分野別問題(解説つき)

歯科医師国家試験|分野別 問題インデックス

最終更新:2026年8月11日

歯科医師国家試験は20分野から出題されます。分野別に代表問題を掲載しています。全1000問をまとめて解くならトレーナーへ進んでください。

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口腔解剖学・組織学全50問中 8問を掲載

問1
上顎神経の枝でないのはどれか。
  • 1眼窩下神経
  • 2後上歯槽神経
  • 3大口蓋神経
  • ✔頬神経
  • 5鼻口蓋神経
解説:■正解の根拠
頬神経は下顎神経(三叉神経第3枝)の枝である。外側翼突筋の二頭の間を通って頬筋の外面に達し、頬粘膜・頬側歯肉(主に下顎大臼歯部)の知覚を担う。名称に「頬」とあるため上顎の枝と誤りやすいが、支配は下顎神経系である。

■他の選択肢
眼窩下神経は眼窩下管を通り上顎前歯〜小臼歯部と下眼瞼・鼻翼・上唇の皮膚を、後上歯槽神経は上顎大臼歯を、大口蓋神経は臼歯部の口蓋粘膜を、鼻口蓋神経は切歯管を通って前歯部の口蓋粘膜を支配する。いずれも上顎神経(第2枝)の枝である。

■臨床へのつながり
下顎大臼歯の抜歯では、下顎孔伝達麻酔で下歯槽神経と舌神経を麻酔しても頬側歯肉の痛みが残ることがある。これは頬神経が別経路で分布するためで、頬側への浸潤麻酔の追加が必要になる。
問2
耳下腺管(Stensen管)が開口する部位はどれか。
  • 1上顎第一小臼歯相当部の頬粘膜
  • 2舌下小丘
  • ✔上顎第二大臼歯相当部の頬粘膜
  • 4下顎第一大臼歯相当部の頬粘膜
  • 5舌下ヒダ
解説:■正解の根拠
耳下腺管(Stensen管)は咬筋の外面を前走し、その前縁で直角に曲がって頬筋を貫き、上顎第二大臼歯に相当する頬粘膜の耳下腺乳頭に開口する。乳頭は視診で確認でき、圧迫すると唾液の流出が観察できる。

■他の選択肢
舌下小丘(舌下ヒダの前端、舌小帯の両側)には顎下腺管(Wharton管)と大舌下腺管が開口する。舌下ヒダには小舌下腺の多数の小導管が直接開口する。上顎第一小臼歯部や下顎第一大臼歯部に大唾液腺の開口部はない。

■臨床へのつながり
耳下腺乳頭からの排膿は急性化膿性耳下腺炎を示唆し、流行性耳下腺炎(発赤はあるが排膿なし)との鑑別点になる。また唾液腺造影ではこの開口部からカニューレを挿入する。
問3
顔面神経支配の筋はどれか。
  • 1咬筋
  • ✔顎二腹筋後腹
  • 3側頭筋
  • 4外側翼突筋
  • 5内側翼突筋
解説:■正解の根拠
顎二腹筋は前腹と後腹で神経支配が異なる特殊な筋である。前腹は下顎神経の枝(顎舌骨筋神経)、後腹は顔面神経の支配を受ける。これは前腹が第1鰓弓、後腹が第2鰓弓由来であることに対応しており、発生を理解すると記憶が定着する。

■他の選択肢
咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋の4つは咀嚼筋で、いずれも第1鰓弓由来であり下顎神経(三叉神経第3枝)が支配する。顔面神経が支配するのは表情筋、顎二腹筋後腹、茎突舌骨筋、アブミ骨筋である。

■臨床へのつながり
「鰓弓由来=支配神経」の対応は応用が利く。第1鰓弓は三叉神経、第2鰓弓は顔面神経、第3鰓弓は舌咽神経、第4・6鰓弓は迷走神経が支配する。軟口蓋の口蓋帆張筋だけが下顎神経支配という例外も同じ理屈で説明できる。
問4
無機質の重量%が最も高い硬組織はどれか。
  • 1セメント質
  • 2歯髄
  • 3歯槽骨
  • 4象牙質
  • ✔エナメル質
解説:■正解の根拠
重量比の無機質含有率はエナメル質が約96%と最も高く、象牙質約70%、セメント質約65%、骨約60〜70%と続く。エナメル質は生体で最も硬い組織である。

■他の選択肢
象牙質・セメント質・歯槽骨はいずれもⅠ型コラーゲンを基質としてハイドロキシアパタイトが沈着した組織で、無機質含有率はエナメル質に及ばない。歯髄は軟組織であり石灰化していない(加齢による象牙粒の形成は別)。

■臨床へのつながり
無機質含有率の差は臨界pHの差として臨床に現れる。エナメル質は約5.5で脱灰が始まるのに対し、象牙質・セメント質は約6.0〜6.7とより高いpHで溶け始める。歯肉退縮のある高齢者で根面う蝕が急速に広がるのはこのためで、根面には高濃度フッ化物の応用が有効となる。またエナメル質は有機基質が少なく脆性が高いため、支台歯形成では象牙質の裏打ちを失った薄いエナメル質を残さないことが重要である。
問5
象牙細管について正しいのはどれか。
  • ✔歯髄側ほど密度が高い
  • 2歯髄側ほど直径が小さい
  • 3加齢により管腔が拡大する
  • 4内部を走行するのは歯髄神経の軸索のみである
  • 5エナメル象牙境側で最も密度が高い
解説:■正解の根拠
象牙細管は歯髄側で密度が高く(1mm²あたり約4〜5万本)、直径も大きい(約2.5μm)。エナメル象牙境側では密度が低く(約1.5〜2万本)、直径も細くなる(約0.5〜0.9μm)。歯髄側では細管が集束するため、深部ほど密になると理解するとよい。

■他の選択肢
「歯髄側ほど直径が小さい」「エナメル象牙境側で最も密度が高い」はいずれも逆である。細管内には象牙芽細胞突起と組織液が存在し、神経線維は歯髄側の一部にしか進入していないため「軸索のみ」は誤り。加齢では管腔内に石灰化物が沈着して狭窄・閉塞する(硬化象牙質)ため、「管腔が拡大する」も誤りである。

■臨床へのつながり
深い窩洞ほど露出する細管の断面積が大きく、刺激が歯髄へ伝わりやすい。残存象牙質厚径が薄いほど歯髄反応が強くなる根拠がここにある。また加齢による細管の閉塞は、高齢者で知覚過敏が起こりにくい一方、根管の狭窄により根管治療が難しくなる理由でもある。
問6
オトガイ孔が位置するのはどれか。
  • 1下顎角部
  • 2下顎中切歯根尖部
  • 3下顎犬歯根尖部
  • ✔下顎第二小臼歯根尖部相当
  • 5下顎第一大臼歯根分岐部
解説:■正解の根拠
オトガイ孔は下顎第二小臼歯の根尖付近の頬側に開口し、下歯槽神経の終枝であるオトガイ神経と血管が出る。ここから下唇とオトガイ部の皮膚・粘膜の知覚が供給される。

■他の選択肢
下顎中切歯や犬歯の根尖部より遠心にあり、第一大臼歯の根分岐部より近心にある。下顎角部は下顎枝と下顎体の移行部で、オトガイ孔とは離れている。

■臨床へのつながり
臨床的な重要性は三つある。第一に、小臼歯部の外科処置や骨膜剥離でオトガイ神経を損傷すると下唇のしびれを残す。第二に、加齢による顎堤吸収が進むと孔の位置が相対的に顎堤頂へ近づき、義歯床による圧迫で疼痛やしびれの原因となるため、リリーフが必要になる。第三に、インプラント埋入では孔の前方に神経がループして走行する前方ループの存在に注意し、CBCTで確認したうえで安全域を確保する。
問7
上顎洞底と最も近接することが多い歯根はどれか。
  • 1上顎犬歯
  • ✔上顎第一大臼歯
  • 3上顎第一小臼歯
  • 4上顎側切歯
  • 5上顎第三大臼歯遠心根
解説:■正解の根拠
上顎第一大臼歯(とくに近心頬側根と口蓋根)の根尖は上顎洞底に最も近接することが多く、両者が薄い骨で隔てられているか、根尖が洞内へ突出している例もある。

■他の選択肢
上顎第二大臼歯や第三大臼歯も近接するが、頻度では第一大臼歯が最も高い。上顎小臼歯は洞の前方に位置し比較的距離がある。犬歯と側切歯は洞底から離れており、犬歯窩や鼻腔底との関係が問題となる。

■臨床へのつながり
この近接関係が三つの臨床問題を生む。根尖病巣が洞粘膜に波及する歯性上顎洞炎(片側性で悪臭を伴うことが多い)、抜歯時の上顎洞穿孔や歯根の洞内迷入、そして上顎洞炎による歯痛の誤診である。逆に、原因不明の上顎臼歯部痛では上顎洞炎を鑑別に入れる必要がある。抜歯前のエックス線で根尖と洞底の関係を必ず確認する習慣が事故を防ぐ。
問8
舌筋の運動を支配する神経はどれか。
  • ✔舌下神経
  • 2舌神経
  • 3舌咽神経
  • 4顔面神経
  • 5鼓索神経
解説:■正解の根拠
内舌筋(上縦舌筋、下縦舌筋、横舌筋、垂直舌筋)と外舌筋(オトガイ舌筋、舌骨舌筋、茎突舌筋)の運動は、いずれも舌下神経が支配する。純粋な運動神経である。

■他の選択肢
舌神経は下顎神経の枝で舌前2/3の一般体性感覚、鼓索神経は同部位の味覚を担う知覚性の枝である。舌咽神経は舌後1/3の味覚と体性感覚。顔面神経は表情筋を支配する。なお口蓋舌筋のみは名称に「舌」を含むが咽頭神経叢(迷走神経)支配という例外である。

■臨床へのつながり
舌下神経麻痺では、健側のオトガイ舌筋だけが舌を前方へ押し出すため、挺舌時に舌尖が患側へ偏位する。この所見は脳血管障害のスクリーニングとしても有用である。また舌の運動は咀嚼時の食塊の保持と移送、嚥下時の咽頭への送り込み、構音に不可欠であり、舌圧の低下は口腔機能低下症の診断項目にも含まれる。

口腔生理学・生化学全50問中 8問を掲載

問1
安静時唾液の分泌量に最も寄与する大唾液腺はどれか。
  • 1耳下腺
  • ✔顎下腺
  • 3小唾液腺
  • 4舌下腺
  • 5エブネル腺
解説:■正解の根拠
安静時(非刺激時)唾液は顎下腺由来が約60〜65%を占め最も多い。安静時唾液は口腔粘膜の潤いを保ち、細菌の洗い流しと再石灰化に日常的に寄与している。

■他の選択肢
耳下腺は強い刺激時(咀嚼時)に分泌が急増し、刺激唾液全体の50%以上を占めるようになるが、安静時の寄与は20〜25%程度にとどまる。舌下腺と小唾液腺の寄与はさらに小さい。エブネル腺は有郭乳頭周囲の小さな漿液腺で、味物質を洗い流す役割をもつ。

■臨床へのつながり
安静時と刺激時で主役の腺が入れ替わる点が重要である。口腔乾燥症の評価では安静時分泌速度0.1mL/分以下、刺激時0.7mL/分以下が目安とされ、どちらが低下しているかで病態の見当がつく。また睡眠中は安静時分泌がほぼ停止し自浄作用が働かないため、就寝前の清掃とフッ化物応用がう蝕予防上とくに重要となる。
問2
舌前2/3の味覚を伝えるのはどれか。
  • 1大錐体神経
  • 2迷走神経
  • 3舌咽神経
  • ✔鼓索神経
  • 5舌神経
解説:■正解の根拠
舌前2/3の味覚は顔面神経の枝である鼓索神経が伝える。鼓索神経は中耳の鼓室を通過した後、舌神経に合流して舌へ分布するという特徴的な走行をとる。

■他の選択肢
舌神経は下顎神経の枝で、舌前2/3の一般体性感覚(触覚・痛覚・温度覚)を担うが味覚は伝えない。舌咽神経は舌後1/3の味覚と体性感覚の両方を、迷走神経は喉頭蓋周囲の味覚を担う。大錐体神経も顔面神経の枝だが、涙腺と鼻腺・口蓋腺の分泌を支配する副交感性の枝である。

■臨床へのつながり
同じ舌前2/3でも「味覚は顔面神経、触覚は下顎神経」と支配が分かれている点が要点である。中耳手術や顔面神経麻痺で味覚障害が起こりうるのは鼓索神経の走行によるもので、下顎孔伝達麻酔で舌がしびれても味覚が保たれるのは支配神経が異なるためである。
問3
エナメル質の脱灰が始まる臨界pHとして最も適切なのはどれか。
  • ✔約5.5
  • 2約6.5
  • 3約4.5
  • 4約7.0
  • 5約7.4
解説:■正解の根拠
エナメル質の臨界pHは約5.5とされる。プラーク中の細菌が糖を代謝して産生した乳酸によりpHがこの値を下回ると、ハイドロキシアパタイトの溶解度積を超えて脱灰が始まる。

■他の選択肢
約4.5では既に脱灰が進行している段階であり「始まる」pHではない。約6.5〜6.7は象牙質・セメント質の臨界pHに近い値で、エナメル質より高いpHで溶け始める。pH7.0や7.4は中性〜弱アルカリで、この領域ではむしろ再石灰化が進む。

■臨床へのつながり
ステファンカーブは、糖摂取後に数分でpHが臨界pH以下へ急降下し、唾液の緩衝作用により20〜40分かけて回復する経過を示す。重要なのは、脱灰時間の総和を決めるのが糖の総量よりも摂取回数だという点である。したがって食事指導では「量を減らす」より「だらだら食べを避け、回数と時間を決める」ことが効果的となる。
問4
歯髄の鋭い一過性の痛みを伝える主な神経線維はどれか。
  • 1B線維
  • 2Aα線維
  • ✔Aδ線維
  • 4Aβ線維
  • 5C線維
解説:■正解の根拠
Aδ線維は有髄で伝導速度が速く(約5〜30m/秒)、冷刺激や切削時の鋭く限局した一過性の痛みを伝える。象牙質知覚過敏や窩洞形成時の痛みがこれにあたる。

■他の選択肢
C線維は無髄で伝導が遅く(約2m/秒以下)、歯髄炎で生じる持続する鈍い自発痛や拍動痛に関与する。Aα線維は運動と固有感覚、Aβ線維は触覚・圧覚を伝える太い有髄線維。B線維は自律神経の節前線維である。

■臨床へのつながり
「鋭い一過性の痛み=Aδ、鈍い持続痛=C」という対応は歯髄診断に直結する。冷刺激で一過性に痛むが刺激除去で消える場合は可逆性歯髄炎(Aδ主体)を疑い、原因除去で歯髄保存を図る。一方、持続する自発痛や拍動痛が出現した場合はC線維の活動を反映した不可逆性歯髄炎と判断し、抜髄を検討する。
問5
唾液の緩衝能に最も寄与するのはどれか。
  • 1リン酸塩系
  • 2アンモニア
  • 3タンパク質系
  • 4尿素
  • ✔重炭酸塩系
解説:■正解の根拠
唾液の緩衝能の主体は重炭酸塩系である。分泌速度が上がると重炭酸イオン濃度が著しく上昇するため、咀嚼などで刺激された唾液は緩衝能が高くなる。

■他の選択肢
リン酸塩系は安静時唾液で相対的に寄与が大きいが、刺激時の緩衝能の主役ではない。タンパク質系の緩衝作用は限定的である。尿素とアンモニアは細菌による分解でpHを上昇させる方向に働くが、緩衝系としての寄与は小さい。

■臨床へのつながり
「よく噛むこと」「食後のガム咀嚼」がう蝕予防に有効とされる理由がここにある。刺激により分泌量と重炭酸イオン濃度がともに増え、プラークpHの回復が速まる。逆に唾液分泌が低下した患者では緩衝能も落ちるため、う蝕リスクが著しく高まり、フッ化物の高濃度応用と食習慣の管理がより重要になる。
問6
開口運動に主として働く咀嚼筋はどれか。
  • 1内側翼突筋
  • 2口輪筋
  • 3側頭筋
  • 4咬筋
  • ✔外側翼突筋下頭
解説:■正解の根拠
外側翼突筋下頭は翼状突起外側板から起こり下顎頭頸部に停止し、下顎頭を前下方へ牽引して開口および下顎の前方・側方運動に働く。咀嚼筋のなかで唯一、開口に働く筋である。

■他の選択肢
咬筋、側頭筋、内側翼突筋はいずれも閉口筋である。口輪筋は表情筋であり咀嚼筋ではない。なお開口には咀嚼筋だけでなく、舌骨上筋群(顎二腹筋、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋)が舌骨を固定した状態で協調して働く。

■臨床へのつながり
外側翼突筋上頭は関節円板と関節包にも付着し、円板の位置調節に関与する。この上頭の機能異常が関節円板転位の一因とされる。また開口初期は下顎頭の回転(蝶番運動)、大開口では前下方への滑走が加わるという二相性の運動も、この筋の作用によって生じる。顎関節前方脱臼は、この滑走が過度になり下顎頭が関節結節を越えた状態である。
問7
健常成人の1日唾液分泌量として最も適切なのはどれか。
  • ✔約1.0〜1.5L
  • 2約100mL
  • 3約500mL
  • 4約3L
  • 5約5L
解説:■正解の根拠
健常成人の1日唾液分泌量は概ね1.0〜1.5Lとされる。その大半は食事などによる刺激唾液で、安静時分泌は比較的少ない。

■他の選択肢
100mLや500mLでは口腔粘膜の潤いと自浄作用を維持できない。3Lや5Lは過大であり、これに近い量が持続すれば流涎などの問題となる。

■臨床へのつながり
量そのものより、分泌速度の基準を押さえておくと臨床で使える。安静時分泌速度0.1mL/分以下、刺激時0.7mL/分以下が口腔乾燥症の目安とされる。唾液は自浄作用、緩衝能、再石灰化、抗菌(sIgA、ラクトフェリン、リゾチーム)、潤滑と食塊形成、味物質の溶解と多彩な機能を担うため、分泌低下はう蝕、カンジダ症、義歯不安定、味覚障害、咀嚼嚥下障害と広範な問題を同時に引き起こす。
問8
下顎張反射(咬筋反射)について正しいのはどれか。
  • 1受容器は歯根膜の機械受容器である
  • ✔受容器は咀嚼筋の筋紡錘である
  • 3多シナプス反射である
  • 4閉口筋の抑制を生じる
  • 5反射中枢は脊髄にある
解説:■正解の根拠
下顎張反射(咬筋反射)は咀嚼筋の筋紡錘を受容器とする単シナプス性の伸張反射である。下顎を急速に下方へ叩打して筋が引き伸ばされると、閉口筋が反射的に収縮する。求心路・遠心路とも三叉神経で、中枢は脳幹(中脳路核と三叉神経運動核)にある。

■他の選択肢
歯根膜の機械受容器を受容器とするのは開口反射であり、こちらは多シナプス性で閉口筋の抑制と開口筋の興奮を生じる防御反射である。中枢は脊髄ではなく脳幹にある。

■臨床へのつながり
「単シナプス・筋紡錘・閉口筋の収縮=下顎張反射」と「多シナプス・歯根膜や粘膜の侵害受容器・開口筋の興奮と閉口筋の抑制=開口反射」を対にして理解すると混乱しない。前者は姿勢維持や咬合力の調節に、後者は硬いものを噛んだときに顎口腔系を守る防御機構として働く。咬合時の閉口筋抑制(silent period)も同じ防御系に属する。

口腔病理学全50問中 8問を掲載

問1
エナメル上皮腫について正しいのはどれか。
  • ✔局所浸潤性で再発しやすい
  • 2悪性腫瘍である
  • 3小児期に最も好発する
  • 4下顎前歯部に好発する
  • 5被膜に囲まれ核出術で治癒する
解説:■正解の根拠
エナメル上皮腫は良性の歯原性腫瘍だが、被膜が不完全で周囲の海綿骨内へ島状に浸潤するため、単純な核出術では高率に再発する。このため辺縁切除など安全域をとった切除が選択されることが多い。

■他の選択肢
悪性腫瘍ではない(転移はきわめてまれ)。好発部位は下顎臼歯部から下顎枝であり下顎前歯部ではない。好発年齢は20〜40歳代で小児期ではない。被膜に囲まれ核出術で治癒するのは、むしろ被膜の明瞭な良性腫瘍の特徴である。

■臨床へのつながり
「良性だが再発しやすい」という性質は、歯原性角化嚢胞や歯原性粘液腫とも共通する。エックス線では単房性〜多房性(蜂巣状・石鹸泡状)の透過像を示し、境界明瞭でも浸潤性であることに注意が必要である。切除範囲の設定を誤ると再発を繰り返すため、初回手術の計画が予後を左右する。
問2
口腔癌の組織型として最も頻度が高いのはどれか。
  • 1悪性黒色腫
  • 2腺癌
  • 3肉腫
  • 4悪性リンパ腫
  • ✔扁平上皮癌
解説:■正解の根拠
口腔癌の約90%は扁平上皮癌である。口腔粘膜が重層扁平上皮に覆われていることに対応する。好発部位は舌(とくに舌側縁)が最も多く、次いで歯肉、口底の順である。

■他の選択肢
腺癌を含む腺系悪性腫瘍(腺様嚢胞癌、粘表皮癌など)は唾液腺由来として発生するが頻度は低い。悪性リンパ腫、悪性黒色腫、肉腫はいずれも口腔ではまれである。ただし悪性黒色腫は色素性病変の鑑別として、悪性リンパ腫は歯肉腫脹の鑑別として臨床上重要である。

■臨床へのつながり
最も多い扁平上皮癌が最も観察しやすい舌側縁に好発するという事実は、歯科の日常診療での早期発見の可能性を意味する。う蝕や歯周治療の際に舌を挙上・側方に牽引して舌側縁と口底まで視診・触診する習慣をもち、2週間以上治癒しない潰瘍、硬結、白斑・紅斑があれば速やかに専門機関へ紹介する。
問3
含歯性嚢胞(濾胞性歯嚢胞)の説明として正しいのはどれか。
  • 1嚢胞壁が埋伏歯の根尖に付着する
  • 2失活歯の根尖部に生じる
  • ✔嚢胞腔内に埋伏歯の歯冠を含む
  • 4下顎前歯部に最も好発する
  • 5裏装上皮は角化重層扁平上皮である
解説:■正解の根拠
含歯性嚢胞は埋伏歯の歯冠を嚢胞腔内に含み、嚢胞壁がその歯のセメント-エナメル境に付着するのが定義である。退縮エナメル上皮とエナメル質の間に液体が貯留して生じる。

■他の選択肢
根尖に付着し失活歯の根尖部に生じるのは歯根嚢胞で、Malassezの上皮遺残に由来する。裏装上皮が角化重層扁平上皮であるのは歯原性角化嚢胞の特徴で、再発率が高く区別を要する。好発部位は下顎第三大臼歯と上顎犬歯部であり、下顎前歯部ではない。

■臨床へのつながり
埋伏智歯の周囲に3mmを超える透過像を認めた場合は含歯性嚢胞を疑う。大型例では、摘出で下顎管損傷や病的骨折の危険がある場合に開窓術を選択し、内圧を下げて縮小させてから二次的に摘出することがある。また埋伏歯の萌出誘導を期待できる場合もある。
問4
唾液腺の良性腫瘍で最も頻度が高いのはどれか。
  • 1基底細胞腺腫
  • ✔多形腺腫
  • 3Warthin腫瘍
  • 4オンコサイトーマ
  • 5筋上皮腫
解説:■正解の根拠
多形腺腫は唾液腺腫瘍のなかで最も頻度が高く、その多くが耳下腺に発生する。上皮成分と間葉様(軟骨様・粘液様)成分が混在する多彩な組織像を示すことから「多形」と呼ばれる。

■他の選択肢
Warthin腫瘍は耳下腺に好発し高齢男性・喫煙者に多い良性腫瘍で、頻度は多形腺腫に次ぐ。基底細胞腺腫、オンコサイトーマ、筋上皮腫はいずれも頻度が低い。

■臨床へのつながり
多形腺腫は被膜が不完全で微小突出を伴うため、核出術のみでは再発率が高く、耳下腺では浅葉切除など被膜外を含めた切除が行われる。その際、腺実質内を走行する顔面神経の温存が最重要課題となる。また長期経過例では悪性化(多形腺腫由来癌)がありうるため、経過観察中の急速な増大、疼痛、顔面神経麻痺の出現は悪性転化を疑う所見である。
問5
口腔潜在的悪性疾患に含まれないのはどれか。
  • 1口腔粘膜下線維症
  • 2口腔扁平苔癬
  • 3白板症
  • ✔フォアダイス斑
  • 5紅板症
解説:■正解の根拠
フォアダイス斑は頬粘膜や口唇にみられる異所性脂腺の集簇で、黄白色の小顆粒として観察される正常変異であり、悪性化しない。治療も不要である。

■他の選択肢
白板症、紅板症、口腔扁平苔癬、口腔粘膜下線維症はいずれも口腔潜在的悪性疾患に含まれる。とくに紅板症は悪性転化率が高く(報告により大きく幅があるが白板症より明らかに高い)、生検の閾値を下げるべき病変である。口腔粘膜下線維症は檳榔子の咀嚼習慣と関連し、開口障害を伴う。

■臨床へのつながり
「正常変異と病的白色病変の鑑別」は日常的に遭遇する課題である。フォアダイス斑のほか、白線(頬粘膜の咬合線)、白色海綿状母斑は正常変異ないし良性である。一方、擦過で除去できない白斑で他疾患に該当しないものが白板症であり、不均一型(結節型・疣贅型・紅斑混在型)や舌縁・口底の病変ではとくに注意して生検を検討する。
問6
歯根嚢胞の裏装上皮の由来はどれか。
  • 1口腔粘膜上皮の陥入
  • ✔Malassezの上皮遺残
  • 3唾液腺導管上皮
  • 4エナメル器の退縮エナメル上皮
  • 5Serresの上皮遺残
解説:■正解の根拠
歯根嚢胞は、根尖性歯周炎の慢性的な炎症刺激により歯根膜内に残存するMalassezの上皮遺残が増殖し、中心が変性・融解して形成される。裏装は非角化重層扁平上皮である。

■他の選択肢
退縮エナメル上皮由来は含歯性嚢胞、歯堤の遺残(Serresの上皮遺残)由来は歯原性角化嚢胞や歯肉嚢胞と考えられている。口腔粘膜上皮の陥入は鼻口蓋管嚢胞などの非歯原性嚢胞の一部で、唾液腺導管上皮は唾液腺の嚢胞性病変に関連する。

■臨床へのつながり
Malassezの上皮遺残はHertwigの上皮鞘の名残であり、歯根膜内に普遍的に存在する。つまり、根尖病巣が慢性化すればどの歯でも歯根嚢胞になりうるということである。多くは適切な根管治療により治癒するが、大型のものや上皮が自立的に増殖している例では外科的な摘出を要する。歯根肉芽腫との鑑別は画像だけでは困難で、確定には病理組織検査が必要となる。
問7
慢性増殖性歯髄炎(歯髄ポリープ)の特徴はどれか。
  • ✔若年者の大きな露髄で生じ疼痛が軽い
  • 2根尖病巣を必発する
  • 3小さな点状露髄で生じる
  • 4高齢者に好発する
  • 5激烈な自発痛を伴う
解説:■正解の根拠
慢性増殖性歯髄炎(歯髄ポリープ)は、血流に富み再生能の高い若年者において、う蝕により歯冠が大きく崩壊して露髄面が広い場合に生じる。肉芽組織が露髄面から突出して増殖するもので、疼痛は軽度で咀嚼時の圧痛程度にとどまる。

■他の選択肢
小さな点状の露髄では歯髄が閉じ込められて内圧が上がり、むしろ壊死へ向かいやすい。高齢者は歯髄の血流と再生能が低下しており生じにくい。激烈な自発痛は急性化膿性歯髄炎の所見。根尖病巣が必発というわけでもない。

■臨床へのつながり
「大きく開いた露髄+若年+痛みが軽い」という組み合わせが典型像である。ポリープ表面が口腔上皮に覆われることもある。治療は原則として抜髄(根未完成歯では生活歯髄切断を検討)で、歯冠の崩壊が大きいため保存の可否も含めた判断が必要となる。歯肉の増殖(歯肉ポリープ)や歯根膜由来の増殖との鑑別には、増殖組織の起始部を確認する。
問8
口腔扁平苔癬の病理組織学的特徴はどれか。
  • 1上皮の高度な異形成と浸潤
  • 2形質細胞の結節状浸潤
  • 3異物型巨細胞の集簇
  • ✔上皮下に帯状のリンパ球浸潤と基底細胞の液状変性
  • 5乾酪壊死を伴う肉芽腫
解説:■正解の根拠
口腔扁平苔癬では、上皮直下に帯状のリンパ球浸潤(band-like infiltrate)を認め、基底細胞層の液状変性(水腫性変性)とアポトーシス小体(Civatte小体)がみられる。T細胞が基底細胞を標的とする免疫学的機序が想定されている。

■他の選択肢
高度な異形成と浸潤は扁平上皮癌、形質細胞の結節状浸潤は形質細胞性歯肉炎、異物型巨細胞の集簇は異物肉芽腫、乾酪壊死を伴う肉芽腫は結核の所見である。

■臨床へのつながり
臨床的には両側頬粘膜のレース状白斑(Wickham線条)が典型で、びらん型では強い接触痛を伴う。口腔潜在的悪性疾患に含まれるため、長期の経過観察が必要である。また金属修復物に接する部位に生じる苔癬様病変(リケノイド反応)や薬剤性の病変との鑑別が問題となり、パッチテストや原因薬剤の確認、必要に応じた材料の置換が検討される。

口腔微生物学・免疫学全50問中 8問を掲載

問1
Streptococcus mutansがスクロースから不溶性グルカンを合成する酵素はどれか。
  • 1デキストラナーゼ
  • ✔グルコシルトランスフェラーゼ
  • 3ヒアルロニダーゼ
  • 4インベルターゼ
  • 5フルクトシルトランスフェラーゼ
解説:■正解の根拠
グルコシルトランスフェラーゼ(GTF)はスクロースを基質として粘着性の不溶性グルカン(ムタン)を産生する。この不溶性グルカンが歯面へのバイオフィルムの付着と菌の集積を可能にする。

■他の選択肢
フルクトシルトランスフェラーゼはフルクタン(菌体外多糖の一種で細胞外の栄養貯蔵に関与)を合成する。デキストラナーゼはグルカンを分解する酵素。インベルターゼはスクロースをグルコースとフルクトースに分解する。ヒアルロニダーゼは組織侵襲に関わる酵素で、グルカン合成とは無関係である。

■臨床へのつながり
スクロースが最もう蝕誘発性の高い糖である理由は、酸産生の基質になることに加え、GTFにより不溶性グルカンを作れる唯一の一般的な糖だという点にある。グルコースやフルクトースは酸を産生させるが不溶性グルカンは作れない。この違いが、食品中の糖の質を評価する際の根拠となる。
問2
歯周病のred complexに含まれないのはどれか。
  • 1Treponema denticola
  • 2Tannerella forsythia
  • 3Porphyromonas gingivalis
  • ✔Aggregatibacter actinomycetemcomitans
  • 5上記のうち該当なし
解説:■正解の根拠
Socranskyのred complexはPorphyromonas gingivalis、Tannerella forsythia、Treponema denticolaの3菌種で構成され、深い歯周ポケットや歯周炎の進行と強く関連する。いずれもグラム陰性嫌気性菌である。

■他の選択肢
Aggregatibacter actinomycetemcomitansはred complexには含まれない。若年者に急速な骨吸収を来す侵襲性歯周炎(現行分類ではグレードCの歯周炎)との関連が深く、ロイコトキシンを産生して好中球を傷害する点が特徴である。

■臨床へのつながり
菌名の暗記にとどまらず、これらの細菌はバイオフィルム内で共同体を形成しており、単独では病原性を発揮しにくいという点が重要である。現在の病因論では、環境の変化により病原性の高い細菌が優位となり(生態学的プラーク仮説)、それに対する宿主の免疫応答が組織破壊を引き起こすと理解される。だからこそ抗菌薬より機械的なバイオフィルムの破壊が治療の主軸となる。
問3
急性ヘルペス性歯肉口内炎の原因病原体はどれか。
  • ✔単純ヘルペスウイルス1型
  • 2EBウイルス
  • 3コクサッキーウイルスA群
  • 4カンジダ・アルビカンス
  • 5水痘・帯状疱疹ウイルス
解説:■正解の根拠
急性ヘルペス性歯肉口内炎は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の初感染で、1〜3歳に好発する。高熱、著明な歯肉の発赤腫脹、多発する小水疱とアフタ様潰瘍、強い接触痛、所属リンパ節腫脹が特徴で、疼痛による摂食障害から脱水に至ることがある。

■他の選択肢
水痘・帯状疱疹ウイルスは水痘と帯状疱疹(三叉神経領域では片側性の分布が特徴)を起こす。コクサッキーウイルスA群はヘルパンギーナ(軟口蓋の水疱)と手足口病を起こす。EBウイルスは伝染性単核球症や毛様白板症に関連する。カンジダ・アルビカンスは白苔が擦過で除去できる点が異なる。

■臨床へのつながり
初感染後、HSV-1は三叉神経節に潜伏し、発熱・紫外線・ストレス・免疫低下を契機に再活性化して口唇ヘルペスとして再発する。この潜伏と再活性化はヘルペスウイルス科に共通する性質である。急性期は接触感染するため、術者の手指や器具を介した伝播(ヘルペス性瘭疽)にも注意する。
問4
Ⅳ型(遅延型)アレルギーはどれか。
  • 1血清病
  • 2アナフィラキシーショック
  • ✔歯科金属によるアレルギー性接触皮膚炎
  • 4気管支喘息
  • 5溶血性貧血
解説:■正解の根拠
歯科金属によるアレルギー性接触皮膚炎は、感作T細胞が主役となる細胞性免疫反応であり、Coombs & Gell分類のⅣ型(遅延型)にあたる。抗体を介さないため反応は遅く、24〜48時間後に最大となる。

■他の選択肢
アナフィラキシーショックと気管支喘息はIgEと肥満細胞が関与するⅠ型(即時型)。溶血性貧血は細胞表面抗原に対する抗体による細胞傷害型(Ⅱ型)。血清病は免疫複合体が組織に沈着して補体を活性化する免疫複合体型(Ⅲ型)である。

■臨床へのつながり
Ⅳ型であることは診断法に直結する。金属アレルギーの検査にはパッチテスト(貼付試験)を用い、48時間・72時間後に判定する。即時型のように直後に判定しないのはこのためである。陽性金属を含む補綴装置は除去し、セラミックやチタンなど代替材料への置換を検討する。
問5
唾液中に最も多く含まれる免疫グロブリンはどれか。
  • 1IgE
  • 2IgD
  • 3IgM
  • 4IgG
  • ✔IgA
解説:■正解の根拠
唾液など外分泌液中では分泌型IgA(sIgA)が主体である。分泌成分(secretory component)と結合することで蛋白分解酵素への抵抗性を獲得し、粘膜表面という過酷な環境でも機能できる。

■他の選択肢
血清中で最も多いのはIgGで、唯一胎盤を通過して新生児に受動免疫を与える。IgMは初回感染時に最初に産生され五量体で補体活性化能が高い。IgEはⅠ型アレルギーに関与し、IgDはB細胞表面の抗原受容体として働く。

■臨床へのつながり
sIgAの主な役割は細菌の凝集による粘膜付着の阻害であり、殺菌ではなく「付着させない」点が要点である。母乳中のsIgAが乳児の粘膜を守るのも同じ機構による。唾液分泌が低下すると、緩衝能・洗浄作用に加えこの免疫的防御も低下するため、口腔乾燥症ではう蝕とカンジダ症の双方のリスクが高まる。
問6
象牙質う蝕の進行に強く関与する細菌はどれか。
  • 1Porphyromonas gingivalis
  • 2Actinomyces naeslundii
  • ✔Lactobacillus属
  • 4Streptococcus mutans
  • 5Fusobacterium nucleatum
解説:■正解の根拠
Lactobacillus属は耐酸性が高く、形成された窩洞内や象牙質深部といった酸性かつ停滞しやすい環境で増殖し、う蝕の進行に強く関与する。う蝕活動性試験の指標としても用いられる。

■他の選択肢
Streptococcus mutansはエナメル質う蝕の開始(initiation)に強く関与する。不溶性グルカンを産生してバイオフィルムを形成する点が特徴で、進行段階では相対的に役割が小さくなる。Actinomyces属は根面う蝕との関連が指摘される。P. gingivalisとF. nucleatumは歯周病原細菌である。

■臨床へのつながり
「開始はmutans、進行はLactobacillus」という役割分担を押さえると、う蝕活動性試験の解釈がしやすい。ミュータンスレンサ球菌数が高ければ新たな病変の発生リスク、乳酸桿菌数が高ければ既存病変の存在や糖摂取頻度の高さを示唆する。ただしいずれも単独で予後を決めるものではなく、唾液分泌量・緩衝能・食習慣・既往う蝕と併せて総合的に評価する。
問7
結核の主な感染経路はどれか。
  • 1経口感染
  • ✔空気感染(飛沫核感染)
  • 3接触感染
  • 4飛沫感染
  • 5血液媒介感染
解説:■正解の根拠
結核菌は飛沫核(直径5μm以下)として長時間空気中に浮遊し、これを吸入することで感染する空気感染(飛沫核感染)である。飛沫感染より広範囲かつ長時間にわたり感染性が持続する。

■他の選択肢
飛沫感染はインフルエンザや風疹のように、5μmを超える飛沫が1〜2m以内で伝播するもので、通常のサージカルマスクで防げる。接触感染はMRSAやノロウイルス、経口感染は食中毒、血液媒介感染はB型・C型肝炎やHIVである。

■臨床へのつながり
空気感染への対応は標準予防策では不十分で、N95マスクの着用、陰圧室での管理といった空気感染予防策が必要となる。空気感染するのは結核、麻疹、水痘の3つと覚えておくとよい。歯科では長引く咳、微熱、体重減少といった問診情報から結核を疑い、診断が確定するまで待機的処置を延期し医科へ紹介する判断が求められる。
問8
補体の古典経路を活性化するのはどれか。
  • 1マンノース結合レクチン
  • 2細菌のリポ多糖
  • 3インターフェロン
  • ✔抗原抗体複合体(IgG・IgM)
  • 5ヒスタミン
解説:■正解の根拠
補体の古典経路は、IgGまたはIgMを含む抗原抗体複合体にC1qが結合することで開始される。抗体を必要とするため獲得免疫と連動した経路である。

■他の選択肢
細菌のリポ多糖など微生物表面成分により抗体非依存性に活性化されるのは第二(副)経路。マンノース結合レクチンが微生物表面の糖鎖に結合して開始されるのがレクチン経路である。ヒスタミンは肥満細胞由来の化学伝達物質、インターフェロンは抗ウイルス作用をもつサイトカインで、いずれも補体活性化の起点ではない。

■臨床へのつながり
三つの経路はいずれもC3の切断に収束し、そこから共通の作用(C3bによるオプソニン化、C3a・C5aによるアナフィラトキシン作用と走化性、C5b-9による膜侵襲複合体形成)を発揮する。歯周炎では歯肉溝滲出液中で補体が活性化され、好中球の遊走を促す一方、過剰な炎症反応として組織破壊にも関与する。

歯科薬理学全50問中 8問を掲載

問1
アミド型局所麻酔薬はどれか。
  • 1プロカイン
  • 2コカイン
  • ✔リドカイン
  • 4ベンゾカイン
  • 5テトラカイン
解説:■正解の根拠
リドカインはアミド型局所麻酔薬の代表で、肝臓のCYPで代謝される。ほかにメピバカイン、プリロカイン、ブピバカインがアミド型である。名称中に「i」が2つ含まれる(li-do-cai-ne など)という語呂で区別する方法も知られる。

■他の選択肢
プロカイン、テトラカイン、コカイン、ベンゾカインはいずれもエステル型で、血漿コリンエステラーゼにより分解される。その代謝産物であるパラアミノ安息香酸(PABA)がアレルギーの原因となりやすく、アミド型よりアレルギー頻度が高い。

■臨床へのつながり
代謝経路の違いは臨床判断に直結する。アミド型は肝機能障害で作用が遷延しうるため用量に配慮する。またアミド型そのもののアレルギーはまれで、実際にはカートリッジ内の防腐剤メチルパラベンや、アドレナリンの酸化防止剤である亜硫酸塩が原因のことがある。「麻酔でアレルギーが出た」という訴えには、何に反応したのかを丁寧に聴取する必要がある。
問2
局所麻酔薬にアドレナリンを添加する主な目的でないのはどれか。
  • 1麻酔効果の増強
  • 2局所の止血
  • 3麻酔作用時間の延長
  • ✔麻酔薬のpHを上昇させ効果発現を早める
  • 5局所麻酔薬の血中濃度上昇の抑制
解説:■正解の根拠
アドレナリン添加によって製剤のpHは上昇せず、むしろ低下する。アドレナリンは酸化されやすいため、安定化の目的で製剤は酸性側に調整されている(アドレナリン無添加製剤より低いpH)。したがって「pHを上昇させ効果発現を早める」は目的として誤りである。

■他の選択肢
血管収縮により局所の血流が減るため、麻酔薬の吸収が遅れて作用が増強・延長し(効果の増強、作用時間の延長)、全身への移行が抑えられて中毒が予防され(血中濃度上昇の抑制)、術野の出血が減る(止血)。これらはいずれも正しい目的である。

■臨床へのつながり
製剤が酸性であることは、急性炎症部位で麻酔が効きにくい理由とも関連する。炎症組織はさらに酸性に傾いており、局所麻酔薬(弱塩基)の非イオン型(神経膜を通過できる型)の割合が減るため効果が出にくい。この場合は炎症部位を避けた伝達麻酔の併用が有効となる。
問3
ワルファリン服用患者の抜歯前に確認すべき検査値はどれか。
  • ✔PT-INR
  • 2フィブリノゲン
  • 3APTT
  • 4出血時間
  • 5血小板数
解説:■正解の根拠
ワルファリンはビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ)の産生を阻害する。半減期の短い第Ⅶ因子を含む外因系が鋭敏に反映されるため、外因系を評価するプロトロンビン時間を国際標準化したPT-INRでモニターする。

■他の選択肢
APTTは内因系を反映し、ヘパリンや血友病の評価に用いる。血小板数と出血時間は一次止血(血小板)の評価であり、抗血小板薬や血小板減少症で問題となる。フィブリノゲンは共通経路の因子で、DICなどで低下する。

■臨床へのつながり
現在は、INRが治療域(概ね3.0以下)に管理されていれば、休薬せず局所止血処置下で抜歯するのが標準的な考え方である。自己判断での休薬は脳梗塞などの血栓塞栓症を招き、その不利益は術後出血のリスクを大きく上回る。なお直接経口抗凝固薬(DOAC)はPT-INRで評価できない点も併せて押さえておきたい。
問4
ビスホスホネート製剤の長期投与に関連して生じる重要な口腔合併症はどれか。
  • 1口腔乾燥症
  • ✔顎骨壊死
  • 3薬物性歯肉増殖
  • 4味覚障害
  • 5歯の着色
解説:■正解の根拠
ビスホスホネートをはじめとする骨吸収抑制薬の投与患者では、抜歯などの侵襲を契機に薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)を生じうる。骨のリモデリングが抑制され、感染に対する治癒能が低下することが背景にある。下顎に多い。

■他の選択肢
薬物性歯肉増殖の原因はフェニトイン、カルシウム拮抗薬(ニフェジピンなど)、シクロスポリンの3系統である。口腔乾燥は抗コリン作用をもつ薬物、味覚障害は亜鉛キレート作用をもつ薬物、歯の着色はテトラサイクリンやクロルヘキシジンが関連し、いずれもビスホスホネートの典型的合併症ではない。

■臨床へのつながり
最も重要なのは、投薬開始前に感染源を除去し口腔管理体制を整えておくことである。すでに投与中の場合、リスクは薬剤の種類・投与経路・期間・原疾患(骨粗鬆症か、がんの骨転移か)で大きく異なるため、医科主治医と連携して判断する。休薬すれば安全になるという単純な話ではなく、自己判断の休薬は骨折リスクを高める点にも注意が必要である。
問5
アセトアミノフェンについて正しいのはどれか。
  • 1作用機序はCOX-2の選択的阻害である
  • 2胃粘膜傷害がNSAIDsより強い
  • 3強い抗炎症作用をもつ
  • 4小児には禁忌である
  • ✔過量投与で重篤な肝障害を生じる
解説:■正解の根拠
アセトアミノフェンは過量投与により重篤な肝障害を生じる。通常はグルクロン酸抱合・硫酸抱合で処理されるが、過量ではCYPを介した経路が優位となり毒性代謝産物NAPQIが蓄積し、グルタチオンが枯渇して肝細胞壊死に至る。解毒にはN-アセチルシステインを用いる。

■他の選択肢
作用は主に中枢性の解熱鎮痛であり、末梢の抗炎症作用はほとんどないため「強い抗炎症作用」は誤り。作用機序はCOX-2の選択的阻害ではないと考えられている。胃粘膜傷害はNSAIDsより明らかに少ない。小児にも広く使用され禁忌ではない。

■臨床へのつながり
胃腸障害が少なく、アスピリン喘息を誘発しにくく、妊婦にも比較的安全とされることから、歯科でも重要な選択肢となる。一方で総合感冒薬などにも含まれるため、患者が併用して知らぬ間に過量となる危険がある。処方時には他剤との重複がないか確認することが実践的な注意点である。
問6
薬物性歯肉増殖を起こす薬物でないのはどれか。
  • ✔アセトアミノフェン
  • 2シクロスポリン
  • 3アムロジピン
  • 4ニフェジピン
  • 5フェニトイン
解説:■正解の根拠
アセトアミノフェンは薬物性歯肉増殖を起こさない。代表的な原因薬は、抗てんかん薬のフェニトイン、カルシウム拮抗薬(ニフェジピン、アムロジピンなど)、免疫抑制薬のシクロスポリンの3系統である。

■他の選択肢
フェニトイン、ニフェジピン、アムロジピン、シクロスポリンはいずれも原因薬に該当する。作用機序は完全には解明されていないが、線維芽細胞のコラーゲン代謝への影響が想定されている。

■臨床へのつながり
最も重要なのは、プラークの存在が増悪因子であるという点である。同じ薬を服用していても口腔衛生状態が良好なら増殖は軽度にとどまることが多い。したがって治療の基本は徹底したプラークコントロールと歯周基本治療であり、それでも改善しない線維性の増殖には歯肉切除を行う。薬剤の変更が可能かどうかは、必ず医科主治医と相談して判断する。
問7
感染性心内膜炎の予防投与として標準的なのはどれか。
  • 1抗ウイルス薬の投与
  • 2予防投与は不要である
  • 3処置直前の静脈内投与のみ
  • 4処置後3日間の内服
  • ✔アモキシシリンを処置1時間前に経口投与
解説:■正解の根拠
感染性心内膜炎の予防投与は、高リスク患者に対し出血を伴う歯科処置の前、原則としてアモキシシリン2g(小児50mg/kg)を処置1時間前に経口投与する。処置時に血中濃度が十分高くなっているようにするためである。

■他の選択肢
処置後の内服では菌血症の発生時点に間に合わない。経口投与が可能なら静脈内投与に限る必要はない。3日間の内服は不要で耐性菌を助長する。予防投与が不要というのは、高リスク患者に対しては誤りである。

■臨床へのつながり
対象は限定されており、人工弁置換術後、感染性心内膜炎の既往、一部の先天性心疾患(未修復のチアノーゼ性心疾患など)、心臓移植後の弁膜症が該当する。ペニシリンアレルギー例ではクリンダマイシンなどを用いる。最も強調すべきは、菌血症は日常の咀嚼やブラッシングでも生じるため、単回の予防投与より日頃の口腔衛生管理のほうが本質的な予防になるという点である。
問8
副腎皮質ステロイド薬の長期投与患者で外科処置時に注意すべきなのはどれか。
  • 1高血糖の消失
  • 2創傷治癒の促進
  • ✔急性副腎不全(副腎クリーゼ)
  • 4出血傾向のみ
  • 5感染防御能の亢進
解説:■正解の根拠
ステロイドの長期投与により視床下部-下垂体-副腎系が抑制されており、内因性のコルチゾール分泌能が低下している。手術や強いストレスに対して必要な増分を分泌できず、急性副腎不全(副腎クリーゼ)として血圧低下、ショック、意識障害を来す危険がある。

■他の選択肢
出血傾向のみが問題なのではない。創傷治癒は促進ではなく遅延する。感染防御能は亢進ではなく低下する。高血糖はむしろ生じる方向であり「消失」は誤りである。

■臨床へのつながり
侵襲の大きい処置では、主治医と相談のうえステロイドカバー(補充投与)を検討する。ただし通常の歯科処置の多くはストレスが限定的であり、一律の増量が必要とは限らない。並行して、易感染性への配慮(清潔操作、必要に応じた抗菌薬)、創傷治癒遅延を見込んだ経過観察、血糖管理、そして骨粗鬆症や消化性潰瘍といった他の副作用も念頭に置いた全身評価が求められる。

歯科理工学全50問中 8問を掲載

問1
アルジネート印象材について正しいのはどれか。
  • 1弾性ひずみが小さく硬い
  • 2硬化後は寸法安定性に優れ数日保管できる
  • 3石膏の硬化を促進する
  • 4硬化反応は付加型重合である
  • ✔水中保管により膨潤する
解説:■正解の根拠
アルジネート印象材は硬化後、水中に保管すると吸水して膨潤する。逆に空気中では離液(シネレシス)と蒸発により収縮する。いずれも寸法変化を招くため、撤去後は速やかに石膏を注入する必要がある。

■他の選択肢
硬化反応はアルギン酸ナトリウムと硫酸カルシウムによる不可逆的なゲル化(架橋)反応であり、付加型重合ではない。寸法安定性は悪く数日の保管はできない。弾性ひずみは大きく(柔らかい)、アンダーカットを乗り越えやすい反面、精度は劣る。またアルジネート中の成分は接触面の石膏の硬化を阻害する(促進ではない)。

■臨床へのつながり
実務上の要点は「即時に石膏を注ぐ」に尽きる。やむを得ず保管する場合は100%湿度環境(濡れガーゼで包み密閉)とし、水中保管はしない。精密さが要求される支台歯の印象にはシリコーンゴムやポリエーテルを用い、アルジネートは研究用模型や対合歯模型に使い分けるのが基本である。
問2
コンポジットレジンの重合収縮に伴う臨床的問題はどれか。
  • ✔辺縁部の間隙形成と術後疼痛
  • 2レジンの吸水性の消失
  • 3フィラー含有率の低下
  • 4重合後の硬化不足
  • 5色調の経時的漂白
解説:■正解の根拠
コンポジットレジンは重合時に約2〜3体積%収縮する。この収縮が接着界面に応力を生じさせ、接着が破壊されると辺縁に間隙が生じて術後疼痛、辺縁着色、二次う蝕の原因となる。

■他の選択肢
重合後の硬化不足は光の到達不足によるもので、収縮そのものの帰結ではない。レジンは吸水性を保持し、色調は経時的に着色・変色する方向に変化する。フィラー含有率は材料固有の値であり重合で変わらない。

■臨床へのつながり
対策の原理はC-factor(接着面と非接着面の比)にある。窩洞が深く箱状であるほどC-factorが高く、収縮応力を逃がしにくい。したがって1層2mm以下の積層填塞で1回あたりの収縮量を抑え、光の到達も確保する。加えて確実な防湿とエナメル質での接着の確保、低収縮材料の選択が有効である。
問3
陶材(セラミックス)の機械的性質として正しいのはどれか。
  • 1金属より熱伝導率が高い
  • 2延性に富み塑性変形しやすい
  • 3耐摩耗性が低い
  • ✔圧縮強さは大きいが脆性材料である
  • 5圧縮強さより引張強さが大きい
解説:■正解の根拠
陶材は圧縮強さが大きい一方で引張強さが小さく、塑性変形をほとんど示さない典型的な脆性材料である。表面や内部の微小欠陥(クラック、気孔)に応力が集中し、そこを起点として破折する。

■他の選択肢
引張強さが圧縮強さを上回ることはない。延性に乏しく塑性変形しないため「延性に富む」は誤り。熱伝導率は金属より低い(このため金属床義歯より温度が伝わりにくい)。耐摩耗性はむしろ高く、対合の天然歯を摩耗させることが問題となる。

■臨床へのつながり
脆性材料であることは支台歯形成の要件に直結する。十分な厚みを確保できるだけの削除量(材料ごとの必要厚径)を与え、鋭角や薄い部分を作らず、応力が集中しないよう角を丸める。また焼成後のグレージングにより表面欠陥を封鎖し強度を高めるとともに、対合歯の摩耗も抑える。
問4
チタンが歯科インプラント材料として優れる主な理由はどれか。
  • 1高い熱伝導率
  • ✔表面の不動態酸化被膜による生体親和性
  • 3高い展延性
  • 4低い融点
  • 5高い比重
解説:■正解の根拠
チタンは大気中で瞬時に表面へ緻密な酸化被膜(TiO₂)を自然形成する。この不動態被膜が高い耐食性と優れた生体親和性をもたらし、骨との直接結合(オッセオインテグレーション)を可能にする。

■他の選択肢
展延性は特に高くない。熱伝導率はむしろ低い部類である。融点は約1668℃と非常に高く、このため鋳造が難しく専用の装置と埋没材を要する。比重は約4.5と金属としては小さく軽量である。

■臨床へのつながり
不動態被膜が保護膜として働くことは、臨床上の注意点にもつながる。被膜が損傷すれば通常は再形成されるが、フッ化物の高濃度・酸性条件下では被膜が侵される可能性が指摘されており、チタンインプラント周囲への酸性フッ化物の使用には配慮が必要とされる。またチタンは弾性係数が他の金属より骨に近い点も、応力遮蔽を抑えるうえで有利に働く。
問5
歯冠修復材料の熱膨張係数について正しいのはどれか。
  • 1金属は歯質とほぼ同一である
  • 2コンポジットレジンは歯質より小さい
  • ✔歯質に近い値であることが望ましい
  • 4歯質より著しく大きいほど辺縁封鎖性が高い
  • 5熱膨張係数は辺縁漏洩と無関係である
解説:■正解の根拠
修復材料の熱膨張係数は歯質に近いことが望ましい。両者が乖離していると、飲食による温度変化のたびに界面に繰り返し応力が生じ、接着の劣化と辺縁漏洩(percolation)を招くためである。

■他の選択肢
歯質より著しく大きいほど封鎖性が高いというのは逆で、乖離が大きいほど不利である。熱膨張係数は辺縁漏洩と密接に関係する。金属もコンポジットレジンも歯質より熱膨張係数が大きく(レジンはとくに大きい)、歯質と同一ではない。

■臨床へのつながり
実際の材料で完全に一致させることは難しいため、臨床では接着による封鎖でこの不利を補う。エナメル質での確実な接着の確保、辺縁の適切な仕上げと研磨、必要に応じたグラスアイオノマー系材料の併用(サンドイッチテクニック)が、温度変化による界面の破壊を抑える実践的な手段となる。
問6
石膏の混水比を大きくした場合に生じる変化はどれか。
  • 1気泡が減少し表面が硬くなる
  • 2混水比は硬化性状に影響しない
  • 3硬化時間が短縮し強度が増す
  • ✔硬化時間が延長し強度が低下する
  • 5硬化膨張が増大する
解説:■正解の根拠
混水比(水/粉の重量比)を大きくする、すなわち水を多くすると、結晶核の密度が下がって結晶同士の絡み合いが減るため、硬化時間は延長し、硬化膨張と圧縮強さはともに低下する。

■他の選択肢
硬化時間が短縮し強度が増すのは混水比を小さくした場合。硬化膨張は増大ではなく減少する。混水比は硬化性状を左右する最も基本的な因子であり「影響しない」は誤り。水が多いと余剰水が蒸発した部分が気孔となり、表面はむしろ脆くなる。

■臨床へのつながり
石膏の種類による混水比の違いもこの原理で説明できる。普通石膏(β型、約0.5)は多孔質で水を多く要し低強度、超硬質石膏(α型、約0.22〜0.24)は緻密で水が少なく高強度・低膨張となる。精密な作業模型には超硬質石膏を用いる。現場では「水を足して混ぜやすくする」操作が精度と強度を犠牲にしていることを意識したい。
問7
鋳造体の適合を得るために鋳造収縮を補償するのはどれか。
  • 1鋳型の吸水
  • 2金属の凝固潜熱
  • ✔埋没材の硬化膨張と加熱膨張
  • 4スプルー線の変形
  • 5ワックスの熱膨張
解説:■正解の根拠
金属は凝固・冷却時に収縮するため、そのままでは鋳造体が小さくなり適合しない。これを埋没材の硬化膨張(および吸水膨張)と加熱(熱)膨張の合計によって補償し、あらかじめ鋳型を大きくしておくことで適合を得る。

■他の選択肢
ワックスの熱膨張はパターンの変形要因であり補償手段ではない。凝固潜熱は熱の放出であって寸法補償とは関係しない。鋳型の吸水は膨張の一要素ではあるが、単独で「収縮を補償するもの」として答えるには不十分である。スプルー線の変形は欠陥の原因となるだけである。

■臨床へのつながり
補償量の調整は、埋没材の種類、混水比、リング材(リングライナー)の使用の有無、加熱条件によって行う。膨張が不足すれば装置は入らず、過大なら緩くなる。石膏系埋没材は700℃以上で分解するため金合金など低融点合金に限られ、高融点のCo-Crやチタンにはリン酸塩系やエチルシリケート系を用いる、という材料選択の話ともつながっている。
問8
付加型シリコーンゴム印象材の特徴はどれか。
  • 1硬化時にエタノールを放出する
  • ✔寸法安定性に優れる
  • 3硬化反応に水を必要とする
  • 4硬化後に大きく収縮する
  • 5親水性が高く水中保管が必要である
解説:■正解の根拠
付加型シリコーンゴム(ビニルポリシロキサン)は付加重合により硬化し、副生成物をほとんど生じない。このため経時的な揮発による収縮が起こらず、寸法安定性に優れる。硬化後しばらく保管しても精度が保たれる。

■他の選択肢
エタノールを放出して収縮するのは縮合型シリコーンである。硬化反応に水を必要とせず、硬化後の大きな収縮もない。本来は疎水性であり水中保管も不要である(近年は界面活性剤配合の親水性タイプがある)。

■臨床へのつながり
実務上の注意点は重合阻害である。ラテックス手袋の硫黄化合物、歯肉圧排糸に用いた薬剤、レジンの未重合層などが接触すると硬化不良を起こす。この場合、印象面が粘着したまま細部が再現されない。ビニル製手袋を使う、圧排材を十分に洗い流すといった対策が必要となる。寸法安定性の高さから、複数の補綴装置を製作する精密印象に広く用いられる。

保存修復学全50問中 8問を掲載

問1
う蝕検知液で染色される部分はどれか。
  • 1第三象牙質
  • 2健全象牙質
  • ✔感染象牙質(う蝕象牙質外層)
  • 4う蝕象牙質内層
  • 5硬化象牙質
解説:■正解の根拠
う蝕検知液(プロピレングリコール溶液の酸性フクシンなど)は、細菌感染とコラーゲンの不可逆的変性が進んだう蝕象牙質外層(感染象牙質)を濃染する。この層は再石灰化が期待できないため除去の対象となる。

■他の選択肢
う蝕象牙質内層(罹患象牙質)はコラーゲン線維が保たれ再石灰化可能な層で、淡染にとどまるため保存する。健全象牙質、硬化象牙質、第三象牙質はいずれも染色されず、削除すべきでない。

■臨床へのつながり
この染め分けがMinimal Intervention(MI)の実践的な指標となる。ただし検知液は象牙細管の疎な部位や歯髄に近い部位で過剰に染まりやすく、これを鵜呑みにすると露髄を招く。染色の濃さと、探針で触れた硬さ(硬化して抵抗がある層は残す)を合わせて判断することが実際的である。
問2
グラスアイオノマーセメントの特徴として正しいのはどれか。
  • 1歯髄刺激性が非常に強い
  • 2歯質接着性がなく機械的維持のみによる
  • 3重合収縮が大きい
  • 4硬化直後の吸水・乾燥に強い
  • ✔フッ化物を徐放する
解説:■正解の根拠
グラスアイオノマーセメントはフルオロアルミノシリケートガラスを含み、硬化後もフッ化物を徐放する。これが周囲歯質の再石灰化と二次う蝕の抑制に寄与する。さらに周囲からフッ化物を取り込んで再放出する(リチャージ)性質もある。

■他の選択肢
ポリカルボン酸のカルボキシル基がハイドロキシアパタイトのカルシウムとキレート結合するため、化学的な歯質接着性をもつ(機械的維持のみは誤り)。歯髄刺激性は比較的低い。重合収縮はレジンより小さい。硬化初期は吸水・乾燥の影響を受けやすく、防湿と表面被覆が必要である。

■臨床へのつながり
「フッ化物徐放」「化学的接着」「水分にある程度寛容」という三点が、適応部位を決める。歯肉に近く防湿が難しく被着面が象牙質・セメント質となる根面う蝕、要介護高齢者の処置、乳歯の修復、サンドイッチテクニックの深部などで有利となる。一方、耐摩耗性と審美性はコンポジットレジンに劣る。
問3
象牙質知覚過敏症の発症機序として最も支持されている説はどれか。
  • 1電気的刺激説
  • ✔動水力学説
  • 3象牙芽細胞受容器説
  • 4化学伝達説
  • 5神経支配説
解説:■正解の根拠
Brännströmの動水力学説では、露出した象牙細管内の組織液が刺激(冷気、乾燥、浸透圧、擦過)により急速に移動し、その流れが歯髄側の神経終末を機械的に刺激して痛みを生じるとされる。現在最も広く支持されている。

■他の選択肢
神経支配説は象牙質内に神経が広く分布するとする説だが、神経線維は象牙芽細胞層近傍の一部にしか進入していないことが判明し支持されない。象牙芽細胞受容器説は象牙芽細胞が受容器として働くとする説で、決定的な証拠に乏しい。化学伝達説・電気的刺激説も主流ではない。

■臨床へのつながり
機序が「細管内の液体移動」であるからこそ、治療は「細管の封鎖」に集約される。フッ化物、シュウ酸塩、リン酸カルシウム系材料、コーティング材、レーザーはいずれも細管の閉塞を狙う。同時に、原因となる酸蝕や過度なブラッシング圧を是正しなければ再発するため、生活習慣の評価も欠かせない。
問4
ラバーダム防湿の目的でないのはどれか。
  • ✔歯髄の鎮静
  • 2感染制御
  • 3器具・薬剤の誤飲誤嚥防止
  • 4術野の乾燥維持
  • 5軟組織の排除と視野確保
解説:■正解の根拠
ラバーダム防湿に歯髄の鎮静作用はない。目的は術野の乾湿制御、視野の確保、器具・薬剤の誤飲誤嚥の防止、唾液や呼気による汚染の遮断であり、接着操作と根管治療では事実上必須である。

■他の選択肢
術野の乾燥維持は接着の成否を左右する。誤飲誤嚥の防止は根管治療器具や小器具の落下事故を防ぐ。軟組織の排除と視野確保、唾液・細菌の遮断による感染制御も、いずれも正当な目的である。

■臨床へのつながり
根管治療の本質は感染制御であり、いかに精密に形成しても唾液の侵入があれば失敗する。ラバーダムはその最も基本的な担保となる。加えて患者にとっても、薬液が粘膜に触れない、飛沫を吸い込まないという利点があり、装着の意義を説明したうえで用いることが望ましい。
問5
くさび状欠損の成因として近年重視されている概念はどれか。
  • 1エロージョン単独
  • 2形成不全
  • 3アトリション単独
  • ✔アブフラクション
  • 5アブレージョン単独
解説:■正解の根拠
アブフラクションは、偏心位での咬合力により歯頸部に生じる引張・剪断応力が、エナメル小柱の微小破壊を招くとする概念である。近年、くさび状欠損の成因として重視されている。

■他の選択肢
従来はブラッシングによる摩耗(アブレージョン)単独で説明されてきたが、それだけでは鋭利なくさび状の形態や、清掃状態のよい部位に生じることを説明しにくい。エロージョン(酸蝕)やアトリション(咬耗)も関与するが、単独の要因として断定はできない。形成不全は先天的な形成障害であり成因が異なる。

■臨床へのつながり
実際には複数の要因が重なって進行すると考えられ、修復するだけでは再発しうる。ブラッシング圧と方法の是正、酸性飲食物の摂取習慣の確認に加えて、早期接触や偏心位の干渉といった咬合の診査を行い、必要なら咬合調整やブラキシズムへの対応を組み合わせることが再発防止につながる。
問6
セルフエッチングプライマー(1ステップ・2ステップ)の特徴はどれか。
  • 1水洗操作が必要である
  • ✔スミヤー層を溶解・改質して取り込む
  • 3リン酸で別途エッチングが必須である
  • 4歯髄刺激が最も強い
  • 5スミヤー層を完全に洗い流す
解説:■正解の根拠
セルフエッチングシステムでは、酸性モノマーがスミヤー層を溶解しながら同時に下層の象牙質を脱灰し、そのまま浸透して重合する。スミヤー層は洗い流されるのではなく、改質されて接着層に取り込まれる。

■他の選択肢
スミヤー層を完全に洗い流すのは、リン酸による総エッチング(エッチアンドリンス)システムである。セルフエッチングでは水洗が不要で、リン酸による別途のエッチングも必須ではない。脱灰と浸透が同時に進むため脱灰層の底に樹脂が届かない領域が生じにくく、術後疼痛はむしろ少ない。

■臨床へのつながり
利点は、水洗が不要で操作が簡便、術後疼痛が少ない、技術感受性が比較的低いことである。一方、酸性度が穏やかなためエナメル質への脱灰力が総エッチングに劣る。そこで、エナメル縁だけを選択的にリン酸処理してからセルフエッチングプライマーを用いるセレクティブエッチングが推奨されることが多い。窩縁の位置に応じて使い分ける発想が実践的である。
問7
Blackの窩洞分類で前歯部隣接面に限局し切縁隅角を含まないのはどれか。
  • 12級窩洞
  • 21級窩洞
  • ✔3級窩洞
  • 45級窩洞
  • 54級窩洞
解説:■正解の根拠
Blackの窩洞分類において、3級窩洞は前歯部(切歯・犬歯)の隣接面に限局し、切縁隅角を含まないものを指す。

■他の選択肢
1級は小窩裂溝(臼歯咬合面、頬側小窩、上顎前歯舌面小窩)、2級は臼歯隣接面、4級は前歯隣接面で切縁隅角を含むもの、5級は全歯の唇頬・舌側歯頸部平滑面である。6級(切縁や咬頭頂)を加える分類もある。

■臨床へのつながり
分類は単なる名称ではなく、窩洞形成と修復の難易度・注意点に対応している。3級では隣接面の接触点の回復と唇側からの色調再現が課題となり、4級では切縁隅角を含むため咬合力への抵抗と強度が問題となる。2級では隣接面の接触点と歯肉側辺縁の適合が焦点となり、マトリックスとウェッジの使用が必須となる。
問8
コンポジットレジンを積層填塞する主な目的はどれか。
  • 1色調の単純化
  • 2操作時間の短縮
  • 3フィラー量の増加
  • 4接着材の省略
  • ✔重合収縮応力の低減と光の到達性の確保
解説:■正解の根拠
積層填塞の目的は二つある。一つは1回あたりの填塞量を減らして重合収縮応力を分散させ、接着界面の破壊を防ぐこと。もう一つは光が届く厚さ(一般に2mm以下)に制限して確実な重合深度を確保することである。

■他の選択肢
操作時間はむしろ延びる。フィラー量は材料固有の値で填塞法では変わらない。色調は積層により再現性が高まるので「単純化」は逆である。接着材の省略はできない。

■臨床へのつながり
収縮応力の逃げにくさはC-factor(接着面と非接着面の比)で評価される。窩洞が深く箱状なほどC-factorが高く不利となるため、斜め積層など収縮方向を制御する填塞法が工夫されている。近年はバルクフィルレジンにより一括填塞が可能な製品もあるが、その場合も製品ごとに規定された最大厚径と照射条件を守ることが前提となる。

歯内療法学全50問中 8問を掲載

問1
電気的根管長測定器(EMR)の測定が不正確になりやすいのはどれか。
  • 1生活歯髄
  • 2乾燥した根管内
  • 3根管充填直前の根管
  • 4狭窄根管
  • ✔根尖孔破壊が大きい歯
解説:■正解の根拠
電気的根管長測定器は、根尖狭窄部で口腔粘膜との間の電気抵抗(インピーダンス比)が一定値になる原理を利用する。根尖孔の破壊が大きいと、この電気的な「くびれ」が失われるため測定が不正確になる。根未完成歯でも同様である。

■他の選択肢
乾燥した根管内、狭窄根管、生活歯髄はいずれも測定を妨げる決定的な条件ではない(むしろ過度の電解質のほうが問題となる)。根管充填直前の乾燥した根管はむしろ測定に適した状態である。

■臨床へのつながり
誤差要因を整理しておくと実践的である。根管内に次亜塩素酸ナトリウム、血液、膿などの電解質が過剰にあると短く表示され、根管が乾きすぎていると測定不能になりやすい。また金属修復物やファイルが歯肉に接触すると誤差を生む。EMRとエックス線を併用し、両者が矛盾する場合は原因を検討することが安全である。
問2
次亜塩素酸ナトリウム溶液の主な作用はどれか。
  • ✔有機質の溶解と殺菌
  • 2歯質接着性の付与
  • 3硬組織形成の誘導
  • 4スミヤー層の無機質除去
  • 5象牙質の脱灰による根管拡大
解説:■正解の根拠
次亜塩素酸ナトリウムは強力な有機質溶解作用と殺菌作用をもつ。壊死組織、残存歯髄、コラーゲン、細菌バイオフィルムを溶解・破壊し、器具が届かない側枝やイスムスの清掃にも寄与する。

■他の選択肢
スミヤー層のうち無機質成分の除去にはEDTA(キレート剤)を用い、両者を交互に使用することでスミヤー層全体が除去できる。歯質接着性の付与や硬組織形成の誘導(水酸化カルシウムやMTAの作用)は次亜塩素酸ナトリウムの作用ではない。象牙質の脱灰による根管拡大も行わない。

■臨床へのつながり
強力であるがゆえに、根尖孔外へ溢出すると激痛と広範な腫脹(次亜塩素酸事故)を起こす。予防には、サイドベント型の針を用い、根管壁に固定されない位置で圧をかけずに緩徐に注入することが重要である。作業長より短い位置にとどめ、大量・低圧・長時間を原則とする。
問3
水酸化カルシウム製剤の作用として誤っているのはどれか。
  • 1滲出液の抑制
  • ✔即時に高い封鎖性を発揮する永久的根管充填材である
  • 3強アルカリ性による殺菌作用
  • 4内部吸収の停止に有効な場合がある
  • 5硬組織形成の誘導
解説:■正解の根拠
水酸化カルシウムは溶解・吸収されるため、永久的な根管充填材にはならない。またペースト状で即時に高い封鎖性を発揮するものでもない。あくまで貼薬・暫間の材料であり、最終的にはガッタパーチャとシーラーによる根管充填が必要である。

■他の選択肢
pH約12の強アルカリによる殺菌作用、硬組織形成の誘導(覆髄、アペキシフィケーション)、滲出液の抑制はいずれも正しい作用である。内部吸収では原因となる破歯細胞の活動を抑え、進行の停止に有効な場合がある。

■臨床へのつながり
この「一時的な材料である」という性質は治療計画に影響する。貼薬期間が長すぎると象牙質を脆弱化させ歯根破折のリスクを高めるとの報告があり、漫然と長期に留置することは避ける。一方、湿潤下でも硬化し封鎖性と硬組織形成能を併せもつMTAは、穿孔封鎖、逆根管充填、覆髄など永続的な封鎖が必要な場面で用いられる。
問4
歯髄壊死の診断に最も有用な所見はどれか。
  • 1冷刺激で一過性の疼痛
  • 2プロービングデプスの増加
  • 3打診痛のみ
  • ✔電気歯髄診で反応なし
  • 5歯の動揺
解説:■正解の根拠
完全な歯髄壊死では歯髄組織が生活性を失うため、電気歯髄診に反応しない。温度診でも反応が消失する。これが最も直接的に歯髄の生死を示す所見である。

■他の選択肢
冷刺激で一過性の疼痛が生じるのは生活歯髄が存在する証拠であり、可逆性歯髄炎などを示唆する。打診痛は根尖歯周組織の炎症を示すが歯髄の生死は判定できない。歯の動揺とプロービングデプスの増加は歯周組織の状態を反映する所見である。

■臨床へのつながり
単独の検査で断定しないことが要点である。多根歯では一部の根管に生活歯髄が残り反応することがあり、外傷直後には一過性に反応が消失することもある。逆に石灰化の進んだ歯や失活歯でも金属修復物を介して誤って反応することがある。複数の検査と対照歯との比較、エックス線所見、経過観察を統合して診断する。
問5
側方加圧根管充填法について正しいのはどれか。
  • 1シーラーは不要である
  • 2根管の湾曲が強いほど適応が広い
  • ✔スプレッダーで既に填入したガッタパーチャを側方に圧接する
  • 4主に乳歯の根管充填に用いる
  • 5加熱したガッタパーチャを一塊で填入する
解説:■正解の根拠
側方加圧根管充填法では、マスターポイントを填入した後、スプレッダーを側方へ挿入して既存のガッタパーチャを根管壁へ圧接し、生じた空隙にアクセサリーポイントを順次追加して緊密化する。

■他の選択肢
加熱軟化した材料を一塊で填入するのは垂直加圧法や単一充填法(キャリアベース法など)である。ポイント間やポイントと根管壁の微細な間隙を封鎖するのはシーラーであり必須である。湾曲が強い根管ではスプレッダーの到達が制限されるため適応はむしろ狭くなる。乳歯には吸収性のペーストを用いる。

■臨床へのつながり
実技上の注意として、スプレッダーの過度な加圧は垂直性歯根破折の原因となりうる。細めのスプレッダーを選び、無理な力を加えず、作業長より1〜2mm短い位置まで挿入することが目安となる。また根管形成でテーパーが付与されていないと緊密な充填は得られないため、形成の質が充填の質を規定する。
問6
直接覆髄の適応として最も適切なのはどれか。
  • 1広範な感染象牙質を伴う露髄
  • 2歯髄壊死歯
  • 3自発痛が持続する不可逆性歯髄炎
  • ✔無菌的操作下で生じた小範囲の機械的露髄
  • 5根尖病巣を有する歯
解説:■正解の根拠
直接覆髄の適応は、ラバーダム下の無菌的操作中に生じた小範囲(概ね1〜2mm以下)の機械的露髄で、露髄面から止血が得られ、歯髄が健全と判断される場合である。汚染がなく歯髄の炎症も限定的なため、良好な予後が期待できる。

■他の選択肢
自発痛が持続する不可逆性歯髄炎や歯髄壊死歯では歯髄の保存は不可能である。広範な感染象牙質を伴う露髄では細菌汚染が及んでおり適応外。根尖病巣がある歯は既に歯髄が失活している。

■臨床へのつながり
覆髄材には水酸化カルシウム製剤とMTAが用いられ、封鎖性と硬組織形成能の点でMTAの成績が良好と報告されている。成功の鍵は、無菌的操作、確実な止血(止血できないほどの出血は歯髄の炎症が強いことを示唆する)、そして緊密な最終修復による細菌の遮断である。術後は自発痛の有無と歯髄診の反応を定期的に確認する。
問7
急性化膿性根尖性歯周炎の典型的所見はどれか。
  • 1電気歯髄診での過敏な反応
  • 2エックス線での著明な透過像が必発
  • 3冷刺激で誘発される一過性の痛み
  • 4歯冠の変色のみ
  • ✔強い打診痛と歯の挺出感
解説:■正解の根拠
急性化膿性根尖性歯周炎では、根尖部の炎症と滲出液貯留により歯根膜腔の内圧が上昇する。このため歯が押し出された感じ(挺出感、咬むと高く当たる)と、著明な垂直的打診痛、拍動性の自発痛を呈する。

■他の選択肢
冷刺激による一過性の痛みは生活歯髄の存在を示す所見で、可逆性歯髄炎などを示唆する。電気歯髄診では通常反応しない(歯髄は失活している)。急性発症例ではエックス線的な透過像がまだ明瞭でないことが多く「必発」は誤り。歯冠の変色のみでは急性症状を説明できない。

■臨床へのつながり
急性期にエックス線で異常がないことは珍しくない。骨梁の変化が画像に現れるには一定量の脱灰が必要だからである。したがって「画像に写らないから根尖病変ではない」とは判断できず、症状と打診・触診、歯髄診、既往(既根管治療歯か)を統合して診断する。対応は排膿路の確保と感染源の除去であり、抗菌薬のみでは根本的な解決にならない。
問8
根管形成で目標とされる形態はどれか。
  • 1根尖孔を大きく破壊した形態
  • 2不規則な階段状の形態
  • ✔根尖狭窄部を保持した歯冠側に向かうフレアー(漏斗)状形態
  • 4根尖から歯冠側に向かって細くなる形態
  • 5全長にわたり同一径の円筒形
解説:■正解の根拠
根管形成の原則は、根尖狭窄部の位置と本来の大きさを保持しつつ、歯冠側に向かって連続的に太くなるテーパー(フレアー)形態を付与することである。これにより洗浄液が根尖付近まで到達し、かつ根管充填時に緊密な封鎖が得られる。

■他の選択肢
根尖から歯冠側に向かって細くなる形態や、全長同一径の円筒形では洗浄液の交換と充填材の緊密化ができない。根尖孔を大きく破壊すると充填材が溢出し、電気的根管長測定も不正確になる。階段状の形態(レッジ)は器具操作の失敗であり、以後の器具の到達を妨げる。

■臨床へのつながり
一方で過剰な拡大は歯質を薄くし、ストリップパーフォレーションや垂直性歯根破折を招く。とくに湾曲根管の内湾側は薄いため注意を要する。近年は「必要最小限の形成で最大限の洗浄」という考え方が重視され、Ni-Tiファイルによる保存的なテーパー形成と、超音波などを併用した洗浄の強化が組み合わせられている。

歯周病学全50問中 8問を掲載

問1
臨床的アタッチメントレベル(CAL)の測定基準点はどれか。
  • 1咬合平面
  • 2歯肉辺縁
  • 3歯槽骨頂
  • ✔セメント-エナメル境
  • 5根尖
解説:■正解の根拠
臨床的アタッチメントレベル(CAL)はセメント-エナメル境(CEJ)からポケット底までの距離であり、歯周組織の破壊量そのものを反映する。基準点が歯の解剖学的な不動点であるため、歯肉の状態に左右されない。

■他の選択肢
歯肉辺縁を基準とするのはプロービングデプス(PD)で、歯肉の腫脹で深く、退縮で浅く測定されるため破壊量を正確に表さない。歯槽骨頂と根尖はプローブで直接測定できない。咬合平面は補綴の基準であり歯周検査とは無関係である。

■臨床へのつながり
PDとCALの併記が重要となる理由がここにある。たとえば治療後にPDが4mmから3mmへ改善しても、それが炎症の消退による歯肉退縮の結果であればCALは変わっておらず、付着は回復していない。CAL=PD+歯肉退縮量(またはPD−歯肉増大量)の関係を理解し、両者を記録することが長期評価の前提となる。
問2
歯周基本治療に含まれないのはどれか。
  • 1プラークコントロール指導
  • ✔歯周外科手術(フラップ手術)
  • 3抜歯が必要な予後不良歯の抜去
  • 4スケーリング・ルートプレーニング
  • 5習癖・咬合性外傷への対応
解説:■正解の根拠
歯周外科手術(フラップ手術)は歯周基本治療には含まれない。基本治療後の再評価を経て、改善が不十分な部位に対して適応を判断する「歯周外科治療」の段階に属する。

■他の選択肢
プラークコントロール指導と動機づけ、スケーリング・ルートプレーニング、不適合修復物の是正、う蝕処置、予後不良歯の抜去、習癖と咬合性外傷への対応(暫間固定、咬合調整)はいずれも基本治療に含まれる。原因除去療法としてまとめて理解するとよい。

■臨床へのつながり
治療の流れは、検査と診断→歯周基本治療→再評価→(必要に応じ)歯周外科→口腔機能回復治療→SPTである。この順序には意味があり、炎症を制御しプラークコントロールが確立していない段階で外科処置を行っても良好な治癒は得られない。再評価はこの分岐点であり、PD・BOP・CAL・プラークコントロール状態を初診時と比較して次の判断を行う。
問3
歯周組織再生療法に用いられないのはどれか。
  • ✔歯肉剥離掻爬術単独
  • 2GTR法(遮断膜)
  • 3エナメルマトリックスデリバティブ
  • 4自家骨移植
  • 5塩基性線維芽細胞増殖因子製剤
解説:■正解の根拠
歯肉剥離掻爬術(フラップ手術)単独では、失われた付着を再生させることはできない。感染源の除去と清掃可能な形態の獲得が目的であり、治癒は主として長い上皮性付着による修復となる。

■他の選択肢
GTR法(遮断膜)、エナメルマトリックスデリバティブ、塩基性線維芽細胞増殖因子製剤、自家骨をはじめとする骨移植材は、いずれもセメント質・歯根膜・歯槽骨の再生を目指す再生療法の手段である。

■臨床へのつながり
再生療法は適応の見極めが結果を大きく左右する。血餅の保持と細胞供給の面で有利な、狭く深い3壁性の垂直性骨欠損が最もよい適応で、壁数が減るほど、また水平性骨吸収では再生は困難となる。加えて、炎症の制御、良好なプラークコントロール、禁煙が成功の前提条件である。
問4
二次性咬合性外傷の説明として正しいのはどれか。
  • 1乳歯にのみみられる
  • 2健全な歯周組織に過大な咬合力が加わった状態
  • 3歯髄壊死が必発である
  • 4歯周炎とは無関係である
  • ✔歯周組織の支持が減少した歯に正常な咬合力が加わった状態
解説:■正解の根拠
二次性咬合性外傷は、歯周炎などにより支持組織が減少した歯に、通常の(正常範囲の)咬合力が加わって外傷性変化を生じる状態をいう。支持が減っているため、以前は問題のなかった力が過大な負担となる。

■他の選択肢
健全な歯周組織に過大な咬合力が加わるのは一次性咬合性外傷で、原因はブラキシズムや早期接触、過高な修復物などである。乳歯に限られるものではなく、歯髄壊死も必発ではない。歯周炎による支持の喪失が前提となるため「歯周炎とは無関係」も誤りである。

■臨床へのつながり
対応の方向が両者で異なる点が重要である。一次性では過大な力の除去(咬合調整、ブラキシズムへの対応)が中心となる。二次性では、まず炎症の制御によりこれ以上の支持喪失を防ぐことが第一で、そのうえで暫間固定や連結、咬合の是正により力を分散させる。咬合調整のみで炎症を放置しても改善しない。
問5
根分岐部病変Lindhe分類のⅡ度に該当するのはどれか。
  • 1プローブが分岐部を頬舌的に貫通する
  • 2分岐部が完全に露出している
  • ✔水平的探査が可能だが分岐部を貫通しない
  • 4歯根が離開している
  • 5根分岐部に病変がない
解説:■正解の根拠
Lindhe分類のⅡ度(2度)は、プローブによる水平的探査が歯の幅径の1/3を超えて可能であるが、分岐部を貫通しない段階を指す。1度は1/3未満、3度は頬舌的に完全に貫通するものである。

■他の選択肢
プローブが分岐部を頬舌的に貫通するのは3度である。「分岐部が完全に露出している」は歯肉退縮により分岐部が口腔に露出した状態を指す表現で、Glickmanの分類のⅣ級に近い概念である。「歯根が離開している」は歯根の形態的特徴、「病変がない」は0度にあたる。

■臨床へのつながり
根分岐部病変が予後を大きく左右するのは、清掃器具が届かず、スケーラーによる完全なデブライドメントも困難だからである。度数が進むほど、トンネリング、ルートセパレーション、ヘミセクションやトライセクションによる予後不良根の抜去、あるいは抜歯といった、清掃可能な状態を作るための処置が検討される。
問6
生物学的幅径(biologic width)の平均値として適切なのはどれか。
  • 1約1mm
  • 2約8mm
  • 3約4mm
  • 4約6mm
  • ✔約2mm
解説:■正解の根拠
生物学的幅径は、上皮性付着(平均約0.97mm)と結合組織性付着(平均約1.07mm)の合計で、およそ2mmとされる(Gargiuloらの報告)。歯槽骨頂から歯肉溝底までの、歯面に付着している軟組織の幅を指す。

■他の選択肢
約1mmでは上皮性付着のみに相当し不十分。4mm、6mm、8mmはいずれも過大である。なお歯肉溝(約1mm)を加えると、歯槽骨頂から歯肉辺縁までは約3mmとなる。

■臨床へのつながり
修復物や補綴装置の辺縁がこの幅径を侵すと、持続的な歯肉の炎症、出血、骨吸収を招き、いかに清掃しても改善しない。深いう蝕や歯冠破折でマージンを骨頂近くに設定せざるをえない場合は、歯冠長延長術(骨整形を伴う)か矯正的挺出により、健全歯質を歯肉縁上へ引き出してから補綴に移る。フェルールの確保という補綴側の要求とも密接に関係する概念である。
問7
妊娠関連歯肉炎の増悪に関与するとされる細菌はどれか。
  • 1Lactobacillus casei
  • 2Candida albicans
  • 3Actinomyces israelii
  • ✔Prevotella intermedia
  • 5Streptococcus mutans
解説:■正解の根拠
Prevotella intermediaは、エストロゲンやプロゲステロンをビタミンK類似物質として増殖に利用できる。このため妊娠期にこれらの性ホルモンが増加すると菌数が増え、歯肉炎を増悪させる。

■他の選択肢
Streptococcus mutansとLactobacillus caseiはう蝕原性細菌。Candida albicansは真菌で口腔カンジダ症の起因菌。Actinomyces israeliiは放線菌症の起因菌であり、いずれも妊娠性歯肉炎の増悪因子ではない。

■臨床へのつながり
重要なのは、ホルモンは修飾因子であってプラークが必要条件であるという点である。したがって対応の基本は徹底したプラークコントロールであり、妊娠したから必ず歯肉炎になるわけではない。歯科処置は安定期(中期)に行うのが望ましく、仰臥位低血圧症候群への配慮、投薬の選択(アセトアミノフェンを基本とし、後期のNSAIDsは避ける)にも注意する。歯周炎と早産・低体重児出産との関連も報告されている。
問8
角化歯肉の獲得を目的とする術式はどれか。
  • 1スケーリング・ルートプレーニング
  • ✔遊離歯肉移植術
  • 3フラップ手術
  • 4歯肉切除術
  • 5歯肉弁根尖側移動術のみ
解説:■正解の根拠
遊離歯肉移植術(FGG)は、口蓋から上皮を含む歯肉を採取して移植する術式で、角化歯肉幅の増加を確実に得られる。移植片が角化能をもつ組織であるため、移植部位に角化歯肉が形成される。

■他の選択肢
歯肉切除術は歯肉を切除するため角化歯肉幅はむしろ減少する。フラップ手術は感染源の除去が目的。歯肉弁根尖側移動術は角化歯肉を根尖側へ移動して幅を確保する術式であり有効だが、既存の角化歯肉が不足している場合には限界がある。SRPは非外科的処置である。

■臨床へのつながり
FGGは角化歯肉の獲得に優れる一方、移植片の色調が周囲と異なりパッチ状に見えるため審美領域には不向きである。審美性と根面被覆を重視する場合は、上皮を含まない上皮下結合組織移植術(CTG)を選択する。角化歯肉が十分にあるとブラッシング時の疼痛が少なく清掃しやすいため、歯周組織にもインプラント周囲にも有利に働く。

クラウンブリッジ・部分床義歯全50問中 8問を掲載

問1
全部被覆冠の支台歯形成における軸面テーパー(対向軸面のなす角)として最も適切なのはどれか。
  • 1約45度
  • ✔約6度
  • 3約20度
  • 4約30度
  • 50度
解説:■正解の根拠
軸面テーパーは片側3度、対向する軸面のなす角として約6度が理想とされる。この程度であれば、十分な維持力を保ちつつ、印象・試適・装着時の着脱と適合が確保できる。

■他の選択肢
0度(完全に平行)では理論上の維持力は最大だが、実際にはわずかなアンダーカットでも装着できず、セメントの逃げ道もないため浮き上がりを生じる。20度、30度、45度と大きくなるほど維持力と抵抗形態は急速に低下し、脱離の原因となる。

■臨床へのつながり
実際の臨床ではタービンの角度の制約や視野の問題から、意図せず過大なテーパーになりやすい。維持力は軸面の高径と表面積にも依存するため、支台歯が短い症例ではテーパーの管理がとくに重要となる。維持が不足する場合には、軸面に溝(グルーブ)や小窩を付与する、接着性セメントを選択するなどの対応をとる。
問2
ポンティック基底面形態のうち、清掃性が最も優れるのはどれか。
  • 1鞍状型
  • 2オベイト型
  • 3偏側型
  • ✔離底型(衛生型)
  • 5リッジラップ型
解説:■正解の根拠
離底型(サニタリー型、衛生型)は基底面が顎堤から明確に離れているため、フロスや歯間ブラシが自由に通り、自浄性・清掃性に最も優れる。

■他の選択肢
鞍状型は顎堤との接触面積が最も大きく清掃が困難で、粘膜の炎症を招くため原則として避ける。リッジラップ型は唇頬側のみを顎堤に接触させ審美と清掃性を折衷したもの。オベイト型は顎堤の陥凹部に卵形の基底面を入れる形態で、審美性は最も高いが清掃には配慮を要する。偏側型も一部が接触する形態である。

■臨床へのつながり
清掃性と審美性は基本的に相反するため、部位で使い分ける。離底型は基底面下に空隙が見えるうえ食物や空気が漏れるため、通常は下顎臼歯部に限られる。前歯部ではオベイト型やリッジラップ型を選び、その代わりスーパーフロスによる基底面の清掃を必ず指導する。この清掃指導の有無がブリッジの長期予後を左右する。
問3
部分床義歯のレストの主な役割はどれか。
  • 1義歯の着脱方向の規制
  • 2義歯の把持
  • ✔咬合力を歯軸方向へ伝達する
  • 4審美性の回復
  • 5隣接歯の移動の誘導
解説:■正解の根拠
レストの主な役割は「支持」、すなわち咬合力を支台歯の歯軸方向へ伝達し、義歯の沈下を防止することである。レストシートは咬合面や舌面に形成し、力が歯軸に沿って伝わる形態とする。

■他の選択肢
着脱方向の規制はガイドプレーンの役割。義歯の側方移動に抵抗する把持は拮抗腕や大連結子が担う。離脱に抵抗する維持は維持腕(鉤尖)が担当する。審美性の回復は人工歯と義歯床、隣接歯の移動の防止は接触関係の回復による。

■臨床へのつながり
「支持・把持・維持」という3要素を、どの構成要素が担っているかを整理して理解することが設計の基礎となる。レストシートの形成が浅いとレストが厚みを確保できず破折し、逆に形態が不適切だと力が歯軸から外れて支台歯に側方力を与える。支台歯の長期保存という観点から、レストの位置と形態は設計上きわめて重要である。
問4
Aker(エーカース)クラスプについて正しいのはどれか。
  • 1義歯の沈下を許容する設計である
  • 2主に前歯部に用いる
  • 3レストを有しない
  • 4両側性の遊離端欠損に第一選択となる
  • ✔鉤尖がアンダーカット部に入り維持を得る
解説:■正解の根拠
Akerクラスプは、支台歯の最大豊隆線(サベイライン)を越えたアンダーカット部に維持腕の鉤尖を置いて維持を得る二腕鉤である。これに対側の拮抗腕(把持)と咬合面レスト(支持)を備え、支持・把持・維持の3要素を満たす。

■他の選択肢
レストを有するため「レストを有しない」は誤り。主に臼歯部に用いる。義歯の沈下を許容する設計ではなく、レストにより沈下を防止する。両側性遊離端欠損(KennedyⅠ級)では義歯の沈下時に支台歯へ有害な側方力とねじり力が加わるため第一選択とはならず、RPIクラスプなどが選択される。

■臨床へのつながり
クラスプ選択は「回転中心をどこに置き、義歯が沈下したときに支台歯へどの向きの力が加わるか」で決まる。RPIクラスプは近心レスト・隣接面板・Iバーの組み合わせにより、沈下時にIバーが支台歯から離れる方向に働くよう設計されており、遊離端症例で支台歯を保護する代表的な工夫である。
問5
支台歯にフェルールを確保する主な目的はどれか。
  • ✔歯根破折の防止
  • 2歯周ポケットの改善
  • 3印象採得の容易化
  • 4歯髄の保護
  • 5審美性の向上
解説:■正解の根拠
フェルール効果とは、支台築造した歯において健全歯質を全周にわたり高さ1.5〜2mm以上確保し、補綴装置がこれを帯状に抱え込む状態をいう。ポストに加わる応力を歯質へ分散させることで、歯根破折とポストの脱離を防ぐ。

■他の選択肢
審美性の向上、歯髄の保護(そもそも失活歯である)、歯周ポケットの改善、印象採得の容易化はいずれもフェルールの目的ではない。

■臨床へのつながり
歯質が不足しフェルールが確保できない場合、無理に深く形成すると生物学的幅径(約2mm)を侵し、持続的な歯肉の炎症と骨吸収を招く。この場合は歯冠長延長術による骨整形か、矯正的挺出により歯質を歯肉縁上へ引き出す処置を先行させる。フェルールが得られない失活歯の予後は不良であり、抜歯とインプラントを含めた選択肢の比較検討が必要となることもある。
問6
Kennedy分類Ⅰ級はどれか。
  • 1前歯部を含む正中を越える中間欠損
  • ✔両側性遊離端欠損
  • 3片側性中間欠損
  • 4片側性遊離端欠損
  • 5上記のいずれでもない
解説:■正解の根拠
Kennedy分類のⅠ級は両側性遊離端欠損である。すなわち左右いずれにも最後方の残存歯より後方に欠損があり、義歯の後方が支台歯で支えられない状態を指す。

■他の選択肢
Ⅱ級は片側性遊離端欠損、Ⅲ級は片側性中間欠損、Ⅳ級は正中を越える単一の前歯部中間欠損である。Ⅳ級には修飾(modification)を付さないという規則がある点も特徴的である。

■臨床へのつながり
Ⅰ級・Ⅱ級の遊離端欠損は設計上とくに難しい。義歯後方が粘膜に支持されるため、咬合時に沈下し、その回転運動が支台歯へ有害な側方力とねじり力を与えるからである。対策として、近心レストとRPIクラスプによる回転中心の制御、義歯床の可及的な拡大による粘膜負担の分散、オルタードキャスト法などの機能印象、間接支台装置による離脱の防止を組み合わせる。
問7
サベイングの目的として正しいのはどれか。
  • ✔義歯の着脱方向と最大豊隆線・アンダーカット量の決定
  • 2咬合高径の決定
  • 3咬合平面の設定
  • 4歯髄の生死の判定
  • 5歯周ポケットの測定
解説:■正解の根拠
サベイングは、サベイヤーを用いて模型を分析し、義歯の着脱方向を決定したうえで各支台歯の最大豊隆線(サベイライン)を描記し、維持腕の鉤尖を置くべきアンダーカット量をアンダーカットゲージで測定する操作である。

■他の選択肢
咬合高径の決定、咬合平面の設定、歯髄の生死の判定、歯周ポケットの測定はいずれもサベイングの目的ではない。

■臨床へのつながり
サベイングは設計の出発点である。着脱方向が決まって初めて、ガイドプレーンの位置、クラスプの形態と鉤尖の位置、ブロックアウトすべきアンダーカットが定まる。着脱方向を変えれば維持力も審美性も変わるため、複数の方向を検討して最適解を選ぶ。この分析を経ずにクラスプの種類だけを決めると、装着できない、維持が得られない、審美性が損なわれるといった問題が生じる。
問8
大連結子の役割として適切なのはどれか。
  • 1支台歯の挺出防止のみ
  • 2維持力の付与
  • 3印象採得の補助
  • ✔義歯各部の一体化と咬合力の分散
  • 5審美性の付与
解説:■正解の根拠
大連結子は義歯の各構成要素(義歯床、支台装置、間接支台装置)を強固に連結して一体化し、咬合力を広範囲に分散・伝達する役割を担う。剛性が高いことが要件となる。

■他の選択肢
維持力はクラスプの維持腕、支持はレスト、把持は拮抗腕やガイドプレーンが担う。支台歯の挺出防止はレストの副次的効果に含まれるが大連結子の主目的ではない。審美性の付与や印象採得の補助も役割ではない。

■臨床へのつながり
剛性が不足すると義歯がたわみ、力が均等に分散されず支台歯に有害な力が集中する。このため金属を用い、必要な幅と厚みを確保する。設計上は、歯肉縁から十分(下顎舌側バーで3mm以上)離す、可動粘膜や小帯を避ける、舌感を損なわない形態とする、といった配慮が必要である。上顎ではパラタルバーやパラタルストラップ、下顎ではリンガルバーが代表的である。

全部床義歯全50問中 8問を掲載

問1
上顎全部床義歯の後縁封鎖に関わる基準線はどれか。
  • 1スピーの彎曲
  • 2カンペル平面
  • 3咬合平面
  • ✔アーライン
  • 5フランクフルト平面
解説:■正解の根拠
アー(ah)ラインは「アー」と発音させたときに動く軟口蓋の可動部と、動かない硬口蓋側との境界を示す線である。上顎義歯の後縁はこの線を目安に設定し、後堤法により封鎖を確実にする。

■他の選択肢
カンペル平面(鼻翼下縁と耳珠上縁を結ぶ平面)は咬合平面の傾斜を決める基準、フランクフルト平面(眼窩下縁と外耳道上縁)は頭位の基準となる。咬合平面は上下の人工歯が接する仮想平面、スピーの彎曲は下顎歯列の前後的な彎曲で、いずれも後縁封鎖とは無関係である。

■臨床へのつながり
上顎義歯の維持は辺縁封鎖による陰圧(吸着)に大きく依存するため、後縁の位置決定は成否を分ける。後縁が短いと空気が漏れて吸着せず、長すぎると嘔吐反射を誘発したり、軟口蓋の動きで義歯が外れる。側方の指標はハミュラーノッチ、正中付近では口蓋小窩も参考になり、これらを結んで後縁線を決める。
問2
無歯顎における顎堤吸収の方向として正しいのはどれか。
  • ✔上顎は口蓋側(求心性)、下顎は唇頬側(遠心性)に吸収する
  • 2上顎は唇頬側、下顎は舌側に吸収する
  • 3吸収に方向性はない
  • 4上下顎とも舌側に吸収する
  • 5上下顎とも唇頬側に吸収する
解説:■正解の根拠
上顎顎堤は唇頬側の骨吸収が優位に進むため、全体として内側(口蓋側)へ縮小する。これを求心性吸収という。下顎は舌側の吸収が優位で外側へ広がるため遠心性吸収という。

■他の選択肢
上顎が唇頬側へ、下顎が舌側へ吸収するのは逆である。上下顎とも同方向に吸収するというのも誤りで、方向性は明確に存在する。

■臨床へのつながり
この吸収方向の違いにより、高度吸収例では上顎が小さく下顎が大きい相対関係となり、骨格性下顎前突様の顎堤関係を呈する。この場合、通常の排列では臼歯部で交叉咬合となるため、上下の人工歯を左右入れ替えて排列する交叉排列を行い、咬合力を顎堤頂上に近づけて義歯の安定を図る。顎堤吸収は義歯の維持・安定を左右する最大の要因であり、抜歯後の吸収を抑えるソケットプリザベーションの意義もここにある。
問3
ゴシックアーチ描記法で得られる情報はどれか。
  • 1咬合平面の傾斜
  • 2咬合高径
  • 3顎堤粘膜の被圧変位量
  • 4義歯床の維持力
  • ✔水平的下顎位(タッピングポイント・アペックス)
解説:■正解の根拠
ゴシックアーチ描記法は、下顎の前方・側方への限界運動路を平面上に描記させる方法で、その頂点(アペックス)と、繰り返しタッピングして得られる点(タッピングポイント)から水平的な下顎位を決定する。描記される図形がゴシック建築の尖頭アーチに似ることから命名された。

■他の選択肢
咬合高径は垂直的な要素であり、下顎安静位から安静空隙を差し引く方法や発音・審美から別途決定する。咬合平面の傾斜はカンペル平面を基準に設定する。被圧変位量と義歯床の維持力は本法では評価できない。

■臨床へのつながり
無歯顎では咬頭嵌合位という基準が失われているため、再現性のある下顎位を術者が決めなければならない。アペックスは下顎が最後退した位置に相当し、タッピングポイントが安定して一点に収束するかどうかで、患者の顎位の安定度も評価できる。両者が大きくずれる場合は、顎位が不安定であるサインとして慎重な対応が必要になる。
問4
咬合高径が過高な場合に生じる所見はどれか。
  • 1発音時の明瞭度向上
  • 2顔面高径の短縮
  • ✔口唇の閉鎖不全と疲労感
  • 4鼻唇溝の深化
  • 5口角のたるみ
解説:■正解の根拠
咬合高径が過高になると安静位空隙(フリーウェイスペース、通常2〜3mm)が失われる。その結果、口唇を閉じるのに努力を要して閉鎖不全と疲労感が生じ、咀嚼筋や頬粘膜の疲労・疼痛、義歯の脱離、顔貌の緊張を招く。

■他の選択肢
口角のたるみ、鼻唇溝の深化、顔面高径の短縮はいずれも咬合高径が過低な場合の所見である。低すぎると口角炎(口角のたるみによる唾液の停滞)も生じる。発音の明瞭度は過高でも過低でも損なわれ、向上することはない。

■臨床へのつながり
咬合高径の決定は義歯製作で最も判断の難しい要素の一つである。下顎安静位から安静空隙を差し引く方法を基本に、S音発音時の最小空隙、顔貌の調和、旧義歯や抜歯前の記録を組み合わせて総合的に決める。ろう義歯試適の段階で確認と修正を行うことが、完成後のトラブルを防ぐ最大の機会となる。
問5
両側性平衡咬合が全部床義歯で求められる理由はどれか。
  • 1人工歯の摩耗を促進するため
  • ✔偏心位でも咬合接触を保ち義歯の安定を図るため
  • 3顎関節への負担をなくすため
  • 4審美性を高めるため
  • 5咀嚼能率を最大にするため
解説:■正解の根拠
全部床義歯では、偏心位で片側のみが接触すると、その接触点を支点として義歯が転覆(回転)してしまう。これを防ぐため、側方運動・前方運動時にも作業側と非作業側の双方で接触を保つ両側性平衡咬合を付与し、義歯の安定を確保する。

■他の選択肢
咀嚼能率を最大にするためではない(むしろ咬頭傾斜を緩やかにすると能率は下がる)。顎関節への負担がなくなるわけでもなく、審美性や人工歯の摩耗を目的とするものでもない。

■臨床へのつながり
有歯顎では逆に、側方運動時に作業側の犬歯のみが接触し臼歯を離開させる犬歯誘導が望ましいとされる。天然歯は歯根膜で支持され転覆の心配がないため、臼歯部への側方力を避けることが優先されるからである。「支持形式が違えば望ましい咬合様式も違う」という理解が要点で、義歯とインプラント、天然歯それぞれで考え方が変わる。
問6
筋圧形成(辺縁形成)の目的はどれか。
  • ✔義歯床縁を周囲筋・粘膜の機能運動に調和させる
  • 2咬合平面の設定
  • 3顎位の記録
  • 4人工歯の選択
  • 5咬合高径の決定
解説:筋圧形成はモデリングコンパウンドや専用材を用い、口唇・頬・舌および小帯の機能運動を再現しながら床縁の位置と形態を決定する操作。適切な床縁は辺縁封鎖による維持と義歯の安定に不可欠で、過長では疼痛と脱離、過短では封鎖不良を招く。
問7
上顎全部床義歯の維持に最も関与するのはどれか。
  • 1人工歯の材質
  • 2咬合平面の傾斜
  • 3咬合圧
  • 4義歯床の重量
  • ✔吸着(辺縁封鎖による陰圧)
解説:上顎義歯は口蓋の広い被覆面積と、後縁のアーライン・頬側の床縁による辺縁封鎖から生じる陰圧(吸着)と唾液の界面張力によって維持される。下顎は被覆面積が小さく可動組織に囲まれるため吸着が得にくく、床の安定は解剖学的形態への調和に依存する。
問8
義歯性口内炎の主な原因はどれか。
  • 1咬合高径の過小のみ
  • 2人工歯の摩耗
  • 3唾液分泌過多
  • ✔Candida albicansの関与と義歯の不潔
  • 5フッ化物の過剰
解説:義歯性口内炎は義歯床下粘膜の発赤・腫脹を呈し、多くはCandidaの関与と義歯の清掃不良、夜間装着の継続、不適合による機械的刺激が原因。義歯の機械的清掃と義歯洗浄剤の使用、夜間の撤去、必要に応じ抗真菌薬と義歯の調整・リラインを行う。

口腔外科学全50問中 8問を掲載

問1
下顎第三大臼歯の抜歯で損傷する危険が最も高い神経はどれか。
  • ✔下歯槽神経
  • 2大耳介神経
  • 3舌咽神経
  • 4顔面神経
  • 5頬神経
解説:■正解の根拠
下顎第三大臼歯の歯根は下顎管に近接あるいは接触していることが多く、抜歯時に下歯槽神経を損傷すると、オトガイ部と下唇の知覚異常(しびれ、鈍麻)を生じる。これが本術式の代表的な合併症である。

■他の選択肢
頬神経は術野に近いが太い枝ではなく重篤な障害になりにくい。舌神経(下顎神経の枝)は舌側の骨膜剥離や骨削除で損傷しうるため実は重要な注意対象だが、選択肢にはない。顔面神経、舌咽神経、大耳介神経はいずれも術野から離れており直接損傷することはない。

■臨床へのつながり
術前のパノラマで、歯根と下顎管の重積、管の白線の途絶、根の透過性亢進、管の偏位といった所見があれば、三次元的な位置関係をCBCTで評価する。神経に極めて近接する症例では、歯冠のみを除去し根を残す意図的部分抜歯(コロネクトミー)が選択されることもある。損傷しても連続性が保たれていれば回復が期待できるが、術前の説明と経過記録が不可欠である。
問2
抜歯窩治癒不全(ドライソケット)の特徴はどれか。
  • 1抗菌薬の全身投与が唯一の治療法である
  • ✔抜歯後2〜3日で疼痛が増強し骨面が露出する
  • 3高熱と顎下リンパ節の著明な腫脹を伴う
  • 4抜歯直後から著明な出血が続く
  • 5上顎前歯部に好発する
解説:■正解の根拠
ドライソケットは抜歯窩の血餅が脱落・崩壊して骨面が露出した状態で、抜歯後2〜3日を経てから自発痛が増強するという特徴的な経過をとる。通常の術後疼痛が漸減するのと逆の経過をたどる点が診断の手がかりとなる。

■他の選択肢
抜歯直後からの著明な出血は後出血であり別の病態。高熱と著明なリンパ節腫脹を伴うのは術後感染で、ドライソケットは通常発熱を伴わない。好発部位は下顎第三大臼歯であり上顎前歯部ではない。治療は洗浄と創面の被覆・鎮痛が中心で、抗菌薬の全身投与が唯一の治療法ではない。

■臨床へのつながり
危険因子は喫煙、術後の過度な洗口や吸引、外科的侵襲の大きさ、経口避妊薬の服用などである。予防として、術後は強くうがいをしない、指や舌で創部を触らない、禁煙を守るといった具体的な指示を渡すことが有効である。「術後2〜3日で痛みが強くなったら連絡を」と伝えておくと、経過の逸脱を早期に把握できる。
問3
顎関節前方脱臼の徒手整復法はどれか。
  • 1Le Fort法
  • 2Caldwell-Luc法
  • 3Trendelenburg法
  • 4Weber法
  • ✔Hippocrates法
解説:■正解の根拠
Hippocrates法は顎関節前方脱臼の徒手整復法である。術者は両母指をガーゼで保護して下顎臼歯部の咬合面に置き、残りの指で下顎下縁を保持して、下顎を下方へ押し下げつつ後方へ誘導し、下顎頭を関節結節を越えて関節窩へ戻す。

■他の選択肢
Le Fortは上顎骨骨折の分類名。Caldwell-Luc法は上顎洞の根治手術(犬歯窩からの開洞)。Weber法は口唇の手術に関連する術式名。Trendelenburg体位は骨盤高位の体位であり整復法ではない。

■臨床へのつながり
前方脱臼では下顎頭が関節結節を越えて前方に転位し、閉口不能、下顎の前突、オトガイ部の前方偏位、耳前部の陥凹を呈する。長時間経過すると筋の攣縮により整復が困難になるため早期の対応が望ましい。整復後は数日の包帯固定と、大開口を避ける(あくび、長時間の開口処置)指導を行う。反復性脱臼では手術的な対応も検討される。
問4
三叉神経痛の第一選択薬はどれか。
  • 1リドカイン軟膏
  • 2プレドニゾロン
  • 3アシクロビル
  • ✔カルバマゼピン
  • 5アセトアミノフェン
解説:■正解の根拠
特発性三叉神経痛の薬物療法の第一選択はカルバマゼピンである。電位依存性ナトリウムチャネルを抑制して神経の異常発火を抑える。有効性が高く、効果の有無が診断の裏づけにもなる。

■他の選択肢
アセトアミノフェンやNSAIDsといった通常の鎮痛薬は無効なことが多く、これも三叉神経痛の特徴である。プレドニゾロンは炎症性疾患、アシクロビルはヘルペス感染症、リドカイン軟膏は表面麻酔に用いるもので、いずれも第一選択にはならない。

■臨床へのつながり
三叉神経痛は数秒から数十秒の電撃様の激痛が発作性に生じ、洗顔・髭剃り・咀嚼・歯磨きなど軽微な刺激(トリガーゾーンへの接触)で誘発される。歯痛と誤認されて健全歯の抜髄や抜歯が行われることがあるため鑑別が重要である。薬物無効例や副作用(眠気、ふらつき、汎血球減少、重篤な皮膚障害)で継続困難な例では、神経ブロック、微小血管減圧術、ガンマナイフが検討される。
問5
口底蜂窩織炎(Ludwig angina)で最も優先すべき対応はどれか。
  • 1歯内治療の開始
  • 2抗菌薬の内服開始
  • ✔気道確保
  • 4患部の冷却
  • 5口腔内消毒薬の含嗽
解説:■正解の根拠
口底蜂窩織炎(Ludwig angina)は舌下隙・顎下隙・オトガイ下隙の両側に及ぶ急速進行性のびまん性炎症で、舌の挙上と喉頭浮腫により気道閉塞を来し死に至りうる。したがって気道確保が最優先となる。

■他の選択肢
抗菌薬の内服では到底対応できず、経静脈的な大量投与と切開排膿が必要である。患部の冷却や含嗽といった局所的対応は本質的な治療にならない。原因歯の歯内治療は必要だが、生命に関わる気道の確保より優先されることはない。

■臨床へのつながり
歯性感染症は筋膜隙を介して波及する。原因歯の根尖と顎舌骨筋線の位置関係が、舌下隙へ向かうか顎下隙へ向かうかを決める要因となり、さらに翼突下顎隙、側咽頭隙、そして縦隔炎へと進展しうる。開口障害、嚥下痛、含み声、呼吸苦、板状硬結、発熱といった所見は重症化のサインであり、直ちに高次医療機関へ搬送する判断が求められる。
問6
唾石症について正しいのはどれか。
  • 1エックス線では絶対に描出されない
  • 2無痛性に緩徐増大するのが特徴である
  • 3唾液分泌が亢進する
  • 4耳下腺に最も多い
  • ✔食事に関連して腫脹と疼痛が生じる
解説:唾石症は顎下腺に最も多く(約80%)、これはWharton管が長く上行性で唾液が粘稠なためである。食事刺激で唾液分泌が増すと導管が閉塞し、腫脹と疼痛(唾疝痛)を生じる。多くは石灰化を伴い咬合法エックス線やCTで描出される。
問7
歯性上顎洞炎の原因歯として最も多いのはどれか。
  • ✔上顎大臼歯
  • 2上顎小臼歯
  • 3上顎乳歯
  • 4下顎大臼歯
  • 5上顎前歯
解説:上顎大臼歯(とくに第一大臼歯)は根尖が上顎洞底に近接するため、根尖病巣や重度歯周炎、抜歯時の穿孔が上顎洞炎の原因となる。歯性の場合は片側性で悪臭を伴うことが多く、原因歯の治療なしに消炎は困難である。
問8
下顎骨骨折の好発部位でないのはどれか。
  • 1下顎体部
  • ✔筋突起
  • 3関節突起
  • 4オトガイ部(正中付近)
  • 5下顎角部
解説:下顎骨骨折は関節突起(下顎頭頸部)、下顎角部、オトガイ・正中部、体部に好発する。筋突起は側頭筋に保護され骨折は稀。関節突起骨折では開口障害、患側への偏位、前歯部開咬がみられ、両側例では顕著な開咬を呈する。

歯科麻酔・全身管理全50問中 8問を掲載

問1
下顎孔伝達麻酔で麻酔される神経はどれか。
  • ✔下歯槽神経
  • 2後上歯槽神経
  • 3眼窩下神経
  • 4大口蓋神経
  • 5鼻口蓋神経
解説:■正解の根拠
下顎孔伝達麻酔は翼突下顎隙において下歯槽神経を麻酔する方法で、同側の下顎歯全体、歯槽骨、下唇、オトガイ部に効果が及ぶ。近接して走行する舌神経も同時に麻酔されることが多く、舌のしびれを伴う。

■他の選択肢
後上歯槽神経、眼窩下神経、大口蓋神経、鼻口蓋神経はいずれも上顎神経の枝であり、下顎孔伝達麻酔では麻酔されない。

■臨床へのつながり
下顎臼歯部は皮質骨が厚く緻密なため浸潤麻酔の薬液が浸透しにくく、伝達麻酔の意義が大きい。刺入の目安は翼突下顎縫線の外側、下顎咬合平面の約1cm上方で、対側の小臼歯部から刺入する。血管が豊富な部位のため、注入前の吸引確認による血管内注入の回避が必須である。合併症として血腫、開口障害、まれに顔面神経麻痺(耳下腺への誤注入)がある。
問2
歯科治療中の血管迷走神経反射(デンタルショック)の特徴はどれか。
  • 1頻脈と血圧上昇
  • 2高熱と発疹
  • 3著明な喘鳴と気道狭窄
  • 4持続する痙攣
  • ✔徐脈と血圧低下
解説:■正解の根拠
血管迷走神経反射は、不安や疼痛を契機に迷走神経が過剰に緊張し、徐脈と末梢血管拡張による血圧低下を来して一過性の脳虚血に至る病態である。歯科治療中の意識消失の原因として最も頻度が高い。

■他の選択肢
頻脈と血圧上昇は疼痛や不安による交感神経緊張、あるいはアドレナリンの影響でみられる所見。喘鳴と気道狭窄はアナフィラキシーや喘息発作。高熱と発疹、持続する痙攣も本反射の所見ではない。

■臨床へのつながり
アナフィラキシーとの鑑別が実践上きわめて重要である。血管迷走神経反射は「徐脈」、アナフィラキシーは「頻脈」を呈し、後者には皮膚症状や気道症状を伴うことが多い。対応も異なり、前者は治療中止・仰臥位・下肢挙上・酸素投与で速やかに回復するのに対し、後者はアドレナリン筋注が必要となる。前駆症状(顔面蒼白、冷汗、悪心、あくび)に気づいた時点で対応すれば重篤化を防げる。
問3
アナフィラキシーショックへの第一選択薬と投与経路はどれか。
  • 1ステロイドの静脈内注射
  • 2アトロピンの皮下注射
  • 3ドパミンの点滴静注
  • ✔アドレナリンの筋肉内注射
  • 5抗ヒスタミン薬の内服
解説:■正解の根拠
アナフィラキシーの第一選択はアドレナリンの筋肉内注射であり、成人0.3mg(0.1%製剤0.3mL)を大腿前外側部に投与する。皮下注より筋注のほうが吸収が速く、大腿外側広筋は血流が豊富で確実性が高い。判断に迷う場合も躊躇せず投与することが推奨される。

■他の選択肢
ステロイドは効果発現に数時間を要し、二相性反応の予防に用いる補助的薬剤である。抗ヒスタミン薬は皮膚症状を和らげるにすぎず、生命を救う効果はない。アトロピンは徐脈に、ドパミンは循環維持に用いるもので第一選択ではない。

■臨床へのつながり
アドレナリン投与と同時に、救急要請、仰臥位で下肢挙上(起立や座位は静脈還流を減らし致死的となりうる)、高流量酸素投与、可能なら静脈路確保を行う。効果が不十分なら5〜15分間隔で反復投与する。院内にアドレナリン製剤(アンプルまたはアドレナリン自己注射薬)を常備し、スタッフ全員が保管場所と使用法を把握しておくことが備えとなる。
問4
過換気症候群でみられる病態はどれか。
  • 1呼吸性アシドーシス
  • ✔呼吸性アルカローシス
  • 3代謝性アシドーシス
  • 4低酸素血症
  • 5代謝性アルカローシス
解説:■正解の根拠
過換気により二酸化炭素が過剰に排出され、動脈血CO₂分圧が低下して呼吸性アルカローシスとなる。アルカローシスによりカルシウムイオンの遊離型が減少するため、手指・口周囲のしびれ、テタニー様の助産師手位、めまいなどを呈する。

■他の選択肢
呼吸性アシドーシスは換気不全でCO₂が貯留した状態。代謝性アシドーシスは糖尿病性ケトアシドーシスや腎不全など、代謝性アルカローシスは嘔吐などで生じる。低酸素血症は本症の本態ではなく、むしろ酸素は十分にある。

■臨床へのつながり
ペーパーバッグ法(紙袋再呼吸)は低酸素を招く危険があるため現在は推奨されない。対応は、まず不安を取り除くこと(安心できる声かけ、静かな環境)と、意識的にゆっくり呼吸するよう促すことである。歯科では不安や疼痛が誘因となるため、十分な除痛と丁寧な説明が予防となる。若年女性に多いが、心疾患や呼吸器疾患の除外も念頭に置く。
問5
局所麻酔薬中毒の初期にみられる中枢神経症状はどれか。
  • 1持続する高熱
  • 2傾眠から始まり直ちに呼吸停止に至る
  • ✔舌のしびれ、多弁、めまいなどの興奮症状
  • 4著明な皮膚発赤と瘙痒
  • 5急激な血圧上昇と頻脈
解説:■正解の根拠
局所麻酔薬中毒では、血中濃度の上昇に伴いまず中枢の抑制性ニューロンが選択的に抑制されるため、興奮症状が先行する。舌や口周囲のしびれ、金属味、多弁、耳鳴、めまい、不安、振戦などが初期症状となる。

■他の選択肢
さらに濃度が上がると全身痙攣を経て、意識消失・呼吸抑制という抑制期へ移行する。したがって「傾眠から始まり直ちに呼吸停止」は経過が逆である。高熱は悪性高熱症、皮膚発赤と瘙痒はアレルギー、血圧上昇と頻脈はアドレナリンの影響を示唆する所見である。

■臨床へのつながり
「興奮が先、抑制が後」という順序を知っていれば、多弁やめまいの段階で気づいて投与を中止し、重篤化を防げる。予防には、体重あたりの極量の遵守(アドレナリン含有リドカインで約7mg/kg)、注入前の吸引確認、緩徐な注入が重要である。とくに小児では体重が小さく極量に達しやすいため、計算を習慣化する必要がある。
問6
笑気吸入鎮静法で通常用いられる笑気濃度はどれか。
  • 1100%
  • ✔30%前後(おおむね50%以下)
  • 390%以上
  • 410%以下
  • 570%前後
解説:笑気吸入鎮静法では酸素とともに笑気を概ね30%前後(上限50%程度)で投与し、意識と防御反射を保ったまま不安と痛みの閾値を上げる。高濃度では低酸素の危険がある。中耳・副鼻腔疾患や鼻閉、腸閉塞では適応外で、終了時は100%酸素投与で拡散性低酸素症を防ぐ。
問7
静脈内鎮静法でミダゾラムを用いた際に期待される作用はどれか。
  • 1唾液分泌の亢進
  • 2循環抑制の完全な回避
  • ✔前向性健忘
  • 4筋緊張の亢進
  • 5強い鎮痛作用
解説:ミダゾラムはベンゾジアゼピン系で、抗不安・鎮静・前向性健忘・筋弛緩・抗痙攣作用をもつが鎮痛作用はないため、局所麻酔の併用が必須。呼吸抑制に注意し、モニタリングを行う。拮抗薬はフルマゼニルだが、半減期が短く再鎮静に注意する。
問8
糖尿病患者の歯科治療中にみられる低血糖症状はどれか。
  • 1深く速い呼吸とアセトン臭
  • 2多尿と口渇
  • 3徐々に進行する脱水
  • ✔冷汗・振戦・意識レベルの低下
  • 5高熱
解説:低血糖では交感神経症状(冷汗、動悸、振戦、顔面蒼白)に続き中枢神経症状(意識障害、痙攣)が出現する。意識があれば経口ブドウ糖、意識がなければ救急要請とブドウ糖の静脈内投与を行う。予防のため食事を抜かせず、午前中の短時間の予約が望ましい。

矯正歯科学全50問中 8問を掲載

問1
Angleの不正咬合分類の基準となる歯はどれか。
  • 1下顎中切歯
  • 2下顎第一大臼歯
  • 3上顎犬歯
  • 4上顎中切歯
  • ✔上顎第一大臼歯
解説:■正解の根拠
Angle分類は上顎第一大臼歯を不動の基準(key of occlusion)とし、その近心頬側咬頭が下顎第一大臼歯の頬面溝に咬合するものをⅠ級(正常)とする。下顎大臼歯が遠心位にあるものがⅡ級、近心位にあるものがⅢ級である。

■他の選択肢
下顎第一大臼歯は評価される側であって基準ではない。上顎中切歯や上顎犬歯、下顎中切歯は基準として用いられない(犬歯関係は補助的に併用されることがある)。

■臨床へのつながり
本分類は前後的関係のみを評価するもので、垂直的(開咬・過蓋咬合)、水平的(交叉咬合)、歯列内の問題(叢生、正中離開)は表現できない点が限界である。また上顎第一大臼歯が必ずしも不動でないという批判もある。したがって実際の診断では、Angle分類に加えてセファロ分析による骨格型の評価、模型分析、顔貌の評価を組み合わせる必要がある。
問2
セファロ分析でANB角が大きい場合に考えられるのはどれか。
  • 1骨格性下顎前突傾向
  • ✔骨格性上顎前突傾向
  • 3歯槽性の問題のみ
  • 4上下顎の前後的関係は正常
  • 5垂直的関係の異常のみ
解説:■正解の根拠
SNAは上顎骨、SNBは下顎骨の前後的位置を頭蓋底に対して示す角度で、その差であるANB角が上下顎の相対的な前後関係を表す。日本人成人の平均は約2〜4度で、これより大きい場合は上顎が下顎に対し前方にある骨格性Ⅱ級(上顎前突)傾向を示す。

■他の選択肢
骨格性下顎前突ではANBが小さくなるか負の値となる。ANBは骨格的な前後関係を反映する指標であるため、「前後的関係は正常」「歯槽性の問題のみ」「垂直的関係の異常のみ」はいずれも誤りである。

■臨床へのつながり
同じANBの増大でも、SNAが大きい上顎前突型か、SNBが小さい下顎後退型かで治療方針が変わる。前者では上顎の成長抑制(ヘッドギア)、後者では下顎の成長促進(機能的矯正装置)が成長期の選択肢となる。また垂直的な要素(下顎下縁平面角、FMA)も併せて評価しないと、治療による臼歯の挺出がかえって顔貌を悪化させることがある。
問3
ヘッドギアの主な作用はどれか。
  • ✔上顎大臼歯の遠心移動と上顎骨の成長抑制
  • 2下顎骨の前方成長促進
  • 3上顎前歯の唇側傾斜
  • 4下顎大臼歯の挺出
  • 5上顎骨の側方拡大
解説:■正解の根拠
ヘッドギアは頭部や頸部を固定源とする顎外固定装置で、上顎第一大臼歯を遠心へ移動させるとともに、上顎骨の前方成長を抑制する。骨格性上顎前突の成長期患者が主な適応となる。

■他の選択肢
下顎骨の前方成長促進は機能的矯正装置(アクチベータなど)の作用。上顎前歯の唇側傾斜はむしろ改善したい状態そのもの。下顎大臼歯の挺出や上顎骨の側方拡大(急速拡大装置の作用)もヘッドギアの作用ではない。

■臨床へのつながり
牽引方向により作用が変わる点が重要である。ハイプル(高位)は大臼歯の圧下方向に働きハイアングル症例に、ローププル(低位)は挺出方向に働きローアングル症例に、ストレートプルは中間的に用いられる。効果は患者が装着してくれるかに完全に依存するため、1日10〜14時間程度という装着時間の遵守と動機づけが成否を決める。この協力依存という弱点を補うのがアンカースクリューである。
問4
矯正力を加えた際、歯根膜の圧迫側で主体となる現象はどれか。
  • 1骨芽細胞による骨添加
  • 2歯根膜線維の緊張と伸長
  • 3セメント質の肥厚
  • ✔破骨細胞による骨吸収
  • 5歯髄の石灰化
解説:■正解の根拠
矯正力により歯根膜が圧迫される側では、破骨細胞が動員されて骨吸収が起こり、歯が移動する空間が作られる。反対の牽引側では歯根膜線維が伸展され、骨芽細胞による骨添加が生じる。この吸収と添加の共役により歯は移動する。

■他の選択肢
骨芽細胞による骨添加は牽引側で起こる現象。歯根膜線維の緊張と伸長も牽引側の変化である。セメント質の肥厚は牽引側でみられることがあるが圧迫側の主体ではない。歯髄の石灰化は矯正力の直接的な帰結ではない。

■臨床へのつながり
過大な矯正力を加えると、圧迫側の毛細血管が完全に閉塞して歯根膜が無細胞化(硝子様変性)し、その領域が周囲から除去されるまで歯は移動しない。これを穿下性吸収といい、移動が遅れるだけでなく歯根吸収と疼痛のリスクを高める。したがって「強い力ほど速く動く」は誤りで、歯根膜の血流を保つ弱く持続的な力が最適とされる。
問5
骨性癒着(アンキローシス)歯の特徴はどれか。
  • 1生理的動揺が大きい
  • 2歯根膜腔がエックス線的に明瞭である
  • ✔打診音が濁音である
  • 4矯正力で容易に移動する
  • 5乳歯には生じない
解説:■正解の根拠
骨性癒着(アンキローシス)では歯根膜が消失し、歯根と歯槽骨が直接結合する。緩衝する歯根膜がないため打診音が高く硬い金属様の音(濁音・高調音)となり、生理的動揺が消失する。

■他の選択肢
歯根膜が失われるため生理的動揺はむしろ消失する。エックス線では歯根膜腔が不明瞭・消失し、明瞭にはならない。歯根膜を介した骨のリモデリングが起こらないため矯正力では移動しない。乳歯でも生じ、低位乳歯(晩期残存で咬合平面より低くなる)として日常的に遭遇する。

■臨床へのつながり
成長期に癒着が起こると、周囲の歯槽骨と隣在歯は成長・萌出を続けるのに癒着歯だけが取り残されるため、相対的に沈下した低位咬合となる。原因としては外傷(とくに埋入性脱臼、再植歯の置換性吸収)が代表的である。同様の理屈で、成長が完了していない若年者へのインプラント埋入も相対的低位を招くため、原則として成長終了を待つ必要がある。
問6
上顎急速拡大装置の主な作用機序はどれか。
  • ✔正中口蓋縫合の離開による骨格的拡大
  • 2上顎大臼歯の圧下
  • 3歯の頬側傾斜のみ
  • 4上顎前歯の圧下
  • 5下顎の側方成長促進
解説:上顎急速拡大は短期間に強い矯正力を加え、骨縫合の癒合が完了していない成長期に正中口蓋縫合を離開させて骨格的に上顎歯列弓を拡大する。上顎前歯間に正中離開が生じるのが奏効の徴候。骨縫合が閉鎖した成人では外科的補助が必要となる。
問7
機能性反対咬合の特徴はどれか。
  • 1矯正治療の適応外である
  • 2下顎の後退位でも被蓋が改善しない
  • ✔咬頭嵌合位に至る過程で下顎が前方へ誘導される
  • 4成人にのみみられる
  • 5骨格的に著明な下顎過成長を伴う
解説:機能性反対咬合では、早期接触などにより閉口路で下顎が前方へ偏位して反対被蓋となるが、下顎安静位や後退位では切端咬合ないし正常被蓋が得られる。原因の除去と前歯被蓋の改善により良好な予後が期待でき、早期治療の意義が大きい。
問8
リーウェイスペースについて正しいのはどれか。
  • 1前歯部にのみ存在する
  • 2上下顎で同一である
  • 3乳歯より後継永久歯の方が幅径が大きいことによる余剰である
  • ✔下顎の方が上顎より大きい(片側約1.7mm)
  • 5上顎の方が下顎より大きい
解説:リーウェイスペースは乳犬歯・第一乳臼歯・第二乳臼歯の幅径の総和が後継永久歯(犬歯・第一小臼歯・第二小臼歯)より大きいことによる余剰空隙で、片側で上顎約0.9mm、下顎約1.7mmと下顎の方が大きい。これは第一大臼歯の近心移動や叢生の緩和に利用される。

小児歯科学全50問中 8問を掲載

問1
最も早く萌出する乳歯はどれか。
  • 1第一乳臼歯
  • 2下顎乳側切歯
  • 3乳犬歯
  • ✔下顎乳中切歯
  • 5上顎乳中切歯
解説:■正解の根拠
乳歯の萌出は生後8か月頃の下顎乳中切歯から始まる。以後、上顎乳中切歯、側切歯、第一乳臼歯、乳犬歯、第二乳臼歯の順に萌出し、およそ2歳半〜3歳で20歯の乳歯列が完成する。

■他の選択肢
上顎乳中切歯は下顎に続いて萌出する。第一乳臼歯は乳犬歯より先に萌出する点が特徴的で、乳犬歯・第二乳臼歯はさらに後になる。

■臨床へのつながり
萌出時期には大きな個人差があり、目安から前後6か月程度のずれは正常範囲とされる。むしろ左右差の有無や、著しい遅延(1歳を過ぎても1歯も萌出しない場合など)が評価のポイントとなり、全身疾患(鎖骨頭蓋異形成症、甲状腺機能低下症、くる病)の可能性を考える契機となる。また萌出開始は歯口清掃を始める合図でもあり、この時期からの保護者への指導が習慣づけにつながる。
問2
乳歯の形態的特徴として正しいのはどれか。
  • 1歯髄腔が相対的に小さい
  • 2永久歯に比べエナメル質・象牙質が厚い
  • ✔髄角が高く歯髄に近い
  • 4歯頸部の狭窄がない
  • 5歯根が短く直線的で吸収しない
解説:■正解の根拠
乳歯はエナメル質・象牙質が永久歯より薄く、歯髄腔が相対的に大きく、とくに髄角が高く尖っている。このため、う蝕の進行や窩洞形成の際に容易に歯髄に到達する。

■他の選択肢
エナメル質・象牙質は厚くなく薄い。歯髄腔は相対的に小さいのではなく大きい。歯頸部は強く狭窄しており(歯頸部隆線が明瞭)、これがマトリックスの適合を難しくする一因となる。歯根は後継永久歯の萌出に伴い吸収され、また根分岐部が歯頸部に近く歯根が離開しているのも特徴である。

■臨床へのつながり
髄角が高いという形態は、窩洞形成時の露髄リスクに直結する。乳臼歯の咬合面窩洞では深さを慎重に管理し、う蝕除去も髄角部で無理をしない。またエナメル質が薄いため、う蝕は象牙質に達するのが早く、進行も速い。この形態的特徴が「乳歯う蝕は急速に進行し歯髄に波及しやすい」という臨床像の解剖学的な裏づけとなっている。
問3
Hellmanの咬合発育段階ⅢA期はどれか。
  • 1第二大臼歯萌出完了期
  • ✔第一大臼歯萌出完了かつ側方歯群交換前
  • 3乳歯列完成前
  • 4第一大臼歯萌出開始期
  • 5乳歯列完成期
解説:■正解の根拠
Hellmanの咬合発育段階でⅢAは、第一大臼歯と前歯の萌出が完了し、まだ側方歯群(犬歯・小臼歯)の交換が始まっていない混合歯列期を指す。歯数ではなく萌出の完了状態で判定する点が要点である。

■他の選択肢
ⅠA(乳歯萌出前)、ⅠC(乳歯列完成前)、ⅡA(乳歯列完成)、ⅡC(第一大臼歯・前歯萌出開始)、ⅢA(第一大臼歯・前歯萌出完了)、ⅢB(側方歯群交換中)、ⅢC(第二大臼歯萌出開始)、ⅣA(第二大臼歯萌出完了)と進む。AとCの記号は、Aが萌出完了、Cが萌出中を意味する。

■臨床へのつながり
ⅢA期は臨床的に重要な節目である。前歯の萌出が完了しているため前歯部の不正咬合が評価でき、上顎前突や反対咬合、叢生への早期介入を判断する時期にあたる。また、この後に始まる側方歯群の交換ではリーウェイスペースが利用されるため、第二乳臼歯の隣接面う蝕や早期喪失に対する保隙の要否をこの時期に見極める必要がある。
問4
フッ化物歯面塗布に用いられる代表的な製剤の濃度はどれか。
  • ✔約9000ppm
  • 2約225ppm
  • 3約1450ppm
  • 4約900ppm
  • 5約20000ppm
解説:■正解の根拠
歯面塗布には2%フッ化ナトリウム溶液やリン酸酸性フッ化ナトリウム(APF)が用いられ、いずれもフッ化物イオン濃度は約9000ppmFである。年に2〜4回程度、専門家により実施される。

■他の選択肢
約225ppmF・450ppmFはフッ化物洗口の毎日法、約900ppmFは週1回法(0.2%フッ化ナトリウム)の濃度。約1450ppmFは成人用のフッ化物配合歯磨剤の濃度である。約20000ppmという製品は一般的でない。

■臨床へのつながり
濃度の桁を整理して覚えると混乱しない。歯磨剤(1000〜1500ppm、毎日・自分で)、洗口(225〜900ppm、毎日または週1回・集団や家庭で)、歯面塗布(約9000ppm、年数回・専門家が)という三層構造である。低濃度を高頻度で作用させることも有効であり、近年は高濃度の塗布だけでなく、日常的な歯磨剤の適切な使用がう蝕予防の主軸と位置づけられている。
問5
完全脱臼した永久歯の再植までの保存液として最も不適切なのはどれか。
  • 1患者の唾液(口腔内保持)
  • 2牛乳
  • 3歯牙保存液
  • 4生理食塩液
  • ✔水道水
解説:■正解の根拠
水道水は低張かつ低浸透圧であり、歯根膜細胞が浸透圧により破壊されるため保存液として最も不適切である。乾燥も同様に細胞を死滅させるため厳禁である。

■他の選択肢
牛乳は浸透圧とpHが生理的環境に近く入手しやすいため実用的な選択肢。生理食塩液と専用の歯牙保存液は当然適する。患者自身の口腔内(唾液中)に含んでおく方法も、乾燥させるよりはるかに良い(誤飲に注意する)。

■臨床へのつながり
再植の予後は歯根膜細胞の生存に決定的に依存する。歯冠部を持ち歯根に触れないこと、汚れは流水で数秒すすぐ程度にとどめこすらないこと、可及的速やかに(30分以内が望ましい)再植することが要点である。電話で問い合わせを受けた際にこの3点を的確に伝えられるかが予後を左右する。再植後は生理的固定(弾性のある固定を1〜2週間)とし、根未完成歯を除き通常は根管治療が必要となる。
問6
乳歯う蝕の特徴として正しいのはどれか。
  • 1歯髄への波及は稀である
  • 2隣接面には生じにくい
  • ✔急速に進行し多発しやすい
  • 4進行が緩徐で自覚症状が強い
  • 5永久歯より歯質が厚く抵抗性がある
解説:乳歯は歯質が薄く石灰化度が低いため、う蝕の進行が速く多発・広範囲になりやすい。自覚症状に乏しいまま歯髄に波及することが多く、根尖病巣は後継永久歯のエナメル質形成不全(Turner歯)や萌出異常の原因となる。
問7
生活歯髄切断法(断髄)の適応はどれか。
  • ✔歯冠部歯髄に限局した炎症で根部歯髄が健全な歯
  • 2動揺が著しい歯
  • 3歯髄壊死歯
  • 4後継永久歯が萌出直前の乳歯
  • 5根尖に大きな透過像を有する乳歯
解説:生活歯髄切断法は炎症が歯冠部歯髄に限局し、根部歯髄が健全と判断される場合に適応となる。冠部歯髄を除去し、水酸化カルシウムやMTAで断髄面を覆う。根尖病変、著明な動揺、瘻孔、内部吸収がある場合は抜髄または抜歯を選択する。
問8
乳前歯の癒合歯でしばしばみられる後継永久歯の異常はどれか。
  • 1巨大歯
  • 2過剰歯
  • 3タウロドント
  • ✔先天欠如
  • 5エナメル真珠
解説:下顎乳中切歯と乳側切歯の癒合歯では、後継永久歯(側切歯)の先天欠如が高頻度にみられる。エックス線検査で後継永久歯の有無を確認し、欠如がある場合は交換期の空隙管理と長期的な咬合誘導の計画が必要となる。

口腔インプラント学全50問中 8問を掲載

問1
オッセオインテグレーションの定義として正しいのはどれか。
  • ✔光学顕微鏡レベルで骨とインプラント体が直接接触する結合
  • 2インプラント体と骨の間に線維性組織が介在する結合
  • 3粘膜との上皮性付着
  • 4セメント質を介した結合
  • 5歯根膜を介した結合
解説:■正解の根拠
オッセオインテグレーションはBrånemarkが提唱した概念で、光学顕微鏡レベルで結合組織の介在を認めず、生活骨とインプラント体表面が直接接触・結合している状態と定義される。荷重下でこの状態が維持されることが臨床的成功の前提となる。

■他の選択肢
線維性組織が介在する結合(線維性結合)は、初期固定の不足や微小動揺、感染により生じる失敗の状態である。歯根膜、セメント質はインプラント周囲には存在しない。粘膜との上皮性付着は周囲軟組織の封鎖に関わるが、骨結合の定義ではない。

■臨床へのつながり
骨結合の成立には、生体親和性の高い材料(チタンの不動態被膜)、切削時の骨温度を47℃以下に抑えること、十分だが過大でない初期固定、そして治癒期間中の微小動揺の回避という条件が揃う必要がある。逆にいえば、この4条件のいずれかが崩れると線維性結合となり失敗する。埋入手術の各手技はすべてこの原理に基づいている。
問2
インプラント窩形成時の骨温度の上限として一般に推奨されるのはどれか。
  • 137℃
  • 242℃
  • 355℃
  • ✔47℃
  • 560℃
解説:■正解の根拠
骨は47℃・1分を超える熱負荷で不可逆的な壊死を起こすとされ、これがインプラント窩形成時の温度の上限の目安となる。骨壊死が生じると骨結合は得られず、線維性結合や早期の脱落につながる。

■他の選択肢
37℃は体温であり切削中に維持することは現実的でない。42℃は温熱療法などで用いられる温度で骨壊死の閾値ではない。55℃、60℃はいずれも明らかに壊死域であり、上限として不適切である。

■臨床へのつながり
実際の予防策はすべてこの数値に集約される。すなわち、低速回転(一般に800〜1500rpm程度)、十分な注水冷却(外部注水に加え内部注水も有効)、段階的にドリル径を大きくすること、切れ味の落ちたドリルを使い続けないこと、間欠的な切削(ポンピング動作)で切削片を排出し熱をこもらせないことである。硬い皮質骨(骨質type Ⅰ・Ⅱ)ではとくに発熱しやすく注意を要する。
問3
天然歯と比較したインプラントの特徴として正しいのはどれか。
  • 1矯正力で容易に移動する
  • 2固有受容感覚が天然歯より鋭敏である
  • 3二次う蝕を生じやすい
  • 4歯根膜が存在し咬合力の緩衝が大きい
  • ✔生理的動揺がほとんどない
解説:■正解の根拠
インプラントには歯根膜が存在しないため、生理的動揺がほとんどない(およそ10μm以下で、天然歯の数分の一)。骨と直接結合しているため、力を緩衝する機構をもたない。

■他の選択肢
歯根膜を介したリモデリングが起こらないため矯正力では移動しない(逆に絶対的な固定源となる)。固有受容感覚は歯根膜受容器に依存するため、天然歯より鋭敏どころか著しく劣る。歯質がないため二次う蝕は生じない(代わりに周囲炎が問題となる)。歯根膜が存在するという記述自体が誤りである。

■臨床へのつながり
この特徴は咬合設計に直結する。緩衝も感覚フィードバックもないため過大な力に気づきにくく、咬合接触は歯軸方向に集約し、咬頭傾斜を緩やかにして側方力を減じ、カンチレバーを短くする(インプラント保護咬合)。また天然歯と連結すると動揺性の差から応力がインプラント側に集中し、天然歯の沈下を招くため原則として避ける。
問4
インプラント周囲炎の診断に必須の所見はどれか。
  • 1知覚過敏
  • ✔プロービング時の出血と進行性の骨吸収
  • 3咬合痛のみ
  • 4上部構造の破折
  • 5粘膜の発赤のみ
解説:■正解の根拠
インプラント周囲炎は、プロービング時の出血(および排膿)という炎症所見に加え、エックス線での進行性の辺縁骨吸収を伴う病態である。骨吸収の有無が周囲粘膜炎との決定的な違いとなる。

■他の選択肢
粘膜の発赤のみ、あるいは炎症が軟組織に限局し骨吸収を伴わない場合は周囲粘膜炎であり、原因除去により可逆的に改善する。咬合痛や上部構造の破折は力学的なトラブルを示唆する所見。知覚過敏はインプラントには生じない。

■臨床へのつながり
「進行性」の判断には比較対象が必要であるため、上部構造装着時にベースラインとなるエックス線を撮影しておくことが不可欠となる。これがないと、埋入時のリモデリングによる生理的な吸収と病的な吸収を区別できない。成功基準の目安は機能開始後1年で約1mm、以降は年間0.2mm程度以内とされる。定期的なプロービングとエックス線の経時比較が早期発見の要である。
問5
上顎洞底挙上術(サイナスリフト)の適応となるのはどれか。
  • 1オトガイ孔部の骨欠損
  • 2下顎前歯部の骨幅不足
  • ✔上顎臼歯部の垂直的骨量不足
  • 4上顎前歯部の唇側骨欠損
  • 5下顎管に近接した骨量不足
解説:■正解の根拠
上顎臼歯部は、抜歯後の顎堤吸収に加えて上顎洞の含気化(洞底の下降)が進むため垂直的骨量が不足しやすい。上顎洞底粘膜(シュナイダー膜)を挙上して生じた空間に骨補填を行うサイナスリフトが適応となる。

■他の選択肢
下顎前歯部の骨幅不足や上顎前歯部の唇側骨欠損は、水平的な骨造成(GBRやブロック骨移植)の適応。下顎管に近接した骨量不足やオトガイ孔部の欠損は、下歯槽神経の移動術やショートインプラントなど別の対応が検討される。

■臨床へのつながり
術式には、側方の骨壁に窓を開ける側方アプローチ(ラテラルウィンドウ法)と、埋入窩から洞底を押し上げるクレスタルアプローチ(オステオトーム法)があり、残存骨高径により使い分ける。最も頻度の高い合併症は洞粘膜の穿孔で、上顎洞中隔の存在や粘膜の菲薄化がリスクとなるため、術前のCBCTによる評価が重要である。
問6
インプラント体と隣在天然歯との間に確保すべき最小距離の目安はどれか。
  • 15.0mm
  • 2距離の基準はない
  • 30.5mm
  • 43.0mm
  • ✔1.5mm
解説:隣在天然歯とは約1.5mm以上、インプラント体どうしは約3mm以上の距離を確保するのが目安で、これを下回ると辺縁骨吸収が隣接部で連続し、歯間乳頭の喪失や審美障害を招く。診断用ステントとCBCTによる術前計画が重要となる。
問7
2回法(2ステージ法)の特徴はどれか。
  • ✔一次手術で粘膜下に埋入し、治癒期間後に二次手術でアバットメントを連結する
  • 2即時荷重が必須である
  • 3粘膜貫通部を最初から作る
  • 4骨造成が不要である
  • 5一次手術のみで即時に上部構造を装着する
解説:2回法ではインプラント体を粘膜下に埋入して閉鎖創とし、骨結合の獲得後に二次手術で粘膜を開いてヒーリングアバットメントを装着する。感染や早期荷重の危険を避けられ、骨造成の同時併用例や初期固定が不十分な症例で選択される。
問8
インプラント治療のリスク因子として重要なのはどれか。
  • 1フッ化物洗口
  • ✔喫煙
  • 3非喫煙
  • 4良好な口腔衛生
  • 5定期的なメインテナンス受診
解説:喫煙は創傷治癒の遅延、初期の骨結合不全、インプラント周囲炎の進行と強く関連する重要なリスク因子である。ほかにコントロール不良の糖尿病、骨吸収抑制薬の使用、歯周炎の既往、ブラキシズム、口腔衛生不良が挙げられる。

歯科放射線学全50問中 8問を掲載

問1
口内法エックス線撮影の平行法の利点はどれか。
  • ✔歯軸と長さの幾何学的な歪みが少ない
  • 2被曝線量が二等分法より必ず多い
  • 3小児に最も適している
  • 4撮影が容易で患者の負担が少ない
  • 5フィルムの固定具が不要である
解説:■正解の根拠
平行法は受像体を歯軸と平行に保持し、これに垂直に長い焦点-受像体間距離で照射する方法である。歯軸と受像体が平行であるため像の伸縮が少なく、実際の長さに近い幾何学的に正確な像が得られる。歯槽骨頂の描出にも優れる。

■他の選択肢
専用のインジケーター(保持具)が必要であり「固定具が不要」は誤り。口蓋が浅い患者では受像体を平行に置きにくく、撮影は二等分法より難しい面がある。長い距離を補うため照射時間は長くなるが、矩形絞りとの併用でむしろ被曝を低減できる場合もあり「必ず多い」とはいえない。小児には受像体の大きさや協力度の面で難しいことがある。

■臨床へのつながり
平行法は規格性が高く再現性に優れるため、歯周治療における骨レベルの経時比較や、インプラント周囲骨の評価に適する。二等分法は器具が不要で応用が利くが、垂直角の誤りによる伸長・短縮を生じやすい。目的に応じた使い分けと、いずれの方法でも位置づけの精度が診断能を決めるという理解が実践的である。
問2
エックス線の確率的影響に該当するのはどれか。
  • 1不妊
  • 2皮膚紅斑
  • 3白内障
  • 4脱毛
  • ✔発癌・遺伝的影響
解説:■正解の根拠
確率的影響はしきい値がなく、被曝線量が増すほど発生確率が高まる影響で、発癌と遺伝的(次世代への)影響が該当する。重篤度は線量に依存せず、起こるか起こらないかの問題となる。

■他の選択肢
皮膚紅斑、脱毛、白内障、不妊はいずれも確定的影響(組織反応)である。しきい線量が存在し、それを超えると発現し、線量が増すほど症状が重くなる。歯科の通常の撮影でこれらのしきい線量に達することはない。

■臨床へのつながり
確率的影響にしきい値がないという前提こそが、防護の最適化(ALARA:合理的に達成可能な限り低く)の根拠である。すなわち「この線量以下なら安全」という保証がないからこそ、正当化された撮影に限り、照射野を絞り、高感度の受像体を用い、再撮影を避ける努力が求められる。防護エプロンより、まず照射野の限定と撮影の正当化が本質的である。
問3
実効線量の単位はどれか。
  • 1eV
  • ✔Sv
  • 3Gy
  • 4Bq
  • 5C/kg
解説:■正解の根拠
実効線量および等価線量の単位はシーベルト(Sv)である。組織ごとの放射線感受性の違い(組織荷重係数)と放射線の種類による影響の差(放射線荷重係数)を加味し、人体への影響の程度を表す量である。

■他の選択肢
グレイ(Gy)は物質1kgあたりに吸収されたエネルギーを示す吸収線量の単位。ベクレル(Bq)は放射性物質の量(1秒あたりの壊変数)を示す放射能の単位。C/kgは照射線量の単位。eV(電子ボルト)はエネルギーの単位である。

■臨床へのつながり
歯科用パノラマ1回の実効線量はおよそ0.01mSv前後、口内法1枚は数μSvであり、日本人が自然放射線から1年間に受ける約2mSvと比べて極めて小さい。この比較は患者の不安に応える際に有用である。ただし説明のために比較を用いることと、撮影の正当化・最適化を怠らないことは両立させる必要がある。
問4
放射線防護の3原則に含まれないのはどれか。
  • 1行為の正当化
  • 2線量限度の適用
  • 3防護の最適化
  • ✔被曝の完全な排除
  • 5上記のうち該当なし
解説:■正解の根拠
ICRPの防護体系は、行為の正当化・防護の最適化・線量限度の適用という3原則からなる。被曝を完全に排除することは放射線を利用する以上不可能であり、原則には含まれない。

■他の選択肢
正当化は「その被曝による利益が不利益を上回るか」の判断。最適化は「合理的に達成可能な限り低く(ALARA)」する努力。線量限度は職業被曝や公衆被曝に設定される上限である。

■臨床へのつながり
重要な例外として、医療被曝には線量限度が適用されない。患者本人が診断・治療という直接の利益を受けるためで、代わりに正当化と最適化がより厳格に求められる。すなわち「必要な撮影を、必要最小限の線量で」行う判断が、術者の責任として一層重くなるという意味である。診断参考レベル(DRL)はこの最適化を支援する指標として用いられる。
問5
歯科用CBCTがCTと比較して優れる点はどれか。
  • 1CT値による定量的な組織評価
  • 2造影剤を用いた血管評価
  • ✔硬組織の空間分解能と低被曝
  • 4軟組織のコントラスト分解能
  • 5広範な体幹部の評価
解説:■正解の根拠
CBCTはコーンビームとフラットパネル検出器により1回転で撮影し、等方性のボクセルにより硬組織の空間分解能に優れる。撮影範囲を限定できることもあり、一般に医科用CTより被曝線量が少ない。

■他の選択肢
軟組織のコントラスト分解能は医科用CTに劣り、腫瘍の進展範囲などの評価には適さない。造影剤を用いた血管評価もできない。画素値をCT値として定量的に扱うことができず、骨密度の絶対評価には使えない。撮影範囲が限られるため広範な体幹部の評価には用いない。

■臨床へのつながり
利点と限界を踏まえ、埋伏歯と下顎管の三次元的関係、インプラント術前評価、根管形態や歯根破折・吸収の疑い、外科的歯内療法の術前など、二次元画像では得られない情報が診断や治療方針を変えうる場合に限って選択する。金属修復物によるアーチファクトの影響を受けやすい点も、読影上の重要な限界である。
問6
パノラマエックス線撮影の原理はどれか。
  • ✔回転断層撮影
  • 2透視撮影
  • 3造影撮影
  • 4単純撮影
  • 5コーンビーム撮影
解説:パノラマ撮影はエックス線管とセンサーが被写体を挟んで回転し、断層域(イメージレイヤー)内の構造を鮮明に描出する回転断層撮影である。位置づけの誤りで拡大・縮小や像の重複が生じ、また左右の比較や実測には適さない点に注意する。
問7
咬翼法(バイトウィング)撮影が最も適するのはどれか。
  • 1上顎洞の観察
  • ✔隣接面う蝕と歯槽骨頂の観察
  • 3埋伏歯の位置づけ
  • 4顎関節の観察
  • 5根尖病変の観察
解説:咬翼法は上下顎の歯冠部と歯槽骨頂を同一フィルムに歪みなく描出でき、隣接面う蝕の検出と歯槽骨頂の高さの評価に優れる。根尖は写らないため根尖病変の診断には根尖法を用いる。
問8
エックス線写真のコントラストを主に左右する撮影条件はどれか。
  • 1撮影距離
  • 2現像時間のみ
  • 3フィルムサイズ
  • 4患者の体位
  • ✔管電圧
解説:管電圧(kV)はエックス線の質(透過力)を決め、高いほど低コントラスト(階調の広い)画像となり、低いほど高コントラストになる。管電流(mA)と照射時間の積は線量すなわち写真濃度を左右する。デジタル系では後処理でも階調が調整できる。

衛生学・公衆衛生学全50問中 8問を掲載

問1
DMFT指数の説明として正しいのはどれか。
  • ✔1人平均のう蝕経験永久歯数
  • 2乳歯のう蝕経験歯数
  • 3う蝕経験歯面数の合計
  • 4未処置歯の割合
  • 5処置歯のみの数
解説:■正解の根拠
DMFTはDecayed(未処置う蝕歯)、Missing(う蝕による喪失歯)、Filled(処置歯)の合計を被検者数で割った、1人平均のう蝕経験永久歯数である。過去から現在までのう蝕経験の累積を表す。

■他の選択肢
歯面単位で評価するのはDMFS。乳歯では小文字を用いてdmft(またはdeft)と表記する。未処置歯の割合や処置歯のみの数はDMFTの構成要素の一部にすぎない。

■臨床へのつながり
DMFTは累積指標であるため減少することがなく、加齢とともに必然的に増加する点に注意が必要である。したがって集団間の比較には年齢を揃える必要があり、12歳児のDMFT(永久歯列がほぼ完成し国際比較に適する)が代表的な指標として用いられる。日本の12歳児DMFTはかつての4〜5歯から近年は1歯前後まで大きく減少しており、う蝕の疫学的な構造変化を示している。
問2
フッ化物洗口の週1回法における濃度はどれか。
  • 1約225ppmF
  • 2約450ppmF
  • 3約1450ppmF
  • 4約9000ppmF
  • ✔約900ppmF
解説:■正解の根拠
フッ化物洗口の週1回法では0.2%フッ化ナトリウム溶液(約900ppmF)を用いる。毎日法では低濃度の225〜450ppmFを使用する。集団応用として学校や保育所で実施され、う蝕抑制率は概ね30〜60%と報告される。

■他の選択肢
225ppmF・450ppmFは毎日法の濃度。1450ppmFは成人用歯磨剤、9000ppmFは歯面塗布の濃度であり、洗口には用いない。

■臨床へのつながり
「毎日・低濃度」と「週1回・高濃度」という二つの方式があること、そして誤飲の恐れがある4歳未満は原則対象としないことが実務上の要点である。集団応用は個人の受診行動に左右されず、社会経済的な格差の影響を受けにくいため、ポピュレーションアプローチとして公衆衛生上の意義が大きい。実施にあたっては保護者への説明と同意、実施体制の整備が前提となる。
問3
8020運動の目標はどれか。
  • 180%の人が20本の歯を保つ
  • 280歳で20回以上受診する
  • 31日20分間の歯磨きを80歳まで続ける
  • ✔80歳で20本以上の自分の歯を保つ
  • 58歳で20本の歯を保つ
解説:■正解の根拠
8020運動は1989年に厚生省(当時)と日本歯科医師会が提唱した「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動である。20歯以上あればほとんどの食品を咀嚼できるという知見が根拠となっている。

■他の選択肢
「80%の人が20本」「80歳で20回受診」「1日20分の歯磨き」「8歳で20本」はいずれも語呂の似た誤答である。

■臨床へのつながり
提唱当時の達成者は1割にも満たなかったが、近年の歯科疾患実態調査では50%を超えるまでに改善した。この成功は同時に新たな課題を生んでおり、高齢期に多くの歯が残ることで、歯肉退縮に伴う根面う蝕、歯周病の管理、多数歯にわたる補綴の維持、そして要介護状態での口腔管理という問題が前面に出てきた。運動の目標は歯数から口腔機能の維持へと重点を移しつつある。
問4
歯科疾患実態調査の実施主体と概ねの実施間隔はどれか。
  • 1市町村・毎年
  • ✔厚生労働省・約5年ごと
  • 3WHO・3年ごと
  • 4文部科学省・毎年
  • 5日本歯科医師会・10年ごと
解説:■正解の根拠
歯科疾患実態調査は厚生労働省が実施する国民の歯科保健状況に関する基幹的な統計調査で、従来は6年ごと、2016年以降は5年間隔で行われている。う蝕、歯周疾患、現在歯数、補綴の状況などを把握する。

■他の選択肢
文部科学省が毎年実施するのは学校保健統計調査(学校での健康診断に基づく)。市町村は乳幼児健診などを担うが本調査の実施主体ではない。日本歯科医師会やWHOも実施主体ではない。

■臨床へのつながり
本調査の結果は、8020達成者率の推移、う蝕有病状況の変化、歯周疾患の状況といった形で施策の根拠となる。近年の傾向として、小児のう蝕は大幅に減少した一方で高齢者の残存歯数が増加し、それに伴い歯周疾患や根面う蝕の管理が重要課題として浮かび上がっている。統計を読むことは、目の前の患者集団の背景を理解することにつながる。
問5
地域歯周疾患指数(CPI)で評価しないのはどれか。
  • 1歯石の有無
  • 2歯周ポケットの深さ
  • ✔歯の動揺度
  • 4歯肉出血
  • 5上記のうち該当なし
解説:■正解の根拠
CPI(地域歯周疾患指数)は集団を対象としたスクリーニング指標で、歯肉出血、歯石の有無、歯周ポケットの深さの3項目を評価する。歯の動揺度は評価項目に含まれない。

■他の選択肢
歯肉出血、歯石、歯周ポケット深さはいずれも評価対象である。動揺度に加え、臨床的アタッチメントレベルもCPIには含まれない点が本指標の限界である。

■臨床へのつながり
CPIは簡便で集団の傾向を把握するのに適するが、付着の喪失量を反映しないため、歯肉退縮を伴う高齢者では歯周組織の破壊を過小評価しうる。個々の患者の診断・治療計画には、6点法によるプロービングデプス、BOP、CAL、動揺度、根分岐部病変を含む詳細な検査が必要である。CPIプローブは先端球部0.5mm、3.5mmと5.5mmに目盛りをもつ点も併せて押さえておきたい。
問6
学校歯科健康診断で用いられるCOの意味はどれか。
  • 1歯周疾患要精検
  • 2健全歯
  • 3処置済の歯
  • ✔要観察歯(う蝕になる可能性がある歯)
  • 5喪失歯
解説:COはう蝕の初期病変が疑われる要観察歯を指し、白濁や着色はあるが実質欠損が確認できない状態。歯周組織ではGO(歯周疾患要観察者)が用いられる。いずれも直ちに治療するのではなく、保健指導と経過観察の対象となる。
問7
有病率と罹患率の違いとして正しいのはどれか。
  • 1両者は同義である
  • 2罹患率は死亡者数を含む
  • 3有病率は感染症にのみ用いる
  • 4有病率は新規発生のみを数える
  • ✔有病率はある時点で疾病を有する者の割合、罹患率は一定期間に新たに発生した者の割合
解説:有病率(prevalence)はある一時点で疾病を有する者の割合で、断面調査で得られ、慢性疾患ほど高くなる。罹患率(incidence)は一定期間に新たに発生した患者の割合で、危険因子の評価に適する。有病率は概ね罹患率と罹病期間の積で表される。
問8
母子保健法に基づき市町村が実施する乳幼児健康診査はどれか。
  • ✔1歳6か月児健康診査と3歳児健康診査
  • 2特定健康診査
  • 3就学時健康診断
  • 4後期高齢者健康診査
  • 5毎年の学校健康診断
解説:母子保健法により市町村は1歳6か月児健診と3歳児健診の実施が義務づけられており、いずれも歯科健診を含む。1歳6か月児健診は上顎前歯部う蝕と生活習慣、3歳児健診は臼歯部を含むう蝕の把握とフッ化物応用の指導が重要な機会となる。

高齢者歯科・摂食嚥下全50問中 8問を掲載

問1
摂食嚥下の5期モデルに含まれないのはどれか。
  • 1口腔期
  • 2準備期
  • 3先行期
  • 4咽頭期
  • ✔吸収期
解説:■正解の根拠
摂食嚥下の5期モデルは、先行期(認知期)、準備期(咀嚼期)、口腔期、咽頭期、食道期からなる。吸収期は消化吸収の過程であり、摂食嚥下の過程には含まれない。

■他の選択肢
先行期は食物を認識し口へ運ぶ段階、準備期は咀嚼と食塊形成、口腔期は食塊を咽頭へ送る随意運動、咽頭期は嚥下反射による不随意運動、食道期は蠕動による食道通過である。

■臨床へのつながり
どの期が障害されているかで対応が変わる点が重要である。認知症では先行期(食物と認識できない、食事に集中できない)の障害が中心となり、環境調整や声かけが有効となる。歯の欠損や義歯不適合は準備期の障害で、補綴による咀嚼機能の回復が直接効く。咽頭期の障害は誤嚥に直結するため、食形態と姿勢の調整、リハビリテーションが必要となる。
問2
反復唾液嚥下テスト(RSST)の正常の目安はどれか。
  • 1回数は問わない
  • ✔30秒間に3回以上
  • 310秒間に5回以上
  • 460秒間に2回以上
  • 530秒間に1回以上
解説:■正解の根拠
反復唾液嚥下テスト(RSST)は、30秒間にできるだけ多く空嚥下を繰り返させ、甲状軟骨の挙上を触知して回数を数えるスクリーニング法である。3回未満を陽性(嚥下障害の疑い)と判定する。

■他の選択肢
30秒間に1回以上、60秒間に2回、10秒間に5回といった基準は用いられない。回数を問わないのでは検査にならない。

■臨床へのつながり
RSSTの最大の利点は、食物や水を用いないため誤嚥のリスクがなく、ベッドサイドで安全に実施できることである。ただし指示の理解が困難な認知症患者では実施できないという限界がある。陽性であれば改訂水飲みテスト(少量の冷水を用いる)などへ進み、さらに必要なら嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下造影検査(VF)による精査へつなげるという段階的な流れを理解しておく。
問3
誤嚥性肺炎の予防として最も有効性が示されているのはどれか。
  • ✔口腔ケアの徹底
  • 2抗菌薬の予防的長期投与
  • 3終日の絶食
  • 4流動食への一律の変更
  • 5臥位での食事
解説:■正解の根拠
誤嚥性肺炎の主因は、口腔内細菌を含む唾液の不顕性誤嚥である。したがって専門的口腔ケアによって口腔内細菌量を減らすことが、発症率と死亡率を下げることが介入研究で示されている。

■他の選択肢
終日の絶食は誤嚥の機会を減らすようにみえるが、廃用による嚥下機能のさらなる低下と低栄養を招き、かえって不利となる。流動食への一律の変更も、かえって咽頭への流入が速くなり誤嚥しやすい場合がある。抗菌薬の予防的長期投与は耐性菌を助長するだけで予防効果はない。臥位での食事は誤嚥を助長する。

■臨床へのつながり
経管栄養中で経口摂取がない患者でも、自浄作用が働かず細菌が増殖するため口腔ケアは必須である。むしろ経口摂取がない患者ほど積極的なケアを要する。加えて、食事時の座位保持と頸部前屈、食後30分程度の座位維持、嚥下機能に応じた食形態の調整を組み合わせることが、実践的な予防策となる。
問4
口腔乾燥を来す全身疾患として代表的なのはどれか。
  • 1痛風
  • 2鉄欠乏性貧血
  • 3高血圧症
  • ✔Sjögren症候群
  • 5Basedow病
解説:■正解の根拠
Sjögren症候群は唾液腺と涙腺を標的とする自己免疫疾患で、口腔乾燥(口腔乾燥症)と乾燥性角結膜炎を主徴とする。中年女性に好発し、関節リウマチなど他の膠原病に合併する二次性もある。

■他の選択肢
Basedow病は甲状腺機能亢進症で、頻脈・体重減少・眼球突出が特徴。痛風は尿酸代謝異常による関節炎。鉄欠乏性貧血は舌乳頭の萎縮(平滑舌)や口角炎を来すが口腔乾燥の代表ではない。高血圧症自体ではなく、その治療薬(利尿薬など)が口腔乾燥の原因となりうる。

■臨床へのつながり
診断には抗SS-A/SS-B抗体、唾液分泌量(ガムテスト、サクソンテスト)、唾液腺造影や唾液腺シンチグラフィ、口唇腺生検(focus score)が用いられる。口腔乾燥を訴える患者では、まず薬剤性(抗コリン作用、利尿薬、向精神薬)を疑うのが実際的だが、乾燥性角結膜炎の症状を併せて聴取し、疑わしければ内科・眼科へ紹介する姿勢が求められる。
問5
嚥下造影検査(VF)について正しいのはどれか。
  • 1ベッドサイドで簡便に施行できる
  • 2咽頭粘膜の色調変化を観察できる
  • ✔誤嚥の有無と嚥下動態を経時的に評価できる
  • 4食物を用いない検査である
  • 5被曝がない
解説:■正解の根拠
嚥下造影検査(VF)は造影剤を含む検査食を嚥下させ、X線透視下で口腔期から食道期までの動態を経時的に観察できる。誤嚥の有無とその時相(嚥下前・中・後)、咽頭残留、食道通過を客観的に評価できる標準的検査である。

■他の選択肢
X線装置が必要でベッドサイドでは施行できず、被曝を伴う。食物(模擬食品)を用いる検査である。咽頭粘膜の色調や唾液の貯留を直接観察できるのは嚥下内視鏡検査(VE)である。

■臨床へのつながり
VFとVEは相補的な関係にある。VFは全過程を可視化でき誤嚥の時相まで評価できるが、被曝と設備の制約がある。VEはベッドサイドで被曝なく実施でき、粘膜の状態や唾液貯留、実際の食事場面を評価できるが、嚥下の瞬間はホワイトアウトで観察できない。どちらか一方が優れているのではなく、目的と患者の状況に応じて選択・併用する。
問6
オーラルフレイルの説明として最も適切なのはどれか。
  • 1重度の摂食嚥下障害の確定診断名である
  • 2歯の欠損のみを指す
  • ✔滑舌低下や food の食べこぼし、わずかなむせなど口腔機能のわずかな衰えの兆候
  • 4口腔癌の前駆状態である
  • 5認知症の一分類である
解説:オーラルフレイルは滑舌低下、わずかなむせ、食べこぼし、噛めない食品の増加といった口腔機能のわずかな低下の連鎖を指す概念で、身体的フレイルやサルコペニア、要介護状態への進行の前段階として重視される。可逆的な段階での気づきと介入が要点。
問7
舌圧測定の意義として正しいのはどれか。
  • 1嚥下反射の惹起時間の測定
  • ✔舌の筋力を定量評価し、食塊形成・移送能力の指標とする
  • 3唾液分泌量の評価
  • 4咬合力の評価
  • 5歯周組織の炎症の評価
解説:舌圧はバルーン型の測定器を用いて舌の最大押しつけ力を定量評価する。低下は食塊形成・咽頭への移送能力の低下を示し、口腔機能低下症の診断項目の一つ(一般に30kPa未満が低下の目安)。舌接触補助床や舌の筋力訓練の効果判定にも用いられる。
問8
誤嚥のリスクを下げる食事姿勢として適切なのはどれか。
  • 1側臥位で顔を上向き
  • 2立位で頸部後屈
  • 3完全な仰臥位で頸部後屈
  • 4頸部を後屈させる
  • ✔頸部をやや前屈させる
解説:頸部前屈(顎を引いた姿勢)は喉頭口が狭まり気道防御に有利で、咽頭と気管の角度から誤嚥のリスクが下がる。後屈位は気道が直線化して誤嚥しやすい。加えて可能な限り座位(30〜90度)をとり、食後も30分程度は座位を保つことが誤嚥性肺炎の予防に有効。

必修・救急・法規全50問中 8問を掲載

問1
歯科医師法で定められた診療録の保存期間はどれか。
  • ✔5年間
  • 23年間
  • 31年間
  • 410年間
  • 52年間
解説:■正解の根拠
歯科医師法により、診療録は診療の完結の日から5年間の保存義務がある。診療録は医療行為の記録であると同時に、法的な証拠としての性格ももつ。

■他の選択肢
エックス線写真をはじめとする「診療に関する諸記録」は医療法施行規則により2年間の保存とされ、期間が異なる。1年、3年、10年という規定はない。

■臨床へのつながり
「診療録は5年、エックス線写真など諸記録は2年」という区別が混同しやすい要点である。ただし実務上は、医療紛争の時効や長期経過を追う必要性(インプラント、矯正、補綴の予後)を考えると、法定期間にとどまらず長期保存することが望ましい。電子的に保存する場合は、真正性・見読性・保存性の三原則を満たす必要がある。
問2
成人に対する一次救命処置の胸骨圧迫として正しいのはどれか。
  • 11分間に140回以上、深さ8cm
  • 2圧迫の解除は不要である
  • ✔1分間に100〜120回、深さ約5cm
  • 41分間に60〜80回、深さ2cm
  • 5回数と深さは問わない
解説:■正解の根拠
成人の胸骨圧迫は、テンポ100〜120回/分、深さ約5cm(6cmを超えない)で行う。圧迫解除時には胸壁を完全に元に戻し(リコイル)、中断を最小限にすることが質の高い蘇生の条件となる。

■他の選択肢
60〜80回/分・深さ2cmでは血流を維持できない。140回以上・深さ8cmでは十分な充満が得られず、また臓器損傷のリスクが高まる。圧迫の解除は静脈還流に必須であり「不要」は誤り。回数と深さは明確に定められている。

■臨床へのつながり
歯科医院では、ユニット上での心停止という状況が想定される。ユニットは柔らかく圧迫が有効に伝わらないため、床など硬い面に速やかに移すか、背板を用いる必要がある。また圧迫の質は疲労で急速に低下するため、2分ごとの交代を前提に人員配置を考える。定期的なシミュレーション訓練が、いざというときに手が動くかを決める。
問3
AEDの使用について正しいのはどれか。
  • 1ペースメーカー植込み患者には使用禁忌である
  • 2小児には使用してはならない
  • 3解析中も胸骨圧迫を継続する
  • ✔貼付部位が濡れている場合は拭き取ってからパッドを貼る
  • 5電気ショック後は直ちに脈拍を確認し圧迫を再開しない
解説:■正解の根拠
胸部が濡れていると通電が体表面を流れてしまい、心臓に有効な電流が届かない。したがってパッド貼付部位の水分は拭き取ってから貼付する。

■他の選択肢
ペースメーカー植込み患者にも使用でき、植込み部位から数cm離して貼れば問題ない。小児にも使用可能で、未就学児には小児用パッドやモードを用い、なければ成人用でも使用する。解析中は身体に触れると誤判定を招くため胸骨圧迫を中断する。電気ショック後は脈拍確認のために時間を費やさず、直ちに胸骨圧迫を再開する。

■臨床へのつながり
AEDは音声ガイダンスに従えば操作できるよう設計されているため、迷ったら装着することが原則である。ただし「濡れている」「貼付部位に貼付薬がある」「体毛が濃い」といった状況では貼付前のひと手間が必要になる。院内での設置場所と使用手順をスタッフ全員が共有し、実際に触れて確認しておくことが重要である。
問4
標準予防策(スタンダードプリコーション)の考え方として正しいのはどれか。
  • 1感染症が判明している患者にのみ適用する
  • 2唾液は対象に含まれない
  • 3手袋を着用すれば手指衛生は不要である
  • 4歯科では適用されない
  • ✔すべての患者の血液・体液・分泌物を感染性があるものとして扱う
解説:■正解の根拠
標準予防策は、感染症の有無にかかわらず、すべての患者の血液、体液、分泌物(汗を除く)、排泄物、損傷皮膚、粘膜を感染性があるものとみなして対応する考え方である。既知の感染症患者だけを特別扱いするのではない点が本質である。

■他の選択肢
感染症が判明している患者にのみ適用するのは、この概念以前の考え方であり誤り。唾液も対象に含まれる。手袋を外した後にも手指衛生は必要である(手袋にはピンホールがあり、外す際に手が汚染される)。歯科こそ血液と唾液に日常的に曝露するため、適用されないという記述は明確に誤りである。

■臨床へのつながり
背景には「感染症の有無は問診や検査で完全には把握できない」という前提がある。未診断のB型・C型肝炎やHIV感染者は現実に存在し、患者自身も知らないことがある。したがって全員に同じ水準の対策を講じることが、患者と医療者双方を守る唯一の合理的な方法となる。感染経路別予防策(空気・飛沫・接触)は、これに追加する形で適用される。
問5
インフォームド・コンセントの要件として適切でないのはどれか。
  • 1患者の自発的な同意
  • ✔同意後の撤回は認められないこと
  • 3治療しない場合の予後の説明
  • 4代替となる治療法の提示
  • 5患者の理解力に応じた十分な説明
解説:■正解の根拠
インフォームド・コンセントにおいて、患者はいったん同意した後でもいつでも自由に同意を撤回できる。撤回が認められないという条件は、自己決定権の本質に反するため要件として不適切である。

■他の選択肢
患者の理解力に応じた十分な説明、代替となる治療法の提示、治療しない場合の予後の説明、そして強制のない自発的な同意は、いずれも成立要件である。

■臨床へのつながり
インフォームド・コンセントは「同意書に署名をもらうこと」ではなく、患者が自ら決められるよう情報と時間を提供する過程である。説明義務が不十分な場合、結果に過失がなくとも法的責任を問われうる。また未成年者では親権者の同意を得つつ、年齢と理解力に応じて本人にも説明し意向を尊重する(アセント)。判断能力が低下した患者では、本人の意思の推定を出発点に、家族や多職種と話し合う意思決定支援の枠組みが用いられる。
問6
歯科医師の届出について正しいのはどれか。
  • 15年ごとに届け出る
  • ✔2年ごとに、12月31日現在の状況を翌年1月15日までに届け出る
  • 3都道府県知事に毎月届け出る
  • 4毎年、厚生労働大臣に届け出る
  • 5届出義務はない
解説:歯科医師法により、歯科医師は2年ごとに12月31日現在の氏名、住所、従事先などを、翌年1月15日までに住所地の保健所を経て厚生労働大臣に届け出る義務がある。この届出をもとに歯科医師・医師・薬剤師統計が作成される。
問7
気道異物による窒息で、意識のある成人に対して行う対応はどれか。
  • 1仰臥位で経過観察する
  • 2水を飲ませる
  • 3直ちに胸骨圧迫を開始する
  • ✔背部叩打法や腹部突き上げ法
  • 5口腔内を強く洗浄する
解説:意識があり有効な咳ができない場合は、背部叩打法と腹部突き上げ法(ハイムリック法)を異物が除去されるか反応がなくなるまで繰り返す。妊婦や乳児には腹部突き上げを行わず、乳児は背部叩打と胸部突き上げを行う。反応がなくなればCPRを開始する。
問8
歯科医師の守秘義務について正しいのはどれか。
  • ✔業務上知り得た患者の秘密を正当な理由なく漏らしてはならない
  • 2法令に基づく届出も守秘義務違反となる
  • 3歯科医師を辞めた後は義務がなくなる
  • 4患者の同意があっても情報提供は一切できない
  • 5家族には常に無条件で開示できる
解説:刑法第134条により、歯科医師は正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならず、業務を離れた後も義務は継続する。患者本人の同意がある場合や、感染症法に基づく届出、虐待が疑われる場合の通告など法令に根拠のある場合は正当な理由に該当する。