費用は退職給付水準の改定等により生じた債務の増減額。原則として平均残存勤務期間以内の一定年数で按分して費用処理する(発生時の全額費用処理も可)。
◆数理計算上の差異との違い
過去勤務費用 … 制度「改定」による債務の変動(給付水準の引上げ・引下げ)
数理計算上の差異 … 「見積りと実績のズレ」や「見積りの変更」による変動(運用実績、割引率変更、退職率の変化等)
発生原因が違うだけで、遅延認識(期間按分)の仕組みは共通。
◆連結上の扱い
未認識部分は税効果調整のうえ「退職給付に係る調整累計額」としてその他の包括利益累計額に計上。費用処理につれて組替調整で純利益へ振り替わる。
◆なぜ遅延認識が認められるのか
給付水準の引上げは従業員の勤労意欲向上を通じて将来の収益獲得に貢献すると期待される。効果が及ぶ期間(残存勤務期間)に費用を対応させるという考え方。
◆按分開始時期
発生年度から費用処理する方法と、翌年度から処理する方法があり、継続適用を条件にいずれも認められる。
問7従業員数が比較的少ない小規模企業等において認められる退職給付の簡便法として適切なものはどれか。
- 1年金資産のみを計上する方法
- 2退職給付債務を計上しない方法
- 3支払時に費用処理する方法(現金主義)
- ✔期末自己都合要支給額を退職給付債務とする方法
- 5退職給付債務を時価評価する方法
解説:◆結論
小規模企業等(従業員300人未満が目安)では、期末自己都合要支給額を退職給付債務とみなす方法などの簡便法が認められる。現金主義(支払時費用処理)は認められない。
◆簡便法の例
・期末自己都合要支給額をそのまま退職給付債務とする方法
・自己都合要支給額に平均残存勤務期間等に基づく係数を乗じる方法
・原則法の直近の数値を基礎に比例的に算定する方法
◆なぜ簡便法が認められるのか
原則法は退職率・死亡率・昇給率・割引率を使った数理計算が必要で、小規模企業には負担が重い。また従業員数が少ないと統計的な数理計算自体の信頼性が低い(大数の法則が働かない)ため、簡便な近似で足りるとされた。
◆簡便法でも発生主義
「支払時に費用処理」は発生主義に反するため、規模にかかわらず認められない。簡便法はあくまで債務の測定方法の簡略化であり、引当計上そのものは必要。
◆原則法との行き来
簡便法から原則法への変更は可能だが、その差額は損益処理する。恣意的な行き来を防ぐため合理的な理由が必要。
問8退職給付信託を設定した場合の会計処理として正しいものはどれか。
- 1信託財産は簿価のまま年金資産とする
- 2信託財産は退職給付債務に加算する
- 3信託財産は年金資産に含めず、通常の投資として計上する
- 4退職給付信託は認められていない
- ✔信託財産は年金資産に該当し、退職給付債務から控除する(設定時に時価と帳簿価額の差額を損益とする)
解説:◆結論
一定の要件を満たす退職給付信託の信託財産は年金資産に該当し、退職給付債務から控除する。設定時には信託した資産を時価評価し、帳簿価額との差額を損益(退職給付信託設定損益)として認識する。
◆退職給付信託とは
企業が保有する資産(多くは持合株式等の有価証券)を、退職給付の支払いのためだけに使う信託に拠出する仕組み。企業年金の積立不足の解消策として用いられる。
◆年金資産と認められる要件
①退職給付以外に使用できないこと
②事業主から法的に分離されていること
③事業主への返還・受益者の変更等が制限されていること 等
要件を満たさなければ、単なる自社保有資産のままで債務から控除できない。
◆設定時の処理
帳簿価額1,000・時価1,500の株式を信託設定
→ 年金資産1,500として債務から控除し、差額500を設定益として計上。
含み益のある株式を拠出すると、その含み益がこの時点で実現する点が特徴的。
◆ここが狙われる
・「信託財産は年金資産に含めない」「簿価のまま年金資産とする」という誤り。
純資産・株式報酬全27問中 8問を掲載
問1自己株式に関する会計処理として誤っているものはどれか。
- 1自己株式の処分差損はその他資本剰余金から減額する
- ✔自己株式の取得に要した付随費用は取得原価に含める
- 3取得した自己株式は取得原価をもって純資産の部の株主資本から控除する
- 4自己株式の処分差益はその他資本剰余金に計上する
- 5自己株式の消却額はその他資本剰余金から減額する
解説:◆結論
自己株式の取得に要した付随費用(手数料等)は取得原価に含めず、支払手数料等として営業外費用に計上する。他の資産と扱いが異なる点が引っかけ。
◆なぜ取得原価に含めないのか
自己株式の取得は資産の取得ではなく「株主との資本取引(資本の払戻し)」と位置づけられる。付随費用は資本取引そのものではなく財務費用なので、損益計算書に計上する。
◆自己株式の処理まとめ
取得…取得原価で純資産の部の株主資本から控除(マイナス表示)
処分…処分差益・差損はその他資本剰余金で処理(損益にしない)
消却…帳簿価額をその他資本剰余金から減額
期末…その他資本剰余金が負の値になったら繰越利益剰余金から減額してゼロにする
◆ここが狙われる
・「処分差益は特別利益」は誤り。資本取引だから損益にしない。
・新株発行と自己株式処分を同時に行う場合は、払込金額を株式数按分してそれぞれ処理する。
問2剰余金の分配可能額の算定において、分配可能額から控除しない項目はどれか。
- 1最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合の処分対価
- 2のれん等調整額のうち一定の超過額
- ✔その他資本剰余金の残高
- 4自己株式の帳簿価額
- 5その他有価証券評価差額金が借方残高(評価差損)の場合の当該金額
解説:◆結論
分配可能額は「剰余金の額(その他資本剰余金+その他利益剰余金)」を出発点とする。したがってその他資本剰余金の残高は控除項目ではなく、加算の基礎そのもの。
◆計算の骨格
剰余金の額
−自己株式の帳簿価額
−最終事業年度末日後に自己株式を処分した場合の処分対価
−のれん等調整額のうち一定の超過額
−その他有価証券評価差額金が借方残高(評価差損)の場合の当該金額
−土地再評価差額金が借方残高の場合の当該金額
=分配可能額
◆考え方の核心
債権者保護のため「配当できる額」に上限を設ける制度。未実現の評価益(貸方の評価差額金)は加算せず、未実現の評価損(借方)は控除するという非対称な扱いになっているのは、保守的に会社財産の流出を抑えるためである。
◆ここが狙われる
・自己株式は資産ではなく資本の払戻しなので、その帳簿価額分だけ分配余力が減る。
・臨時計算書類の承認を受ければ、期中損益を分配可能額に反映できる。
問3当期純利益105,000,000円、優先配当額5,000,000円、期中平均発行済株式数210,000株(うち期中平均自己株式数10,000株)の場合の1株当たり当期純利益(EPS)はいくらか。
- ✔500円
- 250円
- 3476円
- 4525円
- 51,000円
解説:◆結論
EPS =(当期純利益 − 優先配当額)÷ 期中平均普通株式数
分子から優先株主の取り分を除き、分母から自己株式を除くのがポイント。
◆計算
分子 = 105,000,000 − 5,000,000 = 100,000,000円
分母 = 210,000株 − 10,000株 = 200,000株
EPS = 100,000,000 ÷ 200,000 = 500円
◆なぜ自己株式を除くのか
自己株式は会社自身が保有しており、外部株主に帰属する利益の計算には含めない(配当も受けない)。分母は「普通株主が保有する株式数」でなければならない。
◆潜在株式調整後EPS
新株予約権や転換社債など希薄化効果のある潜在株式がある場合に併記する。
転換社債型の場合:分母に転換により増加する株式数を加算、分子に転換で不要となる支払利息の税引後相当額を加算。
希薄化効果を持たない(EPSが増加してしまう)ものは算定に含めない。
問4貸借対照表の純資産の部において「評価・換算等差額等(連結ではその他の包括利益累計額)」に区分されないものはどれか。
- 1その他有価証券評価差額金
- 2為替換算調整勘定
- 3土地再評価差額金
- ✔新株予約権
- 5繰延ヘッジ損益
解説:◆結論
新株予約権は株主資本にも評価・換算等差額等にも属さず、純資産の部で独立の区分として表示される。
◆純資産の部の構造(連結)
Ⅰ株主資本(資本金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式)
Ⅱその他の包括利益累計額(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整累計額)
Ⅲ株式引受権
Ⅳ新株予約権
Ⅴ非支配株主持分
※個別ではⅡを「評価・換算等差額等」と呼び、Ⅴは存在しない。
◆なぜ新株予約権を独立させるのか
権利行使されれば株主資本になるが、失効すれば戻入益として損益になる。現時点では株主に帰属する持分ではないため、株主資本には含められない。返済義務もないので負債でもない。この中間的性格ゆえに独立区分となる。
問5権利行使期間が満了し、行使されずに失効した新株予約権300,000円の処理として正しいものはどれか。
- 1そのまま純資産に残す
- 2その他資本剰余金に振り替える
- 3利益剰余金に直接加算する
- 4資本金に振り替える
- ✔新株予約権戻入益として特別利益に計上する
解説:◆結論
権利行使されずに失効した新株予約権は「新株予約権戻入益」として、失効が確定した期の特別利益に計上する。
◆新株予約権のライフサイクル
①発行(有償)… 払込金額を純資産の部に「新株予約権」として計上
②権利行使 … 払込金額+新株予約権の帳簿価額を資本金等へ振替(損益は生じない)
③失効 … 新株予約権戻入益(特別利益)
◆なぜ純資産に計上するのか
返済義務がないため負債ではない。一方、まだ株主ではないので株主資本にも含められない。この中間的性格から、純資産の部に独立区分として表示する。
◆自己株式を交付した場合
新株発行ではないため資本金は増加しない。払込金額+新株予約権の帳簿価額と自己株式の帳簿価額との差額を、自己株式処分差額としてその他資本剰余金で処理する。
◆ストック・オプションとの関係
ストック・オプションも新株予約権の一種。無償で付与されるが、労働サービスの対価として公正な評価額を株式報酬費用に計上し、相手勘定を新株予約権とする。
問6資本金20,000,000円、資本準備金3,000,000円、利益準備金1,950,000円の会社が、繰越利益剰余金を財源に1,000,000円の配当を行う。積み立てるべき利益準備金はいくらか。
- ✔50,000円
- 20円
- 3250,000円
- 4100,000円
- 5150,000円
解説:◆結論
準備金の積立額は次の①②のいずれか小さい方。
①配当額 × 1/10
②資本金 × 1/4 − 既存の準備金(資本準備金+利益準備金)
◆計算
① 1,000,000 × 1/10 = 100,000円
② 20,000,000 × 1/4 = 5,000,000 −(3,000,000+1,950,000)= 50,000円
小さい方の 50,000円 を利益準備金として積み立てる。
◆なぜ上限があるのか
準備金は債権者保護のための会社財産の留保。しかし無制限に積み立てさせる必要はなく、資本金の4分の1に達すれば十分な担保があるとみて、そこで積立義務が止まる。
◆財源による積立先の違い
その他利益剰余金を財源とする配当 → 利益準備金
その他資本剰余金を財源とする配当 → 資本準備金
財源と積立先の性格を揃えるのがルール。
◆関連論点
分配可能額の範囲内でしか配当できない。中間配当や臨時計算書類による期中損益の反映も出題される。
問7その他資本剰余金を財源として配当を行った場合の処理として正しいものはどれか。
- 1その他利益剰余金から減額する
- ✔資本準備金を積み立てる
- 3準備金の積立ては不要である
- 4利益準備金を積み立てる
- 5資本金を増加させる
解説:◆結論
配当の財源がその他資本剰余金なら資本準備金を、その他利益剰余金なら利益準備金を積み立てる。財源と積立先の性格を一致させるのが原則。
◆株主資本内部の振替の特徴
資本金 ⇄ 資本準備金 ⇄ その他資本剰余金
利益準備金 ⇄ その他利益剰余金
いずれも純資産総額は変わらず、損益も生じない。株主総会等の決議により行われる。
◆資本と利益の区別の原則
企業会計原則の一般原則「資本取引・損益取引区分の原則」により、資本剰余金と利益剰余金は混同してはならない。資本剰余金は株主からの払込資本、利益剰余金は稼いだ利益であり、性格が根本的に異なるからである。
◆例外的に混ざる場面
その他資本剰余金が負の値になった場合は、期末に繰越利益剰余金から減額してゼロにする。また欠損填補のためにその他資本剰余金を用いることも認められる。これらは会社法上の要請による限定的な例外。
◆連結上の注意
資本剰余金が負となった場合も同様に利益剰余金から減額する。
問8新株発行と自己株式の処分を同時に行った(募集株式の発行等)場合の払込金額の処理として正しいものはどれか。
- 1全額をその他資本剰余金とする
- ✔自己株式の処分に対応する部分を自己株式の帳簿価額と相殺し、差額をその他資本剰余金とする
- 3全額を自己株式から控除する
- 4全額を新株予約権とする
- 5全額を資本金とする
解説:◆結論
新株発行と自己株式の処分を同時に行う場合、払込金額を株式数の比で両者に按分する。新株部分は資本金等、自己株式部分は帳簿価額と相殺して差額をその他資本剰余金とする。
◆計算手順
①払込金額 × 新株数/交付株式総数 → 資本金・資本準備金
②払込金額 × 自己株式数/交付株式総数 → 自己株式の帳簿価額と相殺
③②の差額 → 自己株式処分差損益(その他資本剰余金)
◆処分差損が出た場合の特則
自己株式処分差損が生じ、その他資本剰余金が負になるケースでは、まず①の払込資本の増加額から差損を控除する処理(増加する払込資本から減額)が求められる場面もある。基本は「その他資本剰余金で処理し、期末に負なら繰越利益剰余金から補填」。
◆なぜ按分するのか
1回の募集で新株と自己株式を同時に交付しても、法的性格は「新株の発行」と「自己株式の処分」という別個の行為。それぞれの会計処理(資本金計上/処分差額処理)を正しく適用するために分ける必要がある。
◆ここが狙われる
・全額を資本金にしてしまう誤り、全額を処分差額にしてしまう誤り。
・新株予約権の行使に自己株式を交付する場合も同じ発想で処理する。
企業結合・連結・持分法全43問中 8問を掲載
問1P社はS社株式の80%を9,000,000円で取得した。支配獲得日のS社の諸資産・諸負債の時価評価後の純資産は10,000,000円である。のれんを10年で定額償却する場合、支配獲得後1年目に計上するのれん償却額はいくらか。
- ✔100,000円
- 2200,000円
- 31,000,000円
- 490,000円
- 5のれんは発生しない
解説:◆結論
のれんは「取得原価 − 取得した純資産の親会社持分」で求める。必ず時価評価後の純資産で計算する点が最重要。
◆計算
S社純資産(時価評価後)10,000,000 × 80% = 8,000,000円
のれん = 9,000,000 − 8,000,000 = 1,000,000円
年間償却額 = 1,000,000 ÷ 10年 = 100,000円(販売費及び一般管理費)
◆のれんの本質
超過収益力の対価。買収価額が純資産を上回るのは、ブランドや顧客基盤など個別に識別できない価値を評価しているため。日本基準は20年以内で規則償却するが、IFRSは非償却で減損テストのみという違いがある。
◆ここが狙われる
・時価評価による評価差額を純資産に含め忘れると、のれんを過大計算してしまう(最頻出ミス)。
・貸方差額(買収価額<純資産持分)は「負ののれん発生益」として発生年度の特別利益に一括計上(償却しない)。
・のれんの減損は、のれん単独ではなくより大きな単位で判定する。
問2持分法の会計処理として誤っているものはどれか。
- 1被投資会社の当期純利益のうち投資会社の持分相当額を投資有価証券に加算する
- 2未実現利益は投資会社の持分相当額を消去する
- 3被投資会社から受け取った配当金は投資有価証券から減額する
- 4投資差額(のれん相当額)は投資勘定に含め、償却額は持分法による投資損益に含めて処理する
- ✔被投資会社の資産・負債・収益・費用を持分割合に応じて合算する
解説:◆結論
持分法は投資勘定と「持分法による投資損益」の2つだけで処理する"一行連結"。被投資会社の各項目を持分割合で合算する比例連結は、日本基準では採用していない。
◆処理の全体像
被投資会社の当期純利益 × 持分割合 → 投資有価証券を増加、持分法による投資損益(営業外損益)
受取配当金 → 投資有価証券を減額(受取配当金を取り消す)
投資差額(のれん相当額)の償却 → 持分法による投資損益に含める
◆連結との比較(頻出)
未実現利益:連結は全額消去、持分法は投資会社の持分相当額のみ消去
のれん償却:連結は「のれん償却額」(販管費)、持分法は「持分法による投資損益」(営業外)
最終的な当期純利益は連結でも持分法でも同じになる(一行で表示するか展開するかの違い)。
◆適用範囲
非連結子会社と関連会社(原則として議決権20%以上50%以下、影響力基準)。
問3取得と判定された企業結合における会計処理として正しいものはどれか。
- 1取得関連費用は取得原価に含める
- 2取得原価は被取得企業の帳簿価額の合計とする
- 3のれんは償却してはならない
- ✔取得原価は識別可能資産・負債の企業結合日時点の時価を基礎として配分する
- 5被取得企業の利益剰余金をそのまま引き継ぐ
解説:◆結論
取得と判定された企業結合はパーチェス法により、取得原価を企業結合日の識別可能資産・負債の時価を基礎として配分(PPA)し、配分後の残余をのれん(または負ののれん発生益)とする。
◆取得原価に含めるもの・含めないもの
含める … 支払対価の時価(現金、交付株式の時価等)
含めない … 取得関連費用(デューデリジェンス費用、仲介手数料等)→ 発生時の費用
かつては取得原価に含めていたため、古い知識との混同に注意。
◆企業結合の3類型
取得 … パーチェス法(時価で受入れ、のれん計上)
共通支配下の取引 … 帳簿価額で引継ぎ(企業集団内部の取引)
共同支配企業の形成 … 帳簿価額で引継ぎ、移転損益を認識しない
◆ここが狙われる
・被取得企業の利益剰余金は引き継がない(取得の対価を払って資産・負債を買ったと考えるため)。
・逆取得(法律上の存続会社が会計上の取得企業でない場合)の判定。
問4親会社が子会社へ商品を販売した際の期末在庫に含まれる未実現利益の処理(ダウンストリーム)として正しいものはどれか。
- 1消去は不要である
- 2親会社持分相当額のみ消去する
- 3非支配株主持分のみに負担させる
- 4全額を消去し、親会社持分と非支配株主持分に按分負担させる
- ✔全額を消去し、全額を親会社が負担する
解説:◆結論
ダウンストリーム(親→子)では未実現利益を全額消去し、全額を親会社が負担する(全額消去・親会社負担方式)。
◆アップストリームとの対比(必ずセットで)
ダウンストリーム … 全額消去・親会社負担
アップストリーム(子→親) … 全額消去・持分按分負担
→ 消去額のうち非支配株主持分割合は「非支配株主持分」と「非支配株主に帰属する当期純利益」に負担させる
◆なぜ全額消去するのか
連結財務諸表は企業集団を一つの組織とみる。集団内部での売買から生じた利益は、外部に販売されるまで実現していないため、持分割合にかかわらず全額を消去する必要がある。負担を誰にさせるかは、その利益を計上した会社が誰かで決まる。
◆ここが狙われる
・期首在庫の未実現利益は当期に実現するので戻し入れる(利益を増やす)。期末分は新たに消去(利益を減らす)。差額が当期の影響額。
・棚卸資産だけでなく、土地(非償却資産は売却まで消去継続)や償却資産(減価償却費も修正)でも出題される。
・消去に伴い繰延税金資産(売却元の実効税率)を計上する。
問5P社はS社株式を20%保有していたが、当期に追加で50%を取得し支配を獲得した。連結財務諸表上の取扱いとして正しいものはどれか。
- 1従来保有分は持分法のまま据え置く
- 2従来保有分は取得原価のまま合算する
- 3差額は資本剰余金とする
- 4差額はのれんに含める
- ✔支配獲得日の時価で従来保有分を評価替えし、差額を段階取得に係る差損益として特別損益に計上する
解説:◆結論
連結上、支配獲得日に従来保有していた株式を時価で再測定し、帳簿価額との差額を「段階取得に係る差損益」として特別損益に計上する。
◆考え方
支配を獲得した時点で、それまでの投資はいったん清算され、改めて支配を獲得するための投資に置き換わったとみる(みなし売却)。したがって、そこまでの含み損益をここで実現させる。
◆計算の順序
①従来保有分を支配獲得日の時価で評価替え → 差額を段階取得に係る差損益
②取得原価 = 再測定後の従来保有分 + 追加取得分
③のれん = 取得原価 −(時価評価後の子会社純資産 × 親会社持分比率)
◆個別との違い(頻出)
個別財務諸表では評価替えを行わず、単純に取得原価の合計を子会社株式とする。差損益が出るのは連結上だけ。
◆関連論点
関連会社(持分法)から子会社(連結)への移行も同じ扱い。逆に、一部売却して支配は継続する場合は損益を認識せず資本剰余金で処理する。
問6分離元企業が事業を分離し、対価として子会社株式のみを受け取った(投資が継続していると判定される)場合の分離元企業の個別財務諸表上の処理として正しいものはどれか。
- 1移転損益を全額その他資本剰余金とする
- 2移転した事業の時価で株式を計上し、移転損益を認識する
- 3移転損益を特別損失として計上する
- 4受取った株式は取得原価をゼロとする
- ✔移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて株式を計上し、移転損益は認識しない
解説:◆結論
受取対価が子会社株式等のみで「投資が継続している」と判定される場合は、移転した事業に係る株主資本相当額を株式の取得原価とし、移転損益を認識しない。
◆判定の分かれ目
投資が清算された(現金等を受け取った)→ 受取対価の時価と株主資本相当額の差を移転損益として認識
投資が継続している(子会社株式・関連会社株式を受け取った)→ 移転損益を認識せず、帳簿価額を引き継ぐ
◆なぜ損益を認識しないのか
事業を手放したように見えても、子会社株式という形で引き続きその事業に対する支配・影響力を持っている。実質的に投資が続いているのだから、そこで利益を実現させるのはおかしい、という考え方(投資の継続・清算という判断基準)。
◆分離先企業側の処理
取得と判定されればパーチェス法で時価評価しのれんを計上、共通支配下の取引なら帳簿価額で引継ぎ。
◆関連論点
会社分割、株式交換、合併も同じ「投資の継続・清算」の枠組みで理解すると整理しやすい。
問7親会社が子会社を吸収合併する場合(共通支配下の取引)の会計処理として正しいものはどれか。
- 1のれんを必ず計上する
- 2子会社の資産・負債を合併期日の時価で受け入れる
- 3移転損益を特別利益に計上する
- 4取得原価を株式の時価とする
- ✔子会社の資産・負債を合併直前の適正な帳簿価額で受け入れる
解説:◆結論
共通支配下の取引は企業集団内部での資産・負債の移転にすぎないため、原則として移転直前の適正な帳簿価額により引き継ぎ、時価評価ものれん計上も行わない。
◆なぜ帳簿価額なのか
同一の株主に支配されている企業間の取引は、独立した第三者間取引ではなく、実質的には集団内での付け替え。時価評価を認めると、グループ内取引だけで自由に利益を作り出せてしまう。
◆親会社が子会社を吸収合併する場合の個別上の処理
受け入れた子会社の純資産(帳簿価額)のうち親会社持分に相当する額と、抱合せ株式(消滅する子会社株式)の帳簿価額との差額
→「抱合せ株式消滅差損益」として特別損益に計上
非支配株主に株式を交付した部分は、時価により処理し払込資本の増加とする。
◆企業結合の3類型の整理
取得 … パーチェス法(時価、のれんあり)
共通支配下の取引 … 帳簿価額で引継ぎ
共同支配企業の形成 … 帳簿価額で引継ぎ、移転損益を認識しない
◆連結上
共通支配下の取引は連結上すべて消去されるため、連結財務諸表には影響しない。
問8親会社の売掛金のうち子会社に対するものが1,000,000円あり、親会社はこれに対し2%の貸倒引当金を設定している。連結修正仕訳として正しいものはどれか。
- 1売掛金と買掛金のみ相殺する
- 2貸倒引当金のみ減額する
- 3貸倒引当金20,000円を増額する
- ✔売掛金と買掛金1,000,000円を相殺し、貸倒引当金20,000円を減額する
- 5修正は不要である
解説:◆結論
内部債権債務は相殺消去し、それに対応して設定されていた貸倒引当金も過大となるので取り崩す。
◆仕訳
(借)買掛金 1,000,000 /(貸)売掛金 1,000,000
(借)貸倒引当金 20,000 /(貸)貸倒引当金繰入 20,000
◆成果連結で消去する主なもの
・内部売上高と内部仕入高(売上原価)
・内部債権債務(売掛金と買掛金、受取手形と支払手形、貸付金と借入金)
・内部の受取利息と支払利息、受取配当金
・内部取引に係る貸倒引当金
・棚卸資産・固定資産の未実現利益
◆翌期以降の扱い
連結修正は帳簿外で行うため、前期に行った修正を毎期やり直す「開始仕訳」が必要。損益項目は「利益剰余金当期首残高」として引き継ぐ。貸倒引当金の消去も、期首残高の修正と当期の繰入の修正に分けて考える。
◆税効果
貸倒引当金の消去や未実現利益の消去は連結固有の一時差異を生むため、繰延税金資産・負債を計上する。
税効果会計・税金全16問中 8問を掲載
問1当期に減価償却限度超過額1,000,000円が生じた。法定実効税率は30%、繰延税金資産の回収可能性に問題はない。当期末に計上される繰延税金資産の金額として正しいものはどれか。
- ✔300,000円
- 2繰延税金資産は計上されない
- 31,000,000円
- 4700,000円
- 530,000円
解説:◆結論
減価償却限度超過額は「会計上は費用にしたが税務上はまだ損金にならない」ズレなので、将来の課税所得を減らす効果を持つ将来減算一時差異にあたる。よって繰延税金資産を計上する。
◆計算
1,000,000円 × 30% = 300,000円
(借)繰延税金資産 300,000 /(貸)法人税等調整額 300,000
◆考え方の核心
税効果会計は「税金の期間配分」。当期の法人税等の額が会計上の利益と対応していないとき、法人税等調整額で調整して税引後利益を適正化する。繰延税金資産は"将来の税金の前払い"、繰延税金負債は"将来の税金の未払い"とイメージすると迷わない。
◆ここが狙われる
・将来減算(繰延税金資産)/将来加算(繰延税金負債)の判別。減価償却超過額・貸倒引当金超過額・棚卸評価損否認・未払事業税は減算、圧縮積立金・その他有価証券評価差益は加算。
・繰延税金資産は回収可能性の検討が必須。回収可能性がなければ計上できない(企業の分類1〜5)。
・交際費・寄附金の損金不算入や受取配当金の益金不算入は永久差異で対象外。
問2繰延税金資産の回収可能性の判断において考慮しないものはどれか。
- ✔配当政策および株主構成
- 2タックス・プランニングに基づく将来の課税所得
- 3収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得
- 4将来加算一時差異の解消見込額
- 5過去の課税所得の推移や重要な税務上の欠損金の有無
解説:◆結論
回収可能性は次の3つの観点から判断する。配当政策や株主構成は判断要素ではない。
①収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得
②タックス・プランニングに基づく将来の課税所得(含み益のある資産の売却計画等)
③将来加算一時差異の解消見込額
◆企業の分類(5区分)
分類1:期末に将来減算一時差異を十分上回る課税所得が安定的 → 原則として全額回収可能
分類2:安定的に課税所得はあるが臨時的原因を除いた額が十分でない → スケジューリング可能な額
分類3:業績が不安定 → 概ね5年内のスケジューリング分
分類4:重要な税務上の欠損金が生じている等 → 翌期1年分
分類5:重要な欠損金が継続 → 原則として回収可能性なし
◆なぜ厳格に判断するのか
繰延税金資産は「将来利益が出て初めて意味を持つ資産」。赤字続きの会社が計上すると、実体のない資産で純資産が水増しされてしまうため、回収可能性の判断が厳しく求められる。
問3決算日後に税率が引き下げられることが決算日以前に公布された場合、繰延税金資産・負債の取扱いとして正しいものはどれか。
- 1従来の税率のまま据え置く
- ✔改正後の税率により再計算し、差額を法人税等調整額として当期の損益に計上する
- 3再計算は翌期から行う
- 4改正後の税率で再計算し、差額を利益剰余金に直接加減する
- 5注記のみで足りる
解説:◆結論
繰延税金資産・負債は「回収または支払が行われると見込まれる期の税率」で計算する。決算日以前に改正税法が公布されていれば、改正後の税率で再計算する。
◆差額の処理
原則 … 法人税等調整額(当期の損益)
純資産直入項目に係るもの(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益等)… 当該純資産項目で調整
◆なぜ将来の税率を使うのか
税効果会計の目的は、将来その一時差異が解消したときに実際に増減する税額を今のうちに資産・負債として認識すること。解消時に適用される税率でなければ、認識する金額が実態と合わなくなる。
◆法定実効税率の算式(頻出)
{法人税率×(1+住民税率)+事業税率}÷(1+事業税率)
分母の(1+事業税率)は、事業税が支払時に損金算入されることによる節税効果を織り込むための調整である。
◆注記
税率変更により繰延税金資産・負債の金額が修正された場合は、その旨と修正額を注記する。
問4税効果会計において一時差異に該当しないもの(永久差異)はどれか。
- 1未払事業税の否認額
- 2棚卸資産評価損の否認額
- 3貸倒引当金の繰入限度超過額
- ✔受取配当金の益金不算入額
- 5減価償却限度超過額
解説:◆結論
受取配当金の益金不算入は、将来にわたって解消することのない永久差異であり、税効果会計の対象外。
◆一時差異と永久差異の見分け方
一時差異 … 会計と税務で「認識のタイミング」がズレているだけ。いずれ解消する。
例:減価償却超過額(税務では後の年度で損金になる)、貸倒引当金繰入超過額、未払事業税
永久差異 … 会計と税務で「そもそも扱いが違う」。永遠に解消しない。
例:受取配当金の益金不算入、交際費の損金不算入、寄附金の損金算入限度超過額、罰科金
◆判定のコツ
「この差はいつか反対方向に戻るか?」と自問する。戻るなら一時差異、戻らないなら永久差異。減価償却超過額は将来の償却・除却で必ず損金化されるが、交際費の否認は何年経っても損金にならない。
◆永久差異の影響
税効果の対象にはならないが、法定実効税率と実際の税負担率の乖離要因になる(税率差異の注記で開示される)。
◆ここが狙われる
・一時差異の例の中に永久差異を1つ混ぜる出題が定番。上の代表例を即答できるようにする。
問5税務上の繰越欠損金に係る税効果会計の取扱いとして正しいものはどれか。
- 1必ず全額の繰延税金資産を計上する
- ✔一時差異に準ずるものとして、回収可能性を検討したうえで繰延税金資産を計上する
- 3一時差異ではないため税効果を認識しない
- 4純資産に直接計上する
- 5繰延税金負債を計上する
解説:◆結論
税務上の繰越欠損金は「一時差異に準ずるもの」として扱い、将来の課税所得により回収が見込まれる範囲で繰延税金資産を計上する。
◆なぜ繰延税金資産になるのか
繰越欠損金は将来の課税所得と相殺でき、その分将来の税金支払いを減らす。つまり「将来の税金の前払い」と同じ経済効果を持つため、回収可能性がある限り資産性が認められる。
◆回収可能性の判断が特に厳しい理由
欠損金が生じている=業績が悪化している企業である可能性が高い。将来黒字化する見込みが立たなければ、欠損金は使われないまま期限切れになる。企業の分類(分類4・5あたり)に応じて計上可能額が大きく制限される。
◆計上のイメージ
繰越欠損金1,000,000円、実効税率30%、将来5年の課税所得見込みで全額使用可能
→ 繰延税金資産300,000円
使用見込みが600,000円分しかなければ180,000円まで(残りは評価性引当額として注記)。
◆ここが狙われる
・「一時差異ではないので税効果を認識しない」は誤り(準ずるものとして対象)。
・「必ず全額計上」も誤り(回収可能性の検討が必須)。
問6税抜方式を採用している場合、決算時に仮受消費税800,000円と仮払消費税500,000円を精算する。計上される勘定として正しいものはどれか。
- ✔未払消費税300,000円
- 2雑収入300,000円
- 3仮払消費税300,000円
- 4租税公課300,000円
- 5未収消費税300,000円
解説:◆結論
税抜方式では仮受消費税と仮払消費税を期末に相殺し、差額を未払消費税等(または未収還付消費税等)として計上する。
◆計算
仮受消費税800,000 − 仮払消費税500,000 = 未払消費税300,000円
(借)仮受消費税 800,000 /(貸)仮払消費税 500,000、未払消費税 300,000
◆税抜方式の考え方
消費税は最終消費者が負担し、企業は「預かって納める」だけの立場。だから売上・仕入に含めず、預り金(仮受)と立替金(仮払)として損益から切り離す。損益計算書に消費税の影響が出ないのが原則的な姿。
◆税込方式との違い
税込方式では売上・仕入に消費税が含まれ、納付額は租税公課として費用計上される。損益に影響する点が異なるが、最終利益は理論上ほぼ一致する。
◆仮払が多い場合
輸出企業や大型設備投資をした期は仮払>仮受となり、未収還付消費税等(流動資産)を計上する。
◆ここが狙われる
・相殺後の差額の科目(未払消費税等/未収還付消費税等)。
・控除対象外消費税等が生じる場合の例外的な費用処理。
問7その他有価証券(取得原価800,000円、期末時価600,000円)について全部純資産直入法・法定実効税率30%を適用する場合の、その他有価証券評価差額金の金額はいくらか。
- 10円
- ✔△140,000円
- 3△60,000円
- 4△200,000円
- 5△260,000円
解説:◆結論
評価差額金 = 評価差損 ×(1 − 実効税率)で、税効果控除後の純額が純資産に計上される。
◆計算
評価差損 = 600,000 − 800,000 = △200,000円
繰延税金資産 = 200,000 × 30% = 60,000円
その他有価証券評価差額金 = △200,000 + 60,000 = △140,000円
(借)その他有価証券評価差額金 140,000、繰延税金資産 60,000 /(貸)投資有価証券 200,000
◆ポイント:相手勘定は法人税等調整額ではない
評価差額は損益を通らず純資産に直入されるため、税効果も純資産項目(評価差額金)の中で調整する。損益に流すと税引後利益が歪む。
◆評価差益との対称性
差益なら繰延税金負債を計上し、評価差額金は差益×70%(貸方)。借方・貸方が入れ替わるだけで構造は同じ。
◆ここが狙われる
・「評価差額金=△200,000円(グロス)」とするひっかけ。必ず税効果控除後の純額。
問8法定実効税率の算式として正しいものはどれか。
- 1法人税率+住民税率+事業税率
- ✔{法人税率×(1+住民税率)+事業税率}÷(1+事業税率)
- 3法人税率÷(1+住民税率)
- 4法人税率×(1−事業税率)
- 5法人税率のみ
解説:◆結論
法定実効税率 ={法人税率 ×(1 + 住民税率)+ 事業税率}÷(1 + 事業税率)
◆分母(1+事業税率)の意味
事業税は「支払った期に損金算入される」ため、事業税を払うと翌期の課税所得がその分減り、税金が安くなる。この自己減殺効果を織り込むと、実質的な税率は名目合計より低くなる。それを表すのが分母の調整。
◆分子の構造
法人税率×住民税率 … 住民税(法人税割)は法人税額に対して課されるため、法人税率に住民税率を乗せる形で入る。
◆使い方
税効果会計では一時差異×法定実効税率で繰延税金資産・負債を計算する。将来の解消時に適用される税率を用い、税率改正が公布済みなら改正後率で再計算する。
◆ここが狙われる
・「単純合計(法人税率+住民税率+事業税率)」の誤答肢。
・実際負担率との乖離(永久差異等が原因)は税率差異の注記の論点。
外貨換算会計全7問中 7問を掲載
問1在外子会社の財務諸表項目の換算について、原則的な取扱いとして誤っているものはどれか。
- 1資産・負債は決算時の為替相場で換算する
- ✔換算によって生じた差額は当期の為替差損益として損益計算書に計上する
- 3収益・費用は原則として期中平均相場で換算する
- 4親会社による株式取得時の資本項目は株式取得時の為替相場で換算する
- 5親会社との取引による収益・費用は親会社が用いる為替相場で換算する
解説:◆結論
在外子会社の換算差額は「為替換算調整勘定」としてその他の包括利益(連結B/Sではその他の包括利益累計額)に計上し、当期の損益にはしない。
◆なぜ調整勘定が生じるのか
資産・負債は決算時レート、資本は株式取得時レート、収益・費用は期中平均レートと、異なるレートで換算するため貸借が一致しなくなる。その差額を調整するのが為替換算調整勘定であり、いわば換算手続上の貸借差額である。
◆在外支店との対比(頻出の比較論点)
在外支店…本店と一体なので本店の外貨建取引の換算基準に準じる。差額は「為替差損益」で当期の損益。
在外子会社…独立した企業とみて上記の方法。差額は「為替換算調整勘定」で純資産。
◆ここが狙われる
・親会社との取引に係る収益・費用は親会社が用いる為替相場で換算し、生じた差額は当期の損益とする。
・子会社を売却して支配を喪失したときは、為替換算調整勘定を損益に組み替える。
問210,000ドルの商品を掛けで仕入れた(取引日レート110円)。決算日レート115円、翌期の決済日レート120円である。当期および翌期に計上される為替差損益の組合せとして正しいものはどれか。
- 1当期:なし/翌期:為替差損100,000円
- 2当期:為替差益50,000円/翌期:為替差損50,000円
- 3当期:為替差損100,000円/翌期:なし
- 4当期:為替差損50,000円/翌期:為替差益50,000円
- ✔当期:為替差損50,000円/翌期:為替差損50,000円
解説:◆結論
外貨建金銭債権債務は決算時レートで換算替えし、差額は為替差損益として当期の損益とする。取引日→決算日→決済日と、区切りごとに差損益を認識していく。
◆計算
取引日:10,000ドル × 110円 = 買掛金 1,100,000円
決算日:10,000ドル ×(115−110)= 50,000円の買掛金増加 → 為替差損
決済日:10,000ドル ×(120−115)= 50,000円の追加支払 → 為替差損
2期合計100,000円 = 取引日から決済日までの変動額と一致
◆換算のルール(貨幣・非貨幣法)
貨幣項目(売掛金・買掛金・貸付金・借入金・現金預金)… 決算時レート(CR)
非貨幣項目(棚卸資産・固定資産・前渡金・前受金)… 取得時レート(HR)のまま
前渡金・前受金は「将来お金を受け払いする項目ではない」ので非貨幣項目という点が頻出。
◆二取引基準
商品売買と決済を別個の取引とみなし、為替変動の影響は売上・仕入を修正せず為替差損益として独立に表示する。日本基準の立場。
◆表示
為替差益と為替差損は相殺し、純額を営業外損益に表示する。
問3在外支店の財務諸表項目の換算について正しいものはどれか。
- 1すべて決算時レートで換算する
- 2純資産はすべて決算時レートで換算する
- 3換算差額は為替換算調整勘定とする
- 4収益・費用はすべて取得時レートで換算する
- ✔本店と同様に、原則として本店における外貨建取引の換算方法(取得時レート等)に準じて換算する
解説:◆結論
在外支店は本店と一体の存在なので、本店における外貨建取引と同じ基準で換算する。生じた換算差額は「為替差損益」として当期の損益に計上する。
◆換算ルール
貨幣項目(売掛金・買掛金等)… 決算時レート
非貨幣項目(棚卸資産・固定資産等)… 取得時レート
収益・費用 … 原則として発生時レート(期中平均レートも可)
本店勘定 … 本店における支店勘定の金額
◆在外子会社との対比(最頻出の比較表)
在外支店 在外子会社
位置づけ 本店と一体 独立した企業
換算方法 本国主義(テンポラル法的) 現地主義(決算日レート法)
資産・負債 貨幣・非貨幣で区別 すべて決算時レート
換算差額 為替差損益(損益) 為替換算調整勘定(純資産)
◆なぜ扱いが違うのか
支店は本店の活動の延長なので、本店が直接取引したのと同じように換算する。子会社は現地で独立して活動する事業体なので、現地通貨での財務諸表をひとまとまりとして換算し、差額は事業への投資全体の換算差として純資産に留める。
問4売掛金20,000ドル(帳簿価額は決算時レート105円で換算済み)を、決済日レート100円で回収した。計上される為替差損益はいくらか。
- 1損益は生じない
- 2為替差益100,000円
- ✔為替差損100,000円
- 4為替差損2,000,000円
- 5為替差益2,000,000円
解説:◆結論
決済時の為替差損益 = 外貨額 ×(決済日レート − 帳簿のレート)
売掛金20,000ドル ×(100 − 105)= △100,000円 → 為替差損
◆仕訳
(借)現金預金 2,000,000、為替差損 100,000 /(貸)売掛金 2,100,000
◆方向の判定を体で覚える
外貨建「債権」×円高(レート下落)→ 受け取れる円が減る → 差損
外貨建「債務」×円高 → 払う円が減る → 差益
債権・債務のどちらか+円高・円安のどちらか、の2×2で即答できるようにする。
◆期間の区切り
取引日→決算日の変動は前期の損益、決算日→決済日の変動が当期の損益。決算時レートで換算済みの帳簿価額から出発するのが本問の設定。
◆ここが狙われる
・取引日レートから計算してしまい、2期分をまとめて当期の損益にする誤り。
・差損と差益の方向の取り違え。
問5商品輸入に係る外貨建の前渡金について、決算時の換算として正しいものはどれか。
- 1予約レートで換算する
- 2期中平均相場で換算する
- 3決算時の為替相場で換算する
- ✔取引発生時の為替相場による円換算額のまま据え置く
- 5換算しない(外貨のまま表示)
解説:◆結論
前渡金・前受金は非貨幣項目であり、決算時の換算替えを行わず、取引発生時(支払時・受取時)の為替相場による円換算額のまま据え置く。
◆なぜ貨幣項目でないのか
前渡金は「将来、商品・サービスを受け取る権利」であって、外貨で現金を受け取る権利ではない。為替が動いても受け取る商品の量は変わらないので、換算差損益を認識する理由がない。
◆貨幣・非貨幣の判定基準
「将来、外貨額で現金を受払いするか」
Yes(売掛金・買掛金・貸付金・借入金・未収金・未払金・外貨預金)→ 決算時レート、差額は為替差損益
No(前渡金・前受金・棚卸資産・固定資産・前払費用等)→ 取得時レートのまま
◆仕入計上時の扱い
前渡金充当分は前渡金計上時のレート、残額は仕入時のレートで換算するため、1つの仕入が2つのレートで構成されることになる。計算問題での定番論点。
◆ここが狙われる
・前渡金を決算時レートで換算替えして為替差損益を出させる誤答肢。「お金が返ってくる契約か、モノが来る契約か」で瞬時に判定。
問6外貨建取引において採用されている二取引基準の説明として正しいものはどれか。
- 1外貨建取引を認識しない方法
- 2売買取引と決済取引を一体とみて、決済額をもって売上高とする
- ✔取引そのものと代金決済取引を別個の取引とみなし、為替相場の変動による差額を為替差損益として処理する
- 4為替差損益を売上高に加減する方法
- 5取引を2回に分けて記帳する方法
解説:◆結論
二取引基準は、商品の売買取引と代金の決済取引を別個の取引とみなし、為替変動による差額を売上・仕入の修正ではなく「為替差損益」として独立に処理する。日本基準の立場。
◆一取引基準との対比
一取引基準 … 売買と決済を一体とみて、決済額で売上・仕入を確定(為替差損益は出ない)
二取引基準 … 売買は取引日レートで確定、決済は別取引 → 為替差損益
営業の成果と為替リスク管理の成果を分けて示せる二取引基準が採用された。
◆処理
取引日:取引日レートで売上・仕入
決算日:貨幣項目を決算日レートで換算替え→為替差損益
決済日:差額→為替差損益
◆ここが狙われる
・「決済額で売上を修正」(一取引基準)を正解に見せる肢。
問7決算時に決算日レートで換算する項目として正しいものはどれか。
- 1前渡金・前受金
- 2資本金
- 3有形固定資産
- 4棚卸資産
- ✔外貨建の売掛金・買掛金・貸付金・借入金などの貨幣項目
解説:◆結論
決算時レートで換算するのは貨幣項目(売掛金・買掛金・貸付金・借入金・現金預金・未収未払金)。非貨幣項目(前渡金・前受金・棚卸資産・固定資産)は取得時レートのまま。
◆判定
「将来、外貨で現金を受け払いする項目か」。Yesなら貨幣項目。
◆有価証券
売買目的・その他 … 外貨時価×CR/満期保有 … 償却原価×CR/子会社株式 … HR
◆ここが狙われる
・前渡金・前受金を貨幣項目とする肢。
財務諸表・開示・分析全29問中 8問を掲載
問1支店の期末商品棚卸高11,000円のうち8,800円は本店から仕入れたものであり、本店は原価に10%の内部利益を加算して支店へ送付している。控除すべき内部利益はいくらか。
- 1880円
- 21,000円
- 31,100円
- 4220円
- ✔800円
解説:◆結論
内部利益は「本店仕入分の金額 × 利益率 ÷(1+利益率)」で抜き出す。売価に含まれる利益部分を逆算する計算である。
◆計算
本店仕入分 8,800円 は原価の1.1倍
内部利益 = 8,800 × 0.1 / 1.1 = 800円
(外部仕入分2,200円には内部利益は含まれないので対象外)
◆合併財務諸表での調整
期首商品の内部利益 → 繰延内部利益戻入(当期に実現するので加算)
期末商品の内部利益 → 繰延内部利益控除(未実現なので減算)
あわせて本店勘定と支店勘定、内部売上と内部仕入を相殺消去する。
◆ここが狙われる
・「原価の10%」なのか「売価の10%」なのかで割る数が変わる。原価加算なら÷1.1、売価基準なら単純に×0.1。
・未達取引がある場合は、先に受取側で記帳して本店勘定と支店勘定を一致させてから合併処理を行う。
問2間接法によるキャッシュ・フロー計算書において、税引前当期純利益1,000,000円、減価償却費200,000円、売上債権の増加150,000円、棚卸資産の減少50,000円、仕入債務の減少100,000円であった。小計の金額はいくらか。
- 1900,000円
- 2800,000円
- ✔1,000,000円
- 41,400,000円
- 51,200,000円
解説:◆結論
間接法は税引前当期純利益から出発し、①非資金費用の加算、②営業活動に係る資産・負債の増減、③投資・財務活動に係る損益の除去、という調整を行って小計を導く。
◆計算
1,000,000(税引前当期純利益)
+200,000(減価償却費:現金支出のない費用を加算)
−150,000(売上債権の増加:資金の減少)
+ 50,000(棚卸資産の減少:資金の増加)
−100,000(仕入債務の減少:資金の減少)
=1,000,000円(小計)
◆調整の考え方(符号を間違えないコツ)
資産の増加=資金の減少(マイナス)、資産の減少=資金の増加(プラス)
負債の増加=資金の増加(プラス)、負債の減少=資金の減少(マイナス)
◆小計の下(見落としやすい)
小計の後に、利息・配当金の受取額、利息の支払額、法人税等の支払額を加減して営業活動によるキャッシュ・フローを算定する。
問3セグメント情報の開示におけるマネジメント・アプローチの説明として正しいものはどれか。
- 1財務諸表の作成基準に従って区分した情報を開示する方法
- 2すべての事業を単一のセグメントとして開示する方法
- ✔経営者が意思決定や業績評価に用いている区分に基づき開示する方法
- 4地域別のみで開示する方法
- 5外部の業種分類に従って開示する方法
解説:◆結論
マネジメント・アプローチは、最高経営意思決定機関が経営資源の配分と業績評価のために定期的に検討している事業単位(=実際に経営者が見ている区分)に基づいて開示する考え方。
◆なぜこの方法か
経営者が実際に使っている区分で開示すれば、財務諸表利用者は「経営者の目線」で企業を見ることができ、将来キャッシュ・フローの予測にも役立つ。また経営者にとっても追加コストが小さい。
◆報告セグメントの決定手順
①事業セグメントを識別
②量的基準:売上高・利益(損失)の絶対値・資産のいずれかが全体の10%以上のものを報告セグメントとする
③外部売上高の合計が全社の75%以上になるまでセグメントを追加する
④残りは「その他」に一括
◆開示内容
セグメントごとの売上高(外部顧客への売上高とセグメント間の内部売上高を区分)、利益(損失)、資産、負債、減価償却費、のれん、設備投資額など。連結財務諸表計上額との差異調整も開示する。
◆関連情報
製品・サービスごと、地域ごと、主要な顧客ごとの情報も別途開示する。
問4包括利益の説明として正しいものはどれか。
- 1非支配株主に帰属する部分は含まれない
- 2営業利益に営業外損益を加減したものである
- 3株主資本の変動額すべてを指す
- 4当期純利益と同義である
- ✔当期純利益にその他の包括利益を加減したものである
解説:◆結論
包括利益 = 当期純利益 + その他の包括利益
資本取引(増資・配当)による変動を除いた、純資産の変動額のすべてを表す。
◆その他の包括利益の中身(4つ)
その他有価証券評価差額金の当期変動額
繰延ヘッジ損益の当期変動額
為替換算調整勘定の当期変動額
退職給付に係る調整額
◆概念フレームワークとの関係
純利益は「投資のリスクから解放された成果」を表す。まだリスクから解放されていない価値変動(時価の上下、換算差額など)はその他の包括利益に計上し、解放された時点で組替調整(リサイクリング)により純利益に含める。
◆組替調整額(リサイクリング)
例:その他有価証券を売却したとき、過年度にOCIとして計上した評価差額を取り消し、売却損益を当期純利益に計上する。これを行わないと同じ利益を二度計上してしまう。
◆表示方法と適用範囲
2計算書方式(損益計算書+包括利益計算書)と1計算書方式(損益及び包括利益計算書)の選択適用。現在は連結財務諸表のみで表示が求められ、個別には適用されない。
問5直接法によるキャッシュ・フロー計算書の特徴として正しいものはどれか。
- ✔営業収入や仕入支出などの主要な取引ごとに総額で表示する
- 2純利益と営業CFの関係が明示される
- 3投資活動の区分でのみ用いられる
- 4税引前当期純利益から出発して調整計算を行う
- 5作成が容易で実務上多く採用されている
解説:◆結論
直接法は営業収入・仕入支出・人件費支出など主要な取引ごとに総額表示する方法。資金の流れが明瞭だが作成に手数がかかるため、実務では間接法が多い。
◆営業収入の計算(頻出)
営業収入 = 売上高 + 期首売掛金 − 期末売掛金(+前受金の増加等)
例:売上10,000,000+期首1,500,000−期末1,800,000 = 9,700,000円
「売上のうちまだ回収していない増加分を引く」と考える。
◆仕入支出の計算
仕入支出 = 売上原価 + 期末棚卸 − 期首棚卸(=当期仕入高)+ 期首買掛金 − 期末買掛金
2段階(仕入高への変換 → 支出への変換)で調整する。
◆直接法と間接法の関係
どちらで作っても「小計」以下は同じ。営業活動の中身の見せ方が違うだけで、営業CFの合計額は一致する。
◆それぞれの長所
直接法 … 収入・支出の総額が分かり、資金繰りの実態が見える
間接法 … 利益とキャッシュ・フローのズレ(なぜ黒字なのに資金が減るのか)が分かる、作成が容易
◆選択適用
継続適用を条件にどちらでもよい。
問6四半期財務諸表に関する記述として正しいものはどれか。
- 1年度決算と全く同一の詳細な処理が求められる
- 2税金費用は必ず年度と同じ方法で計算する
- 3四半期特有の会計処理は認められない
- 4原価差異は必ず期末に一括処理する
- ✔実績主義と予測主義があり、日本では原則として実績主義が採用されている
解説:◆結論
日本基準は「実績主義」を原則とする。四半期を年度から独立した会計期間とみて、年度と同じ認識・測定基準で作成する考え方。
◆実績主義と予測主義
実績主義 … 四半期は独立した期間。原則として年度決算と同じ処理。
予測主義 … 四半期は年度の一部分。年度業績の予測に役立つよう費用を年度ベースで配分。
日本は実績主義を採るが、一部に予測主義的な四半期特有の処理を許容するハイブリッド構造。
◆四半期特有の会計処理(例外として認められるもの)
・原価差異の繰延処理(操業度等の季節変動による差異を年度内で調整)
・税金費用の計算:年間の見積実効税率 × 税引前四半期純利益
◆簡便的な処理の例
一般債権の貸倒実績率の前年度末利用、棚卸資産の実地棚卸の省略(合理的な方法による算定)、経過勘定の合理的な概算計上など。
◆制度の動向
四半期報告書制度は見直しが進み、開示の枠組みは変化しているが、中間・四半期の会計処理の考え方(実績主義ベース+特有の処理)は試験上の重要論点であり続けている。
問7貸借対照表における資産・負債の流動固定分類に関する記述として正しいものはどれか。
- 1分類基準は企業の任意である
- 21年基準を優先し、正常営業循環基準は補助的に用いる
- ✔正常営業循環基準を優先的に適用し、これに該当しないものに1年基準を適用する
- 4棚卸資産は必ず1年基準で判定する
- 5すべて1年基準により分類する
解説:◆結論
まず正常営業循環基準を適用し、これに該当しない項目に1年基準(ワン・イヤー・ルール)を適用する。適用順序が問われる。
◆正常営業循環基準
主目的たる営業活動のサイクル(現金→仕入→在庫→販売→債権→現金)の中にある資産・負債は、回収・決済までの期間の長短にかかわらず流動項目とする。
→ 売掛金・受取手形・棚卸資産・買掛金・支払手形などは、たとえ回収に1年超かかっても流動。
◆1年基準
営業循環から外れた項目(貸付金、借入金、破産更生債権等、預り保証金など)は、決算日の翌日から起算して1年以内に期限が到来するかで流動・固定を分ける。
◆なぜ2段構えなのか
営業循環内の項目まで1年で機械的に切ると、造船業など循環が長い業種で運転資本の実態が見えなくなる。営業の血流はまとめて流動とし、それ以外を期間で分けるのが実態に合う。
◆適用例
・長期滞留した売掛金 → 営業循環から外れたとみて1年基準で判定(破産更生債権等は固定へ)
・所有目的を変えた資産(販売用不動産⇄固定資産)も分類が変わる
◆ここが狙われる
・「すべて1年基準」「1年基準が優先」という誤り。
問8本店が支店へ商品を送付したが支店に未達である場合、合併財務諸表作成前に行う処理として正しいものはどれか。
- 1本店側で二重に記帳する
- ✔支店側で商品到達の記帳を行い、本店勘定と支店勘定を一致させる
- 3未達分を売上に計上する
- 4処理は不要である
- 5本店側で送付の記録を取り消す
解説:◆結論
未達取引は「受け取っていない側」で記帳して、本店勘定と支店勘定の残高を一致させてから合併整理に進む。
◆本問の処理
本店が商品を送付済み・支店に未達 → 支店側で
(借)本店仕入(支店の仕入勘定)/(貸)本店
と記帳。これで本店の「支店」勘定と支店の「本店」勘定が貸借逆で一致する。
◆未達4パターン
①商品の送付が未達 → 受取側で仕入・本店(支店)
②現金の送付が未達 → 受取側で現金・本店(支店)
③債権回収の連絡未達 → 相手側で本店(支店)・売掛金等
④費用立替の連絡未達 → 負担側で費用・本店(支店)
「動いていない側の帳簿を動かす」だけ。
◆未達商品の期末評価
未達商品は支店に物理的に届いていなくても支店の期末棚卸高に含める(内部利益が付いていれば控除も必要)。
◆ここが狙われる
・照合勘定の一致確認(一致して初めて相殺消去できる)。
・未達整理→内部利益控除→合併P/L・B/S作成という手順の順序。
会計基準・概念フレームワーク全14問中 8問を掲載
問1「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」に基づく取扱いとして正しいものはどれか。
- 1過去の誤謬は当期の特別損益として処理する
- 2会計方針の変更は将来にわたり適用する
- ✔会計方針の変更は原則として新たな会計方針を過去の期間すべてに遡及適用する
- 4表示方法の変更は組替えを行わない
- 5会計上の見積りの変更は遡及処理する
解説:◆結論
会計方針の変更は、原則として新たな会計方針を過去の期間すべてに遡及適用する。
◆4類型を一覧で整理(比較して覚える)
会計方針の変更 … 遡及適用(過去すべてに新方針を適用)
表示方法の変更 … 財務諸表の組替え
会計上の見積りの変更 … 将来にわたり会計処理(遡及しない)
過去の誤謬 … 修正再表示(過去の財務諸表を訂正)
◆なぜ遡及するのか
期間比較可能性を確保するため。方針を変えた年度だけ数値が飛ぶと、利用者が趨勢を読み誤る。一方、見積りの変更は「その時点で最善の見積りをしていた」ことが前提なので、過去は誤りではなく遡及しない。
◆最重要の例外
減価償却方法の変更は、会計方針の変更ではあるが、耐用年数など経済的便益の消費パターンに関する見積りの変更と区別することが困難なため、遡及適用せず将来にわたって処理する。この一点は毎回のように問われる。
問2決算日後に発生した火災により重要な損害が生じた場合の取扱いとして正しいものはどれか。
- 1修正後発事象として当期の財務諸表を修正する
- 2偶発債務として引当金を計上する
- 3前期の財務諸表を修正再表示する
- ✔開示後発事象として注記する
- 5何ら処理は不要である
解説:◆結論
決算日後に「新たに発生した」事象(火災、災害、合併、増資など)は開示後発事象として注記する。財務諸表は修正しない。
◆2つの後発事象を区別する基準
修正後発事象 … 決算日現在すでに存在していた状況について、追加的な証拠を提供する事象。財務諸表を修正する。
例:決算日後に得意先が倒産し、決算日時点の債権が回収不能だったと判明した
開示後発事象 … 決算日後に新たに発生した事象。財務諸表は修正せず注記する。
例:決算日後の火災、災害、合併、重要な設備の取得
◆判断のポイント
「原因が決算日以前にあったか、決算日後に生じたか」で分ける。決算日時点の財政状態・経営成績を正しく示すために必要なら修正、将来の判断に影響するだけなら注記。
◆注記する理由
開示後発事象は当期の財務諸表には表れないが、翌期以降の企業の姿を大きく変えうる。利用者の意思決定に重要な情報であるため注記が求められる。
問3「会計上の見積りの開示に関する会計基準」が要求する開示内容として正しいものはどれか。
- 1見積りは開示の対象外である
- 2すべての見積項目について詳細な数値を開示する
- 3監査人の判断のみを記載する
- 4経営者の予想利益を開示する
- ✔翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目名と、その算出方法・仮定等を注記する
解説:◆結論
「会計上の見積りの開示に関する会計基準」は、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目を識別し、項目名・当年度計上額・見積りの内容(算出方法、主要な仮定、翌年度への影響)を注記することを求める。
◆開示の狙い
固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性、引当金、棚卸資産の評価などは、経営者の仮定次第で金額が大きく動く。どのような仮定で見積もったかを開示すれば、利用者は見積りの不確実性(翌年度に大きく変わるリスク)を織り込んで財務諸表を読める。
◆開示対象の絞り込み
すべての見積項目ではなく、「翌年度に重要な影響を及ぼすリスクが高いもの」に限定して識別する。網羅的な羅列ではなく、企業固有の重要事項に焦点を当てる建付け。
◆記載内容の例(減損の場合)
資産グループの内容、当年度の帳簿価額、回収可能価額の算定方法、将来キャッシュ・フローの主要な仮定(成長率・割引率)、仮定の変化による影響。
◆関連する枠組み
KAM(監査上の主要な検討事項)と対になる開示であり、経営者側の説明(本基準)と監査人側の説明(KAM)が相互補完する関係にある。
問4継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象等が存在し、重要な不確実性が認められる場合の取扱いとして正しいものはどれか。
- 1資産をすべて時価評価する
- 2注記は不要である
- 3財務諸表を清算価値で作成する
- 4財務諸表の作成を中止する
- ✔継続企業を前提として財務諸表を作成したうえで、その旨と内容を注記する
解説:◆結論
継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象があり、対応してもなお重要な不確実性が認められる場合は、継続企業を前提として財務諸表を作成したうえで、その旨・内容・対応策等を注記する。
◆判断の3段階
①疑義を生じさせる事象・状況の存在(債務超過、重要な債務の不履行、売上の著しい減少等)
②経営者の対応策の評価(資産売却、資金調達、事業再構築等)
③対応してもなお重要な不確実性が残るか
③に該当して初めてGC注記が必要になる。事象があるだけでは注記に至らない(②で解消されれば有価証券報告書の「事業等のリスク」等での記載にとどまる)。
◆清算価値で作らない理由
不確実性が残る段階では、まだ継続の可能性がある。財務諸表は継続を前提とした会計処理(減価償却・引当金等)で作成し、不確実性は注記で伝えるという役割分担。
◆前提が成立しない場合
清算が確定的な場合は、継続企業を前提とした作成自体が不適切となる。
◆監査との関係
監査報告書でも「継続企業の前提に関する事項」として言及され、注記の適切性が監査の重要論点になる。
問5企業会計原則の一般原則に含まれないものはどれか。
- ✔費用収益対応の原則
- 2資本取引・損益取引区分の原則
- 3単一性の原則
- 4正規の簿記の原則
- 5真実性の原則
解説:◆結論
一般原則は7つ。費用収益対応の原則は損益計算書原則に属し、一般原則には含まれない。
◆7つの一般原則
①真実性の原則(最高規範)
②正規の簿記の原則
③資本取引・損益取引区分の原則
④明瞭性の原則
⑤継続性の原則
⑥保守主義(安全性)の原則
⑦単一性の原則
◆相互の関係
真実性が頂点に立ち、他の原則を守ることで「相対的真実」が担保される構造。継続性は期間比較可能性と利益操作排除、保守主義は予測される危険への備え(ただし過度の保守主義は真実性に反する)、単一性は目的別の形式の違いは許すが二重帳簿は禁止、という趣旨。
◆一般原則に含まれない頻出ダミー
費用収益対応の原則・実現主義・発生主義(損益計算書原則)、総額主義(P/L・B/S原則)、重要性の原則(注解1)。「7つに入るか」の正誤で毎回問われる。
◆ここが狙われる
・7原則の列挙から1つ差し替える形式。注解の原則(重要性)との区別。
問6重要性の原則の適用例として適切でないものはどれか。
- ✔重要な会計方針の変更を注記せずに済ませる
- 2たな卸資産の付随費用の一部を取得原価に算入しない
- 3消耗品の買入時費用処理
- 4前払費用等で重要性の乏しいものの経過勘定処理の省略
- 5分割返済の長期借入金のうち期限到来分を固定負債に含める
解説:◆結論
重要性の原則は「重要性の乏しいものに簡便な処理・表示を認める」原則。重要な事項の開示を省略することは認めない。
◆適用例(注解1)
・消耗品等の買入時費用処理
・重要性の乏しい前払費用等の経過勘定処理の省略
・重要性の乏しい引当金の不計上
・棚卸資産の付随費用の一部を取得原価に算入しない
・分割返済の長期債権債務のうち期限が1年内のものを固定表示のままにする
◆二面性を正確に
簡便処理を「許す」方向 … 重要性が乏しい場合
明瞭表示を「求める」方向 … 重要性が高い場合(科目の独立掲記、注記)
「重要な会計方針の変更を注記しない」は後者に反するため認められない。
◆理論的根拠
会計情報はコストをかけて作られる。利用者の判断を誤らせない範囲での簡略化は、コスト・ベネフィットの観点から正当化される(正規の簿記の原則に反しない簿外資産・簿外負債が生じうる)。
◆ここが狙われる
・「重要事項の省略」を適用例に紛れ込ませる出題が定番。
問7収益の認識基準に関する記述として正しいものはどれか。
- 1収益は現金主義、費用は発生主義による
- 2収益・費用ともに現金主義による
- 3収益は発生主義により認識するのが原則である
- ✔収益は実現主義により認識し、費用は発生主義により認識するのが伝統的な考え方である
- 5費用は実現主義により認識する
解説:◆結論
伝統的な期間損益計算では、費用は発生主義で認識し、収益は実現主義で認識する。
◆なぜ非対称なのか
費用 … 財貨・用役の消費という事実(発生)で認識。早めに認識する方が保守的。
収益 … 発生しただけ(生産しただけ)では不確実。①財貨・用役の引渡し+②対価の成立という実現の2要件を待って認識することで、処分可能利益の確実性を担保する。
◆発生主義→実現主義→対応原則の三層構造
発生主義で費用・収益を広く捉え、収益は実現でふるいにかけ、実現収益に対応する費用だけを計上する(費用収益対応の原則)。この組合せが期間損益計算の骨格。
◆収益認識会計基準との連続性
現行基準は「支配の移転」で収益を認識するが、財・サービスの移転と対価への権利という発想は実現主義の精緻化とみることができる。
◆ここが狙われる
・「収益も発生主義」「費用は実現主義」の入替え。
・現金主義(記帳は現金収支時)との区別。経過勘定は発生主義の適用例。
問8討議資料「財務会計の概念フレームワーク」における純利益の考え方として正しいものはどれか。
- 1包括利益と常に一致する
- 2資産と負債の差額の変動額そのものである
- 3純利益は定義されていない
- ✔投資のリスクから解放された部分を表す成果概念である
- 5現金収支と一致する
解説:◆結論
純利益は「投資のリスクから解放された成果」を表す。包括利益と常に一致するわけではない。
◆リスクからの解放とは
投資の成果が事前の期待から独立した確定的な事実になること。
事業投資 … 販売など事業のサイクルを完了して初めて解放(時価が上がっただけでは未解放)
金融投資 … 市場でいつでも売却できるため、時価の変動そのものが成果(売買目的有価証券の評価益が損益になる理由)
◆純利益と包括利益の関係
包括利益 = 純利益 + その他の包括利益(OCI)
OCIはまだ解放されていない価値変動の置き場。解放された時点で組替調整(リサイクリング)により純利益へ移す。概念フレームワークは、包括利益より純利益の有用性を重視し、リサイクリングを必須と位置づける点に特徴がある。
◆この概念で説明できる個別論点
その他有価証券の純資産直入、繰延ヘッジ、為替換算調整勘定、退職給付の未認識項目——「なぜ損益でなくOCIか」はすべて「未解放だから」で貫通する。
◆ここが狙われる
・「純利益=資産負債の差額の変動そのもの」(それは包括利益)とする誤り。
原価計算の基礎・原価計算基準全32問中 8問を掲載
問1原価計算基準上、非原価項目に該当しないものはどれか。
- 1支払利息などの財務費用
- 2異常な仕損・減損・棚卸減耗費
- ✔正常な範囲の減価償却費
- 4火災・震災による損失
- 5法人税・住民税
解説:◆結論
正常な範囲の減価償却費は製造原価または販売費及び一般管理費として原価に算入される。非原価項目ではない。
◆非原価項目の4分類(原価計算基準)
①経営目的に関連しない価値の減少
支払利息・社債利息などの財務費用、有価証券評価損・売却損、投資資産の減価、寄付金など
②異常な状態を原因とする価値の減少
異常な仕損・減損・棚卸減耗、火災・震災等の災害損失、訴訟費用、偶発損失
③税法上とくに認められる損金算入項目
特別償却額など
④剰余金の処分に属する項目
法人税・住民税、配当金、任意積立金繰入額
◆原価の4要件(裏返して覚える)
①経済価値の消費であること
②給付に転嫁される価値であること
③経営目的に関連したものであること
④正常なものであること
非原価項目はこのいずれかを欠くもの、と整理すると暗記が不要になる。
◆判別のコツ
「正常か異常か」「経営目的(製造販売)に関連するか」の2軸で判断する。減価償却費や正常な棚卸減耗費は原価、異常な減耗や災害損失は非原価。
問2原価計算基準が掲げる原価計算の目的に該当しないものはどれか。
- 1原価管理目的
- 2財務諸表作成目的
- 3価格計算目的
- ✔納税申告書の自動作成目的
- 5予算管理目的
解説:◆結論
原価計算基準が掲げる目的は次の5つ。納税申告書の作成そのものは含まれない。
◆5つの目的
①財務諸表作成目的 … 棚卸資産価額と売上原価を算定する
②価格計算目的 … 販売価格の計算に必要な原価資料を提供する
③原価管理目的 … 標準を設定し差異を分析して原価能率を増進する
④予算管理目的 … 予算の編成および予算統制に必要な資料を提供する
⑤基本計画設定目的 … 設備投資など経営構造に関する基本計画に必要な資料を随時提供する
◆目的によって必要な原価が違う
財務諸表作成 … 実際原価(全部原価)
原価管理 … 標準原価
利益計画・短期意思決定 … 変動費と固定費に分解した原価
構造的意思決定 … 差額原価・機会原価などの特殊原価
「原価は目的によって異なる(different costs for different purposes)」という考え方が根底にある。
◆原価計算制度と特殊原価調査
①〜④は常時継続的に行われる原価計算制度で対応する。⑤は必要に応じて随時実施される特殊原価調査(複式簿記機構の外)で対応することが多い。
問3原価計算基準における原価の基礎的分類として誤っているものはどれか。
- 1操業度との関連における分類(変動費・固定費)
- 2製品との関連における分類(直接費・間接費)
- 3機能別分類(主要材料費・補助材料費など)
- 4形態別分類(材料費・労務費・経費)
- ✔発生時期による分類(前期費用・当期費用)
解説:◆結論
原価計算基準が定める基礎的分類は次の5つ。発生時期による分類は含まれない。
◆5つの基礎的分類
①形態別分類 … 材料費・労務費・経費(何を消費したか)
②機能別分類 … 主要材料費・補助材料費、作業種類別労務費など(何のために消費したか)
③製品との関連における分類 … 直接費・間接費(特定製品に跡づけられるか)
④操業度との関連における分類 … 変動費・固定費・準変動費・準固定費
⑤原価の管理可能性に基づく分類 … 管理可能費・管理不能費
◆それぞれの分類が使われる場面
形態別 … 製造原価報告書の作成
機能別 … 原価の発生原因の分析
直接・間接 … 賦課するか配賦するか
変動・固定 … CVP分析、直接原価計算、変動予算
管理可能性 … 責任会計、業績評価
◆準変動費と準固定費
準変動費 … 固定的部分と変動的部分からなる(電力料の基本料金+従量料金)
準固定費 … ある範囲では固定的だが、それを超えると階段状に増える(監督者の給料)
いずれも操業度との関連における分類に含まれる。
◆管理可能性は相対的
管理階層が上がるほど、また期間が長くなるほど管理可能な範囲は広がる。
問4当期材料費500,000円、当期労務費300,000円、当期経費200,000円、期首仕掛品150,000円、期末仕掛品100,000円のとき、当期製品製造原価はいくらか。
- 11,150,000円
- 21,000,000円
- 3900,000円
- 4950,000円
- ✔1,050,000円
解説:◆結論
当期製品製造原価 = 当期総製造費用 + 期首仕掛品棚卸高 − 期末仕掛品棚卸高
◆計算
当期総製造費用 = 材料費500,000 + 労務費300,000 + 経費200,000 = 1,000,000円
当期製品製造原価 = 1,000,000 + 150,000 − 100,000 = 1,050,000円
◆製造原価報告書の構造(ボックスで覚える)
仕掛品勘定そのものを報告書にしたもの。
借方:期首仕掛品+当期総製造費用(材料費・労務費・経費)
貸方:当期製品製造原価+期末仕掛品
◆損益計算書へのつながり
当期製品製造原価は損益計算書の売上原価の内訳に流れ込む。
売上原価 = 期首製品 + 当期製品製造原価 − 期末製品
「材料→仕掛品→製品→売上原価」という原価の流れを、報告書とP/Lで橋渡ししている。
◆表示形態
形態別(材料費・労務費・経費)に区分するのが一般的。製造間接費を予定配賦している場合は、実際発生額に配賦差異を加減して表示する形式もある。
◆ここが狙われる
・仕掛品の加減を忘れる、符号を逆にする誤り。
・材料費の内訳計算(期首材料+仕入−期末材料)との2段構えの問題。
問5予定配賦を採用しており、期首製品0円、当期製品製造原価1,050,000円、期末製品150,000円、製造間接費配賦差異が50,000円の不利差異(比較的少額)である。損益計算書上の売上原価はいくらか。
- 1900,000円
- 2850,000円
- ✔950,000円
- 41,000,000円
- 51,050,000円
解説:◆結論
予定配賦を採用している場合の損益計算書の売上原価は、標準(予定)原価ベースの売上原価に不利差異を加算(有利差異は減算)して算定する。
◆計算
差異調整前の売上原価 = 期首製品0 + 当期製品製造原価1,050,000 − 期末製品150,000 = 900,000円
不利差異50,000円を加算 → 売上原価 950,000円
◆なぜ売上原価に賦課するのか
原価差異は当期の能率・価格変動の結果であり、資産価値として次期に繰り越す性質のものではない。比較的少額なら全額を当期の売上原価に負担させるのが原則(原価計算基準)。
◆場合分け(必ず整理)
比較的少額 → 全額売上原価に賦課
比較的多額 → 売上原価と期末棚卸資産(製品・仕掛品)に標準原価の比率で追加配賦
異常な差異 → 非原価項目(営業外費用・特別損失)
材料受入価格差異 → 材料の払出高と期末在高に配賦
◆有利差異の場合
売上原価から減算する。「不利差異=原価が余計にかかった=売上原価を増やす」と方向をイメージで押さえると符号を間違えない。
問6原価計算基準が掲げる標準原価計算の目的として適切でないものはどれか。
- 1原価管理を効果的にするため
- 2真実の原価を計算して財務諸表に表示するため
- ✔実際原価の集計を不要にするため
- 4記帳を簡略化し迅速化するため
- 5予算編成および予算統制に役立てるため
解説:◆結論
標準原価計算を採用しても、差異分析のために実際原価(実際消費量・実際発生額)の把握は必要。「実際原価の集計が不要になる」は誤り。
◆原価計算基準が掲げる4つの目的
①原価管理(最重要目的)… 標準と実際の差異を分析し、原価能率を増進する
②財務諸表作成 … 標準原価は「真実の原価」として棚卸資産・売上原価の算定に用いうる
③予算編成 … 標準原価は予算、とくに見積財務諸表の作成の基礎となる
④記帳の簡略化・迅速化 … 標準単価での記帳により帳簿記入が速く簡単になる
◆「標準原価で財務諸表を作れる」の意味
現実的標準原価・正常原価は達成可能な正常水準を表すため、これに基づく製品原価は財務諸表上も適正とされる。差異は原則売上原価に賦課して調整する。
◆差異分析には実際が必須
標準1,000円に対して実際がいくらだったかが分からなければ、差異も原因も分からない。標準原価計算は実際原価計算を置き換えるのではなく、比較対象としての標準を追加する仕組みと理解する。
◆現代的な限界
多品種少量生産・自動化・製品ライフサイクルの短縮により有効性が低下し、原価企画・ABC等で補完されている。
問7特殊原価調査の説明として正しいものはどれか。
- 1税務申告のための計算である
- 2財務会計機構と有機的に結合した常時継続的な原価計算である
- ✔経営意思決定のために随時実施される統計的・技術的な調査であり、複式簿記機構の外で行われる
- 4標準原価計算の一形態である
- 5任意の時点で行う実地棚卸のことである
解説:◆結論
特殊原価調査は、経営意思決定のために随時実施される調査であり、複式簿記機構(財務会計機構)の外で行われる。常時継続的に行われる原価計算制度とは区別される。
◆両者の比較
原価計算制度 特殊原価調査
実施頻度 常時継続的 必要に応じて随時
簿記との関係 財務会計機構と結合 機構の外(統計的・技術的調査)
用いる原価 実際原価・標準原価 差額原価・機会原価・付加原価など
主な目的 財務諸表作成・原価管理・予算 個別の意思決定(設備投資、受注可否等)
◆特殊原価概念の例
差額原価 … 代替案間で差が生じる未来原価
機会原価 … 断念した代替案から得られたはずの最大利益
埋没原価 … どの案でも変わらない過去原価(意思決定では無視)
付加原価 … 自己資本利子など、財務会計上は費用でないが計算上加算する原価
取替原価 … 現時点で再取得する場合の価格
◆なぜ制度の外なのか
意思決定用の原価(機会原価等)は取引として発生した事実ではないため、複式簿記に記録できない。目的が違えば計算の仕組みも変わるという「目的別原価計算」の思想の表れである。
問8管理会計の特徴として適切でないものはどれか。
- ✔すべての企業に開示が義務づけられている
- 2法令や会計基準による形式的な制約が少ない
- 3情報の利用者は主として経営管理者である
- 4適時性・目的適合性が重視される
- 5将来情報や非貨幣的情報も扱う
解説:◆結論
管理会計は内部の経営管理者のための会計であり、開示義務はない。「すべての企業に開示が義務づけられている」のは財務会計の特徴。
◆比較表(この対比で覚える)
財務会計 管理会計
利用者 外部利害関係者 内部の経営管理者
規制 会計基準・法令に準拠 制約なし(自由設計)
情報の性質 過去情報・貨幣情報 将来情報・非貨幣情報も扱う
重視する性質 信頼性・検証可能性 目的適合性・適時性
単位 企業全体 部門・製品・プロジェクト単位
頻度 年度・四半期 日次・週次・月次など随時
◆原価計算との関係
原価計算は両方にまたがる。製品原価の計算(棚卸資産・売上原価)は財務会計に接続し、差異分析・CVP・意思決定は管理会計に属する。原価計算基準が「財務諸表作成」と「原価管理・予算・基本計画」の両目的を掲げるのはこのため。
◆ここが狙われる
・「管理会計は会計基準に従う必要がある」「過去情報のみ扱う」等、財務会計の性質を管理会計に付け替えた選択肢。
費目別計算全44問中 8問を掲載
問1標準単価@500円、実際単価@520円、実際消費量1,000kgのとき、材料価格差異はいくらか。
- 1520,000円(不利差異)
- 2差異は生じない
- 320,000円(有利差異)
- ✔20,000円(不利差異)
- 510,000円(不利差異)
解説:◆結論
価格差異 =(標準単価 − 実際単価)× 実際消費量
◆計算
(@500 − @520)× 1,000kg = △20,000円 → 不利差異(借方差異)
◆差異分析の図解イメージ
縦軸に単価、横軸に数量をとった長方形で考える。
・価格差異=縦の差(単価差)× 横の実際値(実際数量)
・数量差異=横の差(数量差)× 縦の標準値(標準単価)
価格差異だけ「実際」数量を使うのは、単価差の影響は実際に消費した分だけ現れるため。数量差異に実際単価を使うと、価格差異と重複してしまう。
◆有利・不利の判定
標準 > 実際 なら有利(コストが標準より少なくて済んだ)
標準 < 実際 なら不利
符号がマイナス=不利、と機械的に覚えるより「標準から引く」と統一しておくと混乱しない。
◆ここが狙われる
・受入時に価格差異を把握する方法(材料受入価格差異)では実際"購入"量を用いる。
問2標準賃率@1,000円、実際賃率@1,050円、実際直接作業時間2,000時間、標準直接作業時間1,950時間のとき、賃率差異と時間差異の組合せとして正しいものはどれか。
- 1賃率差異100,000円(有利)・時間差異50,000円(不利)
- ✔賃率差異100,000円(不利)・時間差異50,000円(不利)
- 3賃率差異100,000円(不利)・時間差異52,500円(不利)
- 4賃率差異50,000円(不利)・時間差異100,000円(不利)
- 5賃率差異105,000円(不利)・時間差異50,000円(不利)
解説:◆結論
賃率差異 =(標準賃率 − 実際賃率)× 実際作業時間
時間差異 =(標準作業時間 − 実際作業時間)× 標準賃率
◆計算
賃率差異 =(@1,000 − @1,050)× 2,000h = △100,000円(不利)
時間差異 =(1,950h − 2,000h)× @1,000 = △50,000円(不利)
合計 △150,000円
検算:標準1,950h×@1,000=1,950,000、実際2,000h×@1,050=2,100,000、差額△150,000で一致。
◆材料費差異との対応関係
価格差異 ↔ 賃率差異(単価面の差異、実際数量を使う)
数量差異 ↔ 時間差異(数量面の差異、標準単価を使う)
構造がまったく同じなので、片方を理解すれば両方解ける。
◆差異の原因と責任
賃率差異…賃金水準の変動、想定と異なる等級の工員の配置(労務管理部門)
時間差異(作業時間差異)…作業能率、段取の巧拙、機械故障(製造現場)
問3材料の購入原価に関する記述として正しいものはどれか。
- 1購入代価のみを購入原価とし、引取費用は含めない
- 2材料副費は常に実際額のみで処理する
- ✔購入代価に引取費用(材料副費)を加算した額を購入原価とする
- 4材料副費配賦差異は材料勘定で繰り越す
- 5内部材料副費は必ず購入原価に算入しなければならない
解説:◆結論
材料の購入原価 = 購入代価 + 引取費用(外部材料副費)
引取運賃、荷役費、保険料、関税などの引取費用は必ず購入原価に算入する。
◆内部材料副費の扱い
購入事務費、検収費、整理費、選別費、手入費、保管費などの内部材料副費は、購入原価に算入しないことも、その一部または全部を算入することもできる(原価計算基準)。算入しない場合は間接経費として処理する。
◆予定配賦とその差異
材料副費は予定配賦することができ、その場合に生じる材料副費配賦差異は原価差異として処理する。
例:購入代価1,000,000円に5%で予定配賦 → 50,000円、実際55,000円なら 5,000円の不利差異
◆材料受入価格差異との区別
材料副費配賦差異…副費の予定配賦額と実際発生額の差
材料受入価格差異…(標準単価−実際単価)×実際購入量。こちらは払出高と期末在高に配賦するのが原則。
◆値引・割戻
仕入値引・仕入割戻は購入代価から控除する。
問4材料の帳簿棚卸数量500kg、実地棚卸数量490kg、消費単価@600円である。棚卸減耗が正常な範囲内である場合の処理として正しいものはどれか。
- 16,000円を売上原価とする
- 26,000円を特別損失とする
- ✔6,000円を製造間接費とする
- 46,000円を材料副費とする
- 5処理は不要である
解説:◆結論
正常な範囲の棚卸減耗費は間接経費として製造間接費に計上する。
◆計算
(帳簿500kg − 実地490kg)× @600 = 6,000円
(借)製造間接費 6,000 /(貸)材料 6,000
◆正常か異常かで処理が変わる
正常(通常発生する程度)… 間接経費 → 製造間接費 → 製品原価
異常(災害・盗難等)… 非原価項目 → 営業外費用または特別損失
◆なぜ製造間接費なのか
材料の減耗はどの製品のために生じたか特定できない。しかし製造活動に伴い不可避的に生じる正常なコストなので、製造原価として製品に負担させるべきである。この「特定できないが製造原価」という性格が間接費の定義そのもの。
◆把握の前提
棚卸減耗を把握するには帳簿数量が必要。したがって継続記録法を採用していなければならない。棚卸計算法では減耗が消費数量に紛れ込んでしまい把握できない。
◆商業簿記との違い
商業簿記の棚卸減耗損は売上原価または販管費に計上されるが、工業簿記では製造間接費となる点に注意。
問5直接工の賃金について、当月支払額1,000,000円、前月末未払額200,000円、当月末未払額250,000円である。当月の賃金消費額はいくらか。
- 11,250,000円
- 21,000,000円
- 3950,000円
- 41,450,000円
- ✔1,050,000円
解説:◆結論
消費額 = 当月支払額 − 前月未払額 + 当月未払額
現金主義の支払額を、発生主義の消費額に直す計算である。
◆計算
1,000,000 − 200,000 + 250,000 = 1,050,000円
◆なぜこの式になるか
当月の支払額には前月分の未払いが含まれている(だから引く)。一方、当月働いてもらったが未払いの分は支払額に含まれていない(だから足す)。給与計算期間と原価計算期間のズレを調整する作業と理解する。
◆賃金勘定の構造
借方:当月支払額 + 当月末未払額
貸方:前月末未払額 + 当月消費額(仕掛品・製造間接費への振替)
◆直接労務費と間接労務費の区分
直接工の就業時間 = 実働時間(直接作業時間+間接作業時間)+ 手待時間
直接作業時間(加工時間+段取時間)分 → 直接労務費
間接作業時間・手待時間分 → 間接労務費
間接工の賃金は全額が間接労務費。定時間外作業手当(残業手当)も原則として間接労務費。
◆予定賃率
予定賃率×実際直接作業時間で計算し、実際消費額との差を賃率差異とする方法もよく出題される。
問6経費の分類において「測定経費」に該当するものはどれか。
- ✔電力料・ガス代・水道料
- 2保険料
- 3外注加工賃
- 4減価償却費
- 5棚卸減耗費
解説:◆結論
経費は測定・計算の方法により4つに分類される。電力料・ガス代・水道料はメーターの測定値によるので「測定経費」。
◆4分類
支払経費 … 支払額をもって消費額とする(外注加工賃、修繕料、旅費交通費)
月割経費 … 年額・数か月分を月割する(減価償却費、保険料、賃借料、租税公課)
測定経費 … メーターの測定値による(電力料、ガス代、水道料)
発生経費 … 実際の発生額による(棚卸減耗費、仕損費)
◆直接経費と間接経費
直接経費 … 特定の製造指図書のために発生したことが明らかなもの(外注加工賃、特許権使用料)。指図書に賦課する。
間接経費 … それ以外。製造間接費に集計する。
経費の大部分は間接経費であり、直接経費は外注加工賃などごく限られる。
◆支払経費の未払・前払調整
支払経費でも未払額・前払額がある場合は、労務費と同様に発生主義に修正する。
消費額 = 支払額 − 前月未払 + 当月未払
◆非原価項目との区別
支払利息、有価証券評価損、災害損失などは経費ではなく非原価項目。
問7工程を通じて平均的に投入される材料の原価を計算する際の取扱いとして正しいものはどれか。
- 1期末仕掛品には一切負担させない
- ✔加工費と同様に完成品換算量に基づいて按分する
- 3始点投入と同様に数量比で按分する
- 4終点投入と同様に完成品のみに負担させる
- 5全額を当期の費用とする
解説:◆結論
材料の投入時点によって按分基準が変わる。工程を通じて平均的に投入される材料は、加工の進行に応じて投入されるため加工費と同じく完成品換算量で按分する。
◆投入時点別の整理(最重要の型)
始点投入 … 数量比で按分(期末仕掛品も全量投入済み)
平均的投入 … 完成品換算量で按分(加工費と同じ扱い)
終点投入 … 完成品のみが負担(期末仕掛品は未投入)
特定点投入 … 期末仕掛品の進捗度がその点を超えていれば数量比、超えていなければ完成品のみ
◆判断の手順
①その材料はいつ投入されるか
②期末仕掛品はその時点を通過しているか
この2つを確認するだけで負担関係が決まる。
◆具体例
進捗度60%の時点で追加投入される材料、期末仕掛品の進捗度が50%
→ 期末仕掛品はまだ投入時点を通過していないので、完成品のみが負担
◆仕損・減損の負担判定と同じ発想
仕損・減損も「期末仕掛品が発生点を通過しているか」で負担関係が決まる。材料の投入時点の判定と同じ論理なので、まとめて理解すると効率がよい。
問8材料の消費額の計算に予定価格を用いる目的として適切でないものはどれか。
- 1原価管理への役立ち
- 2実際価格の変動が製品原価に与える影響の排除
- ✔実際消費量の把握を不要にすること
- 4計算の迅速化
- 5材料受入価格差異の把握
解説:◆結論
予定価格は「価格」を予定するだけで、実際消費量の把握は依然として必要。消費量まで不要になるわけではない。
◆予定価格を用いる目的
①計算の迅速化(実際価格の確定を待たずに原価計算ができる)
②価格変動の影響の排除(同じ材料を使った製品の原価が月によって変わらない)
③価格差異の把握による購買活動の管理
◆計算の仕組み
消費額 = 予定価格 × 実際消費量
材料消費価格差異 =(予定価格 − 実際価格)× 実際消費量
数量は実際のまま、価格だけを固定する点が標準原価計算(数量にも標準を設定)との違い。
◆実際原価計算の枠内であることに注意
原価計算基準上、実際原価とは「実際消費量に基づく原価」をいい、価格は予定価格でもよい。したがって予定価格を使っても実際原価計算である。ここは理論問題で頻出。
◆差異の処理
材料消費価格差異は原価差異として、原則当年度の売上原価に賦課する。
部門別・個別原価計算全39問中 8問を掲載
問1製造間接費の基準操業度10,000時間、変動費率@300円、固定費予算3,000,000円(標準配賦率@600円)。当月の標準操業度9,500時間、実際操業度9,800時間、実際発生額6,000,000円。三分法(能率差異を変動費・固定費の両方から把握)による予算差異・能率差異・操業度差異の組合せとして正しいものはどれか。
- ✔予算差異△60,000円・能率差異△180,000円・操業度差異△60,000円
- 2予算差異0円・能率差異△180,000円・操業度差異△120,000円
- 3予算差異△60,000円・能率差異△180,000円・操業度差異△120,000円
- 4予算差異△60,000円・能率差異△90,000円・操業度差異△150,000円
- 5予算差異△300,000円・能率差異0円・操業度差異0円
解説:◆結論
三分法(能率差異を変動費・固定費の両方から把握)では次の3つに分解する。
予算差異 = 予算許容額 − 実際発生額
能率差異 =(標準操業度 − 実際操業度)× 標準配賦率
操業度差異 =(実際操業度 − 基準操業度)× 固定費率
◆計算
予算許容額 = @300×9,800h + 3,000,000 = 5,940,000円
予算差異 = 5,940,000 − 6,000,000 = △60,000円
能率差異 =(9,500 − 9,800)× @600 = △180,000円
操業度差異 =(9,800 − 10,000)× @300 = △60,000円
合計 △300,000円
検算:標準配賦額 9,500h×@600 = 5,700,000 と実際 6,000,000 の差 △300,000 と一致。
◆各差異の意味
予算差異…原価の浪費・節約(金額面の管理)
能率差異…作業能率の良否(時間の使い方)
操業度差異…固定費の配賦不足=設備の遊休(キャパシティの利用度)
◆方法による違い(頻出の混乱ポイント)
三分法(能率差異を変動費のみ):能率差異=時間差×変動費率、操業度差異=(標準操業度−基準操業度)×固定費率
四分法:能率差異を変動費部分と固定費部分に分けて表示
問2動力部門費300,000円を直接配賦法により配賦する。用役提供割合は、製造部門A:45%、製造部門B:30%、修繕部門:25%である。製造部門Aへの配賦額はいくらか。
- ✔180,000円
- 2135,000円
- 3120,000円
- 475,000円
- 5150,000円
解説:◆結論
直接配賦法は補助部門相互間の用役の授受を無視し、製造部門への提供割合のみで按分する。
◆計算
製造部門への提供割合 A:B = 45:30 = 60%:40%
A = 300,000 × 60% = 180,000円
B = 300,000 × 40% = 120,000円
◆3つの配賦法の比較
直接配賦法…補助部門間の授受を完全に無視。最も簡便だが正確性は劣る。
階梯式配賦法…補助部門に順位を付け、上位から下位へ一方向にのみ配賦。下位から上位へは配賦しない。
相互配賦法…補助部門相互の授受を反映。簡便法(第1次配賦で相互を考慮、第2次は直接配賦法)と連立方程式法(完全に反映)がある。
◆部門別計算の目的
①製品原価計算の正確化(部門ごとに適切な配賦基準を使える)
②原価管理(部門長の責任を明確にできる)
計算の手数はむしろ増えるので、「簡便になる」という記述は誤り。
◆発展:単一基準と複数基準
複数基準配賦法では、変動費は実際用役消費量、固定費は用役消費能力を基準に配賦する。
問3個別原価計算に関する記述として誤っているものはどれか。
- 1製造指図書別に原価を集計する
- 2月末に未完成の指図書の原価は仕掛品となる
- ✔特定製番のない継続反復生産に適している
- 4造船業や建設業などの個別受注生産に適している
- 5製造間接費は配賦基準により各指図書に配賦する
解説:◆結論
個別原価計算は顧客の注文に応じた個別受注生産(造船、建設、機械製作、特注品等)に適し、製造指図書ごとに原価計算表を作成して原価を集計する。同種製品の連続大量生産に適するのは総合原価計算である。
◆計算の流れ
①製造指図書を発行
②直接材料費・直接労務費・直接経費を各指図書に賦課
③製造間接費を配賦基準(直接作業時間、機械運転時間等)により配賦
④完成した指図書 → 製品勘定、未完成の指図書 → 月末仕掛品
◆両者の本質的な違い
個別原価計算…原価を「指図書」という単位で捕まえる。期末仕掛品の評価に按分計算は不要(未完成指図書の集計額そのもの)。
総合原価計算…一定期間の原価を「完成品と期末仕掛品」に按分する。だから完成品換算量や平均法・先入先出法の議論が出てくる。
◆発展
同種製品を一定数量ごとに生産する場合はロット別個別原価計算を用いる(個別原価計算の一形態)。
問4年間製造間接費予算12,000,000円、年間予定直接作業時間24,000時間。当月の実際直接作業時間1,900時間、実際発生額1,000,000円のとき、当月の製造間接費配賦差異はいくらか。
- 1差異は生じない
- 2950,000円(不利差異)
- 3100,000円(不利差異)
- 450,000円(有利差異)
- ✔50,000円(不利差異)
解説:◆結論
予定配賦率 = 製造間接費予算 ÷ 基準操業度
予定配賦額 = 予定配賦率 × 実際操業度
配賦差異 = 予定配賦額 − 実際発生額
◆計算
予定配賦率 = 12,000,000 ÷ 24,000h = @500円
予定配賦額 = @500 × 1,900h = 950,000円
配賦差異 = 950,000 − 1,000,000 = △50,000円(不利差異・借方差異)
◆なぜ予定配賦するのか
実際配賦には3つの欠点がある。
①月末まで配賦額が確定せず計算が遅れる
②季節的変動により月ごとに単位原価が変動する
③操業度が下がった月は固定費の負担が増え単位原価が上昇する(操業度の影響が製品原価に紛れ込む)
予定配賦ならこれらを排除し、正常な原価を製品に負担させられる。
◆差異の分析
配賦差異はさらに予算差異(原価の浪費・節約)と操業度差異(設備の遊休)に分解できる。この分解により、差異の原因と責任の所在が明確になる。
◆会計処理
原則として当年度の売上原価に賦課。多額なら売上原価と期末棚卸資産に配賦。
問5個別原価計算において、補修によって仕損品が良品となる場合の仕損費の計算方法として正しいものはどれか。
- ✔補修指図書に集計された製造原価を仕損費とする
- 2仕損費は計算しない
- 3仕損費は常に非原価項目とする
- 4旧製造指図書に集計された製造原価の全額を仕損費とする
- 5新製造指図書に集計された製造原価から仕損品評価額を控除した額を仕損費とする
解説:◆結論
補修によって仕損品が良品となる場合は、補修指図書を発行し、そこに集計された製造原価を仕損費として元の指図書に賦課する。
◆仕損費の計算パターン(4つ)
①補修可能 → 補修指図書に集計された原価 = 仕損費
②代品製造・旧指図書の全部が仕損 → 旧指図書の原価(−仕損品評価額)= 仕損費
③代品製造・旧指図書の一部が仕損 → 新指図書の原価(−仕損品評価額)= 仕損費
④軽微な仕損 → 仕損費を計上せず、仕損品評価額を指図書の原価から控除するだけ
◆仕損費の処理
直接経費として当該指図書に賦課する方法と、間接費(製造間接費)として処理し各指図書に配賦する方法がある。特定の指図書に関連づけられるなら賦課、そうでなければ配賦。
◆総合原価計算との違い
個別原価計算 … 指図書単位で仕損費を把握し賦課する
総合原価計算 … 度外視法または非度外視法により、完成品・期末仕掛品に負担させる
把握の単位が「指図書」か「期間」かという違いから処理方法が分かれる。
◆作業屑
作業屑の評価額は当該指図書の原価から控除。不明なら発生部門の部門費から控除する。
問6補助部門費の配賦方法に関する記述として誤っているものはどれか。
- 1直接配賦法は補助部門相互の用役授受を無視する
- 2階梯式配賦法では補助部門に順位をつけ、上位から下位へ一方向にのみ配賦する
- ✔階梯式配賦法では下位部門から上位部門への配賦も行う
- 4簡便法としての相互配賦法では第1次配賦で相互の授受を考慮し、第2次配賦は直接配賦法による
- 5相互配賦法は補助部門相互の用役授受を計算に反映する
解説:◆結論
階梯式配賦法は補助部門に順位を付け、上位から下位へ一方向にのみ配賦する。下位から上位への配賦は行わない。
◆3つの配賦法の比較
直接配賦法 … 補助部門相互の授受を完全に無視。最も簡便だが正確性は劣る。
階梯式配賦法 … 一方向のみ配賦。簡便さと正確性の中間。
相互配賦法 … 相互の授受を反映。簡便法(第1次は相互考慮、第2次は直接配賦)と連立方程式法(完全反映)がある。
◆階梯式の順位付けルール
①他の補助部門への用役提供先の数が多い部門を上位
②同数の場合は第1次集計額(部門費)が大きい方を上位
◆連立方程式法の計算例
A=300,000+0.5B、B=150,000+0.5A を解く
A=300,000+0.5(150,000+0.5A)=375,000+0.25A
0.75A=375,000 → A=500,000、B=400,000
◆部門別計算の目的
①製品原価計算の正確化(部門ごとに適切な配賦基準を使える)
②原価管理(部門長の責任区分を明確にできる)
計算の手数は増えるので「簡便になる」は誤り。
問7製造間接費差異の四分法において把握される差異の組合せとして正しいものはどれか。
- 1予算差異・市場占拠率差異・市場総需要差異・操業度差異
- 2予算差異・操業度差異・能率差異・歩留差異
- 3価格差異・数量差異・賃率差異・時間差異
- ✔予算差異・変動費能率差異・固定費能率差異・操業度差異
- 5材料差異・労務費差異・間接費差異・販売費差異
解説:◆結論
四分法は能率差異を変動費部分と固定費部分に分解し、次の4つを把握する。
予算差異/変動費能率差異/固定費能率差異/操業度差異
◆各差異の計算式
予算差異 = 予算許容額 − 実際発生額
変動費能率差異 =(標準操業度 − 実際操業度)× 変動費率
固定費能率差異 =(標準操業度 − 実際操業度)× 固定費率
操業度差異 =(実際操業度 − 基準操業度)× 固定費率
◆分解方法による違い(混乱しやすい部分の整理)
二分法:予算差異/操業度差異
三分法A(能率差異を両方から):能率差異に固定費能率差異が含まれる
三分法B(能率差異を変動費のみから):固定費能率差異が操業度差異に含まれる
四分法:4つすべてを区別して表示
どの方法でも差異の合計額は同じ。どこに固定費能率差異を含めるかの違いにすぎない。
◆固定費能率差異の意味
固定費は操業度に関係なく発生するため、能率が悪くて時間を余分に使っても現金支出は増えない。したがって固定費能率差異は「管理可能性が低い」とされ、方法によって扱いが分かれる。
問8製造間接費を部門別予定配賦率により配賦する利点として適切でないものはどれか。
- ✔配賦計算の手数が大幅に減少する
- 2部門別に予算差異・操業度差異を把握できる
- 3部門ごとの作業内容の違いを原価に反映できる
- 4製品原価の正確性が高まる
- 5部門ごとの原価責任を明確にできる
解説:◆結論
部門別予定配賦の目的は①製品原価計算の正確化と②原価管理であり、計算の手数はむしろ増える。「手数が減る」という記述は誤り。
◆なぜ正確になるのか
工場全体で1本の配賦率(総括配賦率)を使うと、機械中心の部門も手作業中心の部門も同じ基準で配賦されてしまう。部門別にすれば、切削部門は機械運転時間、組立部門は直接作業時間というように、部門の作業実態に合った基準を選べる。
◆なぜ管理に役立つのか
部門ごとに予定配賦率を設定すれば、配賦差異(予算差異・操業度差異)も部門別に把握できる。差異の発生場所=責任部門が特定できるため、是正措置につながる。
◆計算例
切削部門:予算3,600,000円÷予定機械時間6,000h=@600円
実際機械時間5,800hなら予定配賦額3,480,000円、実際発生額3,500,000円との差△20,000円が切削部門の配賦差異。
◆部門別計算の全体手順
第1次集計(部門個別費の賦課+部門共通費の配賦)→ 第2次集計(補助部門費の配賦)→ 製造部門費を製品へ配賦
という3段階の中で、予定配賦率は最後の段階に使われる。
総合原価計算全45問中 8問を掲載
問1期首仕掛品200個(加工進捗度50%、材料費100,000円・加工費40,000円)、当期投入1,800個(材料費900,000円・加工費900,000円)、完成品1,700個、期末仕掛品300個(加工進捗度60%)。材料は工程始点投入。平均法による期末仕掛品原価はいくらか。
- ✔240,000円
- 2225,000円
- 3150,000円
- 4300,000円
- 5270,000円
解説:◆結論
平均法は「期首仕掛品原価+当期投入原価」を「完成品+期末仕掛品」の合計で割って平均単価を出す。期首と当期投入を区別しないのが特徴。
◆計算
材料費(始点投入なので数量ベース)
単価 =(100,000+900,000)÷(1,700+300)= @500円
期末 = 300個 × @500 = 150,000円
加工費(完成品換算量ベース)
換算量 = 1,700 + 300×60% = 1,880個
単価 =(40,000+900,000)÷ 1,880 = @500円
期末 = 180 × @500 = 90,000円
期末仕掛品 = 240,000円、完成品 = 1,940,000 − 240,000 = 1,700,000円
◆手順の型(どの総合原価計算でも同じ)
①材料費と加工費に分ける
②材料の投入時点を確認(始点=数量、平均的=換算量、終点=完成品のみ)
③換算量を計算する
④単価を出して期末仕掛品を評価し、差額で完成品原価を出す
◆先入先出法との違い
平均法は期首原価を混ぜる、先入先出法は期首を先に完成させたとみて期末は当期投入分から計算する。物価変動時に単価が変わるため結果が異なる。
問2期首仕掛品200個(加工進捗度50%、材料費100,000円・加工費40,000円)、当期投入1,800個(材料費900,000円・加工費890,000円)、完成品1,700個、期末仕掛品300個(加工進捗度60%)。材料は工程始点投入。先入先出法による完成品総合原価はいくらか。
- 11,750,000円
- 21,930,000円
- 31,650,000円
- ✔1,690,000円
- 51,700,000円
解説:◆結論
先入先出法では「期末仕掛品は当期投入分から成る」と考える。したがって期末仕掛品の単価計算に期首仕掛品原価は含めない。
◆計算
材料費 単価 = 900,000 ÷ 1,800個 = @500 → 期末 300個×@500 = 150,000円
加工費 当期完成品換算量 = 完成1,700 − 期首100(200×50%)+ 期末180 = 1,780個
単価 = 890,000 ÷ 1,780 = @500 → 期末 180×@500 = 90,000円
期末仕掛品 = 240,000円
完成品 = 期首140,000 + 当期投入1,790,000 − 期末240,000 = 1,690,000円
◆最大のポイントは分母
当期の加工作業量=完成品換算量から期首仕掛品の完成品換算量を差し引く。期首仕掛品は前期にすでに50%まで加工済みなので、当期に行ったのは残りの50%分だけだから。
◆修正先入先出法と純粋先入先出法
修正(通常)… 完成品原価を一括して平均単価で示す
純粋 … 期首からの完成分と当期着手完成分を区別して単価を示す
試験では特に指示がなければ修正先入先出法で解く。
問3工程の終点で正常仕損が発生した場合、度外視法における正常仕損費の負担関係として正しいものはどれか。
- 1完成品と期末仕掛品の両者に数量比で負担させる
- ✔完成品のみに負担させる
- 3当期の営業外費用とする
- 4期末仕掛品のみに負担させる
- 5非原価項目として処理する
解説:◆結論
仕損の負担関係は「期末仕掛品が仕損の発生点を通過しているか」で決まる。終点発生なら期末仕掛品は通過していないので、完成品のみが負担する。
◆判定ルール
発生点 > 期末仕掛品の進捗度 → 完成品のみ負担
発生点 ≦ 期末仕掛品の進捗度 → 完成品と期末仕掛品の両者負担
始点発生 → 常に両者負担
発生点不明 → 通常は両者負担として処理
◆度外視法の仕組み
仕損の数量を按分計算の分母から除外するだけで、自動的に良品が仕損費を吸収する。
・完成品のみ負担 → 完成品数量に仕損を含めたまま(あるいは仕損を無視して)計算
・両者負担 → 完成品数量と期末仕掛品数量のみで総製造費用を按分
◆非度外視法との使い分け
度外視法は簡便だが仕損費の金額が見えない。原価管理を重視するなら、仕損費を分離集計して負担させる非度外視法を用いる。
◆異常仕損は別扱い
正常な範囲を超える異常仕損は原価性がなく、非原価項目(営業外費用・特別損失)とする。
問4非度外視法の特徴として正しいものはどれか。
- ✔正常仕損費を分離して把握し、良品に対して負担させる
- 2仕損費を常に非原価項目とする
- 3仕損の数量を無視して計算する
- 4期末仕掛品には一切負担させない
- 5異常仕損のみを対象とする方法である
解説:◆結論
非度外視法は正常仕損品の原価をいったん分離して集計し、その発生点を考慮して良品(完成品のみ、または完成品と期末仕掛品)に負担させる方法。
◆手順
①仕損品を1つの「製品」とみなして、その原価を計算する
②仕損品に処分価値があれば、その評価額を控除する
③残額(正常仕損費)を発生点に応じて完成品のみ、または完成品と期末仕掛品に配分する
◆長所と短所
長所…仕損費の金額が明示されるため、いくら無駄が出ているかが分かり原価管理に役立つ
短所…計算が煩雑
◆度外視法との比較
度外視法は仕損数量を無視することで自動的に負担させる簡便法。計算結果は必ずしも一致しないため、問題文でどちらの方法によるかを必ず確認する。
◆仕損品評価額の扱い
評価額は正常仕損費から控除する。材料としての価値が残るなら材料費から控除するなど、控除先の指示にも注意する。
問5累加法による工程別総合原価計算の説明として正しいものはどれか。
- 1各工程費を最終製品に直接集計し、工程間の振替を行わない
- 2工程別計算は個別原価計算でのみ用いられる
- ✔前工程費を次工程の始点で投入される材料費と同様に扱い、順次振り替えて計算する
- 4工程別の原価管理には適さない
- 5前工程費は期末仕掛品に負担させない
解説:◆結論
累加法では、第1工程の完成品原価を「前工程費」として第2工程に振り替え、これを始点投入の材料費と同様に扱って順次計算していく。
◆前工程費の特徴
前工程を終えた時点で全額が投入済みなので、進捗度を考慮せず数量比で期末仕掛品に配分する(始点投入の材料費と同じ扱い)。ここを換算量で按分してしまうミスが多い。
◆累加法と非累加法
累加法…工程ごとに順次振り替える。各工程の完成品原価が把握でき実務的。
非累加法…各工程費を工程別に並列的に集計する。原価要素別・工程別の管理に優れるが計算が煩雑。「累加法と計算結果が一致する非累加法」と「通常の非累加法」がある。
◆予定振替原価の意義
実際原価で振り替えると前工程の非能率が後工程に転嫁され責任が不明確になる。予定(正常)原価で振り替えれば、差異は前工程に留まり工程別の責任が明確になる。
◆関連論点
中間工程の完成品を外部販売する場合は「半製品」勘定に振り替える。
問6等級別総合原価計算において、完成品総合原価3,000,000円を等価係数により按分する。製品A(等価係数1.0)500個、製品B(等価係数0.8)1,000個の場合、製品Bに按分される原価はいくらか。
- 12,000,000円
- 21,000,000円
- ✔1,846,154円
- 41,846,000円
- 51,500,000円
解説:◆結論
等級別総合原価計算は、同種製品でサイズや品位が異なる場合に、等価係数を用いて完成品総合原価を各等級製品に按分する方法。
◆計算
積数:A = 1.0 × 500 = 500、B = 0.8 × 1,000 = 800、合計 1,300
製品B = 3,000,000 × 800/1,300 = 1,846,154円
製品A = 3,000,000 × 500/1,300 = 1,153,846円
◆等価係数の設定基準
原価の発生と関連の深い物量的基準(重量、長さ、面積、純分度、厚み等)で設定する。販売価格や販売数量は原価の発生量と直結しないため不適切。
◆組別総合原価計算との違い(頻出の比較)
等級別…同一種類の製品で規格が異なるだけ。等価係数で按分。
組別…異なる種類の製品。組直接費は賦課、組間接費は配賦基準で配賦したうえで組ごとに単純総合原価計算。
「同種か異種か」が分岐点。
◆発展
原価要素別に異なる等価係数を用いる方法(材料費は重量、加工費は加工時間など)もあり、より正確な計算ができる。
問7連産品および副産物の会計処理として正しいものはどれか。
- ✔副産物の評価額は主産物の総合原価から控除する
- 2連産品は分離点後の個別費のみを製品原価とする
- 3副産物は必ず売却時に雑収入として処理する
- 4連産品の結合原価は物量基準以外では按分できない
- 5連産品の結合原価は最も高価な製品に全額負担させる
解説:◆結論
副産物の評価額は主産物の総合原価から控除する。
評価額 = 見積売却価額 − 見積追加加工費 − 見積販売費(=正味実現可能価額)
◆副産物と連産品の違い
副産物…主産物に比べて経済的価値が著しく小さい。評価額を主産物の原価から控除するだけ。
連産品…同一工程から必然的に生産される、いずれも経済的価値の高い製品群。結合原価を合理的基準で各連産品に按分する必要がある。
◆連産品の結合原価の按分方法
正常市価基準(見積正味実現可能価額基準)…分離点の市価、または最終売価から分離後の個別費を控除した額の比で按分。最も合理的とされる。
物量基準…重量・容積等の比で按分。市価が大きく異なる場合は不適切。
◆計算例(正味実現可能価額基準)
A:売価800,000−追加加工費200,000=600,000
B:売価500,000−追加加工費100,000=400,000
結合原価500,000 → A=300,000、B=200,000
◆意思決定との関連
追加加工の可否を判断するときは、結合原価は埋没原価として無視し、差額収益と追加加工費だけを比較する。
問8工程の始点で正常減損が発生した場合、度外視法における負担関係として正しいものはどれか。
- ✔完成品と期末仕掛品の両者が負担する
- 2非原価項目とする
- 3完成品のみが負担する
- 4減損は原価計算上考慮しない
- 5期末仕掛品のみが負担する
解説:◆結論
期末仕掛品が減損の発生点を通過している場合(始点発生など)は、完成品と期末仕掛品の両者が負担する。
◆負担関係の判定ルール
始点発生 → 常に両者負担
終点発生 → 完成品のみ負担
特定点発生 → 期末仕掛品の進捗度がその点を超えていれば両者負担、超えていなければ完成品のみ
平均的(安定的)発生 → 減損の完成品換算量(通常は減損量×50%)を用いて進捗度に応じて負担
発生点不明 → 通常は両者負担として処理
◆度外視法の仕組み
減損数量を按分計算の分母から除外することで、自動的に良品が減損費を吸収する。両者負担なら完成品数量と期末仕掛品数量のみで按分、完成品のみ負担なら完成品側だけで吸収させる。
◆異常減損
正常な範囲を超える減損は原価性がなく、非原価項目(営業外費用・特別損失)とする。正常減損費は良品の原価に含める点と対比して覚える。
◆仕損との違い
減損は蒸発・煙化などで物理的に消滅するため処分価値がない。仕損は不合格品として物が残るため、仕損品評価額の控除を検討する必要がある。
標準原価計算全28問中 8問を掲載
問1製品1個当たりの標準消費量2kg、標準単価@500円。当月生産量500個、実際消費量1,050kgのとき、材料数量差異はいくらか。
- ✔25,000円(不利差異)
- 226,000円(不利差異)
- 325,000円(有利差異)
- 450,000円(不利差異)
- 5差異は生じない
解説:◆結論
数量差異 =(標準消費量 − 実際消費量)× 標準単価
必ず標準単価で計算する(実際単価を使うと価格差異と二重計算になる)。
◆計算
標準消費量 = 2kg × 500個 = 1,000kg
数量差異 =(1,000 − 1,050)× @500 = △25,000円 → 不利差異
◆「標準消費量」は当月の"実際生産量"に対する量
ここを取り違える受験生が非常に多い。標準は「生産した分だけ許される消費量」なので、必ず実際生産量(完成品換算量)×1個当たり標準消費量で計算する。予定生産量ではない。
◆差異の原因
数量差異は材料の無駄遣い、歩留の悪化、品質不良などを示し、通常は製造現場(製造部門)の責任。価格差異は市場価格の変動や購買条件によるもので、購買部門の責任とされる。責任区分が異なる点が管理上の意味。
◆発展
複数材料を配合する場合、数量差異はさらに「配合差異」と「歩留差異」に分解できる。
問2原価計算基準における標準原価差異の会計処理として原則的な取扱いはどれか。
- 1翌期に繰り越して繰延資産とする
- 2原価差異は非原価項目とする
- ✔すべて売上原価に賦課する
- 4すべて期末仕掛品・製品に配賦する
- 5すべて営業外費用とする
解説:◆結論
原価計算基準では、原価差異は原則として当年度の売上原価に賦課する。
◆例外(ここが問われる)
①材料受入価格差異 → 材料の払出高と期末在高に配賦する
②比較的多額の差異が生じた場合 → 売上原価と期末棚卸資産に、指図書別または科目別に配賦する
③異常な状態に基づく差異 → 非原価項目(営業外費用・特別損失)
◆多額の場合の配賦計算
売上原価・期末製品・期末仕掛品の標準原価の比率で按分する。
例:売上原価800,000/期末製品120,000/期末仕掛品80,000、差異100,000(不利)
→ 売上原価に 100,000×800,000/1,000,000 = 80,000円を加算
◆なぜ原則は売上原価か
標準原価と実際原価の差は当期の能率の良否の結果であり、次期に繰り越すべき資産価値ではないから。ただし多額であれば標準原価が適切でなかった可能性があり、その場合は棚卸資産にも負担させて実際原価に近づける。
◆有利・不利の方向
不利差異は売上原価に加算、有利差異は減算する。
問3パーシャル・プランの説明として正しいものはどれか。
- ✔仕掛品勘定の借方を実際原価で記入し、原価差異は仕掛品勘定で把握する
- 2製品勘定を実際原価で記入する方法である
- 3仕掛品勘定の借方を標準原価で記入し、原価差異は各原価要素の勘定で把握する
- 4原価差異を把握しない方法である
- 5仕掛品勘定を用いない方法である
解説:◆結論
パーシャル・プランは仕掛品勘定の借方(当月投入額)を実際原価で記入するため、原価差異が仕掛品勘定に一括して現れる。
◆3つの記帳方法の比較
パーシャル・プラン … 借方は実際原価、貸方は標準原価。差異は仕掛品勘定で把握。記帳は簡便。
シングル・プラン … 借方も標準原価。差異は材料・賃金・製造間接費の各勘定で把握。差異の早期把握に優れる。
修正パーシャル・プラン … 標準単価(賃率)×実際消費量で振替。価格面の差異は各費目の勘定、数量面の差異は仕掛品勘定で把握。両者の中間。
◆どれを選ぶべきか
原価管理を重視するならシングル・プラン。原因別・費目別に差異が早く分かるため、是正措置を迅速に打てる。ただし振替のつど標準原価を計算する手数がかかる。
◆修正パーシャル・プランの合理性
価格差異・賃率差異は購買部門や労務部門の責任であり、製造現場の責任ではない。これらを材料・賃金勘定で先に切り離せば、仕掛品勘定には製造現場が責任を負う数量差異・時間差異だけが残る。責任会計の観点から優れた方法といえる。
問4複数種類の材料を配合して製造する場合の材料数量差異の細分に関する記述として正しいものはどれか。
- 1数量差異を価格差異と時間差異に分ける
- 2数量差異は細分できない
- 3数量差異を予算差異と操業度差異に分ける
- ✔数量差異を配合差異と歩留差異に分ける
- 5数量差異を賃率差異と能率差異に分ける
解説:◆結論
複数の材料を配合する場合、材料数量差異はさらに「配合差異」と「歩留差異」に分解できる。
◆2つの差異の意味
配合差異 … 標準的な配合割合からのズレによる差異。安い材料を多く使えば有利差異が出る。
歩留差異 … 投入量に対する産出量(歩留)の良否による差異。ロスが多ければ不利差異。
◆計算式
配合差異 =(標準配合による実際総投入量の各材料量 − 実際消費量)× 標準単価
歩留差異 =(実際産出量に対する標準総投入量 − 実際総投入量を標準配合で配分した量)× 標準単価
※単一材料の場合は配合差異が生じないため、数量差異=歩留差異となる。
◆なぜ分解するのか
配合は「どの材料をどれだけ混ぜるか」という配合設計・調達の問題、歩留は「どれだけロスなく作れたか」という製造技術の問題。原因も責任者も異なるため、分けて管理する意味がある。食品・化学・鉄鋼など配合を伴う産業で重要。
◆労務費への波及
歩留が悪化すれば同じ産出量を得るのに余分な加工が必要となるため、労務費にも歩留差異が生じる。これを分離した残りが純粋な作業能率を示す労働能率差異となる。
問5固定予算により製造間接費の差異分析を行う場合の予算差異の計算式として正しいものはどれか。
- 1変動費率×実際操業度+固定費予算−実際発生額
- ✔固定予算額−実際発生額
- 3予定配賦額−実際発生額
- 4(実際操業度−基準操業度)×予定配賦率
- 5標準配賦額−予算許容額
解説:◆結論
固定予算では操業度にかかわらず予算額が一定なので、
予算差異 = 固定予算額 − 実際発生額
操業度差異 =(実際操業度 − 基準操業度)× 予定配賦率
◆変動予算との比較
固定予算 … 特定の操業度のみを前提。操業度が変動すると、予算差異に操業度変動の影響が混入してしまい、原価の浪費・節約が正しく測れない。
変動予算 … 予算許容額=変動費率×実際操業度+固定費予算額。実際の操業度に見合った予算と比較できるため、差異分析が適切に行える。
◆なぜ変動予算が優れているのか
操業度が予定を下回れば変動費は当然減る。それを固定予算と比べると「節約した」ように見えてしまうが、実際は単に生産が少なかっただけ。変動予算はこの錯覚を防ぐ。
◆固定予算が使われる場面
操業度の変動が小さい部門や、そもそも操業度と原価の関係が薄い部門(一般管理部門など)では固定予算でも実務上問題が少ない。
◆操業度差異に予定配賦率を使う理由
固定予算では変動費と固定費を分解していないため、固定費率ではなく予定配賦率全体を用いる。
問6売上高の予算実績差異を分析する場合、販売価格差異と販売数量差異に分解する。販売数量差異をさらに細分した差異の組合せとして正しいものはどれか。
- 1賃率差異と時間差異
- 2予算差異と操業度差異
- 3価格差異と数量差異
- ✔市場総需要量差異と市場占拠率差異
- 5配合差異と歩留差異
解説:◆結論
売上高の差異は「販売価格差異」と「販売数量差異」に分解し、さらに販売数量差異を「市場総需要量差異」と「市場占拠率差異」に細分できる。
◆計算式
販売価格差異 =(実際単価 − 予算単価)× 実際数量
販売数量差異 =(実際数量 − 予算数量)× 予算単価
市場総需要量差異 =(実際市場規模 − 予算市場規模)× 予算占拠率 × 予算単価
市場占拠率差異 =(実際占拠率 − 予算占拠率)× 実際市場規模 × 予算単価
◆計算例
予算:1,000個・@1,000円、実績:1,100個・@950円
価格差異 =(950−1,000)×1,100 = △55,000円
数量差異 =(1,100−1,000)×@1,000 = +100,000円
合計 +45,000円(実績1,045,000−予算1,000,000と一致)
◆細分する意味
市場総需要量差異は景気や業界全体の動向という外部要因、市場占拠率差異は自社の販売努力の成果を示す。責任の所在を分けることで、営業部門を公正に評価できる。
◆原価差異との構造の共通性
「単価の差×実際量」と「数量の差×標準(予算)単価」という分解の型は、材料費・労務費の差異分析とまったく同じである。
問7原価管理に最も適する原価標準として、原価計算基準が通常用いるべきとしているものはどれか。
- ✔現実的標準原価
- 2理想標準原価
- 3正常原価
- 4予定原価
- 5基準標準原価
解説:◆結論
原価計算基準が通常用いるべきとするのは「現実的標準原価」。良好な能率のもとで達成が期待される標準であり、通常生じる程度の減損・仕損・遊休時間の余裕を含む。
◆標準原価の3類型
理想標準原価 … 最高能率・最大操業度を前提とし、減損や仕損を一切認めない。達成不可能なため原価管理には不適当で、財務諸表作成にも用いられない。
現実的標準原価 … 良好な能率のもとで達成が期待される。財務諸表作成・原価管理・予算編成のいずれにも使える。基準が通常用いるべきとする標準。
正常原価 … 経営における異常な状態を排除し、過去の実績を統計的に平準化して将来の趨勢を加味した原価。財務諸表作成に適する。
◆なぜ理想標準原価が使えないのか
達成不可能な目標は常に不利差異を生み、現場の意欲を削ぐ。また差異が大きすぎて「どこに問題があるのか」の情報価値も失われる。動機づけの観点から、努力すれば届く水準が望ましい。
◆標準の改訂
生産条件・価格水準・技術水準が変化して現状に適合しなくなったら適時に改訂すべきである。ただし頻繁な改訂は比較可能性を損なうため、通常は年1回程度の定期的な見直しが行われる。
問8標準原価カード(原価標準)の構成要素の組合せとして正しいものはどれか。
- ✔標準単価×標準消費量、標準賃率×標準作業時間、標準配賦率×標準操業度
- 2予算額÷実際生産量
- 3総原価÷販売数量
- 4実際単価×実際消費量
- 5変動費のみ
解説:◆結論
原価標準(製品1単位当たりの標準原価)は、各原価要素とも「物量標準 × 価格標準」の積で設定する。
直接材料費:標準単価 × 標準消費量
直接労務費:標準賃率 × 標準直接作業時間
製造間接費:標準配賦率 × 標準操業度(標準時間)
◆標準原価カードの例
直接材料費 @500円 × 2kg = 1,000円
直接労務費 @1,000円 × 0.5h = 500円
製造間接費 @600円 × 0.5h = 300円
製品1個当たり標準原価 1,800円
◆物量と価格を分ける意味
差異分析がそのまま「数量面の差異(現場の責任)」と「価格面の差異(購買・労務部門の責任)」に分解できる。標準の設定段階から責任区分が織り込まれている。
◆標準消費量への仕損の織込み
正常仕損・減損はあらかじめ標準に含める(正味標準×(1+仕損率)等)。標準を超えた分だけが差異として現れる設計。
◆製造間接費の標準
変動費率・固定費率×標準操業度として設定し、基準操業度・変動予算とセットで決まる。標準原価計算と予算管理が接続する箇所である。
直接原価計算・CVP分析全37問中 8問を掲載
問1直接原価計算による営業利益は500,000円である。期首棚卸資産に含まれる固定製造原価は80,000円、期末棚卸資産に含まれる固定製造原価は120,000円であった。全部原価計算による営業利益はいくらか。
- 1500,000円
- 2620,000円
- 3700,000円
- ✔540,000円
- 5460,000円
解説:◆結論
全部原価計算の営業利益 = 直接原価計算の営業利益 + 期末棚卸資産の固定製造原価 − 期首棚卸資産の固定製造原価
◆計算
500,000 + 120,000 − 80,000 = 540,000円
◆なぜ差が生じるのか
全部原価計算では固定製造原価も製品原価となり、売れ残った分は棚卸資産として次期に繰り延べられる。直接原価計算では固定製造原価を全額当期の期間原価とする。したがって在庫が増えた期は全部原価計算の方が費用が少なく利益が大きくなる。
在庫増加 → 全部 > 直接
在庫減少 → 全部 < 直接
在庫変動なし → 一致
◆なぜ調整が必要か(制度上の理由)
外部報告目的の財務諸表では棚卸資産を全部原価で評価しなければならないため、内部管理で直接原価計算を用いていても、決算では固定費調整により全部原価計算の利益に修正する。
◆調整方法
一括調整法(当期の固定費を一括按分)ところがし計算法(各期の配賦率で厳密に計算)がある。
問2販売単価1,000円、変動費率60%、固定費1,200,000円のとき、損益分岐点売上高はいくらか。
- ✔3,000,000円
- 22,000,000円
- 31,200,000円
- 43,600,000円
- 52,400,000円
解説:◆結論
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 貢献利益率
◆計算
貢献利益率 = 1 − 変動費率60% = 40%
損益分岐点売上高 = 1,200,000 ÷ 0.4 = 3,000,000円
販売数量では 3,000,000 ÷ @1,000 = 3,000個
◆公式の意味を理解する
貢献利益は「固定費の回収と利益獲得に貢献する額」。売上が1円増えるごとに0.4円ずつ固定費を回収していき、固定費1,200,000円をちょうど回収し終わる点が損益分岐点。だから固定費を貢献利益率で割る。
◆派生公式(すべて同じ発想)
目標営業利益達成売上高 =(固定費+目標利益)÷ 貢献利益率
目標利益率達成売上高 = 固定費 ÷(貢献利益率 − 目標売上高利益率)
税引後目標利益 → まず 税引後利益÷(1−税率) で税引前に直してから計算
◆CVP分析の前提(限界)
原価の固変分解が可能/単価一定/変動費率一定/生産量=販売量/セールス・ミックス一定。現実には成立しにくく、関連範囲内でのみ有効。
問3実際売上高4,000,000円、損益分岐点売上高3,000,000円のとき、安全余裕率はいくらか。
- 140%
- 233.3%
- ✔25%
- 4133.3%
- 575%
解説:◆結論
安全余裕率 =(実際売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 実際売上高
◆計算
(4,000,000 − 3,000,000)÷ 4,000,000 = 25%
◆損益分岐点比率との関係
損益分岐点比率 = 3,000,000 ÷ 4,000,000 = 75%
安全余裕率 + 損益分岐点比率 = 100%
片方が分かればもう片方は即座に出る。試験ではこの関係を使うと計算が速い。
◆指標の意味
安全余裕率は「売上があと何%落ちても赤字にならないか」を示す不況抵抗力の指標。25%なら売上が25%減ったところで損益分岐点に達する。値が大きいほど安全性が高い。
◆経営レバレッジ係数との関係
安全余裕率の逆数が経営レバレッジ係数(25%→4倍)。固定費比率が高い企業は安全余裕率が低く、レバレッジ係数が大きい=売上変動で利益が大きく振れる、という関係で結びついている。
◆改善策
固定費の削減、変動費率の引下げ、販売単価の引上げにより損益分岐点が下がり、安全余裕率が上昇する。
問4貢献利益1,600,000円、営業利益400,000円のとき、経営レバレッジ係数はいくらか。また売上高が10%増加した場合の営業利益の増加率はいくらか。
- 1係数4・増加率4%
- 2係数4・増加率10%
- 3係数2・増加率20%
- ✔係数4・増加率40%
- 5係数0.25・増加率2.5%
解説:◆結論
経営レバレッジ係数 = 貢献利益 ÷ 営業利益
営業利益の変化率 = 売上高の変化率 × 経営レバレッジ係数
◆計算
係数 = 1,600,000 ÷ 400,000 = 4
売上10%増加時の営業利益増加率 = 10% × 4 = 40%
検算:売上が10%増えると貢献利益も10%増(160,000円増)。固定費は不変なので営業利益は400,000→560,000で40%増。一致する。
◆何を測っているのか
固定費の"てこ"の効き具合。固定費の比率が高い企業ほど係数が大きく、売上が少し増えるだけで利益が大きく増える一方、売上減少時の損失拡大も激しい。つまり収益構造のリスクを表す指標である。
◆安全余裕率との関係
経営レバレッジ係数 = 1 ÷ 安全余裕率
本問なら安全余裕率は25%となる。両者は同じことを裏表から見ている。
◆実務的な含意
労働集約型(変動費中心)は係数が小さく安定的、設備集約型(固定費中心)は係数が大きく景気変動に弱い。設備投資の意思決定はこのリスクの引受けでもある。
問5売上高5,000,000円、変動売上原価2,500,000円、変動販売費500,000円、固定製造原価1,200,000円、固定販売費及び一般管理費600,000円のとき、貢献利益と営業利益の組合せとして正しいものはどれか。
- 1貢献利益2,500,000円・営業利益200,000円
- ✔貢献利益2,000,000円・営業利益200,000円
- 3貢献利益2,500,000円・営業利益700,000円
- 4貢献利益2,000,000円・営業利益800,000円
- 5貢献利益1,300,000円・営業利益700,000円
解説:◆結論
直接原価計算のP/Lは「売上高 → 変動製造マージン → 貢献利益 → 営業利益」という段階構造になる。
◆計算
貢献利益 = 5,000,000 −(2,500,000+500,000)= 2,000,000円
営業利益 = 2,000,000 −(1,200,000+600,000)= 200,000円
◆段階の整理
売上高 5,000,000
− 変動売上原価 2,500,000
= 変動製造マージン 2,500,000
− 変動販売費 500,000
= 貢献利益 2,000,000
− 固定製造原価 1,200,000
− 固定販管費 600,000
= 営業利益 200,000
◆全部原価計算との違い
全部原価計算 … 固定製造原価も製品原価。在庫として繰り延べられる。
直接原価計算 … 固定製造原価は期間原価。全額が当期の費用。
その結果、在庫が増える期は全部原価計算の利益が大きくなる。
◆直接原価計算の利点
①貢献利益が把握できるためCVP分析・利益計画に直結する
②生産量を増やすだけで利益が増える(全部原価計算の欠点)ということが起きない
③固定費と変動費が分かれているため意思決定に使いやすい
問6製品Aの貢献利益率50%・売上構成比60%、製品Bの貢献利益率25%・売上構成比40%、固定費1,600,000円である。セールス・ミックスが一定のときの損益分岐点売上高はいくらか。
- 13,200,000円
- ✔4,000,000円
- 35,000,000円
- 44,266,667円
- 56,400,000円
解説:◆結論
セールス・ミックスが一定なら、加重平均貢献利益率を用いて全体の損益分岐点を求められる。
◆計算(売上高構成比を使う方法)
加重平均貢献利益率 = 50%×0.6 + 25%×0.4 = 40%
損益分岐点売上高 = 1,600,000 ÷ 0.4 = 4,000,000円
内訳:A = 2,400,000円、B = 1,600,000円
◆数量比が与えられた場合(セット法)
A2個+B1個を1セットとみて、セット当たり貢献利益を計算する。
例:A@300円×2+B@600円 = @1,200円/セット
損益分岐点セット数 = 固定費 ÷ セット当たり貢献利益
→ 各製品の数量に展開する
◆前提の重要性
セールス・ミックスが変われば加重平均貢献利益率も変わり、損益分岐点も動く。同じ売上高でも貢献利益率の高い製品が多く売れれば利益は増える。したがって「ミックス一定」という前提が崩れると分析結果は使えなくなる。
◆実務的な含意
売上高が予算どおりでも利益が未達となる原因の多くは、このセールス・ミックスの変化にある。予算実績差異分析でも販売数量差異をさらにミックス差異と数量差異に分解することがある。
問7生産量が販売量を上回った期における、全部原価計算と直接原価計算の営業利益の関係として正しいものはどれか。
- ✔全部原価計算の営業利益の方が大きくなる
- 2両者は必ず一致する
- 3直接原価計算の営業利益の方が大きくなる
- 4生産量と利益は無関係である
- 5販売量が同じなら必ず一致する
解説:◆結論
生産量 > 販売量(在庫増加)の期は、全部原価計算の営業利益の方が大きくなる。
◆理由
全部原価計算では固定製造原価も製品原価に含まれるため、売れ残った分は棚卸資産として次期に繰り延べられる。その分だけ当期の費用が少なくなり、利益が大きく出る。
◆3つのパターン
生産量 > 販売量(在庫増)→ 全部 > 直接
生産量 < 販売量(在庫減)→ 全部 < 直接
生産量 = 販売量 → 一致
◆全部原価計算の問題点
売れなくても作れば利益が増えるため、経営者が在庫を積み増す誘因を持ってしまう。業績評価に全部原価計算の利益を用いると、過剰生産による資金固定化を招くおそれがある。これが直接原価計算が管理目的で支持される最大の理由。
◆固定費調整
全部原価計算の営業利益 = 直接原価計算の営業利益 + 期末棚卸資産の固定製造原価 − 期首棚卸資産の固定製造原価
外部報告目的では棚卸資産を全部原価で評価する必要があるため、この調整を行う。
◆調整方法
一括調整法(当期の固定費を一括按分)ところがし計算法(各期の配賦率で厳密に計算)がある。
問8直接原価計算の営業利益を全部原価計算の営業利益に修正する固定費調整について、期首・期末仕掛品および製品に含まれる固定製造間接費を、それぞれの期の配賦率で計算する方法はどれか。
- 1総平均法
- ✔ころがし計算法
- 3予定配賦法
- 4先入先出法
- 5一括調整法
解説:◆結論
ころがし計算法は、仕掛品→製品→売上原価と順を追って、各期の固定費配賦率で棚卸資産に含まれる固定製造原価を厳密に計算する方法。
◆2つの方法
一括調整法 … 当期の固定製造間接費を、完成品と期末仕掛品等に一括して按分する簡便法
ころがし計算法 … 期首仕掛品に含まれる固定費(前期の配賦率)と当期発生の固定費を区別し、在庫の流れに沿って転がしながら計算する厳密法
◆固定費調整の基本式(再確認)
全部原価計算の営業利益 = 直接原価計算の営業利益 + 期末棚卸資産の固定費 − 期首棚卸資産の固定費
◆なぜ方法の違いが生じるのか
「期末棚卸資産に含まれる固定費」をどう測るかの精度の問題。単価が期によって変わる場合、どの期の固定費が在庫に残っているかで金額が変わる。一括調整法は当期分だけで近似し、ころがし計算法は流れを忠実に追う。
◆試験対策
指示がなければ通常は一括調整法ベースの数値が与えられる。ころがし計算法は「先入先出法を前提に期首と当期の配賦率が異なる」設定で出題される。
意思決定・設備投資全43問中 8問を掲載
問1遊休生産能力がある状況で特別注文の受諾可否を判断する際、意思決定に関連する原価として適切なものはどれか。
- 1すでに支出済みの機械の減価償却費
- ✔注文により追加的に発生する変動製造原価
- 3注文を受けても変化しない固定製造間接費配賦額
- 4既存製品に配賦済みの共通管理費
- 5過去の研究開発費
解説:◆結論
意思決定に関連するのは「代替案間で差が生じる未来の原価=差額原価(回避可能原価)」。追加的に発生する変動製造原価がこれにあたる。
◆無関連原価(考慮してはいけないもの)
・すでに支出済みの減価償却費や過去の研究開発費 → 埋没原価
・注文の有無で総額が変わらない固定製造間接費の配賦額 → 無関連
・既存製品に配賦済みの共通管理費 → 無関連
◆判断の型
差額収益(特別注文の売上)− 差額原価(追加変動費+追加固定費+機会原価)= 差額利益
差額利益が正なら受注する。
◆遊休能力の有無で結論が変わる
遊休能力あり…追加変動費のみが差額原価。単価が変動費を上回れば受注が有利。
遊休能力なし…既存製品の生産を削らざるを得ないため、失われる貢献利益が機会原価として加わる。
◆定性的要因も忘れない
既存顧客への価格波及、ブランドイメージ、生産能力の逼迫による納期遅延リスクなど、数値化しにくい影響も考慮すべきである。
問2埋没原価(サンクコスト)の説明として正しいものはどれか。
- 1将来の意思決定によって変化する原価
- ✔いずれの代替案を選択しても回収不能で、意思決定に影響しない過去の原価
- 3他の代替案を選択していれば得られたはずの利益
- 4変動費のうち直接材料費のみを指す
- 5予算と実績の差額
解説:◆結論
埋没原価(サンクコスト)は、過去の意思決定によりすでに発生し、どの代替案を選んでも変わらない回収不能な原価。意思決定では完全に無視する。
◆典型例
・取得済み設備の未償却残高(帳簿価額)
・すでに支出した研究開発費・広告費
・連産品の分離点までに発生した結合原価
・受注の有無にかかわらず発生する固定費
◆重要な注意点
「帳簿価額そのもの」は埋没原価だが、その資産を売却した場合の売却収入や、売却損益に伴う法人税の増減はキャッシュ・フローに影響するため関連原価になる。取替投資の問題ではこの区別が合否を分ける。
◆混同しやすい概念の整理
差額原価…代替案間で差が生じる未来原価(関連原価)
機会原価…ある案を選んだことで断念した他の案から得られたはずの最大の利益(関連原価)
埋没原価…過去の原価で差が生じない(無関連原価)
付加原価…財務会計上は費用でないが計算上加算する原価(自己資本利子等)
◆心理的な罠
すでに投じた費用を惜しんで不利な案を続けてしまう「コンコルド効果」は、埋没原価を無視できていない典型例である。
問3投資額1,000,000円、毎年のネット・キャッシュ・フロー300,000円が5年間見込まれる。割引率10%、5年の年金現価係数3.7908のとき、正味現在価値(NPV)はいくらか。
- 1500,000円
- 2△137,240円
- ✔137,240円
- 41,137,240円
- 50円
解説:◆結論
NPV = キャッシュ・インフローの現在価値合計 − 投資額
NPVが正なら投資案を採用する。
◆計算
現在価値 = 300,000 × 3.7908 = 1,137,240円
NPV = 1,137,240 − 1,000,000 = 137,240円 → 採用すべき
◆年金現価係数の意味
毎期一定額のCFが続く場合の現在価値をまとめて求める係数で、各年の現価係数の合計に等しい。金額が毎期異なる場合は、各年のCFに個別の現価係数を掛けて合計する。
◆NPV法が理論的に優れている理由
①貨幣の時間価値を考慮している
②投資期間全体のキャッシュ・フローを反映する
③金額で示されるため加法性が成り立つ(複数案の合計=企業価値の増加額)
IRR法は比率のため規模の異なる案の比較に難があり、CFの符号が複数回変わると解が複数生じる問題がある。
◆割引率は何を使うか
通常は加重平均資本コスト(WACC)。負債コストは税引後で測定する。
問4投資額1,000,000円、毎年のネット・キャッシュ・フローが300,000円のとき、回収期間はおよそ何年か。
- 12.50年
- 23.00年
- 35.00年
- 44.00年
- ✔3.33年
解説:◆結論
回収期間 = 投資額 ÷ 年々のキャッシュ・フロー = 1,000,000 ÷ 300,000 = 3.33年
◆CFが毎年異なる場合
累計CFが投資額に達する年を探し、端数は年内均等発生として比例計算する。
例:投資1,000,000、CF 300,000/400,000/500,000
2年で累計700,000 → 未回収300,000 → 3年目のCF500,000で割ると0.6年 → 回収期間2.6年
◆長所
計算が簡単で理解しやすい。回収が早いほど不確実性にさらされる期間が短いため、安全性・流動性の指標として有用。実務での併用率は高い。
◆短所(必ず問われる)
①貨幣の時間価値を無視している(割引前のCFを使う)
②回収期間経過後のキャッシュ・フローを一切考慮しない
そのため収益性の判断には向かず、NPV法などと併用するのが望ましい。
◆改良版
割引回収期間法は、割引後のCFで回収期間を測ることで①の欠点を補う。
問5内部利益率法(IRR)の説明として正しいものはどれか。
- ✔正味現在価値がゼロとなる割引率を求め、資本コストと比較する方法
- 2会計上の利益を投資額で除した比率を用いる方法
- 3投資額の回収に要する期間を求める方法
- 4キャッシュ・フローを割り引かずに合計する方法
- 5貢献利益率を求める方法
解説:◆結論
内部利益率(IRR)はNPVがゼロとなる割引率であり、これが資本コスト(切捨率)を上回れば投資案を採用する。
◆求め方(補間法)
正のNPVと負のNPVを与える2つの割引率を見つけ、直線補間する。
例:8%でNPV+50,000、10%で△30,000
IRR ≒ 8% + 2% × 50,000/(50,000+30,000) = 9.25%
◆NPV法との比較
IRR…比率で示されるため直感的で、資本コストとの比較が分かりやすい。
NPV…金額で示され加法性が成立。規模の異なる案の優劣を正しく示す。
両者は単独案の採否では通常一致するが、相互排他的な案の順位付けでは食い違うことがあり、その場合はNPV法の結論を採るのが理論的とされる。
◆IRR法の限界
①投資規模の違いを反映できない(小規模で高利回りの案が過大評価される)
②CFの符号が複数回変わると解が複数存在する
③再投資収益率をIRRと仮定している点が非現実的
◆関連
会計的投資利益率法(ARR)は会計上の利益を用いる別の方法で、時間価値を考慮しない。
問6共通の制約条件(機械稼働時間)のもとで複数製品を生産する場合、営業利益を最大化する優先順位の決め方として正しいものはどれか。
- 1変動費の小さい順
- 2売上高総利益率の高い順
- 3製品単位当たり貢献利益の大きい順
- ✔制約条件単位当たり貢献利益の大きい順
- 5販売単価の高い順
解説:◆結論
制約条件が1つの場合、その希少資源1単位当たりの貢献利益が大きい製品から優先的に生産・販売すると営業利益が最大化される。
◆計算の型
制約単位当たり貢献利益 = 製品単位当たり貢献利益 ÷ 製品1単位当たりの必要制約資源量
例:Aは貢献利益@600円で機械2時間 → @300円/時間
Bは貢献利益@500円で機械1時間 → @500円/時間
製品単位で見るとAが有利に見えるが、希少資源当たりではBが有利。ここが最大の引っかけ。
◆なぜ制約資源当たりで考えるのか
利益を制限しているのは販売数量ではなく希少資源。同じ1時間を使うなら、より多くの貢献利益を生む製品に充てるべきだから。
◆制約条件が2つ以上ある場合
単純な順位付けでは解けず、線形計画法(図解法・シンプレックス法)により、実行可能領域内で目的関数(貢献利益合計)を最大化する組合せを求める。最適解は実行可能領域の端点(頂点)のいずれかとなる。
◆発展:シャドー・プライス
制約資源が1単位増えたときの目的関数値の増加額。その資源に支払ってよい上限額を示し、余裕のある資源のシャドー・プライスはゼロとなる。
問7部品を年間1,000個必要とする。内製する場合の変動費は@700円、内製をやめれば回避できる固定費が50,000円ある。外部から@800円で購入する場合と比較したときの結論として正しいものはどれか。
- ✔内製が50,000円有利
- 2どちらも同じ
- 3購入が100,000円有利
- 4内製が100,000円有利
- 5購入が50,000円有利
解説:◆結論
比較すべきは「代替案間で差が生じる原価」だけ。回避可能な固定費は内製の原価に含め、回避不能な固定費は両案共通なので除外する。
◆計算
内製 = @700×1,000個 + 回避可能固定費 50,000 = 750,000円
購入 = @800×1,000個 = 800,000円
差額 50,000円 → 内製が有利
◆判断の型
①内製の関連原価=変動費+回避可能固定費(+機会原価)
②購入の関連原価=購入原価(+発注費等の増加分)
③両者を比較して低い方を選ぶ
◆機会原価を忘れない
内製をやめれば空いた設備・人員を他の製品の生産や賃貸に振り向けられる場合、その利益は購入案を選んだ場合の追加的な便益(=内製案の機会原価)として考慮する。
◆定性的要因
技術・ノウハウの社内蓄積、品質管理の自由度、供給の安定性、機密保持、外注先との関係、雇用への影響など。数値だけで決めてはならない領域であり、記述問題でも問われる。
問8連産品Xを分離点で売却すると500,000円、追加加工して売却すると800,000円である。追加加工費は200,000円、Xに配賦された結合原価は300,000円である。正しい判断はどれか。
- 1結合原価を含めると追加加工は不利になる
- ✔追加加工すると100,000円有利
- 3どちらも同じ
- 4分離点売却が100,000円有利
- 5追加加工すると200,000円不利
解説:◆結論
差額収益(追加加工後の売価 − 分離点の売価)と差額原価(追加加工費)を比較する。結合原価は埋没原価なので無視する。
◆計算
差額収益 = 800,000 − 500,000 = 300,000円
差額原価 = 200,000円
差額利益 = 100,000円 → 追加加工が有利
◆なぜ結合原価を無視するのか
分離点までに発生した300,000円は、分離点で売っても追加加工しても同額発生している。どちらの案を選んでも変わらない以上、判断に影響しない典型的な埋没原価である。ここに惑わされて「配賦された結合原価を回収できるか」で判断すると誤る。
◆罠のパターン
「追加加工後の売価800,000円 − 結合原価300,000円 − 追加加工費200,000円 = 300,000円の利益だから加工すべき」という計算は誤り。分離点で売った場合の利益(500,000−300,000=200,000円)と比較しなければ意味がない。差額で考える習慣をつける。
◆追加設備が必要な場合
追加加工のために新たな設備投資が必要なら、それは差額原価に含める。また能力に制約があれば機会原価も考慮する。
管理会計・戦略的原価計算全50問中 8問を掲載
問1活動基準原価計算(ABC)の説明として誤っているものはどれか。
- ✔操業度関連の配賦基準のみを用いるため計算が簡便である
- 2段取回数や発注回数などの非操業度関連の基準を用いる
- 3活動をコストプールとし、原価作用因(コスト・ドライバー)により製品へ跡づける
- 4多品種少量生産で製造間接費の割合が高い企業に有効である
- 5伝統的原価計算による内部相互補助(原価の歪み)を是正できる
解説:◆結論
ABCは活動をコストプールとし、活動の消費量(コスト・ドライバー)に応じて製品に原価を跡づける。段取回数・発注回数・検査回数など非操業度関連の基準を用いるため、計算は簡便になるどころか複雑になる。
◆なぜ生まれたか
製造間接費の比重が高まり、しかもその多くが生産量に比例しない活動(段取、設計変更、発注、検査)から生じるようになった。直接作業時間だけで配賦すると、大量生産品が過大に、少量多品種品が過小に原価を負担する「内部相互補助」が生じる。ABCはこれを是正する。
◆計算の型
活動原価率 = 活動原価 ÷ 総ドライバー量
製品への配賦額 = 活動原価率 × 当該製品のドライバー消費量
◆活動の階層(発展)
ユニット・レベル(生産量に比例:機械加工)
バッチ・レベル(ロット単位:段取、検査)
製品維持レベル(製品の種類ごと:設計変更)
設備維持レベル(工場全体の維持)
◆ABMへの発展
ABCで得た情報をもとに非付加価値活動を削減し業務改善を図るのが活動基準管理(ABM)。未利用キャパシティ・コストを区分把握することで遊休能力も可視化できる。
問2変動予算の説明として正しいものはどれか。
- 1長期利益計画そのものを指す
- 2予算差異を把握できない予算である
- ✔実際操業度に応じた予算許容額を算定できる予算である
- 4一定の操業度のみを前提として設定される予算である
- 5固定費のみで構成される予算である
解説:◆結論
変動予算は変動費率と固定費予算額により、任意の操業度に対応した予算許容額を算定できる予算。
予算許容額 = 変動費率 × 実際操業度 + 固定費予算額
◆固定予算との違い
固定予算…特定の操業度のみを前提とし、操業度が変わっても予算額は不変。したがって予算差異に操業度変動の影響が混入してしまい、原価の浪費・節約が正しく測れない。
変動予算…実際の操業度に見合った"許される原価"と比較できるため、適切な差異分析が可能。
◆変動予算の2つの型
公式法変動予算…変動費率と固定費による一次式で算定。簡便で差異分析に適する。
実査法変動予算…一定間隔の操業度水準ごとに発生額を実査して予算を設定。準固定費など非直線的な原価も反映できるが手数がかかる。
◆差異分析での使われ方
予算差異 = 予算許容額 − 実際発生額
この予算許容額を実際操業度で計算するのが変動予算の本領である。
問3ある事業部の利益は500,000円、投下資本は3,000,000円、全社の資本コスト率は10%である。残余利益(RI)はいくらか。
- ✔200,000円
- 250,000円
- 316.7%
- 4500,000円
- 5300,000円
解説:◆結論
残余利益(RI)= 事業部利益 − 投下資本 × 資本コスト率
= 500,000 − 3,000,000 × 10% = 200,000円
◆ROIとの比較
ROI = 500,000 ÷ 3,000,000 = 16.7%
ROIは比率なので規模の異なる事業部を比較しやすい。しかし「全社的には有利(資本コストを上回る)だが、現在のROIより低い投資案」を事業部長が却下してしまう部分最適(逆機能)が生じる。
RIは金額で示され、資本コストを上回る投資はすべて増加要因となるため、この逆機能を回避できる。ただし規模の大きい事業部が有利に出るため単純比較には向かない。
◆責任センターの分類
原価センター(原価にのみ責任)/収益センター/利益センター/投資センター(投資額にも責任)
ROIやRIで評価されるのは投資センターである。
◆評価対象を区別する
事業部長の評価…管理可能利益(管理可能な収益・原価のみ)
事業部自体の評価…管理不能な個別固定費まで控除した事業部貢献利益
本社共通固定費の配賦額はいずれにも含めないのが原則。
◆発展
EVA(経済的付加価値)は残余利益の考え方を発展させた指標である。
問4品質原価計算における「予防原価」に該当するものはどれか。
- 1仕損・手直しの原価
- 2受入検査・工程検査の費用
- 3返品輸送費
- ✔品質管理教育訓練費・工程改善費
- 5クレーム対応・製品保証の費用
解説:◆結論
品質原価は4分類。予防原価に該当するのは品質管理教育訓練費、工程改善費、品質管理計画費など「不良を出さないために事前に投じる費用」である。
◆4分類(PAFモデル)
予防原価…品質教育訓練費、工程改善費、供給者評価費、設計審査費
評価原価…受入検査費、工程検査費、製品試験費、測定機器の保守費
内部失敗原価…仕損費、手直費、再検査費、生産の中断による損失
外部失敗原価…クレーム処理費、製品保証費、返品費、リコール費用、信用低下
◆適合コストと不適合コスト
適合コスト(予防+評価)… 品質を作り込むための投資
不適合コスト(内部+外部失敗)… 品質が作り込めなかった結果の損失
一般に適合コストを増やすと不適合コストが大きく減るというトレードオフがあり、総品質原価を最小化する水準を探る。
◆近年の考え方
外部失敗原価は信用失墜など測定困難な損失を伴うため、失敗原価の実質的な大きさは見積り以上とされる。したがって「予防重視(源流管理)」が主流であり、検査を強化する評価原価より予防原価への投資が推奨される。
問5原価企画に関する記述として正しいものはどれか。
- ✔製品の企画・開発段階で目標原価を設定し、それを作り込む活動である
- 2販売価格を原価に利益を加算して決定する手法である
- 3製造段階でのコストダウンを図る原価改善活動である
- 4製造段階で発生した原価差異を分析し標準を維持する活動である
- 5実際原価を集計する計算手続そのものである
解説:◆結論
原価企画は製品の企画・開発段階で目標原価を設定し、それを設計に「作り込む」活動。源流管理の思想に基づく。
◆許容原価と成行原価
許容原価 = 予定売価 − 目標利益(市場から逆算するトップダウンの原価)
成行原価 = 現状の技術・設備で見積られる原価(ボトムアップの原価)
通常は許容原価 < 成行原価となり、この差を埋める活動が原価企画の中身。両者を擦り合わせて達成可能な目標原価を決める。
◆なぜ設計段階なのか
製品原価の8割前後は設計段階で決定されてしまう(原価の決定と発生のタイムラグ)。製造段階でいくら努力しても削減余地は限られる。だから源流である企画・設計で作り込む。
◆主な手法
VE(バリュー・エンジニアリング)… 価値=機能÷コスト。機能を維持・向上させつつコストを下げる。
コストテーブル … 仕様・条件と原価の関係をデータベース化し、設計変更の原価影響を即座に把握する。
◆3つの原価管理活動の区別(頻出)
原価企画 … 企画・開発段階で作り込む
原価維持 … 製造段階で標準を維持する(標準原価計算)
原価改善 … 製造段階で標準そのものを引き下げる(カイゼン)
問6ライフサイクル・コスティングの説明として正しいものはどれか。
- 1顧客ごとの収益性を分析する手法である
- 2製造段階の原価のみを集計する
- 3販売費のみを対象とする
- ✔研究開発から廃棄処分に至るまでの総原価を把握する
- 51会計期間の原価のみを対象とする
解説:◆結論
ライフサイクル・コスティングは、研究開発から設計・製造・販売・使用・保守・廃棄に至るまでの製品の全生涯にわたる原価を把握する手法。
◆2つの視点
供給者(企業)側 … 研究開発費・設計費・製造原価・販売費・アフターサービス費・廃棄費用
顧客側 … 購入価格+運用費(エネルギー・消耗品)+保守修理費+廃棄費用(=総保有コスト、TCO)
◆なぜ重要か
取得価格が安くても運用・保守費が高ければ、顧客にとっての総コストは大きい。逆に高価でも省エネで長寿命なら選ばれる。顧客の総保有コストを下げる設計が競争力になるため、企業は自社の製造原価だけを見ていては判断を誤る。
◆原価企画との関係
ライフサイクル全体のコストの大半は企画・設計段階で決まる。したがってライフサイクル・コスティングの視点を原価企画に組み込むことで、真に競争力のある製品が生まれる。
◆環境会計との接点
廃棄・リサイクル費用を織り込む点で環境配慮設計(DfE)やマテリアルフローコスト会計とも結びつく。
問7制約理論(TOC)に基づくスループット会計におけるスループットの定義として正しいものはどれか。
- 1貢献利益−固定費
- 2売上高−固定費
- 3売上高−製造原価
- 4売上高−変動費
- ✔売上高−直接材料費
解説:◆結論
スループット = 売上高 − 直接材料費
TOC(制約理論)では、真の変動費は直接材料費のみとみなす。
◆3つの指標
スループット … 売上高−直接材料費。システムが生み出す付加価値。
在庫(投資)… 販売するために購入したものに投じた資金
業務費用 … 在庫をスループットに変換するために費やす費用(直接労務費・製造間接費など)
利益 = スループット − 業務費用
◆なぜ直接労務費を変動費としないのか
現代の製造業では賃金は短期的に固定的であり、生産量を減らしても人件費は減らない。したがって直接労務費も期間費用(業務費用)として扱う方が実態に合うという考え方。
◆制約工程(ボトルネック)の重視
全体の生産量は最も能力の低い工程で決まる。したがって制約工程の単位時間当たりスループットを最大化することが目標となり、非制約工程を全力稼働させても在庫が増えるだけで意味がない。
◆DBR(ドラム・バッファ・ロープ)
ドラム=制約工程が刻む全体のペース、バッファ=制約工程を止めないための緩衝在庫、ロープ=制約工程の進捗に合わせた材料投入の制御。
◆直接原価計算との違い
直接原価計算は変動費に直接労務費を含めるが、スループット会計は含めない。
問8予算編成において、現金収支予算(資金予算)を作成する主たる目的として正しいものはどれか。
- 1セグメント別の業績を評価するため
- 2原価差異を分析するため
- ✔資金の過不足を事前に把握し、資金繰りを計画するため
- 4税額を計算するため
- 5製品原価を正確に計算するため
解説:◆結論
現金収支予算(資金予算)の目的は、各月の資金の過不足を事前に把握し、借入や余資運用をあらかじめ計画すること。黒字倒産(利益は出ているのに資金が尽きる)を防ぐための予算である。
◆総合予算の体系
販売予算(出発点)
→ 製造予算(生産量)→ 直接材料費・直接労務費・製造間接費予算、購買予算
→ 販売費・一般管理費予算
→ 損益予算(予算損益計算書)
+ 現金収支予算・信用予算・設備投資予算(資金予算)
→ 予算貸借対照表・予算キャッシュ・フロー計算書
◆現金収支予算の計算例
売上代金は当月60%・翌月40%回収、前月売上1,500,000円・当月売上2,000,000円
→ 当月回収額 = 2,000,000×60% + 1,500,000×40% = 1,800,000円
回収条件・支払条件のズレが利益と資金の差を生むことを数値で確認できる。
◆なぜ販売予算が出発点か
通常の企業では需要(売れる量)が制約条件だから。売れる量を起点に、必要な生産量・購買量・人員が逆算されていく。生産能力が制約なら製造予算から始まることもある。
◆予算の機能
計画機能・調整機能(部門間の整合)・統制機能(実績との比較)の3つを併せ持つ。