分野別問題(解説つき)

医師国家試験|分野別 問題インデックス

最終更新:2026年8月11日

医師国家試験は出題範囲が非常に広い試験です。21分野に分けて代表問題を掲載しています。全1000問をまとめて解くならトレーナーへ進んでください。

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循環器全69問中 8問を掲載

問1
急性心筋梗塞の発症後、血中で最も早期に上昇する検査項目はどれか。
  • 1CK-MB
  • 2AST
  • 3LD
  • ✔ミオグロビン
  • 5心筋トロポニンT
解説:【正解の根拠】ミオグロビン
分子量約17,000と小さく心筋細胞から速やかに逸脱するため、発症1〜2時間で上昇し最も早期のマーカーとなる。ただし骨格筋にも存在するため、外傷・激しい運動・筋炎・横紋筋融解でも上昇し特異度は低い。

【他の選択肢】
・心筋トロポニンT/I:3〜4時間で上昇、1〜2週持続。心筋特異性が最も高く現在の診断の中心。腎不全では偽高値に注意。
・CK-MB:4〜8時間で上昇し3日で正常化。半減期が短く再梗塞の検出に有用。
・AST:6〜12時間。肝・筋にも含まれ特異性は低い。
・LD:12〜24時間と最も遅く、発症数日後に受診した症例で参考になる。

【押さえておきたい関連知識】
上昇の順序は「ミオ→トロポニン→CK-MB→AST→LD」と覚える。実臨床ではトロポニンが主役だが、発症直後は陰性のこともあるため、1回の陰性で否定せず時間をおいた再検(連続測定)を行う。心電図でST上昇があれば採血結果を待たずに再灌流療法へ進む点も重要。
問2
心房細動患者の脳梗塞リスク評価に用いるCHADS2スコアの構成因子でないものはどれか。
  • 1心不全
  • 2高血圧
  • 375歳以上
  • ✔脂質異常症
  • 5脳梗塞・TIAの既往
解説:【正解の根拠】脂質異常症
CHADS2スコアには含まれない。脂質異常症は動脈硬化性疾患の危険因子ではあるが、心房細動における心原性塞栓のリスク評価因子としては採用されていない。

【他の選択肢(=CHADS2の構成因子)】
・C:Congestive heart failure(心不全)…1点
・H:Hypertension(高血圧)…1点
・A:Age ≥75歳…1点
・D:Diabetes mellitus(糖尿病)…1点
・S2:Stroke/TIAの既往…2点(既往があると再発リスクが高いため2点)
合計6点満点。

【押さえておきたい関連知識】
1点で抗凝固療法を考慮、2点以上で推奨される。より詳細なCHA2DS2-VAScでは血管疾患・65〜74歳・女性が加わる。出血リスクはHAS-BLEDで評価し、両者を比較して適応を判断する。非弁膜症性心房細動ではDOACが第一選択だが、機械弁や中等度以上の僧帽弁狭窄ではワルファリンを用いる(DOACは禁忌)。
問3
大動脈弁狭窄症でみられる所見として誤っているものはどれか。
  • 1収縮期駆出性雑音
  • 2失神
  • 3狭心痛
  • ✔拡張期灌水様雑音
  • 5左室肥大
解説:【正解の根拠】拡張期灌水様雑音
これは大動脈弁"閉鎖不全症"の所見。拡張期に大動脈から左室へ血液が逆流する音で、第3肋間胸骨左縁で、前傾坐位・呼気止めで聴取しやすい。

【他の選択肢(=大動脈弁狭窄症の所見)】
・収縮期駆出性雑音:第2肋間胸骨右縁が最強点、頸部へ放散。重症ほどピークが収縮後期にずれる。
・失神:労作時に心拍出量を増やせず脳血流が低下して生じる。
・狭心痛:左室肥大で酸素需要が増える一方、冠灌流圧が低下するため、冠動脈に狭窄がなくても生じうる。
・左室肥大:圧負荷に対する求心性肥大。心電図で高電位差とストレイン型ST-T変化。

【押さえておきたい関連知識】
狭心痛・失神・心不全(Syncope, Angina, Dyspnea)が三徴で、出現後の生命予後は急激に悪化するため手術適応となる。近年は開胸リスクの高い高齢者にTAVIが広く行われる。硝子体…ではなく血管拡張薬や利尿薬の安易な使用は前負荷・後負荷を下げて心拍出量を減らし、失神やショックを招くため注意。
問4
心電図でII、III、aVF誘導にST上昇を認めた。責任血管として最も考えられるのはどれか。
  • 1対角枝
  • 2左前下行枝
  • 3左回旋枝
  • ✔右冠動脈
  • 5左主幹部
解説:【正解の根拠】右冠動脈
II・III・aVFは心臓を下方から見る「下壁誘導」で、下壁は約90%が右冠動脈により灌流される(残りは左回旋枝優位型)。

【他の選択肢と対応する部位】
・左前下行枝:V1〜V4のST上昇(前壁中隔)。V1〜V6に及べば広範前壁で予後不良。
・左回旋枝:I・aVL・V5〜V6(側壁)。心電図変化に乏しくV1〜V3のST低下(後壁梗塞の鏡像)として現れることも。
・左主幹部:広範な誘導のST低下+aVRのST上昇。ショックをきたし極めて重篤。
・対角枝:I・aVLなど高位側壁。

【押さえておきたい関連知識】
下壁梗塞では①房室結節枝も右冠動脈から分岐するため徐脈・房室ブロックを合併しやすい、②右室梗塞の合併を確認するため右側胸部誘導(V4R)を追加する、の2点が重要。右室梗塞では前負荷依存となるため硝子体…ではなく硝酸薬やモルヒネで血圧が急落する。輸液で前負荷を保つのが原則。
問5
心不全の重症度評価と治療効果判定に有用な血中バイオマーカーはどれか。
  • 1アルドステロン
  • 2カテコラミン
  • 3CRP
  • ✔BNP
  • 5ACE
解説:【正解の根拠】BNP
心室壁の伸展刺激により主に心室筋から分泌される。心不全の重症度・予後・治療効果とよく相関し、呼吸困難の原因が心原性か否かの鑑別にも有用。

【他の選択肢】
・CRP:非特異的な炎症マーカー。心不全の重症度評価には使わない。
・ACE:サルコイドーシスで上昇。
・アルドステロン、カテコラミン:心不全で上昇はするが、日内変動や体位・採血手技の影響が大きく日常の評価には不向き。原発性アルドステロン症や褐色細胞腫の診断に用いる。

【押さえておきたい関連知識】
目安は100pg/mL未満でほぼ否定的、200を超えると心不全の可能性が高い。ただし解釈には注意点があり、①腎機能低下・高齢・心房細動・貧血で偽高値、②肥満では偽低値、③急性発症では上昇が追いつかないことがある。NT-proBNPは代謝経路が異なり半減期が長く、値は数倍高くなるため基準値を混同しない。
問6
深部静脈血栓症を基礎に発症した急性肺血栓塞栓症で、通常みられない所見はどれか。
  • 1D-ダイマー上昇
  • 2低二酸化炭素血症
  • 3心電図でのS1Q3T3パターン
  • ✔胸部エックス線での広範な浸潤影
  • 5低酸素血症
解説:【正解の根拠】胸部エックス線での広範な浸潤影
肺塞栓では胸部エックス線はほぼ正常か、末梢血管陰影の減少(Westermark徴候)など軽微にとどまる。「症状は重篤なのに胸部写真がきれい」という乖離こそが特徴で、これが診断の手がかりになる。

【他の選択肢(=実際にみられる所見)】
・低酸素血症:血流が途絶した領域で換気血流不均等が生じる。
・D-ダイマー上昇:感度が高く陰性なら除外に有用だが、術後・感染・妊娠・悪性腫瘍・高齢でも上昇し特異度は低い。
・低二酸化炭素血症:低酸素と不安による頻呼吸で過換気となるため。
・S1Q3T3、右軸偏位、V1〜V4の陰性T波:右心負荷を反映するが、出現頻度は高くない。

【押さえておきたい関連知識】
確定診断は造影CT(肺動脈相)。危険因子はVirchowの三徴(血流停滞・血管内皮障害・凝固能亢進)で整理する。血行動態が不安定なら血栓溶解療法、安定していれば抗凝固療法が基本。長期臥床・術後・長距離移動が誘因となるため、弾性ストッキングや間欠的空気圧迫、早期離床による予防が重要。
問7
心タンポナーデにみられるBeckの三徴に含まれないものはどれか。
  • 1頸静脈怒張
  • 2心音減弱
  • 3奇脈
  • ✔発熱
  • 5血圧低下
解説:【正解の根拠】発熱
三徴には含まれない。心膜炎に続発した場合などに発熱を伴うことはあるが、それはタンポナーデそのものの徴候ではない。

【他の選択肢】
・血圧低下:心室の拡張が妨げられ1回拍出量が減少する。
・頸静脈怒張:右房への還流が妨げられ中心静脈圧が上昇する。
・心音減弱:貯留した心嚢液が音を減衰させる。
以上3つがBeckの三徴。加えて吸気時に収縮期血圧が10mmHg以上低下する「奇脈」も重要な所見。

【押さえておきたい関連知識】
機序の理解が鍵で、心嚢内圧上昇→拡張障害→静脈還流障害という一連の流れから所見がすべて説明できる。同じ「拡張が妨げられる」病態でも、収縮性心膜炎は慢性経過でdip and plateauを示す点が異なる。治療は心嚢穿刺による緊急ドレナージ。急性大動脈解離に伴うタンポナーデでは穿刺で解離が悪化しうるため、緊急手術が優先される。
問8
心房細動の心電図所見として正しいものはどれか。
  • 1PQ間隔が徐々に延長する
  • 2幅広いQRS波が規則正しく連続する
  • 3P波とQRS波が無関係に出現する
  • ✔P波が消失しRR間隔が不規則である
  • 5のこぎり歯状のF波を認める
解説:【正解の根拠】P波が消失しRR間隔が不規則である
心房が無秩序に細かく興奮するため規則的なP波が消失し、基線が細かく揺れるf波となる。房室結節を不規則に通過した興奮だけが心室へ伝わるため、RR間隔が絶対性不整(まったく規則性がない)となる。この2点が診断の決め手。

【他の選択肢と対応する不整脈】
・のこぎり歯状のF波:心房粗動。心房興奮は250〜350/分と規則的で、2:1伝導なら心室応答は約150/分に固定される。
・PQ間隔が徐々に延長する:Wenckebach型(Mobitz I型)II度房室ブロック。延長の末にQRSが脱落する。
・P波とQRS波が無関係:完全房室ブロック(房室解離)。
・幅広いQRSが規則正しく連続:心室頻拍や脚ブロックを伴う調律。

【押さえておきたい関連知識】
臨床的な重要性は2つ。①左房内(特に左心耳)に血栓ができ心原性脳塞栓症を起こす、②頻脈が持続すると頻脈誘発性心筋症となり心不全をきたす。
管理は「抗凝固」「レートコントロール」「リズムコントロール」の3本柱。CHADS2やCHA2DS2-VAScでリスクを評価し、非弁膜症性ではDOACが第一選択(機械弁や中等度以上の僧帽弁狭窄ではワルファリン)。
発症48時間以上経過した例を除細動する際は、事前の抗凝固または経食道心エコーで血栓がないことを確認しないと、洞調律復帰時に血栓が飛ぶ危険がある。近年はカテーテルアブレーションの適応も広がっている。

呼吸器全56問中 8問を掲載

問1
COPDの診断に必須の呼吸機能検査所見はどれか。
  • ✔気管支拡張薬吸入後の1秒率70%未満
  • 2%肺活量80%未満
  • 3残気量の減少
  • 4肺拡散能の上昇
  • 51秒量の可逆性
解説:【正解の根拠】気管支拡張薬吸入後の1秒率70%未満
気管支拡張薬を吸入したうえでもFEV1/FVC<70%であること、すなわち「可逆性に乏しい気流閉塞」の確認が診断の必須条件。そのうえで他の気流閉塞をきたす疾患(気管支喘息、気管支拡張症、閉塞性細気管支炎など)を除外する。

【他の選択肢】
・%肺活量80%未満:拘束性換気障害の定義。COPDでは肺活量は比較的保たれる。
・残気量の減少:誤り。肺の過膨張により残気量・機能的残気量はむしろ増加する。
・肺拡散能の上昇:誤り。気腫による肺胞破壊で拡散能(DLCO)は低下する。
・1秒量の可逆性:明瞭な可逆性があれば気管支喘息を考える。

【押さえておきたい関連知識】
病期分類は%FEV1で行うが、症状や増悪頻度と必ずしも一致しない。治療の柱は①禁煙(唯一進行を抑制できる介入)、②長時間作用性気管支拡張薬、③ワクチン、④呼吸リハビリテーション、⑤高度慢性呼吸不全での在宅酸素療法。喘息との合併(ACO)もあり、その場合は吸入ステロイドを併用する。
問2
22歳男性。やせ型で長身。安静時に突然の右胸痛と呼吸困難が出現した。右呼吸音が減弱している。最も考えられる疾患はどれか。
  • 1急性膵炎
  • 2逆流性食道炎
  • 3急性心筋梗塞
  • ✔自然気胸
  • 5急性肺炎
解説:【正解の根拠】自然気胸
やせ型・長身の若年男性、突然発症、患側の呼吸音減弱という3点が揃えば原発性自然気胸を第一に考える。肺尖部のブラ(気腫性囊胞)の破裂が原因で、喫煙は危険因子。打診で鼓音、声音振盪の減弱を伴う。

【他の選択肢】
・急性心筋梗塞:22歳では極めてまれ。呼吸音の左右差は説明できない。
・急性肺炎:通常は発熱と咳嗽が先行し、突然発症ではない。
・急性膵炎:上腹部痛が主体で背部に放散する。
・逆流性食道炎:胸やけ主体で呼吸困難や呼吸音減弱は伴わない。

【押さえておきたい関連知識】
確定は胸部エックス線での虚脱肺と臓側胸膜線。治療は虚脱が軽度なら安静・経過観察、高度なら胸腔ドレナージ。再発例や両側例、職業上のリスク(ダイバー・パイロット)では手術を検討する。
最重要なのは緊張性気胸の見逃しで、ショック・頸静脈怒張・気管の健側偏位があれば画像を待たず即座に胸腔穿刺で脱気する。二次性自然気胸(COPD、間質性肺炎などが背景)は予備能が低く重症化しやすい。
問3
20歳男性。乾性咳嗽が2週間持続。発熱があるが全身状態は比較的良好。胸部エックス線で下肺野にすりガラス様陰影を認め、寒冷凝集反応が陽性であった。第一選択となる抗菌薬はどれか。
  • 1バンコマイシン
  • 2ペニシリン系
  • 3セフェム系
  • ✔マクロライド系
  • 5カルバペネム系
解説:【正解の根拠】マクロライド系
若年、遷延する乾性咳嗽、全身状態が比較的良好(walking pneumonia)、寒冷凝集反応陽性からマイコプラズマ肺炎を考える。マイコプラズマは細胞壁をもたないため、細胞壁合成を阻害する薬剤は無効で、蛋白合成を阻害するマクロライド系が第一選択となる。

【他の選択肢】
・ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系:いずれもβラクタム系で細胞壁合成阻害薬のため無効。
・バンコマイシン:細胞壁合成阻害(作用点はβラクタムと異なる)でありやはり無効。MRSAに用いる。

【押さえておきたい関連知識】
「細胞壁をもたない=βラクタム無効」はマイコプラズマの最重要ポイント。近年はマクロライド耐性株が増えており、無効例ではテトラサイクリン系(8歳未満は歯牙着色のため原則避ける)やキノロン系を用いる。
非定型肺炎を疑う所見として、①年齢60歳未満、②基礎疾患がない、③頑固な咳、④胸部聴診所見に乏しい、⑤喀痰がない、⑥末梢血白血球数が正常、が挙げられる。合併症として中枢神経症状、溶血性貧血、多形紅斑がある。
問4
肺結核の初回標準治療で用いられない薬剤はどれか。
  • 1リファンピシン
  • 2ピラジナミド
  • 3エタンブトール
  • ✔クラリスロマイシン
  • 5イソニアジド
解説:【正解の根拠】クラリスロマイシン
マクロライド系であり、結核の標準治療には含まれない。非結核性抗酸菌症(特にMAC症)の治療の中心となる薬剤である。

【他の選択肢(=標準治療の4剤)】
・イソニアジド(INH):末梢神経障害(ビタミンB6の併用で予防)、肝障害。
・リファンピシン(RFP):肝障害、体液がオレンジ色になる、そして薬物代謝酵素を強力に誘導するため相互作用が非常に多い。
・ピラジナミド(PZA):肝障害、高尿酸血症。高齢者では慎重に。
・エタンブトール(EB):視神経障害(視力・色覚の定期確認が必要)。

【押さえておきたい関連知識】
標準治療は4剤を2か月+INH・RFPの2剤を4か月、計6か月。単剤投与や自己中断は耐性化を招くため、服薬確認療法(DOTS)による支援が行われる。
排菌のある患者は空気感染対策(陰圧個室、N95マスク)が必要で、二類感染症として直ちに保健所へ届け出る。潜在性結核感染症にはINH単剤の予防内服を行うが、その前に活動性結核の除外が必須である。
問5
気管支喘息の急性増悪(発作)時にまず用いるべき薬剤はどれか。
  • 1長時間作用性β2刺激薬
  • 2ロイコトリエン受容体拮抗薬
  • 3抗IgE抗体
  • 4吸入ステロイド薬
  • ✔短時間作用性β2刺激薬吸入
解説:【正解の根拠】短時間作用性β2刺激薬(SABA)吸入
気道平滑筋のβ2受容体を刺激して数分以内に気管支を拡張させる。発作時に必要なのは「今すぐ気道を広げること」であり、SABAの反復吸入が第一選択となる。

【他の選択肢】
・吸入ステロイド薬:気道炎症を抑える長期管理薬で、単回投与では即効性がない。
・長時間作用性β2刺激薬:効果発現が緩やかな製剤もあり、単独使用は死亡リスクを高めるため必ず吸入ステロイドと併用する長期管理薬。
・ロイコトリエン受容体拮抗薬:長期管理薬。
・抗IgE抗体:重症喘息の生物学的製剤で、発作時に用いるものではない。

【押さえておきたい関連知識】
中等症以上では全身性ステロイドを早期に併用する(効果発現までに数時間かかるため早く始める)。酸素投与でSpO2を保ち、改善が乏しければ入院・呼吸管理を検討する。
危険なサインは、呼吸音が聴こえない(silent chest)、会話困難、起坐呼吸、意識障害、チアノーゼ、脈拍の著明な上昇。またSABAの使用頻度が増えていることは長期管理が不十分であるサインで、コントロール状態の見直しが必要である。
問6
II型呼吸不全の定義として正しいものはどれか。
  • 1PaO2 60Torr以下でPaCO2 45Torr以下
  • ✔PaO2 60Torr以下でPaCO2 45Torr超
  • 3PaO2 80Torr以下でPaCO2正常
  • 4PaCO2のみ上昇し低酸素血症を伴わない
  • 5pHが7.45以上
解説:【正解の根拠】PaO2 60Torr以下でPaCO2 45Torr超
呼吸不全は「室内気吸入時のPaO2 60Torr以下」と定義され、PaCO2が45Torr以下をI型、45Torrを超えるものをII型(換気不全型)と分類する。

【他の選択肢】
・PaCO2 45Torr以下を伴うもの:I型呼吸不全。肺炎、間質性肺疾患、肺塞栓症、ARDSなど酸素化の障害が主体。
・PaO2 80Torr以下:呼吸不全の基準値ではない。
・低酸素血症を伴わない高CO2血症:定義上の呼吸不全に該当しない。
・pH 7.45以上:アルカレミアであり呼吸不全の定義とは無関係。

【押さえておきたい関連知識】
II型はCOPD増悪、神経筋疾患、胸郭変形、鎮静薬、重症喘息など「換気ができない」病態で生じる。臨床上の最重要点は、高濃度酸素の投与により呼吸ドライブが抑制されCO2ナルコーシス(頭痛、意識障害、羽ばたき振戦)を招くこと。低流量から開始しSpO2は88〜92%程度を目標とし、血液ガスで評価する。改善しなければNPPVが良い適応となる。
なお慢性経過ではHCO3-の上昇による腎性代償が働きpHは正常に近づく。pHが保たれていれば慢性、低下していれば急性(または急性増悪)と読む。
問7
小細胞肺癌の特徴として正しいものはどれか。
  • 1進行が緩徐である
  • 2手術が第一選択となることが多い
  • 3喫煙との関連は乏しい
  • 4末梢肺野に好発する
  • ✔化学療法・放射線療法に対する感受性が高い
解説:【正解の根拠】化学療法・放射線療法に対する感受性が高い
小細胞肺癌は増殖が速い分、化学療法と放射線療法によく反応して劇的に縮小する。ただし再発しやすく、治療感受性の高さが必ずしも治癒に結びつかない点が難しいところ。

【他の選択肢】
・喫煙との関連は乏しい:誤り。喫煙との関連が最も強い組織型。
・末梢肺野に好発:誤り。肺門部(中枢側)に好発する。末梢に好発するのは腺癌。
・進行が緩徐:誤り。極めて急速に増大し、早期から遠隔転移をきたす。
・手術が第一選択:誤り。診断時にはすでに転移していることが多く、手術適応はごく限られた早期例のみ。限局型では化学放射線療法が中心となる。

【押さえておきたい関連知識】
病期分類が他の肺癌と異なり、限局型(片側胸郭内に収まり1つの照射野に含まれる)と進展型に大別される。限局型では化学放射線療法に加え、脳転移の頻度が高いため予防的全脳照射が検討される。
腫瘍随伴症候群の宝庫である点も重要で、ADH過剰によるSIADH(低ナトリウム血症)、異所性ACTH産生によるCushing症候群、Lambert-Eaton筋無力症候群、傍腫瘍性小脳変性症などをきたす。低ナトリウム血症の精査から肺癌が見つかることもある。
腫瘍マーカーはNSEとProGRP。非小細胞肺癌ではEGFR変異やALK融合遺伝子、PD-L1の検索が治療選択に直結するのに対し、小細胞肺癌では長らく治療が変わらなかったが、近年は免疫チェックポイント阻害薬の併用が標準となっている。
問8
特発性肺線維症の所見として正しいものはどれか。
  • 1呼吸機能検査で閉塞性換気障害を示す
  • 2聴診で笛声音(wheeze)を聴取する
  • ✔胸部CTで蜂巣肺と網状影を認める
  • 4肺拡散能は上昇する
  • 5ばち指はみられない
解説:【正解の根拠】胸部CTで蜂巣肺と網状影を認める
胸膜直下・下肺野優位に分布する網状影、蜂巣肺、牽引性気管支拡張が通常型間質性肺炎(UIP)パターンで、この画像所見が典型的であれば生検なしに診断できる。

【他の選択肢】
・閉塞性換気障害を示す:誤り。肺が硬くなり広がりにくくなるため「拘束性換気障害」(%肺活量の低下)を示す。1秒率はむしろ保たれる。
・笛声音(wheeze)を聴取する:誤り。両側下肺背側で吸気終末にfine crackles(捻髪音、マジックテープを剝がすような音)を聴取する。wheezeは気道狭窄を示し喘息やCOPDでみられる。
・肺拡散能は上昇する:誤り。間質の肥厚によりガス交換が妨げられDLCOは低下する。労作時の低酸素が目立つのはこのため。
・ばち指はみられない:誤り。慢性の低酸素を反映してばち指を認める。

【押さえておきたい関連知識】
「肺が硬い」という一語から、拘束性換気障害・拡散能低下・捻髪音・ばち指がすべて説明できる。COPDの「気道が閉塞する」との対比で整理すると理解しやすい。
血清マーカーはKL-6とSP-D。診断にあたっては膠原病、薬剤性、過敏性肺炎、じん肺などの原因を除外することが必須で、詳細な職業歴・生活歴・薬歴の聴取が欠かせない。
予後を規定するのは急性増悪で、数日で呼吸不全が進行し死亡率が高い。感染、手術、気管支鏡、高濃度酸素などが誘因となりうる。治療は抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)による進行抑制、在宅酸素療法、呼吸リハビリテーション、肺移植の検討。肺癌の合併率も高い。

消化器全65問中 8問を掲載

問1
Helicobacter pylori除菌の一次治療で用いる薬剤の組合せとして正しいものはどれか。
  • 1PPI+メトロニダゾール+レボフロキサシン
  • 2H2受容体拮抗薬+アモキシシリン+テトラサイクリン
  • 3PPI+バンコマイシン+メトロニダゾール
  • 4制酸薬+クラリスロマイシン単剤
  • ✔PPI+アモキシシリン+クラリスロマイシン
解説:【正解の根拠】PPI+アモキシシリン+クラリスロマイシン
プロトンポンプ阻害薬で胃内pHを上げて抗菌薬の効果を高めつつ、2剤の抗菌薬を7日間併用する3剤療法が一次除菌である。

【他の選択肢】
・二次除菌ではクラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更する(PPI+アモキシシリン+メトロニダゾール)。近年はクラリスロマイシン耐性が増加しており、二次除菌の成功率の方が高いことも多い。
・H2受容体拮抗薬では酸分泌抑制が不十分。
・バンコマイシンはC. difficile感染症、制酸薬単独やクラリスロマイシン単剤では除菌できない。

【押さえておきたい関連知識】
除菌の意義は消化性潰瘍の再発予防にとどまらず、胃MALTリンパ腫の治療、胃癌の発症リスク低減、特発性血小板減少性紫斑病の改善にも及ぶ。
判定は治療終了後4週以降に尿素呼気試験や便中抗原で行う(PPI服用中は偽陰性となるため休薬してから実施)。副作用として下痢・味覚異常・皮疹があり、除菌成功後に胃酸分泌が回復して逆流性食道炎が顕在化することもある。
問2
潰瘍性大腸炎の特徴として正しいものはどれか。
  • 1消化管全域に病変が生じる
  • 2病変は非連続性である
  • 3全層性の炎症をきたす
  • ✔直腸から連続性に口側へ進展する
  • 5瘻孔形成が高率である
解説:【正解の根拠】直腸から連続性に口側へ進展する
潰瘍性大腸炎は直腸から始まり連続性・びまん性に口側へ広がる大腸限局の疾患で、炎症は粘膜〜粘膜下層にとどまる。病変範囲により直腸炎型・左側大腸炎型・全大腸炎型に分類される。

【他の選択肢(=Crohn病の特徴)】
・消化管全域の病変、非連続性(skip lesion)、全層性の炎症、瘻孔形成はいずれもCrohn病。Crohn病では縦走潰瘍、敷石像、非乾酪性肉芽腫がみられ、回腸末端と肛門部が好発部位。

【押さえておきたい関連知識】
症状は潰瘍性大腸炎が粘血便・血性下痢・しぶり腹、Crohn病が腹痛・下痢・体重減少・痔瘻。
潰瘍性大腸炎の治療は5-ASA製剤が基本で、効果不十分ならステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤、JAK阻害薬と段階的に進む。中毒性巨大結腸症、大量出血、穿孔、癌合併では手術(大腸全摘)となる。長期罹患例では大腸癌のリスクが上がるため、発症後8〜10年を目安にサーベイランス内視鏡を行う。腸管外合併症(関節炎、原発性硬化性胆管炎、壊疽性膿皮症、虹彩炎)も押さえておきたい。
問3
急性膵炎の重症度判定や診断に関する記述で誤っているものはどれか。
  • 1血中・尿中膵酵素の上昇を認める
  • 2成因として胆石とアルコールが多い
  • 3造影CTで膵の造影不良域が広いほど重症である
  • ✔急性期には積極的に経口摂取を促す
  • 5腹痛は上腹部から背部へ放散する
解説:【正解の根拠】急性期には積極的に経口摂取を促す(=誤り)
急性期は膵の安静を保つため絶食とし、十分な初期輸液と適切な鎮痛を行うのが原則。近年、軽症例では早期の経口摂取再開が回復を早めるとされるが、それは腹痛が軽快した時点での再開であり、急性期に積極的に促すものではない。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・血中・尿中膵酵素の上昇:アミラーゼ、リパーゼが上昇。リパーゼの方が特異度が高い。値の高さと重症度は相関しない点に注意。
・成因:本邦では男性でアルコール、女性で胆石が最多。ほかに脂質異常、ERCP後、薬剤性など。
・造影CTでの造影不良域:膵の壊死範囲を示し、重症度判定基準の柱となる。
・上腹部から背部への放散痛:後腹膜臓器である膵の疼痛の特徴。前屈位で軽快する。

【押さえておきたい関連知識】
重症例では大量の体液が後腹膜へ移動し循環血液量減少性ショックとなるため、初期の十分な輸液が予後を左右する。合併症としてARDS、急性腎障害、DIC、膵仮性囊胞、そして予後を大きく左右する感染性膵壊死がある。胆石性で胆管炎を伴う場合は緊急ERCPによる胆道ドレナージを行う。
問4
非代償性肝硬変でみられない所見はどれか。
  • 1羽ばたき振戦
  • 2腹水
  • 3食道静脈瘤
  • ✔血小板増多
  • 5手掌紅斑
解説:【正解の根拠】血小板増多(=みられない)
肝硬変では血小板は「減少」する。理由は2つで、①門脈圧亢進による脾腫と脾機能亢進で血小板が破壊される、②肝でのトロンボポエチン産生が低下し産生自体も減る。血小板減少は肝線維化の進行度を反映する簡便な指標として重要。

【他の選択肢(=実際にみられる所見)】
・腹水、食道静脈瘤:門脈圧亢進+低アルブミン血症による。
・手掌紅斑、クモ状血管腫、女性化乳房:エストロゲンの代謝障害による。
・羽ばたき振戦:高アンモニア血症による肝性脳症の徴候。

【押さえておきたい関連知識】
所見を「門脈圧亢進によるもの」「肝細胞機能低下によるもの」に分けて整理すると理解しやすい。前者は腹水・静脈瘤・脾腫・腹壁静脈怒張、後者は黄疸・出血傾向・低アルブミン血症・肝性脳症・女性化乳房。
重症度評価にはChild-Pugh分類(脳症・腹水・ビリルビン・アルブミン・PT)を用いる。合併症では食道静脈瘤破裂、特発性細菌性腹膜炎、肝腎症候群、そして肝細胞癌が予後を規定するため、定期的な画像とAFP・PIVKA-IIによるサーベイランスが必須である。
問5
急性虫垂炎の身体所見として適切でないものはどれか。
  • 1McBurney点の圧痛
  • 2Blumberg徴候
  • 3Rovsing徴候
  • 4心窩部から右下腹部への痛みの移動
  • ✔Murphy徴候
解説:【正解の根拠】Murphy徴候
右季肋部を圧迫しながら深吸気させると疼痛のため吸気が止まる所見で、急性胆囊炎に特徴的。虫垂炎の所見ではない。

【他の選択肢(=虫垂炎の所見)】
・McBurney点の圧痛:臍と右上前腸骨棘を結ぶ線の外側1/3の点。
・Blumberg徴候(反跳痛):腹膜刺激徴候。壁側腹膜への炎症波及を示す。
・Rovsing徴候:左下腹部を圧迫すると右下腹部に痛みが生じる。
・心窩部痛から右下腹部への移動:初期は内臓痛として心窩部・臍周囲に、炎症が壁側腹膜に及ぶと体性痛として右下腹部に限局する。この移動が特徴的。

【押さえておきたい関連知識】
痛みの移動は「内臓痛→体性痛」という機序で説明できる。ほかに腸腰筋徴候、閉鎖筋徴候も後方や骨盤内の虫垂で陽性となる。
鑑別として、女性では異所性妊娠・卵巣囊腫茎捻転・骨盤内炎症性疾患を必ず考え、妊娠反応の確認を忘れない。小児や高齢者、妊婦では非典型的な経過をとり穿孔しやすい。診断は臨床所見+炎症反応+超音波/CTで行う。
問6
B型肝炎ウイルスの感染既往があり、現在は治癒していることを示す血清マーカーの組合せはどれか。
  • 1HBs抗原陽性・HBs抗体陰性
  • ✔HBs抗原陰性・HBs抗体陽性・HBc抗体陽性
  • 3HBs抗原陰性・HBs抗体陽性・HBc抗体陰性
  • 4HBe抗原陽性・HBe抗体陰性
  • 5HBs抗原陽性・HBc抗体IgM陽性
解説:【正解の根拠】HBs抗原陰性・HBs抗体陽性・HBc抗体陽性
自然感染では、感染するとHBc抗体が産生され生涯陽性が続く。治癒するとHBs抗原が消失し中和抗体であるHBs抗体が出現する。したがって「HBs抗原(−)・HBs抗体(+)・HBc抗体(+)」=既往感染(治癒)と読む。

【他の選択肢】
・HBs抗原(+)・HBs抗体(−):現在感染している状態。
・HBs抗原(−)・HBs抗体(+)・HBc抗体(−):ワクチン接種後。HBc抗体の有無で自然感染と区別できるのがポイント。
・HBe抗原(+):ウイルス増殖が活発で感染力が強い状態。抗体へのセロコンバージョンで沈静化する。
・HBs抗原(+)・IgM-HBc抗体(+):急性感染(またはキャリアの急性増悪)。

【押さえておきたい関連知識】
臨床上きわめて重要なのが「既往感染からの再活性化」。HBs抗原が陰性でもHBc抗体やHBs抗体が陽性の既往感染者では、化学療法や免疫抑制療法により肝内に残存したウイルスが再活性化し、劇症肝炎に至ることがある。したがって免疫抑制療法の前には必ずHBs抗原・HBc抗体・HBs抗体をスクリーニングし、該当者ではHBV DNAをモニタリングして陽性化すれば核酸アナログを投与する。
問7
早期胃癌の定義として正しいものはどれか。
  • 1リンパ節転移がないもの
  • 2直径2cm以下のもの
  • ✔深達度が粘膜下層までにとどまるもの
  • 4分化型腺癌であるもの
  • 5内視鏡的切除が可能なもの
解説:【正解の根拠】深達度が粘膜下層までにとどまるもの
早期胃癌は「リンパ節転移の有無を問わず」深達度が粘膜下層(SM)までのものと定義される。固有筋層以深に及べば進行胃癌。定義に含まれるのは深達度のみである点が最大のポイント。

【他の選択肢】
・リンパ節転移がないもの:誤り。転移があっても深達度がSMまでなら早期胃癌である。ここが最も引っかけられやすい。
・直径2cm以下:誤り。大きさは定義に無関係。
・分化型腺癌であるもの、内視鏡的切除が可能なもの:誤り。組織型や治療法は定義ではなく、内視鏡治療の適応を決める因子。

【押さえておきたい関連知識】
内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の適応は「リンパ節転移のリスクが極めて低い」病変に限られ、分化型で潰瘍を伴わない粘膜内癌などが原則。切除後の病理で深部浸潤、脈管侵襲、未分化成分、断端陽性があれば追加の外科的切除(リンパ節郭清を伴う)を検討する。
背景としてHelicobacter pylori感染と萎縮性胃炎が最重要で、除菌により発症リスクを低減できるが、除菌後も発癌リスクは残るため定期的な内視鏡が必要。
進行胃癌ではBorrmann分類(1型腫瘤、2型潰瘍限局、3型潰瘍浸潤、4型びまん浸潤)を用い、4型のスキルス胃癌は若年女性にもみられ予後不良。転移形式としてVirchow転移、Krukenberg腫瘍、Schnitzler転移も押さえておきたい。
問8
急性胆管炎のCharcotの三徴に含まれるものの組合せはどれか。
  • 1腹痛・嘔吐・下痢
  • 2発熱・血尿・側腹部痛
  • ✔発熱・黄疸・右上腹部痛
  • 4発熱・意識障害・ショック
  • 5黄疸・腹水・肝性脳症
解説:【正解の根拠】発熱・黄疸・右上腹部痛
胆管が閉塞して胆汁がうっ滞し、そこに細菌感染が加わることで生じる。発熱(しばしば悪寒戦慄を伴う)、黄疸、右上腹部痛の3つがCharcotの三徴。

【他の選択肢】
・発熱・意識障害・ショック:これらを三徴に加えた5つがReynoldsの五徴で、急性閉塞性化膿性胆管炎を示唆する重篤な状態。緊急の胆道ドレナージが必要となる。
・黄疸・腹水・肝性脳症:非代償性肝硬変の所見。
・発熱・血尿・側腹部痛:尿路系の感染や結石。
・腹痛・嘔吐・下痢:非特異的な消化器症状。

【押さえておきたい関連知識】
胆管炎と胆囊炎の区別が重要。胆囊炎は胆囊管の閉塞による胆囊の炎症でMurphy徴候が特徴、黄疸は原則きたさない。胆管炎は総胆管の閉塞であり黄疸を伴い、菌血症・敗血症へ進展しやすく緊急性が高い。
検査では胆道系酵素(ALP、γ-GT)とビリルビンの上昇、炎症反応上昇を認め、腹部超音波で胆管拡張と結石を確認し、必要に応じCTやMRCPを行う。
治療の原則は「抗菌薬+胆道ドレナージ」。抗菌薬だけでは閉塞した胆道内の感染を制御できず、内視鏡的経鼻胆道ドレナージやステント留置、あるいは経皮経肝的ドレナージで減圧することが救命につながる。全身状態が安定してから原因(総胆管結石、腫瘍)に対する根治的治療を行う。
「発熱+黄疸」をみたら胆管炎を疑い、ドレナージの必要性を早期に判断する姿勢が大切である。

腎・泌尿器全52問中 8問を掲載

問1
ネフローゼ症候群の診断基準として正しいものはどれか。
  • 1尿蛋白1.0g/日以上
  • ✔尿蛋白3.5g/日以上かつ血清アルブミン3.0g/dL以下
  • 3血尿の持続
  • 4血清クレアチニン2.0mg/dL以上
  • 5高アルブミン血症
解説:【正解の根拠】尿蛋白3.5g/日以上かつ血清アルブミン3.0g/dL以下
成人ネフローゼ症候群では、この2つが必須条件。浮腫と脂質異常症は参考所見であり、必須ではない。

【他の選択肢】
・尿蛋白1.0g/日以上:基準に達しない。
・血尿の持続:ネフローゼの定義に含まれない(ネフローゼ症候群は蛋白尿主体、腎炎症候群は血尿主体という対比で整理する)。
・血清クレアチニン2.0mg/dL以上:腎機能障害の指標であり、ネフローゼの定義とは別。
・高アルブミン血症:逆で、低アルブミン血症が特徴。

【押さえておきたい関連知識】
病態は「大量の蛋白喪失」から一続きに説明できる。①アルブミン喪失→膠質浸透圧低下→浮腫、②肝での代償的な脂質合成亢進→脂質異常症、③アンチトロンビンなど抗凝固因子の喪失+凝固因子の増加→血栓症(特に膜性腎症で腎静脈血栓に注意)、④免疫グロブリンの喪失→易感染性。
原因は成人では膜性腎症が最多、小児では微小変化型が大部分でステロイドが著効する。二次性(糖尿病、アミロイドーシス、SLE、悪性腫瘍、薬剤)の除外も重要。
問2
わが国の慢性糸球体腎炎で最も頻度が高いものはどれか。
  • 1微小変化型ネフローゼ症候群
  • 2巣状分節性糸球体硬化症
  • 3膜性増殖性糸球体腎炎
  • 4膜性腎症
  • ✔IgA腎症
解説:【正解の根拠】IgA腎症
わが国の慢性糸球体腎炎の約3〜4割を占め最も多い。学校健診や職場健診での顕微鏡的血尿・蛋白尿、あるいは上気道感染に伴う肉眼的血尿を契機に発見される。

【他の選択肢】
・膜性腎症:成人ネフローゼ症候群の最多原因。抗PLA2R抗体が関与。
・微小変化型:小児ネフローゼの大部分。
・巣状分節性糸球体硬化症:難治性ネフローゼで進行性。
・膜性増殖性糸球体腎炎:低補体血症を伴う。

【押さえておきたい関連知識】
IgA腎症の診断の決め手は腎生検の蛍光抗体法で「メサンギウム領域へのIgA沈着」を証明すること。血清IgAは半数程度でしか上昇せず、補体は正常のことが多い。
上気道感染との関係は重要な鑑別ポイントで、IgA腎症では感染とほぼ同時(0〜数日)に肉眼的血尿が出るのに対し、溶連菌感染後急性糸球体腎炎では10日〜2週の潜伏期を置いて発症し、補体C3が低下する。
治療はRA系阻害薬による尿蛋白減少、リスクに応じて口蓋扁桃摘出術+ステロイドパルス療法。約2〜4割が20年で末期腎不全に至るとされ、決して予後良好とは言えない点に注意。
問3
腎前性急性腎障害を示唆する所見はどれか。
  • ✔尿中ナトリウム排泄分画(FENa) 1%未満
  • 2尿浸透圧300mOsm/L程度
  • 3尿沈渣での顆粒円柱の多数出現
  • 4尿比重1.010前後
  • 5BUN/クレアチニン比10以下
解説:【正解の根拠】尿中ナトリウム排泄分画(FENa)1%未満
腎前性では腎血流低下に対し、尿細管が必死にNaと水を再吸収して循環血液量を保とうとする。したがってNaはほとんど尿に出ず、FENaは1%未満となる。「尿細管の機能は保たれている」ことの表れ。

【他の選択肢と腎性(急性尿細管壊死)との対比】
        腎前性    腎性
・FENa     1%未満    1%超
・尿浸透圧   500以上    300前後(血漿と等張)
・尿比重    高値      1.010前後
・BUN/Cr比   20以上     10〜15
・尿沈渣    乏しい     顆粒円柱・尿細管上皮円柱
つまり選択肢b〜eはいずれも腎性を示唆する所見。

【押さえておきたい関連知識】
腎前性は輸液や心拍出量の改善で速やかに回復しうるが、遷延すると虚血性の急性尿細管壊死へ移行する。利尿薬使用中はFENaが解釈できなくなるため、代わりにFEUN(尿素窒素排泄分画)を用いる。
腎後性の見逃しも要注意で、無尿では必ず超音波で水腎症の有無を確認する。閉塞解除後は多尿(閉塞解除後利尿)となり脱水・電解質異常をきたすため補正が必要。
問4
急性期の尿路結石の検出に最も有用な画像検査はどれか。
  • 1逆行性腎盂造影
  • 2単純エックス線撮影
  • ✔単純CT
  • 4MRI
  • 5腎シンチグラフィ
解説:【正解の根拠】単純CT
結石の組成にかかわらずほぼすべての尿路結石を描出でき、水腎症の程度や結石の大きさ・位置、さらに大動脈瘤や虫垂炎など他疾患の除外も同時にできるため、急性期の第一選択となる。造影剤も不要。

【他の選択肢】
・単純エックス線(KUB):シュウ酸カルシウム結石は写るが、尿酸結石とシスチン結石はエックス線透過性のため描出されない。腸管ガスや骨と重なると見落とす。経過観察には有用。
・MRI:結石そのものの描出は不得手。
・腎シンチグラフィ:分腎機能の評価に用いるもので急性期診断には不向き。
・逆行性腎盂造影:侵襲的で、まず選ぶ検査ではない。

【押さえておきたい関連知識】
超音波は被曝がなく水腎症の評価に有用で、妊婦や小児では第一選択となる。
治療は5mm以下なら自然排石が期待でき、十分な水分摂取・鎮痛(NSAIDが有効)・排石促進薬で待機する。大きい結石や自然排石困難例では体外衝撃波結石破砕術や内視鏡手術を行う。
最も重要なのは「感染を伴う閉塞(閉塞性腎盂腎炎)」で、発熱・膿尿を伴えば敗血症に至りうるため、緊急の尿路ドレナージ(尿管ステントや腎瘻)が必要となる。再発率が高いため、水分摂取と食事指導による予防も欠かせない。
問5
高カリウム血症の心電図所見として正しいものはどれか。
  • 1ST上昇
  • 2P波の増高
  • 3U波の出現
  • ✔テント状T波
  • 5QT時間の短縮のみ
解説:【正解の根拠】テント状T波
高カリウム血症で最も早期に現れる所見で、幅が狭く尖鋭で背の高いT波を呈する。細胞外K上昇により静止膜電位が浅くなり、再分極が速まることによる。

【他の選択肢】
・U波の出現、ST低下、T波平坦化:いずれも低カリウム血症の所見。
・QT短縮のみ:高Ca血症でみられる(高K血症でもQTは短縮しうるが、代表的所見はテント状T波)。
・ST上昇:心筋梗塞、心膜炎、Brugada症候群など。
・P波の増高:右房負荷(肺性P)。高K血症ではむしろP波は平坦化・消失する。

【押さえておきたい関連知識】
進行の順序を押さえる。テント状T波→P波の平坦化・消失、PR延長→QRS幅の延長→サインカーブ様波形→心室細動・心停止。
治療は3段階で理解する。①心筋の膜安定化:グルコン酸カルシウム静注(K値自体は下がらないが致死性不整脈を防ぐ。最優先)。②細胞内への移動:GI療法、β2刺激薬吸入、アシドーシスがあれば重炭酸。③体外への除去:陽イオン交換樹脂、ループ利尿薬、血液透析。
あわせて原因薬剤(ACE阻害薬/ARB、スピロノラクトン、ST合剤、NSAID)の中止と、溶血による偽性高カリウム血症の除外も忘れない。
問6
慢性腎臓病でみられる検査所見として誤っているものはどれか。
  • 1代謝性アシドーシス
  • 2エリスロポエチン低下による貧血
  • ✔活性型ビタミンD増加
  • 4高リン血症
  • 5低カルシウム血症
解説:【正解の根拠】活性型ビタミンD増加(=誤り)
ビタミンDは肝で25位、腎で1α位の水酸化を受けて活性型となる。腎機能が低下するとこの1α水酸化が障害されるため、活性型ビタミンDは「減少」する。

【他の選択肢(=実際にみられる所見)】
・高リン血症:腎からのリン排泄低下による。
・低カルシウム血症:活性型ビタミンD減少により腸管からのCa吸収が低下し、さらに高リン血症がCaと結合して低下を助長する。
・代謝性アシドーシス:酸(不揮発酸)の排泄障害と重炭酸の再吸収低下による。
・腎性貧血:腎の尿細管間質細胞でのエリスロポエチン産生低下による正球性正色素性貧血。

【押さえておきたい関連知識】
低Ca血症と高P血症、活性型ビタミンD低下はいずれもPTH分泌を刺激するため、続発性副甲状腺機能亢進症となり、骨からのCa動員が進んで線維性骨炎や骨折、さらに血管の石灰化を招く。この一連をCKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常)と呼び、心血管死のリスクと直結する。治療はリン制限とリン吸着薬、活性型ビタミンD製剤、カルシウム受容体作動薬。
CKD全体の管理としては、①血圧管理とRA系阻害薬・SGLT2阻害薬による腎保護、②蛋白尿の減少、③貧血の是正(ESA製剤やHIF-PH阻害薬+鉄の充足)、④アシドーシスと電解質の補正、⑤食事療法(塩分、蛋白、K、P)、⑥腎毒性薬剤の回避と薬剤の用量調整、そして⑦適切な時期の腎代替療法の説明と準備がある。
CKDは末期腎不全だけでなく心血管疾患の強力な危険因子である点も重要。
問7
前立腺癌について正しいものはどれか。
  • 1骨転移は溶骨性が主体である
  • 2組織型は扁平上皮癌が多い
  • 3男性ホルモンは病勢と関連しない
  • 4主に前立腺の内腺(移行領域)に発生する
  • ✔血清PSAが診断の補助に用いられる
解説:【正解の根拠】血清PSAが診断の補助に用いられる
PSAは前立腺特異抗原で、前立腺癌のスクリーニングと治療効果・再発のモニタリングに用いられる。ただし前立腺肥大症、前立腺炎、射精後、直腸診や自転車の後でも上昇するため、「癌に特異的」ではなく「前立腺に特異的」である点に注意。

【他の選択肢】
・主に内腺(移行領域)に発生:誤り。前立腺癌は「外腺(辺縁領域)」に好発する。内腺(移行領域)に生じるのは前立腺肥大症。この対比は頻出で、外腺発生ゆえに直腸診で硬結として触れやすく、一方で排尿症状は進行するまで出にくい。
・組織型は扁平上皮癌:誤り。大部分が腺癌。
・骨転移は溶骨性が主体:誤り。「造骨性」が特徴で、ALPが上昇し骨シンチで集積を示す。
・男性ホルモンは病勢と関連しない:誤り。アンドロゲン依存性であり、これが内分泌療法の根拠となる。

【押さえておきたい関連知識】
診断はPSA→直腸診・MRI→経直腸的針生検の順で進め、Gleasonスコアにより悪性度を評価する。病期と悪性度、年齢、期待余命から治療を選択し、低リスク例では監視療法(PSA監視)も選択肢となる。
限局例には前立腺全摘除術や放射線療法、進行例にはLH-RHアゴニスト/アンタゴニストや抗アンドロゲン薬による内分泌療法が奏効するが、やがて去勢抵抗性となる。
検診としてのPSAは過剰診断・過剰治療の懸念があり、利益と不利益を説明したうえで実施するという考え方が主流である点も押さえておきたい。
問8
前立腺肥大症による排尿障害に対して用いられる第一選択薬はどれか。
  • 1利尿薬
  • 2β遮断薬
  • 3抗ヒスタミン薬
  • ✔α1受容体遮断薬
  • 5抗コリン薬
解説:【正解の根拠】α1受容体遮断薬
前立腺と膀胱頸部の平滑筋にはα1受容体が分布し、その収縮が尿道抵抗を高めている。α1遮断薬はこれを弛緩させ、速やかに排尿症状を改善するため第一選択となる。効果発現が早いのも利点。

【他の選択肢】
・抗コリン薬:排尿筋の収縮を抑えるため、排尿障害や残尿の多い患者では尿閉を誘発しうる。過活動膀胱症状が併存する場合に、残尿を確認したうえで慎重に併用することはある。
・抗ヒスタミン薬:抗コリン作用により尿閉を誘発しうる。感冒薬に含まれ、実際に急性尿閉の契機となることが多い。
・利尿薬:尿量を増やすだけで排尿障害は改善せず、むしろ頻尿を悪化させる。
・β遮断薬:排尿障害の治療薬ではない。

【押さえておきたい関連知識】
薬物療法にはα1遮断薬のほか、前立腺の体積を縮小させる5α還元酵素阻害薬(効果発現に数か月かかるが体積の大きい症例に有効。PSAを低下させるため癌の評価時に注意)、PDE5阻害薬などがある。
α1遮断薬の副作用は起立性低血圧、めまい、射精障害。白内障手術時の術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)のため、眼科手術前には服薬歴を伝える必要がある点も知っておきたい。
評価は国際前立腺症状スコア、残尿測定、尿流測定、直腸診とPSAで行い、前立腺癌、尿道狭窄、神経因性膀胱、多尿をきたす全身疾患を除外する。薬物で改善しない例、尿閉や腎後性腎障害、膀胱結石、反復する感染や血尿がある例では経尿道的前立腺切除術などの手術を検討する。

内分泌・代謝全58問中 8問を掲載

問1
Basedow病の診断に最も特異性が高い自己抗体はどれか。
  • 1抗核抗体
  • 2抗ミトコンドリア抗体
  • 3抗TPO抗体
  • 4抗サイログロブリン抗体
  • ✔TSH受容体抗体(TRAb)
解説:【正解の根拠】TSH受容体抗体(TRAb)
TSH受容体に結合して"刺激"し、TSHとは無関係に甲状腺ホルモンを過剰産生させる原因抗体そのもの。したがって診断特異性が高く、Basedow病の確定に用いる。

【他の選択肢】
・抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体:橋本病で高率に陽性となるが、Basedow病でも陽性となるため両者の区別には使えない。「甲状腺に自己免疫がある」ことしか言えない。
・抗核抗体:SLEなど膠原病のスクリーニング。
・抗ミトコンドリア抗体:原発性胆汁性胆管炎に特異的。

【押さえておきたい関連知識】
Merseburgの三徴=びまん性甲状腺腫・眼球突出・頻脈。ただし眼球突出は約3割にとどまり、必発ではない。
検査はTSH低値・FT4高値+TRAb陽性で診断できる。鑑別で重要なのが無痛性甲状腺炎と亜急性甲状腺炎で、これらは破壊性甲状腺炎のため放射性ヨード摂取率が「低下」する(Basedow病では上昇)。抗甲状腺薬が有効か無効かを分ける決定的な違いなので必ず区別する。
治療は抗甲状腺薬・放射性ヨード内用療法・手術の3択。抗甲状腺薬では投与開始2か月以内の無顆粒球症が最重要副作用で、「発熱・咽頭痛があれば直ちに受診し血算を確認」と患者に明示しておく。妊娠初期は薬剤選択に配慮が必要。
問2
原発性アルドステロン症に特徴的な検査所見はどれか。
  • 1血清カリウム高値
  • 2血漿レニン活性高値・血漿アルドステロン低値
  • ✔血漿レニン活性低値・血漿アルドステロン高値
  • 4両者とも高値
  • 5両者とも低値
解説:【正解の根拠】血漿レニン活性低値・血漿アルドステロン高値
副腎からアルドステロンが自律的に(=レニンの支配を受けずに)分泌される病態。Na再吸収が亢進して体液量が増え血圧が上がるため、負のフィードバックによりレニンは強く抑制される。「アルドステロンだけが高く、レニンは低い」という解離がこの疾患の本質。

【他の選択肢】
・レニン高値・アルドステロン低値:Addison病など副腎不全。
・両者とも高値:腎血管性高血圧など二次性アルドステロン症。レニンが上流にあるため両方上がる。
・両者とも低値:Cushing症候群や偽性アルドステロン症(甘草)など。
・血清カリウム高値:逆で、低カリウム血症となる。

【押さえておきたい関連知識】
スクリーニングはアルドステロン/レニン活性比(ARR)で、200以上が目安。カプトプリル負荷試験などで確認し、副腎静脈サンプリングで片側性か両側性かを判定する(片側なら手術、両側なら薬物療法)。
K排泄亢進による低カリウム血症で脱力・多尿・こむら返りをきたすが、近年は正カリウム血症例が多いことがわかっており、「低K血症がないから否定」はできない。
二次性高血圧の中で最も頻度が高く、同程度の血圧の本態性高血圧より心血管合併症が多いため、若年発症・治療抵抗性・低K血症・副腎腫瘤があれば積極的に検索する。降圧薬はARRに影響するため、検査前にCa拮抗薬やα遮断薬へ変更する。
問3
Cushing症候群のスクリーニング検査として最も適切なのはどれか。
  • 1水制限試験
  • 2インスリン低血糖試験
  • ✔一晩少量デキサメタゾン抑制試験
  • 4経口ブドウ糖負荷試験
  • 5ACTH負荷試験
解説:【正解の根拠】一晩少量デキサメタゾン抑制試験
深夜にデキサメタゾン1mgを内服し、翌朝の血中コルチゾールが抑制されない(5μg/dL以上など)ことを確認する。「本来なら抑制がかかるはずなのにかからない=自律性分泌」を示す、過剰を疑うときの基本の考え方。

【他の選択肢】
・経口ブドウ糖負荷試験:先端巨大症のGH抑制を見る検査。
・ACTH負荷試験、インスリン低血糖試験:いずれも"刺激"試験で、副腎皮質機能低下症や下垂体機能低下症など「欠乏」を疑うときに用いる。
・水制限試験:尿崩症の検査。

【押さえておきたい関連知識】
原則として、ホルモンの過剰を疑うときは抑制試験、欠乏を疑うときは刺激試験を行う。この対応は他の内分泌疾患にも共通する。
臨床像は中心性肥満、満月様顔貌、水牛様脂肪沈着、赤紫色の幅広い皮膚線条、近位筋の筋力低下、高血糖、高血圧、骨粗鬆症、易感染性、精神症状。単なる肥満との区別は、四肢が細く近位筋力が低下し、皮膚が菲薄化している点。
局在診断はACTH測定が起点で、ACTH低値なら副腎性(腺腫)、正常〜高値なら下垂体性(Cushing病)か異所性ACTH産生腫瘍を疑い、大量デキサメタゾン抑制試験と画像で鑑別する。深夜唾液コルチゾールや24時間尿中遊離コルチゾールもスクリーニングに用いられる。
問4
糖尿病の診断基準に含まれないものはどれか。
  • 1早朝空腹時血糖126mg/dL以上
  • 275gOGTT 2時間値200mg/dL以上
  • 3随時血糖200mg/dL以上
  • 4HbA1c 6.5%以上
  • ✔尿糖陽性
解説:【正解の根拠】尿糖陽性
尿糖は血糖ではなく「腎の糖排泄閾値」に左右されるため診断基準に含まれない。腎性糖尿では血糖が正常でも尿糖が陽性となり、逆に高齢者や腎機能低下者では血糖が高くても尿糖が出にくい。SGLT2阻害薬内服中は当然陽性になる。

【他の選択肢(=診断基準)】
糖尿病型と判定する項目は、①早朝空腹時血糖126mg/dL以上、②75gOGTT 2時間値200mg/dL以上、③随時血糖200mg/dL以上、④HbA1c 6.5%以上。

【押さえておきたい関連知識】
判定のルールが問われやすい。①〜③の血糖値のいずれかと④HbA1cが同一採血で確認されれば1回で糖尿病と診断できる。血糖値のみが糖尿病型なら別日に再検査が必要で、HbA1cのみが糖尿病型でも診断は確定しない(HbA1c単独では診断不可)。ただし典型的症状(口渇・多飲・多尿・体重減少)や確実な糖尿病網膜症があれば血糖値1回で診断できる。
HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖を反映するが、溶血性貧血・出血・輸血・鉄欠乏の回復期・異常ヘモグロビン・肝硬変では実際と乖離するため、グリコアルブミンなどで補完する。
問5
糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖状態との比較で正しいものはどれか。
  • 1ケトアシドーシスは2型糖尿病に多い
  • 2高浸透圧高血糖状態ではケトン体が著明に増加する
  • ✔ケトアシドーシスではKussmaul大呼吸をみる
  • 4高浸透圧高血糖状態では血糖値は300mg/dL程度にとどまる
  • 5いずれも初期治療はインスリン大量静注のみで輸液は行わない
解説:【正解の根拠】ケトアシドーシスではKussmaul大呼吸をみる
インスリンの絶対的欠乏により脂肪分解が進みケトン体が蓄積して代謝性アシドーシスとなる。これを呼吸性に代償しようとCO2を吐き出すため、深く速い大呼吸(Kussmaul呼吸)が出現し、呼気にアセトン臭を伴う。

【他の選択肢】
・ケトアシドーシスは2型に多い:誤り。1型糖尿病に多く、インスリンの自己中断や感染が誘因。ただしSGLT2阻害薬使用中は2型でも正常血糖ケトアシドーシスが起こりうる。
・高浸透圧高血糖状態でケトン体著増:誤り。インスリンが「わずかに残っている」ため脂肪分解が抑えられ、ケトーシスは軽度。ここが両者の本質的な違い。
・高浸透圧高血糖状態で血糖300mg/dL程度:誤り。600mg/dL以上と著明高値になる。
・輸液を行わない:誤り。両者とも高度の脱水があり、治療の第一歩は十分な生理食塩液の輸液である。

【押さえておきたい関連知識】
治療は「輸液→インスリン少量持続静注→カリウム補正」の順で考える。最重要の落とし穴が低カリウム血症で、治療前は見かけ上Kが正常〜高値でも、インスリン投与とアシドーシス補正によりKが細胞内へ移動して急落し致死性不整脈を招く。血清K値を確認しながら早期から補充する。
また血糖を下げすぎると脳浮腫(特に小児)のリスクがあるため、下降速度を管理し、血糖200〜300mg/dL程度でブドウ糖を含む輸液に切り替える。誘因(感染、心筋梗塞、インスリン中断)の検索も必須。
問6
褐色細胞腫の症状として典型的でないものはどれか。
  • 1頭痛
  • 2動悸
  • 3発汗過多
  • ✔低血糖
  • 5発作性高血圧
解説:【正解の根拠】低血糖(=典型的でない)
むしろ「高血糖」となる。カテコラミンはインスリン分泌を抑制し、肝での糖新生とグリコーゲン分解を促進するため血糖が上がる。糖尿病の初発として発見されることもある。

【他の選択肢(=典型的な症状)】
・発作性高血圧:持続性のことも発作性のこともあり、体位変換・排尿・腹部触診・麻酔導入が誘因となる。
・頭痛、動悸、発汗過多:この3つに発作性高血圧を加えた組合せが古典的で、5H(Hypertension, Headache, Hyperhidrosis, Hypermetabolism, Hyperglycemia)としても整理される。

【押さえておきたい関連知識】
「10%病」として知られ、両側性・悪性・副腎外・家族性がそれぞれ約10%とされてきた(近年は遺伝性の割合はより高いとされる)。多発性内分泌腫瘍症2型、von Hippel-Lindau病、神経線維腫症1型との関連があり、若年例では遺伝学的検索を考慮する。
診断は血中・尿中カテコラミンと代謝産物(メタネフリン、ノルメタネフリン)の測定が中心で、MIBGシンチグラフィで局在と多発性を評価する。
最重要は周術期管理で、術前に必ずα遮断薬から開始して十分な血管拡張と循環血液量の回復を図ってからβ遮断薬を追加する。順序を逆にするとα作用が野放しになり高血圧クリーゼを招く。腫瘍摘出後は逆にカテコラミンが急減して重篤な低血圧をきたすため、輸液と昇圧の準備が必要。
問7
甲状腺機能低下症の症状として正しいものはどれか。
  • 1頻脈
  • 2発汗過多
  • 3体重減少
  • 4下痢
  • ✔寒がり・便秘
解説:【正解の根拠】寒がり・便秘
甲状腺ホルモンは全身の代謝を高めるホルモンなので、不足すれば「すべてが遅くなる・冷える」方向に症状が出る。熱産生が減って寒がりに、消化管運動が落ちて便秘になる。

【他の選択肢(=いずれも機能"亢進"症の症状)】
頻脈、発汗過多、体重減少、下痢はいずれも代謝亢進による症状。「亢進=暑がり・やせる・速い」「低下=寒がり・太る・遅い」と正反対に整理すると迷わない。

【押さえておきたい関連知識】
機能低下症のその他の症状は、体重増加、易疲労感、動作緩慢、嗄声、皮膚乾燥、脱毛(眉毛外側1/3の脱落)、粘液水腫(圧痕を残さない浮腫)、徐脈、アキレス腱反射の弛緩相遅延、月経異常、記銘力低下や抑うつ。高齢者では認知症やうつ病と誤られやすく、「治療可能な認知症様病態」として必ず鑑別に挙げる。
検査ではTSH高値・FT4低値が原発性の所見で、大部分は橋本病(慢性甲状腺炎)による。抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体が陽性となる。TSHが低〜正常でFT4低値なら中枢性を考え、下垂体病変を検索する。
治療はレボチロキシンの補充。ただし高齢者や虚血性心疾患合併例では、代謝亢進により狭心症や不整脈を誘発しうるため少量から漸増する。また未治療の副腎不全がある状態で甲状腺ホルモンを先に開始すると副腎クリーゼを招くため、疑わしければ副腎皮質ホルモンを先行させる。粘液水腫性昏睡は低体温・意識障害をきたす致死的病態である。
問8
先端巨大症の診断に有用な所見はどれか。
  • 1低血糖の反復
  • 2経口ブドウ糖負荷試験でGHが正常に抑制される
  • ✔経口ブドウ糖負荷試験でGHが十分に抑制されない
  • 4血中IGF-I(ソマトメジンC)の低下
  • 5下垂体後葉の腫大
解説:【正解の根拠】経口ブドウ糖負荷試験でGHが十分に抑制されない
健常者ではブドウ糖負荷によりGH分泌が抑制されるが、GH産生下垂体腺腫では自律的に分泌されるため抑制されない。「過剰を疑うときは抑制試験」という内分泌の原則どおりの検査である。

【他の選択肢】
・GHが正常に抑制される:健常者の反応であり否定的。
・血中IGF-Iの低下:誤り。GHの作用を反映して年齢・性別基準値に比べ「高値」となる。GHは拍動性に分泌され変動が大きいため、日内変動の少ないIGF-Iが実用的な指標となる。
・低血糖の反復:インスリノーマなどを考える所見。
・下垂体後葉の腫大:GH産生腺腫は前葉由来。

【押さえておきたい関連知識】
症状はゆっくり進むため本人も周囲も気づきにくく、「指輪や靴のサイズが合わなくなった」「昔の写真と顔つきが違う」といった変化が診断の糸口になる。手足の腫大、額・下顎・鼻の突出、巨大舌、歯間離開、嗄声、多汗、手根管症候群。
合併症が予後を規定する点が重要で、耐糖能異常・糖尿病、高血圧、心肥大と心不全、睡眠時無呼吸、変形性関節症、そして大腸ポリープ・大腸癌のリスク上昇があり、大腸内視鏡によるスクリーニングが推奨される。
腫瘍が大きければ視交叉の圧迫による両耳側半盲や下垂体機能低下も生じる。
治療の第一選択は経蝶形骨洞的腺腫摘出術で、遺残・再発例にはソマトスタチンアナログ、GH受容体拮抗薬、放射線療法を用いる。骨端線閉鎖前に発症すれば下垂体性巨人症となる。

血液全44問中 8問を掲載

問1
鉄欠乏性貧血の検査所見として正しいものはどれか。
  • 1網赤血球著明増加
  • 2大球性正色素性貧血
  • 3血清フェリチン高値
  • 4総鉄結合能(TIBC)低下
  • ✔平均赤血球容積(MCV)低下
解説:【正解の根拠】平均赤血球容積(MCV)低下
鉄はヘモグロビン合成に必須で、不足すると赤血球1個あたりのヘモグロビン量が減り、小さく色の薄い赤血球となる(小球性低色素性貧血)。MCVとMCHCがともに低下する。

【他の選択肢】
・血清フェリチン高値:誤り。フェリチンは貯蔵鉄の指標で「低下」する。ただし炎症・感染・悪性腫瘍では急性期蛋白として上昇するため、これらの合併時は低値を示さないことがある。
・総鉄結合能(TIBC)低下:誤り。鉄が不足するとトランスフェリンが代償的に増えるためTIBCは「上昇」する。
・網赤血球著明増加:誤り。産生障害なので増加しない(鉄剤投与後には増加し、治療効果の指標となる)。
・大球性正色素性貧血:誤り。これはビタミンB12・葉酸欠乏の所見。

【押さえておきたい関連知識】
鉄欠乏の進行は「貯蔵鉄の枯渇(フェリチン低下)→血清鉄低下・TIBC上昇→ヘモグロビン低下」の順で、フェリチン低下が最も早い。
臨床上最も重要なのは「なぜ鉄が足りないのか」の追究で、成人男性と閉経後女性の鉄欠乏は消化管出血(胃癌・大腸癌)を疑い、内視鏡検査が必須。閉経前女性では月経過多や子宮筋腫を考える。
症状は倦怠感や動悸のほか、スプーン状爪、舌炎、口角炎、氷などを無性に食べたくなる異食症(氷食症)。治療は経口鉄剤で、ヘモグロビンが正常化しても貯蔵鉄が満たされるまで(フェリチンが十分になるまで)数か月継続する。
問2
ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血に関する記述で誤っているものはどれか。
  • 1深部感覚障害を伴うことがある
  • 2血清LD値が上昇する
  • ✔葉酸単独投与で神経症状も改善する
  • 4過分葉好中球を認める
  • 5胃全摘後に発症しうる
解説:【正解の根拠】葉酸単独投与で神経症状も改善する(=誤り)
葉酸を単独投与すると貧血(血液学的所見)は一時的に改善するが、神経症状は改善せず、かえって進行させる危険がある。したがってB12欠乏の可能性がある巨赤芽球性貧血では、必ずB12を測定・補充する。これは臨床上きわめて重要な落とし穴。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・深部感覚障害:B12は髄鞘の維持に必要で、脊髄後索・側索の変性(亜急性連合性脊髄変性症)により振動覚・位置覚の低下、Romberg徴候陽性、痙性歩行をきたす。
・血清LD上昇:骨髄内で赤芽球が壊れる無効造血のため、LDが著明に上昇し間接ビリルビンも上がる。
・過分葉好中球:核が5分葉以上に分かれる、末梢血の特徴的所見。
・胃全摘後:内因子が失われるため。

【押さえておきたい関連知識】
B12は「胃の壁細胞が出す内因子」と結合し「回腸末端」で吸収される。したがって欠乏するのは、胃全摘・悪性貧血(自己免疫性胃炎で壁細胞と内因子が障害される)・回腸切除・Crohn病・長期のPPI/メトホルミン使用・極端な菜食。肝に数年分の貯蔵があるため、胃全摘後は数年経ってから発症する点も特徴。
葉酸欠乏はアルコール多飲、妊娠、吸収不良、メトトレキサートなどで生じ、神経症状を伴わない点でB12欠乏と区別する。悪性貧血では抗内因子抗体・抗胃壁細胞抗体が陽性で、胃癌の合併リスクが高いため内視鏡での経過観察も検討する。
問3
急性前骨髄球性白血病(APL)について正しいものはどれか。
  • 1Auer小体は認めない
  • 2予後は急性白血病の中で最も不良である
  • 3t(9;22)転座を有する
  • ✔DICを合併しやすい
  • 5治療の第一選択はイマチニブである
解説:【正解の根拠】DICを合併しやすい
腫瘍細胞(前骨髄球)のアズール顆粒に組織因子様物質が豊富に含まれ、細胞が崩壊すると凝固が一気に活性化されてDICを起こす。診断時からすでにDICを伴っていることが多く、頭蓋内出血や肺出血が早期死亡の主因となるため、APLを疑った時点で凝固の評価と治療開始を急ぐ。

【他の選択肢】
・t(9;22)、イマチニブ:いずれも慢性骨髄性白血病。APLはt(15;17)によるPML-RARα融合遺伝子。
・Auer小体は認めない:誤り。むしろAuer小体が束状に多数みられる faggot cell が特徴的。
・予後最も不良:誤り。ATRAの導入により、かつて最悪だった予後は急性白血病の中で最も良好な部類に変わった。

【押さえておきたい関連知識】
治療の中心は全トランス型レチノイン酸(ATRA)による分化誘導療法で、腫瘍細胞を殺すのではなく成熟させるという発想の転換が画期的だった。亜ヒ酸も有効。
注意すべき合併症が分化症候群(レチノイン酸症候群)で、発熱、呼吸困難、浸潤影、浮腫、低血圧をきたす。疑えば速やかにステロイドを投与する。
APLは「発見が早ければ治る、しかし初期のDICで失う」典型例であり、汎血球減少や出血傾向をみたら末梢血塗抹の確認と凝固検査を怠らないことが強調される。
問4
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)でみられる所見はどれか。
  • 1脾臓の著明な腫大
  • 2赤血球破砕像
  • 3骨髄巨核球の減少
  • 4PT・APTTの延長
  • ✔皮膚の点状出血
解説:【正解の根拠】皮膚の点状出血
血小板減少による一次止血障害のため、点状出血、紫斑、鼻出血、歯肉出血、月経過多といった「皮膚粘膜出血」を呈する。これは血友病などの凝固因子異常でみられる関節内出血・筋肉内出血とは対照的で、出血傾向の鑑別の第一歩となる。

【他の選択肢】
・骨髄巨核球の減少:誤り。破壊の亢進が本態で産生は保たれるため、巨核球はむしろ「増加」する。ここが再生不良性貧血との重要な違い。
・PT・APTTの延長:誤り。凝固因子は正常なので両者とも正常。
・脾臓の著明な腫大:誤り。著明な脾腫があればITPらしくなく、肝疾患や血液悪性腫瘍を考える。
・赤血球破砕像:誤り。TTPやHUS、DICでみられる。

【押さえておきたい関連知識】
ITPは除外診断であり、薬剤性、感染症(HIV、HCV、H. pylori)、SLE、リンパ増殖性疾患、偽性血小板減少(EDTA依存性凝集)を除外して診断する。
治療は血小板数と出血症状で判断し、無症状で数が保たれていれば経過観察でよい。H. pylori陽性なら除菌が有効なことがあり、まず検査・除菌を検討するのが本邦の特徴。次いで副腎皮質ステロイド、トロンボポエチン受容体作動薬、リツキシマブ、脾摘へ進む。
緊急時(頭蓋内出血など)は免疫グロブリン大量療法と血小板輸血を行うが、通常のITPでは輸血血小板もすぐ破壊されるため予防的な血小板輸血は行わない。
問5
血友病Aの検査所見として正しいものはどれか。
  • 1血小板数の減少
  • 2PT延長・APTT正常
  • ✔PT正常・APTT延長
  • 4PT・APTTともに延長
  • 5出血時間の著明な延長
解説:【正解の根拠】PT正常・APTT延長
血友病Aは第VIII因子の欠乏。第VIII因子は内因系凝固経路に属し、その活性を反映するAPTTのみが延長し、外因系を反映するPTは正常となる。

【他の選択肢】
・PT延長・APTT正常:第VII因子欠乏、ワルファリン投与初期、ビタミンK欠乏の初期など外因系の異常。
・PT・APTTともに延長:共通系の異常、肝不全、DIC、高度のビタミンK欠乏。
・血小板数減少、出血時間延長:一次止血の異常を示す所見で、血友病では両者とも正常。

【押さえておきたい関連知識】
PTとAPTTの読み分けは頻出。「PTは外因系(第VII)、APTTは内因系(第VIII, IX, XI, XII)、両方は共通系」と整理する。
血友病AはX連鎖潜性遺伝で原則として男児に発症し、母が保因者。ただし約3割は新生突然変異で家族歴がない。血友病B(第IX因子欠乏)は臨床像も検査所見も同じで、因子活性の測定で鑑別する。
出血の特徴は関節内出血(特に膝・肘・足関節)と筋肉内出血で、反復すると血友病性関節症となり機能障害を残す。したがって出血時対応だけでなく「定期補充療法」で出血そのものを予防することが現在の標準。
最大の治療上の問題が同種抗体(インヒビター)の出現で、通常の因子補充が効かなくなる。アスピリンなど出血を助長する薬剤の回避、筋肉注射を避けることも指導する。
問6
多発性骨髄腫でみられない所見はどれか。
  • 1高カルシウム血症
  • 2頭蓋骨の打ち抜き像
  • 3腎障害
  • ✔血清総蛋白の低下
  • 5血清・尿中の単クローン性免疫グロブリン
解説:【正解の根拠】血清総蛋白の低下(=みられない)
形質細胞が単クローン性の免疫グロブリン(M蛋白)を大量に産生するため、血清総蛋白は「上昇」する。アルブミンは正常〜低下しているのに総蛋白が高い、いわゆるA/G比の低下がヒントとなり、蛋白分画でM蛋白による鋭いピーク(Mスパイク)を認める。

【他の選択肢(=実際にみられる所見)】
・M蛋白:血清・尿中に検出。尿中の遊離軽鎖はBence Jones蛋白。
・高カルシウム血症:破骨細胞の活性化による骨吸収亢進。意識障害、多尿、便秘、腎障害をきたす。
・頭蓋骨の打ち抜き像:骨吸収による溶骨性病変。骨シンチでは造骨反応が乏しく描出されにくいため、全身の単純エックス線やCT/MRIで評価する。
・腎障害:軽鎖による尿細管障害(骨髄腫腎)、高Ca血症、脱水、アミロイドーシスなど複合的。

【押さえておきたい関連知識】
症状はCRABで整理する。C:高カルシウム血症、R:腎障害、A:貧血、B:骨病変。加えて易感染性(正常免疫グロブリンは減少するため)、高粘稠度症候群、末梢神経障害、アミロイドーシス。
「高齢者の原因不明の貧血・腰背部痛・腎障害・高Ca血症」をみたら想起したい疾患である。赤沈は著明に亢進し、末梢血で赤血球の連銭形成をみる。
診断は骨髄での形質細胞増加、M蛋白、臓器障害の証明による。無症候性骨髄腫やMGUS(意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症)は経過観察の対象となる。
治療はプロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗CD38抗体などの併用と、適応があれば自家造血幹細胞移植。骨病変にはビスホスホネートやデノスマブを用いる。
問7
Hodgkinリンパ腫に特徴的な組織所見はどれか。
  • 1Auer小体
  • 2Langhans巨細胞
  • 3Aschoff結節
  • 4Negri小体
  • ✔Reed-Sternberg細胞
解説:【正解の根拠】Reed-Sternberg細胞
大型で二核あるいは多核、明瞭な核小体をもつ腫瘍細胞。「フクロウの目」と形容される特徴的な形態で、Hodgkinリンパ腫の診断に不可欠。免疫染色ではCD30、CD15が陽性となる。

【他の選択肢と対応する疾患】
・Auer小体:急性骨髄性白血病(特にAPLでは束状に多数みられる)。
・Langhans巨細胞:結核などの肉芽腫にみられる、核が馬蹄形に配列した多核巨細胞。
・Aschoff結節:リウマチ熱の心筋にみられる肉芽腫様病変。
・Negri小体:狂犬病でみられる神経細胞内の封入体。

【押さえておきたい関連知識】
Hodgkinリンパ腫と非Hodgkinリンパ腫の対比が重要。Hodgkinは頸部などのリンパ節から始まり、隣接する領域へ「連続的・規則的に」進展し、限局期で発見されやすく、治療により治癒率が高い。非Hodgkinは非連続性に広がり節外病変も多い。
発熱・盗汗・体重減少をB症状といい、予後不良因子として病期分類(Ann Arbor分類)に付記される。飲酒後のリンパ節痛という特徴的な訴えが知られる。
診断には「リンパ節の摘出生検」が必要で、針生検では構造が評価できず診断が困難なことが多い。
治療は化学療法と放射線療法。治癒率が高い一方、若年発症例では二次性悪性腫瘍、心毒性、不妊といった長期の晩期合併症が問題となるため、治療強度の最適化と長期フォローアップ、治療前の妊孕性温存の相談が重要である。
問8
慢性骨髄性白血病について正しいものはどれか。
  • 1好中球アルカリホスファターゼスコアが上昇する
  • 2末梢血で芽球のみが著増する
  • 3脾腫はまれである
  • 4治療の第一選択はATRAである
  • ✔Philadelphia染色体を認める
解説:【正解の根拠】Philadelphia染色体を認める
9番と22番染色体の相互転座t(9;22)により生じる短縮した22番染色体がPhiladelphia染色体で、BCR-ABL1融合遺伝子を形成する。この遺伝子産物が恒常的に活性化したチロシンキナーゼとして働き、白血球を増殖させる。

【他の選択肢】
・好中球アルカリホスファターゼ(NAP)スコアが上昇する:誤り。CMLでは「低下」する。類白血病反応(感染などによる白血球増多)ではNAPが上昇するため、両者の鑑別に用いられる古典的な指標。
・末梢血で芽球のみが著増する:誤り。慢性期では骨髄芽球から成熟好中球まで各成熟段階の顆粒球が出現するのが特徴。芽球のみが増えるのは急性白血病。
・脾腫はまれである:誤り。著明な脾腫が特徴で、腹部膨満感や早期満腹感の原因となる。
・治療の第一選択はATRA:誤り。ATRAは急性前骨髄球性白血病。

【押さえておきたい関連知識】
この疾患は分子標的治療の成功例として医学史的にも重要。BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬イマチニブの登場により、かつては造血幹細胞移植以外に治癒手段がなかった予後不良疾患が、内服薬で長期生存が可能な慢性疾患へと変わった。現在は第二・第三世代の阻害薬も使用される。
経過は慢性期→移行期→急性転化期と進み、急性転化すると予後不良となるため、BCR-ABL量のモニタリングにより治療効果を評価し、深い分子遺伝学的奏効が長期に維持されれば治療中止を検討する場合もある。
診断のきっかけは健診での白血球増多が多く、無症状のことも少なくない。好塩基球増加も特徴的所見である。

神経全55問中 8問を掲載

問1
くも膜下出血について誤っているものはどれか。
  • 1項部硬直を認める
  • 2発症直後の単純CTで診断できないことがある
  • ✔発症直後から片麻痺を伴うのが典型的である
  • 4突然の激しい頭痛で発症する
  • 5原因の多くは脳動脈瘤破裂である
解説:【正解の根拠】発症直後から片麻痺を伴うのが典型的である(=誤り)
くも膜下出血は血液がくも膜下腔にびまん性に広がる病態で、脳実質が直接壊れるわけではないため、典型例では片麻痺などの巣症状を「欠く」。「突然の激烈な頭痛はあるのに麻痺はない」ことがむしろ特徴。動脈瘤の部位によっては動眼神経麻痺(後交通動脈瘤)を伴うことがある。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・突然の激しい頭痛:「今までに経験したことのない頭痛」「バットで殴られたような」と表現される。発症の瞬間が明確なのが重要な特徴。
・脳動脈瘤破裂が最多:約8割。ほかに脳動静脈奇形、外傷。
・項部硬直:血液による髄膜刺激で生じるが、発症直後や軽症例では出ないことがある。
・発症直後のCTで診断できないことがある:少量出血では描出されず、時間が経つと血液が希釈されて感度が下がる。

【押さえておきたい関連知識】
CTで陰性でも臨床的に疑わしければ腰椎穿刺を行い、血性髄液やキサントクロミー(黄色調)を確認する。外傷性穿刺との区別は、3本の試験管で血性が薄まるか、遠心後の上清が黄色いかによる。
治療は再破裂の予防が最優先で、血圧管理・鎮痛・鎮静のうえ、早期にクリッピングまたはコイル塞栓術を行う。
時期による合併症の整理が頻出。①再破裂は発症24時間以内が最多、②脳血管攣縮は4〜14日で遅発性脳虚血を起こす、③正常圧水頭症は数週以降に歩行障害・認知機能低下・尿失禁として現れる。警告出血(少量の前駆出血)を見逃さないことも強調される。
問2
急性期脳梗塞に対するアルテプラーゼ(rt-PA)静注療法の適応となる発症からの時間はどれか。
  • 11時間以内
  • 23時間以内
  • ✔4.5時間以内
  • 48時間以内
  • 524時間以内
解説:【正解の根拠】4.5時間以内
発症から4.5時間以内が適応。時間が経つほど出血性合併症のリスクが上回るため、この時間枠が設けられている。「最終未発症時刻(最後に正常であることが確認された時刻)」から計算する点が重要で、起床時発見の脳梗塞では就寝時刻が起点となる。

【他の選択肢】
・3時間以内:かつての適応時間で、現在は4.5時間に延長されている。
・8時間、24時間:静注療法の適応ではない。ただし主幹動脈閉塞に対する血管内治療(血栓回収療法)は発症から一定時間内で適応があり、画像で救済可能な領域が残っていれば発症後さらに遅い時間でも考慮されうる。

【押さえておきたい関連知識】
投与前チェックの要点は、①頭部CT/MRIで出血の除外と広範な早期虚血性変化がないこと、②血圧185/110mmHg未満に管理できること、③最近の頭蓋内出血・重大な手術・外傷、消化管出血、抗凝固療法中で凝固能が延長、血小板減少、血糖の著明異常などの禁忌がないこと。
「Time is brain」と言われるとおり、来院から投与までの時間短縮が予後を左右するため、院内の脳卒中コードやCTの優先実施といった体制整備が重視される。
投与後は出血性梗塞の監視のため厳格な血圧管理と神経所見の頻回の観察を行い、24時間は抗血栓薬を併用しない。適応外の症例でも、抗血小板療法、脳保護、全身管理、そして早期からのリハビリテーションと再発予防が予後を改善する。
問3
Parkinson病の四大徴候に含まれないものはどれか。
  • 1安静時振戦
  • 2筋強剛
  • 3無動
  • 4姿勢反射障害
  • ✔眼振
解説:【正解の根拠】眼振
眼振は小脳や前庭系の障害を示す所見で、Parkinson病の徴候ではない。

【他の選択肢(=四大徴候)】
・安静時振戦:手を膝に置いて力を抜いているときに出る4〜6Hzの振戦で、「丸薬丸め様」と表現される。動作時にはむしろ軽減するのが特徴(小脳性の企図振戦とは逆)。
・筋強剛(固縮):他動的に動かすと一様に抵抗する鉛管様、断続的に抵抗する歯車様。痙縮(折りたたみナイフ様)とは異なる。
・無動・寡動:動作の緩慢と減少。仮面様顔貌、小声、小字症、すくみ足。
・姿勢反射障害:後方へ引くと立ち直れず転倒する。比較的進行してから出現する。

【押さえておきたい関連知識】
病態は中脳黒質のドパミン神経細胞の変性による線条体ドパミンの減少。左右差をもって発症するのが特徴で、明らかな左右対称なら他の疾患を疑う。
運動症状以外に、便秘、嗅覚低下、レム睡眠行動障害、起立性低血圧、抑うつ、認知機能低下といった非運動症状があり、便秘や嗅覚障害は運動症状に何年も先行しうる。
治療の中心はL-ドパだが、長期投与でwearing-offやジスキネジアなどの運動合併症が生じるため、年齢や職業を考慮してドパミンアゴニストやMAO-B阻害薬と使い分ける。薬剤性パーキンソニズム(抗精神病薬、制吐薬、一部の消化管運動改善薬)は薬歴で除外すべき重要な鑑別である。
問4
重症筋無力症について誤っているものはどれか。
  • 1眼瞼下垂や複視で発症することが多い
  • 2日内変動を示し夕方に増悪する
  • 3抗アセチルコリン受容体抗体が陽性となる
  • 4胸腺腫を合併することがある
  • ✔反復刺激試験で漸増現象を認める
解説:【正解の根拠】反復刺激試験で漸増現象を認める(=誤り)
重症筋無力症では反復刺激により振幅が「漸減」する現象(waning)を認める。漸増現象(waxing)を示すのはLambert-Eaton筋無力症候群で、こちらは小細胞肺癌に伴うことが多く、運動を繰り返すと一時的に筋力が改善する点でも対照的。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・眼瞼下垂や複視で発症:眼筋型として始まることが多く、全身型へ移行することもある。
・日内変動、夕方に増悪:使い続けると疲れる「易疲労性」が本質で、朝は調子がよく夕方に悪化する。
・抗アセチルコリン受容体抗体:陽性率が高い。陰性例では抗MuSK抗体を検索する。
・胸腺腫の合併:約15〜20%。胸腺過形成はさらに多い。

【押さえておきたい関連知識】
病態は神経筋接合部の後シナプス膜にあるアセチルコリン受容体に対する自己抗体で、受容体が減少して伝達効率が落ちる。診断は臨床症状+抗体+電気生理学的検査+アイスパック試験や抗コリンエステラーゼ薬による改善で行う。
胸部CTによる胸腺の評価は必須で、胸腺腫があれば摘出する。
最も重要な急性期病態が筋無力症クリーゼで、呼吸筋と球筋の筋力低下により換気不全と誤嚥をきたす。感染、手術、特定の薬剤(アミノグリコシド系、一部の抗不整脈薬、マグネシウム製剤など)、ステロイド開始時の初期増悪が誘因となる。呼吸機能を頻回に評価し、必要なら躊躇せず人工呼吸管理を行い、血漿交換や免疫グロブリン大量療法で改善を図る。
問5
細菌性髄膜炎に典型的な髄液所見はどれか。
  • 1細胞数正常・糖正常・蛋白著明増加
  • 2細胞数増多・糖上昇・蛋白正常
  • 3細胞数正常・糖低下・蛋白正常
  • ✔細胞数増多(多核球優位)・糖低下・蛋白増加
  • 5細胞数増多(単核球優位)・糖正常・蛋白軽度増加
解説:【正解の根拠】細胞数増多(多核球優位)・糖低下・蛋白増加
細菌が増殖して好中球が動員されるため多核球優位の著明な細胞数増多を示し、細菌と炎症細胞が糖を消費するため髄液糖が低下する(髄液糖/血糖比0.4未満が目安)。血液脳関門の破綻で蛋白も増加する。

【他の選択肢と対応する病態】
・細胞数増多(単核球優位)・糖正常・蛋白軽度増加:ウイルス性髄膜炎。
・細胞数正常・糖正常・蛋白著明増加:蛋白細胞解離であり、Guillain-Barré症候群の所見。
・細胞数増多・糖上昇:糖が上昇する髄膜炎はない。
・細胞数正常・糖低下・蛋白正常:整合しない組合せ。
なお結核性・真菌性髄膜炎は「単核球優位+糖低下+蛋白著明増加」で、細菌性とウイルス性の中間的な像をとる。

【押さえておきたい関連知識】
診断は髄液のグラム染色・培養と血液培養。起因菌は年齢で変わり、新生児はB群溶連菌・大腸菌・リステリア、小児〜成人は肺炎球菌・髄膜炎菌、高齢者や免疫不全ではリステリアも考慮する。
最重要の実践的ポイントは「治療開始を検査で遅らせない」こと。意識障害や巣症状、うっ血乳頭があれば脳ヘルニアを避けるため先に頭部CTを行うが、その場合も血液培養を採取したうえで抗菌薬(および成人肺炎球菌性が疑われる場合はデキサメタゾン)を先行投与する。デキサメタゾンは聴力障害などの後遺症を減らすため、抗菌薬の投与前または同時に開始する点も押さえたい。
問6
Guillain-Barré症候群の特徴として正しいものはどれか。
  • 1髄液の細胞数著明増加
  • 2発熱を伴う急性発症
  • 3病変の主体は中枢神経である
  • ✔上行性の弛緩性運動麻痺
  • 5腱反射の亢進
解説:【正解の根拠】上行性の弛緩性運動麻痺
下肢遠位のしびれや脱力に始まり、数日から2週間かけて上行して左右対称性に進行する。末梢神経(髄鞘や軸索)の障害なので「弛緩性」麻痺であり、腱反射は消失・減弱する。

【他の選択肢】
・腱反射の亢進:誤り。末梢神経障害なので消失・減弱する。亢進すれば中枢性を考える。
・髄液の細胞数著明増加:誤り。細胞数は正常のまま蛋白のみ増加する「蛋白細胞解離」が特徴で、発症1〜2週後に明瞭となる。
・発熱を伴う急性発症:誤り。先行感染は1〜3週前にあるが、発症時に発熱を伴うのは典型的でない。
・病変の主体は中枢神経:誤り。末梢神経が主座。

【押さえておきたい関連知識】
先行感染としてCampylobacter jejuni(下痢)、サイトメガロウイルス、EBウイルス、マイコプラズマなどが知られ、Campylobacter先行例は軸索型が多く重症化しやすい。自己抗体が末梢神経の糖脂質を攻撃する分子相同性が病態と考えられている。
臨床上の最重要点は呼吸筋麻痺で、進行期には肺活量や陰性吸気力を頻回に測定し、悪化すれば速やかに人工呼吸管理へ移行する。自律神経障害による血圧変動・不整脈も突然死の原因となるためモニター管理が必要。
治療は免疫グロブリン大量静注療法または血漿交換で、ステロイド単独は無効とされる。多くは数か月で回復するが、一部に後遺症が残る。眼球運動障害・失調・腱反射消失を三徴とするFisher症候群は亜型で、抗GQ1b抗体が陽性となる。
問7
一過性脳虚血発作(TIA)について正しいものはどれか。
  • 1意識消失が典型的症状である
  • 2画像検査は不要である
  • 3抗血栓療法は禁忌である
  • 4症状は24時間以上持続する
  • ✔脳梗塞発症の危険因子であり早急な精査を要する
解説:【正解の根拠】脳梗塞発症の危険因子であり早急な精査を要する
TIAは「症状が消えたから良かった」ではなく、「脳梗塞の警告」として緊急に対応すべき病態である。発症後48時間以内、特に最初の数日間の脳梗塞発症リスクが高く、この期間に介入すれば発症を大きく減らせる。

【他の選択肢】
・症状は24時間以上持続する:誤り。従来は24時間以内と定義されたが、実際は多くが1時間以内に消失する。現在は「画像上の梗塞巣を伴わない一過性の局所神経症状」と組織学的に定義される。
・意識消失が典型的症状:誤り。片麻痺、失語、片側の感覚障害、一過性黒内障、構音障害など「局所症状」が典型。全般的な意識消失は失神を考える。
・画像検査は不要:誤り。MRIによる梗塞巣の確認、頸動脈エコーやMRAによる血管評価、心電図による心房細動の検索が必須。
・抗血栓療法は禁忌:誤り。むしろ速やかに開始すべき治療。

【押さえておきたい関連知識】
リスク評価にABCD2スコア(年齢、血圧、臨床症状、持続時間、糖尿病)が用いられ、高リスクでは入院での精査・管理が推奨される。
原因検索の3本柱は、①頸動脈や頭蓋内動脈のアテローム性狭窄、②心原性塞栓(心房細動、弁膜症、卵円孔開存)、③ラクナ(小血管病)。原因により治療が変わり、非心原性なら抗血小板薬(急性期は2剤併用を短期間行うこともある)、心原性なら抗凝固薬、高度頸動脈狭窄なら内膜剝離術やステント留置を検討する。
あわせて血圧・脂質・血糖の管理、禁煙という危険因子への介入を必ず行う。「症状が消えても必ず受診を」という患者教育も重要である。
問8
筋萎縮性側索硬化症(ALS)で通常侵されにくい機能の組合せとして正しいものはどれか。
  • 1呼吸筋・構音機能
  • 2腱反射・筋緊張
  • 3舌の運動・咽頭反射
  • ✔眼球運動・膀胱直腸機能・感覚・褥瘡形成
  • 5上肢筋力・嚥下機能
解説:【正解の根拠】眼球運動・膀胱直腸機能・感覚・褥瘡形成
この4つはALSで比較的保たれるため「陰性四徴」と呼ばれる。運動ニューロン以外は基本的に侵されないという疾患の性質から導ける。ただし人工呼吸器による長期生存例では眼球運動障害が出現することもある。

【他の選択肢(=いずれも侵される)】
・上肢筋力、嚥下機能、呼吸筋、構音機能:運動ニューロンの障害により進行性に侵される。
・腱反射・筋緊張:上位運動ニューロン障害により亢進する。

【押さえておきたい関連知識】
ALSの最大の特徴は「上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方が同時に侵される」こと。同じ部位で筋萎縮や線維束性収縮(下位)を認めながら腱反射が亢進し病的反射が陽性(上位)という、一見矛盾する所見が並ぶのが診断の鍵となる。
経過は上肢遠位や下肢の筋力低下、あるいは構音・嚥下障害(球麻痺型)で発症し進行する。感覚障害がなく、認知機能も多くは保たれる(一部に前頭側頭型認知症を合併)。
予後を規定するのは呼吸筋麻痺で、呼吸機能を定期的に評価する。治療は病態の進行を緩やかにする薬剤が限られており、実際の医療の中心は支持療法となる。
そこで重要になるのが意思決定支援である。人工呼吸器(非侵襲的・侵襲的)の装着、胃瘻造設、コミュニケーション手段の確保について、判断能力が保たれ意思疎通が可能なうちから、本人の価値観を踏まえて繰り返し話し合う。指定難病であり、多職種と社会資源による在宅支援が不可欠である。

膠原病・免疫全29問中 8問を掲載

問1
全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患活動性と最もよく相関する自己抗体はどれか。
  • 1抗SS-A抗体
  • 2抗セントロメア抗体
  • 3抗Jo-1抗体
  • 4抗Sm抗体
  • ✔抗dsDNA抗体
解説:【正解の根拠】抗dsDNA抗体
SLEに特異的であり、かつ「力価が疾患活動性、特にループス腎炎の活動性と相関する」点が他と決定的に異なる。治療により低下し、再燃で上昇するため、経過のモニタリングに用いる。

【他の選択肢】
・抗Sm抗体:SLEに最も特異的だが陽性率は低く、活動性とは相関しないため経過観察には使えない。
・抗SS-A抗体:Sjögren症候群で高頻度。SLEでも陽性となり、妊娠時は胎盤を通過して新生児ループスや先天性完全房室ブロックを起こしうるため産科的に重要。
・抗セントロメア抗体:限局皮膚硬化型全身性強皮症。
・抗Jo-1抗体:多発性筋炎・皮膚筋炎(抗ARS抗体の一つ)で、間質性肺炎を合併しやすい。

【押さえておきたい関連知識】
活動性の指標として、抗dsDNA抗体の上昇とともに「補体(C3・C4・CH50)の低下」を必ずセットで覚える。免疫複合体が補体を消費するためで、感染症では逆に補体が上がることが多い点も鑑別に役立つ。
臨床像は蝶形紅斑、円板状皮疹、光線過敏、口腔内潰瘍、関節炎、漿膜炎、腎障害、神経精神症状、血球減少と多彩。若年女性に好発する。
予後を規定するのはループス腎炎と中枢神経病変、そして治療に伴う感染症。腎生検による病型分類が治療方針を決める。抗リン脂質抗体症候群の合併では血栓症と習慣流産に注意し、妊娠時は疾患活動性が落ち着いた時期を選び、使用可能な薬剤に切り替えて計画的に臨む。
問2
関節リウマチの治療において中心的役割を果たすアンカードラッグはどれか。
  • 1アロプリノール
  • 2コルヒチン
  • ✔メトトレキサート
  • 4プレドニゾロン
  • 5ロキソプロフェン
解説:【正解の根拠】メトトレキサート
関節破壊の進行を抑制する疾患修飾性抗リウマチ薬の中心で、禁忌がなければ第一選択となる「アンカードラッグ」。週1回投与という特殊な用法で、連日投与は重篤な骨髄抑制を招くため絶対に避ける。葉酸を併用して副作用を軽減する。

【他の選択肢】
・プレドニゾロン:速やかに炎症を抑えるが関節破壊の抑制効果は限定的で、副作用のため長期大量投与は避け、橋渡し的に少量短期で用いる。
・ロキソプロフェン:疼痛と炎症の対症療法にすぎず、関節破壊は進行する。
・アロプリノール、コルヒチン:いずれも痛風の薬で関節リウマチには用いない。

【押さえておきたい関連知識】
メトトレキサートの重要な副作用は骨髄抑制、間質性肺炎、肝障害、口内炎、感染症。腎機能低下例では排泄が遅れ毒性が増すため慎重投与、妊娠・授乳中は禁忌。効果不十分なら生物学的製剤やJAK阻害薬を追加するが、その前に結核とB型肝炎のスクリーニングが必須。
疾患そのものについては、朝のこわばりが1時間以上、近位指節間関節・中手指節関節・手関節の対称性の腫脹が典型で、遠位指節間関節は侵されにくい(ここは変形性関節症の好発部位)点が鑑別のコツ。抗CCP抗体は特異度が高く早期診断に有用。
現在の治療目標は寛解であり、発症早期に十分な治療を行う「window of opportunity」の考え方と、定期的な評価に基づく治療強化(treat to target)が主流である。
問3
全身性強皮症でみられない所見はどれか。
  • 1手指の皮膚硬化
  • 2逆流性食道炎
  • 3間質性肺疾患
  • ✔蝶形紅斑
  • 5Raynaud現象
解説:【正解の根拠】蝶形紅斑(=みられない)
両頬から鼻背にかけて蝶が羽を広げたように広がる紅斑で、SLEに特徴的な皮疹。全身性強皮症の所見ではない。

【他の選択肢(=全身性強皮症の所見)】
・Raynaud現象:寒冷やストレスで手指が白→紫→赤と変化する。多くの症例で初発症状となり、皮膚硬化に何年も先行することがある。
・手指の皮膚硬化:指先から始まり近位へ進む。手指の腫脹(puffy finger)が前段階。
・逆流性食道炎:食道平滑筋の線維化と蠕動低下により下部食道括約筋圧が低下する。嚥下困難も伴う。
・間質性肺疾患:予後を規定する主要な合併症。

【押さえておきたい関連知識】
病型と自己抗体の対応が頻出。びまん皮膚硬化型は抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体が陽性で、皮膚硬化が急速に体幹へ及び、間質性肺疾患と腎クリーゼのリスクが高い。限局皮膚硬化型は抗セントロメア抗体が陽性で、進行は緩徐だが肺高血圧症を合併しやすい。抗RNAポリメラーゼIII抗体は腎クリーゼと悪性腫瘍の合併に関連する。
強皮症腎クリーゼは急激な高血圧と腎機能悪化をきたす緊急病態で、ACE阻害薬が治療の中心。高用量ステロイドが誘因となりうる点に注意する。
予後を左右するのは間質性肺疾患と肺高血圧症であり、定期的な呼吸機能検査・胸部CT・心エコーによる評価が欠かせない。
問4
側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)について正しいものはどれか。
  • 1赤沈は正常である
  • 2治療の第一選択は非ステロイド性抗炎症薬である
  • 3視力障害はきたさない
  • 4若年女性に好発する
  • ✔リウマチ性多発筋痛症を合併しやすい
解説:【正解の根拠】リウマチ性多発筋痛症を合併しやすい
巨細胞性動脈炎の約半数にリウマチ性多発筋痛症(肩や腰帯部のこわばりと疼痛)が合併し、逆にリウマチ性多発筋痛症の一部に巨細胞性動脈炎が潜む。両者は連続したスペクトラムとして理解する。

【他の選択肢】
・若年女性に好発:誤り。50歳以上、特に70歳前後の高齢者に好発する。若年女性に好発する大型血管炎は高安動脈炎で、こちらは大動脈弓とその分枝を侵し脈なし・血圧左右差をきたす。
・赤沈は正常:誤り。赤沈は著明に亢進し、CRPも上昇する。
・視力障害はきたさない:誤り。眼動脈およびその分枝の虚血により、前部虚血性視神経症から失明しうる。
・第一選択がNSAID:誤り。副腎皮質ステロイドである。

【押さえておきたい関連知識】
症状は側頭部を中心とした新規発症の頭痛、側頭動脈の圧痛・怒張・拍動減弱、咀嚼で悪化する顎跛行、発熱・体重減少などの全身症状、そして視力障害。顎跛行と複視は虚血の強さを示す危険なサインとされる。
臨床上最も重要な原則は「失明は不可逆であり、片眼が失明すると対側も危険なため、疑った時点で生検の結果を待たずにステロイドを開始する」こと。生検はステロイド開始後数日以内なら陽性所見が残るとされる。病変が飛び石状(skip lesion)に分布するため、十分な長さの側頭動脈を採取しないと偽陰性となる。
高齢者の「原因不明の発熱と炎症反応上昇」の鑑別として不明熱の場面でも想起したい疾患である。
問5
Sjögren症候群の検査として適切でないものはどれか。
  • 1口唇小唾液腺生検
  • ✔抗好中球細胞質抗体(ANCA)
  • 3Schirmer試験
  • 4ガムテスト(唾液分泌量測定)
  • 5抗SS-A/SS-B抗体
解説:【正解の根拠】抗好中球細胞質抗体(ANCA)
ANCAは顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症といったANCA関連血管炎の検査であり、Sjögren症候群の診断には用いない。

【他の選択肢(=適切な検査)】
・Schirmer試験:濾紙を下眼瞼に挟み涙液の分泌量を測定する。
・ガムテスト、サクソンテスト:唾液分泌量の測定。
・抗SS-A/SS-B抗体:診断項目に含まれる自己抗体。
・口唇小唾液腺生検:導管周囲のリンパ球浸潤(focus score)を評価する。組織学的な確定に用いる。
このほか、涙液減少の評価に蛍光色素試験やローズベンガル試験、唾液腺の評価に唾液腺造影や唾液腺シンチグラフィが用いられる。

【押さえておきたい関連知識】
症状は乾燥性角結膜炎(眼の異物感、ゴロゴロ感)と口腔乾燥(水がないと乾いた物が飲み込めない、齲歯の増加、味覚異常)。腺外病変として関節痛、間質性肺炎、間質性腎炎や尿細管性アシドーシス、末梢神経障害、紫斑、Raynaud現象を伴う。
関節リウマチやSLE、全身性強皮症に合併する二次性も多い。
長期経過での重要な合併症が悪性リンパ腫(特にMALTリンパ腫)で、持続する耳下腺腫脹、リンパ節腫脹、低補体血症、クリオグロブリン血症はリスク因子とされる。
治療は根治的なものがなく、人工涙液や点眼薬、唾液分泌促進薬、口腔ケアと齲歯予防といった対症療法が中心で、腺外病変にはステロイドや免疫抑制薬を用いる。乾燥を助長する抗コリン作用のある薬剤は避ける。
問6
顕微鏡的多発血管炎について正しいものはどれか。
  • 1上気道の肉芽腫性病変が必発である
  • 2大型血管を主に侵す
  • 3気管支喘息が先行する
  • 4腎病変はまれである
  • ✔MPO-ANCAが陽性となることが多い
解説:【正解の根拠】MPO-ANCAが陽性となることが多い
顕微鏡的多発血管炎はANCA関連血管炎の一つで、わが国ではMPO-ANCA(P-ANCA)陽性例が大部分を占める。高齢者に多く、発熱、体重減少、全身倦怠感などの全身症状で発症する。

【他の選択肢】
・上気道の肉芽腫性病変が必発:誤り。これは多発血管炎性肉芽腫症の特徴で、鼻・副鼻腔・中耳の病変、鞍鼻、肺結節や空洞を伴い、PR3-ANCA(C-ANCA)が陽性となる。
・気管支喘息が先行する:誤り。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の特徴で、先行する喘息とアレルギー性鼻炎、著明な好酸球増多、末梢神経障害(多発単神経炎)を伴う。
・大型血管を主に侵す:誤り。小型血管(細動脈、毛細血管、細静脈)を侵す。
・腎病変はまれ:誤り。急速進行性糸球体腎炎を高率に合併する。

【押さえておきたい関連知識】
最重要は「急速進行性糸球体腎炎」と「肺胞出血」で、いずれも命と腎機能に直結する。数週から数か月で腎機能が悪化し、尿沈渣で変形赤血球や赤血球円柱を認め、腎生検で半月体形成性壊死性糸球体腎炎を示す。診断が遅れると不可逆的な腎不全に至るため、「高齢者の原因不明の発熱+血尿・蛋白尿+腎機能悪化」をみたら本症を疑う姿勢が求められる。
治療は寛解導入としてステロイド大量投与にシクロホスファミドやリツキシマブを併用し、その後維持療法へ移行する。肺胞出血や急速な腎機能悪化では血漿交換も考慮される。
治療中は日和見感染(特にニューモシスチス肺炎)の予防が必須で、高齢者では治療関連死のリスクとのバランスが常に問題となる。
問7
Behçet病の主症状に含まれないものはどれか。
  • 1再発性口腔内アフタ性潰瘍
  • 2外陰部潰瘍
  • 3結節性紅斑などの皮膚症状
  • 4ぶどう膜炎
  • ✔手指の対称性関節破壊
解説:【正解の根拠】手指の対称性関節破壊
関節リウマチの特徴であり、Behçet病の主症状ではない。Behçet病でも関節炎はみられるが、非対称性・非破壊性で、大関節に一過性に生じることが多い。

【他の選択肢(=4主症状)】
①再発性口腔内アフタ性潰瘍(ほぼ必発で初発症状となることが多い)、②外陰部潰瘍、③皮膚症状(結節性紅斑様皮疹、毛囊炎様皮疹、痤瘡様皮疹、針反応陽性)、④眼症状(前房蓄膿を伴う虹彩毛様体炎、網膜ぶどう膜炎)。
これらの組合せにより完全型・不全型と診断する。

【押さえておきたい関連知識】
シルクロード沿いの地域に多く、HLA-B51との関連が知られる。若年〜中年に発症し、寛解と再燃を繰り返す。
予後を左右するのは特殊病型で、①腸管型(回盲部の深い類円形潰瘍。穿孔・出血をきたす)、②血管型(動脈瘤や深部静脈血栓症)、③神経型(脳幹や大脳の実質病変、髄膜炎様の経過。予後不良)。これらは主症状の有無にかかわらず重篤化するため、症状に応じた検索が必要となる。
眼症状は失明の原因となるため、発作を繰り返す前に適切な治療を行うことが重要で、コルヒチン、ステロイド、免疫抑制薬に加え、抗TNF製剤が眼発作の抑制に有効である。
なお前房蓄膿を伴うぶどう膜炎は特徴的だが必発ではなく、また口腔内アフタは健常者にもよくみられるため、それだけで診断はできない。指定難病であり医療費助成の対象となる。
問8
皮膚筋炎に特徴的な皮疹はどれか。
  • 1環状紅斑
  • 2結節性紅斑
  • 3アフタ性潰瘍
  • 4蝶形紅斑
  • ✔ヘリオトロープ疹とGottron徴候
解説:【正解の根拠】ヘリオトロープ疹とGottron徴候
・ヘリオトロープ疹:上眼瞼の浮腫性の紫紅色斑。ヘリオトロープという花の色にちなむ。
・Gottron徴候/丘疹:手指の関節背面(MCP、PIP、DIP)や肘・膝の伸側に生じる角化性の紅斑・丘疹。
この2つは皮膚筋炎に特異性が高く、診断項目に含まれる。

【他の選択肢と対応する疾患】
・蝶形紅斑:SLE。
・環状紅斑:シェーグレン症候群やリウマチ熱、亜急性皮膚エリテマトーデスなど。
・結節性紅斑:Behçet病、サルコイドーシス、炎症性腸疾患、溶連菌感染など。
・アフタ性潰瘍:Behçet病。

【押さえておきたい関連知識】
筋症状は近位筋優位の筋力低下で、「階段が上れない」「髪が洗えない」「立ち上がれない」といった訴えとなる。血清CK、アルドラーゼ、ミオグロビンの上昇、筋電図の筋原性変化、MRIでの筋の炎症、筋生検で診断する。嚥下筋が障害されると誤嚥のリスクとなる。
臨床上きわめて重要な点が2つある。
第一に悪性腫瘍の合併率が高いこと。特に皮膚筋炎では診断前後に癌が見つかることが多く、全身の悪性腫瘍検索を行い、その後も一定期間フォローする。
第二に間質性肺炎の合併で、これが予後を規定する。抗ARS抗体陽性例では慢性の経過をとりステロイドに反応しやすいが、抗MDA5抗体陽性例では皮疹が主体で筋症状に乏しい一方、急速進行性の間質性肺炎をきたし致死的となりうるため、早期からの強力な免疫抑制療法を要する。自己抗体の測定が予後予測と治療選択に直結する疾患である。

感染症全39問中 8問を掲載

問1
敗血症のスクリーニングに用いるqSOFAの項目に含まれないものはどれか。
  • 1呼吸数22回/分以上
  • 2収縮期血圧100mmHg以下
  • 3意識変容(GCS 15未満)
  • ✔体温38℃以上
  • 5上記のいずれも含まれる
解説:【正解の根拠】体温38℃以上
qSOFAに体温は含まれない。旧来のSIRS基準には体温・心拍数・呼吸数・白血球数が含まれていたが、SIRSは感染以外でも陽性になり特異度が低いため、臓器障害の予測に焦点を当てたqSOFAが提唱された経緯がある。

【他の選択肢(=qSOFAの3項目)】
・呼吸数22回/分以上
・収縮期血圧100mmHg以下
・意識変容(GCS 15未満)
2項目以上該当で敗血症を疑い、臓器障害の評価と迅速な対応につなげる。特別な検査を要さずベッドサイドで判定できるのが利点。

【押さえておきたい関連知識】
現行の定義では、敗血症は「感染症に対する制御不能な宿主反応により生命を脅かす臓器障害が生じた状態」であり、SOFAスコアの2点以上の上昇で定義される。敗血症性ショックは、十分な輸液にもかかわらず平均血圧65mmHg以上の維持に昇圧薬を要し、かつ乳酸値2mmol/Lを超える状態。
実践のポイントは、①培養(血液培養2セットを含む)を採取したうえで可及的速やかに広域抗菌薬を開始、②十分な晶質液の急速輸液、③反応不良ならノルアドレナリン、④乳酸値で組織灌流を評価、⑤膿瘍やカテーテルなど感染源の制御。この「感染源のコントロール」を忘れると抗菌薬だけでは救命できない。
呼吸数は最も鋭敏でありながら最も測られない項目であり、必ず実測する姿勢が求められる。
問2
HIV感染症でAIDS指標疾患を発症しやすくなるCD4陽性リンパ球数のおおよその目安はどれか。
  • 11000/μL未満
  • 2800/μL未満
  • 3500/μL未満
  • ✔200/μL未満
  • 550/μL未満
解説:【正解の根拠】200/μL未満
CD4陽性T細胞が200/μLを下回ると細胞性免疫が大きく損なわれ、ニューモシスチス肺炎をはじめとする日和見感染症のリスクが急増する。この値はST合剤による予防投与を開始する目安でもある。

【他の選択肢】
・500/μL未満:帯状疱疹や口腔カンジダ症、結核など比較的免疫が保たれていても起こる感染が増える段階。
・50/μL未満:さらに重度で、サイトメガロウイルス網膜炎、播種性非結核性抗酸菌症、中枢神経リンパ腫などが問題となる。
・1000、800/μL未満:ほぼ正常範囲であり日和見感染の目安にはならない。

【押さえておきたい関連知識】
CD4数を「免疫の残り体力」、HIV-RNA量(ウイルス量)を「病勢の勢い」と捉えると整理しやすい。治療効果はウイルス量で、免疫状態と日和見感染リスクはCD4数で評価する。
現在は診断後速やかに抗レトロウイルス療法を開始することが推奨され、ウイルス量が検出限界未満に保たれれば性行為による他者への感染は起こらない(U=U)とされる。予後は大きく改善し、慢性疾患として長期管理する時代になった。
急性感染期には発熱・咽頭痛・皮疹・リンパ節腫脹といった伝染性単核球症様の症状を呈するが、この時期は抗体が未産生でウイルス量が高く感染力が強い(ウインドウ期)。検査は本人の同意と検査前後の説明、プライバシー保護を前提に行い、スクリーニング陽性例は確認検査で確定する。
問3
感染経路として空気(飛沫核)感染をきたす疾患の組合せとして正しいものはどれか。
  • 1インフルエンザ・風疹・流行性耳下腺炎
  • 2ノロウイルス・ロタウイルス・A型肝炎
  • 3梅毒・淋菌感染症・B型肝炎
  • 4デング熱・マラリア・日本脳炎
  • ✔結核・麻疹・水痘
解説:【正解の根拠】結核・麻疹・水痘
空気感染する代表的疾患はこの3つ。飛沫核(5μm未満)は長時間空中を漂い遠くまで到達するため、陰圧個室での管理と医療者のN95マスク(フィットテスト済み)着用が必要となる。

【他の選択肢と感染経路】
・インフルエンザ、風疹、流行性耳下腺炎、百日咳、髄膜炎菌:飛沫感染。サージカルマスクと約1〜2mの距離確保で対応する。
・ノロウイルス、ロタウイルス、A型肝炎:経口(糞口)感染。接触予防策を併用し、ノロやC. difficileの芽胞にはアルコールが効かないため流水と石けんによる手洗いと次亜塩素酸ナトリウムによる環境消毒を行う。
・梅毒、淋菌感染症、B型肝炎、HIV:血液・体液を介した感染。
・デング熱、マラリア、日本脳炎:蚊による媒介感染で、ヒトからヒトへは直接感染しない。

【押さえておきたい関連知識】
感染対策の基本構造は「すべての患者に標準予防策+病原体の経路に応じた予防策の追加」。空気・飛沫・接触の3経路を押さえれば大半に対応できる。
麻疹は感染力が極めて強く、免疫のない接触者には72時間以内の緊急ワクチン接種、あるいは条件によっては免疫グロブリン投与を検討する。水痘も同様に曝露後予防がある。結核は排菌の有無で対応が変わり、接触者健診ではIGRAを用いる。
医療従事者自身が麻疹・風疹・水痘・流行性耳下腺炎の抗体を保有し、必要な予防接種を受けておくことが、患者を守るうえでも自らを守るうえでも不可欠である。
問4
MRSA感染症の治療薬として適切なものはどれか。
  • 1アンピシリン
  • 2セフトリアキソン
  • 3メロペネム
  • 4セファゾリン
  • ✔バンコマイシン
解説:【正解の根拠】バンコマイシン
MRSAはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌で、mecA遺伝子がコードするPBP2'(ペニシリン結合蛋白の変異型)を獲得しているため、βラクタム系抗菌薬がほぼすべて無効となる。したがって作用点の異なるバンコマイシンなどを用いる。

【他の選択肢】
アンピシリン(ペニシリン系)、セファゾリン・セフトリアキソン(セフェム系)、メロペネム(カルバペネム系)はいずれもβラクタム系であり無効。「MRSAと分かった時点でβラクタム系は選択肢から外れる」と理解する。

【押さえておきたい関連知識】
MRSAに用いる薬剤はバンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド、ダプトマイシン、アルベカシンなど。使い分けも問われる。ダプトマイシンは肺サーファクタントにより不活化されるため肺炎には使えない。リネゾリドは組織移行性がよく経口投与も可能だが、長期使用で血小板減少をきたす。
バンコマイシンの実務上の注意点は、①治療域が狭く腎障害のリスクがあるため血中濃度モニタリングを行う、②急速静注でヒスタミン遊離によるレッドマン症候群(顔面〜上半身の紅潮)を起こすため1時間以上かけて点滴する、③経口投与ではほとんど吸収されないため全身感染には無効だが、逆にその性質を利用してC. difficile感染症には経口で用いる。
感染対策としては接触予防策と手指衛生、そして何よりMRSAを生まないための抗菌薬適正使用が重要である。保菌と感染の区別も臨床上大切な視点となる。
問5
破傷風について誤っているものはどれか。
  • 1開口障害や痙笑が初期症状となる
  • ✔ヒトからヒトへ飛沫感染する
  • 3後弓反張をきたす
  • 4予防にはトキソイドの接種が有効である
  • 5起因菌は嫌気性グラム陽性桿菌である
解説:【正解の根拠】ヒトからヒトへ飛沫感染する(=誤り)
破傷風はヒトからヒトへは感染しない。土壌中に広く存在するClostridium tetaniの芽胞が創部から侵入し、局所で増殖して産生した神経毒素(テタノスパスミン)が原因となる。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・嫌気性グラム陽性桿菌:芽胞を形成し、熱や消毒に抵抗性を示す。深く汚染された創(釘の踏み抜き、土のついた創、挫滅創)など嫌気環境で増殖する。
・開口障害や痙笑が初期症状:口が開きにくい、噛みしめる、顔面の筋緊張により引きつった笑いのような表情(痙笑)となる。
・後弓反張:全身の強直性痙攣により体が弓なりに反る。
・トキソイドによる予防:破傷風トキソイドが有効。

【押さえておきたい関連知識】
毒素は抑制性介在ニューロンからのGABA・グリシンの放出を阻害する。「ブレーキが効かなくなる」ため筋が持続的に収縮するという機序で理解すると症状が納得できる。意識は清明のまま激しい痙攣が起こる点が特徴で、患者にとって非常に苦痛である。
経過は開口障害から始まり、頸部硬直、嚥下困難、全身の強直性痙攣、そして喉頭痙攣や呼吸筋の痙攣による呼吸不全へ進む。音や光、接触が痙攣の引き金になるため、暗く静かな環境で管理する。
治療は創の十分な洗浄とデブリドマン、抗破傷風ヒト免疫グロブリン、抗菌薬(メトロニダゾールなど)、そして鎮静・筋弛緩と人工呼吸を含む全身管理。
予防が最も重要で、四種混合ワクチンによる基礎免疫の後、抗体は経年的に低下するため、汚染創ではワクチン接種歴に応じてトキソイドの追加接種や免疫グロブリンの併用を判断する。
問6
梅毒の血清学的検査について正しいものはどれか。
  • 1感染直後から両者とも必ず陽性となる
  • 2治療の第一選択はバンコマイシンである
  • ✔STS(RPR)は治療効果判定に有用である
  • 4TP抗体は治療により速やかに陰性化する
  • 5STSは生物学的偽陽性を示さない
解説:【正解の根拠】STS(RPR)は治療効果判定に有用である
STSはカルジオリピンなどの脂質抗原に対する抗体を検出するもので、病勢(活動性)を反映する。治療が奏効すれば抗体価が低下するため、治療効果の判定と再感染の把握に用いる。

【他の選択肢】
・TP抗体が治療により速やかに陰性化する:誤り。TP抗原を用いる検査(TPHA、FTA-ABSなど)は特異度が高いが、治癒後も生涯にわたり陽性が持続することが多く、治療効果判定には使えない。「感染したことがあるか」を示す検査。
・STSは生物学的偽陽性を示さない:誤り。妊娠、加齢、自己免疫疾患(特に抗リン脂質抗体症候群)、感染症、ワクチン接種後などで偽陽性となる。
・感染直後から両者とも陽性:誤り。感染初期はいずれも陰性のことがあり、疑わしければ期間をおいて再検する。
・治療の第一選択はバンコマイシン:誤り。ペニシリンである。

【押さえておきたい関連知識】
2つの検査の組合せで解釈する。STS(+)/TP抗体(+)なら活動性の感染または治療後間もない状態、STS(−)/TP抗体(+)なら治癒後または陳旧性、STS(+)/TP抗体(−)なら生物学的偽陽性または感染ごく初期、両者(−)なら未感染またはウインドウ期。
病期は、第1期(初期硬結・硬性下疳、無痛性)、第2期(バラ疹、丘疹性梅毒疹、扁平コンジローマ、手掌足底の皮疹)、潜伏期、第3期以降(ゴム腫、心血管梅毒、神経梅毒)と進む。
治療はペニシリンで、治療開始後にJarisch-Herxheimer反応(発熱、悪寒)が起こりうることを事前に説明する。
近年わが国で報告数が増加しており、HIVを含む他の性感染症の同時検査、パートナーの検査と治療、妊婦では先天梅毒の予防が重要となる。
問7
抗菌薬投与後に発症したClostridioides difficile感染症の治療薬として適切なものはどれか。
  • ✔経口バンコマイシンまたはフィダキソマイシン
  • 2経静脈的バンコマイシン
  • 3セフトリアキソン
  • 4クリンダマイシン
  • 5レボフロキサシン
解説:【正解の根拠】経口バンコマイシンまたはフィダキソマイシン
C. difficileは腸管内で増殖して毒素を産生するため、腸管内の薬剤濃度を高めることが治療の要となる。バンコマイシンは経口投与でほとんど吸収されず腸管内に高濃度で留まるため有効である。フィダキソマイシンは腸内細菌叢への影響が少なく再発が少ないとされる。

【他の選択肢】
・経静脈的バンコマイシン:誤り。静注では腸管内に十分な濃度が得られず無効。「同じ薬でも投与経路で効果がまったく違う」典型例。
・セフトリアキソン、クリンダマイシン、レボフロキサシン:いずれもC. difficile感染症の誘因となりうる抗菌薬であり、治療薬ではない。特にクリンダマイシンとキノロン系、セフェム系は高リスクとして知られる。

【押さえておきたい関連知識】
病態は、抗菌薬により腸内細菌叢が乱れ(菌交代現象)、C. difficileが増殖して毒素A・Bを産生することによる。危険因子は抗菌薬使用、高齢、入院、プロトンポンプ阻害薬、免疫抑制。
症状は水様下痢、発熱、腹痛で、重症例では中毒性巨大結腸症や穿孔に至る。診断は毒素とGDH抗原の検査、必要に応じ核酸増幅検査。無症状の保菌者は治療対象としない。
治療の第一歩は「原因抗菌薬の中止または変更」で、これなしに治療薬だけを加えても改善しにくい。軽症ではメトロニダゾールも選択肢となる。再発を繰り返す難治例には糞便微生物叢移植も行われる。
感染対策では、芽胞を形成するためアルコール消毒が無効である点が最重要。手指衛生は流水と石けんによる物理的洗浄、環境消毒は次亜塩素酸ナトリウムを用い、接触予防策を徹底する。
問8
インフルエンザについて誤っているものはどれか。
  • 1迅速抗原検査は発症直後では陰性となることがある
  • 2小児のインフルエンザ脳症に注意が必要である
  • ✔サリチル酸系解熱薬が小児の第一選択である
  • 4ワクチンは重症化予防に有効である
  • 5抗インフルエンザ薬は発症早期の投与が有効である
解説:【正解の根拠】サリチル酸系解熱薬が小児の第一選択である(=誤り)
小児のインフルエンザや水痘にアスピリンなどのサリチル酸系薬を用いるとReye症候群(急性脳症と肝の脂肪変性)を起こす危険があり、原則禁忌である。小児の解熱にはアセトアミノフェンを用いる。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・迅速抗原検査は発症直後では陰性となることがある:ウイルス量が十分でない発症直後には偽陰性となる。流行状況と症状から臨床的に判断することも重要。
・小児のインフルエンザ脳症:発症早期に急激に進行し、痙攣、意識障害、異常言動をきたす。予後を大きく左右する合併症。
・ワクチンは重症化予防に有効:発症そのものを完全には防げないが、重症化と死亡を減らす。
・抗インフルエンザ薬は発症早期の投与が有効:発症48時間以内が目安。

【押さえておきたい関連知識】
Reye症候群のほか、小児で注意すべきは異常行動である。抗インフルエンザ薬の有無にかかわらず発熱に伴って生じうるとされ、発熱から少なくとも2日間は一人にしない、玄関や窓を施錠するなど具体的な注意を保護者に伝える。
合併症は肺炎(ウイルス性、および二次性細菌性)、中耳炎、心筋炎、脳症。高齢者では二次性細菌性肺炎が死因となりやすく、いったん解熱した後に再増悪する経過が手がかりとなる。
感染対策は飛沫予防策と手指衛生。医療機関や高齢者施設では、職員と入所者へのワクチン接種、有症状者の早期把握と就業制限、面会制限、必要に応じたハイリスク者への予防投与でアウトブレイクを防ぐ。

産科・婦人科全50問中 8問を掲載

問1
妊娠高血圧腎症について正しいものはどれか。
  • 1分娩後は速やかに全例が正常化するため経過観察は不要である
  • 2妊娠20週未満に高血圧が出現する
  • ✔根本的な治療は妊娠の終了である
  • 4軽症でも直ちに帝王切開が必要である
  • 5蛋白尿を認めなければ診断されない
解説:【正解の根拠】根本的な治療は妊娠の終了である
この疾患の原因は胎盤にある。胎盤形成期の異常な血管新生により胎盤が虚血に陥り、そこから放出される因子が母体の血管内皮を全身性に障害する、というのが病態の中心。したがって胎盤を娩出しない限り根治せず、降圧薬や安静はあくまで母体を守るための対症療法にすぎない。

【他の選択肢】
・妊娠20週未満に高血圧が出現する:誤り。20週以降の発症が定義。20週未満から高血圧があれば高血圧合併妊娠。
・軽症でも直ちに帝王切開:誤り。母体の重症度と妊娠週数(=児の成熟度)を天秤にかけ、分娩の時期と方法を決める。軽症で週数が早ければ厳重な管理下で妊娠継続を図る。
・蛋白尿がなければ診断されない:誤り。蛋白尿がなくても、肝機能障害・腎障害・神経障害・血液凝固障害・子宮胎盤機能不全といった臓器障害があれば診断できる。
・分娩後は全例が速やかに正常化:誤り。産褥期にも子癇や高血圧が起こりうるため経過観察が必要で、将来の高血圧・心血管疾患のリスクも高い。

【押さえておきたい関連知識】
危険因子は初産、高齢、肥満、多胎、既往、糖尿病、腎疾患、自己免疫疾患。ハイリスク例では低用量アスピリンによる予防が検討される。
重篤な合併症を3つ押さえる。①子癇(痙攣発作。予防と治療は硫酸マグネシウム)、②常位胎盤早期剝離、③HELLP症候群(溶血・肝酵素上昇・血小板減少で、右季肋部痛や心窩部痛が前触れとなる)。心窩部痛を「胃の症状」と片づけないことが重要。
問2
妊娠後期に無痛性の性器出血をきたす疾患として最も考えられるのはどれか。
  • 1切迫早産
  • 2絨毛膜羊膜炎
  • 3常位胎盤早期剝離
  • ✔前置胎盤
  • 5子宮破裂
解説:【正解の根拠】前置胎盤
胎盤が内子宮口にかかって位置する状態。妊娠後期に子宮下部が伸展すると胎盤が剝がれて出血するが、子宮収縮を伴わないため「無痛性」であることが最大の特徴。前触れとして少量の出血(警告出血)を反復することが多い。

【他の選択肢】
・常位胎盤早期剝離:最も重要な鑑別。持続する下腹部痛と板状硬の子宮を伴い「有痛性」。血液が子宮内に貯留するため外出血が少なくてもショックやDIC、胎児死亡に至る。外出血量と重症度が一致しない点が要注意。
・子宮破裂:既往帝王切開や子宮手術歴のある症例で、激痛と胎児心拍の異常、ショックをきたす。
・切迫早産:規則的な子宮収縮と頸管の変化が主体。
・絨毛膜羊膜炎:発熱、子宮の圧痛、膿性帯下が主体。

【押さえておきたい関連知識】
前置胎盤で絶対に忘れてはならないのが「内診は禁忌」ということ。指で胎盤に触れると大出血を誘発しうるため、経腟超音波で診断し、分娩は原則として帝王切開とする。
帝王切開既往のある前置胎盤では癒着胎盤の合併リスクが高く、大量出血に備えた輸血準備と高次施設での管理が必要。
妊娠中期に「低置」と診断されても子宮下部の伸展に伴い相対的に上方へ移動することがあるため、確定は妊娠後期に行う。妊娠後期の性器出血をみたら、まず「痛みがあるか、子宮が硬いか」を確認する習慣をつけたい。
問3
子宮頸癌の発症に最も強く関与する因子はどれか。
  • 1エストロゲン長期曝露
  • 2肥満
  • 3未経産
  • 4高血圧
  • ✔ヒトパピローマウイルス感染
解説:【正解の根拠】ヒトパピローマウイルス(HPV)感染
子宮頸癌のほぼ全例に高リスク型HPV(特に16型・18型)の持続感染が関与する。性交渉により感染するありふれたウイルスで大半は自然排除されるが、一部が持続感染して異形成(CIN)を経て癌へ進展する。ウイルスが原因である=ワクチンで予防できる、という点が最大の意義。

【他の選択肢(=いずれも子宮"体"癌の危険因子)】
エストロゲンの長期曝露、肥満、未経産、高血圧、糖尿病、閉経が遅い、多囊胞性卵巣症候群、乳癌のホルモン療法などは子宮体癌(類内膜癌)のリスク。頸癌と体癌でリスク因子がまったく異なる点は頻出の対比。

【押さえておきたい関連知識】
頸癌と体癌の対比で整理する。
・頸癌:HPV、比較的若年にも発生、扁平上皮癌が主体、症状は不正出血や接触出血、検診(細胞診)が確立、ワクチンで予防可能。
・体癌:エストロゲン、閉経後に多い、腺癌、症状は閉経後の不正性器出血、対策型検診はない。
頸癌は「前癌病変の段階で発見できる」数少ない癌であり、CINで見つかれば円錐切除術により妊孕性を温存した治療が可能。細胞診でASC-US以上が出た場合はHPV検査やコルポスコピー・生検へ進む。
HPVワクチンは初交前の接種が最も有効で、男性への接種も中咽頭癌・肛門癌・尖圭コンジローマの予防と集団免疫の観点から意義がある。ワクチンを接種していても検診は必要である点も伝えたい。
問4
異所性妊娠(子宮外妊娠)について誤っているものはどれか。
  • 1骨盤内炎症性疾患の既往がリスクとなる
  • 2hCGは陽性となる
  • ✔経腟超音波で子宮内に胎嚢を認める
  • 4破裂すると腹腔内出血によりショックとなる
  • 5卵管膨大部に最も多く発生する
解説:【正解の根拠】経腟超音波で子宮内に胎囊を認める(=誤り)
異所性妊娠では受精卵が子宮内膜以外に着床するため、子宮内に胎囊は認められない。診断の要は「hCGが陽性なのに子宮内に胎囊が見えない」という組合せである。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・卵管膨大部に最多:異所性妊娠の約95%が卵管、その中でも膨大部が最も多い。
・骨盤内炎症性疾患の既往がリスク:クラミジア感染などによる卵管の癒着・通過障害が原因。ほかに卵管手術歴、異所性妊娠の既往、子宮内避妊具の使用、生殖補助医療、喫煙。
・hCG陽性:妊娠は成立しているので当然陽性となる。
・破裂で腹腔内出血・ショック:Douglas窩に血液が貯留し、腹痛・肩への放散痛・失神・ショックをきたす。

【押さえておきたい関連知識】
実践上の最重要ポイントは「妊娠可能年齢の女性の腹痛・性器出血・ショックをみたら、まず妊娠反応を確認する」こと。これを怠ると致死的な出血を見逃す。
hCG値と超音波所見を組み合わせて判断し、hCGが一定値(discriminatory zone)を超えているのに子宮内胎囊が見えなければ異所性妊娠を強く疑う。正常妊娠ではhCGが約2日で1.6〜2倍に増えるのに対し、異所性妊娠では増加が緩やかという推移も参考になる。
治療は、破裂例やショック例では緊急手術(卵管切除など)。未破裂で条件が合えばメトトレキサート投与や待機的管理も選択肢となる。次回妊娠時の再発リスクが高い点も説明しておく。
問5
最終月経初日が4月1日で月経周期が28日型の女性の分娩予定日として正しいものはどれか。(Naegele概算法による)
  • 112月8日
  • ✔1月8日
  • 31月1日
  • 412月25日
  • 52月8日
解説:【正解の根拠】翌年1月8日
Naegele概算法は「最終月経初日の月に9を加える(または3を引く)」「日に7を加える」で算出する。4月+9=13月=翌年1月、1日+7=8日。よって翌年1月8日となる。

【計算のポイント】
月に9を足して12を超える場合は翌年に繰り越す。日に7を足して月の日数を超える場合は翌月へ繰り上げる。この2つの処理が計算問題での落とし穴になりやすい。

【押さえておきたい関連知識】
妊娠週数は「最終月経初日を妊娠0週0日」とし、40週0日が分娩予定日にあたる。したがって妊娠期間は満280日であり、受精からではなく最終月経から数える点が重要。排卵・受精はおよそ2週0日頃に起こる。
この概算法は月経周期28日型を前提としている。周期が不規則な場合や周期が28日から大きくずれる場合は誤差が生じるため、妊娠初期(8〜11週頃)の超音波による頭殿長の計測で予定日を補正するのが現在の標準である。この時期の胎児は個体差が小さく、最も正確に週数を推定できる。
週数の区分も押さえたい。妊娠22週未満の分娩が流産、22週0日〜36週6日が早産、37週0日〜41週6日が正期産、42週0日以降が過期産。22週という境界は児の生存可能性に関わる重要な区切りである。
妊婦健診の間隔(23週までは4週ごと、24〜35週は2週ごと、36週以降は毎週)も週数と結びつけて覚えておきたい。
問6
子宮内膜症について誤っているものはどれか。
  • 1不妊の原因となる
  • ✔閉経後に増悪することが多い
  • 3卵巣ではチョコレート囊胞を形成する
  • 4低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬が治療に用いられる
  • 5月経困難症や慢性骨盤痛の原因となる
解説:【正解の根拠】閉経後に増悪することが多い(=誤り)
子宮内膜症はエストロゲン依存性の疾患であり、閉経してエストロゲンが低下すれば病巣は萎縮し症状は軽快する。妊娠中や授乳期にも一時的に改善する。この「エストロゲン依存性」という一語から、病態も治療も説明できる。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・月経困難症や慢性骨盤痛の原因:異所性の内膜組織が月経周期に同調して出血し、炎症と癒着を起こす。月経困難症は進行性に増悪するのが特徴で、性交痛、排便痛、腰痛も伴う。
・不妊の原因:癒着による卵管の走行異常やピックアップ障害、炎症性環境による受精・着床の阻害。
・卵巣のチョコレート囊胞:古い血液が貯留した囊胞。
・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP):治療の中心の一つ。

【押さえておきたい関連知識】
薬物療法はいずれも「エストロゲンを下げる、あるいは病巣の増殖を抑える」という発想で共通する。LEP、ジエノゲストなどの黄体ホルモン製剤、GnRHアナログ(低エストロゲン状態を作るため骨密度低下や更年期様症状に注意し、長期使用にはアドバック療法を併用)。挙児希望の有無により方針が大きく変わる点が重要。
臨床上見落とせないのが悪性転化で、長期経過したチョコレート囊胞、特に大きいものや高年齢例では明細胞癌や類内膜癌のリスクがあり、定期的な経過観察が必要である。
また月経困難症を「生理痛は当たり前」と我慢し受診が遅れる例が多く、日常生活に支障のある月経痛は受診の対象であるという啓発も大切である。
問7
妊娠糖尿病について正しいものはどれか。
  • 1妊娠前から糖尿病と診断されていた場合も妊娠糖尿病とよぶ
  • 2胎児は低出生体重となりやすい
  • ✔巨大児や新生児低血糖のリスクが高まる
  • 4経口血糖降下薬が第一選択である
  • 5分娩後は必ず耐糖能が正常化し以後の検査は不要である
解説:【正解の根拠】巨大児や新生児低血糖のリスクが高まる
母体の高血糖はブドウ糖が胎盤を通過して胎児に移行し、胎児が代償的にインスリンを大量に分泌する(胎児高インスリン血症)。インスリンは成長ホルモン様に働くため巨大児となり、出生後は母体からの糖供給が絶たれる一方でインスリンが高いままのため新生児低血糖をきたす。この一連の流れで説明できる。

【他の選択肢】
・妊娠前から糖尿病と診断されていた場合も妊娠糖尿病とよぶ:誤り。それは「糖尿病合併妊娠」であり区別される。妊娠糖尿病は妊娠中に初めて発見される、糖尿病に至っていない糖代謝異常。
・胎児は低出生体重となりやすい:誤り。むしろ巨大児(heavy-for-dates)。ただし血管合併症を有する糖尿病合併妊娠では胎盤機能不全により発育不全となることもある。
・経口血糖降下薬が第一選択:誤り。食事療法が基本で、不十分ならインスリンを用いる。
・分娩後は必ず正常化し以後の検査は不要:誤り。産後に一旦正常化しても将来の2型糖尿病発症リスクが高く、産後の検査と長期のフォローが必要。

【押さえておきたい関連知識】
母体側の合併症は妊娠高血圧症候群、羊水過多、早産、感染症、帝王切開の増加。児側は巨大児に伴う肩甲難産と分娩損傷、新生児低血糖、呼吸窮迫症候群、高ビリルビン血症、低カルシウム血症、多血症。
糖尿病合併妊娠では、器官形成期の高血糖が先天奇形のリスクを高めるため「計画妊娠」が極めて重要で、妊娠前からの血糖管理、網膜症・腎症の評価、催奇形性のある薬剤(ACE阻害薬/ARB、スタチン)の変更を行う。
問8
Apgarスコアの評価項目に含まれないものはどれか。
  • 1筋緊張
  • ✔体温
  • 3皮膚色
  • 4心拍数
  • 5呼吸
解説:【正解の根拠】体温
Apgarスコアに体温は含まれない。新生児の保温は極めて重要だが、それはスコアの項目ではなく蘇生の初期処置として行うものである。

【他の選択肢(=5項目)】
①心拍数(0点:なし/1点:100未満/2点:100以上)、②呼吸(なし/弱い・不規則/良好で強く泣く)、③筋緊張(弛緩/やや屈曲/活発に動く)、④反射・刺激に対する反応(なし/しかめ面/泣く・咳やくしゃみ)、⑤皮膚色(全身蒼白・チアノーゼ/体幹はピンクで四肢チアノーゼ/全身ピンク)。各0〜2点の合計10点。

【押さえておきたい関連知識】
評価は生後1分と5分に行い、5分値が低ければ以後も継続して評価する。7点以下を新生児仮死とし、3点以下は重症仮死。1分値は出生時の状態、5分値は蘇生への反応と予後との関連がより強いとされる。
実践上きわめて重要なのは、「Apgarスコアの結果を待ってから蘇生を始めるのではない」ということ。蘇生の判断は、出生直後の①早産児か、②筋緊張は良好か、③自発呼吸または啼泣があるか、という迅速評価で行い、必要なら直ちに保温・気道確保・皮膚刺激といった初期処置に入る。その後、心拍数と呼吸を評価し、自発呼吸がないか心拍100/分未満なら人工呼吸、有効な換気でも心拍60/分未満なら胸骨圧迫を追加する。
新生児蘇生では「換気が最も重要」であり、成人の心停止対応(胸骨圧迫優先)とは考え方が異なる点も押さえたい。

小児科全50問中 8問を掲載

問1
川崎病の主要症状に含まれないものはどれか。
  • 1両側眼球結膜の充血
  • 2口唇の紅潮・いちご舌
  • 3非化膿性頸部リンパ節腫脹
  • ✔Koplik斑
  • 55日以上続く発熱
解説:【正解の根拠】Koplik斑
頬粘膜に生じる白色小斑点で、麻疹のカタル期に特徴的な所見。川崎病の症状ではない。

【他の選択肢(=主要症状6項目)】
①5日以上続く発熱、②両側眼球結膜の充血(眼脂を伴わないのが特徴)、③口唇の紅潮・亀裂、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤、④不定形発疹、⑤四肢末端の変化(急性期は手足の硬性浮腫と紅潮、回復期に指先からの膜様落屑)、⑥非化膿性頸部リンパ節腫脹。
6項目中5項目以上で診断、4項目でも冠動脈瘤があれば診断できる。BCG接種部位の発赤も特徴的な参考所見。

【押さえておきたい関連知識】
この疾患の本質は全身の中型血管の血管炎であり、恐れるべきは冠動脈瘤。したがって「診断そのものより、冠動脈瘤をいかに防ぐか」が診療の中心となる。
治療は発症早期(おおむね第7病日まで)に免疫グロブリン大量静注療法とアスピリンを開始する。アスピリンは通常小児ではReye症候群のリスクから避けるが、川崎病では適応があり用いる点が例外として問われやすい。不応例にはステロイドや生物学的製剤を追加する。
心エコーによる冠動脈の評価を急性期・回復期・遠隔期に行い、瘤が残存すれば抗血栓療法と長期のフォローが必要となる。小児の後天性心疾患の主要な原因であり、成人期の虚血性心疾患につながりうる。
問2
単純型熱性けいれんの特徴として正しいものはどれか。
  • 1けいれんは15分以上持続する
  • 2焦点性(部分)発作である
  • 324時間以内に繰り返す
  • ✔全般性で通常5分以内に自然に頓挫する
  • 5発熱がなくても生じる
解説:【正解の根拠】全般性で通常5分以内に自然に頓挫する
単純型は、①全般性(左右対称)、②持続15分未満、③24時間以内に反復しない、の3条件をすべて満たすもの。多くは数分以内に自然に止まる。

【他の選択肢(=いずれも複雑型の特徴)】
・15分以上持続、焦点性(部分)発作、24時間以内の反復:これらのいずれかを満たせば複雑型で、てんかんへの移行リスクがやや高く、精査を検討する。
・発熱がなくても生じる:熱性けいれんの定義から外れる。無熱性の反復するけいれんはてんかんを考える。

【押さえておきたい関連知識】
熱性けいれんは生後6か月〜5歳頃に38℃以上の発熱に伴って起こる、中枢神経感染症や代謝異常などによらない発作。有病率が高く、単純型の予後は良好で、知的発達への影響もなく、抗てんかん薬の常用は原則不要である。
保護者への説明が実際には最も重要な仕事になる。①発作時は周囲の安全を確保し、口に物を入れず、横向きにして様子(持続時間、左右差)を観察する、②5分以上続く場合や意識が戻らない場合、繰り返す場合は救急受診、③再発は3分の1程度にみられるが多くは自然に卒業する、といった具体的な指導を行う。
一方で、髄膜刺激徴候、発作後の意識障害の遷延、麻痺、生後6か月未満、けいれん重積では、髄膜炎や脳炎を含めた精査(腰椎穿刺の検討)が必要である。
問3
麻疹について誤っているものはどれか。
  • 1カタル期に感染力が最も強い
  • 2発疹出現前に一度解熱傾向を示す二峰性発熱をとる
  • 3合併症として肺炎や脳炎がある
  • 4予防接種は生ワクチンである
  • ✔発疹は暗赤色で色素沈着を残さない
解説:【正解の根拠】発疹は暗赤色で色素沈着を残さない(=誤り)
麻疹の発疹は融合傾向のある暗赤色の斑丘疹で、回復期に「褐色の色素沈着を残す」のが特徴。色素沈着を残さないのは風疹で、この対比は頻出。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・カタル期の感染力が最強:発熱・咳・鼻汁・結膜炎とKoplik斑を認めるこの時期に最も感染力が強い。まだ発疹が出ていないため麻疹と気づかれず、待合室で他者に感染させてしまう点が臨床上の大問題。
・二峰性発熱:カタル期の発熱がいったん下降した後、再び高熱となって発疹が出現する。
・肺炎や脳炎の合併:肺炎は死因として最多。
・生ワクチン:MRワクチンとして2回接種。

【押さえておきたい関連知識】
麻疹は空気感染し、免疫のない人が接触するとほぼ確実に感染するほど感染力が強い。疑った時点で陰圧個室へ隔離し、医療者はN95マスクを着用する。五類感染症だが「直ちに」保健所へ届け出る。
免疫のない接触者には、72時間以内の緊急ワクチン接種、あるいは妊婦・乳児・免疫不全者など接種できない対象には6日以内の免疫グロブリン投与を検討する。
遅発性合併症の亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は感染から数年〜十数年後に進行性の知能低下とミオクローヌスで発症し予後不良。乳児期の感染がリスクとなるため、周囲の接種による集団免疫の意義が大きい。医療従事者自身の抗体確認と2回接種が求められる理由でもある。
問4
生後6か月の乳児の発達として通常みられないものはどれか。
  • 1首がすわる
  • 2寝返りをする
  • 3支えなしに座る(お座り)
  • 4物に手を伸ばしてつかむ
  • ✔つかまり立ちをする
解説:【正解の根拠】つかまり立ち
つかまり立ちは生後9〜10か月頃に可能となる。生後6か月では早すぎる。

【他の選択肢(=6か月頃までに獲得)】
・首がすわる:3〜4か月。
・寝返り:5〜6か月。
・物に手を伸ばしてつかむ:5〜6か月(最初は手全体で握り、10か月頃に母指と示指でつまめるようになる)。
・支えなしのお座り:6〜7か月。

【押さえておきたい関連知識】
主要な粗大運動の目安は「首すわり3〜4か月、寝返り5〜6か月、お座り6〜7か月、はいはい8〜9か月、つかまり立ち9〜10か月、ひとり歩き1歳〜1歳3か月」と一連で覚える。
社会性・言語も併せて押さえたい。生後2〜3か月で社会的微笑、6〜8か月で人見知り、1歳前後で有意語と指さし、1歳半で2語文へ向かう。
評価で重要なのは一時点の可否ではなく、①成長曲線や発達のパターンが経時的にどう推移しているか、②獲得していた能力が失われていないか(退行があれば神経変性疾患などを疑う)、③早産児では修正月齢で評価すること。
1歳6か月児健診・3歳児健診は発達の遅れや視聴覚の異常、股関節、虐待の兆候を拾い上げる重要な機会であり、保護者の育児不安への支援の場でもある。
問5
Fallot四徴症の構成要素に含まれないものはどれか。
  • 1大動脈騎乗
  • 2右室肥大
  • ✔心房中隔欠損
  • 4心室中隔欠損
  • 5肺動脈狭窄
解説:【正解の根拠】心房中隔欠損
Fallot四徴症の構成要素ではない(心房中隔欠損が加われば五徴症と呼ばれる)。

【他の選択肢(=四徴)】
①心室中隔欠損、②肺動脈狭窄(右室流出路狭窄)、③大動脈騎乗、④右室肥大。
本質的な成り立ちは「円錐中隔の前方偏位」という単一の異常であり、それにより右室流出路が狭くなり、心室中隔に欠損が生じ、大動脈が両心室にまたがり、右室に圧負荷がかかって肥大する、と一連で理解できる。

【押さえておきたい関連知識】
肺動脈狭窄により右室の圧が上がり、心室中隔欠損を通じて右左シャントが生じるためチアノーゼを呈する。チアノーゼ性先天性心疾患の代表である。
乳児期の無酸素発作(スペル)が重要で、啼泣、排便、哺乳、発熱などを契機に右室流出路が攣縮し、チアノーゼの増強、多呼吸、意識障害、痙攣をきたす。対応は膝胸位(体血管抵抗を上げて右左シャントを減らす)、酸素投与、モルヒネ、輸液、β遮断薬など。年長児が自然にとるしゃがみこみ(squatting)も同じ原理で症状を和らげる。
逆に体血管抵抗を下げる薬剤や脱水は右左シャントを増やし発作を誘発するため注意する。
慢性の低酸素により多血症とばち指を生じる。治療は根治手術(心室中隔欠損閉鎖と右室流出路再建)で、乳児期に姑息術としてシャント術を先行させることもある。術後も長期の経過観察が必要である。
問6
生後4週の男児。1週前から哺乳直後の噴水状嘔吐が出現。右上腹部にオリーブ様の腫瘤を触知する。予想される血液ガス所見はどれか。
  • 1代謝性アシドーシス
  • 2呼吸性アシドーシス
  • 3呼吸性アルカローシス
  • 4異常を認めない
  • ✔低クロール性代謝性アルカローシス
解説:【正解の根拠】低クロール性代謝性アルカローシス
肥厚性幽門狭窄症では胃内容が繰り返し嘔吐されるため、胃液に含まれる塩酸(H+とCl−)が体外へ失われる。その結果、H+の喪失による代謝性アルカローシスと、Cl−の喪失による低クロール血症が生じる。加えて脱水により二次性アルドステロン症となりK+も失われるため、低カリウム血症を伴う。

【他の選択肢】
・代謝性アシドーシス:下痢による重炭酸喪失や、循環不全が高度に進行した場合。ただし本症でも脱水が極度に進めば乳酸アシドーシスが加わりうる。
・呼吸性の異常:本症の一次的な病態ではない。

【押さえておきたい関連知識】
臨床像は「生後2〜8週」「男児(第1子男児に多い)」「非胆汁性の噴水状嘔吐」「嘔吐直後も哺乳を欲しがる」「体重増加不良と脱水」「右上腹部のオリーブ様腫瘤」。診断は超音波で幽門筋の肥厚(厚さと長さ)を確認する。
嘔吐物が「非胆汁性」である点が重要で、閉塞部位がVater乳頭より口側であることを示す。胆汁性嘔吐なら十二指腸閉鎖や中腸軸捻転など、より緊急性の高い病態を考える。
治療上の最重要ポイントは「まず輸液で脱水と電解質異常・アルカローシスを補正してから手術を行う」こと。アルカローシスが残ったまま全身麻酔をかけると術後無呼吸のリスクが高まるため、緊急手術ではなく準緊急として補正を優先する。手術は粘膜外幽門筋切開術(Ramstedt手術)で予後は良好である。
問7
腸重積症について誤っているものはどれか。
  • 1腹部に腫瘤を触知することがある
  • 2超音波検査でtarget signを認める
  • ✔発症後時間が経過するほど注腸整復の成功率が高まる
  • 4間欠的な啼泣と嘔吐を認める
  • 5イチゴゼリー状の粘血便を認める
解説:【正解の根拠】発症後時間が経過するほど注腸整復の成功率が高まる(=誤り)
逆である。時間が経つほど腸管の浮腫と血流障害が進み、整復の成功率は低下し、腸管壊死や穿孔のリスクが高まる。したがって「早期診断・早期整復」が原則で、発症からの時間が治療方針を左右する。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・間欠的な啼泣と嘔吐:腸管の蠕動に同期して激しく泣き、間欠期には落ち着くという波のある経過が特徴。不機嫌や顔面蒼白、ぐったりした様子で受診することもある。
・イチゴゼリー状の粘血便:腸管のうっ血による粘液混じりの血便。ただし出現は遅く、これを待っていると診断が遅れる。
・腹部の腫瘤触知:ソーセージ様の腫瘤。
・超音波のtarget sign:腸管が入れ子になった同心円状の像。診断に有用。

【押さえておきたい関連知識】
好発は生後6か月〜2歳で、回腸が結腸に入り込む回腸結腸型が最多。多くは特発性だが、リンパ濾胞の腫大やウイルス感染が関与するとされる。年長児や再発例ではMeckel憩室、ポリープ、リンパ腫などの器質的先進部を検索する。
三徴は間欠的腹痛(啼泣)、嘔吐、血便だが、3つ揃うのは一部にすぎない。「不機嫌を繰り返す乳児」をみたら鑑別に挙げる姿勢が重要。
治療は高圧浣腸(空気または造影剤)による非観血的整復が第一選択。ただし腹膜炎、ショック、穿孔、発症から長時間経過した例では整復を行わず手術とする。整復後も再発があるため一定時間の観察を行う。
問8
急性喉頭蓋炎について正しいものはどれか。
  • 1エックス線側面像でsteeple signを認める
  • 2緊急性は低く外来で経過観察してよい
  • 3咽頭の視診による観察を積極的に行う
  • 4犬吠様咳嗽が特徴である
  • ✔起因菌としてインフルエンザ菌b型が重要である
解説:【正解の根拠】起因菌としてインフルエンザ菌b型が重要である
Haemophilus influenzae type b(Hib)が主要な起因菌。Hibワクチンの定期接種化により小児例は大きく減少したが、未接種児や成人では依然として発症しうる。

【他の選択肢】
・犬吠様咳嗽が特徴、steeple signを認める:いずれもクループ症候群(急性喉頭気管支炎)の所見。steeple signは正面像で声門下が尖塔状に狭くなる像。急性喉頭蓋炎ではエックス線側面像で腫大した喉頭蓋がthumb sign(親指状)として描出される。
・緊急性は低く外来で経過観察:誤り。数時間で完全な気道閉塞に至りうる緊急疾患。
・咽頭の視診を積極的に行う:誤り。舌圧子による無理な観察は喉頭痙攣を誘発し、致命的な気道閉塞を招きうる。

【押さえておきたい関連知識】
症状は突然の高熱、強い咽頭痛(見た目の所見に比して不釣り合いに強い)、嚥下困難と流涎、含み声(hot potato voice)、呼吸困難。座って前傾し顎を突き出す三脚位(tripod position)をとる。
クループとの鑑別が重要。クループはパラインフルエンザウイルスが主因で、犬吠様咳嗽と嗄声、吸気性喘鳴を呈し、夜間に悪化するが多くは外来で対応できる(アドレナリン吸入、ステロイド)。一方、急性喉頭蓋炎は咳が目立たず嚥下障害と流涎が前面に出る。
対応の原則は、患児を興奮させない(啼泣は気道閉塞を悪化させる)、仰臥位にしない、気道確保の準備(麻酔科・耳鼻科と連携し、挿管や気管切開が可能な体制)を整えたうえで観察・処置を行うこと。抗菌薬と全身管理を並行する。

精神科全30問中 8問を掲載

問1
統合失調症の陽性症状に該当するものはどれか。
  • 1社会的引きこもり
  • 2思考の貧困
  • 3感情鈍麻
  • 4意欲低下
  • ✔幻聴
解説:【正解の根拠】幻聴
本来ないものが「加わる」のが陽性症状で、幻覚(統合失調症では幻聴が最も多い)、妄想、思考のまとまりのなさ、緊張病性の行動が該当する。ドパミン過剰が関与するとされ、抗精神病薬が比較的よく奏効する。

【他の選択肢(=いずれも陰性症状)】
感情鈍麻(表情や感情表出の乏しさ)、意欲低下、社会的引きこもり、思考の貧困、快感消失。本来あるべきものが「失われる」症状で、薬物療法への反応が乏しく、生活機能や社会復帰への影響が大きい。

【押さえておきたい関連知識】
症状は陽性・陰性に加え、注意や記憶、遂行機能の障害である「認知機能障害」の3群で捉える。長期的な予後や就労を最も左右するのは陰性症状と認知機能障害であり、薬物療法だけでは不十分で、心理教育、デイケア、作業療法、就労支援、家族支援を組み合わせたリハビリテーションが不可欠となる。
治療上の最重要課題は服薬の継続で、自己中断が再発の最大の要因。持効性注射剤の活用も選択肢となる。副作用として錐体外路症状、高プロラクチン血症、体重増加や糖尿病などの代謝異常、そして悪性症候群のモニタリングを行う。
なお家族の感情表出が高い環境では再発率が上がることが知られており、家族心理教育の意義が大きい。
問2
せん妄の特徴として正しいものはどれか。
  • 1見当識は保たれる
  • 2発症は緩徐で年単位で進行する
  • ✔意識障害を伴い日内変動がある
  • 4身体的原因の検索は不要である
  • 5症状は不可逆的である
解説:【正解の根拠】意識障害を伴い日内変動がある
せん妄の本質は「急性の脳機能不全=意識障害」である。注意の障害を中核とし、見当識障害、幻覚(特に幻視)、精神運動興奮や逆に活動性の低下を伴い、夕方から夜間に悪化する日内変動を示す。

【他の選択肢】
・見当識は保たれる:誤り。見当識障害はせん妄の主要症状。
・発症は緩徐で年単位:誤り。数時間から数日の急性発症。緩徐に年単位で進行するのは認知症。
・身体的原因の検索は不要:誤り。せん妄は身体疾患や薬剤が引き起こす症候群であり、原因検索こそが診療の中心。
・症状は不可逆的:誤り。原因を除去すれば改善しうる可逆的な病態。

【押さえておきたい関連知識】
認知症との鑑別が頻出。せん妄は急性発症・意識障害あり・日内変動あり・可逆性あり、認知症は緩徐発症・意識清明・変動に乏しい・進行性。ただし認知症はせん妄の最大の危険因子でもあり、両者はしばしば併存する。
原因は多岐にわたるため系統的に探す。感染症、脱水、電解質異常、低酸素、低血糖、疼痛、便秘や尿閉、心不全、肝腎不全、薬剤(ベンゾジアゼピン系、抗コリン薬、オピオイド、ステロイド)、アルコール離脱、環境変化。
対応の原則は「原因の除去+非薬物的介入が第一」。時計やカレンダーによる見当識の手がかり、眼鏡・補聴器の使用、日中の離床と夜間の睡眠確保、家族の付き添い、不要な点滴やカテーテルの整理が有効。身体拘束はせん妄を悪化させ合併症を増やすため最小限とする。
問3
うつ病の患者への初期対応として最も適切でないものはどれか。
  • 1十分な休養を勧める
  • 2自殺念慮の有無を確認する
  • 3重大な決断は延期するよう助言する
  • ✔「頑張って早く元気になろう」と強く励ます
  • 5抗うつ薬の効果発現には数週間かかることを説明する
解説:【正解の根拠】「頑張って早く元気になろう」と強く励ます(=不適切)
うつ病の患者はすでに限界まで頑張った結果として消耗しており、強い励ましは「これ以上どう頑張ればいいのか」という自責感と無力感を強め、症状を悪化させ自殺リスクを高めうる。まずは「休んでよい」と保証することが治療的である。

【他の選択肢(=適切な対応)】
・十分な休養を勧める:治療の基本。職場や家庭の負荷を減らす調整も含めて具体的に行う。
・自殺念慮の確認:尋ねることで自殺が誘発されることはなく、むしろ語る機会を与え援助につながる。必ず確認すべき項目。
・重大な決断の延期:うつ状態では悲観的に判断が歪むため、退職・離婚・財産処分などの決断は回復後に先送りするよう助言する。
・薬効発現までの説明:抗うつ薬は効果発現に2〜4週かかることをあらかじめ伝えておくと、「効かない」と感じて自己中断することを防げる。

【押さえておきたい関連知識】
治療開始初期は要注意期間で、意欲や活動性が先に回復し気分の落ち込みが残る時期に自殺リスクが高まることがある。若年者ではSSRIによる賦活症候群にも留意する。
必ず行うべきは、①甲状腺機能低下症、貧血、悪性腫瘍、薬剤性(ステロイド、インターフェロン)などの身体的原因の除外、②双極性障害の除外(過去の躁・軽躁エピソードの確認。見逃して抗うつ薬を単独投与すると躁転を招く)。
家族への心理教育、休職と復職の支援、そして再発予防のための十分な期間の維持療法も治療の重要な柱である。
問4
双極性障害の気分安定薬として用いられ、血中濃度モニタリングが必須の薬剤はどれか。
  • 1パロキセチン
  • 2ドネペジル
  • ✔炭酸リチウム
  • 4ハロペリドール
  • 5ジアゼパム
解説:【正解の根拠】炭酸リチウム
有効血中濃度と中毒域が近い(治療域が狭い)代表的な薬剤であり、定期的な血中濃度測定が必須。双極性障害の躁病エピソードの治療と再発予防に用いられ、自殺リスクを低下させる効果も知られている。

【他の選択肢】
・ハロペリドール:定型抗精神病薬。躁状態の鎮静に用いられることはあるが、気分安定薬ではなく、TDMの代表薬でもない。
・ジアゼパム:ベンゾジアゼピン系抗不安薬。
・パロキセチン:SSRI。双極性障害での抗うつ薬単独投与は躁転や急速交代化のリスクがあり慎重を要する。
・ドネペジル:Alzheimer型認知症の治療薬。

【押さえておきたい関連知識】
リチウム中毒は消化器症状(悪心・嘔吐・下痢)に始まり、粗大な振戦、運動失調、構音障害、意識障害、痙攣、腎不全へ進む。誘因は脱水、発熱、塩分摂取の減少、腎機能低下、そして薬剤(NSAID、ACE阻害薬/ARB、サイアザイド系利尿薬)による排泄低下。患者には脱水を避けること、シックデイの対応、市販の鎮痛薬に注意することを具体的に指導する。
長期使用では甲状腺機能低下症、腎性尿崩症、副甲状腺機能亢進症が問題となるため、腎機能・甲状腺機能・Caの定期的な評価を行う。催奇形性(Ebstein奇形)があり、妊娠可能な女性では慎重な検討を要する。
ほかの気分安定薬にはバルプロ酸(催奇形性と児の認知発達への影響から妊娠可能年齢では避ける)、ラモトリギン(重症薬疹に注意し緩徐に増量)、カルバマゼピンがある。
問5
パニック症(パニック障害)について正しいものはどれか。
  • 1身体疾患の除外は不要である
  • 2発作時に心筋逸脱酵素が上昇する
  • 3認知行動療法は無効である
  • ✔予期しない動悸・呼吸困難・死の恐怖の発作を反復する
  • 5発作は数日間持続する
解説:【正解の根拠】予期しない動悸・呼吸困難・死の恐怖の発作を反復する
何の前触れもなく突然、動悸、呼吸困難、発汗、震え、めまい、胸部不快感、悪心、しびれ、現実感消失、そして「このまま死ぬのではないか」という強い恐怖が出現する。通常10分程度でピークに達し、多くは30分以内に軽快する。

【他の選択肢】
・発作は数日間持続する:誤り。持続時間が短いことが特徴。
・身体疾患の除外は不要:誤り。むしろ必須。
・発作時に心筋逸脱酵素が上昇する:誤り。上昇すれば心疾患を疑う。
・認知行動療法は無効:誤り。有効性が確立した治療法である。

【押さえておきたい関連知識】
除外すべき身体疾患を必ず押さえる。急性冠症候群、不整脈(発作性上室頻拍)、肺塞栓症、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、低血糖、喘息、めまい疾患、そしてカフェインや薬物・アルコール離脱。特に初回発作では救急外来を受診することが多く、器質的疾患の評価が先行する。
病態の中核は発作そのものより「予期不安」と「広場恐怖」にある。また発作が起こるのではないかという不安から、電車、人混み、高速道路、美容院など「すぐに逃げられない状況」を避けるようになり、生活範囲が狭まって社会機能が大きく損なわれる。
治療はSSRIを中心とした薬物療法(低用量から開始し、初期の賦活に注意)と、曝露を含む認知行動療法。ベンゾジアゼピン系は即効性があるが依存のため頓用・短期にとどめる。
「命に関わる発作ではない」という正しい理解を共有することが、悪循環を断つ第一歩となる。
問6
アルコール離脱症状について誤っているものはどれか。
  • 1断酒後数時間から手指振戦や発汗が出現する
  • 2離脱痙攣を生じることがある
  • 3振戦せん妄は断酒後2〜3日頃に生じやすい
  • 4治療にはベンゾジアゼピン系薬が用いられる
  • ✔ビタミンB1の投与は不要である
解説:【正解の根拠】ビタミンB1の投与は不要である(=誤り)
慢性アルコール使用者はビタミンB1(チアミン)が欠乏していることが多く、この状態でブドウ糖を投与すると糖代謝によりB1がさらに消費されWernicke脳症を発症・増悪させる。したがってブドウ糖に「先行して」あるいは同時にB1を必ず補充する。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・断酒後数時間から手指振戦や発汗:自律神経症状として最も早期に出現。ほかに不安、不眠、悪心、頻脈、血圧上昇。
・離脱痙攣:断酒後12〜48時間頃に生じやすい全般強直間代発作。
・振戦せん妄:断酒後2〜3日頃をピークに、意識障害、鮮明な幻視(小動物幻視)、興奮、著明な自律神経症状をきたす重篤な病態。
・ベンゾジアゼピン系薬による治療:交叉耐性があり、離脱症状の緩和と痙攣予防に用いる。

【押さえておきたい関連知識】
Wernicke脳症の三徴は意識障害、眼球運動障害(外眼筋麻痺、眼振)、失調。ただし3つ揃うのは一部で、疑わしければ確定を待たずB1を投与する。放置すると不可逆的なKorsakoff症候群(健忘、作話、見当識障害)へ移行する。
離脱症状の管理では、ベンゾジアゼピン系による適切な鎮静に加え、脱水と電解質異常(低K、低Mg、低P)の補正、感染症や外傷、肝性脳症、頭蓋内出血といった併存病態の検索が重要である。
また離脱の治療は「入口」にすぎず、その後の断酒に向けた動機づけ、心理社会的支援、自助グループ、抗酒薬や飲酒欲求を抑える薬剤による長期の治療へつなぐことが本質的な目標となる。
問7
抗精神病薬による悪性症候群の症状として正しいものはどれか。
  • 1皮疹のみ
  • ✔高熱・筋強剛・意識障害・CK上昇
  • 3低体温と徐脈
  • 4著明な下痢
  • 5多尿と口渇のみ
解説:【正解の根拠】高熱・筋強剛・意識障害・CK上昇
抗精神病薬の開始や増量、あるいは抗パーキンソン病薬の急な中断を契機に、中枢のドパミン遮断により発症する。高熱(39℃以上に達することも)、鉛管様の筋強剛、意識障害、自律神経症状(発汗、頻脈、血圧変動、頻呼吸)、そして筋の破壊を反映するCK上昇と白血球増多が特徴である。

【他の選択肢】
・低体温と徐脈、著明な下痢、多尿と口渇のみ、皮疹のみ:いずれも悪性症候群の像ではない。

【押さえておきたい関連知識】
数日以内に急速に進行し、横紋筋融解によるミオグロビン尿から急性腎障害、さらにDICや呼吸不全に至りうる致死的な副作用である。
対応は、①被疑薬の直ちの中止、②冷却と十分な輸液(ミオグロビンによる腎障害の予防)、③電解質と全身管理、④ダントロレン(筋小胞体からのカルシウム放出を抑制)やブロモクリプチン(ドパミン作動薬)の投与。集中治療を要することが多い。
危険因子は、急激な増量、高力価の定型抗精神病薬、脱水、低栄養、身体的消耗、高体温環境、複数の抗精神病薬の併用。
鑑別が重要で、セロトニン症候群(SSRIなどの併用で発症し、ミオクローヌスと反射亢進、下痢を伴い、発症が急速)、悪性高熱症(吸入麻酔薬とスキサメトニウムが誘因)、熱中症、感染症、緊張病と区別する。
予防は緩徐な増量、脱水と身体状態の管理、そして発熱や筋強剛が出た際に早期に気づける観察体制である。
問8
抑うつ状態の患者を診察する際の対応として適切なものはどれか。
  • 1家族への支援や連携は不要である
  • 2死にたい気持ちについて尋ねると希死念慮を誘発するため決して触れない
  • ✔つらい気持ちを傾聴し、希死念慮の有無を率直に確認する
  • 4身体疾患の除外は不要である
  • 5すぐに元気づけるため趣味や旅行を強く勧める
解説:【正解の根拠】つらい気持ちを傾聴し、希死念慮の有無を率直に確認する
「自殺について尋ねると自殺を誘発する」というのは根拠のない誤解であり、実際には率直に尋ねることで患者は語る機会を得て、孤立から抜け出し援助につながる。希死念慮の確認は避けるべきことではなく、必ず行うべきことである。

【他の選択肢】
・死にたい気持ちに決して触れない:誤り。上記のとおり。
・すぐに元気づけるため趣味や旅行を強く勧める:誤り。エネルギーが枯渇した状態での活動の強要は負担となり自責感を強める。まずは休養の保証が必要。
・身体疾患の除外は不要:誤り。甲状腺機能低下症、貧血、悪性腫瘍、認知症の初期、薬剤性(ステロイド、インターフェロン、一部の降圧薬)を必ず除外する。
・家族への支援や連携は不要:誤り。家族は支援者であると同時に、疲弊し支援を要する存在でもある。

【押さえておきたい関連知識】
希死念慮の評価では、漠然と死にたい気持ちなのか、具体的な計画や手段の準備があるのか、過去の企図はあるか、支えとなる人はいるかを段階的に確認する。具体性が高いほど緊急度が高い。
リスクが高ければ、安全の確保(手段へのアクセスの制限、一人にしない環境)、本人の同意を得たうえでの家族との情報共有、精神科への速やかな紹介を行う。
初期対応の柱は、①十分な休養の保証と環境調整、②重大な決断(退職、離婚、財産処分)の延期の助言、③薬効発現に2〜4週かかることの説明、④治療開始初期に活動性が先に回復して自殺リスクが高まる時期があることへの注意。
また双極性障害の除外(過去の躁・軽躁エピソードの確認)も不可欠で、見逃して抗うつ薬を単独投与すると躁転を招く。

救急・外科全49問中 8問を掲載

問1
アナフィラキシーショックに対して最初に行うべき薬物治療はどれか。
  • 1抗ヒスタミン薬の内服
  • 2アドレナリンの静脈内急速投与
  • 3ドパミンの持続静注
  • ✔アドレナリン0.3mgの筋肉内注射
  • 5副腎皮質ステロイドの静注
解説:【正解の根拠】アドレナリン0.3mgの筋肉内注射
アナフィラキシーの第一選択は迷わずアドレナリンの筋注。成人で0.3〜0.5mg(0.01mg/kg)を大腿前外側(外側広筋)に投与する。この部位は血流が豊富で吸収が速く、皮下注や上腕への投与より血中濃度の立ち上がりが良い。効果不十分なら5〜15分ごとに反復する。

【他の選択肢】
・アドレナリンの静脈内急速投与:不整脈や高血圧クリーゼの危険があり、原則行わない。心停止例や筋注に反応しない難治例で、希釈のうえモニター下に慎重投与する。
・副腎皮質ステロイド静注、抗ヒスタミン薬:効果発現に時間がかかり、気道浮腫や循環虚脱という命に関わる病態には間に合わない。補助的な位置づけで、初期治療の代替には決してならない。
・ドパミン持続静注:第一選択ではない。

【押さえておきたい関連知識】
薬物と同時に行う基本処置が重要。①原因物質の除去(点滴なら中止)、②仰臥位で下肢挙上(急に立たせたり座らせたりすると静脈還流が減って心停止を招きうる。「立たせない」は重要)、③酸素投与、④太い静脈路と急速輸液、⑤応援要請。
診断は皮膚症状に呼吸器・循環器・消化器症状が加わる、あるいは既知のアレルゲン曝露後の急な血圧低下で行い、検査結果を待たない。
二相性反応があるため、改善しても数時間の観察が必要。既往のある患者にはアドレナリン自己注射薬を処方し、本人・家族・学校・職場に使用のタイミングと手技を共有する。「迷ったら打つ」が原則である。
問2
成人の熱傷面積を推定する「9の法則」で、片側下肢全体が占める体表面積はどれか。
  • 19%
  • 213.5%
  • ✔18%
  • 427%
  • 536%
解説:【正解の根拠】18%
成人の9の法則では、頭頸部9%、上肢は片側9%(左右で18%)、体幹前面18%、体幹後面18%、下肢は片側18%(左右で36%)、外陰部1%として合計100%となる。下肢は前面9%+後面9%で18%と理解すると覚えやすい。

【他の選択肢】
・9%:上肢1本または頭頸部、あるいは下肢の前面のみ。
・13.5%:小児(5の法則やLund-Browder図表)で下肢に用いられる値に近い。
・27%、36%:それぞれ他の組合せ、あるいは両下肢の合計。

【押さえておきたい関連知識】
小児では頭部が相対的に大きく下肢が小さいため9の法則は使えず、5の法則やLund-Browder図表を用いる。散在する熱傷では患者の手掌(指を含む)を約1%として概算する方法も実用的。
熱傷面積は「II度以上」の範囲で算定し、I度(発赤のみ)は含めない点が計算上の落とし穴。
成人で15%(小児で10%)を超えると輸液療法の適応となり、Parkland(Baxter)式で4mL×体重(kg)×熱傷面積(%)を24時間量とし、うち半量を最初の8時間で投与する。ただしこれは開始の目安にすぎず、実際は尿量(成人0.5mL/kg/時程度)やバイタルサインで調節する。
気道熱傷の評価(閉鎖空間での受傷、顔面熱傷、鼻毛の焼焦、煤を含む喀痰、嗄声)と、浮腫が進む前の早期挿管の判断も並行して行う。
問3
Japan Coma Scale(JCS)でIII-100に該当する状態はどれか。
  • 1痛み刺激で少し手足を動かす
  • 2痛み刺激にまったく反応しない
  • 3刺激しなくても覚醒しており見当識障害がある
  • 4呼びかけで容易に開眼する
  • ✔痛み刺激で払いのける動作をする
解説:【正解の根拠】痛み刺激で払いのける動作をする
JCSのIII桁(刺激をしても覚醒しない)のうち、100は痛み刺激に対して払いのけるような動作をするもの。

【他の選択肢と対応する評価】
・痛み刺激で少し手足を動かす、顔をしかめる:III-200。
・痛み刺激にまったく反応しない:III-300。
・刺激しなくても覚醒しているが見当識障害あり:I-2(I桁は覚醒しているが意識内容に異常がある状態。I-1はだいたい清明だが今ひとつ、I-3は名前や生年月日が言えない)。
・呼びかけで容易に開眼する:II-10(II桁は刺激すると覚醒する状態。II-20は大きな声や体を揺さぶると開眼、II-30は痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返してかろうじて開眼)。

【押さえておきたい関連知識】
JCSは「3-3-9度方式」とも呼ばれ、桁が上がるほど重症で、数字が大きいほど重い。簡便で救急現場での伝達に適する。
一方GCSは開眼(E1〜4)、言語反応(V1〜5)、運動反応(M1〜6)の合計3〜15点で評価し、国際的に用いられ経時的な変化を捉えやすい。8点以下は重症で気道確保を要することが多い。両者を併記することも多い。
いずれも「意識レベルの数値化」であって原因は語らないため、低血糖の確認をはじめとする原因検索(AIUEOTIPS)と、瞳孔所見、麻痺の有無、バイタルサインの評価を必ず併せて行う。数値の記録より、経時的に悪化していないかという推移の把握が臨床的には重要である。
問4
閉塞性ショックに分類される病態はどれか。
  • 1急性心筋梗塞による心原性ショック
  • 2出血性ショック
  • ✔心タンポナーデ
  • 4敗血症性ショック
  • 5アナフィラキシーショック
解説:【正解の根拠】心タンポナーデ
血流が物理的に「せき止められる」ことで生じるショックが閉塞性ショック。心タンポナーデでは心嚢内圧の上昇により心室の拡張と静脈還流が妨げられる。ほかに緊張性気胸、広範な肺血栓塞栓症が該当する。

【他の選択肢と分類】
・出血性ショック:循環血液量減少性(前負荷そのものが足りない)。ほかに高度脱水、熱傷。
・急性心筋梗塞による心原性ショック:心原性(ポンプの障害)。ほかに重症弁膜症、不整脈、心筋炎。
・敗血症性ショック、アナフィラキシーショック:血液分布異常性(血管が拡張し相対的に容量不足となる)。ほかに神経原性ショック。

【押さえておきたい関連知識】
分類が重要なのは治療がまったく異なるからである。循環血液量減少性は輸液と止血、心原性は原因の解除と強心薬・機械的補助(大量輸液は禁忌)、血液分布異常性は輸液と血管収縮薬、そして閉塞性は「閉塞の解除そのものが治療」となる。心タンポナーデなら心嚢穿刺、緊張性気胸なら胸腔穿刺で、これらは薬剤ではなく手技で救命する。
ベッドサイドでの見分け方として、頸静脈が怒張していれば心原性か閉塞性、虚脱していれば循環血液量減少性か血液分布異常性、四肢が冷たければ前3者、温かければ敗血症性の初期を考える、という整理が役立つ。
緊張性気胸は画像を待たず、呼吸音消失・気管偏位・頸静脈怒張・ショックという臨床所見で判断して脱気する点も重要である。
問5
成人に対する胸骨圧迫について正しいものはどれか。
  • 1深さ約3cm、テンポ60〜80回/分
  • ✔深さ約5cm(6cmを超えない)、テンポ100〜120回/分
  • 3深さ約8cm、テンポ150回/分
  • 4圧迫の中断は問わない
  • 5圧迫解除時は胸壁を押さえたままにする
解説:【正解の根拠】深さ約5cm(6cmを超えない)、テンポ100〜120回/分
胸骨の下半分を、胸が約5cm沈む深さで、100〜120回/分のテンポで圧迫する。浅すぎれば血流を生めず、深すぎれば臓器損傷を招くため、上限も定められている。

【他の選択肢】
・深さ約3cm、テンポ60〜80回/分:浅く遅すぎる。
・深さ約8cm、テンポ150回/分:深く速すぎる。速すぎると心室が十分に充満せず、かえって拍出量が減る。
・圧迫の中断は問わない:誤り。中断は冠灌流圧を急速に低下させるため最小限にする。
・圧迫解除時に胸壁を押さえたまま:誤り。毎回完全に解除して胸壁を元に戻すことで、静脈還流が得られ次の拍出が生まれる。

【押さえておきたい関連知識】
質の高いCPRの要素は「適切な深さ・適切なテンポ・完全な胸壁の戻り・中断の最小化・過換気の回避」。人工呼吸を行う場合は圧迫30回に対し換気2回で、圧迫の中断は10秒以内を目安とする。疲労により質が落ちるため、2分ごとを目安に交代する。
訓練を受けていない市民救助者では、人工呼吸を省略した胸骨圧迫のみのCPRも推奨される。実施をためらわないことが最も重要だからである。
救命の連鎖は、心停止の予防、早期認識と通報、一次救命処置(胸骨圧迫とAED)、二次救命処置と心拍再開後の集中治療。院外心停止では市民による早期のCPRとAEDが社会復帰率を大きく左右する。
心停止の判断は反応と呼吸(死戦期呼吸を「呼吸あり」と誤らない)で行い、脈拍の確認に時間をかけないことも実践的なポイントである。
問6
外傷初期診療のprimary surveyにおいて最も優先して評価・対応すべき項目はどれか。
  • 1骨折部位の固定
  • 2詳細な既往歴の聴取
  • 3全身のCT撮影
  • 4創部の縫合
  • ✔気道の確保と頸椎保護
解説:【正解の根拠】気道の確保と頸椎保護
primary surveyはA(Airway+頸椎保護)、B(Breathing)、C(Circulation+止血)、D(Dysfunction of CNS)、E(Exposure+体温管理)の順に評価し、異常を見つけたその場で介入する。優先順位が「死に至るまでの時間の短さ」で決まっており、気道閉塞は数分で死に至るため最優先となる。

【他の選択肢】
・骨折部位の固定、創部の縫合、詳細な既往歴の聴取、全身のCT撮影:いずれも生命の危機を脱した後のsecondary surveyやその後の段階で行うもの。特に循環が不安定な患者をCT室へ運ぶことは危険であり、「不安定な患者はCT室へ行かない」という原則がある。

【押さえておきたい関連知識】
外傷では「防ぎ得た外傷死」を減らすことが目標であり、そのために標準化された手順が用いられる。
Aでは頸椎損傷を疑って中間位で保持しつつ気道を確保する。Bでは緊張性気胸、開放性気胸、大量血胸、フレイルチェストといった即座に致命的となる胸部病態を探す。Cでは出血源(胸腔、腹腔、後腹膜・骨盤、大腿、体外)を検索し、FASTや骨盤エックス線を活用して圧迫・骨盤固定・輸液と輸血を行う。Dでは意識レベル(GCS)、瞳孔、麻痺を評価する。Eでは全身を観察しつつ、低体温を防ぐため速やかに保温する。
大量出血では低体温・アシドーシス・凝固障害の「死の三徴」が悪循環を作るため、加温と早期の血液製剤投与、そして根本的な止血を急ぐ。評価は一度きりではなく、状態が変化するたびにAから繰り返す点も重要である。
問7
緊張性気胸に対して直ちに行うべき処置はどれか。
  • 1胸部CT撮影
  • ✔患側の胸腔穿刺による脱気
  • 3気管支鏡検査
  • 4経過観察
  • 5人工呼吸器での高い気道内圧設定
解説:【正解の根拠】患側の胸腔穿刺による脱気
緊張性気胸は胸腔内に空気が一方向性に貯留し続け、肺の虚脱に加えて縦隔が健側へ偏位し、大静脈が圧迫されて静脈還流が途絶する閉塞性ショックである。分単位で心停止に至るため、画像検査を待たず臨床所見だけで判断し、直ちに脱気する。

【他の選択肢】
・胸部CT撮影:検査のために時間を費やすことが致命的となる。「緊張性気胸は画像で診断する病気ではなく、臨床で診断して即座に治療する病態」である。
・気管支鏡検査:無関係。
・経過観察:致死的。
・人工呼吸器での高い気道内圧設定:陽圧換気は胸腔内への空気の流入を増やし病態を著しく悪化させる。人工呼吸中に急な血圧低下と気道内圧上昇があれば緊張性気胸を疑う。

【押さえておきたい関連知識】
診断の手がかりは、患側の呼吸音消失と鼓音、頸静脈怒張、気管の健側偏位、皮下気腫、そしてショックと頻脈・低酸素。ただし出血を伴えば頸静脈怒張は目立たないこともある。
処置は患側の第2肋間鎖骨中線または第4〜5肋間前腋窩線から穿刺針で脱気し、続いて胸腔ドレーンを留置する。穿刺は肋骨の「上縁」に沿って行い、下縁を走る肋間動静脈・神経の損傷を避ける。
原因は外傷、陽圧換気、中心静脈カテーテル挿入、既存の肺疾患(COPD、囊胞)。
なお通常の気胸との違いは「緊張=循環動態の破綻を伴う」点であり、この一線を見極めることが救命につながる。
問8
急性硬膜外血腫の典型的な経過として正しいものはどれか。
  • 1受傷直後から昏睡が持続する
  • ✔意識清明期の後に急速に意識障害が進行する
  • 3数か月かけて緩徐に症状が出現する
  • 4CTで三日月形の血腫を認める
  • 5手術適応となることはない
解説:【正解の根拠】意識清明期の後に急速に意識障害が進行する
受傷直後に一時的な意識障害があり、その後いったん意識が回復する時期(lucid interval、意識清明期)を経て、血腫の増大とともに急速に意識障害が進行し脳ヘルニアに至る、というのが典型的な経過である。

【他の選択肢】
・受傷直後から昏睡が持続する:びまん性軸索損傷や急性硬膜下血腫でみられる経過。これらは脳実質の損傷を伴うため直後から重篤。
・数か月かけて緩徐に症状が出現する:慢性硬膜下血腫。
・CTで三日月形の血腫:硬膜下血腫の所見。硬膜外血腫は硬膜が縫合線に固く付着しているため広がりが制限され、「凸レンズ(紡錘)形」となる。
・手術適応となることはない:誤り。血腫量や意識状態により緊急開頭血腫除去術の適応となる。

【押さえておきたい関連知識】
出血源の多くは側頭骨骨折に伴う中硬膜動脈の損傷で、動脈性のため急速に血腫が増大する。若年者に多い。
臨床的に最も重要なのは「意識清明期があるために軽症と誤って帰宅させてしまう危険」である。頭部外傷後に一見元気でも、頭痛の増強、繰り返す嘔吐、意識の変化があれば直ちに再受診するよう明確に説明することが求められる。
脳ヘルニアが進行すると、病側の瞳孔散大と対光反射消失、対側の片麻痺、そしてCushing現象(血圧上昇と徐脈、不規則呼吸)が出現する。
硬膜外血腫は脳実質の損傷を伴わないことが多いため、適切な時期に血腫を除去できれば予後は良好となりうる。逆に対応が遅れれば救命できても重い後遺症を残す、「時間が予後を決める」典型的な病態である。

眼科全16問中 8問を掲載

問1
急性緑内障発作の症状・所見として誤っているものはどれか。
  • 1悪心・嘔吐
  • 2充血と角膜浮腫
  • ✔縮瞳
  • 4眼圧の著明上昇
  • 5眼痛と頭痛
解説:【正解の根拠】縮瞳(=誤り)
急性閉塞隅角緑内障発作では「中等度散瞳」し、対光反射が減弱・消失する。瞳孔が開いた状態では虹彩が周辺に寄って隅角をふさぐため、散瞳がむしろ発作を誘発・維持する。

【他の選択肢(=実際の所見)】
・眼痛と頭痛、悪心・嘔吐:極めて激しく、頭蓋内疾患や急性腹症と誤診されやすい。
・充血と角膜浮腫:毛様充血と角膜のむくみにより霧視や虹視症(光の周りに虹の輪が見える)を生じる。
・眼圧の著明上昇:40〜80mmHgに達する。触診でも眼球が硬く感じられる。

【押さえておきたい関連知識】
臨床上の最大の落とし穴は「頭痛・嘔吐」で消化器疾患や脳血管障害と誤診し、制吐薬や鎮痙薬として抗コリン薬を投与してしまうこと。抗コリン薬は散瞳させ発作を悪化させる。同様に抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬、一部の感冒薬も閉塞隅角の素因がある人では禁忌ないし慎重投与となる。
発作は暗所や下向き作業、精神的緊張で誘発されやすく、遠視・高齢・女性・浅前房が素因。
治療は眼圧下降薬(点眼・全身投与)で速やかに眼圧を下げ、レーザー虹彩切開術や水晶体摘出術により隅角の閉塞を根本的に解除する。放置すれば数日で不可逆的な視野障害・失明に至るため、疑った時点で直ちに眼科へ紹介する。
問2
糖尿病網膜症について正しいものはどれか。
  • 1自覚症状が出るまで眼科受診は不要である
  • 2わが国の成人失明原因としてはまれである
  • 3単純網膜症の段階から視力が高度に低下する
  • ✔増殖網膜症では新生血管が出現する
  • 5血糖を急速に是正すれば必ず改善する
解説:【正解の根拠】増殖網膜症では新生血管が出現する
網膜の毛細血管閉塞により広範な虚血が生じると、VEGFなどの働きで新生血管が発生する。この血管は脆弱で破綻しやすく、硝子体出血や増殖膜による牽引性網膜剝離、血管新生緑内障を起こして高度の視力障害に至る。

【他の選択肢】
・単純網膜症から高度に視力低下する:誤り。単純網膜症(毛細血管瘤、点状出血、硬性白斑)の段階では自覚症状にほぼ乏しい。だからこそ検診が必要になる。
・自覚症状が出るまで眼科受診は不要:誤り。症状が出た時点では手遅れのことが多い。糖尿病と診断された時点で眼科を受診する。
・成人失明原因としてまれ:誤り。緑内障と並ぶ主要な失明原因。
・血糖を急速に是正すれば必ず改善:誤り。急激な血糖是正はかえって網膜症を一過性に悪化させることがあり、進行した網膜症では特に注意して緩やかに是正する。

【押さえておきたい関連知識】
病期は単純→増殖前(軟性白斑、静脈数珠状拡張、網膜内細小血管異常)→増殖と進み、治療は前二者では血糖・血圧管理と経過観察、虚血が進めば網膜光凝固術、増殖期には硝子体手術、黄斑浮腫には抗VEGF薬硝子体内注射を行う。
黄斑浮腫はどの病期でも起こり、視力低下の主要因となる点も重要。
糖尿病の三大合併症のうち網膜症と腎症・神経障害は並行して進むことが多く、網膜症があれば腎症も疑うなど、全身の細小血管障害として捉える視点をもちたい。妊娠時は急速に進行しうるため受診間隔を短縮する。
問3
裂孔原性網膜剝離の初期症状として典型的なものはどれか。
  • 1眼脂の増加
  • 2複視
  • 3眼球突出
  • 4眼痛と充血
  • ✔飛蚊症と光視症
解説:【正解の根拠】飛蚊症と光視症
後部硝子体剝離により硝子体が網膜を牽引すると、その機械的刺激が光として感じられ(光視症)、また網膜の裂孔形成時の出血や硝子体の混濁が黒い点や糸くずとして見える(飛蚊症)。これらが前駆症状であり、この段階で受診すれば網膜光凝固術で剝離への進行を防げる。

【他の選択肢】
・眼痛と充血:網膜には痛覚がないため、網膜剝離は「無痛性」である。眼痛と充血があれば急性緑内障発作、角膜疾患、ぶどう膜炎などを考える。
・眼脂の増加:結膜炎。
・複視:眼球運動障害。
・眼球突出:甲状腺眼症や眼窩腫瘍、眼窩蜂窩織炎。

【押さえておきたい関連知識】
進行すると剝離した部位に対応した視野欠損(「カーテンがかかる」と表現される)が生じ、黄斑まで及ぶと視力が急激に低下する。黄斑が剝離する前に手術できるかどうかが視力予後を大きく左右するため、症状が出た時点での速やかな眼科受診が重要である。
危険因子は強度近視(眼軸が長く網膜が薄い)、加齢、白内障術後、外傷、家族歴、アトピー性皮膚炎(顔面の叩打や擦過)。若年者にも生じうる点に注意。
診断は散瞳下の眼底検査で裂孔と剝離範囲を確認する。治療は裂孔のみなら光凝固、剝離があれば強膜内陥術(バックリング)や硝子体手術で、ガスやシリコーンオイルによるタンポナーデを行う場合は術後の体位保持が必要となる。
なお飛蚊症は生理的なものも多いが、「急に増えた」「光が走る」「視野が欠ける」場合は精査が必要である。
問4
白内障について正しいものはどれか。
  • 1視野が求心性に狭窄する
  • ✔水晶体の混濁による
  • 3眼圧上昇が本態である
  • 4眼痛を伴うことが多い
  • 5点眼薬で完全に治癒する
解説:【正解の根拠】水晶体の混濁による
水晶体の蛋白が変性して混濁し、光の透過が妨げられることで視力低下をきたす。カメラでいえばレンズが曇った状態にあたる。

【他の選択肢】
・眼圧上昇が本態、視野が求心性に狭窄する:いずれも緑内障の特徴。
・眼痛を伴うことが多い:誤り。無痛性に進行する。
・点眼薬で完全に治癒する:誤り。点眼薬は進行の抑制を期待するものであり、混濁した水晶体を透明に戻すことはできない。根治は手術のみ。

【押さえておきたい関連知識】
症状は霧視(かすんで見える)、羞明(まぶしさ。特に夜間の対向車のライトや逆光で困る)、視力低下、単眼性の複視、色調の変化。核白内障では一時的に近視化して「老眼鏡なしで新聞が読める」ようになることがあり、これが受診の遅れにつながることもある。
原因は加齢が最多だが、糖尿病、ステロイド(全身・局所とも)、アトピー性皮膚炎、外傷、ぶどう膜炎、放射線、先天性(風疹症候群、ガラクトース血症)など二次性も重要。若年発症では原因検索を行う。
治療は超音波乳化吸引術と眼内レンズ挿入術で、日帰り手術として広く行われ効果は確実。手術時期は視力の数値だけでなく、運転や読書など生活上の支障の程度で決める。
高齢者では白内障による視力低下が転倒、閉じこもり、認知機能低下と関連することが知られており、「年のせい」と放置せず介入する意義は大きい。合併症として術後眼内炎(まれだが重篤)と後発白内障(レーザーで治療可能)がある。
問5
加齢黄斑変性について正しいものはどれか。
  • 1眼圧上昇が本態である
  • 2喫煙は関係しない
  • ✔視野の中心が見えにくくなり、ものがゆがんで見える
  • 4周辺視野から欠損が進行する
  • 5若年者に好発する
解説:【正解の根拠】視野の中心が見えにくくなり、ものがゆがんで見える
黄斑は網膜の中心で最も視力に寄与する部位であるため、ここが障害されると中心暗点(見たいところが見えない)と変視症(ものがゆがむ)が生じる。周辺視野は保たれるため全盲にはならないが、読書や顔の識別など生活に必要な視機能が大きく損なわれる。

【他の選択肢】
・周辺視野から欠損が進行する:誤り。緑内障や網膜色素変性の特徴。
・眼圧上昇が本態:誤り。緑内障。
・若年者に好発:誤り。名前のとおり加齢が最大の危険因子で、高齢者に多い。
・喫煙は関係しない:誤り。喫煙は最も明確な修正可能危険因子であり、禁煙指導が重要。

【押さえておきたい関連知識】
病型は2つ。滲出型(wet)は脈絡膜新生血管が黄斑下に侵入し、出血や滲出により急速に視力が低下する。萎縮型(dry)は網膜色素上皮が緩徐に萎縮する。日本人では滲出型の割合が高い。
治療は滲出型に対する抗VEGF薬の硝子体内注射が中心で、新生血管の退縮により視力の維持・改善が期待できるが、反復投与が必要となる。萎縮型には確立した治療がなく、進行予防が中心。
自己チェックとしてAmslerチャート(格子模様の中心を片眼で見て、線のゆがみや欠けを確認する)が有用で、早期発見につながる。両眼で見ていると気づきにくいため、片眼ずつ確認する習慣が大切である。
予防・進行抑制には禁煙、抗酸化ビタミンとルテイン・亜鉛などのサプリメント、緑黄色野菜や魚の摂取、紫外線対策が推奨される。
高齢者の視機能低下は転倒、閉じこもり、うつ、認知機能低下と関連するため、生活支援やロービジョンケアの視点も重要となる。
問6
アレルギー性結膜炎の症状として最も特徴的なものはどれか。
  • 1膿性眼脂
  • 2強い眼痛
  • ✔眼のかゆみと漿液性の眼脂
  • 4急激な視力低下
  • 5角膜の白濁
解説:【正解の根拠】眼のかゆみと漿液性の眼脂
アレルギー性結膜炎の最も特徴的な症状は「かゆみ」である。ヒスタミンが知覚神経を刺激することによる。眼脂はさらさらとした漿液性〜粘液性で、結膜充血、流涙、眼瞼腫脹、異物感を伴う。多くは両眼性で、季節性(花粉)か通年性(ダニ、ハウスダスト、動物)かで経過が異なる。

【他の選択肢】
・膿性眼脂:細菌性結膜炎。朝、目が開かないほど眼脂で固まる。
・強い眼痛:角膜疾患、ぶどう膜炎、急性緑内障発作。結膜炎では強い痛みは出ない。
・急激な視力低下:網膜・視神経・角膜の疾患を疑う緊急性の高いサイン。結膜炎では視力は保たれる。
・角膜の白濁:角膜潰瘍や浮腫。

【押さえておきたい関連知識】
「充血する眼」の鑑別では、痛みと視力の2点が最も重要である。痛みがなく視力が保たれていれば結膜炎など表層の問題、強い痛みや視力低下があれば角膜炎、ぶどう膜炎、急性緑内障発作といった緊急性の高い疾患を考える。
アレルギー性結膜炎の治療は、①抗原の回避(花粉の季節の眼鏡やマスク、帰宅後の洗顔、寝具の管理)、②抗アレルギー点眼薬(メディエーター遊離抑制薬、抗ヒスタミン薬)、③重症例で短期のステロイド点眼。
ステロイド点眼は漫然と使うと眼圧上昇(ステロイド緑内障)、白内障、感染の増悪を招くため、眼科での管理下で用いる。コンタクトレンズの使用中止や、目をこすらない指導も重要である。
重症型として春季カタルがあり、小児男児に多く、巨大乳頭や角膜潰瘍を伴い視力に影響するため専門的治療を要する。
問7
原発開放隅角緑内障について正しいものはどれか。
  • 1初期から中心視力が高度に低下する
  • ✔自覚症状に乏しく視野が徐々に欠損する
  • 3急激な眼痛と嘔吐を伴う
  • 4眼圧が正常であれば緑内障は否定できる
  • 5治療により失われた視野は回復する
解説:【正解の根拠】自覚症状に乏しく視野が徐々に欠損する
視神経が緩徐に障害され、視野は周辺部や傍中心部から少しずつ欠けていく。しかし両眼で補い合うこと、脳が欠損部を補完すること、中心視力が末期まで保たれることから、本人はかなり進行するまで気づかない。「静かな視力泥棒」と呼ばれる所以である。

【他の選択肢】
・初期から中心視力が高度に低下する:誤り。中心視力は末期まで保たれることが多い。
・急激な眼痛と嘔吐を伴う:誤り。それは急性閉塞隅角緑内障発作。開放隅角では痛みはない。
・眼圧が正常であれば緑内障は否定できる:誤り。日本人の緑内障の大半は眼圧が基準範囲内の「正常眼圧緑内障」であり、眼圧だけでは否定できない。これが最重要のポイント。
・治療により失われた視野は回復する:誤り。障害された視神経は再生せず、視野欠損は不可逆である。

【押さえておきたい関連知識】
わが国では緑内障は成人の失明原因の第1位であり、40歳以上の約5%(20人に1人)が罹患するとされるが、その多くが未診断のまま放置されている。健診での眼底検査による視神経乳頭陥凹の指摘が発見の重要な契機となる。
診断は、眼圧、隅角検査、視神経乳頭所見(陥凹拡大、リムの菲薄化、乳頭出血)、視野検査、そしてOCTによる網膜神経線維層厚の測定を組み合わせる。OCTは視野異常が出る前の変化を捉えられる。
治療の目的は「今ある視野を守ること」であり、唯一確立した治療は眼圧下降である。正常眼圧緑内障でも、その人の眼圧をさらに下げることで進行を抑制できる。プロスタグランジン関連薬などの点眼が第一選択で、効果不十分ならレーザー治療や手術。
点眼は自覚症状がないため中断されやすく、アドヒアランスの維持が治療成功の鍵となる。
問8
網膜中心動脈閉塞症について正しいものはどれか。
  • 1眼底に新生血管を認める
  • ✔突然の高度な視力低下をきたし、眼底にcherry red spotを認める緊急疾患である
  • 3緩徐に視野が狭窄する
  • 4眼痛が強い
  • 5治療を急ぐ必要はない
解説:【正解の根拠】突然の高度な視力低下をきたし、眼底にcherry red spotを認める緊急疾患である
網膜中心動脈が閉塞すると網膜内層が急速に虚血に陥り、突然かつ無痛性の高度視力低下をきたす。眼底では虚血により網膜が蒼白に混濁するが、中心窩は網膜が薄く脈絡膜の血流が透見されるため相対的に赤く見え、これがcherry red spot(桜実紅斑)である。

【他の選択肢】
・眼痛が強い:誤り。無痛性である。
・緩徐に視野が狭窄する:誤り。緑内障や網膜色素変性の経過。
・眼底に新生血管を認める:誤り。増殖糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症の慢性期の所見。
・治療を急ぐ必要はない:誤り。網膜は虚血に極めて弱く、動物実験では90分程度で不可逆的障害に至るとされる。

【押さえておきたい関連知識】
治療として眼球マッサージ、前房穿刺による眼圧下降、血管拡張薬、線溶療法などが試みられるが、有効性は限定的で予後は不良なことが多い。それでも発症直後であれば試みる価値があり、直ちに眼科へ搬送する。
むしろ臨床的に重要なのは「全身疾患の警告である」という点である。原因は頸動脈のアテローム性プラークからの塞栓、心原性塞栓(心房細動、弁膜症)、巨細胞性動脈炎。したがって発症後は頸動脈エコー、心電図・心エコー、そして高齢者では赤沈・CRPによる巨細胞性動脈炎の除外を行い、脳梗塞の予防につなげる。網膜動脈閉塞は「眼の脳梗塞」であり、その後の脳血管イベントのリスクが高い。
一過性に視力が消失し数分で回復する一過性黒内障(amaurosis fugax)は同じ機序による前触れであり、この時点で精査すれば脳梗塞を予防できる。
なお網膜中心静脈閉塞症は、視力低下は比較的緩やかで、眼底に火炎状出血が散在し「血液と雷雨」と形容される所見を呈する点で異なる。

耳鼻咽喉科全15問中 8問を掲載

問1
良性発作性頭位めまい症の特徴として正しいものはどれか。
  • 1顔面神経麻痺を合併する
  • 2難聴と耳鳴を伴う
  • 3数時間持続するめまい発作を繰り返す
  • ✔特定の頭位変換で誘発され数十秒で軽快する
  • 5意識消失を伴う
解説:【正解の根拠】特定の頭位変換で誘発され数十秒で軽快する
耳石器から剝がれた耳石が半規管内に迷入し、頭を動かすと内リンパが動いて回転性めまいが誘発される。寝返り、起き上がり、上を見る、髪を洗うといった特定の動作が引き金となり、数十秒から1分程度で自然に治まるのが最大の特徴。

【他の選択肢】
・難聴と耳鳴を伴う:誤り。蝸牛症状は伴わない。難聴・耳鳴を伴い数十分〜数時間続く反復性のめまいはMénière病(内リンパ水腫)。
・数時間持続する発作を繰り返す:誤り。持続時間の短さがこの疾患の特徴。
・意識消失を伴う:誤り。意識消失を伴えば失神であり、心原性を含めた別の鑑別となる。
・顔面神経麻痺を合併:誤り。めまいと難聴に顔面神経麻痺と耳介の水疱を伴えばRamsay Hunt症候群を考える。

【押さえておきたい関連知識】
診断は頭位・頭位変換眼振検査(Dix-Hallpike法など)で、潜時を置いて出現し数十秒で減衰する回旋性眼振を確認する。治療は耳石を元の位置へ戻すEpley法などの理学療法が有効で、薬物より効果的である。予後は良好だが再発しやすい。
最も重要なのは中枢性めまいの除外。構音障害、嚥下障害、複視、四肢や体幹の失調、感覚障害、強い頭痛を伴う場合や、注視方向で向きが変わる眼振、垂直性眼振では小脳・脳幹の梗塞や出血を疑い、緊急の画像評価を行う。高齢者や血管危険因子を有する例では特に慎重に判断する。
問2
突発性難聴について正しいものはどれか。
  • 1両側性に発症することが多い
  • 2難聴は伝音難聴である
  • ✔早期のステロイド投与が行われる
  • 4再発を繰り返すのが特徴である
  • 5必ず完全に回復する
解説:【正解の根拠】早期のステロイド投与が行われる
原因は不明だが、内耳の炎症や循環障害が想定され、副腎皮質ステロイドが治療の中心となる。治療開始が遅れるほど予後が悪化するため、発症後できるだけ早期(おおむね1〜2週以内)に開始することが重要で、「難聴の急性発症は耳鼻科の準緊急」という認識が求められる。

【他の選択肢】
・両側性に発症することが多い:誤り。原則として一側性。両側同時発症であれば、全身疾患や薬剤性、自己免疫性内耳障害などを考える。
・難聴は伝音難聴である:誤り。「感音難聴」である。
・再発を繰り返すのが特徴:誤り。反復するならMénière病を考える。突発性難聴は原則として反復しない。
・必ず完全に回復する:誤り。おおむね3分の1が治癒、3分の1が改善、3分の1が不変とされる。

【押さえておきたい関連知識】
定義は「突然発症する原因不明の一側性感音難聴」で、除外診断である。したがって聴神経腫瘍、ムンプス難聴、外リンパ瘻、Ramsay Hunt症候群、脳血管障害、薬剤性などを鑑別する必要があり、特に聴神経腫瘍の除外のためMRIが検討される。
めまいを伴う例は予後が悪い傾向にある。高度難聴、高齢、糖尿病の合併、治療開始の遅れも予後不良因子。
検査は純音聴力検査で気導・骨導とも低下し気骨導差がないことを確認する。
患者説明としては、聴力が完全に戻らない可能性があること、それでも早期治療で改善の見込みが高まること、そして片耳の聴力低下が残った場合の生活上の工夫(会話の向き、補聴器の検討)を伝えることが大切である。
問3
小児の急性中耳炎について誤っているものはどれか。
  • 1肺炎球菌やインフルエンザ菌が主要な起因菌である
  • 2鼓膜の発赤・膨隆を認める
  • ✔すべての症例で直ちに抗菌薬を投与する
  • 4難治例では鼓膜切開を行うことがある
  • 5耳管が太く短く水平なため罹患しやすい
解説:【正解の根拠】すべての症例で直ちに抗菌薬を投与する(=誤り)
急性中耳炎の多くは自然に軽快するため、軽症例では抗菌薬を用いず3日程度の経過観察(鎮痛薬による対症療法)を行い、改善しない場合や中等症以上でアモキシシリンを第一選択とするのが標準的な考え方である。抗菌薬の適正使用の代表的な場面。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・耳管が太く短く水平:小児の解剖学的特徴で、上気道の炎症が中耳へ波及しやすい理由。成長とともに罹患は減る。
・肺炎球菌とインフルエンザ菌が主要な起因菌:ワクチンにより一定の予防効果がある。
・鼓膜の発赤・膨隆:診断の根拠となる所見。光錐の消失、可動性の低下も伴う。
・難治例で鼓膜切開:排膿により症状が速やかに改善し、起因菌の検査もできる。

【押さえておきたい関連知識】
診断は鼓膜所見が決め手で、「耳を痛がる」だけでは診断できない。発赤のみで膨隆がなければ、啼泣による発赤や滲出性中耳炎の可能性もある。
危険因子は集団保育、受動喫煙、おしゃぶりの使用、アレルギー性鼻炎、口蓋裂。反復例では鼻副鼻腔の管理も重要となる。
滲出性中耳炎との区別も押さえたい。こちらは急性炎症症状を欠き、中耳貯留液による難聴が主体で、小児では言語発達への影響が懸念されるため、遷延すれば鼓膜チューブ留置を検討する。
合併症としては鼓膜穿孔、乳様突起炎、まれに髄膜炎や顔面神経麻痺。抗菌薬を処方しない場合は、症状が悪化した際の再受診の目安を保護者に具体的に伝えることが不可欠である。
問4
Ménière病の特徴として正しいものはどれか。
  • 1難聴は伝音難聴である
  • 2難聴を伴わない数秒間のめまい
  • ✔回転性めまい発作を反復し変動する感音難聴と耳鳴を伴う
  • 4発作は数日から数週持続する
  • 5病態は中耳の炎症である
解説:【正解の根拠】回転性めまい発作を反復し変動する感音難聴と耳鳴を伴う
内リンパ水腫を病態とし、①数十分から数時間持続する回転性めまい、②変動する感音難聴(低音域から始まることが多い)、③耳鳴、④耳閉感が反復するのが特徴。「めまいと難聴がセットで、繰り返す」という点が診断の核心である。

【他の選択肢】
・難聴を伴わない数秒間のめまい:良性発作性頭位めまい症。頭位変換で誘発され数十秒で治まり、蝸牛症状を伴わない。
・発作は数日から数週持続する:誤り。数十分〜数時間で、持続性であれば前庭神経炎や中枢性を考える。
・難聴は伝音難聴:誤り。感音難聴である。
・病態は中耳の炎症:誤り。内耳(内リンパ水腫)の疾患。

【押さえておきたい関連知識】
めまいの鑑別は「持続時間」と「蝸牛症状の有無」で整理すると明快である。数秒〜1分で頭位変換により誘発され難聴なし=良性発作性頭位めまい症、数十分〜数時間で難聴・耳鳴あり=Ménière病、数日持続し難聴なし=前庭神経炎、突然の難聴が主体でめまいを伴うことがある=突発性難聴。
そして常に除外すべきが中枢性めまいで、構音障害、複視、嚥下障害、四肢や体幹の失調、感覚障害、強い頭痛を伴う場合、また垂直性眼振や注視方向で向きの変わる眼振では、小脳・脳幹の梗塞や出血を疑い緊急に画像評価する。
Ménière病の治療は、発作期は安静と制吐薬・鎮暈薬、間欠期は生活指導(ストレス管理、睡眠、水分摂取)と利尿薬(イソソルビド)による内リンパ水腫の軽減。難治例には中耳加圧療法や手術がある。
反復により聴力が段階的に悪化しうるため、発作の予防と聴力の経過観察が重要となる。
問5
アレルギー性鼻炎の三主徴として正しいものはどれか。
  • 1鼻閉・難聴・耳漏
  • ✔発作性反復性くしゃみ・水様性鼻漏・鼻閉
  • 3膿性鼻漏・嗅覚脱失・頬部痛
  • 4鼻出血・鼻閉・頭痛
  • 5嗄声・咽頭痛・発熱
解説:【正解の根拠】発作性反復性くしゃみ・水様性鼻漏・鼻閉
抗原が鼻粘膜の肥満細胞上のIgEに結合すると、ヒスタミンなどの化学伝達物質が遊離される。ヒスタミンが知覚神経を刺激して「くしゃみ発作」と「水様性鼻漏」を、ロイコトリエンなどが血管を拡張・浮腫を起こして「鼻閉」をもたらす。この機序から三主徴が導ける。

【他の選択肢】
・膿性鼻漏・嗅覚脱失・頬部痛:急性および慢性副鼻腔炎。
・鼻閉・難聴・耳漏:滲出性中耳炎や中耳炎。小児では上咽頭のアデノイド肥大も考える。
・鼻出血・鼻閉・頭痛:鼻中隔彎曲、腫瘍性病変など。
・嗄声・咽頭痛・発熱:喉頭炎、咽頭炎。

【押さえておきたい関連知識】
季節性(花粉症:スギ、ヒノキ、イネ科、ブタクサ)と通年性(ダニ、ハウスダスト、ペット、カビ)に分けられ、原因により対策が変わるため、症状の出る時期の聴取が診断の第一歩となる。診断は特異的IgE抗体や皮膚テスト、鼻汁好酸球検査。
治療は、①抗原の回避・除去(マスク、眼鏡、寝具の管理、換気)、②薬物療法(第二世代抗ヒスタミン薬、鼻噴霧用ステロイド薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬)、③アレルゲン免疫療法(皮下・舌下)、④重症鼻閉には手術。
薬剤選択のポイントは、くしゃみ・鼻漏優位なら抗ヒスタミン薬、鼻閉優位なら鼻噴霧用ステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬が有効なこと。第二世代は眠気や抗コリン作用が少なく、運転や学業への影響が小さい。
舌下免疫療法は自然経過を変えうる唯一の治療で、数年の継続を要するが長期的な効果が期待できる。気管支喘息の合併(one airway, one disease)にも留意する。
問6
急性副鼻腔炎の症状として最も特徴的なものはどれか。
  • 1嗄声
  • ✔膿性鼻漏と頬部・前額部の疼痛
  • 3水様性鼻漏と発作性くしゃみ
  • 4回転性めまい
  • 5難聴と耳鳴
解説:【正解の根拠】膿性鼻漏と頬部・前額部の疼痛
副鼻腔(上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞)の粘膜に細菌感染が加わると、膿性の鼻漏と、罹患洞に対応した部位の疼痛・圧痛・重圧感が生じる。上顎洞なら頬部、前頭洞なら前額部、篩骨洞なら眼の奥。前屈で増悪するのも特徴である。

【他の選択肢】
・水様性鼻漏と発作性くしゃみ:アレルギー性鼻炎。
・嗄声:喉頭の疾患。
・回転性めまい、難聴と耳鳴:内耳の疾患。

【押さえておきたい関連知識】
多くはウイルス性上気道炎に続発し、自然軽快する。抗菌薬の適応は、①症状が10日以上改善せず持続する、②高熱と膿性鼻漏が3日以上続く重症例、③いったん改善した後に再増悪する(double worsening)、といった場合に限られる。第一選択はアモキシシリンで、漫然とした処方は避ける。
対症療法として鼻噴霧用ステロイド、生理食塩水による鼻洗浄、去痰薬、鎮痛薬を用いる。
見逃してはならないのが合併症で、眼窩内合併症(眼瞼腫脹、眼球突出、眼球運動障害、視力低下。特に小児の篩骨洞炎から波及しやすい)と頭蓋内合併症(髄膜炎、硬膜外・脳膿瘍、海綿静脈洞血栓症)は緊急対応を要する。眼周囲の腫脹や強い頭痛、高熱、意識障害があれば直ちに画像評価と専門医への紹介を行う。
慢性副鼻腔炎では粘性鼻汁、後鼻漏、嗅覚障害が続き、鼻茸を伴うことがある。好酸球性副鼻腔炎は喘息やアスピリン喘息と合併しやすく、難治性で嗅覚障害が強い点が特徴である。
問7
鼻出血の初期対応として最も適切なものはどれか。
  • 1鼻をかむよう促す
  • 2温罨法を行う
  • ✔座位で軽く前傾させ、鼻翼を数分間圧迫する
  • 4仰臥位で顔を上に向けさせる
  • 5すぐに血管結紮術を行う
解説:【正解の根拠】座位で軽く前傾させ、鼻翼を数分間圧迫する
鼻出血の大半は鼻中隔前下部のKiesselbach部位からであり、外から鼻翼(小鼻の柔らかい部分)を左右からしっかりつまんで圧迫すれば止血できる。10〜15分は緩めずに圧迫を続けることが重要である。座位で軽く前傾させるのは、血液が咽頭へ流れ込むのを防ぐためである。

【他の選択肢】
・仰臥位で顔を上に向けさせる:誤り。血液が咽頭へ流れ込み、誤嚥や嘔吐を招き、また出血量の把握もできなくなる。「上を向かせない」は重要な指導点。
・鼻をかむよう促す:誤り。形成された血餅を除去し再出血を招く。
・温罨法を行う:誤り。血管拡張により出血を助長する。冷罨法が適切。
・すぐに血管結紮術を行う:誤り。段階的な対応が原則。

【押さえておきたい関連知識】
圧迫で止血しない場合は、血管収縮薬を含ませたガーゼの挿入、電気凝固や硝酸銀による焼灼、ベロックタンポンを含む鼻腔タンポン、それでも止血しなければ動脈塞栓術や結紮術へ進む。
背景の評価も重要である。高血圧、抗血栓薬や抗凝固薬の服用、肝疾患や血液疾患による出血傾向、鼻をいじる習慣、乾燥、アレルギー性鼻炎。特に高齢者で後方(キーゼルバッハ部位より奥)からの出血は止血が困難で大量となりやすく、耳鼻科での対応を要する。
反復する片側性の鼻出血や、鼻閉・顔面のしびれを伴う場合は、鼻腔・副鼻腔の腫瘍を疑い精査する。若年男性では若年性血管線維腫も鑑別となる。
小児では鼻いじりと乾燥が主因で、多くは軽症だが、繰り返す場合は保湿と爪を短く保つ指導を行う。
出血量が多い場合はバイタルサインの評価と輸液・輸血の準備、そして気道の確保にも配慮する。
問8
一側の反回神経麻痺でみられる症状はどれか。
  • 1味覚脱失のみ
  • ✔嗄声と誤嚥
  • 3難聴
  • 4眼瞼下垂
  • 5顔面の感覚障害
解説:【正解の根拠】嗄声と誤嚥
反回神経は輪状甲状筋を除くすべての喉頭筋を支配し、声帯の運動を担う。一側が麻痺すると声帯が正中で閉じきれず、息が漏れて嗄声(かすれ声、気息性嗄声)となり、また嚥下時に声門が閉じないため誤嚥をきたす。

【他の選択肢】
難聴、眼瞼下垂、顔面の感覚障害、味覚脱失:いずれも反回神経の支配領域ではない。

【押さえておきたい関連知識】
解剖学的な走行の理解が診断に直結する。反回神経は迷走神経から分岐した後、右は鎖骨下動脈を、左は大動脈弓を回って上行するため、左の方が走行が長く胸腔内を通る距離も長い。したがって胸部病変による麻痺は圧倒的に左に多い。
原因は、①胸部:肺癌(特に左上葉や縦隔浸潤)、縦隔腫瘍、大動脈瘤、リンパ節転移、②頸部:甲状腺癌、食道癌、頸部手術(甲状腺手術、頸動脈手術、食道手術、心臓大血管手術)の合併症、③その他:ウイルス感染、外傷、特発性。
したがって臨床上きわめて重要なのは「原因不明の嗄声が持続する場合は喉頭内視鏡で声帯を観察し、麻痺があれば胸部を含めた原因検索を行う」ことである。嗄声を「風邪の名残」と片づけて肺癌の発見が遅れる例がある。
心疾患に伴うものとしてOrtner症候群(左房拡大や肺動脈拡張による圧迫)も知られる。
両側麻痺では声帯が正中位で固定すると気道が狭窄し、吸気性喘鳴と呼吸困難をきたして緊急気道確保を要する。甲状腺全摘後の重大な合併症であり、術後の呼吸状態の観察が欠かせない。
一側麻痺では健側の代償により嗄声が改善することもあるが、誤嚥が続く場合は音声改善手術を検討する。

皮膚科全15問中 8問を掲載

問1
帯状疱疹について誤っているものはどれか。
  • 1皮疹に先行して疼痛が出現することがある
  • 2治療は抗ヘルペスウイルス薬を早期に開始する
  • ✔三叉神経第1枝領域でも眼合併症は生じない
  • 4水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化による
  • 5神経支配領域に一致した片側性の皮疹を呈する
解説:【正解の根拠】三叉神経第1枝領域でも眼合併症は生じない(=誤り)
三叉神経第1枝(眼神経)領域の帯状疱疹では、角膜炎、結膜炎、虹彩毛様体炎、続発緑内障、視神経炎などを合併し視力障害に至ることがある。鼻背や鼻尖に皮疹が及ぶ場合(Hutchinson徴候)は鼻毛様体神経の障害を示し、眼合併症のリスクが高いため必ず眼科的評価を行う。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化:初感染時に水痘を起こした後、知覚神経節に潜伏したウイルスが加齢、疲労、悪性腫瘍、免疫抑制などを契機に再活性化する。
・神経支配領域に一致した片側性皮疹:デルマトームに沿い正中を越えないのが特徴。
・皮疹に先行する疼痛:数日前から痛みだけが出るため、部位により狭心症、胆石、尿路結石、椎間板ヘルニアなどと誤診されやすい。
・抗ヘルペスウイルス薬を早期に開始:発症72時間以内が目安。

【押さえておきたい関連知識】
最も頻度の高い後遺症が帯状疱疹後神経痛で、高齢者ほど生じやすい。早期の抗ウイルス薬と十分な疼痛管理が予防につながり、生じた場合はプレガバリンや三環系抗うつ薬などの神経障害性疼痛の治療を行う。
顔面神経膝神経節の再活性化では、耳介の水疱、顔面神経麻痺、めまい・難聴を三徴とするRamsay Hunt症候群となる。
汎発性(播種性)の場合は水痘に準じた空気感染対策が必要で、免疫不全の存在を疑う。水痘の免疫がない人(乳児、妊婦など)に接触すると水痘として感染させうるため、皮疹の被覆と接触の配慮を指導する。50歳以上ではワクチンによる予防も選択肢となる。
問2
アトピー性皮膚炎について誤っているものはどれか。
  • 1左右対称性で年齢により好発部位が変化する
  • 2血清IgEが高値となることが多い
  • 3治療の中心はステロイド外用薬と保湿である
  • ✔ステロイド外用薬は部位にかかわらず最強ランクを用いる
  • 5皮膚バリア機能の低下が関与する
解説:【正解の根拠】ステロイド外用薬は部位にかかわらず最強ランクを用いる(=誤り)
外用ステロイドは皮疹の重症度と「部位」に応じて強さを選択する。顔面、頸部、陰部、間擦部は角層が薄く経皮吸収率が高いため、皮膚萎縮や酒皶様皮膚炎などの副作用が出やすく、弱いランクを用いる。逆に体幹・四肢、特に手掌足底は吸収が悪くより強いものが必要となる。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・皮膚バリア機能の低下が関与:フィラグリン遺伝子異常などによる角層のバリア障害が基盤にあり、そこにアレルギー素因と環境因子が加わる。
・左右対称性で年齢により好発部位が変化:乳児期は顔・頭部、幼小児期は肘窩・膝窩などの屈側、思春期以降は上半身に強い傾向。
・血清IgEが高値:多くの症例でみられるが必須ではない。
・治療の中心はステロイド外用と保湿:この2本柱に加え、悪化因子の検索と除去。

【押さえておきたい関連知識】
治療の3本柱は「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子対策」。実務上の落とし穴は、ステロイドを怖がって過少に塗ることで治療が失敗し、かえって長期化・強力化を招くこと。適切な量(finger tip unitが目安)をしっかり塗って寛解導入し、その後は保湿を継続しながら間欠的に外用するプロアクティブ療法で寛解を維持する。
タクロリムス外用薬は顔面など皮膚萎縮を避けたい部位に有用。重症例には生物学的製剤やJAK阻害薬も用いられる。
掻破による皮膚の悪化(itch-scratch cycle)を断つため抗ヒスタミン薬を補助的に用い、伝染性膿痂疹やカポジ水痘様発疹症などの感染合併にも注意する。
患者・家族への丁寧な説明と外用指導そのものが、この疾患では最も重要な治療行為といえる。
問3
悪性黒色腫を疑う所見(ABCDEルール)に含まれないものはどれか。
  • 1非対称性
  • 2辺縁不整
  • 3色調の不均一
  • 4直径6mm以上
  • ✔病変部の脱色素斑化
解説:【正解の根拠】病変部の脱色素斑化
脱色素はABCDEルールの項目ではない(尋常性白斑などを考える所見)。ただし進行した悪性黒色腫の周囲に免疫反応による脱色素が生じることはあり、これは別の話題である。

【他の選択肢(=ABCDEルール)】
・A:Asymmetry(非対称性)
・B:Border irregularity(辺縁不整、境界がぼやける)
・C:Color variegation(色調の不均一、黒・茶・赤・白・青が混在)
・D:Diameter(直径6mm以上)
・E:Evolution / Elevation(拡大・隆起・出血などの変化)
このうち最も重視されるのはE、すなわち「変化しているかどうか」である。

【押さえておきたい関連知識】
日本人では足底や手掌、爪に生じる末端黒子型が最も多く、欧米に多い表在拡大型とは分布が異なる。したがって足の裏を診る習慣が重要となる。爪では爪甲の黒色線条が幅広く不均一で、爪郭の皮膚に色素がしみ出すHutchinson徴候があれば強く疑う。
鑑別は色素性母斑、脂漏性角化症、基底細胞癌、爪下血腫など。ダーモスコピーにより診断精度が大きく向上する。
診断上の原則として、悪性黒色腫を疑う病変は部分生検を避け、原則として切除生検で全体を評価する。不用意な操作は正確な深達度(Breslow厚)の評価を妨げる。この腫瘍厚が予後と治療方針を規定し、センチネルリンパ節生検の適応判断にも用いられる。
進行例では従来の化学療法の効果が乏しかったが、免疫チェックポイント阻害薬やBRAF阻害薬の登場により治療成績が大きく改善した。
問4
Stevens-Johnson症候群/中毒性表皮壊死融解症について正しいものはどれか。
  • 1原因薬剤を継続してよい
  • 2予後は極めて良好で入院を要さない
  • 3皮膚のみに限局し粘膜は侵されない
  • ✔薬剤が原因となることが多く粘膜疹を伴う重症薬疹である
  • 5痒みのみで全身症状はない
解説:【正解の根拠】薬剤が原因となることが多く粘膜疹を伴う重症薬疹である
薬剤(抗てんかん薬、アロプリノール、抗菌薬、NSAIDなど)や感染症を契機に発症し、高熱と全身倦怠感を伴って、眼・口唇・口腔・外陰部などの粘膜にびらんを生じ、皮膚には紅斑と水疱、表皮の壊死性剝離をきたす。表皮剝離が体表面積の10%未満をStevens-Johnson症候群、30%以上を中毒性表皮壊死融解症とする。

【他の選択肢】
・皮膚のみに限局し粘膜は侵されない:誤り。粘膜疹こそが重症薬疹を示す最重要のサインである。
・痒みのみで全身症状はない:誤り。高熱と全身症状を伴う。
・原因薬剤を継続してよい:誤り。被疑薬の即時中止が治療の第一歩。
・予後は極めて良好で入院を要さない:誤り。致死率が高く、集中治療を要する。

【押さえておきたい関連知識】
薬疹をみたときに「ただの発疹」と「重症薬疹」を分ける所見を持っておくことが実践上きわめて重要である。粘膜疹、水疱・表皮剝離、Nikolsky現象(擦ると表皮が剝がれる)、高熱、リンパ節腫脹、好酸球増多、肝腎障害。これらがあれば直ちに専門医へつなぐ。
病態は表皮細胞の広範なアポトーシスで、皮膚バリアが失われるため、熱傷に準じた管理(体液喪失、体温管理、感染予防、栄養)が必要となる。
最も注意すべき後遺症が眼合併症で、偽膜形成や癒着から瘢痕性角結膜障害を生じ、失明に至ることもある。したがって急性期から眼科と連携する。
DIHS(薬剤性過敏症症候群)も重症薬疹の一つで、発症が遅く(2〜6週)、HHV-6の再活性化を伴い、被疑薬中止後も遷延・再燃するのが特徴。原因薬剤は患者に明示し、以後の回避を徹底する。
問5
蕁麻疹の皮疹の特徴として正しいものはどれか。
  • 1痒みを伴わない
  • ✔膨疹が出没し個々の皮疹は通常24時間以内に消退する
  • 3水疱を形成し瘢痕を残す
  • 4鱗屑を伴う紅斑が固定する
  • 5色素沈着を必ず残す
解説:【正解の根拠】膨疹が出没し個々の皮疹は通常24時間以内に消退する
真皮浅層の一過性の血管透過性亢進により生じるため、皮疹(膨疹)は現れては消えを繰り返し、個々の皮疹は数時間から24時間以内に痕を残さず消退する。「出たり消えたりする」という時間的な性質が診断の核心である。

【他の選択肢】
・痒みを伴わない:誤り。強い痒みを伴う。
・水疱を形成し瘢痕を残す:誤り。水疱形成や瘢痕は蕁麻疹ではみられない。
・鱗屑を伴う紅斑が固定する:誤り。固定して動かない皮疹は湿疹や乾癬、薬疹(固定薬疹)を考える。
・色素沈着を必ず残す:誤り。痕を残さないのが特徴。

【押さえておきたい関連知識】
実践上重要なのは「個々の皮疹が24時間以上持続する」場合で、この場合は蕁麻疹様血管炎を疑い、色素沈着や紫斑を残すこと、発熱や関節痛を伴うことを確認して精査する。
分類は、特発性(急性は6週未満、慢性は6週以上)が大半で、原因が特定できる刺激誘発型(食物、薬剤、物理的刺激としての機械的擦過・寒冷・温熱・日光・圧迫、コリン性、運動誘発)がある。慢性蕁麻疹の多くは原因を特定できず、過度な検査や食物除去は避ける。
治療は第二世代抗ヒスタミン薬が第一選択で、効果不十分なら増量や変更、難治例にはオマリズマブなどを用いる。
最重要の判断は「アナフィラキシーの初期ではないか」という点で、蕁麻疹に呼吸困難、喘鳴、腹痛・嘔吐、血圧低下、意識障害が加われば直ちにアドレナリン筋注を行う。誘因となった食物や薬剤、運動との関連(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)の聴取も欠かせない。
問6
足白癬の診断に最も有用な検査はどれか。
  • 1血液培養
  • 2皮膚生検
  • ✔直接鏡検(KOH法)による菌要素の確認
  • 4血清IgE測定
  • 5パッチテスト
解説:【正解の根拠】直接鏡検(KOH法)による菌要素の確認
鱗屑や爪、水疱の蓋を採取し、水酸化カリウム液で角質を溶かして顕微鏡で観察し、菌糸や分節胞子を確認する。数分でできて安価、その場で診断がつくため、抗真菌薬を開始する前に必ず行うべき検査である。

【他の選択肢】
・皮膚生検:通常は不要。診断困難例や悪性を疑う場合に限る。
・血清IgE測定、パッチテスト:アレルギー疾患の検査。
・血液培養:全身感染症の検査であり、表在性真菌症には無関係。

【押さえておきたい関連知識】
臨床上きわめて重要なのは「見た目だけで水虫と決めつけない」ことである。足の皮疹には、湿疹・接触皮膚炎、掌蹠膿疱症、汗疱、乾癬、細菌感染が含まれ、これらに抗真菌薬を塗ると悪化することがある。逆に、白癬にステロイドを塗ると皮疹が非典型化し(異型白癬)診断が困難になる。したがって「治療前の鏡検」が原則となる。
病型は、趾間型(浸軟、亀裂)、小水疱型、角質増殖型(踵の乾燥と肥厚。痒みが乏しく見逃されやすい)。角質増殖型と爪白癬は外用薬が届きにくいため、内服抗真菌薬(テルビナフィン、イトラコナゾールなど)を用いる。内服時は肝機能のモニタリングと薬物相互作用の確認が必要である。
実践的な意義として、足白癬・爪白癬は皮膚のバリアを破綻させ、蜂窩織炎や丹毒の侵入門戸となる。糖尿病や下肢の浮腫がある患者では特に重要で、足の観察とケアの一環として治療する価値がある。
また家庭内感染を防ぐため、バスマットやスリッパの共用を避け、足を洗って乾燥させる指導も行う。
問7
褥瘡の予防として最も重要なものはどれか。
  • 1円座を用いて圧を一点に集める
  • 2水分摂取を制限する
  • 3発赤が出るまで様子をみる
  • ✔体位変換と体圧分散、皮膚の観察・保清と栄養管理
  • 5患部のマッサージを強く行う
解説:【正解の根拠】体位変換と体圧分散、皮膚の観察・保清と栄養管理
褥瘡は「持続的な圧迫とずれによる血流障害」で生じる。したがって予防の本質は圧を取り除くこと(除圧)にあり、定期的な体位変換と体圧分散マットレスの使用が中心となる。加えて、発赤の早期発見のための皮膚観察、失禁による浸軟を防ぐ保清とスキンケア、そして創傷治癒と皮膚の維持に必要な栄養管理を組み合わせる。

【他の選択肢】
・患部のマッサージを強く行う:誤り。かつて行われたが、既に脆弱になった組織をさらに損傷するため現在は推奨されない。
・円座を用いて圧を一点に集める:誤り。円座は接触部に圧を集中させ、かえって血流障害を助長する。
・水分摂取を制限する:誤り。脱水は皮膚の脆弱化と全身状態の悪化を招く。
・発赤が出るまで様子をみる:誤り。発赤は既に組織障害が始まっているサインで、その前に予防する。

【押さえておきたい関連知識】
好発部位は仰臥位で仙骨部(最多)、踵部、後頭部、肩甲部、側臥位で大転子部と外果、坐位で坐骨結節部。骨突出部に一致する。
危険因子はリスク評価スケール(ブレーデンスケールなど)で評価し、知覚の低下、活動性・可動性の低下、湿潤、栄養状態、摩擦とずれを点数化する。
実践的な要点として、①2時間ごとを目安とした体位変換(ただし体圧分散寝具の使用により間隔を延ばせる)、②30度側臥位(骨突出部への圧を避ける)、③ベッドの頭側挙上は30度以内にしずれを防ぐ(挙上後は背抜きを行う)、④踵部は浮かせる、⑤失禁時は速やかに洗浄し保湿する。
発赤を見つけたら、指で押して白くなるか(反応性充血なら白くなる)を確認し、白くならなければ既に深部組織障害の可能性がある。
予防は多職種(看護師、管理栄養士、皮膚・排泄ケア認定看護師、リハビリ職)の協働で行うものであり、体制としての取り組みが成果を左右する。
問8
尋常性乾癬について正しいものはどれか。
  • 1皮疹は左右非対称で四肢屈側に限局する
  • 2関節症状を伴うことはない
  • ✔銀白色の鱗屑を伴う境界明瞭な紅斑局面を呈し、Köbner現象を認める
  • 4水疱形成が主体である
  • 5感染性が高く隔離を要する
解説:【正解の根拠】銀白色の鱗屑を伴う境界明瞭な紅斑局面を呈し、Köbner現象を認める
表皮のターンオーバーが著しく亢進し、角質が厚く積み重なることで銀白色の厚い鱗屑を伴う、境界明瞭でやや隆起した紅斑局面を形成する。機械的刺激を受けた部位に新たな皮疹が誘発されるKöbner現象がみられる。

【他の選択肢】
・皮疹は左右非対称で四肢屈側に限局する:誤り。頭部、肘・膝などの「伸側」、殿部、下肢といった刺激を受けやすい部位に左右対称性に生じる。アトピー性皮膚炎が屈側に多いのと対照的である。
・水疱形成が主体:誤り。膿疱を伴う病型(膿疱性乾癬)はあるが、尋常性では水疱は形成しない。
・感染性が高く隔離を要する:誤り。感染性はまったくない。
・関節症状を伴うことはない:誤り。

【押さえておきたい関連知識】
「うつらない」という点は患者の社会生活に直結する重要な知識である。見た目から誤解され、入浴施設やプールの利用、就労、対人関係で不利益を受けることがあり、正しい理解の普及が求められる。
病態はT細胞を中心とした免疫異常で、IL-23/IL-17経路が中心的役割を果たす。この理解が生物学的製剤の開発につながり、治療成績が飛躍的に向上した。
約1〜2割に乾癬性関節炎を合併し、関節破壊に至ることがあるため、関節痛や朝のこわばり、指趾全体が腫れる指趾炎、爪の変化(点状陥凹、爪甲剝離)に注意する。
またメタボリックシンドローム、心血管疾患、脂肪肝、うつとの合併が多く、皮膚だけでなく全身疾患として管理する視点が必要である。
悪化因子は、機械的刺激、感染(扁桃炎による滴状乾癬)、ストレス、喫煙、肥満、飲酒、薬剤(β遮断薬、リチウム、抗マラリア薬、ステロイド全身投与の中止後のリバウンド)。
治療は外用(ステロイド、活性型ビタミンD3)、光線療法、内服(シクロスポリン、アプレミラストなど)、そして中等症以上では生物学的製剤を用いる。

整形外科全15問中 8問を掲載

問1
高齢者の大腿骨頸部骨折について正しいものはどれか。
  • 1保存療法が第一選択である
  • 2受傷後は長期臥床が推奨される
  • 3骨粗鬆症とは無関係である
  • 4関節包外骨折である
  • ✔骨頭壊死や偽関節を起こしやすい
解説:【正解の根拠】骨頭壊死や偽関節を起こしやすい
大腿骨頸部は関節包"内"にあり、骨頭を養う血管(主に内側大腿回旋動脈由来)が頸部に沿って走行するため、骨折によりこの血流が途絶しやすい。加えて関節包内では骨膜性の仮骨形成が期待できず、関節液に洗われるため骨癒合が得られにくい。この2つの理由で骨頭壊死と偽関節が問題となる。

【他の選択肢】
・関節包外骨折である:誤り。頸部骨折は関節包内。関節包外なのは転子部骨折で、血流が豊富なため骨癒合は得られやすく骨接合術が選択される。
・保存療法が第一選択:誤り。原則は手術。
・長期臥床が推奨される:誤り。臥床は肺炎、褥瘡、深部静脈血栓症、廃用症候群、せん妄を招き致命的となる。早期手術・早期離床が原則。
・骨粗鬆症とは無関係:誤り。骨粗鬆症を背景とした転倒が主因。

【押さえておきたい関連知識】
術式は骨折型で決まる。転位のない頸部骨折は骨接合術、転位のある頸部骨折は血流が期待できないため人工骨頭置換術、転子部骨折は骨接合術が基本。
高齢者では骨折そのものより「その後の生活機能低下」が問題で、受傷前の歩行能力に戻れない例も多く、生命予後も悪化する。したがって早期手術、周術期のせん妄・肺炎予防、リハビリテーション、退院支援を一体で計画する。
そして忘れてはならないのが二次骨折予防。骨折後は次の骨折リスクが最も高い時期であり、骨粗鬆症の薬物治療、ビタミンD・蛋白質の確保、転倒予防(環境整備、筋力訓練、視力、薬剤の見直し)を必ず開始する。
問2
腰椎椎間板ヘルニアの診察所見として有用なものはどれか。
  • 1Murphy徴候
  • 2Trendelenburg徴候
  • 3McMurrayテスト
  • 4Phalenテスト
  • ✔下肢伸展挙上(SLR)テスト
解説:【正解の根拠】下肢伸展挙上(SLR)テスト
仰臥位で膝を伸ばしたまま下肢を挙上すると坐骨神経が伸展され、圧迫されている神経根が刺激されて下肢に放散する痛みが誘発される。L4/5やL5/S1のヘルニアで陽性となり、Lasègue徴候とも呼ばれる。上位腰椎のヘルニアでは大腿神経伸展テスト(うつ伏せで膝を屈曲)が有用。

【他の選択肢と対応する疾患】
・Murphy徴候:急性胆囊炎。
・Trendelenburg徴候:中殿筋の機能不全(変形性股関節症、大腿骨頭壊死、上殿神経麻痺)。片脚立位で対側の骨盤が下がる。
・McMurrayテスト:膝半月板損傷。
・Phalenテスト:手根管症候群(正中神経の絞扼)。

【押さえておきたい関連知識】
高位診断のポイントを押さえる。L4/5ヘルニアではL5神経根が障害され、足背から母趾にかけての感覚障害と足関節・母趾の背屈力低下。L5/S1ではS1神経根が障害され、足の外側から小趾の感覚障害、足関節底屈力低下、アキレス腱反射の低下。
経過としては多くが保存療法で軽快する。安静は短期にとどめ、鎮痛薬、神経障害性疼痛の薬剤、神経ブロック、リハビリテーションを行いながら日常生活の活動性を保つ。
一方で緊急手術を要するのが「馬尾症候群」で、両側の下肢症状、会陰部のしびれ(サドル型感覚障害)、膀胱直腸障害(尿閉、失禁)を伴う場合は、放置すると不可逆的な障害を残すため速やかな画像評価と手術が必要となる。進行する筋力低下も手術適応となる。
腰痛診療全般では、発熱、体重減少、癌の既往、夜間痛といった警告徴候の確認が出発点である。
問3
変形性膝関節症について正しいものはどれか。
  • 1若年女性に好発する
  • 2わが国では外反変形をきたすことが多い
  • 3エックス線で関節裂隙の拡大を認める
  • ✔大腿四頭筋の筋力訓練が有用である
  • 5安静を厳守し運動は避けるべきである
解説:【正解の根拠】大腿四頭筋の筋力訓練が有用である
大腿四頭筋は膝関節を安定させ衝撃を吸収する役割を担うため、その筋力強化により疼痛が軽減し機能が改善することが確立している。運動療法は薬物より優先される基本的治療である。

【他の選択肢】
・若年女性に好発する:誤り。中高年、特に閉経後の女性に多い。
・わが国では外反変形が多い:誤り。内側の軟骨から摩耗するため「内反(O脚)」変形をきたす。荷重が内側に集中してさらに摩耗が進むという悪循環になる。
・関節裂隙の拡大:誤り。軟骨が減るため「狭小化」する。
・安静を厳守し運動は避ける:誤り。安静は筋力低下と関節拘縮を招き、かえって症状を悪化させる。

【押さえておきたい関連知識】
エックス線所見は「関節裂隙の狭小化、骨棘形成、軟骨下骨の硬化、骨囊胞」の4つ。ただし画像所見の重症度と症状は必ずしも一致しない点が重要で、治療方針は痛みと生活機能で決める。
症状は動作開始時痛(立ち上がり、歩き始め)、階段昇降時の痛み、正座困難。進行すると安静時痛や夜間痛が出現する。関節液の貯留(膝蓋跳動)を伴うことがある。
治療は、①運動療法(大腿四頭筋訓練、有酸素運動)、②減量(体重1kgの減少が膝への負担を大きく減らす)、③生活指導(正座や和式トイレを避ける、杖)、④装具・足底板、⑤薬物(NSAIDは高齢者では腎・消化管に注意、外用薬から)、⑥ヒアルロン酸やステロイドの関節内注入、と段階的に進み、保存療法で改善しない高度例に人工膝関節置換術を行う。
関節リウマチとの鑑別は、朝のこわばりの長さ、炎症反応、罹患関節の分布で行う。
問4
高齢者が転倒し手をついて受傷した際に生じやすく、フォーク状変形を呈する骨折はどれか。
  • 1舟状骨骨折
  • 2肘頭骨折
  • 3上腕骨近位端骨折
  • 4鎖骨骨折
  • ✔橈骨遠位端骨折(Colles骨折)
解説:【正解の根拠】橈骨遠位端骨折(Colles骨折)
転倒時に手掌をついて受傷し、橈骨遠位の骨片が背側へ転位するため、側面から見ると手首がフォークの背のように盛り上がる「フォーク状変形」を呈する。

【他の選択肢】
・舟状骨骨折:同じく手をついて受傷するが、若年者に多く、解剖学的嗅ぎタバコ入れの圧痛が特徴。初期のエックス線で写らないことが多く、見逃すと血流障害から偽関節・骨壊死をきたすため、疑えば固定して再検する。
・上腕骨近位端骨折、鎖骨骨折:転倒で生じるが変形の様式が異なる。
・肘頭骨折:肘を直接打って受傷する。

【押さえておきたい関連知識】
橈骨遠位端骨折は、椎体骨折、大腿骨近位部骨折、上腕骨近位端骨折と並ぶ「骨粗鬆症性の四大脆弱性骨折」の一つ。しかも比較的若い高齢者(60歳代前後)に多く、その後の大腿骨近位部骨折の予測因子となる。したがって「手首を折った」時点で骨粗鬆症の評価と治療、転倒予防を開始することが、将来の重大な骨折を防ぐ重要な機会となる。
なお背側転位がColles骨折、掌側転位がSmith骨折(逆Colles)である。
治療は徒手整復と外固定が基本で、関節面の転位が大きい例や不安定型では手術(プレート固定)を行う。
合併症として、正中神経障害(手根管症候群)、長母指伸筋腱の遅発性断裂、複合性局所疼痛症候群、関節可動域制限がある。固定後は指と肩の運動を早期から行い、拘縮を防ぐ指導が重要である。
問5
骨粗鬆症性椎体骨折について誤っているものはどれか。
  • 1身長低下や円背の原因となる
  • 2新たな椎体骨折の連鎖を招くことがある
  • ✔骨折後は骨粗鬆症治療を行う必要はない
  • 4明らかな外傷歴がないこともある
  • 5胸腰椎移行部に好発する
解説:【正解の根拠】骨折後は骨粗鬆症治療を行う必要はない(=誤り)
まったく逆で、骨折した直後こそ次の骨折リスクが最も高まる時期であり、二次骨折予防のために薬物治療を含む介入を開始する絶好の機会である。実際には骨折を治療しても骨粗鬆症が放置される「治療ギャップ」が大きな問題となっており、骨折リエゾンサービスなどの取り組みが行われている。

【他の選択肢(=正しい記述)】
・明らかな外傷歴がないこともある:くしゃみ、咳、荷物を持ち上げる、尻もちといった軽微な動作で生じ、いつ折れたか本人も分からない「いつのまにか骨折」が少なくない。
・胸腰椎移行部に好発する:力学的負荷が集中する第11胸椎〜第2腰椎に多い。
・身長低下や円背:椎体の圧潰の蓄積による。身長が若い頃より数cm縮んでいれば椎体骨折を疑う。
・新たな椎体骨折の連鎖:1つ骨折すると隣接椎体への負荷が増し、次々に骨折する「骨折ドミノ」を起こす。

【押さえておきたい関連知識】
椎体骨折は疼痛だけの問題ではない。円背により呼吸機能や消化機能が低下し、逆流性食道炎、食欲不振、バランス障害による転倒、活動性低下、QOLの著明な低下、そして生命予後の悪化にもつながる。
診断は単純エックス線(側面像)で椎体の変形を評価し、新旧の判別や不顕性骨折にはMRIが有用。
治療は疼痛管理と早期離床、体幹装具、そして骨粗鬆症の薬物治療。安静臥床の長期化は廃用を招くため避ける。難治性疼痛には経皮的椎体形成術が検討される。
二次骨折予防のパッケージは、薬物治療、カルシウム・ビタミンD・蛋白質の確保、運動、転倒予防(環境整備、視力、薬剤の見直し)である。
問6
腱板断裂について正しいものはどれか。
  • 1可動域訓練は禁忌である
  • ✔肩の挙上困難と夜間痛をきたす
  • 3若年者の外傷でのみ生じる
  • 4エックス線単純撮影で断裂が明瞭に描出される
  • 5必ず手術が必要である
解説:【正解の根拠】肩の挙上困難と夜間痛をきたす
腱板(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)は上腕骨頭を関節窩に引きつけて安定させ、三角筋が働くための支点を作る。断裂すると挙上時に骨頭が上方へずれて力が伝わらず、挙上困難と挙上時痛が生じる。また患側を下にして寝ると疼痛で目が覚める夜間痛が特徴的である。

【他の選択肢】
・若年者の外傷でのみ生じる:誤り。中高年では加齢による腱の変性を基盤に、明らかな外傷なく生じる例が多い。
・エックス線単純撮影で断裂が明瞭に描出される:誤り。腱は軟部組織であり単純写真では写らない。診断には超音波検査やMRIを用いる。
・必ず手術が必要である:誤り。まず保存療法を行う。
・可動域訓練は禁忌である:誤り。拘縮(凍結肩)を防ぐため、適切な範囲での運動療法が重要。

【押さえておきたい関連知識】
鑑別として重要なのが五十肩(肩関節周囲炎)で、こちらは自動・他動ともに可動域が制限されるのに対し、腱板断裂では他動的にはある程度動く(自動運動が特に困難)という違いがある。ただし合併もしうる。
診察では、drop arm sign(挙上位から保持できず落ちる)、棘上筋テスト、外旋筋力の低下などを評価する。
治療は、消炎鎮痛薬、肩峰下滑液包へのステロイド注射、そして腱板機能の代償と肩甲骨周囲筋の強化を目的とした運動療法。断裂があっても保存療法で疼痛が軽快し機能が保たれる例は少なくない。若年者、外傷性、活動性が高い、保存療法で改善しない例では鏡視下腱板修復術を検討する。
高齢者では、長期に放置すると腱板断裂性関節症へ進行することがある。
なお肩の痛みの鑑別として、頸椎症、石灰沈着性腱板炎、そして心筋梗塞や胆囊炎などの関連痛も念頭に置く。
問7
頸椎症性脊髄症の症状として正しいものはどれか。
  • 1腱反射の消失
  • 2顔面の感覚障害
  • 3意識障害
  • 4眼球運動障害
  • ✔手指の巧緻運動障害と歩行障害、腱反射亢進
解説:【正解の根拠】手指の巧緻運動障害と歩行障害、腱反射亢進
頸髄が圧迫されると、障害レベル以下に上位運動ニューロン障害の所見が出る。すなわち腱反射亢進、病的反射陽性、痙性。症状としては、箸が使いにくい、ボタンがかけられない、字が書きにくいといった手指の巧緻運動障害と、足がもつれる・階段が不安になるといった痙性歩行が特徴である。

【他の選択肢】
・腱反射の消失:誤り。亢進する。消失するのは下位運動ニューロンや末梢神経の障害。
・顔面の感覚障害:誤り。三叉神経の支配であり頸髄の障害では生じない。顔面症状があれば脳幹病変を考える。
・意識障害、眼球運動障害:いずれも頸髄病変では生じない。

【押さえておきたい関連知識】
神経根症との区別が重要である。頸椎症性神経根症では、該当する皮膚分節に一致した上肢の放散痛としびれ、支配筋の筋力低下、そしてその髄節の腱反射「低下」を示し、頸部の後屈と患側への側屈で症状が誘発される(Spurling徴候)。一方、脊髄症では両側性・下肢を含む症状と腱反射亢進を示す。
評価では、10秒間に手を握って開く回数を数えるgrip and release test(10回未満で異常)や、手指を素早く開閉できるか、継ぎ足歩行が可能かを確認する。ホフマン徴候、トレムナー徴候、Babinski徴候も陽性となる。
進行すると膀胱直腸障害が出現し、これは手術の適応を強める所見である。
背景には脊柱管の狭窄(変形性変化、椎間板の膨隆、骨棘、後縦靱帯骨化症)があり、もともと脊柱管が狭い人では軽微な外傷で急激に症状が悪化する(非骨傷性頸髄損傷)。高齢者が転倒して手足が動かなくなった場合はこれを疑う。
治療は、軽症では安静と装具、薬物療法だが、進行性の脊髄症では自然改善が期待しにくいため手術(椎弓形成術など)を検討する。
問8
小児の骨折の特徴として正しいものはどれか。
  • 1自家矯正は期待できない
  • 2骨端線損傷は予後に影響しない
  • 3骨膜が薄く粉砕骨折が多い
  • ✔若木骨折がみられ、骨癒合が速く自家矯正力が高いが、骨端線損傷では成長障害に注意する
  • 5成人より骨癒合が遅い
解説:【正解の根拠】若木骨折がみられ、骨癒合が速く自家矯正力が高いが、骨端線損傷では成長障害に注意する
小児の骨は柔軟で骨膜が厚く血流も豊富であるため、完全に折れずに一方が屈曲する若木骨折や、圧迫による隆起骨折を生じやすい。骨癒合が速く、多少の変形は成長とともに自然に矯正される(自家矯正)。一方、骨端線(成長板)は軟骨で力学的に弱く、ここを損傷すると成長障害や変形を残しうる。

【他の選択肢】
・成人より骨癒合が遅い:誤り。速い。
・自家矯正は期待できない:誤り。特に変形の方向が関節運動の方向と一致し、年齢が若く骨端線に近いほど矯正されやすい。
・骨端線損傷は予後に影響しない:誤り。
・骨膜が薄く粉砕骨折が多い:誤り。骨膜は厚く、これが骨片の転位を防ぎ治癒を助ける。

【押さえておきたい関連知識】
骨端線損傷はSalter-Harris分類で評価する。I型(骨端線のみの離開)とII型(骨幹端側に骨片を伴う。最多)は予後良好、III型とIV型(関節面に及ぶ)は解剖学的整復を要し、V型(圧挫)は成長障害のリスクが最も高い。
注意すべきは、骨端線は軟骨のためエックス線で「透けて見える」ことで、骨折線と紛らわしく、また骨端線損傷が写らないこともある。健側との比較撮影が有用な場合がある。
小児特有の骨折として、上腕骨顆上骨折(転倒で手をつく。Volkmann拘縮や神経損傷に注意)、鎖骨骨折(自然治癒しやすい)、肘内障(肘の亜脱臼。手を引っ張られて発症し、徒手整復で速やかに改善する)がある。
そして忘れてはならないのが「虐待の可能性」である。歩行前の乳児の長管骨骨折、肋骨骨折、新旧混在する多発骨折、受傷機転の説明と所見の不一致、受診の遅れは虐待を疑う所見であり、疑えば通告義務がある。
また、小児は疼痛の訴えが不明瞭なため、跛行や患肢を使わないといった行動から評価する必要がある。

公衆衛生全64問中 8問を掲載

問1
医師法において、医師が異状死体を検案したときに届け出るべき先と期限として正しいものはどれか。
  • ✔24時間以内に所轄警察署
  • 2直ちに保健所
  • 37日以内に都道府県知事
  • 424時間以内に市町村長
  • 5直ちに厚生労働大臣
解説:【正解の根拠】24時間以内に所轄警察署
医師法第21条により、医師は死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して異状を認めたときは、24時間以内に所轄警察署へ届け出なければならない。届出先が「警察署」であること、期限が「24時間以内」であることの両方が問われる。

【他の選択肢】
・直ちに保健所:感染症法に基づく届出の枠組み。一類〜四類などは直ちに最寄りの保健所長を経由して都道府県知事へ届け出る。
・7日以内に都道府県知事:五類感染症の多くの全数把握疾患の届出期限。
・24時間以内に市町村長:死亡届は「死亡の事実を知った日から7日以内」に市町村長へ提出する(届出人は親族等)。
・直ちに厚生労働大臣:該当する制度はない。

【押さえておきたい関連知識】
医師法の頻出条文は番号とセットで覚える。第19条は応招義務と診断書等の交付義務、第20条は無診察治療等の禁止(診察せずに治療・処方・診断書交付をしてはならない)、第21条が異状死体の届出、第24条が診療録の記載と5年間の保存義務。
「異状」とは単に死因が不明という意味にとどまらず、外因死やその疑い、診療行為に関連した予期しない死亡などを含むと解される。
なお、これとは別の制度として医療事故調査制度があり、医療に起因する予期しない死亡が生じた場合には医療機関の管理者が医療事故調査・支援センターへ報告し院内調査を行う。こちらは責任追及ではなく原因究明と再発防止が目的であり、第21条の届出とは目的も届出先も異なる別制度である点を混同しない。
問2
感染症法における一類感染症に該当するものはどれか。
  • 1コレラ
  • 2腸管出血性大腸菌感染症
  • 3麻疹
  • 4結核
  • ✔エボラ出血熱
解説:【正解の根拠】エボラ出血熱
一類感染症はエボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱の7疾患。危険性が極めて高く、原則として特定・第一種感染症指定医療機関への入院を含む最も厳格な措置がとられる。

【他の選択肢と分類】
・結核:二類(ほかにジフテリア、SARS、MERS、鳥インフルエンザH5N1・H7N9、急性灰白髄炎)。
・コレラ、腸管出血性大腸菌感染症:三類(ほかに細菌性赤痢、腸チフス、パラチフス)。就業制限の対象となる飲食物を介する疾患群。
・麻疹:五類(全数把握で直ちに届出)。

【押さえておきたい関連知識】
分類の考え方を押さえると覚えやすい。一類〜三類は危険性の高さと感染経路(三類は飲食物媒介で就業制限)、四類は動物や飲食物を介するがヒトからヒトへは基本的に感染しないもの(狂犬病、デング熱、マラリア、日本脳炎、E型・A型肝炎、つつが虫病など)、五類は発生動向の把握を主目的とするもの。
届出のタイミングも重要で、一類〜四類および五類の一部(麻疹、風疹、侵襲性髄膜炎菌感染症など)は「直ちに」、その他の五類全数把握疾患は7日以内、五類定点把握疾患は指定届出機関が定期的に報告する。
届出は医師の義務であり、サーベイランスによる流行の早期探知と対策の基盤となる。ほかに新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症という枠組みがあることも押さえておきたい。
問3
わが国の国民医療費に関する記述で正しいものはどれか。
  • 1健康診断の費用が含まれる
  • 2予防接種の費用が含まれる
  • ✔傷病の治療のための入院時食事療養費が含まれる
  • 4美容整形の費用が含まれる
  • 5正常分娩の費用が含まれる
解説:【正解の根拠】傷病の治療のための入院時食事療養費が含まれる
国民医療費は「保険診療の対象となる傷病の治療に要した費用」を推計したもので、入院時食事療養費、訪問看護療養費、調剤費なども含まれる。

【他の選択肢(=いずれも含まれない)】
・正常分娩:疾病ではないため保険給付の対象外(出産育児一時金で対応)。
・健康診断、人間ドック:治療ではなく予防・検査。
・予防接種:予防目的。
・美容整形:治療目的でない自由診療。
ほかに、市販薬の購入費、差額ベッド代、義眼・義肢、先進医療の自己負担部分なども含まれない。「治療」「保険診療」という2つの軸で判断すると整理しやすい。

【押さえておきたい関連知識】
国民医療費は40兆円を超える規模で推移し、国内総生産や国民所得に対する比率とともに増加傾向にある。財源は保険料が最も多く、次いで公費、患者負担の順。
年齢階級別では65歳以上が全体の6割程度を占め、高齢化が費用増の主要因である。傷病分類別では循環器系疾患が最も多く、次いで新生物、筋骨格系疾患など。
医療費適正化の施策として、後発医薬品の使用促進、重複・多剤投薬の是正、生活習慣病の予防(特定健診・特定保健指導)、地域医療構想による病床機能の分化と連携、在宅医療の推進などが進められている。医療費の統計は国民医療費と後期高齢者医療費、概算医療費など複数あり、対象範囲が異なる点にも注意したい。
問4
介護保険制度について正しいものはどれか。
  • 1保険者は都道府県である
  • ✔第1号被保険者は65歳以上の者である
  • 3要介護認定は主治医が単独で行う
  • 440歳未満も被保険者となる
  • 5サービス利用時の自己負担は原則5割である
解説:【正解の根拠】第1号被保険者は65歳以上の者である
介護保険の被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と、40歳以上65歳未満の医療保険加入者である第2号被保険者に分かれる。第2号被保険者は、末期がんや初老期認知症、脳血管疾患など加齢に起因する16の「特定疾病」による要介護状態の場合に限りサービスを利用できる点が重要。

【他の選択肢】
・保険者は都道府県:誤り。保険者は市町村および特別区。地域の実情に応じた運営を行う。
・要介護認定は主治医が単独で行う:誤り。認定調査の結果によるコンピュータ判定(一次判定)と主治医意見書をもとに、介護認定審査会が二次判定を行う。
・40歳未満も被保険者:誤り。40歳以上が対象。
・自己負担は原則5割:誤り。原則1割で、所得に応じて2割または3割。

【押さえておきたい関連知識】
利用の流れは「市町村へ申請→認定調査+主治医意見書→介護認定審査会で要支援1〜2・要介護1〜5を判定→ケアマネジャーがケアプランを作成→サービス利用」。医師は主治医意見書の作成という形で必ず関与する。
サービスは居宅(訪問介護・訪問看護・通所介護・短期入所など)、施設(介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院)、地域密着型に大別される。
関連制度との区別も問われる。医療保険との給付調整、40歳未満や特定疾病以外の障害には障害者総合支援法、そして地域包括ケアシステムの中核を担うのが地域包括支援センターである。制度の目的が「自立支援」と「利用者本位」に置かれている点も押さえておきたい。
問5
わが国の死因統計において、近年最も多い死因はどれか。
  • 1脳血管疾患
  • 2不慮の事故
  • ✔悪性新生物
  • 4心疾患
  • 5老衰
解説:【正解の根拠】悪性新生物(腫瘍)
1981年以降、一貫して死因の第1位を占めている。全死亡のおよそ4分の1を占める。

【他の選択肢】
・心疾患:第2位。高齢化に伴い増加傾向。
・老衰:近年著しく順位を上げ上位に入っている。超高齢化を反映した変化。
・脳血管疾患:かつては第1位だった時期があるが、高血圧管理と食生活の改善(減塩)により長期的に低下し、現在は上位ではあるものの順位を下げている。
・不慮の事故:上位ではあるが1位ではない。

【押さえておきたい関連知識】
死因順位の歴史的変遷が問われやすい。戦前から戦後まもなくは結核や肺炎などの感染症が上位を占めていたが、生活水準の向上・抗菌薬・予防接種により激減し、脳血管疾患が1位となり、その後悪性新生物へと交代した。感染症中心から生活習慣病中心へという「疾病構造の転換」を示す。
部位別のがん死亡は、男性で肺がんが最多、女性では大腸がんが上位を占める。罹患数では男女とも大腸がんや肺がん、男性で前立腺がん、女性で乳がんが多く、「罹患が多い=死亡が多い」ではない点に注意(予後の違いを反映する)。
これらの統計は人口動態統計(届出に基づく全数調査)により把握される。年齢調整死亡率で比較すると、がんによる死亡率は実は低下傾向にあり、粗死亡率の増加は高齢化による影響が大きいという読み方も重要である。
問6
特定健康診査・特定保健指導について正しいものはどれか。
  • 1実施主体は市町村のみである
  • 2がんの早期発見を主目的とする
  • 3保健指導は行われない
  • 4対象は20歳以上の全国民である
  • ✔メタボリックシンドロームに着目した健診である
解説:【正解の根拠】メタボリックシンドロームに着目した健診である
内臓脂肪の蓄積を基盤とした高血糖・脂質異常・高血圧の重積を早期に発見し、生活習慣の改善によって糖尿病や心血管疾患の発症を予防することを目的とする。

【他の選択肢】
・対象は20歳以上の全国民:誤り。「40〜74歳の医療保険加入者」が対象。
・実施主体は市町村のみ:誤り。実施義務を負うのは「医療保険者」(国民健康保険なら市町村、被用者保険なら健康保険組合や協会けんぽ)。
・がんの早期発見が主目的:誤り。がん検診は健康増進法に基づく市町村事業であり、別の枠組み。
・保健指導は行われない:誤り。結果に応じた特定保健指導こそが制度の中核。

【押さえておきたい関連知識】
高齢者医療確保法に基づく制度で、健診項目は腹囲、BMI、血圧、脂質(中性脂肪、HDL、LDL)、血糖(空腹時血糖またはHbA1c)、肝機能、尿検査など。
結果により、リスクの数に応じて「動機付け支援」(原則1回の面接と6か月後の評価)と「積極的支援」(3か月以上の継続的支援)に階層化される。65〜74歳は動機付け支援までとされる。
特徴は「健診を受けさせること」ではなく「行動変容につなげること」を目的としている点で、医師や保健師、管理栄養士が本人と目標を設定し継続的に関わる。
なおメタボリックシンドロームの診断基準では腹囲(男性85cm、女性90cm以上)が必須項目で、これに脂質・血圧・血糖の3項目中2項目以上が加わる。LDLコレステロールは基準に含まれない点も併せて押さえたい。
問7
学校保健安全法において、インフルエンザに罹患した児童生徒の出席停止期間の基準として正しいものはどれか。
  • 1検査で陰性が確認されるまで
  • ✔発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで
  • 3解熱後直ちに登校可能
  • 4発症後3日間
  • 5すべての症状が消失するまで
解説:【正解の根拠】発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで
「発症後5日」と「解熱後2日(幼児は3日)」の両方の条件を満たす必要がある点が要点。抗インフルエンザ薬により早く解熱してもウイルスの排出は続くため、解熱だけを基準にしないという考え方に基づく。

【他の選択肢】
・解熱後直ちに登校可能、発症後3日間、すべての症状消失まで、検査で陰性が確認されるまで:いずれも規定と異なる。特に「陰性確認」は不要であり、治癒証明書を求めることは推奨されていない。

【押さえておきたい関連知識】
学校保健安全法施行規則では感染症を第一種〜第三種に分類する。第一種は感染症法の一類および二類の一部で、原則として治癒するまで出席停止。第二種は飛沫感染し学校で流行を広げやすいもの(インフルエンザ、百日咳、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、咽頭結膜熱、結核、髄膜炎菌性髄膜炎)で疾患ごとに基準が定められている。第三種は学校教育活動を通じ流行を広げる可能性のあるもの(腸管出血性大腸菌感染症、流行性角結膜炎など)で、病状により学校医が認めるまで。
主な第二種の基準は、麻疹は解熱後3日、流行性耳下腺炎は耳下腺等の腫脹が出現してから5日かつ全身状態良好まで、風疹は発疹消失まで、水痘はすべての発疹が痂皮化するまで、咽頭結膜熱は主要症状消退後2日。
出席停止を決めるのは校長、臨時休業(学級閉鎖)を決めるのは学校の設置者である点も押さえておきたい。
問8
インフォームド・コンセントについて正しいものはどれか。
  • 1医師が説明すれば患者の同意は不要である
  • ✔患者が理解したうえで自発的に同意することが必要である
  • 3同意した後は撤回できない
  • 4未成年者には一切の説明を要しない
  • 5救命処置が必要な意識障害患者でも必ず本人の同意を得てから治療する
解説:【正解の根拠】患者が理解したうえで自発的に同意することが必要である
インフォームド・コンセントは「説明した」という医療者側の行為で完結するものではなく、①十分な情報提供、②患者の理解、③自発性(強制や誘導がないこと)、④同意能力、という要素がすべて揃って初めて成立する。

【他の選択肢】
・医師が説明すれば同意は不要:誤り。説明は手段であって目的ではない。
・同意した後は撤回できない:誤り。患者はいつでも同意を撤回でき、その権利を保障することが前提となる。
・未成年者には一切の説明を要しない:誤り。理解度に応じた説明を行い本人の納得(インフォームド・アセント)を得る努力が求められる。年齢とともに本人の意思の比重は高まる。
・意識障害患者でも必ず本人の同意を得てから治療する:誤り。生命の危険が切迫し同意を得られない場合は、緊急避難的に必要な医療を行うことが認められる。

【押さえておきたい関連知識】
説明すべき内容は、現在の病状、提案する検査・治療の目的と方法、期待される効果、起こりうる合併症とその頻度、代替となる選択肢、そして「何もしない場合の見通し」。この最後の項目が抜けやすい。
実践では、専門用語を避ける、図や資料を用いる、理解を確認しながら進める、質問しやすい雰囲気を作る、といった工夫が求められる。言語や聴覚に障壁がある場合は医療通訳や筆談などの情報保障を行う。
近年は、医療者が情報を、患者が価値観を持ち寄って共に決定する「共同意思決定(shared decision making)」の考え方が重視される。特に選択肢が複数あり優劣が明確でない場面で重要となる。

解剖・生理全90問中 8問を掲載

問1
手根管を通り、母指球筋を支配する神経はどれか。
  • 1筋皮神経
  • ✔正中神経
  • 3腋窩神経
  • 4橈骨神経
  • 5尺骨神経
解説:【正解の根拠】正中神経
正中神経は手根骨と屈筋支帯で囲まれた手根管の中を、9本の指屈筋腱とともに通過する。管内は伸縮しない閉鎖空間であるため、腱鞘の腫脹や浮腫があると容易に圧迫される。手掌へ出た後、母指球筋(短母指外転筋、短母指屈筋浅頭、母指対立筋)を支配し、母指〜環指橈側の掌側の感覚を担う。

【他の選択肢と麻痺の特徴】
・尺骨神経:肘部管や手関節尺側(Guyon管)で絞扼され、小指と環指尺側のしびれ、骨間筋の萎縮による「鷲手」を呈する。
・橈骨神経:上腕での圧迫(土曜の夜の麻痺)により手関節と手指の伸展ができない「下垂手」を呈する。
・筋皮神経:上腕二頭筋を支配し肘屈曲に関与。
・腋窩神経:三角筋を支配し肩の外転に関与。上腕骨外科頸骨折や肩関節脱臼で損傷しやすい。

【押さえておきたい関連知識】
手根管症候群の症状は、母指から環指橈側のしびれと痛みで、夜間・明け方に増悪し手を振ると軽快するのが特徴。進行すると母指球の萎縮と対立障害により、細かい作業やボタンかけが困難になる。
背景には手の酷使のほか、妊娠、透析(アミロイド沈着)、糖尿病、甲状腺機能低下症、関節リウマチ、末端肥大症がある。
診察ではPhalenテスト(手関節を屈曲位に保つ)と手根管部のTinel徴候が有用。確定には神経伝導検査を用いる。
治療は安静と装具、局所へのステロイド注射、原因疾患の治療。母指球の萎縮がある例や保存療法無効例では手根管開放術を行う。
なお、手掌の感覚を担う掌側枝は手根管の外を通るため、手根管症候群では手掌の感覚が保たれることがある点も特徴的である。
問2
左冠動脈前下行枝が主に灌流する領域はどれか。
  • 1洞結節
  • 2左室下壁
  • 3右室自由壁
  • ✔左室前壁と心室中隔前部
  • 5左房後壁
解説:【正解の根拠】左室前壁と心室中隔前部
左前下行枝は前室間溝を心尖部へ向かって走行し、左室前壁、心室中隔の前2/3、心尖部を灌流する。心筋の広い範囲を担うため、閉塞すると梗塞範囲が大きく予後が悪い(widow makerと呼ばれることがある)。

【他の選択肢と灌流領域】
・洞結節:約6割で右冠動脈から分岐(残りは左回旋枝)。
・左室下壁:右冠動脈(右優位型が約9割)。
・右室自由壁:右冠動脈。
・左房後壁:左回旋枝。

【押さえておきたい関連知識】
心電図での責任血管の推定は、部位と誘導の対応で行う。V1〜V4のST上昇は前壁中隔で左前下行枝、I・aVL・V5〜V6は側壁で左回旋枝、II・III・aVFは下壁で右冠動脈。広範な誘導のST低下+aVRのST上昇は左主幹部や重症三枝病変を示唆し、極めて重篤である。
下壁梗塞では2点に注意する。①房室結節枝も右冠動脈から分岐するため徐脈・房室ブロックを合併しやすい、②右室梗塞の合併を確認するためV4Rなど右側胸部誘導を追加する。右室梗塞では前負荷依存となり、硝酸薬やモルヒネで血圧が急落するため、輸液で前負荷を保つ。
冠血流の生理も重要で、左室心筋は収縮期に壁内圧が高まり血流が妨げられるため、左冠動脈の血流は主に拡張期に流れる。したがって頻脈は拡張期を短縮させ虚血を助長する。β遮断薬が狭心症に有効な理由の一つである。
問3
門脈に直接流入しない静脈はどれか。
  • 1下腸間膜静脈
  • 2左胃静脈
  • ✔腎静脈
  • 4上腸間膜静脈
  • 5脾静脈
解説:【正解の根拠】腎静脈
腎静脈は下大静脈へ直接注ぐ体循環系の静脈であり、門脈系ではない。

【他の選択肢(=門脈系)】
門脈は上腸間膜静脈と脾静脈の合流により形成され、下腸間膜静脈(多くは脾静脈へ合流)、左胃静脈(胃冠状静脈)、右胃静脈、胆囊静脈などが流入する。すなわち腹部消化管(下部直腸を除く)、脾、膵からの血液を集めて肝へ運ぶ。

【押さえておきたい関連知識】
門脈系の意義は、消化管で吸収された栄養素や薬物がまず肝を通ることにある。これが経口薬の初回通過効果の解剖学的基盤であり、また消化管由来の細菌や毒素を肝が処理する関門ともなる。逆に、大腸癌が肝転移をきたしやすいのも門脈を介するためである。
門脈圧亢進症では、門脈血が肝を迂回して体循環へ流れる短絡路(門脈大循環吻合)が発達する。代表は3つ。
①食道下部:左胃静脈と奇静脈系の吻合 → 食道胃静脈瘤(破裂すれば致死的出血)。
②臍周囲:臍傍静脈と腹壁静脈の吻合 → メデューサの頭。
③直腸:上直腸静脈(門脈系)と中・下直腸静脈(下大静脈系)の吻合 → 直腸静脈瘤。
このほか脾腫と脾機能亢進による血小板減少、腹水、肝性脳症をきたす。
原因は肝硬変が最多だが、肝前性(門脈血栓)、肝後性(Budd-Chiari症候群)もあり、部位により腹水や肝機能障害の有無が異なる。
問4
動眼神経麻痺でみられる所見はどれか。
  • 1眼球の外転障害
  • 2顔面の感覚障害
  • 3閉眼不能
  • 4舌の偏位
  • ✔眼球の内転障害と眼瞼下垂、散瞳
解説:【正解の根拠】眼球の内転障害と眼瞼下垂、散瞳
動眼神経(第III脳神経)は、①外側直筋と上斜筋を除くすべての外眼筋(内側直筋、上直筋、下直筋、下斜筋)、②上眼瞼挙筋、③副交感神経として瞳孔括約筋と毛様体筋を支配する。したがって麻痺すると、眼球は外転・下転位をとり(内転・上転・下転が障害)、眼瞼下垂を生じ、散瞳して対光反射が消失する。

【他の選択肢と担当神経】
・眼球の外転障害:外転神経(VI)。
・顔面の感覚障害:三叉神経(V)。
・閉眼不能:顔面神経(VII)。
・舌の偏位:舌下神経(XII)。障害側へ偏位する。

【押さえておきたい関連知識】
臨床上きわめて重要なのが「瞳孔が散大しているかどうか」である。副交感神経線維は神経の表層を走るため、外部からの圧迫(後交通動脈瘤、鉤ヘルニア、腫瘍)ではまず瞳孔が散大する。一方、糖尿病などによる虚血性の動眼神経麻痺では栄養血管が中心部を養うため、瞳孔が保たれることが多い(pupil-sparing)。
したがって「瞳孔散大を伴う急性の動眼神経麻痺」は脳動脈瘤の切迫破裂や脳ヘルニアを疑う緊急事態であり、直ちに画像評価を行う。
くも膜下出血では動眼神経麻痺が唯一の局所症状となることがあり、頭痛と眼瞼下垂の組合せは見逃せない。
また鉤ヘルニアの進行では、病側の瞳孔散大と対光反射消失、続いて意識障害と対側片麻痺が現れる。頭部外傷や脳出血の経過観察で瞳孔所見を繰り返し確認するのは、この変化を捉えるためである。
問5
腎臓において、糸球体で濾過されたブドウ糖の大部分が再吸収される部位はどれか。
  • 1遠位尿細管
  • 2集合管
  • ✔近位尿細管
  • 4Henle係蹄下行脚
  • 5Henle係蹄上行脚
解説:【正解の根拠】近位尿細管
濾過されたブドウ糖は、近位尿細管のSGLT2(主に前半部)とSGLT1により、ナトリウムとともにほぼ100%再吸収される。したがって健常者の尿には糖が出ない。アミノ酸、重炭酸イオン、リン、尿酸の大部分もここで再吸収される。

【他の選択肢】
・Henle係蹄:下行脚は水に、太い上行脚はNa-K-2Cl共輸送体によるイオンの再吸収に関与し、対向流増幅系により髄質の浸透圧勾配を作る。ループ利尿薬の作用部位。
・遠位尿細管:Na-Cl共輸送体。サイアザイド系利尿薬の作用部位。
・集合管:アルドステロンによるNa再吸収とK排泄、バソプレシンによるアクアポリンを介した水再吸収。最終的な微調整の場。

【押さえておきたい関連知識】
再吸収には上限(腎閾値)があり、血糖がおおむね170〜180mg/dLを超えると再吸収しきれず尿糖が出現する。したがって尿糖は血糖そのものではなく閾値との関係を示すにすぎず、糖尿病の診断基準に含まれない。腎性糖尿では閾値が低く血糖正常でも尿糖が出る。
この生理を治療に応用したのがSGLT2阻害薬で、再吸収を阻害して尿中へ糖を排泄させる。血糖低下に加え、体重減少、血圧低下、そして心不全と腎保護の効果が示されている。一方で尿路・性器感染症、脱水、正常血糖ケトアシドーシスに注意し、シックデイには休薬を指導する。
また近位尿細管の広範な再吸収障害がFanconi症候群で、汎アミノ酸尿、腎性糖尿、低リン血症、近位尿細管性アシドーシスをきたす。
問6
Frank-Starlingの法則の説明として正しいものはどれか。
  • 1心拍出量は静脈還流量と無関係である
  • 2心拍数が上がるほど1回拍出量は増える
  • 3後負荷が増すほど心収縮力は必ず増える
  • ✔心筋線維の初期長(前負荷)が増すと収縮力が増大する
  • 5交感神経刺激により心筋の弛緩が促進される
解説:【正解の根拠】心筋線維の初期長(前負荷)が増すと収縮力が増大する
静脈還流が増えて心室拡張末期容積が大きくなると、心筋のサルコメアが適度に伸展されてアクチンとミオシンの重なりが最適化され、収縮力と1回拍出量が増大する。神経やホルモンの支配を受けない「心臓自身に内在する調節機構」であり、左右心室の拍出量を自動的に一致させる役割ももつ。

【他の選択肢】
・心拍数が上がるほど1回拍出量は増える:誤り。頻脈では拡張期が短縮して充満が不十分となり、1回拍出量はむしろ減る。
・後負荷が増すほど心収縮力は必ず増える:誤り。後負荷の増大は1回拍出量を減らす方向に働く。
・交感神経刺激により心筋の弛緩が促進される:交感神経は弛緩も促進するが、この法則の説明ではない。
・心拍出量は静脈還流量と無関係:誤り。両者は密接に連動する。

【押さえておきたい関連知識】
この法則は圧容積曲線(Frank-Starling曲線)として、横軸に前負荷、縦軸に1回拍出量をとって表される。心不全ではこの曲線が右下方へ偏位し、同じ前負荷でも十分な拍出が得られず、うっ血だけが強まる。
臨床的な意味は大きい。輸液反応性の評価(前負荷を増やせば拍出量が増える状態か)、心不全での前負荷軽減(利尿薬、硝酸薬、坐位)、右室梗塞での輸液の必要性、いずれもこの概念に基づく。
心拍出量=1回拍出量×心拍数であり、1回拍出量は前負荷・後負荷・心収縮力の3つで規定される。ショックの分類と治療も、この3要素のどれが破綻しているかで整理できる。
なお過度に前負荷が増えると曲線は下降に転じるとされ、うっ血の悪化につながる点も理解しておきたい。
問7
アニオンギャップが開大する代謝性アシドーシスの原因はどれか。
  • 1尿細管性アシドーシス
  • 2生理食塩液の大量投与
  • ✔糖尿病ケトアシドーシス
  • 4嘔吐
  • 5下痢
解説:【正解の根拠】糖尿病ケトアシドーシス
アニオンギャップ(AG)=Na−(Cl+HCO3)で、通常は12±2程度。これは「測定されない陰イオン」の量を反映する。ケトン体という有機酸が蓄積すると、HCO3が消費される一方でClは増えないためAGが開大する。

【他の選択肢(=いずれもAG正常)】
・下痢:腸液に含まれる重炭酸が失われ、代償的にClが再吸収されるためAGは正常のまま(高Cl性代謝性アシドーシス)。
・尿細管性アシドーシス:重炭酸の再吸収障害または酸排泄障害による。同じくAG正常。
・生理食塩液の大量投与:Clが大量に負荷され希釈性にHCO3が低下する。
・嘔吐:胃酸(HCl)の喪失により、アシドーシスではなく「代謝性アルカローシス」となる。

【押さえておきたい関連知識】
AG開大の原因は語呂で整理する。乳酸アシドーシス(ショック、敗血症、ビグアナイド薬)、ケトアシドーシス(糖尿病、アルコール、飢餓)、腎不全(有機酸・リン酸の蓄積)、中毒(メタノール、エチレングリコール、サリチル酸)。
AG正常(高Cl性)の原因は、下痢、尿細管性アシドーシス、大量生理食塩液、アセタゾラミド、尿路変向術後。
このようにAGを計算するだけで鑑別が大きく絞られるため、代謝性アシドーシスをみたら必ず算出する。なお低アルブミン血症ではAGが見かけ上小さくなるため補正が必要である。
血液ガスの読み方の基本は、①pHでアシデミアかアルカレミアか、②PaCO2とHCO3のどちらが一次性変化か、③代償は予測範囲内か(範囲外なら混合性障害)、④代謝性アシドーシスならAGを計算、という手順である。
問8
交感神経β1受容体刺激による作用として正しいものはどれか。
  • 1膀胱排尿筋の収縮
  • 2瞳孔括約筋の収縮
  • 3気管支平滑筋の弛緩
  • ✔心拍数と心収縮力の増加
  • 5血管平滑筋の収縮
解説:【正解の根拠】心拍数と心収縮力の増加
β1受容体は主に心臓に分布し、刺激により心拍数増加(陽性変時作用)、心収縮力増強(陽性変力作用)、伝導速度の亢進をもたらす。加えて腎の傍糸球体細胞に分布し、レニン分泌を促進する。

【他の選択肢と受容体】
・気管支平滑筋の弛緩:β2受容体。血管平滑筋の弛緩、子宮平滑筋の弛緩、肝でのグリコーゲン分解も担う。
・血管平滑筋の収縮:α1受容体。ほかに瞳孔散大筋の収縮(散瞳)、膀胱括約筋の収縮、前立腺平滑筋の収縮。
・膀胱排尿筋の収縮、瞳孔括約筋の収縮:いずれもムスカリン受容体(副交感神経)。

【押さえておきたい関連知識】
受容体の分布を押さえると薬理が体系的に理解できる。
β1選択的遮断薬(ビソプロロールなど)は心臓に選択的に働くため喘息患者でも比較的使いやすいが、高用量では選択性が失われる。非選択的β遮断薬は気管支収縮を起こしうるため喘息では慎重を要し、また低血糖時の動悸・振戦をマスクする。
β2刺激薬(サルブタモール、サルメテロール)は喘息治療の中心だが、β1への交差作用で頻脈や振戦、低カリウム血症を生じる。子宮弛緩作用は切迫早産の治療にも用いられる。
α1遮断薬は降圧薬および前立腺肥大症の排尿障害治療薬で、起立性低血圧に注意する。
昇圧薬の使い分けもこの理解に基づく。ノルアドレナリンはα1優位で血管収縮(敗血症性ショックの第一選択)、ドブタミンはβ1優位で心収縮力増強(心拍出量低下時)、アドレナリンは両者に作用しアナフィラキシーや心停止で用いる。

生化学・薬理全73問中 8問を掲載

問1
解糖系について正しいものはどれか。
  • 1ミトコンドリア内膜で行われる
  • 2酸素が必須である
  • 31分子のグルコースから36分子のATPを直接産生する
  • 4最終産物は二酸化炭素と水である
  • ✔細胞質で行われ酸素がなくても進行する
解説:【正解の根拠】細胞質で行われ酸素がなくても進行する
解糖系は細胞質基質で進行し、酸素の有無にかかわらずグルコース1分子をピルビン酸2分子に分解して、正味2ATPと2NADHを生じる。酸素を必要としない点が最大の特徴で、これにより虚血下でも一時的にエネルギーを産生できる。

【他の選択肢】
・ミトコンドリア内膜で行われる:誤り。電子伝達系がミトコンドリア内膜、TCA回路がマトリックス、解糖系は細胞質。
・酸素が必須である:誤り。上記のとおり。
・36分子のATPを直接産生する:誤り。それは好気的条件で解糖系・TCA回路・電子伝達系をすべて経た場合の総量。解糖系単独では正味2ATP。
・最終産物は二酸化炭素と水:誤り。解糖系の産物はピルビン酸(嫌気的条件では乳酸)。

【押さえておきたい関連知識】
好気的条件ではピルビン酸がミトコンドリアへ入りアセチルCoAとなってTCA回路へ進むが、酸素が不足するとNADを再生するためにピルビン酸が乳酸へ還元される。これが乳酸アシドーシスの本体で、ショックや敗血症、重症低酸素で乳酸値が上がる理由である。したがって血中乳酸値は組織灌流の指標となる。
赤血球はミトコンドリアをもたないため完全に解糖系に依存する。網膜や腎髄質も解糖系への依存が高い。
ピルビン酸からアセチルCoAへの変換にはビタミンB1(チアミン)が補酵素として必要で、欠乏すると乳酸が蓄積する。慢性アルコール使用者でブドウ糖投与前にB1を補充するのは、この経路が回らずWernicke脳症を誘発するためである。
また、ビグアナイド薬による乳酸アシドーシス、悪性腫瘍における嫌気的解糖の亢進(Warburg効果)も関連知識として押さえたい。
問2
ビタミン欠乏症と症状の組合せで正しいものはどれか。
  • 1ビタミンC欠乏 ─ 夜盲症
  • 2ビタミンD欠乏 ─ 悪性貧血
  • 3ビタミンK欠乏 ─ くる病
  • 4ビタミンA欠乏 ─ 出血傾向
  • ✔ビタミンB1欠乏 ─ 脚気・Wernicke脳症
解説:【正解の根拠】ビタミンB1欠乏 ─ 脚気・Wernicke脳症
ビタミンB1(チアミン)は糖代謝の補酵素として必須で、欠乏すると心血管系の脚気(高拍出性心不全、浮腫、末梢神経障害)と、中枢神経のWernicke脳症(意識障害、眼球運動障害、失調)をきたす。

【他の選択肢(=正しい組合せは以下)】
・ビタミンA欠乏 ─ 夜盲症、眼球乾燥症、皮膚乾燥。過剰では頭蓋内圧亢進、催奇形性。
・ビタミンC欠乏 ─ 壊血病(コラーゲン合成障害による出血傾向、歯肉腫脹・出血、創傷治癒遅延)。
・ビタミンD欠乏 ─ くる病(小児)、骨軟化症(成人)。
・ビタミンK欠乏 ─ 出血傾向(新生児メレナ、頭蓋内出血)。凝固因子II、VII、IX、Xのγ-カルボキシル化に必要。
・ビタミンB12・葉酸欠乏 ─ 巨赤芽球性貧血。B12ではさらに神経症状。

【押さえておきたい関連知識】
脂溶性(A・D・E・K)は蓄積するため過剰症が問題となり、脂肪吸収障害(胆汁うっ滞、膵外分泌不全、短腸症候群)で欠乏しやすい。水溶性は過剰分が排泄され欠乏が起こりやすい。
臨床で遭遇しやすいのは、慢性アルコール使用者と長期の低栄養、胃切除後、偏った食事、透析患者、そして高カロリー輸液でビタミンを添加しなかった場合。特にB1欠乏はブドウ糖投与により顕在化するため、輸液開始前の補充が鉄則である。
Wernicke脳症は三徴が揃わないことも多く、疑ったら確定を待たずに投与する。放置すると不可逆的なKorsakoff症候群へ移行する。
また、リフィーディング症候群では低リン・低カリウム・低マグネシウム血症とともにB1消費が増える点も併せて理解したい。
問3
経口投与された薬物が体循環に到達する前に肝臓で代謝されることを指す現象はどれか。
  • 1腸肝循環
  • ✔初回通過効果
  • 3蛋白結合率の上昇
  • 4耐性
  • 5分布容積の増大
解説:【正解の根拠】初回通過効果
経口投与された薬物は消化管から吸収された後、門脈を経てまず肝臓を通過する。ここで代謝を受けるため、体循環に到達する量が投与量より減少する。この現象を初回通過効果といい、生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)を低下させる。

【他の選択肢】
・腸肝循環:胆汁中に排泄された薬物や胆汁酸が腸管で再吸収され肝へ戻る循環。薬物の作用持続を延長させる。
・分布容積の増大:組織移行性の指標であり、体内の薬物量を血中濃度で除した見かけ上の容積。
・蛋白結合率の上昇:遊離型が減り作用が弱まる要因。
・耐性:反復投与により効果が減弱する現象。

【押さえておきたい関連知識】
初回通過効果を回避する投与経路が重要で、①静脈内投与(100%)、②舌下・口腔粘膜(上大静脈系へ入る)、③直腸下部からの坐剤(下直腸静脈は下大静脈系)、④経皮吸収、⑤吸入。
ニトログリセリンが狭心症発作時に舌下投与されるのは、初回通過効果が非常に大きく経口では無効だからである。同様にブプレノルフィンの舌下錠、フェンタニルの貼付剤もこの原理に基づく。
逆に、初回通過効果を利用して設計されたのがプロドラッグで、肝で代謝されて初めて活性体となる。したがって重度の肝機能障害では効果が減弱しうる。
また、肝硬変で門脈大循環短絡が形成されると初回通過効果が減り、経口薬の血中濃度が予想外に高くなることがある。
CYPを阻害する薬剤やグレープフルーツジュース(小腸CYP3A4を阻害)も、この過程を妨げて血中濃度を上昇させる。
問4
ワルファリンについて正しいものはどれか。
  • 1薬物相互作用は少ない
  • 2効果判定にはAPTTを用いる
  • ✔ビタミンKを多く含む食品の摂取で作用が減弱する
  • 4作用発現は投与後直ちにみられる
  • 5妊娠中も安全に使用できる
解説:【正解の根拠】ビタミンKを多く含む食品の摂取で作用が減弱する
ワルファリンはビタミンKと拮抗して、肝でのビタミンK依存性凝固因子(第II、VII、IX、X因子およびプロテインC・S)の産生を抑制する。したがってビタミンKを多く摂ると作用が弱まる。特に納豆は腸内でビタミンKを産生する菌を含むため影響が大きく、クロレラや青汁とともに禁止される。緑黄色野菜は極端に避ける必要はなく、量を一定に保つことが指導の要点。

【他の選択肢】
・効果判定にはAPTTを用いる:誤り。PT-INRを用いる。ワルファリンが抑制する第VII因子は外因系に属し、半減期が短く最も早く低下するため、PTが鋭敏に反応する。
・作用発現は投与後直ちに:誤り。既存の凝固因子が消費されるまで数日かかる。
・妊娠中も安全:誤り。胎盤を通過し催奇形性(骨・軟骨形成異常、中枢神経障害)と胎児出血を起こすため禁忌。妊娠中はヘパリンに変更する。
・薬物相互作用は少ない:誤り。極めて多い。

【押さえておきたい関連知識】
投与開始初期に注意すべき現象がある。半減期の短いプロテインC(抗凝固因子)が先に低下するため、一過性に凝固に傾き、まれに皮膚壊死を起こすことがある。急性期にはヘパリンを併用する理由の一つでもある。
出血時の対応は、軽度なら休薬、中等度以上ならビタミンKの投与、重篤な出血では4因子含有プロトロンビン複合体製剤や新鮮凍結血漿で速やかに補正する。
DOACとの使い分けも重要で、非弁膜症性心房細動ではDOACが第一選択となったが、機械弁置換術後と中等度以上の僧帽弁狭窄症ではワルファリンが必須(DOACは禁忌)である。
問5
副腎皮質ステロイドの長期投与に伴う副作用として誤っているものはどれか。
  • 1耐糖能低下
  • ✔高カリウム血症
  • 3易感染性
  • 4骨粗鬆症
  • 5消化性潰瘍
解説:【正解の根拠】高カリウム血症(=誤り)
ステロイドはミネラルコルチコイド作用によりNaと水の再吸収を促し、Kの排泄を増やすため「低カリウム血症」をきたす。あわせて浮腫、体重増加、高血圧を生じる。

【他の選択肢(=実際の副作用)】
・易感染性:好中球の遊走・貪食の抑制、細胞性免疫の抑制による。日和見感染(ニューモシスチス肺炎、結核の再燃、真菌、B型肝炎の再活性化)に注意し、炎症所見がマスクされる点も重要。
・骨粗鬆症:骨形成抑制と骨吸収亢進、腸管Ca吸収低下による。骨密度の低下が軽度でも骨折しやすく、基準に従って早期から予防的治療を行う。
・消化性潰瘍:特にNSAID併用時にリスクが高まる。
・耐糖能低下:糖新生亢進とインスリン抵抗性増大によるステロイド糖尿病。朝1回投与では日中〜夕方の食後高血糖が目立つ。

【押さえておきたい関連知識】
その他の副作用として、中心性肥満と満月様顔貌、皮膚萎縮と紫斑、不眠・気分変動・ステロイド精神病、白内障と緑内障、大腿骨頭壊死、成長障害(小児)、月経異常、副腎皮質機能の抑制。
長期投与患者では視床下部下垂体副腎系が抑制されるため、①急な中止は副腎不全を招くので必ず漸減する、②手術・外傷・重症感染症などのストレス時にはステロイドカバーとして増量する、という2点が生命に関わる。患者にはカードの携帯とシックデイの対応を指導する。
対策としては、必要最小限の用量と期間、骨粗鬆症・感染症・消化性潰瘍・血糖・血圧・脂質・眼科的評価の定期的なモニタリングを組み合わせる。
問6
細胞壁合成を阻害する抗菌薬はどれか。
  • 1テトラサイクリン系
  • 2アミノグリコシド系
  • 3マクロライド系
  • 4キノロン系
  • ✔βラクタム系
解説:【正解の根拠】βラクタム系
ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、モノバクタム系を総称してβラクタム系という。細菌のペニシリン結合蛋白(PBP)に結合してペプチドグリカンの架橋形成を阻害し、細胞壁を破綻させて殺菌的に働く。ヒトの細胞には細胞壁がないため選択毒性が高く、安全性に優れる。

【他の選択肢と作用機序】
・アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系、クリンダマイシン、リネゾリド:いずれも細菌のリボソーム(30Sまたは50S)に結合して蛋白合成を阻害する。
・キノロン系:DNAジャイレース(トポイソメラーゼ)を阻害しDNA複製を妨げる。
なお、細胞壁合成阻害にはグリコペプチド系(バンコマイシン、テイコプラニン)もあり、こちらはPBPではなく基質のD-Ala-D-Alaに結合する点でβラクタムと作用点が異なる。

【押さえておきたい関連知識】
機序を理解すると臨床判断に直結する。マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラは細胞壁をもたないか細胞内寄生のため、βラクタム系は無効でマクロライド系やキノロン系、テトラサイクリン系を用いる。MRSAはPBP2'を獲得しているためすべてのβラクタム系が無効となる。
βラクタマーゼによる耐性には、酵素阻害薬(クラブラン酸、タゾバクタムなど)の配合で対抗する。ESBL産生菌にはカルバペネム系などを用いる。
効果の指標も薬剤群で異なり、βラクタム系は「時間依存性」で有効濃度を超える時間を長く保つことが重要(分割投与や点滴時間の延長)、アミノグリコシド系とキノロン系は「濃度依存性」で1回量を高くする設計となる。この違いは投与設計の根拠となる。
問7
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の主要な作用機序はどれか。
  • 1オピオイド受容体への作用
  • 2ロイコトリエン受容体の遮断
  • 3ナトリウムチャネルの遮断
  • ✔シクロオキシゲナーゼの阻害
  • 5ヒスタミンH1受容体の遮断
解説:【正解の根拠】シクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害
アラキドン酸からプロスタグランジンを産生するCOXを阻害することで、炎症、疼痛、発熱を抑える。プロスタグランジンは炎症部位で血管透過性を高め、痛覚神経を感作し、視床下部の体温設定点を上げるため、その産生を止めることが作用の本体である。

【他の選択肢と対応する薬剤】
・オピオイド受容体への作用:モルヒネなどの医療用麻薬。
・ヒスタミンH1受容体の遮断:抗ヒスタミン薬。
・ロイコトリエン受容体の遮断:モンテルカストなど、喘息やアレルギー性鼻炎の薬。
・ナトリウムチャネルの遮断:局所麻酔薬、一部の抗不整脈薬・抗てんかん薬。

【押さえておきたい関連知識】
副作用も同じ機序から導ける。COX-1由来のプロスタグランジンは胃粘膜の血流と粘液を保ち、腎血流を維持し、血小板凝集(トロンボキサンA2)に関与するため、これを阻害すると①消化性潰瘍・消化管出血、②腎血流低下による腎障害・浮腫・高血圧の悪化・高カリウム血症、③出血傾向が生じる。
特に注意が必要なのは、脱水、高齢者、慢性腎臓病、心不全、そしてRA系阻害薬・利尿薬との併用(いわゆる三重処方)で、腎障害のリスクが大きく高まる。
アスピリン喘息(NSAIDs過敏喘息)は、COX阻害によりロイコトリエン産生が亢進して生じる非アレルギー性の反応で、成人発症・鼻茸を伴う例に多く、原則すべての酸性NSAIDが禁忌となる。
アセトアミノフェンは中枢性に作用し抗炎症作用が弱い一方、消化管・腎への影響が少なく高齢者や小児で使いやすいが、過量では肝障害をきたす。
問8
肝性脳症の発症に関与する物質として最も重要なものはどれか。
  • 1クレアチニン
  • 2乳酸のみ
  • ✔アンモニア
  • 4ブドウ糖
  • 5尿酸
解説:【正解の根拠】アンモニア
腸内細菌が蛋白質を分解して生じたアンモニアは、通常は門脈を経て肝臓へ運ばれ、尿素回路により尿素に変換されて腎から排泄される。肝不全ではこの代謝が破綻し、また門脈大循環短絡により肝を迂回するため、血中アンモニアが上昇して中枢神経に作用する。

【他の選択肢】
・ブドウ糖:低血糖は意識障害の原因となるが、肝性脳症の本態ではない。
・尿酸:痛風の原因物質。
・クレアチニン:腎機能の指標。
・乳酸のみ:乳酸アシドーシスは組織低灌流を示すが、肝性脳症の主因ではない。

【押さえておきたい関連知識】
ただしアンモニア値と脳症の重症度は必ずしも一致せず、他の要因(芳香族アミノ酸/分岐鎖アミノ酸比の低下、GABA様物質、炎症性サイトカイン)も関与すると考えられている。したがって数値だけでなく臨床症状で判断する。
症状は、軽度の睡眠リズムの乱れや性格変化から始まり、見当識障害、羽ばたき振戦、傾眠、昏睡へ進む。羽ばたき振戦は特徴的だが昏睡期には消失する。
臨床でとりわけ重要なのが「誘因の検索」である。消化管出血(腸管内の血液が大量の蛋白負荷となる)、便秘、感染症(特発性細菌性腹膜炎)、脱水と電解質異常(低カリウム血症はアンモニア産生を増やす)、利尿薬、鎮静薬、蛋白の過剰摂取、門脈大循環短絡。脳症の治療は誘因の除去なしには成功しない。
治療は、合成二糖類(ラクツロース)による排便促進と腸内pH低下によるアンモニア吸収抑制、難吸収性抗菌薬(リファキシミン)、分岐鎖アミノ酸製剤。極端な蛋白制限はかえって栄養状態を悪化させるため現在は行わない。

病理・微生物全66問中 8問を掲載

問1
アポトーシスの特徴として正しいものはどれか。
  • 1周囲に強い炎症反応を引き起こす
  • ✔生理的な細胞死であり炎症を伴いにくい
  • 3常に病的な状態でのみ起こる
  • 4細胞内容物が周囲へ漏出する
  • 5細胞の膨化と細胞膜の破綻を伴う
解説:【正解の根拠】生理的な細胞死であり炎症を伴いにくい
アポトーシスは遺伝子に制御された「秩序ある細胞死」である。細胞は縮小し、クロマチンが凝縮し、細胞膜を保ったままアポトーシス小体に分断され、マクロファージに速やかに貪食される。内容物が周囲へ漏れないため炎症を引き起こさない。

【他の選択肢(=いずれもネクローシスの特徴)】
細胞の膨化と細胞膜の破綻、内容物の漏出、強い炎症反応。ネクローシスは虚血や物理化学的傷害による受動的・非制御性の細胞死である。また「常に病的な状態でのみ起こる」も誤りで、アポトーシスは発生過程の指の形成、自己反応性リンパ球の除去、細胞の入れ替わりなど生理的に不可欠な現象である。

【押さえておきたい関連知識】
アポトーシスの経路は2つ。外因性経路(FasリガンドやTNFなどのデスレセプターを介する)と内因性経路(ミトコンドリアからのシトクロムc放出による)で、いずれもカスパーゼの活性化に収束する。p53はDNA損傷時にアポトーシスを誘導する重要な因子であり、その変異が多くの癌で発癌に寄与する。
臨床との接点も多い。細胞傷害性T細胞やNK細胞は標的細胞にアポトーシスを誘導し、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を排除する。抗癌薬や放射線の効果もアポトーシス誘導による。逆に、アポトーシスが過剰なら神経変性疾患やAIDSでのCD4細胞減少、不足すれば癌や自己免疫疾患につながる。
壊死の様式も疾患と結びつく。心筋梗塞や腎梗塞は凝固壊死、脳梗塞は融解壊死、結核は乾酪壊死、急性膵炎は脂肪壊死。近年はネクロプトーシスなど制御されたネクローシス様の細胞死も知られている。
問2
良性腫瘍と比較した悪性腫瘍の特徴として正しいものはどれか。
  • 1周囲組織を圧排するのみである
  • 2増殖は緩徐で被膜に包まれることが多い
  • ✔浸潤性に増殖し転移をきたす
  • 4細胞異型は乏しい
  • 5再発することはない
解説:【正解の根拠】浸潤性に増殖し転移をきたす
良性と悪性を分ける決定的な違いは「浸潤」と「転移」である。悪性腫瘍は基底膜を破って周囲組織へ浸潤し、リンパ行性・血行性・播種性に遠隔へ広がる。

【他の選択肢(=良性腫瘍の特徴)】
・増殖は緩徐で被膜に包まれる、周囲組織を圧排するのみ:良性腫瘍は膨張性(圧排性)に発育し、被膜を有することが多く境界明瞭。
・細胞異型は乏しい:良性では細胞・構造異型が乏しく、正常組織との類似性(分化度)が高い。
・再発することはない:完全切除されれば再発しないのが良性だが、悪性では局所再発しうる。

【押さえておきたい関連知識】
ただし「良性=無害」ではない点が重要で、発生部位により致命的となる。頭蓋内の髄膜腫は良性でも脳を圧迫し、ホルモン産生腺腫は内分泌症状で全身に影響し、消化管の良性腫瘍も閉塞を起こす。
悪性度の評価は、組織学的異型度(Grade)、核分裂像数、脈管侵襲、そして進行度はTNM分類(T:原発巣の深達度・大きさ、N:所属リンパ節、M:遠隔転移)で表す。GradeとStageは別概念である点を混同しない。
上皮由来の悪性腫瘍を癌腫(carcinoma)、非上皮性を肉腫(sarcoma)といい、転移形式も癌腫はリンパ行性が主体、肉腫は血行性が主体という傾向がある。
また、基底膜を越えていない段階が上皮内癌で、転移せず完全切除により治癒が期待できる。検診の意義はこの段階での発見にある。悪性腫瘍は局所の影響だけでなく、悪液質や腫瘍随伴症候群として全身に影響を及ぼす。
問3
IV型(遅延型)アレルギーに分類されるものはどれか。
  • 1血清病
  • ✔ツベルクリン反応・接触皮膚炎
  • 3アレルギー性鼻炎
  • 4アナフィラキシーショック
  • 5ABO血液型不適合輸血による溶血
解説:【正解の根拠】ツベルクリン反応・接触皮膚炎
IV型は抗体ではなく「感作T細胞とマクロファージ」が主役の細胞性免疫反応で、抗原曝露から24〜48時間後に最大となるため遅延型と呼ばれる。ツベルクリン反応の判定を48時間後に行うのはこのためである。

【他の選択肢と分類】
・アナフィラキシーショック、アレルギー性鼻炎:I型(即時型)。IgEが肥満細胞・好塩基球に結合し、抗原架橋によりヒスタミンなどが遊離。気管支喘息、蕁麻疹、花粉症も含む。
・ABO血液型不適合輸血による溶血:II型(細胞傷害型)。細胞表面の抗原にIgG/IgMが結合し補体やADCCで細胞を破壊。自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、Goodpasture症候群、重症筋無力症(受容体を阻害するV型とすることも)。
・血清病:III型(免疫複合体型)。抗原抗体複合体が組織に沈着し補体を活性化。SLE、糸球体腎炎、過敏性肺炎の一部。

【押さえておきたい関連知識】
IV型に属する重要な病態は、接触皮膚炎(金属、ゴム、染毛剤、外用薬。パッチテストで診断)、ツベルクリン反応、移植拒絶反応、サルコイドーシスや結核の肉芽腫形成、薬剤性の重症薬疹、そして金属アレルギーや慢性GVHD。
分類を覚える意義は治療と検査の選択に直結する点にある。I型なら特異的IgEや皮膚プリックテスト、治療は抗ヒスタミン薬とアドレナリン。IV型ならパッチテストで、抗ヒスタミン薬は効かずステロイド外用と抗原回避が中心となる。
同じ「アレルギー」でも機序が異なれば時間経過も対応もまったく異なる、という点が最大の学習ポイントである。
問4
グラム陽性球菌に分類される細菌はどれか。
  • 1インフルエンザ菌
  • 2髄膜炎菌
  • 3大腸菌
  • ✔黄色ブドウ球菌
  • 5緑膿菌
解説:【正解の根拠】黄色ブドウ球菌
グラム陽性球菌はブドウ球菌属(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌)、レンサ球菌属(A群溶連菌、肺炎球菌、緑色レンサ球菌)、腸球菌属が代表。ブドウの房状に配列するのがブドウ球菌、連鎖状がレンサ球菌である。

【他の選択肢と分類】
・大腸菌、緑膿菌、インフルエンザ菌:グラム陰性桿菌。ほかにクレブシエラ、プロテウス、セラチア、レジオネラ、バクテロイデス(嫌気性)。
・髄膜炎菌:グラム陰性球菌。淋菌、モラクセラも同じ群。

【押さえておきたい関連知識】
グラム染色は数分でできて起因菌を推定できるため、初期抗菌薬の選択に直結する極めて実践的な検査である。喀痰、髄液、尿、膿、関節液などで活用する。
菌の形態と染色性から想起すべき代表を整理しておくとよい。喀痰でグラム陽性の双球菌なら肺炎球菌、ブドウ状の陽性球菌なら黄色ブドウ球菌、陰性桿菌ならインフルエンザ菌やクレブシエラ。髄液で陽性双球菌なら肺炎球菌、陰性双球菌なら髄膜炎菌。
グラム陽性菌は厚いペプチドグリカン層をもつため紫色に染まり、陰性菌は外膜をもち薄い層のため脱色されて赤色に染まる。この構造の違いが、陰性菌の外膜リポ多糖(内毒素)によるエンドトキシンショックや、抗菌薬の効きやすさの違いにもつながる。
なお抗酸菌はグラム染色では染まりにくく、Ziehl-Neelsen染色や蛍光染色を用いる。マイコプラズマは細胞壁がなく染色されない。
問5
粘膜面の局所免疫において中心的役割を果たす免疫グロブリンはどれか。
  • 1IgM
  • ✔IgA
  • 3IgD
  • 4IgE
  • 5IgG
解説:【正解の根拠】IgA
分泌型IgAとして唾液、涙液、鼻汁、気道分泌液、腸管粘液、初乳、尿路・生殖器の分泌液に存在し、粘膜表面で病原体の付着と侵入を阻止する。二量体に分泌成分が結合した構造をとり、消化酵素に対して安定である点が粘膜面で働くための工夫といえる。

【他の選択肢と特徴】
・IgG:血中に最も多く(約75%)、唯一「胎盤を通過」して新生児を守る。二次応答の主役で、補体活性化とオプソニン作用をもつ。
・IgM:五量体で分子量が最大。感染初期に最初に産生されるため、IgM陽性は急性感染を示す。補体活性化能が強い。
・IgE:肥満細胞・好塩基球に結合し、I型アレルギーと寄生虫感染に関与。血中濃度は最も低い。
・IgD:B細胞表面に存在するが機能はよく分かっていない。

【押さえておきたい関連知識】
臨床との接点が多い。母乳(特に初乳)に分泌型IgAが豊富なことは母乳栄養の利点の一つ。逆にIgAは胎盤を通過しないため、新生児の粘膜防御は母乳に依存する。
IgA欠損症は最も頻度の高い原発性免疫不全で、多くは無症状だが、気道・消化管感染の反復、自己免疫疾患、そして輸血や免疫グロブリン製剤によるアナフィラキシー(抗IgA抗体による)に注意する。
IgA腎症ではメサンギウム領域へのIgA沈着が診断の決め手となり、IgA血管炎(Henoch-Schönlein紫斑病)も同じくIgAが関与する。
また感染症診断では、IgMとIgGの推移を読むことが重要で、IgM陽性なら急性期、IgGのみ陽性なら既往感染またはワクチン後、ペア血清でのIgG上昇なら最近の感染を示す。
問6
創傷治癒の過程として正しい順序はどれか。
  • 1増殖期 → 成熟期 → 炎症期
  • 2増殖期 → 炎症期 → 成熟期
  • ✔炎症期 → 増殖期(肉芽形成) → 成熟期(瘢痕形成)
  • 4成熟期 → 炎症期 → 増殖期
  • 5炎症期 → 成熟期 → 増殖期
解説:【正解の根拠】炎症期 → 増殖期(肉芽形成) → 成熟期(瘢痕形成)
まず止血が起こり、続いて①炎症期(受傷直後〜数日:好中球とマクロファージが細菌や壊死組織を処理し、成長因子を放出)、②増殖期(数日〜数週:線維芽細胞の増殖とコラーゲン産生、血管新生による肉芽形成、辺縁からの上皮化)、③成熟期(数週〜1年以上:コラーゲンの再構築と架橋、血管の退縮、瘢痕の成熟)と進む。

【他の選択肢】
順序が入れ替わったものはいずれも誤り。「掃除してから作り直し、最後に整える」という自然な流れで理解すれば迷わない。

【押さえておきたい関連知識】
治癒を遅らせる因子を系統的に押さえることが臨床では重要である。全身因子として、低栄養(特に蛋白質、亜鉛、ビタミンC)、糖尿病、貧血、低酸素、ステロイドや免疫抑制薬、抗癌薬、放射線照射、高齢、喫煙。局所因子として、感染、異物や壊死組織の残存、血流障害、乾燥、そして持続する圧迫やずれ。
したがって創傷管理の基本は、①壊死組織と異物の除去(デブリドマン)、②感染の制御、③適度な湿潤環境の維持(湿潤環境は上皮化を促進する)、④除圧とずれの回避、⑤全身の栄養管理となる。
治癒形式には、清潔な創を縫合して治す一次治癒と、開放創が肉芽と収縮、上皮化により治る二次治癒がある。感染リスクの高い創(動物咬傷、受傷から時間が経過した創、高度汚染創)では一次縫合を避ける。
過剰なコラーゲン産生は肥厚性瘢痕やケロイドを生じ、瘢痕拘縮は機能障害の原因となる。
問7
乾酪壊死を伴う肉芽腫を形成する代表的疾患はどれか。
  • 1サルコイドーシス
  • ✔結核
  • 3急性虫垂炎
  • 4心筋梗塞
  • 5脂肪肝
解説:【正解の根拠】結核
結核菌は細胞内寄生菌であり、マクロファージに貪食されても生存する。そこで細胞性免疫により類上皮細胞とLanghans巨細胞が集まって菌を封じ込める肉芽腫を形成するが、その中心部が乾酪(チーズ様)壊死に陥るのが特徴である。

【他の選択肢】
・サルコイドーシス:同じく肉芽腫を形成するが「非乾酪性」である点が決定的な違い。この一点で鑑別される。
・急性虫垂炎:好中球主体の急性化膿性炎症。
・心筋梗塞:凝固壊死。
・脂肪肝:壊死ではなく脂肪変性。

【押さえておきたい関連知識】
壊死の様式と疾患の対応を整理しておきたい。凝固壊死は心筋梗塞・腎梗塞・脾梗塞(組織の輪郭が保たれる)、融解壊死は脳梗塞と化膿性炎症(酵素により組織が液状化する)、乾酪壊死は結核、脂肪壊死は急性膵炎(膵酵素による)と外傷性脂肪壊死、フィブリノイド壊死は血管炎や悪性高血圧、壊疽は虚血に感染や乾燥が加わったもの。
肉芽腫を形成する疾患も併せて押さえる。乾酪性は結核と一部の真菌症、非乾酪性はサルコイドーシス、Crohn病、原発性胆汁性胆管炎、多発血管炎性肉芽腫症、異物肉芽腫、猫ひっかき病。
結核の病理では、初感染巣(Ghon病巣)と所属リンパ節を合わせた初期変化群、そして再燃時に好発する肺尖部の空洞形成が重要である。乾酪壊死物質が気管支へ排出されると空洞となり、多量の菌を含む喀痰が排出されて感染源となる。
診断には抗酸菌染色(Ziehl-Neelsen染色)と培養、核酸増幅検査を用いる。
問8
化生(metaplasia)の説明として正しいものはどれか。
  • 1細胞数が増加すること
  • ✔分化した細胞が別の分化型の細胞に置き換わること
  • 3細胞が萎縮すること
  • 4悪性化して浸潤すること
  • 5細胞の大きさが増して臓器が大きくなること
解説:【正解の根拠】分化した細胞が別の分化型の細胞に置き換わること
化生は、慢性的な刺激に対する適応として、ある成熟した細胞が別系統の成熟細胞へ置き換わる可逆的な変化である。より過酷な環境に耐えられる細胞へ「作り替える」ことで組織を守る反応といえる。

【他の選択肢と用語の整理】
・細胞の大きさが増して臓器が大きくなる:肥大(hypertrophy)。心肥大、骨格筋の増強。
・細胞数が増加する:過形成(hyperplasia)。前立腺肥大症、甲状腺腫。
・細胞が萎縮する:萎縮(atrophy)。廃用性、加齢性、内分泌性。
・悪性化して浸潤する:癌の性質であり、化生とは別。

【押さえておきたい関連知識】
代表的な化生を押さえる。①喫煙による気管支の線毛円柱上皮から扁平上皮への化生(線毛が失われ痰を排出できなくなる)、②胃食道逆流によるBarrett食道(食道の扁平上皮が円柱上皮へ)、③慢性胃炎における腸上皮化生(胃粘膜が腸型の上皮へ)、④慢性膀胱炎や結石による膀胱の扁平上皮化生。
臨床的な重要性は、化生自体は良性で可逆的だが、刺激が持続すると「異形成(dysplasia)」へ進み、さらに上皮内癌、浸潤癌へと段階的に進展しうる点にある。Barrett食道は腺癌の、腸上皮化生は胃癌のリスク因子とされ、内視鏡でのサーベイランス対象となる。
異形成は細胞の大きさや形、核の不整、配列の乱れを伴う前癌病変で、化生とは区別される。子宮頸部のCIN(頸部上皮内腫瘍)がその代表で、HPV感染を背景に段階的に進展する。
このように「適応 → 異形成 → 癌」という連続性を理解することが、検診と早期発見の意義につながる。