分野別問題(解説つき)

司法試験|分野別 問題インデックス

最終更新:2026年8月11日

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憲法全160問中 8問を掲載

問1
日本国憲法の改正手続に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 1改正の発議は、各議院の出席議員の3分の2以上の賛成で行われる。
  • ✔改正の発議は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で行われる。
  • 3改正の発議は、衆議院の総議員の過半数の賛成のみで足りる。
  • 4改正の承認には、国民投票において有権者総数の過半数の賛成が必要である。
  • 5改正が承認されたときは、内閣総理大臣が国民の名で直ちに公布する。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
憲法96条1項は、改正の発議要件を「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」と定める(出席議員ではない点に注意)。よって1は誤り、2が正しい。3は両議院の議決が必要である点で誤り。4の国民投票の承認要件は「その過半数の賛成」であり、投票総数(有効投票数)を基準とするのが通説・国民投票法の立場で、有権者総数ではないため誤り。5は96条2項が公布権者を天皇と定めるため誤り。
★ポイント:憲法改正(96条):各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議→国民投票で過半数の賛成→天皇が国民の名で公布。「総議員」「その過半数(有効投票の過半数)」「公布は天皇」がひっかけの定番。
問2
違憲審査権に関する次の記述のうち、判例の立場として正しいものはどれか。
  • 1最高裁判所は、具体的事件を離れて抽象的に法令の合憲性を審査する権限を有する。
  • 2違憲審査権は最高裁判所のみが有し、下級裁判所はこれを行使できない。
  • ✔裁判所は、具体的な争訟事件の裁判に必要な限度で法令等の合憲性を判断する。
  • 4違憲判決が下された法令は、その時点で当然に廃止される。
  • 5条約は一切違憲審査の対象とならないとするのが確立した判例である。
解説:【正解】肢3(他の4肢はどこかに誤りを含む)
警察予備隊違憲訴訟(最大判昭27.10.8)は、我が国の違憲審査制は具体的事件を前提とする付随的審査制であり、抽象的審査は認められないとした。よって1は誤りで3が正しい。2について、81条は最高裁を「終審裁判所」と定めるにとどまり、下級裁判所も違憲審査権を有する(最大判昭25.2.1)。4は個別的効力説(通説)により誤り。5は砂川事件(最大判昭34.12.16)が統治行為論的判断を示しつつも一見極めて明白に違憲無効と認められる場合の審査可能性を留保しており、一切対象外とはしていないため誤り。
★ポイント:違憲審査制は付随的審査制(警察予備隊事件・最大判昭27.10.8)。下級裁判所も違憲審査権を持つ。違憲判決の効力は個別的効力説が通説。統治行為論(苫米地事件)・条約の審査(砂川事件:一見極めて明白に違憲無効でない限り審査外)とセットで整理。
問3
憲法21条2項前段の「検閲」に関する判例(税関検査事件)の理解として、正しいものはどれか。
  • 1検閲の主体は国または地方公共団体のあらゆる機関を広く含む。
  • ✔検閲とは、行政権が主体となり、思想内容等の表現物を対象として、その全部または一部の発表の禁止を目的とし、対象とされる表現物を網羅的一般的に発表前に審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することをいう。
  • 3検閲の禁止は公共の福祉による例外を認める相対的禁止である。
  • 4裁判所による事前差止めは常に検閲に該当する。
  • 5税関検査は発表前の審査に当たるため検閲に該当するとされた。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
税関検査事件(最大判昭59.12.12)は、検閲を「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止すること」と厳格に定義した。よって2が正しい。同判決は検閲の禁止を絶対的禁止と解するため3は誤り。1は主体を行政権に限定する点で誤り。4は北方ジャーナル事件(最大判昭61.6.11)が裁判所による差止めは検閲に当たらないとしたため誤り。5は輸入禁止の対象物が国外で既に発表済みであること等から検閲に当たらないとされたため誤り。
★ポイント:21条2項の検閲=行政権が主体、思想内容等の表現物を対象に、発表前に網羅的一般的に審査し発表を禁止すること(税関検査事件・絶対的禁止)。事前抑制は北方ジャーナル事件(厳格かつ明確な要件下でのみ許容)。明確性の理論は徳島市公安条例事件。
問4
憲法25条に関する判例の立場として、誤っているものはどれか。
  • 125条1項にいう「健康で文化的な最低限度の生活」は抽象的相対的概念である。
  • 2何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は厚生労働大臣の合目的的な裁量に委ねられる。
  • 3現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定するなど、憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し裁量権の限界を超えた場合には司法審査の対象となる。
  • ✔25条は個々の国民に対し具体的権利を直接付与したものであり、同条を直接の根拠として給付を請求できる。
  • 5社会保障立法において受給者の範囲や支給要件を定めるにつき、立法府には広い裁量が認められる。
解説:【正解】肢4(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
朝日訴訟(最大判昭42.5.24)は、25条1項は国の責務を宣言したにとどまり、直接個々の国民に具体的権利を賦与したものではなく、具体的権利は生活保護法によって初めて与えられるとした。したがって4が誤りであり、これが正解。1・2・3は同判決の判示に沿う。5は堀木訴訟(最大判昭57.7.7)が立法府の広い裁量を認め、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ない場合を除き司法審査の対象とならないとした点に沿う。
★ポイント:25条:朝日訴訟・堀木訴訟——健康で文化的な最低限度の生活の具体的内容は厚生大臣(立法府)の広い裁量に委ねられ、著しく合理性を欠く場合のみ司法審査が及ぶ(プログラム規定的運用)。
問5
憲法14条1項に関する次の記述のうち、判例に照らして正しいものはどれか。
  • 114条1項後段列挙事由は限定列挙であり、これ以外の事由による区別は同項の問題とならない。
  • 2尊属殺重罰規定について、最高裁は尊属に対する加重処罰それ自体が直ちに違憲であるとした。
  • ✔非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定は、遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたとされた。
  • 4国籍法が父母の婚姻を国籍取得の要件とした部分について、最高裁は合憲と判断した。
  • 514条1項は形式的平等のみを保障し、事実上の差異に応じた合理的な区別も許されない。
解説:【正解】肢3(他の4肢はどこかに誤りを含む)
非嫡出子相続分差別事件(最大決平25.9.4)は、遅くとも平成13年7月当時において民法900条4号ただし書前段の区別は合理的根拠を失っており憲法14条1項に違反していたとした。よって3が正しい。1は後段列挙事由を例示列挙とするのが判例・通説であるため誤り。2の尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭48.4.4)は、加重すること自体は不合理でないが法定刑が死刑・無期懲役に限られる点が著しく不合理として違憲としたため誤り。4は国籍法違憲判決(最大判平20.6.4)が違憲としたため誤り。5は合理的区別が許されるため誤り。
★ポイント:14条:合理的区別は許容。尊属殺重罰規定違憲(最大判昭48・手段の過度)、非嫡出子相続分違憲(最大決平25)、国籍法違憲(最大判平20)、再婚禁止期間100日超部分違憲(最大判平27)、夫婦同氏合憲——違憲判決の理由づけの違いを整理。
問6
職業選択の自由(憲法22条1項)に関する判例の理解として、正しいものはどれか。
  • 1小売市場距離制限事件で、最高裁は積極的・政策的規制に厳格な審査基準を用いて違憲とした。
  • ✔薬事法距離制限事件で、最高裁は薬局の適正配置規制を主として国民の生命・健康に対する危険防止という消極的・警察的目的の規制と捉え、違憲と判断した。
  • 3職業選択の自由には営業の自由は含まれないとするのが判例である。
  • 4許可制は職業の自由に対する強力な制限ではないため、緩やかな審査で足りる。
  • 5公衆浴場の距離制限は、いかなる目的からも正当化されず違憲とされた。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
薬事法距離制限事件(最大判昭50.4.30)は、当該規制を不良医薬品供給の防止という消極的・警察的目的の規制と位置づけ、目的達成のためにより緩やかな規制手段では不十分であることが立証されていないとして違憲とした。よって2が正しい。1の小売市場事件(最大判昭47.11.22)は積極目的規制につき明白性の原則を用いて合憲としたため誤り。3は営業の自由も22条1項の保障に含まれるとされるため誤り。4は許可制が強力な制限であり厳格な合理性が要求されるとされたため誤り。5の公衆浴場距離制限は合憲とされている(最判平元.1.20等)ため誤り。
★ポイント:22条:規制目的二分論——消極目的規制は厳格な合理性(薬事法距離制限・違憲)、積極目的規制は明白性の原則(小売市場・合憲)。ただし酒類販売免許制など二分論に乗らない判例もある。29条:森林法共有分割制限違憲、証券取引法インサイダー規制合憲。
問7
国会および内閣に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • ✔内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名され、天皇が任命する。
  • 2国務大臣の過半数は、衆議院議員の中から選ばれなければならない。
  • 3衆議院で内閣不信任決議案が可決された場合、内閣は必ず総辞職しなければならない。
  • 4参議院は内閣不信任決議を行うことができ、これには法的拘束力がある。
  • 5内閣総理大臣は、国務大臣を任命できるが、罷免するには閣議の決定を要する。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
憲法67条1項・6条1項により、内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名され、天皇が任命する。よって1が正しい。2は68条1項ただし書が「国会議員」の中から過半数を選ぶことを要求しており衆議院議員に限られないため誤り。3は69条により、10日以内に衆議院が解散されない限り総辞職するのであって、解散という選択肢があるため誤り。4は参議院の問責決議に法的拘束力はないため誤り。5は68条2項が総理大臣の任意の罷免権を定めており閣議決定は不要なため誤り。
★ポイント:41条「唯一の立法機関」=国会中心立法・国会単独立法の原則。議院自律権・国政調査権(62条:司法権独立との関係で係属中事件の裁判批判目的は不可)。免責特権(51条)は議員のみ・国務大臣としての発言は対象外。
問8
憲法の財政に関する規定について、誤っているものはどれか。
  • 1あらたに租税を課し、または現行の租税を変更するには、法律または法律の定める条件によることを必要とする。
  • 2国費を支出し、または国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。
  • 3予備費の支出については、内閣は事後に国会の承諾を得なければならない。
  • 4公金は、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益もしくは維持のために支出してはならない。
  • ✔内閣は、毎会計年度の決算を国会に提出する必要はなく、会計検査院の検査を受ければ足りる。
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
憲法90条1項は、国の収入支出の決算はすべて毎年会計検査院が検査し、内閣は次の年度に検査報告とともにこれを国会に提出しなければならないと定める。したがって5が誤りであり、これが正解。1は84条(租税法律主義)、2は85条、3は87条2項、4は89条前段の内容としてそれぞれ正しい。
★ポイント:財政:租税法律主義(84条・旭川市国民健康保険条例事件=保険料にも趣旨が及ぶ)、予算の法的性格、89条公金支出禁止(私学助成は「公の支配」に属するとして合憲運用)。

民法全240問中 8問を掲載

問1
心裡留保に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 1表意者が真意でないことを知ってした意思表示は、常に無効である。
  • ✔表意者が真意でないことを知ってした意思表示も原則として有効であるが、相手方がその意思表示が表意者の真意でないことを知り、または知ることができたときは無効となる。
  • 3心裡留保による無効は、善意の第三者にも対抗することができる。
  • 4心裡留保は相手方のある意思表示にのみ問題となり、相手方が悪意でも常に有効である。
  • 5心裡留保の効果は取消しであり、追認により有効となる。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
民法93条1項は、意思表示は表意者が真意でないことを知ってしたときであってもそのためにその効力を妨げられないとしつつ、ただし相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、または知ることができたときは無効とする。よって2が正しく、1・4・5は誤り。3は93条2項が心裡留保による無効を善意の第三者に対抗できないと定めるため誤り。
★ポイント:94条2項類推適用(通謀がなくても虚偽の外観+本人の帰責性+第三者の信頼):外観作出に本人が積極関与なら善意で足り、放置型・意思外の外観なら110条併用で善意無過失を要求(最判平18.2.23)。
問2
錯誤に関する次の記述のうち、現行民法(平成29年改正後)の下で正しいものはどれか。
  • 1錯誤による意思表示は無効であり、誰でもその無効を主張できる。
  • ✔錯誤による意思表示は取り消すことができるが、その錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであることを要する。
  • 3動機の錯誤は、動機が表示されていたか否かにかかわらず一切考慮されない。
  • 4表意者に重大な過失があった場合でも、常に取消しを主張できる。
  • 5錯誤による取消しは、悪意の第三者に対しても対抗できない。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
平成29年改正民法95条1項は、錯誤の効果を無効から取消しに改めた上で、錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであることを要件とする。よって2が正しく、1は誤り。3は95条2項が、表意者が法律行為の基礎とした事情についての認識が真実に反する錯誤(いわゆる動機の錯誤)につき、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り取消し可能とするため誤り。4は95条3項が重過失ある表意者の取消しを原則として制限するため誤り。5は95条4項が善意でかつ過失がない第三者に対抗できないと定めるにとどまり、悪意の第三者には対抗できるため誤り。
★ポイント:錯誤(95条):取消し構成(2020年改正)。基礎事情の錯誤は「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたとき」に限り取消可。重過失ある表意者は原則取消不可(相手方悪意重過失・共通錯誤の例外)。第三者保護は善意無過失。
問3
表見代理に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1代理権授与の表示による表見代理が成立するには、相手方が善意無過失であることを要する。
  • 2権限外の行為の表見代理が成立するには、代理人に何らかの基本代理権が存在することを要する。
  • 3代理権消滅後の表見代理は、相手方が代理権の消滅の事実を知らず、かつ知らないことに過失がない場合に成立する。
  • 4権限外の行為の表見代理における「正当な理由」とは、相手方が代理権の存在を信じたことにつき善意無過失であることをいう。
  • ✔無権代理人の責任(民法117条)と表見代理は択一的な関係にあり、表見代理が成立し得る場合、相手方は無権代理人の責任を追及することができない。
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
判例(最判昭62.7.7)は、表見代理が成立する場合であっても、相手方は表見代理を主張せずに無権代理人の責任を追及することができるとしており、両者は選択的な関係にある。したがって5が誤りであり、これが正解。1は109条1項ただし書、2は110条の解釈、3は112条1項、4は110条の「正当な理由」の判例上の理解として、それぞれ正しい。
★ポイント:無権代理と相続:本人が無権代理人を相続→追認拒絶可(資格併存)、無権代理人が本人を単独相続→当然有効(信義則)、共同相続→追認は共同相続人全員で。109条・110条・112条の表見代理の重畳適用も頻出。
問4
消滅時効に関する次の記述のうち、現行民法の下で正しいものはどれか。
  • 1債権は、権利を行使することができる時から一律に10年で時効消滅する。
  • ✔債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、または権利を行使することができる時から10年間行使しないときに時効消滅する。
  • 3人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の客観的起算点からの時効期間は10年である。
  • 4時効の利益は、時効完成前にあらかじめ放棄することができる。
  • 5裁判上の請求があっても、時効の完成猶予の効果は生じない。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
民法166条1項は、主観的起算点から5年、客観的起算点から10年という二重の時効期間を定める。よって2が正しく、1は誤り。3は167条が人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権につき客観的起算点からの期間を20年とするため誤り。4は146条が時効の利益をあらかじめ放棄できないと定めるため誤り。5は147条1項が裁判上の請求を完成猶予事由と定めるため誤り。
★ポイント:時効:完成猶予(裁判上の請求・催告6か月・協議の合意)と更新(確定判決・承認)の2元構成(2020年改正)。取得時効と登記:時効完成前の第三者には登記不要、完成後の第三者には登記必要(177条)、再度の時効取得も可。
問5
民法177条の「第三者」に関する判例の理解として、正しいものはどれか。
  • 1不動産の不法占拠者は、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たる。
  • ✔実質的無権利者は177条の第三者に当たらない。
  • 3単なる悪意者は、常に177条の第三者から除外される。
  • 4背信的悪意者も、悪意にとどまる限り177条の第三者として保護される。
  • 5不動産の二重譲渡において、先に契約をした者は登記なくして後の譲受人に対抗できる。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
判例は177条の「第三者」を、当事者およびその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者と解する(大連判明41.12.15)。実質的無権利者やその承継人は正当な利益を欠き第三者に当たらない。よって2が正しい。1の不法占拠者も第三者に当たらないため誤り。3は自由競争の範囲内にある単なる悪意者は第三者に含まれるとされるため誤り。4は背信的悪意者は信義則上177条の第三者から排除されるため誤り。5は対抗要件主義に反するため誤り。
★ポイント:177条の第三者=当事者・包括承継人以外で登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者。背信的悪意者排除。取消後・解除後・時効完成後の第三者=対抗問題(177条)、取消前=94条2項類推や96条3項で処理する構造の整理が最重要。
問6
即時取得(民法192条)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1即時取得の対象は動産に限られ、登記・登録により公示される自動車等は対象とならない場合がある。
  • 2取得者は、平穏かつ公然、善意無過失で動産の占有を始めたことを要する。
  • ✔占有取得の態様として、占有改定による取得でも即時取得は成立するとするのが判例である。
  • 4盗品または遺失物については、被害者または遺失者は盗難または遺失の時から2年間、占有者に対しその物の回復を請求することができる。
  • 5取引行為によって占有を取得したことが必要であり、相続による占有取得では即時取得は成立しない。
解説:【正解】肢3(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
判例(最判昭35.2.11)は、占有改定による占有取得では即時取得は成立しないとする。したがって3が誤りであり、これが正解。1は道路運送車両法により登録された自動車について即時取得の適用が否定される(最判昭62.4.24)。2は192条の要件、4は193条、5は取引行為の存在という192条の要件として、それぞれ正しい。
★ポイント:即時取得(192条):動産・有効な取引行為・占有開始(占有改定では不可=判例)・平穏公然善意無過失(占有者の無過失は188条で推定)。盗品遺失物は2年間回復請求可(193条)、代価弁償(194条)。
問7
抵当権の物上代位に関する次の記述のうち、判例に照らして正しいものはどれか。
  • 1抵当権者は、目的物の賃料債権に対して物上代位権を行使することはできない。
  • ✔抵当権者が物上代位権を行使するには、払渡しまたは引渡しの前に差押えをしなければならない。
  • 3抵当権設定登記後に賃料債権が譲渡され第三者に対抗要件が備えられた場合、抵当権者はもはや物上代位できない。
  • 4物上代位の目的債権が一般債権者により差し押さえられた場合、先に差押えをした一般債権者が常に優先する。
  • 5抵当権に基づく物上代位は、目的物が滅失した場合の損害保険金請求権には及ばない。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
民法304条1項ただし書(372条により抵当権に準用)は、払渡しまたは引渡しの前に差押えをしなければならないと定める。よって2が正しい。1は判例(最判平元.10.27)が賃料債権への物上代位を認めるため誤り。3は最判平10.1.30が、抵当権設定登記により公示が備わっている以上、債権譲渡後も抵当権者は差押えにより物上代位できるとしたため誤り。4は最判平10.3.26が抵当権設定登記と一般債権者の差押命令送達の先後で優劣を決するとしたため誤り。5は損害保険金請求権が代位物の典型例であるため誤り。
★ポイント:法定地上権(388条)の4要件:設定時に建物存在・土地建物同一所有者・一方または双方に抵当権・競売で所有者分離。更地に抵当権設定後の建物には不成立。全体価値考慮説(共同抵当の建物再築・最判平9.2.14)も頻出。
問8
債権譲渡に関する次の記述のうち、現行民法の下で正しいものはどれか。
  • 1譲渡制限の意思表示がされた債権の譲渡は無効である。
  • ✔譲渡制限の意思表示がされた場合でも債権譲渡の効力は妨げられないが、悪意または重過失の譲受人に対しては債務者は履行を拒むことができる。
  • 3債権譲渡の債務者に対する対抗要件は、確定日付のある証書による通知または承諾に限られる。
  • 4将来発生する債権を譲渡することはできない。
  • 5債権譲渡の第三者に対する対抗要件は、単なる通知または承諾で足りる。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
民法466条2項は譲渡制限の意思表示がされても債権譲渡の効力は妨げられないとし、同条3項は悪意または重過失の譲受人等に対して債務者が履行を拒み、譲渡人への弁済等をもって対抗できるとする。よって2が正しく1は誤り。3は467条1項が債務者対抗要件を単なる通知または承諾とするため誤り(確定日付は第三者対抗要件)。4は466条の6第1項が将来債権の譲渡を認めるため誤り。5は467条2項により第三者対抗要件は確定日付のある証書を要するため誤り。
★ポイント:債権譲渡:対抗要件=通知または承諾(467条1項)、第三者対抗要件=確定日付(2項)、優劣は通知到達の先後。譲渡制限特約付き債権の譲渡も有効(466条2項・2020年改正)だが悪意重過失の譲受人には履行拒絶可。将来債権譲渡も有効。

刑法全200問中 8問を掲載

問1
罪刑法定主義に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1実行の時に適法であった行為について、事後に制定された法律により処罰することは許されない。
  • 2刑罰法規の内容が不明確である場合、憲法31条に違反し無効となりうる。
  • 3被告人に不利益な方向での類推解釈は許されない。
  • ✔刑罰法規について、被告人に有利な方向での類推解釈も一切許されない。
  • 5何が犯罪となり、いかなる刑罰が科されるかは、あらかじめ法律により定められていなければならない。
解説:【正解】肢4(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
罪刑法定主義が禁じるのは被告人に不利益な類推解釈であり、被告人に有利な類推解釈は一般に許容される。したがって4が誤りであり、これが正解。1は憲法39条前段(事後法の禁止)、2は徳島市公安条例事件(最大判昭50.9.10)が示した明確性の原則、3・5は罪刑法定主義の帰結としてそれぞれ正しい。
★ポイント:罪刑法定主義:法律主義・遡及処罰の禁止(39条憲法)・類推解釈の禁止(被告人に不利な類推のみ禁止・拡張解釈は許容)・明確性の原則。判例変更による処罰は遡及処罰に当たらない(最判平8)。
問2
刑法上の因果関係に関する次の記述のうち、判例の傾向として最も適切なものはどれか。
  • 1条件関係さえ認められれば、常に因果関係が肯定される。
  • ✔判例は、行為の危険性が結果へと現実化したといえるかという観点から因果関係を判断する傾向にある。
  • 3被害者の特異体質が結果発生に寄与した場合、常に因果関係は否定される。
  • 4第三者の行為が介在した場合、因果関係は例外なく否定される。
  • 5被害者自身の異常な行動が介在した場合、常に因果関係は否定される。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
近時の判例(大阪南港事件・最決平2.11.20、高速道路進入事件・最決平15.7.16等)は、実行行為の危険性が結果に現実化したかという「危険の現実化」の観点から因果関係を判断する傾向にある。よって2が最も適切。1は条件関係は必要条件にすぎず不十分であるため誤り。3は被害者の特異体質があっても因果関係が肯定された例(最判昭46.6.17等)があるため誤り。4・5は介在事情があっても行為の危険が現実化したと評価できれば因果関係が肯定されるため、「例外なく」「常に」とする点で誤り。
★ポイント:因果関係:判例は危険の現実化説へ(大阪南港事件=第三者の暴行介在でも当初の暴行の危険が現実化・夜間潜水事件・高速道路進入事件)。行為時の特殊事情(病変)は判例上基礎に含める(布団蒸し事件)。
問3
正当防衛(刑法36条1項)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 1「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しまたは間近に押し迫っていることをいい、侵害を予期していた場合には常に急迫性が失われる。
  • 2自ら侵害を招いた場合であっても、正当防衛の成立が制限されることはない。
  • ✔防衛行為が防衛の程度を超えたときは過剰防衛となり、情状により刑を減軽または免除することができる。
  • 4正当防衛は、自己の権利を防衛する場合に限り成立する。
  • 5急迫不正の侵害に対する反撃行為は、いかなる程度に及んでも違法性が阻却される。
解説:【正解】肢3(他の4肢はどこかに誤りを含む)
刑法36条2項は、防衛の程度を超えた行為について情状により刑を減軽または免除することができると定める。よって3が正しい。1は侵害を予期していたことから直ちに急迫性が失われるわけではない(最決昭52.7.21、最決平29.4.26)ため誤り。2は自招侵害の場合に正当防衛状況を否定した判例(最決平20.5.20)があるため誤り。4は36条1項が「自己又は他人の権利」を防衛するためと定めるため誤り。5は相当性(必要最小限度性)を要するため誤り。
★ポイント:正当防衛(36条):急迫性は侵害の予期+積極的加害意思で否定(最決昭52)→平29決定は行為全般の状況から判断。自招侵害(最決平20:反撃行為が招いた侵害の程度を大きく超えない限り正当防衛状況でない)。防衛行為と第三者、量的過剰(一連一体性)。
問4
具体的事実の錯誤に関する次の記述のうち、法定的符合説(判例)の立場として正しいものはどれか。
  • 1Aを狙って発砲したところBに命中した場合、Bに対する殺人の故意は認められない。
  • ✔同一構成要件の範囲内で錯誤がある場合、認識と結果が符合する限度で故意が認められる。
  • 3行為者が認識した客体と現実に侵害された客体が異なる場合、常に過失犯となる。
  • 4抽象的事実の錯誤の場合、構成要件が重なり合わなくても重い罪の故意が認められる。
  • 5法定的符合説によれば、一発の弾丸で二人に結果が生じた場合、故意犯は一罪に限られる。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
法定的符合説(判例・最判昭53.7.28)は、行為者の認識した事実と現実に発生した事実とが同一の構成要件の範囲内で符合する限り故意を阻却しないとする。よって2が正しく、1・3は誤り。4は抽象的事実の錯誤では構成要件の実質的重なり合いが認められる限度でのみ軽い罪の故意犯が成立する(刑法38条2項参照)ため誤り。5は判例が数故意犯説の立場から複数の故意犯の成立を認めた(最判昭53.7.28)ため誤り。
★ポイント:錯誤(95条):取消し構成(2020年改正)。基礎事情の錯誤は「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたとき」に限り取消可。重過失ある表意者は原則取消不可(相手方悪意重過失・共通錯誤の例外)。第三者保護は善意無過失。
問5
中止犯(刑法43条ただし書)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 1中止犯が成立する場合、刑は任意的に減軽される。
  • ✔中止犯が成立する場合、刑は必要的に減軽または免除される。
  • 3中止犯の成立には、外部的障害による中止であっても足りる。
  • 4実行に着手していない段階でも中止犯が成立しうる。
  • 5結果が発生した場合でも、真摯な中止行為があれば中止犯が成立する。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
刑法43条ただし書は、自己の意思により犯罪を中止したときは刑を減軽し、または免除すると定め、必要的減免である。よって2が正しく1は誤り。3は「自己の意思により」という任意性を要するため誤り。4は中止犯は未遂犯の一類型であり実行の着手が前提となるため誤り。5は結果が発生すれば既遂であり中止犯は問題とならないため誤り。
★ポイント:実行の着手:密接性+客観的危険性(クロロホルム事件=第1行為時点で着手肯定)。特殊詐欺の嘘の段階で着手(最判平30)。中止犯(43条但書):任意性(フランクの公式)+中止行為(着手中止は不作為で足り、実行中止は結果防止の真摯な努力)。必要的減免。
問6
共同正犯に関する次の記述のうち、判例に照らして正しいものはどれか。
  • 1共謀共同正犯は判例上認められていない。
  • ✔実行行為を分担しない者であっても、共謀に参加し他人の行為を利用して自己の犯罪を実現したと評価できる場合には共同正犯となりうる。
  • 3共同正犯の成立には、常に全員が構成要件該当行為の一部を分担することが必要である。
  • 4共犯からの離脱は、実行の着手後は一切認められない。
  • 5過失犯について共同正犯が成立する余地はないとするのが判例である。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
練馬事件(最大判昭33.5.28)以来、判例は共謀共同正犯を認め、共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも他人の行為を利用して自己の意思を実行に移したものとして共同正犯の責任を負うとする。よって2が正しく、1・3は誤り。4は着手後の離脱も、因果性の遮断が認められる場合には認められうる(最決平元.6.26等)ため誤り。5は過失犯の共同正犯を認めた判例(最判昭28.1.23)があるため誤り。
★ポイント:共謀共同正犯(練馬事件)。承継的共同正犯:傷害罪では承継否定(最決平24)、詐欺は受け子の途中関与でも成立(最決平29)。共犯からの離脱=因果性の遮断(着手前でも心理的因果性が残れば離脱否定・最決平21)。共犯と身分(65条1項=真正身分の連帯、2項=不真正身分の個別)。
問7
窃盗罪における不法領得の意思に関する次の記述のうち、判例の立場として正しいものはどれか。
  • 1不法領得の意思は窃盗罪の成立要件ではない。
  • ✔不法領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用処分する意思をいう。
  • 3毀棄・隠匿の目的で他人の財物を持ち去った場合でも、窃盗罪が成立する。
  • 4一時使用の目的である場合、返還意思の有無を問わず常に窃盗罪は成立しない。
  • 5不法領得の意思は、利用処分意思のみで足り、権利者排除意思は不要である。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
判例(大判大4.5.21等)は、不法領得の意思を「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用もしくは処分する意思」と定義する。よって2が正しく、1・5は誤り。3は毀棄・隠匿目的の場合には利用処分意思を欠き窃盗罪は成立しない(器物損壊罪等の問題となる)ため誤り。4は自動車の一時使用について乗り捨てる意思がある場合など、権利者排除意思が認められれば窃盗罪が成立しうる(最決昭55.10.30)ため誤り。
★ポイント:窃盗:占有の有無(死者の占有=殺害犯人との関係で肯定・置き忘れは時間場所の近接性)。不法領得の意思=権利者排除意思+利用処分意思(一時使用・毀棄隠匿目的との区別)。親族相盗例(244条:配偶者・直系血族・同居親族は刑免除、家裁選任の後見人には不適用)。
問8
詐欺罪(刑法246条)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1詐欺罪の成立には、欺罔行為、錯誤、処分行為、財物または財産上の利益の移転、およびこれらの間の因果関係が必要である。
  • 2欺罔行為は、交付の判断の基礎となる重要な事項を偽るものでなければならない。
  • ✔被欺罔者と財産上の被害者は同一人でなければならず、いわゆる三角詐欺は成立しない。
  • 4処分行為には、処分意思が必要であるとするのが通説である。
  • 5挙動による欺罔(不作為を含む)も欺罔行為となりうる。
解説:【正解】肢3(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
被欺罔者(処分行為者)と被害者が異なるいわゆる三角詐欺も、被欺罔者が被害者の財産を処分しうる権限または地位を有する場合には詐欺罪が成立しうる。したがって3が誤りであり、これが正解。1は詐欺罪の構造、2は最決平22.7.29等が示す重要事項性、4は通説的理解、5は挙動による欺罔や告知義務違反による不作為の欺罔が認められることから、それぞれ正しい。
★ポイント:詐欺:欺罔行為は交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ること(暴力団員のゴルフ場利用・搭乗券事件)。処分行為・処分意思必要。クレジットカード詐欺(名義人に支払意思資力があっても他人名義使用で1項詐欺)。国家的法益と詐欺罪の成否。

商法・会社法全100問中 8問を掲載

問1
株式会社の設立に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 1発起設立においては、設立時発行株式の全部を発起人以外の者が引き受ける。
  • ✔発起設立においては、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける。
  • 3株式会社の最低資本金は1000万円である。
  • 4定款は公証人の認証を受ける必要はない。
  • 5現物出資については、その価額の多寡にかかわらず常に検査役の調査が必要である。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
会社法25条1項1号は、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法(発起設立)を定める。よって2が正しく1は誤り(1は募集設立の説明に近いが、募集設立でも発起人は1株以上引き受ける必要がある)。3は平成17年会社法制定により最低資本金制度は撤廃されたため誤り。4は30条1項が公証人の認証を要求するため誤り。5は33条10項が、現物出資財産の価額の総額が500万円を超えない場合等の例外を定めるため誤り。
★ポイント:設立:発起人の権限、変態設立事項(現物出資等・検査役調査と例外)、出資の履行仮装(引受人・関与発起人の支払義務=無過失責任でない点等)、設立無効の訴え(2年・株主等のみ)。
問2
株主総会の決議に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1普通決議は、原則として議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数をもって行う。
  • 2定款変更は特別決議事項である。
  • 3特別決議は、原則として議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う。
  • 4取締役の選任決議については、定款によっても定足数を議決権の3分の1未満に下げることはできない。
  • ✔株主総会の決議取消しの訴えは、決議の日から1年以内に提起しなければならない。
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
会社法831条1項は、株主総会決議取消しの訴えの提訴期間を決議の日から3か月以内と定める。したがって5が誤りであり、これが正解。1は309条1項、2は466条・309条2項11号、3は309条2項、4は341条(取締役等の選解任決議の定足数は定款によっても議決権の3分の1未満にできない)として、それぞれ正しい。
★ポイント:機関:株主総会決議取消しの訴え(3か月・裁量棄却831条2項)、無効・不存在確認。取締役会決議を欠く重要財産処分の効力(内部的意思決定を欠くにとどまり原則有効・相手方悪意有過失で無効=最判昭40)。利益相反取引・競業の承認。
問3
取締役の会社に対する責任に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 1取締役は、その任務を怠ったときであっても、故意がない限り会社に対して損害賠償責任を負わない。
  • ✔取締役は、その任務を怠ったときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
  • 3取締役の会社に対する責任は、株主総会の普通決議によって全部免除できる。
  • 4利益相反取引によって会社に損害が生じた場合、当該取締役は無過失を立証すれば免責される。
  • 5株主代表訴訟を提起するには、公開会社では議決権の3%以上の保有が必要である。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
会社法423条1項は、役員等がその任務を怠ったときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定める。過失責任であるが故意に限定されないため、2が正しく1は誤り。3は424条により総株主の同意を要するため誤り。4は428条1項が自己のためにした直接取引について無過失責任を定めるため誤り。5は847条1項が公開会社について6か月前から引き続き株式を有する株主であれば足りるとし、持株比率要件を課していないため誤り。
★ポイント:役員の責任:423条(任務懈怠・経営判断原則)、429条対第三者責任(法定責任説・悪意重過失は任務懈怠につき)。代表訴訟(提訴請求60日・担保提供)。監査役の差止め・違法行為差止請求(360条:著しい損害/回復不可能な損害)。
問4
株式の譲渡に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1株式会社は、その発行する全部または一部の株式について、譲渡による取得に会社の承認を要する旨を定款で定めることができる。
  • 2譲渡制限株式について会社の承認を得ずになされた譲渡は、当事者間では有効である。
  • 3株券発行会社における株式の譲渡は、株券の交付をしなければ効力を生じない。
  • 4株主名簿の名義書換をしなければ、株式の譲渡を会社に対抗できない。
  • ✔会社は、定款の定めがなくても、株式の譲渡を全面的に禁止することができる。
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
会社法は譲渡制限(承認を要する旨の定め)を認めるにとどまり、定款の定めなく会社が株式譲渡を全面的に禁止することはできない。株式譲渡自由の原則(127条)に反するため、5が誤りであり、これが正解。1は107条・108条、2は判例(最判昭48.6.15)が当事者間では有効とすること、3は128条1項、4は130条として、それぞれ正しい。
★ポイント:株式:譲渡制限株式の承認手続(承認みなし)、自己株式取得の財源規制・手続規制、株式併合の端数処理と反対株主買取請求、種類株式(拒否権付等9種)。株主平等原則(109条)。
問5
募集株式の発行に関する次の記述のうち、判例に照らして正しいものはどれか。
  • ✔公開会社において、著しく不公正な方法による募集株式の発行がされた場合、株主は発行の差止めを請求できる。
  • 2募集株式の発行が完了した後は、いかなる瑕疵があっても無効の訴えは認められない。
  • 3新株発行不存在確認の訴えには出訴期間の制限がある。
  • 4取締役会決議を欠く募集株式の発行は、常に無効である。
  • 5支配権維持を主たる目的とする新株発行であっても、資金調達目的が全くなければ適法である。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
会社法210条2号は、募集株式の発行が著しく不公正な方法により行われる場合に株主が差止請求できる旨を定める。よって1が正しい。2は828条1項2号が新株発行無効の訴えを認めるため誤り。3は829条の新株発行不存在確認の訴えに出訴期間の制限はないため誤り。4は判例(最判昭36.3.31等)が取締役会決議を欠く新株発行も原則として有効とするため誤り。5は主要目的ルール(東京高決平16.8.4等)により支配権維持目的が主要目的である場合は不公正発行となるため誤り。
★ポイント:株式:譲渡制限株式の承認手続(承認みなし)、自己株式取得の財源規制・手続規制、株式併合の端数処理と反対株主買取請求、種類株式(拒否権付等9種)。株主平等原則(109条)。
問6
取締役の義務と責任に関する次のア〜オの記述のうち、会社法および判例に照らして正しいものの組合せはどれか。 ア 取締役が自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引をしようとするときは、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)において重要な事実を開示し承認を受けなければならない。 イ 利益相反取引により会社に損害が生じたときは、当該取引をした取締役および承認決議に賛成した取締役は任務を怠ったものと推定される。 ウ 取締役の経営判断について、その前提となった事実認識に不注意な誤りがなく、意思決定の過程・内容が著しく不合理でない限り、善管注意義務違反にはならない。 エ 取締役は他の取締役の業務執行を監視する義務を負い、これは取締役会に上程された事項に限られる。 オ 代表取締役が会社を代表して行った行為につき、相手方が権限濫用について悪意または重過失であっても、会社は常に責任を免れない。
  • 1イ・エ・オ
  • 2ア・イ・オ
  • 3ア・ウ・エ
  • ✔ア・イ・ウ
  • 5ウ・エ・オ
解説:【正解】肢4
アは356条1項1号・365条1項、イは423条3項、ウは経営判断原則に関する最判平22.7.15の判示に沿い、いずれも正しく4が正解。エは最判昭48.5.22が、取締役の監視義務は取締役会に上程された事項に限らず業務執行一般に及ぶとしたため誤り。オは代表権の濫用について民法107条の趣旨により相手方が悪意または知りうべき場合には効果が会社に帰属しないと解されるため誤り。
★ポイント:機関:株主総会決議取消しの訴え(3か月・裁量棄却831条2項)、無効・不存在確認。取締役会決議を欠く重要財産処分の効力(内部的意思決定を欠くにとどまり原則有効・相手方悪意有過失で無効=最判昭40)。利益相反取引・競業の承認。
問7
組織再編に関する次のア〜オの記述のうち、会社法上正しいものの組合せはどれか。 ア 吸収合併存続会社が消滅会社の株主に交付する対価は、存続会社の株式に限られない。 イ 簡易組織再編に該当する場合、存続会社側では原則として株主総会の承認決議を要しない。 ウ 特別支配会社が存在する場合の略式組織再編では、被支配会社側の株主総会決議を省略できる。 エ 組織再編に反対する株主は、原則として自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求できる。 オ 吸収合併の効力は、合併の登記の時に生ずる。
  • 1イ・エ・オ
  • 2ウ・エ・オ
  • 3ア・イ・オ
  • ✔ア・イ・ウ・エ
  • 5ア・ウ・オ
解説:【正解】肢4
アは749条1項2号が対価の柔軟化を認めていること、イは796条2項の簡易組織再編、ウは784条1項・796条1項の略式組織再編、エは785条・797条の反対株主の株式買取請求として、それぞれ正しく4が正解。オは750条1項が、吸収合併の効力は効力発生日に生ずると定めるため誤り(新設合併は設立登記の日に効力が生ずる点と区別を要する)。
★ポイント:株式:譲渡制限株式の承認手続(承認みなし)、自己株式取得の財源規制・手続規制、株式併合の端数処理と反対株主買取請求、種類株式(拒否権付等9種)。株主平等原則(109条)。
問8
剰余金の配当等に関する次のア〜オの記述のうち、会社法上正しいものの組合せはどれか。 ア 剰余金の配当は、株主総会の決議によって行うのが原則である。 イ 剰余金の配当により株主に交付する金銭等の帳簿価額の総額は、その効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。 ウ 分配可能額を超えて剰余金の配当が行われた場合、金銭等の交付を受けた株主は交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を会社に支払う義務を負う。 エ 業務執行者は、分配可能額を超える配当について、その職務を行うにつき注意を怠らなかったことを証明したときは義務を免れる。 オ 純資産額が300万円を下回る場合でも、分配可能額があれば剰余金の配当をすることができる。
  • 1ア・ウ・オ
  • 2ウ・エ・オ
  • 3イ・エ・オ
  • ✔ア・イ・ウ・エ
  • 5ア・イ・オ
解説:【正解】肢4
アは454条1項、イは461条1項、ウは462条1項、エは同条2項としていずれも正しく、4が正解。オは458条が、純資産額が300万円を下回る場合には剰余金の配当をすることができないと定めるため誤り。
★ポイント:機関:株主総会決議取消しの訴え(3か月・裁量棄却831条2項)、無効・不存在確認。取締役会決議を欠く重要財産処分の効力(内部的意思決定を欠くにとどまり原則有効・相手方悪意有過失で無効=最判昭40)。利益相反取引・競業の承認。

民事訴訟法全100問中 8問を掲載

問1
処分権主義に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1訴訟の開始は当事者の訴えの提起によるのが原則である。
  • 2裁判所は、当事者が申し立てていない事項について判決をすることができない。
  • 3原告は、判決が確定するまで訴えの全部または一部を取り下げることができる。
  • 4当事者は、訴訟上の和解や請求の放棄・認諾により訴訟を終了させることができる。
  • ✔裁判所は、原告が請求した額を超える金額の支払を命ずる判決をすることができる。
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
民事訴訟法246条は、裁判所は当事者が申し立てていない事項について判決をすることができないと定める(申立事項と判決事項の一致)。したがって請求額を超える給付を命ずることは許されず、5が誤りであり、これが正解。1は訴えなければ裁判なしの原則、2は246条、3は261条1項、4は266条・267条として、それぞれ正しい。
★ポイント:処分権主義(246条):申立事項と判決事項の一致。一部認容判決の可否(質的・量的)、債務不存在確認訴訟での上限、引換給付判決は246条違反でない。
問2
弁論主義に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 1裁判所は、当事者が主張していない主要事実を判決の基礎とすることができる。
  • 2裁判所は、当事者間に争いのない事実についても、証拠により認定し直さなければならない。
  • ✔裁判所は、当事者が申し出ていない証拠を職権で取り調べることが原則としてできない。
  • 4弁論主義は間接事実および補助事実にも主要事実と同様に妥当するとするのが通説である。
  • 5自白が成立した事実についても、裁判所はこれに拘束されない。
解説:【正解】肢3(他の4肢はどこかに誤りを含む)
弁論主義の第三テーゼ(職権証拠調べの禁止)により、裁判所は当事者の申し出ていない証拠を職権で取り調べることは原則としてできない。よって3が正しい。1は第一テーゼ(主要事実の主張責任)に反するため誤り。2・5は第二テーゼ(自白の拘束力、民訴法179条)により、自白された事実は証明を要せず裁判所を拘束するため誤り。4は通説が弁論主義の適用対象を主要事実に限るため誤り。
★ポイント:弁論主義の3テーゼ:①主張責任(主要事実のみ・間接事実補助事実には不適用)②自白の拘束力③職権証拠調べの禁止。主要事実と間接事実の区別(過失・正当事由等の規範的要件は評価根拠事実が主要事実)。釈明権(149条)と釈明義務。
問3
既判力の客観的範囲に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 1判決理由中の判断にも原則として既判力が生じる。
  • ✔確定判決は主文に包含するものに限り既判力を有する。
  • 3相殺の抗弁について判断された場合であっても、その判断に既判力は生じない。
  • 4既判力の基準時は口頭弁論終結時ではなく判決言渡時である。
  • 5既判力は、いかなる場合も訴訟当事者以外の者には及ばない。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
民事訴訟法114条1項は、確定判決は主文に包含するものに限り既判力を有すると定める。よって2が正しく1は誤り。3は同条2項が相殺のために主張した請求の成立または不成立の判断について対抗した額に限り既判力を認めるため誤り。4は既判力の基準時が事実審の口頭弁論終結時であるため誤り。5は115条1項が口頭弁論終結後の承継人や請求の目的物の所持者等にも既判力が及ぶと定めるため誤り。
★ポイント:既判力:基準時=事実審口頭弁論終結時(基準時後の形成権行使——取消権・解除権は遮断、相殺権は非遮断が判例)。客観的範囲=主文の判断(114条1項・相殺の抗弁は例外的に理由中の判断に既判力2項)。主観的範囲(115条:口頭弁論終結後の承継人等)。
問4
重複起訴の禁止(民事訴訟法142条)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 1同一の当事者間であれば、訴訟物が異なっていても常に重複起訴となる。
  • ✔裁判所に係属する事件については、当事者は更に訴えを提起することができない。
  • 3重複起訴に当たる訴えも、被告が応訴すれば適法となる。
  • 4重複起訴の禁止は職権調査事項ではない。
  • 5別訴で相殺の抗弁として主張されている債権を訴訟物とする訴えの提起は、常に適法である。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
民事訴訟法142条は、裁判所に係属する事件については当事者は更に訴えを提起することができないと定める。よって2が正しい。1は当事者と審判対象(訴訟物)の同一性が必要であるため誤り。3・4は重複起訴の禁止が訴訟要件であり職権調査事項で、被告の応訴によって治癒されないため誤り。5は判例(最判平3.12.17等)が抗弁と別訴の関係で142条の趣旨を及ぼす場合を認めるため、「常に適法」とする点で誤り。
★ポイント:国賠2条:設置管理の瑕疵=通常有すべき安全性の欠如(無過失責任)。高知落石事件(予算抗弁排斥)。供用関連瑕疵(大阪空港・国道43号)。河川は改修計画の合理性で判断(大東水害・多摩川水害)。点字ブロック(赤色灯事件は第三者行為でも時間的余地で判断)。
問5
控訴審に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1我が国の控訴審は続審制を採用している。
  • 2控訴裁判所は、第一審判決を不当とするときはこれを取り消さなければならない。
  • 3控訴裁判所は、控訴人の不服申立ての限度を超えて第一審判決を控訴人に不利益に変更することはできない。
  • 4控訴期間は判決書またはこれに代わる調書の送達を受けた日から2週間である。
  • ✔控訴審においては、新たな攻撃防御方法を提出することは一切許されない。
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
我が国の控訴審は続審制を採るため、控訴審においても新たな攻撃防御方法の提出は原則として許される(ただし時機に後れた攻撃防御方法の却下(157条)等の制約はある)。したがって5が誤りであり、これが正解。1は続審制、2は305条、3は304条(不利益変更禁止の原則)、4は285条として、それぞれ正しい。
★ポイント:上訴:不利益変更禁止(304条)、附帯控訴。再審事由(338条)と補充性。控訴の利益(全部勝訴者に原則なし)。
問6
一部請求に関する次のア〜オの記述のうち、判例に照らして正しいものの組合せはどれか。 ア 一個の債権の数量的一部について、それが一部であることを明示して訴えを提起した場合、訴訟物は当該一部に限られる。 イ 明示的一部請求の訴えに対する判決の既判力は、残部の請求には及ばない。 ウ 明示的一部請求の訴えの提起は、残部について裁判上の請求に準ずるものとして消滅時効の完成猶予の効力を生ずる場合がある。 エ 一部請求であることを明示しないで訴えを提起した場合、判決の既判力は債権全部に及ぶ。 オ 明示的一部請求が全部棄却された後に残部を請求することは、特段の事情がない限り信義則に反し許されない。
  • ✔ア・イ・ウ・エ・オ
  • 2ア・ウ・エ
  • 3ウ・エ・オ
  • 4イ・エ・オ
  • 5ア・イ・オ
解説:【正解】肢1
アおよびイは最判昭37.8.10等、エは同判例の反対解釈として、いずれも判例の立場に沿い正しい。ウは最判平25.6.6が、明示的一部請求の訴えの提起により残部についても裁判上の催告として時効中断(現行法では完成猶予)の効力を認めた点で正しい。オは最判平10.6.12が、一部請求を全部棄却する判決が確定した後の残部請求は特段の事情がない限り信義則に反し許されないとした点で正しい。したがってすべて正しく、1が正解。
問7
補助参加および訴訟告知に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。 ア 訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため訴訟に参加することができる。 イ 補助参加の利益における「利害関係」は、法律上の利害関係を意味し、単なる事実上・経済上の利害関係では足りない。 ウ 補助参加人は、被参加人の訴訟行為と抵触する訴訟行為をすることができない。 エ 補助参加に係る訴訟の裁判は、原則として補助参加人に対してもその効力(参加的効力)を有する。 オ 訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合には、参加的効力は生じない。
  • 1イ・エ・オ
  • 2ア・イ・オ
  • 3ウ・エ・オ
  • ✔ア・イ・ウ・エ
  • 5ア・ウ・オ
解説:【正解】肢4
アは42条、イは判例・通説の理解、ウは45条2項、エは46条としていずれも正しく、4が正解。オは53条4項が、訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合であっても参加することができた時に参加したものとみなして46条の規定を適用すると定めるため誤り。
★ポイント:通常共同訴訟(共同訴訟人独立の原則)と必要的共同訴訟(合一確定・固有必要的か類似必要的か)。独立当事者参加(47条)・補助参加(参加の利益・参加的効力=敗訴責任の分担)・訴訟告知。
問8
文書提出義務に関する次のア〜オの記述のうち、民事訴訟法および判例に照らして正しいものの組合せはどれか。 ア 文書の所持者は、原則として文書提出義務を負う(一般義務化)。 イ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(自己利用文書)は、提出義務が免除される。 ウ 自己利用文書に当たるかの判断においては、外部の者に開示することが予定されていない文書であり、開示により所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあるか否かが考慮される。 エ 公務員の職務上の秘密に関する文書で、その提出により公共の利益を害するおそれがあるものは提出義務を負わない。 オ 当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は直ちに相手方の主張する請求を認容しなければならない。
  • 1ア・ウ・オ
  • 2ウ・エ・オ
  • 3イ・エ・オ
  • ✔ア・イ・ウ・エ
  • 5ア・イ・オ
解説:【正解】肢4
アは220条4号による一般義務化、イは同号ニ、ウは最決平11.11.12(銀行の貸出稟議書)の判断枠組み、エは220条4号ロとしていずれも正しく、4が正解。オは224条1項が、文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができると定めるにとどまり、請求そのものの認容を義務づけるものではないため誤り。

刑事訴訟法全100問中 8問を掲載

問1
現行犯逮捕に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 1現行犯人を逮捕するには、常に逮捕状を必要とする。
  • ✔現行犯人は、何人でも逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
  • 3現行犯逮捕ができるのは司法警察職員に限られる。
  • 4準現行犯逮捕は認められていない。
  • 5現行犯逮捕の場合、逮捕に伴う無令状の捜索・差押えは一切認められない。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
刑事訴訟法213条は、現行犯人は何人でも逮捕状なくしてこれを逮捕することができると定める。よって2が正しく、1・3は誤り。4は212条2項が準現行犯を定めるため誤り。5は220条1項が逮捕する場合において必要があるときは令状なくして捜索・差押え等ができると定めるため誤り。
★ポイント:逮捕:現行犯(準現行犯212条2項の該当性)・緊急逮捕の合憲性。事件単位の原則。逮捕前置主義。再逮捕再勾留の可否。勾留理由・勾留の必要、接見等禁止。
問2
伝聞法則に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 1公判期日における供述に代えて書面を証拠とすることは、例外なく許されない。
  • ✔被告人以外の者の公判準備または公判期日における供述で被告人以外の者の供述をその内容とするものは、原則として証拠とすることができない。
  • 3被告人が任意にした自白であっても、伝聞法則により証拠能力が否定される。
  • 4検察官面前調書は、いかなる場合も証拠能力が認められない。
  • 5当事者が証拠とすることに同意した書面であっても、伝聞法則により証拠能力は認められない。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
刑事訴訟法320条1項は、321条以下に定める場合を除き、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、または公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることができないと定める。よって2が正しく、1は「例外なく」とする点で誤り。3は自白には322条の適用があり、任意性が認められれば証拠能力が肯定されうるため誤り。4は321条1項2号が一定の要件下で証拠能力を認めるため誤り。5は326条1項の同意により証拠能力が付与されうるため誤り。
★ポイント:証明責任:法律要件分類説。文書提出命令(220条4号の一般義務化・自己利用文書の除外)。証明妨害・事案解明義務。自由心証主義(247条)・損害額の認定(248条)。
問3
自白に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1強制、拷問または脅迫による自白、不当に長く抑留または拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、証拠とすることができない。
  • 2被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には有罪とされない。
  • 3自白の補強証拠は、自白の真実性を担保する程度のもので足りるとするのが判例である。
  • ✔共犯者の自白は、本人の自白と同視され、常に補強証拠を要するとするのが判例である。
  • 5任意性に疑いのある自白は、被告人が同意しても証拠とすることができない。
解説:【正解】肢4(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
判例(最大判昭33.5.28、最判昭51.10.28等)は、共同被告人(共犯者)の自白は憲法38条3項にいう「本人の自白」に含まれず、これのみによって被告人を有罪とすることも許されるとしている。したがって4が誤りであり、これが正解。1は刑訴法319条1項・憲法38条2項、2は319条2項・憲法38条3項、3は補強法則の程度に関する判例、5は自白法則が任意性を欠く自白の証拠能力を絶対的に否定する趣旨であることから、それぞれ正しい。
★ポイント:裁判上の自白:審判排除効・不可撤回効(相手方の同意、刑事上罰すべき行為、反真実+錯誤で撤回可)・証明不要効(179条)。権利自白・間接事実の自白は裁判所を拘束しない。擬制自白(159条)。
問4
訴因および訴因変更に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • ✔起訴状には、できる限り日時、場所および方法をもって罪となるべき事実を特定して訴因を明示しなければならない。
  • 2裁判所は、検察官の請求がなくても職権で訴因を変更することができる。
  • 3訴因変更は、公訴事実の同一性を害する場合でも許される。
  • 4起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめるおそれのある書類を添付することが望ましい。
  • 5訴因の変更は第一審に限られ、控訴審では一切認められない。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
刑事訴訟法256条3項は、公訴事実は罪となるべき事実を訴因を明示して記載しなければならず、訴因を明示するにはできる限り日時、場所および方法をもって罪となるべき事実を特定してこれをしなければならないと定める。よって1が正しい。2は312条1項が検察官の請求による訴因変更を定め、同条2項は裁判所の変更命令にとどまるため誤り。3は312条1項が公訴事実の同一性を害しない限度としているため誤り。4は256条6項の起訴状一本主義に反するため誤り。5は控訴審でも一定範囲で訴因変更が認められうるため誤り。
★ポイント:訴因:審判対象=訴因(訴因対象説)。訴因変更の要否=審判対象の画定に必要な事実の変化(最決平13)、可否=公訴事実の同一性(基本的事実の同一性・非両立性)。訴因変更命令の義務(例外的)と形成力の否定。
問5
接見交通権に関する次の記述のうち、判例に照らして正しいものはどれか。
  • ✔身体の拘束を受けている被疑者は、弁護人または弁護人となろうとする者と立会人なくして接見することができる。
  • 2捜査機関は、捜査の必要があればいつでも接見を禁止できる。
  • 3接見指定は、捜査の中断による支障が生じるおそれの有無にかかわらず自由に行える。
  • 4接見交通権は法律上の権利にすぎず、憲法上の保障とは無関係である。
  • 5弁護人となろうとする者には接見交通権は認められない。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
刑事訴訟法39条1項は、身体の拘束を受けている被告人または被疑者は、弁護人または弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と立会人なくして接見し、書類や物の授受をすることができると定める。よって1が正しく5は誤り。2・3は39条3項が捜査のため必要があるときに日時等を指定できるとしつつ、判例(最大判平11.3.24等)が現に捜査の中断による顕著な支障が生じる場合に限るとしているため誤り。4は接見交通権が憲法34条の弁護人依頼権に由来するとされるため誤り。
★ポイント:接見交通権(39条):捜査の必要がある場合の接見指定は取調べ中断等により捜査に顕著な支障が生じる場合に限る(最大判平11・安藤事件等)。初回接見の重要性(最判平12)。
問6
職務質問および所持品検査に関する次のア〜オの記述のうち、判例に照らして正しいものの組合せはどれか。 ア 所持品検査は、口頭による質問と密接に関連しこれに附随する行為として、職務質問の効果をあげるうえで必要かつ有効な行為である。 イ 所持人の承諾のない所持品検査は、捜索に至らない程度の行為であっても一切許されない。 ウ 所持品検査の適法性は、必要性・緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況の下で相当と認められる限度において許容される。 エ 職務質問に際し、相手方が立ち去ろうとするのを制止する行為は、その態様・程度によっては適法となりうる。 オ 職務質問のための停止行為は、強制にわたらない限度であれば許される。
  • 1ア・イ・ウ
  • 2ア・イ・オ
  • 3ウ・エ・オ
  • ✔ア・ウ・エ・オ
  • 5イ・エ・オ
解説:【正解】肢4
米子銀行強盗事件(最判昭53.6.20)は、所持品検査が職務質問に附随する行為として許容される場合があること(ア)、捜索に至らない程度の行為は強制にわたらない限り所持人の承諾がなくても許容される場合があること(イは誤り)、その限界を必要性・緊急性と法益権衡等から具体的状況の下で相当と認められる限度とすること(ウ)を判示した。エ・オは警察官職務執行法2条1項の下での停止・制止行為の適法性に関する理解として正しい。したがってア・ウ・エ・オの組合せである4が正解。
★ポイント:強制処分=個人の意思を制圧し身体・住居・財産等に制約を加える処分(最決昭51)。任意捜査の限界=必要性緊急性を考慮し具体的状況下で相当な範囲(比例原則)。職務質問に伴う所持品検査(米子銀行強盗事件:捜索に至らない程度・強制にわたらない限り許容され得る)。GPS捜査は強制処分(最大判平29)。
問7
強制処分と任意処分に関する次のア〜オの記述のうち、判例に照らして正しいものの組合せはどれか。 ア 強制手段とは、有形力の行使を伴う手段を意味するものではなく、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段をいう。 イ 任意捜査においても、必要性・緊急性等を考慮し具体的状況の下で相当と認められる限度において有形力の行使が許容される。 ウ GPS端末を車両に取り付けて位置情報を検索・把握する捜査は、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして強制の処分に当たる。 エ GPS捜査については、令状を発付すれば現行の検証許可状によって適法に実施できるとするのが判例である。 オ 写真撮影は、常に強制処分に当たり令状を要する。
  • 1ウ・エ・オ
  • 2イ・エ・オ
  • 3ア・ウ・エ
  • ✔ア・イ・ウ
  • 5ア・イ・オ
解説:【正解】肢4
アおよびイは最決昭51.3.16(有形力行使の限界)の判示、ウは最大判平29.3.15(GPS捜査事件)の判示に沿い正しく、4が正解。エは同判決が、GPS捜査を令状により実施できるとするには立法的措置が講じられることが望ましいとし、検証許可状による実施には疑義があるとしたため誤り。オは京都府学連事件(最大判昭44.12.24)が一定の要件下で令状によらない撮影を許容したため誤り。
★ポイント:強制処分=個人の意思を制圧し身体・住居・財産等に制約を加える処分(最決昭51)。任意捜査の限界=必要性緊急性を考慮し具体的状況下で相当な範囲(比例原則)。職務質問に伴う所持品検査(米子銀行強盗事件:捜索に至らない程度・強制にわたらない限り許容され得る)。GPS捜査は強制処分(最大判平29)。
問8
訴因変更の要否に関する次のア〜オの記述のうち、判例(最決平13.4.11)に照らして正しいものの組合せはどれか。 ア 審判対象の画定という見地から、訴因の記載として不可欠な事項について異なる認定をするには訴因変更が必要である。 イ 訴因の記載として不可欠な事項に当たらない事実であっても、一般的に被告人の防御にとって重要な事項については、争点の明確化のため訴因変更手続を経るのが原則として望ましい。 ウ 被告人の防御の具体的状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではなく、かつ判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる事実を認定することも違法ではない。 エ 訴因変更の要否は、専ら検察官の意向により決せられる。 オ 訴因変更は公訴事実の同一性を害しない限度において許される。
  • 1ア・ウ・エ
  • ✔ア・イ・ウ・オ
  • 3ウ・エ・オ
  • 4イ・エ・オ
  • 5ア・イ・エ
解説:【正解】肢2
ア・イ・ウはいずれも最決平13.4.11の判示に沿い正しい。オは312条1項の要件として正しい。したがってア・イ・ウ・オの組合せである2が正解。エは訴因変更の要否が被告人の防御の観点から法的に判断される事柄であり、検察官の意向により決せられるものではないため誤り。
★ポイント:訴因:審判対象=訴因(訴因対象説)。訴因変更の要否=審判対象の画定に必要な事実の変化(最決平13)、可否=公訴事実の同一性(基本的事実の同一性・非両立性)。訴因変更命令の義務(例外的)と形成力の否定。

行政法全100問中 8問を掲載

問1
行政行為の効力に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1行政行為には公定力が認められ、権限ある機関により取り消されるまで一応有効なものとして扱われる。
  • 2行政行為が無効である場合には公定力は認められない。
  • 3行政行為の瑕疵が重大かつ明白である場合、当該行為は無効となる。
  • ✔行政行為に公定力が認められる結果、国家賠償請求をするには、あらかじめ当該行政行為の取消判決を得ることが必要である。
  • 5出訴期間の経過により行政行為を争えなくなることを不可争力という。
解説:【正解】肢4(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
判例(最判昭36.4.21)は、違法な行政行為による損害について国家賠償を請求するにあたり、あらかじめ当該行為の取消しまたは無効確認の判決を得る必要はないとする。したがって4が誤りであり、これが正解。1は公定力の定義、2・3は重大明白説による無効の行政行為、5は不可争力の説明として、それぞれ正しい。
★ポイント:行政行為:公定力(取消訴訟の排他的管轄)と国家賠償(公定力に抵触せず違法主張可)。職権取消し(原始的瑕疵・遡及効)と撤回(後発的事情・将来効・法律の根拠不要=菊田医師事件)。不可変更力は争訟裁断行為のみ。
問2
取消訴訟の原告適格に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 1処分の取消しの訴えは、当該処分の名宛人のみが提起できる。
  • ✔取消訴訟は、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができる。
  • 3法律上の利益の有無を判断するにあたり、当該法令と目的を共通にする関係法令の趣旨・目的を参酌することは許されない。
  • 4処分の根拠法令が公益の保護のみを目的とする場合でも、事実上の不利益があれば原告適格が認められる。
  • 5行政事件訴訟法には原告適格の判断について考慮すべき事項を定めた規定はない。
解説:【正解】肢2(他の4肢はどこかに誤りを含む)
行政事件訴訟法9条1項は、処分の取消しの訴えは当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができると定める。よって2が正しく1は誤り。3・5は平成16年改正により新設された9条2項が、関係法令の趣旨・目的や害される利益の内容・性質等を考慮すべき旨を定めるため誤り。4は法律上保護された利益説(判例)によれば、単なる事実上の利益では原告適格は認められないため誤り。
★ポイント:原告適格(9条):法律上の利益=法律上保護された利益説。9条2項の考慮要素(根拠法令の趣旨目的・利益の内容性質、関係法令、被害の態様程度)。小田急高架化(周辺住民肯定)・サテライト大阪(場外車券場・一般住民否定、医療施設開設者限定的肯定)。
問3
行政手続法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 1行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合には、原則として同時にその理由を示さなければならない。
  • 2行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、原則としてその名宛人に対し理由を示さなければならない。
  • 3許認可等を取り消す不利益処分については、原則として聴聞の手続を執らなければならない。
  • 4行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として不利益な取扱いをしてはならない。
  • ✔行政手続法は、地方公共団体の機関がする処分についても、その根拠規定が条例に置かれているものを含め全面的に適用される。
解説:【正解】肢5(「誤り・不適切なもの」を選ぶ問題。残る4肢は正しい記述なので、そのまま知識として整理できる)
行政手続法3条3項は、地方公共団体の機関がする処分でその根拠となる規定が条例または規則に置かれているもの等について、同法第2章から第4章の2までの規定を適用しないと定める。したがって5が誤りであり、これが正解。1は8条1項、2は14条1項、3は13条1項1号イ、4は32条2項として、それぞれ正しい。
★ポイント:行政手続法:申請に対する処分(審査基準・標準処理期間・理由提示=一級建築士免許取消事件は処分基準の適用関係まで要求)と不利益処分(処分基準は努力義務・聴聞と弁明の区別)。理由提示の瑕疵は取消事由。
問4
国家賠償法1条に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • ✔国または公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国または公共団体がこれを賠償する責に任ずる。
  • 2加害公務員個人も、被害者に対して直接責任を負うとするのが判例である。
  • 3公務員に故意または重大な過失があった場合でも、国は当該公務員に求償することができない。
  • 4「公権力の行使」には、非権力的な行政作用は一切含まれない。
  • 5国家賠償法1条の責任は無過失責任である。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
国家賠償法1条1項の文言どおりであり、1が正しい。2は判例(最判昭30.4.19等)が公務員個人は被害者に対して直接責任を負わないとするため誤り。3は同条2項が故意または重過失があったときの求償権を定めるため誤り。4は判例上、公立学校の教育活動など非権力的作用も「公権力の行使」に含まれるとされるため誤り。5は故意または過失を要件とする過失責任であるため誤り(無過失責任は2条の営造物責任)。
★ポイント:国賠1条:公権力の行使(非権力的作用含む広義説・学校事故)。職務行為基準説(奈良税務署推計課税事件)。規制権限不行使(宅建業法・筑豊じん肺・水俣病関西訴訟=権限不行使が著しく合理性を欠く場合)。立法不作為(在外選挙権判決の定式)。求償権(故意重過失)。
問5
取消訴訟の対象となる「処分」(処分性)に関する次の記述のうち、判例に照らして正しいものはどれか。
  • ✔処分とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
  • 2行政計画については、いかなるものであっても処分性は認められない。
  • 3通達は国民の権利義務に直接影響を及ぼすため、常に処分性が認められる。
  • 4行政指導には処分性が認められる余地は全くない。
  • 5条例の制定行為に処分性が認められることはない。
解説:【正解】肢1(他の4肢はどこかに誤りを含む)
最判昭39.10.29(大田区ごみ焼却場事件)は、行政庁の処分とは公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうとした。よって1が正しい。2は土地区画整理事業計画の決定に処分性を認めた最大判平20.9.10があるため誤り。3は通達が原則として処分性を有しないとされる(最判昭43.12.24)ため誤り。4は病院開設中止勧告に処分性を認めた最判平17.7.15があるため誤り。5は保育所廃止条例に処分性を認めた最判平21.11.26があるため誤り。
★ポイント:処分性:公権力性+直接具体的法効果。肯定例:2項道路一括指定、土地区画整理事業計画(浜松市・判例変更)、有害物質使用特定施設廃止通知、病院開設中止勧告。否定例:用途地域指定、通達、公務員の採用内定取消し。
問6
行政裁量に関する次のア〜オの記述のうち、判例に照らして正しいものの組合せはどれか。 ア 裁量権の行使が社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を超えまたはその濫用があった場合には、当該処分は違法となる。 イ 外国人の在留期間更新の許否に関する法務大臣の判断については、広範な裁量が認められる。 ウ 行政庁が考慮すべき事項を考慮せず、または考慮すべきでない事項を考慮して判断した場合、裁量権の逸脱・濫用として違法となりうる。 エ 原子炉設置許可処分の適否に関する裁判所の審理は、行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われる。 オ 裁量処分については、行政事件訴訟法上、裁判所の審査は一切及ばない。
  • 1ウ・エ・オ
  • 2ア・イ・オ
  • ✔ア・イ・ウ・エ
  • 4ア・ウ・オ
  • 5イ・エ・オ
解説:【正解】肢3
アは行政事件訴訟法30条、イはマクリーン事件(最大判昭53.10.4)、ウは日光太郎杉事件等に見られる判断過程統制の手法、エは伊方原発訴訟(最判平4.10.29)の判示として、いずれも正しく3が正解。オは30条が裁量処分についても逸脱・濫用がある場合に取消しを認めるため誤り。
★ポイント:行政裁量:判断過程統制(日光太郎杉事件・小田急高架化訴訟)。社会観念審査(マクリーン・神戸税関事件)。要件裁量と効果裁量。裁量基準(行政手続法の審査基準・処分基準)からの逸脱と平等原則。
問7
抗告訴訟に関する次のア〜オの記述のうち、行政事件訴訟法上正しいものの組合せはどれか。 ア 義務付けの訴えには、いわゆる非申請型(直接型)と申請型の二類型がある。 イ 非申請型義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつその損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り提起できる。 ウ 申請型義務付けの訴えは、不作為の違法確認の訴えまたは取消訴訟等を併合提起しなければならない。 エ 差止めの訴えは、一定の処分がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に提起することができる。 オ 仮の義務付けおよび仮の差止めの制度は、行政事件訴訟法上存在しない。
  • 1ア・ウ・オ
  • ✔ア・イ・ウ・エ
  • 3ウ・エ・オ
  • 4イ・エ・オ
  • 5ア・イ・オ
解説:【正解】肢2
アは3条6項、イは37条の2第1項、ウは37条の3第3項、エは37条の4第1項としていずれも正しく、2が正解。オは37条の5が仮の義務付けおよび仮の差止めを定めるため誤り。
★ポイント:義務付け訴訟:申請型(併合提起要件)と非申請型(重大な損害・補充性)。差止訴訟(37条の4:重大な損害・君が代予防訴訟=蓋然性要件)。不作為の違法確認(申請を前提)。
問8
国家賠償法2条に関する次のア〜オの記述のうち、判例に照らして正しいものの組合せはどれか。 ア 公の営造物の設置または管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国または公共団体がこれを賠償する責に任ずる。 イ 「瑕疵」とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。 ウ 2条の責任は無過失責任であり、管理者の過失の有無を問わない。 エ 河川の管理の瑕疵については、道路等の人工公物と同一の基準によって判断される。 オ 営造物の利用者以外の第三者に及ぼす被害(供用関連瑕疵)についても瑕疵が問題となりうる。
  • 1ア・イ・エ
  • 2ウ・エ・オ
  • 3イ・エ・オ
  • ✔ア・イ・ウ・オ
  • 5ア・ウ・エ
解説:【正解】肢4
アは国家賠償法2条1項、イは高知落石事件(最判昭45.8.20)、ウは同判決が無過失責任を認めたこと、オは大阪国際空港訴訟(最大判昭56.12.16)等の供用関連瑕疵として、いずれも正しく4が正解。エは大東水害訴訟(最判昭59.1.26)が、河川は自然公物であり管理の特殊性を考慮した過渡的安全性の基準によるべきとしたため誤り。
★ポイント:国賠1条:公権力の行使(非権力的作用含む広義説・学校事故)。職務行為基準説(奈良税務署推計課税事件)。規制権限不行使(宅建業法・筑豊じん肺・水俣病関西訴訟=権限不行使が著しく合理性を欠く場合)。立法不作為(在外選挙権判決の定式)。求償権(故意重過失)。